出会い 第1話 ②

二人が出会う数日前、銀は西園寺家の邸宅にいた。


「父上、お呼びでしょうか。」


軽くノックすると、戸の向こうから厳かな声が聞こえた。


「その声は銀か。入りなさい。」


「失礼いたします。」


「今日は折入って銀に話があってな。」


「話?何でしょうか。」


「儂は時期に西園寺家の当主を退こうと思っていてな。…金吾が亡くなった今、次期当主はお前しかいない。」


「ええ…まあ、そうですね。」


「銀は”昔から”文武どちらをとっても優れた才能を持っておる。だから儂の後を継いでほしいのだ。」


「昔から…?お言葉ですが、それは兄上の間違いではないですか?僕は昔も今も己が優れていると思ったことはございません。」


「まだあの兄のことを言っているのか。もう忘れなさい。今この家において大事な跡継ぎはお前だけなんだ。…まあなんだ、考えておきなさい。」


「…分かりました。失礼します。」



部屋を出た銀は大きなため息をついた。


「はぁ…なんて都合のいいことを…そう思わない?箔。」


「仰る通りです。」


「全く。昔から本当に厄介な人たちだよ。もっとも、僕もその1人なのだけど。」


「銀様は違います。私は…銀様にはとても救われてきましたから。ですから、そのようにご自身を卑下するようなことはどうか、どうかなさらないでくださいまし。」


銀が箔の頭にそっと手を置く。


「忠誠心はありがたいけど、それも程々にね?君を苦しめる要因にもなりかねない。僕はそれは耐えられないから。」


「…肝に銘じます。しかしそれは貴方もですよ、銀様。貴方が傷つくと私も…きっと生きた心地がしないので。」


「ふふ、ありがとう。」


「ところで銀様。以前から仰っている”計画”についてですが、緊急がありまして。」


箔は真剣な面持ちで話し始めた。


「何があったんだい?」


「…あの方が家をお出になられたようで、予定よりも早く、こちらへ向かっておられると。」


「なんだって?嫁ぎ先を出てきたばかりだろう。」


「ご家族に追い出されたと報告を受けております。」


「なんと…。あの村からここまではそう長くはかからない。早くても明日の朝にはこちらへ着きそうだ。明日の朝から僕は街へ出向いてみることにするよ。箔、ここの仕事を少しの間任せても大丈夫かい?」


「お任せください。…どうかお気をつけて。」


「ああ。ありがとう。必ず助け出すよ。美世を、僕達で。」


「はい。」


銀は急いで部屋に戻り身支度を済ませ、家を出た。再会の楽しみと、運命の残酷さを噛み締めながら、ゆっくりと踏み出した。



(待っててね、美世…必ず、迎えに行くから。)

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銀灰の約束 奈落 @nal_ak

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