演説草稿

墓場のユウレイ

第1話

私は、特別な人間であってはならないと考えている。

 生まれによって役割が定められ、立場によって発言の重さが変わる社会は、効率的ではあるが健全ではない。能力は血筋では測れず、責任は肩書では免除されない。誰であっても等しく誤り、等しく学び、等しく選ばれるべきだ。

 私は、上下を否定したいのではない。序列そのものを悪だとも思っていない。ただ、それが固定され、疑われず、更新されないことを問題だと言っている。

 努力が尊ばれる社会とは、努力が報われる社会ではない。努力が評価される「機会」が、誰にでも開かれている社会のことだ。

 平等とは、同じ結果を配ることではない。

 同じ出発線を保証することだ。

 特別な権利を持つ者がいるならば、それは義務と責任によって相殺されなければならない。説明できない特権は、いずれ不信に変わる。不信は分断を生み、分断は暴力を呼ぶ。私はそれを、歴史として何度も見てきた。

 だからこそ私は、制度を信じたい。個人ではなく、仕組みを。

 誰かが善人であることに賭ける社会ではなく、誰が来ても破綻しない社会を作りたい。

 私自身も例外ではない。

 もし私が、この立場にふさわしくないと判断されるなら、私は潔く退くだろう。それが平等という思想の、最低条件だからだ。

 諸君。

 私は特別ではない。

 ただの、一人の国民だ。

 ――この演説を行った首相は、即位資格を自ら放棄した、元皇族である。

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演説草稿 墓場のユウレイ @u-ray_hakaba

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