「性癖を支配する」能力を手に入れて、いろんな性癖使いと死力をかけてバトルするお話。

かぐやの薬

「男」を奪って「女にする」能力


生まれた時から、あなたがそばにいた。


幼稚園の時に出会ったのだ。

つやつやの黒い髪と、まっしろな歯。公園で遊んでいるその姿は何の変てつもない、ごく普通の少年だった。


しかし、その笑顔がやけに、脳に焼き付いてしまって。

「いつかあなたと結婚する」なんてことを、決めてしまったのだった。


幼なじみの、ケイくんに。


***


目を覚ました時、急に不安な気持ちになった。

目覚ましが鳴っていなかったからだ。まさかつけ忘れか?遅刻確定演出?

私は慌てて時計を探す。幸いすぐに見つかった。


「12時……え、12時?12時ッ!?ウソ、めちゃくちゃ寝てたじゃん!?大学は…っ」


時計の針を見て、私はまぬけな悲鳴を上げる。平日の朝に起きて、12時だったなら、誰だってそういうリアクションになるだろう。

私はベッドから出ようとしたが、やっぱり布団を肩までかぶりなおした。そして芋虫みたいに丸くなる。どうせ遅刻は避けられない。今さら行ってもムダだ。

それに大学だし。まだ単位もそんなにヤバいわけじゃない。

そもそも、このベッドが心地よすぎるのが悪い。ふかふかで寝心地が良くて、まるで高級ホテルのベッドみたいで───

そこで私は、違和感に気がついた。


「あれ…これ、私のベッドじゃない…ていうか…部屋もなんか違う…どこ…?」


そこは明らかに自分の部屋ではなかった。壁紙も、天井も、綺麗すぎる。長年の私の生活が染みついた、黄ばんだ壁じゃない。あまりにも無機質な白色だ。

なぜかは分からないけど、私は息をひそめる。そしてゆっくりと周りを見渡してみた。


さっき「高級ホテルのベッドみたい」と言ったが、その例えは間違ってはいなかったと直感した。

なぜならそこは…本当にだったから。

部屋はそんなに広くない。ベッドとソファに、後はタンスがあるくらい。高級ホテルではなくビジネスホテルかもしれない。

そして見渡した時に、自分のベッドの隣を見た。見てしまった。


そこにあったのは、幼馴染ケイくんの寝顔だった。すぅすぅと寝息を立てて、気持ちよさそうに眠っている。可愛かった。彼はなぜか注射器を握りしめてる。

しかし顔よりも、そのを見て私は悲鳴を上げそうになった。


さて、ここからは少しお下品な話になるが許してほしい。R18は越えないが、R15くらいなら行くかもしれない。エッチ度は可能なかぎり下げるよう努力する。


まず、生まれたままの姿だった。しっとりと汗ばんでいて、さえぎる布はどこにもなかった。

そして私は再び声を上げそうになった。男性の裸を見たからではない。むしろ


彼の身体は、まるっきり女の子になっていた。


気づかなかったが、上半身も女の子のソレだ。なんだか見るのが気まずくなって、私はさっと目を逸らした。

言っておくけど、ケイくんは実は女の子でした、的な展開はありえない。私は彼が男だとハッキリ知っているから。

最初は見間違えかと思った。それか寝ぼけた故の幻覚か。

しかし、シーツにこもった生温かさが、それが夢でないことを物語っていた。


「………………………………」


私はしばらくフリーズしていたが、ゆっくりとシーツを元に戻した。

ケイくんを起こさないよう、慎重に。

ちょうどその時───ドアが乱暴に開けられる音がして。

若い男の声が、部屋中に響いた。


「いやぁ~待たせてごめんねェ、シオリちゃんにケイちゃん。ちょ~っとダチと揉めちゃってさぁ。どっちが先にイチャイチャするか、ってことでなぁ…へへへ……」


入ってきたのは、褐色、金髪、ピアスを網羅している男。

絵にかいたようなチャラ男だった。年は大学生くらいだろうか。

彼は私たちが入っているベッドに近づいてきた。

意外と筋肉質で、岩の塊みたいな身体。

私は本能的な恐怖を覚えて、ベッドの上で後ずさった。


「いやっ…!や、やめてっ!あなた誰!?なに!?」

「誰って……ヒドいなぁ~。合コンで一緒におしゃべりしたじゃんかぁ~。オレの事タっくんって呼んでくれただろぉ?」

「合コン…?」


またもや知らない情報が現れた。私はいつの間に合コンに参加していたのだろう。そして、いつの間にこんな下半身で思考してるみたいな男と知り合ったのだろう。

何もかもが自分の外側で進んでいて。私だけが置いてけぼりにされていた。


「まぁそう嫌がんなよ…逃げることはねーだろ、逃げることはさぁ…」


男の手が毛布を掴む。ふかふかの毛布を、彼はあっさりと引っぺがした。

しかし、彼は私たちを見たとたん───みるみるうちに目を見開いていって。怪物を見るような表情で、私を指さした。


「な、な…なっ……」



「誰だ、このォォォーーーッ!?」



私たちを見て、彼は確かにそう叫んだ。そのまま腰を抜かしてベッドの上にへたり込む。

いったい何を言われてるのか分からなかった。一瞬ケイくんのことかと思ったが違う。彼はいま女なのだから。

じゃあ…男って、つまり。


私は、おそるおそる自分の身体に目を向けた。

───

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「性癖を支配する」能力を手に入れて、いろんな性癖使いと死力をかけてバトルするお話。 かぐやの薬 @MondyFry

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