第6回 感想の読み方


前回を受けて、今回は「感想の読み方」です。

自分の作品を読んでもらい、感想をいただく。

書き手には最高の瞬間ですよね。

このために書いてるといっても過言じゃありません。


ですが、感想は毒にもなります。

読み方を間違えると、やる気を失ったり、道に迷ったりします。

プロでも心を病み、筆を折ることがあるほどです。


梶野が在籍していた大学の文芸部には、批評誌がありました。

発行は年に一度くらい。期間内の全作品を対象に、部員から感想を集めた本です。

匿名方式だったこともあり、内容は玉石混交。まさに世紀末カオスでした。

なんせ変人揃いでしたから、批評も容赦なし。

「Stardust」という小説に「タイトル通りのクズ」って感想が来たりします。

真面目な感想はごく一握り。それも曖昧なものが多い。


そういう環境で育った梶野は、否応なく感想の選別スキルを覚えました。

ほめるのが基本のカクヨムで需要があるか微妙ですが、友人相手に感想をもらう場合とかには役に立つと思います。

もちろん、私の感想を読む場合にも有効ですw


それでは、梶野流「感想の読み方」を始めましょう。


・感想にはまず感謝を

これは大前提。

感想を読む際、もっとも必要なのは前向きな受け止めポジティブシンキングです。

どんな罵倒だろうが、自分に関心が向いている時点でプラスです。

興味のない小説に、わざわざ反応しますか?

どうでもいい相手には指一本動かさないのが、普通の人間です。

内容に関係なく、感想にはまず感謝すべきです。


・罵倒は忘れる

その上で、単なる罵倒はさっさと忘れましょう。

内容のない悪口は創作を邪魔するただの雑音です。

まあ、カクヨムではまず見ませんけど。


・単純なほめ言葉も忘れる

「すごい!」とか「いいね!」だけのやつですね。

ほめられて嬉しくない人間はいません。やる気も出ます。

ただし、それだけです。

単なるほめ言葉は、実際は罵倒の次ぐらい実のない感想です。

言う方も大した熱をこめてないことが多いです。

栄養で言えば糖分みたいなもの。筋肉にはなりません。

中身のないほめ言葉は、全てくらいに思っていいくらいです。

感謝しつつも浮かれすぎぬよう、梶野は忘れることにしています。


・肯定的な感想の読み方

「ここがよかった!」的な、具体的なほめ感想ですね。

これには二種類あります。

作者の狙い通りのものと、想定外のものです。

前者なら大成功ですが、後者も悪くはありません。

思いもしない作品の魅力に気付けたりしますから。

書き手としての自分の成長にもつながる、好循環です。


・否定的な感想の読み方

今回の一番の肝ですねw

まず、誰でも感じる不愉快さを捨て去りましょう。

「良薬は口に苦し」という言葉があります。

改善のヒントをもらえたと思うべきです。感謝は大切です。


ただし、苦いからと言って良薬とは限りません。

良薬かどうかを知る一番の方法は、「図星」かどうかです。

指摘に心当たりがある時は、まず正しいと思って間違いありません。


そうではない、思いがけない指摘である場合。

私はまず、指摘を念頭に置いて、作品を読み返します。


「なるほど」と思えたら、問題ありません。

感謝とともに改善すればいいだけです。

では、「なるほど」と思えない場合は、どうするか。


「読者は何故、そう感じるに至ったのか」を徹底的に考えます。


この工程は無駄に思いがちですが、意外な発見が多い場面でもあります。

指摘した読者とやりとりしながら詰められるなら、なおよし。

作者と読者は他人です。視点も感覚も違って当然です。

どうしても折り合いがつかない場合もあるでしょう。

それを認識したうえで、どうすれば伝わるかを模索し、可能なら手を入れる。

改訂が無理でも「そういう読者もいる」と知ることは、決して無駄になりません。


感想に真摯に対応するのは大変ですが、スキルは確実に磨かれると断言します。


・感想に振り回されない

上記と矛盾しますが、これも忘れてはいけません。

作品の最終責任者は作者です。

アドバイスに従い、もし作品が壊れても、全責任は作者にあります。

自分が書きたいものを心に問い、不要なら拒否しましょう。

「せっかくのアドバイスだし」と妥協する必要は一切ありません。

感想をくれた読者には、作者の考えを丁寧に伝える。

その上で、作品を見つめ直す機会をもらえたことを感謝すれば十分です。


・読者の傾向を考慮する

これは同じ読者から、継続的に感想をもらえる場合ですね。

読者には話の好みに違いがあります。

客観的な感想をくれるならいいですが、大抵はそうではありません。

読者の傾向を知っておけば、より正しく感想を読めます。

「ラブコメ大好きなAさんがイマイチ評価だから、これは大失敗かも」

みたいな感じです。

「この人が言うならそうなんだろう」と思える相手も欲しいところです。


・常連の読者を大切にする

上記の理由からですが、まあ言うまでもないかと。

辛辣な読者でも、これは同じです。

方向が違うだけで、熱心さに違いはないのですから。

鵜呑みにする必要はないですが、感謝して耳を傾けるべきです。

いつか、大ファンに変わる日が来るかもしれません。


・返信は熱量に応じて

長文感想を書きがちな私ですが、返信が1、2行の時は感想を控えます。

「私の感想は求められてないな」と感じるので。

逆に私が感想をもらった際は、その熱に応じた返信を心がけています。

具体的には同じ文字数、同じ行数くらいですね。

一行感想には一行返信でいいと思います。

当然ながら、返信は可能な限り迅速に。

待たせるのは失礼、無視などプロ以外は論外です。



──以上、私の「感想の読み方」でした。

感想を受けての改訂については、書き手によって考えが異なるかも。

梶野は積極的に書き直す派です。ウェブ小説の利点だと思うので。


せっかくいただいた感想です。

少しでも身になるよう、じっくり読むのが書き手の努めだと考える次第です。


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