概要
いつも不機嫌顔で口の悪い三虎は、上野国でも名家の若さまで、下人扱いの古志加は、かっこいいな、と思って見てることしかできなかった。
まだ、己の気持ちに、名前も与えることができずに……。
───さて、本日は上毛野君の屋敷に突撃取材!
あ、そこの女官さん、三虎について聞かせて下さい!
「は? あの従者、いっつも顔が怖いのよ。嫌よねぇ、すぐ罵声を浴びせる男って。あたし前に、熊みたいな手って言われたわ……キィッ!」
──ありがとうございました。
あ、古志加! 三虎について聞かせて下さい!
(古志加、頰を両手で包んでプリプリ身体を揺すりながら、)
「え? 神経質そうな眉、
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- ★★★ Excellent!!!親しみやすい筆致が魅せる、『未玉(あらたま)』が『玉』となるまでの物語
万葉の、どこかおおらかな空気が香り立つ奈良の時代――しかし舞台となる上野国に吹く風は、厳しい伊香保風(からっ風)です。
この時代の女性が纏う領巾(ひれ)を思わせる柔らかな筆致に、読み手はすぐに引き込まれます。そこで描かれる場面がどれほど厳しい現実を孕んでいようと、気付けばこの世界の中で、主人公と共に怒り、笑い、ときには涙を流し、先へ先へと物語を追っているのです。
本作は、ハッピーエンドであることが概要で明示されており、またプロローグでもそれがはっきりと示されています。
ですが、続く本編から語られる、主人公古志加の境遇は容赦の無い過酷なものであり、読み手は容易に、というより全く、プロローグ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ヒロインと歩む美しい古代日本の物語
時代は奈良、ヒロインの古志加(こじか)が語る恋物語です。
辛い幼少期に心を救われた青年を一途に想い続け、それを大事に実らせていく。
そんなお話になります。
幼少期の境遇、伝わらない想い、襲いくる波乱。
胸が苦しくなる場面も多くあるかと思います。
でも安心して読んで欲しいです。
何故ならヒロインの想いは強く、必ず乗り越えられる確信と、彼女を応援したい気持ちが強くなるはずだからです。
すれ違いにヤキモキしたり、少し伝わって嬉しくなったり、本当にヒロインと物語を歩んでる気分になれますよ。
そう思えるのは登場する人物全員の心象描写がとても美しいからです。
主要人物はもちろん、所謂敵役ですら、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!奈良時代を舞台にした切なさと甘さが溢れ心揺さぶられる極上の恋愛小説。
この小説の魅力は、まずは作者の美しい文体と描写です。
奈良時代の風景や人々の暮らしが、繊細に丁寧に描かれていて、古代の言葉や仮名遣いも雰囲気を高め、物語の世界に自然に溶け込んでいけます。
登場人物たちの感情や心理も、細やかに表現されていて読み進むうちに魅了されます。
主人公の古志加と三虎の恋のやり取りは、じれったさや切なさや甘さに溢れています。
読者は、きっとこの二人の想いが通じ合うまでの長い道のりに胸を締め付けられることでしょう。
登場人物たちの個性と人間味も魅力です。
古志加は不遇な境遇にもめげず、明るく強く生きる女性です。
三虎は孤高で厳しいけれど、時折見せる優しさや照れが愛らしい…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ラストの大団円ハッピーエンドがとても心に染みる名作
皆様のレビューが素晴らしいものばかりで、私がこの上付け足すことなど何もないのですが、作者様にせめてお礼を申し上げたく、少し書かせていただきます
第一章の、くるみの人、蘇比色の衣、でもうガッツリ心を鷲掴みにされてしまいました
もう後は毎日時間があるとこの作品にどっぷりでした
完全に母心になってしまい、ヒロイン古志加の波乱万丈の人生をじっと息を詰めて見守りつつ、ハラハラ、ジレジレ、ドキドキで一喜一憂する毎日になりました
もうどうしようというくらい通勤電車の中で読みながらボロ泣きしたこともあれば、読んで我がことのようにうれしくて上機嫌になり周りにびっくりされたこともあります
それはひとえに、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!奈良時代を舞台に繰り広げられる長い長い恋の路。
序章から読者と主人公は絶望へと落とされます。
主人公は「くるみの人」のおかげで徐々に傷を癒されながら立ち直り、ひとりのおみなとして幸せを掴む。
そんな大大恋慕を見届けることができる作品です。
この物語の魅力は、ひとえに多彩な魅力的なキャラクター達でしょう。
皆が自らの意思を持って、行動をしています。
つまりキャラクターが立っている、これは大変に素晴らしいことです。
全てが複雑でありながら、少しずつ繋がっています。
背景がわかると物語の奥行きが見えてくるのです。
そしてそれらは共感を呼び、ともに悩み、苦しみ、喜び、時に怒り、そして涙します。
これほど感情を揺さぶられる作品はなかなかにないと思…続きを読む - ★★★ Excellent!!!奈良時代。古代日本の厳しい社会の中、一途に慕う少女の魂の恋物語。
いまから千二百年も昔に生きた人達の物語。
未だ社会は整っていない中、だからこそみんな強く生きて、ありのままに強く人を恋する世界。
本作は、そんな中で育った不遇な少女が、魂をかけて愛しき相手を一途に想う物語です。
自分を律して頑なに生きるもの。力を頼み奔放に生きるもの。
さまざまな人達が行き交う中で、和風戦乙女のように剣もて少女は育ちます。
しかし想い人は育ちも良く、主に命を懸けて孤高と貫く頑固者、時折優しさを見せるも容易に気持ちを近づけません。
そんな相手に孤児として育った少女が全霊をかけて相手を想う、その行方は。
本作は奈良時代という時代背景を巧みに取り込まれています。
作中屈強の戦士…続きを読む