あんのないあんパン

クライングフリーマン

あんのないあんパン

 =============== フィクションです。 ============

 私は、移動販売のパン屋。

 まだ正式な申請はしていない。

 先日、『あんのないあんパン』を洒落で売り出したら、何と女子高生に大人気。

 実は、何も挟んだりしていないコッペパンだ。

 味付けはしてある。焼く時にコーンペーストを練り込む工夫をしただけだ。

 停車時間は15分。一時停止して積み下ろしをしていたとか、予備のタイヤの点検をしていたとか言い訳する為だ。

 奇跡はそれだけで終らなかった。受験勉強にいいとかいう噂が広まったからだ。

 そう言えば、もうすぐ大学受験。確か今年は1月17日。

 受験生は「げんかつぎ」が好きだ。

 どうやら『案の無い』と『案内』を引っかけた駄洒落らしい。

 洒落から始まった、洒落のパンが『おしゃれ』ということか。

 移動販売車で流している内に、危うく交通事故になりそうな状況に出くわした。

 私は、クラクションを鳴らし、トラックは急停車あいた。

 私は110番した。

 パトカーと救急車はすぐにやってきた。


 事情聴取した警察官は、奇跡的に助かった親子が私に会いたいと言っていると伝えに来た。

「どうしてくれるんですか?親子心中しようとしていたのに。」

「死にそびれてしまったわ。」

 既に、運転手から親子が飛びだしたことを警察官は聞いていた。

 私からも、親子が飛びだしたことを証言した。

「ごめんなさい。正直者が災いして、つい、110番してしまった。」


 親子は軽傷で済んだのに、叱られてしまった。

 警察官と帰ろうとして、病院の出口まで来た時、娘が追い掛けてきた。

「オジサン。もう一度話したい、って、母が。」

「では、私はこれで。」と、警察官は帰って行った。


 数ヶ月後。私は正式に移動販売の許可を保健所から貰った。

「貰ったよ。」と私は、親子、いや、妻と娘に見せた。

 娘は、受験にいい、と言いふらした高校生だった。

 そして、大学受験はしなかった。

 事故が縁で交流が始まった後、母親の懇談に折れ、私はその人を妻にした。私は初婚だった。

 人生破れかぶれになって始めた移動販売だった。

 親子も人生に絶望して心中しようとしていた。

 やぶれかぶれの理由も、絶望の理由もお互い聞かなかった。

 今は、親子3人で移動販売している。

『あんのないあんぱん』は『案内』した。

 娘はストラップを手作りした。

『交遊事故』『受験合格』のお守りを。


 ―完―


 ※移動販売の許可は、主に食品衛生法に基づく保健所の「営業許可」(調理・加工あり)または「営業届出」(調理・加工なし)が必要で、食品衛生責任者の資格も必須です。販売場所を管轄する保健所ごとに許可が必要です。

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あんのないあんパン クライングフリーマン @dansan01

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