WHITE RECORD
Луна
第1話 転入初日って、だいたい面倒だ
転入初日というものは、どうしてこう落ち着かないのか。
校門の前で立ち止まり、俺は一度だけ深呼吸した。
別に緊張しているわけじゃない。……たぶん。
ただ、知らない場所に放り込まれるっていうのは、それだけで気力を使う。
(まあ、逃げる理由もないしな)
そう自分に言い聞かせて、学園の敷地に足を踏み入れる。
銃を背負った生徒たちが普通に歩いている光景にも、もう驚かなくなっていた。
俺がここの都市に来たばかりのときは流石に驚いた。
でも、ここではそれが“日常”なんだろう。
俺もその日常に混ざるだけだ。
俺は学園へ行き職員室で形式的な説明を受け、担任に連れられて教室へ向かう。
廊下を歩く間、視線がちらほら刺さるのを感じた。
(あー……これ、絶対あとで面倒なやつだ)
案の定、教室のドアが開いた瞬間、空気が一斉に変わる。
「転入生だ」
そんな声が聞こえた気がした。
「自己紹介を」
担任に促され、俺は教壇の前に立つ。
「黒羽アオです。よろしくお願いします」
短く、それだけ。
余計なことは言わない主義だ。
少しばかりと視線は浴びたが、席に向かうと隣の席の男子が軽く手を上げた。
「黒羽くん、だよね?」
「そうだけど」
「僕、朝凪レン。よろしく」
穏やかな笑顔。
第一印象は……悪くない。
「黒羽だ。よろしく、朝凪」
それだけで会話は終わったが、変に気を使わなくていい感じがした。
午前は座学。
正直、眠い。
(転入初日からフルコースって、もう少し優しさとかないのか)
そんなことを考えつつ、ノートは一応取る。
一応。
午後は射撃訓練だった。
訓練棟で銃を受け取り、手早く点検する。
無意識の動きだった。
「黒羽くん、銃の扱い慣れてるね」
声をかけてきたのは、さっきの朝凪だった。
「まあ、普通に」
普通ってなんだよ、と自分で思うが、突っ込まれる前に模擬戦が始まる。
俺は前に出すぎないように動いた。
初日から張り切ると、だいたい後が面倒になる。
「黒羽くん、右から来る!」
「了解」
朝凪の声に合わせて動き、敵役を制圧する。
連携は悪くない。
訓練が終わるころには、ほどよく疲れていた。
「連携、取りやすかった」
朝凪がそう言う。
「そっちの指示が分かりやすかった」
嘘じゃない。
こういうタイプは、信用できるからな。
帰り道、俺たちは並んで校舎を出た。
会話は多くないが、沈黙も気にならない。
(悪くないな)
そう思った。
転入初日。
面倒なことは多いが、どうやら最悪ではなさそうだ。
「まあ、なんとかなるか」
俺はそう呟いて、学園を見上げた。
WHITE RECORD Луна @ryu_pst
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