第2話 #5
寒かった。心臓の音がゆっくりと鳴っている。頬を削るような夜風が、体温をも奪い去る。冷え固まった顔。凍えきったこめかみに、温もりが宿り、なぞるように流れる涙。肌のような柔らかさを切に抱く。温かい。緩慢に零れる血のような滴は、暗い冬の夜に沈む私を抱擁する、手の温度そのものだった。止めどなく滲む涙に思いを馳せ、静けさの中、暗い夜道を、視界の真中に据える。
音もない暗い夜。月だけが見える。そして、手足に熱がこもる。芯から湧き立つ微熱は僅かだった。二月四日。遥かである。けれども確かに、それは雪解けであったと思い、天高く、月を仰ぐ。
ごみ 久保 心 @kubo_47
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