指摘

 冬木くんは私のことをどう思っているのだろう。さすがに可愛いとは思ってくれていると思うけど。

 だけど、より確実に私のことを褒めてもらうために私は友達を連れてきた。私の友達はいつも私を自然に褒めてくれる。これが狙い。

 他人に自分を褒めさせるのはウィンザー効果といい、相手の心理に影響する。

 人は本人から聞いた情報よりも、第三者から聞いた情報を信じやすい傾向にある。

 まあネットで知った付け焼刃だけど。


「本当に心愛は可愛いよね。男子もめっちゃ見てるし」

「そんなことないよー」

「謙遜は嫌味だよ。はあ、あたしも心愛みたいに可愛かったら彼氏できてるのかなー」

「私だって彼氏いないんだけど」

「理想が高すぎるんじゃない」

「正直それはあるかも」


 周囲の友達に口々に言われる。私ははっきり言って恋愛に興味はない。特定の男を彼氏にしてしまったら、それ以外の男にちょっかいを出せなくなる。私はちやほやされたいのだ。

 だから、私は彼氏を作らない。

 

「私にも好みがあるからさー。でも、やっぱり付き合うならクールな人がいいかな」

「クールな人かー。そういうのがタイプなんだ」

「そうだよ。あまりしゃべらない寡黙な人がタイプかな」


 さあ、冬木くん。これって俺のことかもと意識するがいいわ。冬木くんの方を見ると、彼は興味無さそうに文庫本に視線を落としている。むむ、手ごわい。


「本を読んだりして賢い人みたいな?」

「ええ、それってたとえば冬木くんみたいな?」


 ナイスアシスト。


「内緒♪」


 私は思わせぶりに唇に人差し指を添える。それを見た友達がぶりっことか言ってくる。

 わかっている。私はぶりっ子だ。だが、男の子はぶりっ子が嫌いじゃない。それは私の人気を見れば一目瞭然だ。


「あーあ、あたしが心愛なら男をとっかえひっかえするのになー」

「ビッチみたいに言わないで」

「むしろビッチじゃないのがおかしいのよ」

「失礼な」


 私は頬を膨らませる。わかっている。この仕草も可愛いとわかってやっている。クラスの男子たちが全員私の方を見ている。ただ一人、冬木くんを除いて。

 悔しい。ここまでアピールしてるのに、どうして彼は振り向かないのか。私のことが気にならないのか。そんなはずはない。思春期の男の子なら、可愛い女の子にドキドキするはずだ。


「ねえ、冬木くん。冬木くんはどんな女の子が好み?」

「また冬木をからかってるよ」

「俺はそういうの興味ない。てか誰でもいい」


 その答えに私は驚愕する。誰でもいいって。女なら誰でもいいってこと? それはさすがに失礼じゃない? 


「じゃあ男の子でもいいの?」

「何言ってるの。男は子供産めないでしょ」

「冬木くん、子供ほしいんだ」

「人間として生まれてきた以上、子孫を残すのは当然のことだと思う」


 てか、こいつ女の子を子供を産む機械とか思ってそう。ないわー。こいつだけは結婚したらダメなタイプだわ。

 私は内心冷や汗を流しながら、苦笑する。だが、冬木くんに話しかけると、必ず返事はしてくれる。単純接触効果が出ているのかもしれない。このまま毎日話しかければ、冬木くんの中で私の存在が大きくなっていくはずだ。


「子供は何人ぐらいほしいの」

「二人は欲しいかな」

「へえ、それはどうして」

「俺兄妹いないから。兄妹がいたほうが寂しくないと思う」


 冬木くんは一人っ子なんだ。また一つ彼のことを知ってしまった。

 それにしてもそっけない。こちらを見る様子はまったくない。照れている、というわけじゃない。女の子に興味がない。そんな感じだ。

 この男は一筋縄ではいかなそうだ。私を見れば絶対好きになるはずなのに。


「夏終わったのにまだ熱いね」


 私は手で体を扇ぎながら制服のボタンを少しだけ外す。その胸元を冬木くんが見えるようにする。冬木くんは視線を文庫本から逸らさない。なんで⁉ なんで気にならないの。本当についているのかしら。私は女として負けた気分になる。溜め息を吐きながらボタンを閉じた。

 というか私、いったい何をしているのだろうか。ボタンを開けて胸元を見せるだなんて、やっていることはビッチそのものだ。

 冷静になると途端に恥ずかしくなってくる。


「あの、男子の前で制服のボタンは外さない方がいいよ。見られるから」

「え……?」


 不意に冬木くんからそう言われて、私は驚く。

 見てるじゃん。ちゃんと私の胸元意識してたんじゃん。


「うん、ごめんね。そうするよ」


 私はそう言いながら顔を赤らめる。見られた? 見てた様子なんてなかったのに。ちゃんと気付いていた。こんな誘惑しなくても私は素の可愛さで虜にできるはずなのに。

 私は少し恥ずかしい思いをしながら溜め息を吐く。


「あのさ、そういう男を誑かす真似、やめたほうがいいよ。すっごく性悪に見えるから」

「え?」


 その言葉に私は固まる。まるで私の本性を見抜いているような、そんな言葉。私は咄嗟に何も言い返せずに誤魔化した。


「なんのことかわからないなぁ」


 そう言って誤魔化したけど、冬木くんは鼻で笑っていた。


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姫宮さんは落としたい~恋愛心理学を駆使して、絶対に落ちない鉄壁地味男子を攻略する~ オリウス @orius0

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