「家族 掌編」を含む小説

　都内にあるレストラン"庭園"は広く明るい造りである。 　木製のテーブルや椅子が温かく、ガラス張りの壁からは外光が差し込んでいる。白い壁も清潔感があって、家族連れやカップルが好ん…

宝物を隠すのが好きな“ボク”。 おもちゃやおやつを大切にしまい込みながら、今日も探検を楽しんでいる。 だけどある日、ママのお母さんを“とっておき”の場所へ案内すると──。

　娘が死んだ。 　今年で四歳になるはずだった娘だ。 「産まない方がよかったかもね」 　そう言う妻に、かける言葉が見つからなかった。涙すら零せない彼女の心情を推し量る事できず、…

人を憎めたら、どれだけ楽だろうか。 友人と仲違いをした時、恋人とすれ違った時、家族に否定された時、僕はいつも腹を立てながらも、離れていく人間に固執し関係を修復したいと願ってしま…

母が出て行くのを見送る少年の話。

年に一度、本当に一人になりたい時が来る。 予兆は人関わりが多くなる時期。元来付き合いが苦手だから堪える。そこで、落ち着いたら決まって妻に「旅に行く」と伝えどこかへふらっと一泊する…

望むからこそ、人は満たされない。 「次、いつ会える？」 紗枝の言葉に「来週かな」とだけ添えて、一人電車に乗った。彼女はこの後、スーパーによって食材を買い、家族の食事を用意して…

火の玉を食べる話。ミントアイスと擬似家族書きたくて書きました。 ジャンルよく分からんので、とりあえずその他に入れてます。

父を埋葬して一週間。夜ごと、誰かが戸を叩く。 その声は、たしかに父親のものだった。 けれどこの土地には伝承がある。――一度でも戸を開ければ、最期だという。 寒さと孤独の中、戸口…

我が家には、名前を書いていなければ家族全員のもの、というルールがある。 祐里さんの自主企画に参加させていただいております。 「【書き下ろし1万文字以内】お題「冷蔵庫」の物語を書…

あぁ、私は死んだのだ。 聞こえる読経。嗚咽。あぁ、皆私の死を悲しんでくれているのだなと、喜びを感じる。人生に未練はあるけれど、こうして惜しんでくれているのであれば、まぁ、本望だ…

　「子供、いいもんですよ」 　チャットで知り合った女にそう言われ、僕は「そうなんですね」と返した。 　子供。 　社会を形成するうえで、確かに必用な存在。未来の労働力を増やし国…

護送車が停まっていた。 しっかりと、厳重に施された防御柵により中は見えなかったが、きっと罪人を運んでいたのだろう。

　迷子の幼女を助けたいなら、20メートルは距離を取るべきだ

「私」と、苦手な母親の話。

雨の日にしか姿を現せない、小さな水の精がいた。 あるカップルを見つめていた ただのいたずらのつもりだったのに——。

「好きなんだけど」 　突然告白された俺は言葉を失った。 　喋った事もない、隣のクラスのなんとかさんに呼び出され、何かと思えば急な好意。はっきりと言って持て余すというか、俺にはど…

僕には、あのひとりで輝く白い月に触るという夢がある。 ＊＊＊ ※自主企画「エピソードタイトル「月の光はレモンの香り」指定での掌編小説、お待ちしています」参加作品です。

「もし俺が倒れて、延命するかどうかの選択肢を提示されたら、躊躇なくしないと言ってくれ」 妻にはそう頼んでいた。 当時は半分冗談のつもりであったが、自由が効かず自立もできないよう…