飛んで鬼も結ばれる

@hiyo9070

第1話 ep1

幼い頃からとある夢を見た。

果てしない空を飛ぶ夢を。


夢のことを話すと優しい母は、「燕の前世は鳥さんだったのかもしれないわね。」と微笑んでくれた。


鏡を見れば、華やかな着物に包まれた少女がいる。今日は「両家顔合わせ」の日だ。


「…飛びたいな、空。」


夢とはよく言ったもので、七五三と神社へ参るごとに燕の自由は減っていった。商家の令嬢として習い事はもちろん、朝おきてから夜ねむるまで所作や礼儀を教え込まれた。


父はよく言った。「商家の娘として、良家のご子息に相応しい人間になるように。」と。


十歳の年に母が病気で亡くなってから、父はさらに燕に厳しく接するようになった。


「…はぁぁ〜〜〜…。」


待合室に「令嬢らしからぬ」大きなため息が響いた。犯人は、燕である。


「このまま結婚したら、ほんとに終わりだぁぁ〜〜〜(泣)」


これも、燕である。なんとこれまで語った過去をもってしても燕の心底、その自由の火は消えていなかった。


消えるはずもない。


「うぅ…前世に戻りたいよ〜〜〜!」


事実、燕は前世で本当に鳥であった。渡り鳥。


はじめて夢の話を母に聞かせた日の夜に、記憶…というほどはっきりしないが(なんせ鳥だ)、本能のような感覚のようなものが燕に宿ったのである。


その混乱で翌朝に部屋の窓から飛ぼうとして植木に落っこちて、父親を大激怒させたのはいまでもはっきり覚えている。


「でも、婚約者さんだって同じ気持ちよね。」


習い事で知り合ったみなも将来の相手は「家」で決められている。それが当たり前で、恋や愛は本の中でしか実らないものだと燕も悟っていた。


コンコン


「燕お嬢様、お時間でございます。」

「ありがとう。いま行きます。」


女中の声に、燕は凛とした声で応えて部屋を出た。



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