翻訳家の小鷹信光は、諏訪部浩一の「『マルタの鷹』講義」を熟読して新訳に臨んだというのでそっちを読みたいのだが、図書館に同じ著者の「ノワール文学講義」があったので先に読んだ。
こちらはいわゆるノワール小説の前史から入るので、順番としては正しい気もする。
1930年代アメリカのノワール小説の構造は、主人公が、
1.閉塞した状況に置かれ
2.そこからの脱出を試み
3.それに失敗する
のだという。
これは本文に「単純にすぎると思われるかもしれない」と書いてあるくらいで、シンプルな「あるある」に近いものだが自分はこれを読んで「ゾンビ映画と似たり寄ったりだな」と感じた。
ほとんどのゾンビ物は、狭いサークルで主人公に危機が迫って、
「やっとこさ脱出しました」
「でも世界はますます悪くなってます」
「いつまで生き延びられるか不明です」
というあたりで終わるものだし、簡単に「めでたしめでたし」にならない点が良いのだなと再認識できたたし、そういう点が自分には合っている。
いわゆるトリックやどんでん返しのあるようなミステリよりも、ノワールやハードボイルドの方が、今の自分には遥かにピッタリと馴染むように思う。
ひと口にノワールと言っても映画の方もあるし、前世紀後半から今世紀に入ってからの小説も色々とあるはずなので、もうちょいこの線の作品を見たり読んだりしておきたい。