精神の恋人
さざなみ
精神の恋人
「ごめんなさい」
そう言って、彼は私を置いていった。
彼が去ったあとの空虚に満ちたのは、
肉体という、脆く移ろいやすい物質ではない。
耳の奥にこびりついて離れない、声の残響。
眠りに落ちる瞬間に同調する、呼吸の速度。
何かを思えば、私の脳裏を先回りする、彼の思考。
私自身の脈動と重なる、彼の鼓動。
それらが私を侵食し、共鳴する時、
私は世界で一番、残酷なほど深く恋をしている。
皮膚の温もりを求めるなど、今の私にとっては、あまりに貧しい望み。
目を閉じ、孤独に震えるとき、
彼は私の深淵から私を揺さぶる。
これを幻想と呼ぶ者は、目に見えるものしか愛せない、魂の不自由な人だ。
誰にも奪われない。
死が分かつまで誰にも奪われない、いいえ、死が訪 れても誰にも奪われない、私の恋人。
精神の恋人 さざなみ @31327139
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます