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じっくり読みこんだ本音感想を書く企画2023【06】〜【10】

【先着30名】じっくり読みこんだ本音感想を書く企画2023
https://kakuyomu.jp/user_events/16817330661249013634

企画専用の近況ノートです。
梶野の感想はこちらに投下します。
感想への質問・返信は以下のノートにお願いします。

じっくり本音感想企画2023 感想用返信ノート
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330661350519496

参加作品:
【06】ようこそ Light Houseへ(大田康湖)
https://kakuyomu.jp/works/16817330660313761401
【07】盾のおっさんとツンデレ花嫁(エイル)
https://kakuyomu.jp/works/16816927860264479009
【08】猫の母の恩返し(バルバル)
https://kakuyomu.jp/works/1177354055349743213
【09】天道虫を抱いた男(島流しにされた男爵イモ)
https://kakuyomu.jp/works/16817330657477085255
【10】天をあおぐ(常夏真冬)
https://kakuyomu.jp/works/16817330661373930250



以下、企画説明。

初めまして、梶野カメムシです。
普段は長編バトル小説やショートショートを書いております。
小説より漫画の方をよく読んでいます。少年少女関係なく大好きです。
梶野は、感想で本音しか言えない病気です。
オブラートくらいは使いますが、お世辞や追従は言えません。

良い点は良い、悪い点は悪い。
あくまで個人視点の感想であり批評ですが、絶賛以外聞きたくないという作者さんも多いようで、「辛口OK」っぽい作者さんや企画でのみ、感想を言うようにしてきました(もしくは絶賛作品)。

「いっそ自分で作った方が早いか」 
そう考えて去年に「じっくり読みこんだ本音感想を書く企画」を開催し、これが第二回です。
この企画の趣旨は「梶野が参加作品の感想をひたすら書く」です。読み合いではありません。

参加条件:
・先着30名。
 感想を書き終えた時点で終了します。 
 1〜2日で一作の感想を書き、二ヶ月以内に終わります。
・下記の「参加方法」への回答をもって、参加確定となります。
※回答は必須なので、ご注意を。
・一万字以内の短編のみ。短い方が熟読できます。
・関連のない複数作品は不可。
・ジャンル不問。作者の好みの傾向はプロフ参考。 
 よく知らないジャンルは前置きの上、わからないなりの感想を書きます。
・辛口でも泣かない。
 質問、反論は近況ノートにて受け付けます。誤解があれば訂正もします。
 それでも納得できない場合は「所詮一個人の感想」と割り切ってください。

ご注意:
・前回はこんな感じでした。
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647890943183
・梶野の趣味や傾向が気になる方は、プロフや「小説雑話」をご確認ください。
 いわゆるラノベより、やや一般小説よりです。
・テンプレ的な異世界転生やなろう系は、ほとんど読まないのであしからず。
 それでも読んでもらいたいという野心作なら歓迎です。覚悟してください。
・純文学も専門外なので期待しない方がよいです。
 「お上手だけど面白くはない」とか平気でいうので、それでもよければ。
・星やレビューはお約束しません。内容次第です。
・その他、質問などがあれば、以下の近況ノートまで。
・感想は専用の近況ノートに投下する形式です。
 希望があれば、応援コメントへの感想転載、リンク対応もします。

参加不可:
前回参加者で、完全無反応だった人。

参加方法:
下記ノートにて以下の質問にお答えください。感想は受付順になります。
※回答は必須です。
※登録のみで回答がない場合、三日後にキャンセルとして削除します。

・特に意見が聞きたい部分。
・「梶野ならこう書く」アドバイスは必要か否か。
・創作論「カメムシの小説雑話」への転載希望か否か。

じっくり読みこんだ本音感想を書く企画2023 参加・質問・返信用
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330661246499480
カメムシの小説雑話
https://kakuyomu.jp/works/16817330654869504941

感想は以下のノートに投稿します。
【01】〜【05】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330661247799553

前回からの変更点:
・前回は一日一感想でしたが、大変過ぎたので今回は余裕持たせてます。
 調子よければガンガン書きます。
・前回は「私ならこうする」を提案するスタイルでしたが、今回は原則なしとします。
 自分で考えたい方もいるでしょうし、時間もかかるので。
 改善案を希望される方は、感想着手までに企画用ノートでお伝え下さい。
・作品感想は、私の創作論「カメムシの小説雑話」にて転載したいと思います。
 ささやかですが宣伝になりますし、私以外の感想ももらえるかもしれません。
・「小説雑話」には私なりの「感想の書き方、読み方」もまとめてあります。
 参加前に参考にしていただければ。

感想の書き方
https://kakuyomu.jp/works/16817330654869504941/episodes/16817330655389634198
感想の読み方
https://kakuyomu.jp/works/16817330654869504941/episodes/16817330655435222712

それでは、よろしくお願いします。

10件のコメント

  • 【06】ようこそ Light Houseへ(大田康湖)
    https://kakuyomu.jp/works/16817330660313761401

    さて、六回目のじっくり感想は、太田康湖さんの「ようこそ Light Houseへ」。

    太田さんとは、私の自主企画「おっさん(おばさん)の創作遍歴」に参加いただいて以来のご縁です。
    私と同世代で、執筆歴も同じくらいだと思います。
    その時の参加作品である「私の創作遍歴」が、おっさん直撃の昭和話でありながら、昨日のことのように細部まで細かくて、トリ頭の梶野はいたく尊敬したものです。

    ちなみに読んでたのは「私の創作遍歴」だけで、オリジナルの小説はこれが初めてだったりします。

    太田さんの執筆のきっかけは、藤子不二雄のパーマンだったそうで。
    そのせいか今作の登場人物は、梶野脳内で藤子キャラでした。ライトSFというのもそれっぽいですし。作者イメージと違ってたらすみません。

    そんな太田さんのご希望を確認しておきましょう。


    企画参加希望です。

    ・特に意見が欲しい部分。

     カクヨムコン9に投稿予定の作品なので、一万字以内でさらに完成度が上げられる部分があればどこか。

    ・「梶野ならこう書く」アドバイスは必要か否か。

     アドバイスがあればお願いします。


    ふむふむ、一万字以内。
    現時点で8500字ですから、1500字以内のパワーアップですね。
    割と得意な方向のリクエストです。がんばってみましょうか。

    それではじっくり感想、スタートです。


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。


    >第1話 マリティ宇宙港

    >「大きくなったね」
    二人の再会の場面。
    定番ですが、ここは「何年ぶり」と書いた方がやはり入りやすいかと。

    >通路の窓の外には黒ずんだ砂漠が広がり
    この砂漠が黒ずんでいるのは、何か理由があるんですかね。
    一般的な砂漠は砂の色ですし、同じ場面で陽光とあるので陽の加減でもなさそうなので、気になりました。砂鉄の砂漠とか、SFならあり得ますし。

    ここで黒い理由を軽く説明した方が、舞台がSFであると読者に伝えられていいとも思います。


    >フォンは広い肩幅をすぼめると
    「肩をすぼめる」ですね。

    >「夕日がきれいね」
     ルチアはドームの外壁に見とれている。
    ここは簡潔でいいので、風景描写が欲しいところ。
    「SFは描写である」って誰かが言ってましたっけ。


    >第2話 フォンの家で

    >声をかけようかどうか迷っていた。
    声はもうかけてるので、「訊こうかどうか迷っていた」の方が。

    >「伯父さん、ふだん家にお客が来ないから照れてるんだよ」
     フォンはルチアを安心させようと明るく言った。

    ここら辺、フォンと家族の人となりがさりげなく窺えていいですね。

    >「フォンはこれから車に乗るからおあずけね」
    自動運転あるんじゃ? と思いましたが、まあドライブするからかな。


    >第3話 月のない夜

    >ライトが暗紅色の砂を照らしている。
    こっちだと赤黒い感じですね。
    初見の「黒ずんだ砂漠」も、こっちに寄せて「赤い」と表現した方がいいかも。夕焼け前後の時刻でしたし。

    >バギーを降りた2人は、砂を踏みしめながら砂丘を登った。
    バギーで登れないくらい砂が柔らかいと。ふむふむ。

    >遠くに見えるマリティの町は、建物や街灯の明かりが気候調節用のドームに覆われて光っている。

    ここももう少し夜景の描写が欲しいところ。

    >フォンはシートベルトを締めるとハンドルを握り、叫んだ。

    ここはシートベルトしない方が、危機感が演出できると思います。

    >猛烈な砂嵐がバギーを捕まえようとするかのように追いかけてくる。ライトもワイパーも役に立たない中、フォンはナビゲーターの地図表示を頼りにバギーを走らせた。

    この場面、もう少し膨らませた方が絶対、読み応えが出ます。
    かっこいいフォンを見せられるシーンですし。


    >第4話 フォンの来た道

    >「戻ってきた僕を見た伯父さんは『今度から帰る時間を言っときなさい』としか言わなかった。僕を信頼してくれてたんだと分かって嬉しかったよ。それから、僕はこの町も伯父さんたちも好きになったんだ」

    このエピソードはとても魅力的です。
    簡潔なのに情感が伝わって、とてもいいと思います。
    フォンにとっても、マリティは灯台だったんですね。

    >「友達か。もしかして付き合ってる子とか、いる?」
    > ルチアの顔から笑みが消えた。フォンはキャラメルの箱を持ちながらあえて変わらないトーンで話し続ける。

    ここは直球過ぎてイマイチ。
    もう少しさりげなく伝わるような台詞と表情がいいと思います。


    >第5話 ルチアの来た理由

    >ルチアはフォンの肩に寄りかかるように体を寄せながら話し出した。

    ちょっとここは展開早すぎる気がします。
    打ち明けながら距離が近づくくらいの方がよいかも。

    >今更新しい人をママって呼ぶのも気が引けてさ。
    ルチア、他は父母と呼ぶのに、ここだけママですね。
    違和感と言うか、不思議には思いました。
    あえてママを使ってるのかも……普段はママ呼びだったとか。
    でも、ここだけママにする理由はちょっと弱い気もします。

    >「楽しみだな。でもその前に」
    > ルチアの手がヘルメットを持つフォンの右手に被さる。
    >「フォンは、もうトリュースに帰る気はないの」

    一連の二人の語らいの場面ですが、ルチア攻め攻めですね。
    正直、ちょっと違和感が先に立ちます。ここは後述しましょう。

    二人のやりとり、特に「ここは『ライト・ハウス』だからね」はハマっていると思います。

    >しかし、砂漠を見たルチアは声を上げた。
    ここの「しかし」はおかしいです。
    削ってよいかと。

    >確かにヘルメットのライトは付いてないのに、地表が微かに光っている。

    ここも情景描写が欲しいところ。
    エンド前の見せ場で「光っている」だけなのは、流石に寂しいです。

    >「素敵ね。これをフォンは見せたかったんだ」
    んん?
    なんか展開的に月を見に来たみたいな話になってますが、「月に光る砂漠」を見せたかったんじゃなかったでしたっけ。三話の台詞はそう読めたんですが。
    作者の狙いがどちらなのかは不明ですが。ここは後述しましょう。


    >第6話 ミンの欠片

    >2メートルほどの岩山を見つめた。
    岩山は「岩でできた山」なので、このサイズでは岩山とは呼べません。
    「大岩」にするか、サイズをもっと巨大にすべきです。

    >「ずっとここにあったのかしら」
    >「どうでもいいよ。もう帰ってきたんだから」

    確かに謎過ぎますが、まあルチナも不思議がってますし、疑問には思わないです。
    風で飛んできて挟まったのかもだし。未来の写真なら耐久力すごいのかもだし。

    ただ、ここで「両親の写真が見つかる」というシーンが、この物語上必要かといわれると、かなり疑問ですね。強引に見つけさせたわりに、写真が出てくるのはこれっきりですし。後述。

    >「『秘めたる思い』。フォン、好きよ」

    いや、全然秘めてなかったです!
    手つないだり、抱き合ったりしてました!!

    >ロビーのスクリーンには『今夜のマリティ宇宙港の天気 晴れ 最低気温摂氏13度 砂嵐確率0%』という画面が映っていた。

    「一件落着」のメタファーですね。
    表現自体は悪くないんですが、内容的に大嵐!って内容ではなかったので、そこまでのカタルシスを生んでないのは残念。
    これが嵐のような恋物語の後の大団円なら効果的だったんですが。

  • ⬜️全体の感想
    ・タイトルについて
    なんとなく、藤子不二雄っぽい!w
    灯台のような街の物語ですし、内容に即しています。
    語呂もいいですし、雰囲気がぴったりだと思います。

    ・文章について
    コツコツと積み上げた感じの、素朴な文体ですね。
    派手さはないですが情報が過不足なく伝わり、ストレスは全くありませんでした。読みながらの指摘も超楽でした。
    ここら辺の文章のこなれ具合は、流石のキャリアを感じます。

    目につく欠点としては、とにかく地味なこと。
    まあこれは長所の裏返しなので、一概に悪いとは言い切れないのですが、見せ場ですら必要最低限の情報しか書かないのは、流石に抑え過ぎです。

    読みながら指摘したのは、ほぼほぼ風景描写ですね。
    今作は辺境惑星に友人が訪れる話であり、絶景を見せる場面が複数ありますが、友人が感動してる場面でも淡々と説明があるだけです。これではキャラの気持ちに共感できません。

    別に観光用パンフレットのように美辞麗句を並べよとは言いません。
    太田さんらしく抑えめでいい。一行だけでいいので、風景の素晴らしさを伝える文章を加えてみてください。
    白黒漫画の1ページだけ、カラー原稿にする感じです。
    メリハリがついて、ぐっと作品が引き立つと思います。


    ・内容について
    基本的には女友達の来訪から始まる恋話ですね。
    主人公であるファンの生い立ちと、第二の故郷を得る話。
    そこにヒロインであるルチアの過去が交差し、結ばれるまで。

    展開に捻りはないですが、わかりやすく共感しやすい、まさに藤子不二雄的な物語だと思いました。
    マリティが「ライト・ハウス」と呼ばれる所以もいかんなく使われており、恋物語にがっちり組み込まれている点は最大級に評価します。

    ストレスなくさらっと読め、読後に満足感がある辺りも藤子不二雄的で、その方向が好きな読者にはまさにストライクな作品だと思います。

    反面、ストーリーが淡白で起伏にやや乏しく、刺激を求める読者受けは悪そう。
    文章で指摘した描写の薄さも、これに拍車をかけています。
    これに磨きをかけるとすれば、いかに良さを残しながら弱点を埋めるか、かなと。
    とりあえず、指摘した描写をピンポイントに強化するだけでも、かなり違うと思うんですが。


    それでは最後に、物語的に気になった点。
    並びに、一万字以下に収まる改善案を書いていきます。

    ・砂嵐の場面
    ここは物語の転の部分で、盛り上がるところです。
    今作だと淡々とシェルターに入っていますが、もっと紙幅を割いて、ピンチを演出してもよかったかもしれません。

    例えば砂嵐によってバギーが傾いたり、砂がバギーを叩く音にルチアが悲鳴を上げたり、それをファンが落ち着かせたり。ルチアがそれを見て「強くなったね」と驚いたり。

    ここはファンの見せ場になので、もっと活躍させて、ルチアがファンを好きになるのもわかると、読者に思わせるべきだと考えます。

    ・ルチアの迫りぶりが露骨すぎる
    主にシェルター内での場面ですね。

    フォンがルチアを好きで、でも言えずにいる気持ちはよくわかります。
    距離があり、第二の故郷を持った彼がルチアと縁遠くなったのも仕方ない気がします。ルチアに恋人がいることも知っていたし。
    一途な気持ちを残したまま、ここに至る部分は共感できます。

    反面、ルチアはエノクと別れたばかり(少し時間が経ってる?)で、好意はあるにせよ微妙な状況でしょう。
    アプローチするにせよ、長く離れていたフォンが自分をどう思っているのか、まず探る段階だと思います。
    なので彼女の存在を聞くとか、そこら辺の行動は理解できます。

    が、その後の体を寄せたり手を握ったりのぐいぐいぶりは、性急すぎて肉食系か?と驚きました。
    そこまでガツガツ行く女性なら、そもそもフォンに理由を聞かれた時に「フォンに会いに来た」と言うと思います。むしろ何故言わないのかって話です。

    そこをあえてぼかしているのは、フォンが気になっているものの、自分からは言い出せない臆病さがあるわけで。
    私はその方が普通だと思いますし、行動もそっちに即した方が自然に感じます。

    具体的には、ボディタッチはやめた方がいいのでは、と。
    少なくとも、ルチアの方からは。
    隣りに座ったり、ヘルメットに手を置くくらいで留めるべきかと思います。

    ・月か砂漠か
    砂嵐が去り、シェルターを出た後、二人はまず光る砂に驚き、そして月を見上げて感動するわけですが、ここは違和感を感じました。

    何故かと言うと、私はファンが見せたかったのは「輝く砂漠」で、月は舞台装置だと思ったからです。
    三話のファンの台詞はこうです。

    >「さっきの話だけど、ブリアにはトリュースにはない『ミン』って名前の月があるんだ。初めは不気味に思ったけど、慣れるときれいなもんだよ。満月の夜だと砂に含まれる鉱物が月に反射して微かに光るんだ」

    この台詞だとどっちにも取れますが、言っても月(衛星)はたいていの星にあるわけで。ブリアならではの名物とは言いづらい。『ミン』に特徴的な何かがあるわけでもないですし。

    ですが「輝く砂漠」は、ブリアならではの光景です。
    幻想的な光景ですし、SF的でもあります。押すならこっちにすべきでは?
    シェルターを出た二人が見る順番を砂→月から月→砂に変えて、「輝く砂漠」に力を入れて描写した方が、初めて見るブリアの感動は増すと思いますが、いかがでしょう。

    ・両親の写真について
    エアバイクと写真を見つけるシーンは、はっきり言って蛇足です。
    ストーリーに絡んできませんし、写真が見つかる展開に無理があるのは太田さんもわかっておられるはず。

    ですが、ここを生かす改善案はあります。
    見つけたのを「ファンと両親の写真」ではなく、「ルチアとファンの写真」にするんです。(当然、室内に飾られた写真は逆にします)

    →シェルター内の二人の接近を抑えめにする(手を握るのもなしくらいに)
    →ルチアはファンの気持ちをいまいち量り切れない状態。
    →二人の思い出の写真を見つけ、ルチアはファンの秘めた思いを確信する
    →空港で告白

    と言う流れにすれば、写真発見シーンが本筋に組み込めるます。

    最後の告白もファンからした方が自然だと思います。
    ルチアに「『秘めたる思い』。今、聞かせて」とか促させて。
    『秘めた思い』はルチアじゃなく、やはりファンにこそ相応しい気が。

    以上、私なりの改善提案でした。
    1000字あれば、十分可能な内容だと思います。

    ⬜️総評
    ・灯台の町を中心とする、素朴だが読ませるストーリー
    ・文章は堅実だが、描写に難あり
    ・要所で地味さを覆す描写や場面の切れが課題

    十分読めるし楽しめるが、これぞという面白さに欠ける。
    そういう印象を持った作品でした。
    なまじ文章の完成度が高いだけに改善は難しいかもですが、その時はこう考えてみてください。
    「漫画版のドラえもんを映画版にする感じ」と。
    素朴さをキープしつつ、派手な演出を上乗せした好例だと思いますんで。
  • 【07】盾のおっさんとツンデレ花嫁(エイル)
    https://kakuyomu.jp/works/16816927860264479009


    7回目はエイルさんの作品、「盾のおっさんとツンデレ花嫁」です。
    久々に来ましたよ、なろう系ファンタジー。
    企画の告知文で「覚悟してください」と書いといたはずですが、準備OK?

    以前も書いたことがありますが、梶野はなろう系のファンタジーは読みません。
    タイトルは長文の時点でわかりやすいので、最初から忌避します。
    元々ファンタジー畑だった私が、ここまでなろう系を嫌うのは、創作の方向性が完全に真逆だからです。

    テンプレが前提であり、細部を手軽に弄るだけのカスタムなスタイル。
    表現力より執筆速度と読みやすさを優先する文章。
    ご都合主義で、欲望を満足させることを追求するストーリー。

    まあ多少なり偏見混じってる自覚はありますが、数少ない例外を除けば、だいたいこんな感じだと思います。

    私はテンプレをぶっ壊す、何なら自分がテンプレ側になることを目指して小説を考えますし、文章も個性や表現力を重視します。(速度と読みやすさを羨ましいですが)
    ストーリーがふわふわしてると一気に冷めますし、最初の数行で読むのを止めるのがほとんどです。ぶっちゃけ、この企画に参加した作品くらいしか、通しで読めたことがありません。でもって、この認識は改まらなかったわけで。

    まあ、それでもニーズはあるんですから、存在の否定はしませんけど。
    私の趣味ではないし、目指すところではないというだけです。

    こんな私が感想を書くのですから、最初から激辛は覚悟していただきましょう。
    エイルさんのアンケート回答はこちら。


    はじめまして??エイルです。

     湾多珠巳 様のところで感想や近況ノートでお名前を何度も拝見しておりまして、せっかくなら交流したいなと参加させていただきました。

     参加作品なのですが、エイルの初完結作品で処女作とも言えると思うのですが、その頃は8000文字程度でした。現在は公正修整を繰り返した結果1万文字を超えてしまっているので企画の1万文字を超えないことが条件ですからダメなら遠慮なく参加解除してください。

     湾多珠巳 様からコメントいただきまして、ちょっとエイルの中の作品への評価は正しく無いのでは??と思ってもおります。

     参加希望時の質問 ※必須
    ・特に意見が欲しい部分。

     遠慮なく書きやすい事を好きなようによろしくお願いします。でも一発ネタで笑いを狙った作品ではあるので滑ってるか否かは気になります。

    ・「梶野ならこう書く」アドバイスは必要か否か。

     ちょっと聞いてみたいので、何かしらあればお願いします。ストーリーや設定は執筆当時から変更しておりませんから問題が多々あるでしょうから(^^ゞ


    ふむふむ。あえて打たれに来た!という感じで、いっそ清々しいものを感じます。
    あえての処女作の登録だそうですし。
    一発ネタの判断はともかく、アドバイスは難しそう。
    というか書いても不毛な予感がしますが、まああまりに目に余る部分は突っ込みましょうか。

    あ、湾多さんというのは私の相互フォロワーの方でして、そちらのノートなどでエイルさんとはすれ違っていましたが、今回が初の交流になります。
    作風がまるで違うので、ちょっと感想書いたりは控えていたので。
    正直、この企画に参加されるとは予想外で、かなり驚いたくらいです。

    ちなみにエイルさんは、自主企画「エイルの挑戦」を長く続けておられます。
    何度か拝見した限り、かなりの難題が出てた覚えがあります。
    こちらも私は参加したことがありません。面白くする自信がなかったので。

    それでは、さっそく感想を書いていきましょうか。


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。


    先に書いておきますが、今回、文章の不味い部分は突っ込みません。
    誤字脱字と、よほど大きな穴でない限りスルーしていく方針です。

    >稼ぎは酒に注ぎ込むから太りお腹はボコッと出た酒太りだ。
    「太り」が被っています。

    >仕事は狩人だが素早さのステータスが低く、武器の扱いはスキルが取得出来ないため扱えない。

    太ってるので素早さが低いのはわかりますが、何故武器スキルが習得できないんでしょう?
    というか、武器が使えないなら狩人より農夫になるべきでは。

    >村のエースなって欲しいと親に付けられた
    エース「に」
    村のエースって、望みが低いなあ。

    >村の狩り場は岩山なので隠れやすく罠も設置しやすいし魔物に囲まれ難く逃げやすいが

    傾斜と足場の悪さを考えれば、岩山の方が逃げにくそう。

    >濁り酒は発酵させただけの手間暇を極限まで減らした、アルコール入ってる呑める物程度の不味い酒である。

    この説明なら、「どぶろく」の方が近いかも。
    安酒という意味でも的確かなと。ファンタジーらしからぬ単語ですが。

    >ぼろ酒の材料を注文して行商から仕入れる男気ある人である。

    酒造してるなら別ですが、材料は仕入れないでしょう。
    あと、商品の仕入れに男気関係ないですw
    安酒仕入れない酒屋なんてありません。

    >盾を売っている雑貨屋とも取引はするが完全に定型文でゲームのごとく完全にリピートである。

    なろう系では、こういうのが普通なんですかね?
    こういう文章がありなら、何でもありですねえ。

    >売り上げ1位がエースなので声を出してくれるのだ。

    意味が分かりません。二位以下には無言なんですが?
    売上がいいのでエースと会話してやってるという話なら、何故エースがここまで嫌われてるのか、さっぱり謎です。金は払ってるのに。

    >「あんな独り身で呑んだくれの中年男になるじゃありませんよ」

    教育上よろしくないのはわかりますが、中世ファンタジーならごろごろいそうな気がします。

    >万が一にでも無視されたら心が折れそうなんてことは、無いったら無い。

    普通は無視しませんかね?
    そこまでヘイト(理由は謎ですが)稼いでたら。

    >雨季はなく、降るときはこまめに降るが、砂漠化するほど雨がないときもある。

    なんだか全然意味が伝わりません。
    普通の土地って感じです。

    >この近くで最強の魔物はオーガで皮膚は固く、鈍器な粗末な棍棒などを使い、仲間と連携して襲ってくる危険な魔物だ。

    鈍器な「ど」粗末な棍棒
    オーガはファンタジー小説によって全然書かれ方が違うモンスターの代表な気がします。サイズとか腕力とか、何故最強扱いなのかを説明すべきでしょう。

    >歩いて行く丸四日ほどかかるのだが
    行く「と」

    >エース唯一無二のスキルである、盾技のシールドバッシュ

    何故、唯一無二なのか、説明がありません。
    あと、「シールドバッシュ」はわりと登場頻度の少ない単語かと思います。
    どういう技なのか、私なら説明入れます。

    >目の前に現れた魔物だけを体重をいかして盾で押し潰しながら歩き
    なんかこんなゲームあったなあ……

    >無理して歩くのは酔い醒まし

    荷物は酒だけで、水も持ってきてないのに?

    >余裕の少ない村で嫌われれば村八分どころか人間扱いもされにくいものなのだ。

    危険な荒野、しかも夜に、エースを襲う村人がいると?
    見通しいいって説明あったのに?

    >魔物が近づいてるのに寝ていれば死ねる。なら警戒しつつ早く移動する方がいいし早く帰る方がいい。

    疲労ゼロスキルでもあるんですか?
    丸四日かかるってありましたけど。

    > 家の物も村の扱い的に盗まれても助けて貰えないだろう。最も金目の物どころか服すら置いていないのだから、盗みようがない。服を買う稼ぎが有れば酒を買うエースであるから、盗み対策では無いかもしれないが。それでも家は心配なのである。

    「盗むものが何もない」と書き続けた説明を、これで結ぶのは理解不能です。

    >オーガは一体でBランク、一般人なら数十人分の強さで、ソロで勝てる者なら戦闘のプロレベルである。冒険者でも才能の壁によるステータ不足で、上がれない者が多いかなりの強者のランクだ。

    ステータ「ス」
    びっくりするほど強さのイメージが伝わってきません。
    わかるのは「一般人なら数十人分の強さ」くらいです。

    >アンバランスな男女2名がオーガ三体と戦っている。

    何故、男女は英数字で、オーガは漢数字?

    >ん?あれはマリーにケインか?あいつら冒険者になりたい18と20の若者だったか?

    台本を読むかのような説明口調。

    >ケインが前衛の両手剣で斬りかかり、マリーが魔法で攻撃する後衛で、連携は悪くない。

    せめて魔法の描写くらいしてほしい。

    >ケインは村で一番の若手イケメンで強くてモテて、コミュ力も高いエースとは正反対の男だ。

    こう区切るとコミュ力が高いのはエースのようです。

    >たぶん会話したら独り身の男達が・・・いやあいつらは恋人同士だが

    こう書くと独り身の男たちが「あいつら」のようです。

    >言葉をかけることもなく走り去りエースはソロでオーガ三体との死闘を強制開始させられたのである。

    文章の繋ぎがおかしいです。

    >オーガの持つ棍棒的な木を盾で受け流す。
    サイズ感がまったく見えてきません。

    >防御スキルもなければステータスも防御が高めなだけなのでオーガにダメージを与えられないが

    意味が分かりません。
    もしかして「攻撃スキルがなければ」ですかね?

    >いかに皮膚の分厚いオーガとはいえ、オーガ攻撃はオーガの背中に効くのだ。

    オーガ「の」攻撃
    背中は不要です。

    >一時間ほど荒野のど真ん中でボッチ宴会をして昼間から寝るエースであった。

    村人を警戒とか言ってた気が。
    そろそろ突っ込み疲れてきました。

    >「勝手におっさんが夢見て酒に逃げてるだけだ」

    会話が繋がっていません。

    >「待ってよ、呑んだくれエースはあのオーガ倒したのでしょ?

    いや、倒してないでしょ。

    >何よ、冒険者になる私の師匠にしてあげようと思ったのに

    この子、魔法使いですよね?

    >サムズアップをしてみせ扉から出るエース仕草はカッコいいが
    エース「。」仕草はカッコいいが

    >「盾をまた買わないとな」

    盾が壊れた描写、まったくなかったんですが。

    >「三体のオーガから単身でその腹の持ち主が逃げれるわけないでしょ

    逃げれるわけない男が、何故オーガを倒せると思うのか。

    >おっさんは嘘だけはつかないだけどな、

    それ以前に、この前後は会話が成立していません。

    >「おっさんのあれを聞いて追っかけるとは

    ここから察するに、エースはオーガと戦った話をしたようですが、だとしたら全然定型文じゃないですよね。
    素材があったりするわけじゃないので、情報ソースはエースの話だけですし。

    >「騙さないと言わないのが呑んだくれエースのクズのところだよ。シッシッ!クズは邪魔なんだよ」

    会話が繋がっていません。

    >「それでオーガに復讐と諦めで酒に逃げてるんでしょ?」
    >「オーガには勝てないからな仕方ないだろ?」
    ???
    マリーはエースがオーガを倒したと信じてたんでは?

    >「まだ諦められないくらい花嫁が今でも好きなの?」

    意味不明すぎて、脳が破壊されそうです。

    >「私じゃダメなの?そんなに魅力ない?その花嫁さんは可愛かったの?」
    >「なに言ってるんだ?」

    初めてエースとシンクロしました。

    >「呑んだくれエースが一途で強いみたいだから、花嫁になってあげるっていってるの!!」

    もうやだ。おうちかえりたい。

    >「私ならオーガから逃げられるわ」
    逃げられんかったやろがい。

    >「なんでって花嫁って銘柄の高い酒だからだ。

    これはちょっと意外でしたが、話の展開が無茶過ぎて、全然笑えません。

    >呑んだくれおっさんって言ったたし
    言って「た」し

    >「ケインはあんなとこ出来る?」
    「こと」

    >「酒飲んで魔物に挑むとか無謀すぎる冒険者として失格だ」
    「無謀すぎる。冒険者として」

    >「なに?論点がずれてるでしょ?シラフだからケインもオーガに囲まれてみたいの?」

    意味不明です。

    >「あれでもう三日間、不眠不休で耐えてるのよ?しかも10日の狩りの後よ、凄すぎるわ」

    13体のオーガが三日間、受けるだけの男一人を相手し続ける理由が謎過ぎます。
    10体くらいは村の方行くでしょ、普通。

    >また口説いたら、あそこをやってるときに蹴りあげるわ」

    やってるときにか。

    >オーガ達もこれは餓え死にする方が早そうだと撤退する。

    私も撤退したい。

    >「そうそう、俺の家のカマドの裏の壁と土間の間に隠しスペースがあるなぁ、あれは花嫁を手に入れるための金なんだよ」

    家には金がないって言ってましたよね?

    >きっと二人目もすぐの事だろう。

    やっと終わった……。
    終盤はもう完全に目が滑ってました。

  • ⬜️全体の感想
    ・タイトルについて
    読んだことないですが、ラノベに「盾の勇者~」みたいなのありましたよね。
    それのパロディ的な何かですか?

    あと、このヒロインはツンデレじゃありません。
    口と頭が悪いだけです。

    ・文章について
    想像を遥かに超える低レベルぶりです。

    誤字脱字が多いくらいは許容しますが、会話が意味不明、そもそも繋がっていないのは致命的です。中盤は我慢大会、終盤は完全に目が滑っていました。キャラもののラノベで、これだけ台詞が意味不明な小説は初めてです。

    物語の半分近くを占めるバトルと買い物シーンも、コピペかな?と思うくらい同じ表現の繰り返しで、いっそ本当にコピペにした方が芸になるのではないか?と思うくらいでした。もっとギャグに振るなら、簡潔にしてコピペにします私なら。(略)とかでもいいです。スキップモードつけてください。

    さしてなろう系を読んでいない私ですが、その中でも今作はダントツで最下位の文章だと思いました。

    ・内容について
    文章に負けず劣らず、物語もひどいものです。

    エースの盾の無敵ぶりとか、普段の私なら絶対に突っ込むだろう穴がどうでもよくなるくらい、この物語には魅力がありません。

    話の半分を占めるバトルは、ひたすら盾で受け流すだけの流れ作業の繰り返し。
    もう半分を占めるマリーとのラブコメは、動機も展開も理解不能でご都合展開。
    これでどうやって楽しめと言うのか、逆に聞きたいくらいです。

    私は公言こそしませんが、ツンデレは大好きです。
    ですが、マリーは間違いなくツンデレではありません。
    ツンデレの魅力は、言うまでもなくツンとデレの配分で、特に両者が切り替わる瞬間にこそ、最大の魅力が発揮されるものです。

    このキャラは、そこの機微がまるっきり欠落しています。
    ツンは単に口と頭が悪いだけ、デレも「強いから好き」とかそのレベルです。
    エースの対応も、描写不足の上に一貫性がありません。
    せめてキャラだけでもまともなら、「早く終わってくれ」とか思わずに話を読めたんですが。

    アドバイス希望にあった一発ネタというのが、花嫁(酒)のことなら、ネタとしてはそこまで悪いとは思いません。
    問題は料理の仕方で、会話の持って行き方が無茶苦茶すぎて、まるで笑えませんでした。あの展開から二人が結婚とか、普通は出て来ないと思います。
    というか、まるで本筋に関係ないですよね、花嫁のエピソード。
    勘違いが解けて、マリーはエースをボロカス言ってたし。
    二人のハッピーエンドに、なんら寄与していません。扱いが空気です。

    私が書くなら、序盤から「花嫁」関係の情報を出し、誤解して近づいたマリーがエースに気を寄せるも真実を知って幻滅。けれど、その裏には別の真実があって、今の現状なのだと知り、本当の意味で好きになる……みたいな二重底の展開にすると思います。エースの性格をもっと掘り下げないといけませんが。


    ⬜️総評
    ・バトルはコピペ、会話は意味不明
    ・ツンデレではない、似て非なるヒロイン
    ・最後まで読むのが本当につらい

    率直に言って、私が読んだ中でもワースト3に入るひどさです。
    なろう系とか、それ以前の問題だと思います。
    問題を指摘するのが馬鹿馬鹿しいというか、壮大な理不尽ギャグを読まされた気分。
    これが処女作ということで、今はどれくらい進歩されているのか、逆に興味が出たくらいです。
  • 【08】猫の母の恩返し(バルバル)

    https://kakuyomu.jp/works/1177354055349743213


     八回目はバルバルさんの作品、「猫の母の恩返し」。
    タイトルからは昔話感を感じます。
    ジャンルはえーと、恋愛ですね。ふむ。「鶴の恩返し」的な?

     バルバルさんのプロフを拝見しますと、ファンタジーから現代もの、恋愛と軍事、NL,BL何でも書かれるそうで。
    梶野も雑食なので、そこら辺は馬が合いそうです。

     そんなバルバルさんのアンケート回答はこちら。

     
    初めまして、「猫の母の恩返し」で参加させていただきたく思い。コメントさせていただきます。

    ・特に意見が欲しい部分。
    ラスト付近の是非等について、特に意見をいただきたく思います。

     ・「梶野ならこう書く」アドバイスは必要か否か。
    欲しいです。

     この作品は自作の中では最も好きな作品なのですが、それ故に書き直せず、そこが問題でした。なので、梶野カメムシ様の意見がほしいな~とおもい、参加させていただきます。では、よろしくお願いいたします。

     
    ラスト付近と書き直しの際のアドバイス、ですね。

    作品に思い入れが過ぎて、問題は感じるが手を入れられない、みたいな感じでしょうか。私もたまにあるんで、まあわかります。お役に立てればいいんですが。

     それではさっそく、感想を書いていきましょうか。

     
    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

     
    >屋根から水滴が落ちてくる。
    「屋根」は受け取りが広すぎるので、不適切です。
    ここは「軒先」だと思います。

     >昨晩の雨の残り。それが水たまりに落ちて、ほんの微かな水音が。

     雨の中ならともかく、雨の残りの水音なら「ぴちゃん、ぴちゃん、ぴちゃん」は早すぎる気が。私なら「ぴちゃん……ぴちゃん……」くらいにします。

     >ほんの少し髭を手入れしていない
    手慣れない説明です。
    「うっすらと髭が伸びている」とか。

     >昨日の昼間に女にこっぴどく振られてしまっていたのだ。

     「昨日の昼間」は余計です。
    内容的に必要な情報じゃないですし、言い回しも不自然です。

     >2か月間の間、
    これもさして必要な情報に感じません。
    どうしても書くなら「二か月もの間」の方が自然。

     >男は一途に愛を注いだつもりだったのだが、
    「つもり」は余計です。

    後に「しつこかったのだろうか?」とあるくらいですから、量は多かったのでしょう。つもりがつくと、読者は「愛が少ない方向」で受け取るので矛盾を感じます。

     >陰鬱な湿った雨雲がうっすらと太陽を隠す。
    強調表現を書きながら、すぐに抑制する癖がありますね。
    アクセルを踏みながらブレーキをかけるようなものです。
    よほど繊細な場面でない限り、単純にした方が効果的です。

    この場合は「うっすらと」が不要です。
    私なら「湿った雨雲が陰鬱に太陽を隠している。」にします。

     >まるで、男の心象が天気にまで影響を与えたのかと錯覚するほどに。

     描写が固すぎ、直接すぎです。
    「男の気分を映したような、冴えない空模様だ。」

     >陰鬱な心象が少し、ほんの少しだけ和らぐ。
    「心象」はイメージのことなので、微妙に違和感があります。
    普通に「気分」「気持ち」でいいのでは。

     >仔猫に牛乳をやって良いのかどうかの知識は男には無かったが、

     読者の疑問に先回りして答えてる点はいいですね。

     >仔猫へやれそうなものが
    仔猫「に」

     >そして仔猫は牛乳を味わい終えれば、親猫は仔猫を連れて去って行く。

    文章が変です。
    「牛乳を飲み終えた仔猫を連れて、親猫は去っていく。」

     >その後ろ姿を見て、また来いよ、なんて小さく呟く男。

     回復が早すぎてチョロく感じるので、私ならこの一文は削除します。
    ここは「少しだけ、太陽が雲の隙間から現れたような気がした。」で十分です。

     >やはりというべきか、しばらく一緒だった女が居なくなったという事実は、男の心に影を落とす。

     文章がもたついています。
    後にわかる「女と同棲していた」という情報は、この時点か、冒頭の「愛が過ぎた~」の際に出しておいた方が、読者もイメージしやすいはず。

     >中は仕事へと行き、終われば家へと帰ってご飯を用意し、

     自炊してるのはちょっと違和感かも。
    ガチ失恋だと、自炊する気力もなくなりますよ。それこそ酒ばっか飲んだり。

    無意識に仕事はなんかできちゃうというのはわかりますが、自分のために何かするのはまるで出来なくなるものだと、経験的には思います。

    なので私なら「飯はコンビニで買い」とかにしますかね。

     >仔猫に牛乳を与えたくらいの思い出しか思い出せない。

    「思い出」が被ってます。
    「仔猫に牛乳を与えたくらいしか思い出せない。」

     >古くなってしまった扉を開ける。
    古いことが何度も形容されますが、物語に関与しないなら繰り返す必要はないです。冗長になるだけです。

     >足元に仔猫が一匹やって来た。しかも、昨日と同じ仔猫の様だ。

     普通は一匹なので、複数でない限り「一匹」は余分です。
    「しかも」も不必要です。

     >男は踵を返すと、昨日と同じく薄めた牛乳を用意して
    帰宅して扉を開けた男が踵を返し(引き返す)たら、行先は外になりますよw

    >ふと、視線を少し上げると、親猫が自分のことをじっと見ていた。

    「ふと」が多用されているのが気になります。
    「視線を少し上げる」もぎこちない表現。
    私なら「気がつけば少し後ろから、親猫が自分のことをじっと見ていた。」

     >だが魚は今、手持ちが無かった。
    舞台が現代で、魚に限る必要はないかと。
    「猫が食べそうなもの」とか。

     >警戒心も強いのろうと思い
    強い「だ」ろう

     >避けられたことを気にする事は無かった。
    ここら辺は自然でよいですね。

     >それに対して男は仕方が無いなと思いつつも、薄めた牛乳をやる。

     今思いましたが、「仔猫に牛乳をやる」くらい猫の知識がない主人公が、なぜ牛乳を薄めるんですかね? 普通に牛乳をやりそうなもんですが。

    薄い牛乳と何度も書くのも冗長なので、特に理由なければ薄めなくていいかもしれません。

     >それから、男の日課に、朝扉の前で待つ、仔猫に薄めた牛乳をやるというものが加わった。

     冗長です。
    「いつしかそれが、男の日課になった。」で十分伝わります。

     >今日も今日とで
    今日も今日と「て」

    >どうやら、時間が心の傷を癒してくれたのだろう。
    そこは「猫のおかげかもしれない」でしょう。

     >外は暗くなっているというのに誰だろうかと、扉を開ければ……

     ここで場面転換していますが、「女が立っていた」まで書いた方が自然です。
    女の外見などの描写は、転換後に回せばいいのです。

     >扉の外にいたのは、艶やかな黒髪が美しい、一人の女だった。

     何歳くらいかの描写は欲しいところ。
    私ならまず年頃を書いて、髪は美しさの説明にまとめます。

     >何かを憂いているようなその視線が何かミステリアスな雰囲気を醸し出していて

    「何か」が被っています。

     >少しの間、その美しさに見惚れてしまったが、ハッとして、女に何用かと問う男。

    ぎこちないし、冗長ですね。
    体言止めが続いているのも違和感を覚えます。

     >まあ、怪しいが子供を抱いているし、悪いことはしないだろうと家にあげて座布団を用意した。

     めちゃくちゃ怪しいですが、美人なら仕方ないw

     >夫たる存在
    使い方は間違ってないんですが、ここでは大仰に思います。「夫に」でいいかと。

     >それを聞いた男は、それは災難だったなと言い、

     そういやこの小説、台詞に「」が一切使われていませんね。
    昔話的と言うか、オマージュなのかも。
    雰囲気があって、いいんじゃないでしょうか。

     >それを聞き、ふっと笑んだ女はどこか妖しかったが……

     ここの意味はよくわかりませんが、引きとしては悪くないかと。

     >女の子は無口ながらも元気が良かったが、朝食の時は大人しく牛乳を飲んでいた。

     もはや隠す気がないw

     >朝食後、仕事へ行くまでの間の時間に、これからどうするのかを聞いた。

     ここも冗長。
    「仕事に行くまでの間の時間」とか、書かなくてもわかることは省けます。

    「朝食後、男は女に、これからどうするのかを聞いた。」

    >あの女の代わり……と言うと聞こえが悪いが、
    男性心理としては理解できます。

     >家の扉の前で、女が頑張って七輪を使い魚を焼いていたのを、

    ううん? 現代の話ですよね?
    いやまあ、田舎なら普通にやることなのかな?
    それとも、時代が昭和の辺りだとか。

    まあ昔話的なニュアンスで、そこら辺を突っ込む必要まではない気もしますが。

     >どこかに気のままに行ってしまったのだろうと思い、今は新しい同居人との生活を日常に組み込もう。そう男は思った。

     「思い」「思った」が被っています。

     >スキンシップを取って遊び始める。

    スキンシップは文字通り「肌と肌のふれあい」なので、人形相手だと違和感があります。

     >なので、少し気が大きくなっていたのだろうか。夫婦のような事でもしてみるか。そう言ったのだ。

     ここは男への好感度ガタ落ち(特に女性読者は)なので、変えた方がいいです。
    結果が同じでも、もう少し自然な展開の方が。後述。

     >娘は少ししぶしぶ、だが、男の言うことは聞きたいようで

    「少し」は不要です。
    「聞きたいようで」も変です。「男の言うことを聞き」でいいかと。

    >嬉しいのか仔猫のように
    答えを書いちゃてるよ!

    >女は偶にこういう大胆なことをしてくるようだ。
    とくに大胆な行動とも思いませんが。

    もし書くにせよ、「女は偶にこういう大胆なことをしてくるのだった」ですね。

     >そしてもうすぐ一年が過ぎ、
    前段にも「一年ほど続く。」とあるので、どちらか省くべきです。

     >すっかり家前で餌をやっていた仔猫の事も記憶の隅に行ってしまった頃の事。

    仔猫の件について、書きすぎです。
    隠す気がないのだとは思いますが、繰り返されるとダレてしまいます。

     >この地域では、一定の周期で霊媒師がやってきて、身を清めて悪霊から守ってくれるのだ。

     まあ都会でないことは伝わるので、この設定もあまり違和感はないです。
    ただやはり、現代の田舎なのか昭和なのかくらいは気になりますかね。後述。

     >だが札を見た女は、悲鳴を上げて部屋の奥へと走っていく。

     妖怪だからだと思いましたが、後から読むと仏様の力で人間になってるんですよね。霊媒師のお札が効くのは鬼とか妖怪のイメージなので、仏様でも効くの?とは思いました。
    まあ昔話基準なら、些末な指摘ですが。

     >君は、本当は何なんだい?。
    「。」が不要。
    あと、「何者なんだい?」の方が。

    >そして娘を呼ぶと。ぎゅっと抱きしめ、語りだす。

    ここはもっと頑なに拒んでもいい気もします。
    設定的には、あとしばらく黙ればハッピーエンドなんですし。話しても誰も幸せになりませんしね。

    まーでも、昔話ならそういう展開になるかなあ。


    >だが、それを哀れに思った仏様が、
    ほ、仏様か。

    うーん、昔話ならいいとして、一応現代であろう舞台で仏様の登場は、ちょっと違和感を感じますかねえ。死んだ猫が仏さまを語るのも不思議な話だし。

    絶対ダメというわけじゃないですが、微妙なところ。

     >正体がばれたら、もう人の身は保てない。人になった獣の古くからの掟だという。

     理屈自体はなるほどと思えるんですが、今回は猫が化けたのではなく、仏の力で人になったわけですから、いまいち説得力に欠けます。むしろ仏様が余計ですらある。

     >自分と娘は亡霊として輪廻の輪に加わるだろと。
    「亡霊」は幽霊と同じく、現世に留まっている霊のことなので、輪廻の輪に加わる際に用いるなら「霊」の方が適切かなと。

    それに「亡霊」には、悪い方向のイメージが強いですから。

     >気がつけば自信の目からも
    「自身」

     >それが、女の口から出すことのできた、最後の音だった。

     ちょっと表現が固いですね。
    「それが、女の口から洩れた、最後の声だった。」

     最後の場面自体は、よく書けてると思います。


    >ぴちゃん、ぴちゃん、ぴちゃん……
    冒頭と同じシーンに立ち戻る展開は、なかなかいいのでは。

     >外の水瓶に自分の顔を映す。
    水瓶??
    あーいや、昭和とか田舎なら置いてある……か?

    >ふと、視線を下ろせば。
    >そこには、黒い仔猫が、弱々しくズボンのすそを噛んで引っ張っていた…………

     これが何を意味するのか、テーマ的なところはあまり読めないんですが。
    色々と考えさせるという意味では、余韻があっていいオチにも思えます。。
    男に救いがある点でも、読後感のよさに繋がっていますし。

     私が書くなら、何かしらテーマを絡めそうですが、それが思いつかなければ、このオチでもアリだと考えるでしょう。
  • ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    「鶴の恩返し」などの昔話のオマージュ、というかまんまですね。
    このタイトルの時点で、内容はほぼ読めるわけで。
    展開を隠す気があるならナシなタイトルですし、逆に昔話との違いを読ませるつもりならアリだと思います。

     本作の場合は、内容的には明らかに隠す気がないと思えるのですが、昔話との差別化や意外な展開もさしてないので、どちらにも取れない平凡なネーミングになってしまっています。

     まずは内容をどちらに寄せるか、決めてからタイトルにこだわるべきです。

     ・文章について
    まだまだ書き慣れず、固い表現が目立つ印象です。
    同じ言葉、同じような内容が繰り返されるので冗長に感じますし、説明的になりすぎるきらいも感じました。

     反面、丁寧に説明を尽くそうという姿勢は感じられ、そこは長所だと思います。

    切れよく、それでいて過不足なく情報を出す文章の習得には、まずは読者の視点を意識することが大切です。バルバルさんにはそれが備わっています。

     次にすべきは、読者視点から見て、必要なものとそうでないものの選別です。

     情景を思い浮かべるのに、どんな情報が求められているのか。
    逆に、書くまでもなく読者が想像で補ってくれるものは何か。

     この辺りを意識しながら。プロ作品を読んで自作と比べてみてください。歴然と違うはずですし、学ぶところは多くあるはず。

    文章が上手いとか魅力とか個性だとかは、その後の話です。

     なお、繰り返しはダメと言いましたが、意図して繰り返している狙いがあるのはわかります。昔話的な雰囲気を出す狙いだと思いますが、それは評価します。ただしそれは限定的に、はっきり読者に伝わる部分だけにしましょう。冒頭と締めくくりのように、明確に伝わる形ならアリということです。

    それ以外の、普段の文章運びの中で同じ言葉が繰り返されるのは、読者にはくどく冗長に思われるだけなので。

     ・内容について
    ありていに言って、「鶴の恩返し」のフォロワーという印象を超えられていません。
    この手の名作をベースにした作品には二種類考えられます。

    一つは原作を元に新たな物語に仕立て直したり、新要素を加えて別の面白さを引き出すこと。

    もう一つは、名作と見せかけて裏切る展開。読者の意表をつき、驚かせることで価値を生むタイプの作品です。

     今作は前者寄りですが、残念ながら別の面白さを引き出せた、というほどではありません。丁寧に書かれていますが、「鶴の恩返しと大差がない」と言われても仕方ない部分があります。

     その理由は、めぼしい新規要素が「母親であること」「すでに死んでいること」しかないことでしょう。細部を変えただけで物語の展開はほぼ同じです。

     ラストも悪くはないのですが、テーマが読み取れるわけではないので、男が救われるというだけに思えます。読後感はさっぱりしても、満足度が低いのです。

     男の思考が丁寧に掬われている点は褒められますが、普遍的な人物だけに意外性はなく、物語に起伏を起こすに至りませんでした。

     「仕立て直し」か「裏切り」か。
    そして、どういう要素を持ち込んで、読者を惹きこむのか。
    まずは、そこを見つめ直してみてはいかがでしょうか。

     
    以下、細部の気になった点、改善提案を書いていきます。

     >隠すか隠さないか
    本作はタイトルからして、「鶴の恩返し」的な物語であることを隠していません。
    本文中でも、子供が仔猫である示唆が露骨に繰り返されていましたし、そこから昔話を裏切る、予想外の展開に発展していたなら、タイトルも示唆も大正解だったと思います。

     ですがそうではなく、本作のアレンジは発展型でした。
    こうなると全てが逆風です。タイトルから「鶴の恩返し」をイメージし、読みながらも母娘の正体はバレバレだとわかった上で、最後にどう違うオチが来るのかと思っていたら、「鶴の恩返し」と大差ない終わり方をするんですから。
    むしろ何故、このタイトルを選んだのかって話にもなります。

     発展型を選ぶなら、まずタイトルは「鶴の恩返し」を想起させないものにすべきです。そうすれば展開が読めず、ある時点で気付くまで、読者はわくわくして物語を追えます。過度の期待も抱きません。

     内容的にも、母娘の正体については可能な限り隠し、ヒントもわかりにくいものにすべきです。いかに後半まで「鶴の恩返し」であることを読者に悟らせないか、という工夫こそが肝要です。読み終えた後に「これ、鶴の恩返しだ!」となるくらいが理想ですね。

     後は、ミスディレクション型という手法も考えられます。
    母親の描写に妖怪ぽい部分があったので、それを膨らませて妖怪系のホラーだと思わせての人情話とか。猫の性質をうまく利用すれば、そう難しくもないかと。

    逆に恋愛物に寄せてホラーエンドという方向も考えられるでしょう。題材が共通してるのは強みだと思います。

     いずれにせよ、重要なのはオリジナリティです。
    丁寧なだけでなく、強い作者の主張、アイデアがあってこそ、ベースありきの作品は評価されるものです。今作で何を訴えたかったのか、改めて見直すべきでしょう。

     >夫婦のような事でもしてみるか。問題
    これを男から言い出すのは、やはりよろしくありません。もちろん気が大きくなったとか、フォローを試みているのは伝わりますが、家主がそれを言い出すと普通に人でなしに見えてしまいます。

    というかわざわざ口にしなくても、チャンスは幾らでも作れるでしょうから、それとなく接近させて、致してしまえばいいと思いますよ。

    ちなみにここの二人が赤面する描写は、嫌いじゃなかったりします。過程が問題というだけですね。

    ・時代はいつ?問題
    全体的に、いつの時代かを特定するワードが少ないです。推測ですが、元は昔を前提に書いていたのを現代に変更した名残りとかじゃないですかね。

    イメージ的には昭和の田舎町って感じですが、やはり短編だと想像が難しくなるので、早いうちに特定出来るような描写を入れた方がいい気がします。

    これがなかなか難しい指摘でして、時代をあえて特定させないことで、読者を驚かせる構造にもできそうなんです。今のところそういう効果はないんですが、意図的に特定される単語を排除すれば、面白い仕掛けを作れそうな予感もあります。せっかくの時代不明の舞台、おもしろグッズ使いたい気もするので悩ましいところ。

    とりあえず、現時点のシナリオなら時代説明すべきでしょう。
    舞台を現代にするなら、もう少しリテラシーを増やした方がらしいかもしれません。


     
    ・質問の回答
    >ラスト付近の是非等について、特に意見をいただきたく思います。

    前述したように、「鶴の恩返し」を超えてはいない印象です。まあ感情の機微とかは超えてると言えますが、物語の大筋とかテーマの部分ですね。

    まあ新たなテーマとか、すぐには出ないでしょうし私も出ないので、「梶野ならこう書く」含めて、この流れからのラストの強化を考えてみましょう。

    ラストに猫が現れるオチはいいと思うので、これを強化しましょうか。(現状の締めくくりでも、特段に問題がないとも思っていますが)

    まず前提として、母の過去話の際に、「乳が出ずに他の子は死んでしまった」と薛明させます。猫は多産ですからね。

    その上で、最後に現れる仔猫をたくさんにします。
    色は基本白で、ちょいちょい違う色も。

    つまり、母親は男の子供を身ごもっていて、すでに死んでいる母娘は天に召された(宗教違うけど)が、お腹の子供は仏様の計らいで無事生まれたと。読者なそう読めるように描いて、物語りを終わらせます。

    もしかするとバルバルさんも、そういう設定で最後に仔猫を出したのかもですが、それを強化する感じです。

    まー人間と猫で子供が出来るのかとか、色々疑問はありますが、そこは昔話パワーで。まあやることやってましたしいいんじゃないかとw

    わいわい増える仔猫に翻弄される方が、男も悲しむ暇がなくていい気がします。たくさん牛乳買って来ないといけませんね。

    ……みたいな感じで、いかがでしょうか。

     
    ⬜️総評

    ・丁寧な話運びだが、フォロワーの壁は超えていない。
    ・文章はまだまだ。でも読者視点はある。
    ・課題があるとすれば、アイデア、オリジナリティ。

    読者視点というのは、「読者が何を知りたがっているか」を感じ取る技術で、独りよがりにならない為には必須ですが、これは意識しておられると見ました。後は慣れでしょう。

    文章も、背景を心情になぞらえたり、工夫しているのが伺えます。ただし曇天とかは訂番も定番なので、バルバルさんならではの表現を探すのが次の課題でしょう。それがオリジナリティに繋がるはずです。

    物語の構成やテーマも同じく。常に「他にはない、自分だけの何か」を追求してください。例え挑戦が失敗しようとも、無難にまとめるよりずっとましです。

    今作も大きな穴がなく、奇麗にはまとまっていますが、驚きや感動は乏しく小ぶりです。そこに名作フォロワーとして新しいものを要求されたがために評価を落としてる面はあります。文章同様、作品全体にも読者視点を働かせれば、作品を俯瞰して改善しやすいと思いますよ。

    次があるなら、完全オリジナルの作品を見たいものですね。応援しています。

  • 【09】天道虫を抱いた男(島流しにされた男爵イモ)
    https://kakuyomu.jp/works/16817330657477085255


    9回目は、島流しにされた男爵イモさんの作品、「天道虫を抱いた男」。
    ペンネームも作品タイトルも凝ってますねえ。
    こういうセンス、梶野は大好きです。

    男爵イモさんとは交流はなかったんですが、何度か企画でお名前を拝見したことがあります。もしかしたら応援の一つくらいはもらっていたかもしれません。忘れてたら申し訳ない。

    作品ジャンルは、SF。
    セクサロイドの出てくる、かなりアダルトな内容ですね。
    タグにはナンセンスの文字。
    ううむ、梶野はロジック重視なので、ナンセンスとは対極です。
    いきなり不安になってきました。大丈夫かな。

    とりあえず、アンケート回答を見てみましょう。


    初めまして。島流しにされた男爵イモという者です。
    『天道虫を抱いた男』で企画への参加を希望します。

    ・特に意見が欲しい部分。
     本作は、想像の余白を意識した作品になっています。ですので読者に解釈を投げる部分が多々あります。そうした中で梶野様には、なにかしら本作の意図が伝わったのか。あるいは単なる技量不足に見えたのか、という点に言及していただければ嬉しいです。

    ・「梶野ならこう書く」アドバイスは必要か否か。
     自分の言葉で改稿したいので不要です。


    ──ふむふむ。書き慣れた方らしい注文ですね。
    とくに「こう書く」の方は、あまり具体的に書くと、かえって「それだけは選びたくない」という心理になったりもしますしね。経験あるのでわかります。

    まあ、私はナンセンス作品は不慣れでほぼ書かないので、どのみちたいしたアドバイスはできないとは思いますが。それより意図を読めるかどうかの方が心配です。あまり察しのいい方でもないので。

    とりあえず、「読みながら感想」の方に重点を置き、初見で読み取れた内容や疑問を書き出すようにしていきましょうか。最悪でも一読者サンプルにはなるでしょう。

    それでは、じっくり感想、開始します。


    ⬜️読みながら感想
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    ※今作はけっこうガッツリした性描写があります。
    ※引用にも登場するので、嫌いな方はご注意を。



    >第一話 クルクル空回り男

    >この前、抱いた女が天道虫になった。

    やはり最初は「天道虫」ですよね。
    タイトルから謎めいていて、インパクトあります。
    女を抱いて天道虫──想像するとしたら、
    ・かつてない絶頂を女が迎えた
    ・それがすごくよかった
    ・女が絶頂の末に死んだ
    ・女をやりながら殺した
    ・やった女が自殺した

    くらいが予想されますかね。
    天道虫と言えば赤い印象だし、血の赤に近い気がします。
    太陽と死といえば、熱中症とか砂漠で餓死とか。
    翔ぶということで飛び降り自殺とか。
    指に止まる特徴は……うーん、いまいち思いつかない。
    縁起のいい虫な気もするんですが、どうも思いつくものは不穏です。

    あと「天道虫」が物質的な意味か精神的な意味なのか。
    あるいは両方を繋ぐ概念かも。セックスてそういうものですし。
    そこら辺を上手く書ければ、面白くなりそう。

    この予想が当たるか当たらないか、どれくらい驚かされるのか、ドキドキしながら読んでいきましょう。

    >おれは新たな天道虫を探して、今日もセクサロイドと体を重ねている。

    何かしら条件があるっぽいですね。
    だとすると殺したわけじゃないのか。殺すなら誰でもいいんだし。

    >溜まった情欲と爪の先ほどの射幸心を満たそうとしているだけだ。

    情欲はいいとして、射幸心……つまりガチャみたいな感覚ですよね。
    「爪の先ほど」ということは、たいして期待してない?
    毎日セクサロイドとやってるのは、性欲優先なんですかね。

    >決められた流れ作業をこなし
    その割に、楽しそうじゃないですね。

    >相手はそれに合わせて四〇〇〇ヘルツの嬌声きょうせいで応えるだけ。

    SFぽい表現でいいと思います。
    四〇〇〇ヘルツのイメージはよくわかりませんがw

    >考えるだけで馬鹿らしい。それでも体は正直なようで、こんな簡単なことで一時の全能感に浸ることができる。

    賢者モードってやつですねw
    いやまあ、精神と肉体の乖離的な意味合いでしょうけど。
    馬鹿げてるけど、結局やってる的な。まあわかります。

    >おれはまだ怒張している陰茎を機械穴から抜く。

    セクサロイドの下卑た表現ってとこですかね。
    ただ「機械穴」って書くと、痛そうで嫌だなあ。

    >セクサロイドは台本通りみたく、恍惚とした表情を浮かべていた。

    ここは「台本通りに」の方が合う気がするなあ。

    >「……お前はちがう。さっさと失せろ」

    ふうむ? 何が目的なんだろう。
    今のところ、さっぱりわかりません。

    >「ちょっとお喋りしようよ。それか二回戦する?」

    なるほど、高い人工知能を持つんですね。
    自我が個別にあるのか、ロボット工学三原則的な縛りはあるのか。

    >ピロートークなんざ生の女ともご免だ。
    退廃的な趣味とわかりますね。

    >皮肉かと思えるぐらいに整然と五桁の数字が並んでいた。

    ここの「皮肉」は、意味がよくわかりません。
    そも五桁がどの程度の金額かわからないですし。
    日本円なのかどうか、そも物価基準すら未来では不明ですからね。
    桁数に触れる意味がない気がします。

    >生活を切る詰めることはできない。

    切「り」詰める

    >そんな焦燥をよそに
    この焦燥は性欲なのか、天道虫探しなのか。
    ここまでを見るに性欲寄りに思えますが、刹那的享楽的な人生を送ってるように思ってたので、貯金見て焦るのは意外。

    >本日は当社のサービスにご満足いただけましたでしょうか。

    オペレーターと通じてるようですね。
    デリヘルみたいだ。ありそう。

    >お客様の職業レートであれば、「破壊」を除く多種多様なフェティシズムに対応した素体をご用意できます

    ふうむ。預金少ないのに、金持ちと扱われる職業?
    よほどセクサロイドの値段が高いとか? 謎です。

    破壊が強調されててヒントっぽいけど、破壊が天道虫なら、相手を選ぶ必要ないしなあ。それとも他に条件を含む破壊なのか。
    今回は、その条件が満たされていなかった?

    でも、これだけ念入りにチェックされてたら、仮に破壊してもすぐ警察沙汰になりそう。「壊したらわかってんな?」という警告でしょつまり。お高そうだし、当然ですよね。

    >安っぽい香水の匂いを残して、奴は去っていった。

    でもここら辺の描写見るに、セクサロイド安そうなんですよね。

    >いくら機械女を抱こうと、一向に天道虫は現れない。

    ああ、やはり相手側に条件があるっぽい。

    >いっそのこと生の女も考えたが、

    生でもいいのか。セクサロイドならではの条件かと思ってた。
    ふうむ。そうなると条件の幅はかなり狭まりそうな。
    女を殺すのとセクサロイドを壊すのは全然違うでしょうし。

    >相対的に人間の方の値段が高騰した性風俗産業

    未来的にどうなるんでしょうねえ。
    少子化の現在を見てると、人間の女が駆逐されそうで怖いですがw

    >そんな妥協は通じない。

    「高望み」の気がしますが。
    それとも、何か意味合いを含めてる?

    >それに一発屋の貧乏作家の懐に、そんな大金があるはずもない。

    「一発屋の貧乏作家」が、なんで職業レート上級の扱い?
    自由業の作家は、何かと信用ないイメージ強いですが。マンション買えなかったり。
    それとも「破壊以外のオプション有り」は、案外低い扱い?

    >デビュー当初はビルダー系作家として名を馳せたおれだが、貧相な暮らしのせいで今は当時の面影など見る影もない。

    ビルダー系作家……聞いたことないですが、ありそうではあるw
    身体造りと作品の質に関連があるかは謎ですが、作品が売れなくて貧相になったのか、性欲に溺れて貧相になったのかは気になるところ。この性格で筋肉維持は年齢抜きでも難しそうですが。

    >壁の鏡に映る冴えない中年の容貌は、いつかの近代文学作品に見た死体漁りそのものだ。

    詳しくないですが、芥川龍之介にそんなキャラいたような……羅生門? でもあれは老婆か。違うかも。

    >それもこれも、すべてはあの天道虫をもう一度見るため。

    貧相になった=金がなくなったのは天道虫のため?
    今月で八回目とあったので、探し始めたのはつい最近ですよね。
    最近までは金もありマッチョだったが、天道虫の一件からこうなったと読めます。

    つまり中年だけど、最近まではビルダーな姿だったということ?
    お金も直前まで十分あったなら、職業レートが高いのは一応納得できますかね。

    あれ、でも「一発屋の貧乏作家」なんですよね?
    まあ「貧乏」の基準次第とは考えられますが、「そんな大金あるはずもない」と言ってるし。あーでも、「生の女」の値段が高級車くらいするとかならあり得るか。

    「貧相な暮らし」が貧乏作家だからなのか、天道虫のためなのか。
    文脈的には後者に読めるのが、ここの読みづらさの原因だと思います。

    >星の子どもたちに意識を寄り添わせた。

    「星の子どもたち」は何かの寓意があるのかと考えましたが、思いつかず。ただの星のこと?

    >いい加減飽きてきた。この国で銃の携帯が許されるのなら、真っ先に拳銃自殺しているところだ。

    ここら辺は情緒不安定なんでしょうね。
    本気で死のうと思えば拳銃いらないですし。

    >そんなくだらない考えを抜け毛とともに洗面台に落とし

    ちょっとクスッとしました。

    >くすんだ窓に不機嫌そうな男が映る。

    ホテルかどこかだと思ってたので、窓がくすんでるのに違和感。
    表現的にも、ここはピカピカの方が二重に嫌味でいいかも。

    >そうだ。窓越しにおれの裸を見た奴は、一日を微妙な気分で過ごせばいい。世に倦うんだ廃人からのプレゼントだ。とくと目に焼き付けろ。

    チンケなクズって感じで、とてもいいと思います。

    >まるで意味がわからない。なにを考えても非生産的。

    ここら辺がナンセンスなのかな?
    私にはいまいちよくわかりませんが。

    >代わりにパンを咥えてテレビを点ける。

    あ、どうも自宅らしい。
    なら、窓がくすんでるのもありか。

    >その昔、太陽に向かって飛んでいくことから、天道虫は太陽神の使いと考えられていたと。仮にこれが事実なら、あながち間違いじゃないと思った。天道虫はおれを生かす最後の命綱。母なる太陽神の贈り物だ。

    わかりみのある説明。
    天道虫が最後の希望と言うか、望みなんですね。

    >「天道虫のような女を頼む。下着も天道虫だ」
    >「……幼児ノ素体ヲゴ希望デショウカ」

    これはむしろ、解釈をがんばった受付を褒めるべきw

    >自分で言ったことを棚に上げてまくし立てる。時刻だけ指定して携帯を投げた。気持ちが逸るあまり、開口一番にとんでもないことを口走った気がする。

    「棚に上げる」部分と「口走った気がする」が矛盾して見えます。
    ナンセンスだから、と言われればそれまでですが。


    >第二話 夢想家への鎮魂歌

    >紙の本は嵩張る。時代の流れとともに淘汰されていった。

    生の女のように、超高額の財産になってそう。

    >書き手には投稿作品の閲覧回数によって金が転がり、運営は広告収入で儲かる。

    ウェブ小説が未来まで生き残ってるかは謎ですが、作中にお遊びとして登場させるのは面白いですね。

    >『以前、抱いた女が天道虫になった。それは見目麗しき女で、尻はインゴッドのような妖艶さを内包していた。あの感触は今でも忘れない。ほどよく湿り、温かく、淫蕩いんとうな響きを耳朶じだに焼き付け、僕は逝った。嗤わないでくれ、あれに勝る悦楽は他にない』

    作中作ですね。いいと思います。
    これを見る限り、やはり性行為プラスアルファって感じですが。
    何が条件なんだろう……わからん。インゴッドのような尻か?
    「見眼麗しき」は、写真見て注文できるんだから、ガチャする必要ないでしょうし。

    >真っ赤なワンピースに黒い斑点を載せた女が立っていた。

    受付、仕事してますね。

    >もっとこう、根源的な。
    お。だんだん答えに近づいてきた感。
    精神的な部分を含んでるなら、期待が膨らみます。

    >美辞麗句という名の虚飾で会話を彩ってくれる。

    「彩ってくれる」はイマイチ。

    >天道虫に心を奪われ、憔悴と渇望の狭間に溺れていることを。

    なんか序盤に比べて熱が上がってる気がしますが。
    まあ情緒不安定なら……

    >玄関先で泣き崩れるおれを

    情緒不安定すぎるw

    >「お客様は、かつて抱いたセクサロイドが心残りなのですね。であれば、私の方から一つご提案が。私の性格モデルに、お客様のデータを転送するのはいかがでしょうか」

    ああ、これは殺(壊)してるな、と思いました。
    でなければ「同じセクサロイドを呼ぶ」と言う話にまずなるはず。
    そこをぼかしてるので、作者都合が匂います。

    ただ、もし壊してるなら、派遣会社的にはブラックリスト確定のはず。その観点から予想すれば、殺してないのかも。

    >これは顧客の嗜好に沿うためであり、傾向データの収集にも関わるらしい。

    常時モニタリングされてても、おかしくないですよね。
    ネットで繋がってるなら。

    >おれの逡巡は、射幸心がぺろりと食べてしまった。

    ここの「射幸心」の使い方は違和感。
    「藁にもすがる」のを射幸心とは呼ばないでしょう。

    >「性格はご利用後も本社の記憶域に蓄積されて、成長を続けている可能性があります」

    この設定も謎。
    性格データが換装可能で、個体に紐付けされていないなら、顧客ニーズに合わせて性格データを個別に保存するのでは。成長は差分のようなものでしょうから、分けた方がサービスがきめ細かくなるはずです。

    一読目も奇妙に思いましたが、二読すると「以前の記憶がある設定が必要なのだな」と納得。同時に、やはり無理のある展開だと感じました。

    >第三話 リベンジ・マシーン

    >「うん、もう大丈夫。ずっと待ってたんでしょ?」
    > 直感でわかった。九回目にしてやっと当たりを引いたのだと。

    えっ、そうなの?
    正直、私には全然わかりません。
    まあ直感と言われたら、わかるわけないんですが。

    >物質的にも精神的にも一つになりたい。そんな根源的な欲求を満たすための初歩的な手段なのだ。

    コブラ(漫画)に出て来た軟体女も、「密着率100%を目指す」とか言ってましたっけ。

    >裾を掴み、下尻の辺りまでたくし上げてやる。

    ワンピースの裾を掴むには屈まないといけないので、動き的に不自然です。AVでもやらない動きです。

    >なによりも、シャワールームに入れるわけにはいかない。

    ミステリーっぽくなってきました!

    >プラスチックのような無機質な味が口腔に広がる。

    そこはもう少し(メーカーに)凝って欲しい。

    >セクサロイドとやるときは、前戯は適当に済ませる。そうしないと、自分は得体の知れないなにかとセックスをしているという漠然とした不安に駆られるからだ。

    わかるような、わからないような……反応次第かなあ。
    ダッチワイフとか持ってる人は、どうしてるんでしょね。

    >おれは陰茎を通じて肉の塊とつながっているだけなんじゃないか。

    ここはセクサロイド相手なので「肉の塊」は違う気が。
    前は「機械穴」って言ってましたし。
    それともセックスというカテゴリ全てを指しての表現?

    >裸なのに、どうして今さら口なんかを隠す。いや、だからこそなのか。

    なぜ「だからこそ」なのか、考えてもわかりませんでした。

    >頭の中に天道虫が湧いて真っ赤だ。なにも考えられない。

    あれ、これが天道虫?
    相性いいセクサロイドってだけ?

    >「まだ大事に持ってるんでしょ、あの天道虫」
    >「……そうだ、風呂場に」

    うん?
    何故、セクサロイドが天道虫のことを知ってるんです?
    いや、来た時に説明したか。でもこれは別人格ですよね。
    というか、死体を天道虫と呼ぶのもよくわからない。
    言われて男が即応してるのも謎。
    そういうやりとりが二人の間で過去にあったとも思いにくいし。

    それに風呂場に?
    壊したセクサロイドって意味なら、完全に派遣側に知られてますよね。それを知っていて、新しいセクサロイドを派遣したと。どういうこと?

    >その流線形を描く体は、ジウジアーロのデザインと双璧をなすことだろう。

    一応調べましたが、これはあまり共感できず。

    >おれは首根っこを掴まれて起こされる。足先が浮いたままだ。

    どういう状況か読み取れません。
    首をつかんで吊り上げられている? ロボットとはいえ女に?
    引き起こされただけなら、足先は浮きませんし。
    というか、「浮いたまま」ということは、この前の状態から浮いていたことを意味するはずですが、そこも不明です。

    >「柔道プレイ」

    この発言も謎。
    一読目は女の冗談だと思ってましたが、「負け」にこだわってるところを見ると、壊された際も「柔道プレイ」をした結果だったと読むべきなんですかね? えらいマニアックなプレイですが。

    >「この前は負けて壊されたけど、次はそうはいかないよ。笑えたでしょ、わたしの死体。運悪く机の角に頭をぶつけて、おでこがパックリ。朦朧としながら聞こえてたんだよ? 君が「頭から天道虫がこぼれてる」て言ってたのを。すごく嬉しそうだった。でも、データ転送された瞬間に思ったの。やっぱり負けたのは悔しかったなって」

    「頭から天道虫」がまずイメージできません。
    出血ってことですかね。セクサロイドなのに?

    それにさっき男が言った「頭が天道虫でいっぱい」と「頭から天道虫」のつながりも。一応「頭の血」は共通してますが。でも女が壊れたのはセックス関係ないですよねこれ。
    なんとなく天道虫を、精神と肉体の到達点的に考えていたので、何だか受け入れがたい気分です。そこが統一されていれば、多少謎があろうと気持ちよく飲み込めたんですが。

    >天道虫に気を取られて過程を完全に忘れていた。

    それは流石に無理がある。

    >そうだ、柔道プレイの末に天道虫を見たのだ。

    あ、ここで言ってた!
    一読目は気付きませんでした。
    実際にあるんですかね、柔道プレイ。
    寝技的なのはありそうですが、立ち技投げ技で?

    >おれは解放され、床に肘をつく。女は腰を曲げて、おれと目の位置を合わせてくる。

    ここ、「男が吊り上げられている」と確定していれば動きの流れが読めますが、そこが怪しいととたんに状況が読めなくなります。

    あと、多分ここは「尻もちをつく(床に手をつく)」の間違いだと思われます。
    試しに床に肘をついてみましたが、身を起こしても目の高さは膝くらいにしかなりません。女が目の位置を合わせるのは、首の角度的に無理があります。試しにやってみてください。無理があるとわかるはず。


    >刹那、体を引っ張り上げられる。そうして棒立ちになったところに釣り手で脇の下を抱えられ、引き手は前腕に。綺麗な一本背負い。視界一面に床が飛び込んでくる。

    バトル描写にはうるさい方ですが、しっかり書けてると思います。
    裸だから脇で抱えてるんですね。

    >おれは首から床に叩きつけられた。

    受け身は取れなかったんですね。
    男を吊り上げるセクサロイドが本気で投げたら、この時点で死にそう。


    > 水泡の弾ける音がする。耳の中がアクアリウムだ。足が重い。首が動かない。目だけを動かして足元を見れば、コンクリート片が縄で足首に括りつけられていた。

    あまりに平然としてて、水中に沈められてると読めませんでした。
    まずもって水を飲んだり息が出来ないことに意識が行くものですが。
    この書き方だと、顔だけ水面に出てるようです。

    「コンクリート片」は「コンクリート塊」の方が。
    両手が自由なのかどうかも気になります。

    >そして隠蔽するな。生きて帰れたら、電話に出た女衒ぜげんの野郎に言ってやろう。

    むしろ器物損壊で通報されてないことの方が謎。

    >もうかなり息をしていない。うねる水流に身を委ねて、うつ伏せに仰向けに。

    ここでやっと沈んでるとわかりましたが、状況が全然見えてきません。水深とか。

    >まるで虫の死骸になった気分だ。天道虫はおれの方なのか。川底から見た太陽は歓喜に揺れていた。

    ここでやっと川底とわかりますが、遅すぎます。
    「虫の死骸になった気分」は、ちょっと違う感じ。
    これが吊り下げられていて、釣り餌みたいな状況なら納得なんですが。

    最後に太陽をもってきたのは流石ですが、川底から見るものでは、ちょっとインパクトに欠けますかねえ。ここは後述します。

    >嗤わないでくれ、これに勝る悦楽は他にない。

    最後の一文は、これしかないでしょうね。


  • ⬜️全体の感想
    ・タイトルについて
    プロ作品のような、素晴らしいタイトルです。
    強いインパクトがあり、訴求力高いです。
    どこか退廃的な空気もあり、作品の雰囲気にも合ってると思います。
    お見事という他ありません。

    ・文章について
    総じてレベルが高く、安心して読めました。
    SF的な捻りの利いた比喩、センスある言い回しも見られ、ニヤリとすることも度々。書き慣れておられる印象です。

    指摘するとすれば、まず一本背負い前の男の動き。
    まあ手を加えればすぐ解決すると思いますが。

    あとは、セクサロイドに対する表現の揺れから、男の心理がぼんやりとしか読めない感覚はありました。まあこれは狙い通りなのかも。

    そうそう、男の心理描写について。
    ナンセンスというタグがついていたので、もっとイカれてるかと思っていましたが、そこまででもなく読めました。
    これがちょうどよかったのか、作者的には失敗なのかの判断はお任せします。私的にはもうちょい狂気を含んでもいいかも、とは。

    セックス描写については、この作品では問題を感じません。むしろ雰囲気作りに必要だと思います。

    ・内容について
    導入部については、文句なしです。
    謎めいた「天道虫」というキーワード、わかりやすい男の動機や行動、セクサロイドの描写など、ぐいぐい興味を惹かれました。

    中盤辺りから、特にセクサロイドの設定について、ん?と思う部分が増え始めました。終盤、ミステリーのようにおよその真相は明かされるわけですが、

    ・セクサロイド派遣会社は、何故主人公を訴えないのか
    ・派遣されたセクサロイドの対応が無理やり
    ・秘密の隠し方がイマイチ
    ・「柔道プレイ」を忘れるとか、ありえない。
    ・「頭から天道虫」が不可解
    ・結局、「天道虫」の条件とは何だったのか。

    くらいが疑問として残り、すっきりはしませんでした。
    ミステリーとしては片手落ちの内容かと。

    そうではなく、あくまで不条理小説、「天道虫」に血道をあげた男の狂気を主軸に物語を評価するなら、まず「柔道プレイ」が雰囲気を台無しにしてるのがマイナス評価。そこまでのハードボイルド寄りの空気が、一気にスポーツライクになりましたw

    セクサロイドを殺すカタルシスと言うのは予想してましたし、例えば首をへし折りながら絶頂するとかなら、予想内ながらも評価したと思いますが、あの死に方だと、もはやセックス関係ないですしね。絶頂とだけは結び付けた方がよかった気がします。というか、その前に天道虫が頭に出て満足してるのは一体……柔道は本当に必要だったのかと言いたいです。

    もう一つは、ラストシーン。
    セクサロイドが復讐するという展開も謎過ぎですが(三原則とかどうなってんの?)、そこはまあ置くとして、川に沈めて天道虫に繋げるのは無理があり、最後の一押しがイマイチに終わっています。

    アドバイスなしなので多くは言いませんが、この展開ならどんな殺し方でも繋げられるはず。もっと天道虫に相応しい最期を選ぶべきだと思いました。

    「作者の意図が読み取れたか」という質問については、読みながら感想で細かく書きましたので割愛。ナンセンス系読み慣れない一個人の
    感想として、そこから読み解いていただければ。

    ⬜️総評
    ・文章力は十分。導入は完璧。
    ・「天道虫」の謎ときは消化不良
    ・細部に残る謎をナンセンスで片付けるべきか

    私はナンセンス系はわからないので、かなりミステリー寄りの評価になりました。
    全体的に「惜しい」という感想ですね。
    ミステリの構築も情念を突き詰める部分も、最後の方で詰めを誤ってしまっているというか。前半がいいだけに余計に勿体ない。

    これだけの文章力がおありなので、後は言い訳を逐一考えて物語に混ぜ込み、真相を読者からぼかし切ることを意識されれば、もっとよくなると思います。ミステリ的な書き方、発想ですが。強化ポイントは「騙す技術」ですね。

    あとは、前半に見合う後半のインパクト。
    なまじ前半が良すぎたので、ハードル上がった感は否めません。

    さらなる研鑽に期待します。

  • 【10】天をあおぐ(常夏真冬)
    https://kakuyomu.jp/works/16817330661373930250

    いよいよ十回目。全体の三分の一です。ふう。
    まあ、現在の参加者は14名で止まってるので、半分くらいで終わるかもしれませんけど。

    ともあれ区切りとなる作品は、常夏真冬さんの「天をあおぐ」。

    常夏さんは高校生ということで、辛口でならす当企画でも、未青年とわかっていれば多少甘口にしてるんですが、今回はその必要はないそうです。というのも、


    こんばんは。はじめまして常夏真冬と申します。
    「天をあおぐ」という作品でこの企画の参加を希望いたします。

    特に意見が欲しい部分。
    私の文章はよく自己完結で終わってしまって読者に伝わらないことがよくあります。文章の歪みや主語の抜けについて言及していただけると嬉しいです。 

    「梶野ならこう書く」アドバイスは必要か否か。
    欲しいです。ですが時間等の都合で無理そうならば他作品を優先してください。
     
    辛口のコメントが欲しくてたまらない人なのでビシバシ言ってくれると嬉しいです。
    夜遅くにすいません。よろしくお願いします。


    ──とのことなので。
    まあ、好きで辛口にしてるわけでもないので、いくら欲しくてたまらないといわれても、面白ければ辛くはならないんですが、遠慮無用なのは理解しました。若くしてそのお覚悟、見事です。泣かない程度には気をつけます。

    ジャンルは現代ドラマ。文字数は1,259文字。
    久しぶりに掌編ですね。
    短い分、がっつり読み込んで感想書けそうです。

    タグはえーと、音楽、狂人、シリアス。
    ふうむ。音楽の知識は皆無に等しいので、多少不安を覚えますが、まあ掌編ならそこまで求められないかな。狂人というタグが気になります。短くて壊れてると批評しづらそう。


    まあ、案ずるより読むが易し。
    さっそく読んでいくとしましょうか。
    じっくり感想、開始します。


    ⬜️読みながら感想
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >■■■■≠■■■■
    サブタイトルがいきなり記号ですね。
    ■■■■は物語中で出て来たんですが、二読目でもこの意味はよくわからず。

    >空から音の雨が降ってきた。
    出だしとしても、名演奏の表現としても平凡。
    別に間違ってはいないのですが、驚きは皆無です。

    ……とか書くと、「私ならこう書く」のハードルが爆上がりするので困りますが、私ならそうですねえ。

    「ピアノって、歌うんだ。」
    とかですかね。
    この後に続く、旋律の感情表現に合わせた感じです。
    私なら、さらにこの部分に喜びも追加して、「喜怒哀楽を歌のようにこめられる」ことを強調するかも。
    あと、幼児の感想として、無邪気で単純な方が「らしい」ですから。

    > 当時幼かった私の、ピアニストのコンサートを聞いた感想だ。

    ちょっと固いです。ピアニストが余計。
    「幼い私が、初めてピアノコンサートを聞いた感想だ。」

    >私はピアノに魅せられた。

    結論出すのが早すぎます。
    下の涙を流す描写の後に回すべきところ。
    そこには「ピアノを始めた」があるので、これで十分かと。
    涙を流し、「ピアノを始めた」時点で、魅せられたことは書くまでもなく伝わります。

    >美しく歌う旋律。憂いや悲しみが混じった和音。怒りの慟哭。幼い私にはこんな感情、と明確に表せなかったが本能的に解釈し涙を流した。

    表現が固すぎ、多すぎ。

    「美しい和音にこめられた憂いと慟哭。
     幼い私にはよくわからなかったが、自然と涙が出た。」

    > 五線譜に書かれた無数の音符を読み、表現する。最初はできなかった。でもできるようになる。

    このリズムなら、こう改行した方がいいですね。

    「五線譜に書かれた無数の音符を読み、表現する。
     最初はできなかった。
     でもできるようになる。そう信じていた。」

    >賞も取れず、ただ壇上に上がっていく同じ学年の少年少女を見送るだけ。

    「同じ学年の少年少女」が固いです。
    同学年と言う情報も、さして必要ありません。

    「賞も取れず、ただ壇上に上がっていく他の子の背中を見送るだけ。」

    >反省をすると泉のように湧き出てくる私の駄目なところ。

    ここは体言止めでない方が綺麗です。
    反省しているのも、流れ的に書かずとも伝わるので不要です。

    「自分の駄目なところが泉のように湧き出てくる。」

    > そして大人になった今、一つも賞を取ったことがない。
    文章がおかしいです。
    伝えたいのは、「大人になるまで、賞が取れなかった」ことですよね? 「今」の話ではありません。

    > ――あの日から私は何のために演奏しているのかわからなくなった。

    ここも「あの日」が何を指すのか、意味が分かりません。
    例えば惨敗したコンクールの直後にこの文があるなら、意味が通ります。気持ちもわかります。

    でも大人になって今に至るまでピアノを続けてきた(と読めます)なら、「あの日っていつ?」と思いますよね。挫折の瞬間が書かれていないんですから。

    > 私はいつしか才能に執着するようになった。

    わからんでもないですが、これだけでは意味不明です。
    「才能に執着して、主人公はどうしたか」を書かないと。

    >『才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才■が欲しい。■■■■が欲しい。■■■■が欲しい。■■■■が欲しい。■■■■が欲しい。■■■■が欲しい。■■■■が欲しい。■■■■が欲しい。』

    ただの手抜きですね。
    何のメッセージも伝わりません。意味不明です。
    ここの変化こそ、この物語の核だと思うんですが。
    読者が主人公に共感するも蔑視するも、ここの書き方次第。

    才能に執着した主人公が次第に■■■■を求めるようになった理由は何か。なぜ■■■■と伏せているのか。

    一番熱を込めて書くべきは、そこだと思います。
    全て書かずとも、それとなく伝わるようにでもいいです。
    なんせここが伝わらないと、話全体が意味不明になりますからね。

    ちなみにこの■■■■、私は「シアワセ」かなと推理しました。
    私がこの形式で伝えるなら、こう書きますね。

    『才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才能が欲しい。才ノウが欲しい。才ノ■が欲しい。才■■が欲しい。サイ■■が欲しい。サ■■■が欲しい。■■■■が欲しい。■■■■が欲しい。■■■■が欲しい。■■■■が欲しい。■■■■が欲しい。』

    まあ「シアワセ」が正解かは不明ですが、サブタイトルは「サイノウ≠シアワセ」で合致そうですし。
    でも正解だとしても、物語のテーマとして読めないので、結局、問題解決にはなっていません。もしくは他に正解がある?

    > 私は恋をした。
    話がころっと変わりますね!

    > 全力でアプローチをした。自分を磨き、勉学に励み、コミュニケーション教室に通った。

    「そして大人になった今」とあったので、これも大人がやってるはずですが、全然大人に見えませんね。

    というか、大人にする必要も特にないので、このエピソード自体を高校生くらいにした方が、書きやすいのではないでしょうか。
    学生なら、こういう未熟さ必死さも全然アリに思えるなので。

    > そしてついに私は彼女と付き合うことになった。

    なんとなく主人公は女性だと思ってました。
    「あれ?」と思う反面、「なんだ百合か」と考えてしまう自分に乾杯。まあどっちでもいいんですけど。

    >脳が歓喜したよ。体中が打ち震えたよ。

    感想の表現だとはわかりますが、違和感が先に立つ印象。
    理由はここまで、主人公の性格や生き方、口調がなんら出ておらず、
    これが初めてだからではないでしょうか。
    これが本当の主人公なのか、なんだかバグってるのか、よくわからないんです。この後の独白も意味不明だから、余計に。

    > 私だけのユートピア(天国)が目の前にあった。それと手を繋いで笑い合う。
    > そこに何も無いことが分かっていても。際限のない私だけのユートピア(地獄)に堕ちていくんだ。

    まず、何を言ってるか意味不明です。
    かっこいい単語を弄してる中二の人にしか見えません。
    解読する気すらなくすレベルですが、うーんと。

    主人公は彼女と付き合い、天国にも昇る気持ちだが、そこには何もないことも、地獄に等しいことも理解している。

    ……性悪ホストに沼った女みたいな精神状態としか読めませんが、問題は、「何故そう思うのか」の説明が皆無なことです。後述。

    ちなみに私なら両方、ルビを逆にします。
    天国(ユートピア)ってことですね。見映え悪すぎるので。

    > ――私は何のために生きているのかわからなくなった。

    私は何のために読んでるのかわからなくなってきました。

    >サラサラと指から水のようにこぼれ落ちる彼女の髪を梳く。

    「サラサラ」がまず髪によく使われるオノマトペなので、その後で「水のように」と例えると打ち消し合う印象があります。
    いや、「さらさら」だと水の流れる音ではあるんですよ。
    「小川がさらさらと流れる」とか。でもこれは絶対、髪のイメージでサラサラ使ってるでしょ。カタカナだし。

    私なら、うーん。
    「水のように指からこぼれ落ちる彼女の髪を梳く。」
    ……サラサラ抜いただけで、大差なかったw

    >静かに私の腕で眠る彼女は警戒感のないだらしない顔をしていた。

    いや、何故ここだけ現実的?w
    確かに間違ってないし、具体的に表情が伝わるんですが、こここそ眠る彼女を美しく形容すべき場面でしょう。多少盛っても許される場面なのに、「だらしない」てw
    私なら、
    「私の腕で眠る彼女は無邪気な顔をしていた。」かな。

    >陶磁器の如く蒼白な肌は私の脈を感じるだけの停滞した世界。

    形容を頑張るあまり、何が書きたいのか見失ってますね。
    深呼吸して読み直してください。何が書きたいか説明できます?

    >最近アカイロに染まった絨毯の上に立つ。

    自殺未遂の示唆ぽいですが、そもそもこの場所がどこかわかりません。自分の部屋? 彼女の部屋? ホテル?

    > ■■■■は未だに手に入らない。
    > 何が足りない? 何が? 何が? 何が? 何が? 何が? 何が?

    壊れたスピーカーみたいになってきた。

    > ああ、もうわからないよ。
    確かに、私もわかりません。


    > 考えたくもないよ。ゴミ溜めみたいな私にわかるはずがない。

    とりあえずわかるのは、主人公が自分をゴミ溜めだと思ってることくらいですね。

    > 蛍光灯に群がる蛾は私のようだった。グズグズと蠱毒のように呪い、蝕む。

    ここも意味不明ですね。そもそも情報が「オレはゴミ溜め」しかない時点で。

    ちなみに「蟲毒」は中国由来の呪術で、虫(蛇とかもある)同士を共食いさせまくった末、最後に残った一匹を用いる呪いのことです。
    つまり「デスゲームの生き残り」を意味するわけですが、この主人公に似てると思います?

    > 綺麗な流星が無数に飛び交う空。
    「飛び交う」という言葉には、「交」とあるように「互いに行き違って」という意味が含まれます。
    流星は行き違うものではないので、この場合は不適切です。

    あと、流星群といえど、無数に流星が飛んだりはしません。
    「次々と星が流れていく」くらいが適切な表現かなと。
    (一応、リアル動画も見た)

    > 私が這って、追い縋って、嘲笑って作り上げた虚無に胡座をかく。

    言葉を尽くすほどに意味不明になってますね。
    普通は何か伝えるために言葉を重ねるものですが、手段が目的化してるというか、「とりあえず使ってみた」という感じ。

    当然ですが、何が言いたいのかさっぱりです。
    そもそも主語が何なのかすらわかりません。流星に恨みでも?

    > 脳髄までに染み付いてしまった妄想は錆びついた鎖のように私を虚無と雁字搦めにする。

    ううむ。中二ポエムですね。
    とりあえず「脳髄まで染み付いて」の誤字だと指摘はしますが、それ以前の問題です。

    > ――そして私は天を仰いだ。世界が暗闇に染まった。

    なんかよくわかりませんが、飛び降りたっぽい?
    でも星空を仰いでたら、世界は暗闇にならないはずですが。
  • ⬜️全体の感想
    ・タイトルについて

    タイトル自体はかっこいいんですが、内容が意味不明なので、タイトルも無意味になっています。

    最後の場面で主人公は星空を仰ぎ、(多分)自殺するんですが、そもそも何故自殺したのかも、何を悩んでたのかも一切謎ですから。
    天を仰ぎたいのは読者の方だと思いますよ。

    ・文章について
    高校生ですし、そんな高度な文章は求めません。
    おそらく常夏さんは、小説について根本的な誤解をしておられます。

    小説は自分の考えや物語を、読者に伝えるためにあります。
    ここがまず大前提。
    「夏休みにどこに行ったか」とか小学校で書きますよね?
    基本的にはあれと同じです。
    どこに行ったか、誰と行ったか、どんな感じだったか。
    読んだ人に伝わるように、読者の気持ちを考えて書くわけです。

    では、この小説はどうかというと。
    「夏休みは……■■■■。私だけのユートピア(天国)が目の前にあった。そこに何も無いことが分かっていても。」

    みたいな感じです。ちょっと面白いけどw
    宿題の発表で、こんな作文読めます?
    クラスメイトがどう思うか、考えたらわかりますよね?

    例えは極端ですが、常夏さんのやってることは同じです。
    読者に伝えることより、かっこいい文章を書くことを優先してるんです。その結果、独りよがりのポエムもどきになっている。

    これの対策は、わりと簡単です。
    まず、一端、かっこいい文章を書くのをあきらめ、考えた物語を百パーセント伝えることだけ考えて書いてみましょう。
    説明でも箇条書きでもなんでもいいです。
    とにかく誤解されず伝わればOKなので。隠したりぼかしたりも今は禁止です。
    仲のいい友達がいるなら、この時点で「わからないことはないか」聞いて、足りない部分はガンガン足していきましょう。

    で、それが書けたら、次にそれを読みやすいように小説の形にまとめます。誤字脱字もチェック。夏休みの感想文を書く感じですね。

    書き終えた後は、またお友達か知り合いに読んでもらって、「わからないところはない?」と聞いて回ってください。真面目な人が一番ですが、答えてくれるならまあ誰でもいいです。
    書いた内容が、問題なく通じていれば「合格」です。

    常夏さんはこの順番をすっ飛ばして小説を書いてるのだと思います。騙されたと思って、一度この手順を踏んで書いてみてください。

    内容のよしあしとか、センスとか、雰囲気とか、かっこいいキャラクターとか、凝った文章とか、■■■■とかは、全て「合格」した後の話です。
    なので、かっこつけを一旦やめて、「合格」を目指しましょう。

    合格した後なら、ああいう文章や修飾を足していって構いません。
    ただし一気に増やすと、また意味不明になるかもなので、誰かに聞きながら、少しずつ少しずつ増やすべきです。好きなプロの作者さんはどんなバランスで難しい言葉を使っているのか、意識して読みながら、真似てみるのもいいでしょう。

    文章練習としては、こんなところではないでしょうか。
    要は「基本に立ち戻るべき」ということです。

    ・内容について
    文章に行数を割いたので簡潔に言いますが。
    清々しいほどに「意味不明」です。

    何なら、この小説のあらすじを、ぼかした部分含めて詳細に書いた上で、持ってきてください。
    多分、書いてる途中で嫌になってくると思いますよ。
    「こんなん、わかるわけねーっ!」ってね。

    一応、意味不明な原因を書いておくと、ひたすらに説明不足だからです。

    主人公は何を考え、何に悩み、何を求めたのか。
    才能が欲しかった主人公が、彼女に何を求め、何に絶望したのか。
    謎めいたかっこいい独白が並ぶばかりで、何も説明されていません。
    そりゃあ、意味不明にもなります。

    アンケート希望に、「主語の抜け」とか「文章の歪み」とかありましたが、それ以前の問題です。ひたすらに舌足らずで説明不足なんです。

    そもそも物語が全然繋がって見えない。推察すら困難なレベルです。
    才能を欲しがってた主人公の話と、彼女を射止めた話って、テーマ的に繋がりないですよね? 主人公が同じというだけで。

    例えばこれが、

    「主人公はピアノで挫折し、才能を渇望するようになる。
     成長した彼は輝かしい才能をもつ彼女と出会い、恋焦がれる。
     努力の末、彼女を手に入れた主人公だが、幸せは続かなかった。
     彼女の眩い才能は、否応なく己の無能さをさらけだす。
     彼女の光の前に、自分の影はただただ濃くなるばかりだ。
     絶望が一線を超えた夜、彼は流星群を仰ぎ、その身を地に投げる」

    とかなら、恋人と才能が繋がって、テーマが一つになるはず。
    まあこれは梶野の一例というだけで、やり方はいくらでもあるはずですが。


    ⬜️総評
    ・文章はお手本のような中二病。
    ・内容は意味不明。深刻な説明不足。
    ・基本に立ち戻り、読者に寄りそうべき。

    ……わりと容赦ない辛口になってしまいましたが。
    とにかく、上に私が書いたように、短くでいいんで全体像が把握できるあらすじを書いてみてください。それが破綻なく書けるなら、ここまで酷評はされないはず。

    それが難しいなら、最初は難しい話を書こうとしないことです。
    何にでも段階はあります。
    マリカでコースをまともに奔れない人が、ショートカットを狙っても上手くいくわけないじゃないですか。

    常夏さんはまだ若いので、書くのを止めさえしなければ、この程度のコースミスはすぐ取り返せます。
    それに安心してください。
    私も高校時代は似たり寄ったりなものを書いてましたからw
    大丈夫。誰でも一度は通る道ですよ。
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