教室で女子高生4人が机囲んで駄弁るだけ

ジルコニウム

すしざんまい

4時間目と5時間目の幕間、昼休みの時間。

教室で机を囲む4人の女子。それぞれが持参した昼食を机に広げている。

その内の一人、ストレートのロングヘアー女子・風間勇美かざま いさみが藪から棒に議題を投げ掛けた。

「寿司にさ、軍艦ってあんじゃん」

「そりゃあるだろ」

「寧ろ、あることを当たり前に思っちゃいけない」

適当な相槌を打つのはお団子ヘアで明快な印象の女子・木村菜緒きむら なおと、ナチュラルボブに気だるげな眼をした女子・南原光みなはら ひかる

風間の向かいに座る、長めの前髪にスクエア眼鏡の女子・千場雀ちば すずめは控えめに頷く。

因みに、本日の4人の昼食は、風間が手作りのハムレタスサンドイッチ、南原は購買のカレーパン、木村と千場は母親の手作り弁当である。

「軍艦って海苔巻いてるじゃん。あれ、海苔以外でもっと美味いのあるんじゃね?と、思ったわけよ」

「若輩が日本の伝統文化にだいぶ喧嘩売ってるな」

「私は既に一個思い付いてるからさ、皆それぞれ一個づつ発表して優勝決めようぜ」

「暇か、私らは」

「そもそも海苔で良いんだが」

千場以外口々に風間の提案を詰るが、何だかんだ皆手を止めて考え始めた。

そして、考え込むことおよそ5秒、木村が一つの提案をする。

「いや、まず、かざまつりが発表してよ。この発表会のレベルを知りたいわ」

木村は風間のことを『かざまつり』と呼ぶ。友達になってから2日目でいきなりそう呼ばれたので、風間にも由来がよく分かっていない。

「いいけど、逆にいいの?」

「何がや」

「いや、私の考えたやつ、ぶっちゃけ"解答"なんだよ。後の人答えにくいと思うよ?さながらipponグランプリの千原ジュニアのように」

「はよ言え」

「ジュニアは解答出す側だろ」

「分かった分かった」

風間は髪をとき直し、ジェスチャーでフリップを掲げた。

「私はね………『春巻きの皮』」

「言う程か?」

「味無さそう」

「何で自信あった?」

半ば想定していた反応に、風間は片手を振って訂正を試みる。

「あーごめんごめん、『春巻きの皮』でも『揚げ春巻きの皮』の方だったわ。訂正」

「食感悪そう」

「揚げた皮ってシャリに巻けないでしょ」

「んな油っこいモン2貫と食えるか」

再び3人から批判を喰らう。風間は「うそー」と意外そうな顔だ。

「もういいよ。ウチの暖簾畳むから」

「畳むな下ろせ。大事に仕舞おうとするな」


凹む風間を横目に、南原が手を挙げた

「次、私いいか?」

「ハードルは下げておいたから胸張って突っ込めよ光」

「ハードルは飛べよ」

南原もジェスチャーでフリップにペンを走らせる。

「それ、私たちもしないといけないの?」

不安気な千場に、木村は首を横に振った。

「千場ちゃんはフリップ使わなくてもippon取れるからね」

「私ロバート秋山じゃないよ…」

南原はペンを置いて、書き終えた合図をした。

「こんな軍艦は嫌だ。どんな軍艦?」

風間が振る。

「趣旨が変わってる」

南原はフリップを掲げた。

「『生ハム』だな」

「もうあるくない?それ」

「肉フェスとかで既にやってそう」

「美味そうではある」

反応はまずまずである。

「あー、生ハムは生ハムでもこれ燻製だから」

「さっきからその後出し訂正ズルいよ」

「ネタと合わんだろ」

「巻かずにシャリの上乗せた方が良さそう」

飛び交う正論に南原は両肩をすくめた。

「そんなに言うならさ、ユーたちもっと美味そうなものを挙げられるワケ?」

「急にウザいなコイツ」


今度は、木村が手を挙げる。

「悪いが、本気でいかせてもらうよ」

「すしざんまいの社長だもんな」

「木村清じゃねーよって分かりづらいわ」

木村はフリップをジェスチャーで机に叩きつけた。

「はい、『裂けるグミ』です」

「うわ」

「木村、ここはふざけるところじゃないって」

風間と南原から口々に文句が挙がる。

「いや、聞きな聞きな?まずね、ユーたちにはアバンギャルドさが足りてないよ」

二人は自分を指差して「ミーたちに?」と首を傾げる。

「春巻きの皮とか生ハムとかさ、ちょっと逃げが入ってるよね。ほぼおかずだもん。そりゃ合うさ」

「春巻きの皮は合わんってさっき言ってただろ」

木村はスルーして続ける。

「あと『裂けるグミ』からは味のシナジーも生まれるからね?グミの甘さとネタのしょっぱさ、ほぼグリドルだから」

「そうか?」

「食感とか最悪だろ」

「いやいや、『裂けるグミ』は『裂けるグミ』でも駄菓子屋とかに売ってる長い方のやつだから」

「その後出し意味ないでしょ」

普通に駄目だった。


「じゃあもう、千場ちゃん決めてくれ」

「私ら困った時はいつも千場ちゃんなんだから」

「ええと…」

千場は困った顔でフリップに書き込むジェスチャーをし始める。

「ノリ良いよね」

「案外ね」

千場は書き込む手を止めると、汗を拭うフリをした。

「はい…決まりました」

「はい、こんな軍艦は嫌だ。どんな軍艦?」

再び風間が振り、千場がエアフリップを掲げて答える。

「『船頭が全員宮本浩次』」

まさかの、大喜利の答えの方だった。

「…確かに、その海域、船でグッチャグチャになるね」

「これは千場ちゃんのipponだわ」

「大喜利において宮本浩次は禁止カードだって話、先週したでしょ千場ちゃん」

「してねーよ」

千場は照れるように笑って頭を掻いた。

「なんかゴメン…」

「千場ちゃんは悪くないよって言いたいところだけど、千場ちゃんのせいでもう海苔の話どうでもよくなっちゃったよ」

すると、木村が手を叩いて宣言した。

「じゃあ、優勝は私が決める」

「何で?」

「飽きてきたから」

「それはそう」

「優勝、生ハムで」

「めちゃくちゃ"逃げ"じゃねぇか」



千場はチラッと教室の時計を確認する。長針は50分を指し示していた。

「っていうか、そろそろ食べ終わらないと予鈴鳴っちゃうよ」

「やば」

「はよ食べよ。かざまつり、梅干しあげる」

「サンドイッチに梅干しはアバンギャルドすぎるだろ…」





                     (終)












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