概要
兄の豹変、悍ましい音、父の仏壇。いてはならないもの、が私と兄を取り巻く
兄が、最近魂を失ったみたいだ。
私の胸中は、口数は少なくとも熱い男だった兄の、げっそりと豹変した姿への不安が大多数を占めていた。よりによって受験前に……。
「ねえ、彩華の方はどうなの?」
そんな、三日前からの異変のことについ頭を巡らせていると、友人の未稀に現実へ引き戻される。
近頃、九十九山の麓にある鎮御山神社の近辺の人、特に四十代以上に頭痛や幻聴が多くあるという。数人の話ではない。辺りに住む多種多様な人間が皆、何かおかしな、頭をガンガン鳴らす音を聞くというのだ。
「うちの家族はみんな大丈夫なんだけど……」
昨夜、おかしなことがあった、とまでは言えなかった。
***
昨日の深夜、なかなか眠れずに目を開けていると、音がしたのだ。仏間の襖を開け、ペタ、ペタ、と何者かが侵入し
私の胸中は、口数は少なくとも熱い男だった兄の、げっそりと豹変した姿への不安が大多数を占めていた。よりによって受験前に……。
「ねえ、彩華の方はどうなの?」
そんな、三日前からの異変のことについ頭を巡らせていると、友人の未稀に現実へ引き戻される。
近頃、九十九山の麓にある鎮御山神社の近辺の人、特に四十代以上に頭痛や幻聴が多くあるという。数人の話ではない。辺りに住む多種多様な人間が皆、何かおかしな、頭をガンガン鳴らす音を聞くというのだ。
「うちの家族はみんな大丈夫なんだけど……」
昨夜、おかしなことがあった、とまでは言えなかった。
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昨日の深夜、なかなか眠れずに目を開けていると、音がしたのだ。仏間の襖を開け、ペタ、ペタ、と何者かが侵入し
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!深遠な家族の絆と忘れ去られた伝統の重さを描いた、心揺さぶる物語
この物語は、ただのホラー小説ではない。現代社会が抱える孤独感、家族の絆、そして忘れ去られた伝統や信仰の重さを描いた深遠な作品である。
物語を通じて、私たちは主人公の彩華とその兄純平の、不可解な出来事に翻弄されながらも、互いに深い絆で結ばれている様子を目の当たりにする。
彼らの生活は、ある日突如として、祖先から受け継がれた呪いのようなものによって狂い始める。しかし、その困難を乗り越えようとする試みと、その過程で彼らが自身について、そして家族の過去について学ぶ旅を描いている。
作者は、現代社会における家族のあり方や、忘れ去られつつある信仰や伝統の重要性について、読者に問いかけているようであ…続きを読む