第二話 変てこな家


4月13日 6:30

昨夜から心機一転、ハルは登校する。

母:ハルちゃん!早く起きなさい!

ハル:今日は初めてバスに乗るぞ!乗るぞ!乗るぞぉ!

とベッドから飛び起き、境内を掃除する神主の父におはようのキスをしながらバスに乗る。


バスの運転手をよく見ると、腕が4本ある。ハンドルに使う2本と、機械を動かすのに2本だろうか。

マイナスイオン漂う山道を降りて、トンネルをくぐり市街地に出る。途中で商店街横丁の入り口を横目に、祐都高校に着く。


ハル:おはようございます先生!

先生:あら、昨日はありがとう。正直あんたのこと嫌いだったけど見直したわ。お礼にこれから全学期のテストは自動的に満点にしちゃう!

ハル:そ、そうですね…。


授業中も、黒井の姿はなく…出席点はどうしてるんだろう?今日聞いてみるか。


〜放課後〜

ハルは旧校舎に行き、あの壁に張り紙があるのを見る。

ハル:「普通に透過してちょ」って…


404教室ではパソコンをカタカタいじる黒井虎子の姿が。隣には少し困った表情の一般男性「暮原」。


黒井:ふむ、この物件は確かに「います」ね。心配無用、我々が解決しましょう。怪しい除霊より信頼できますよ。

暮原:お願いします…不動産屋としても一刻も早く手放したい物件ですから…

黒井はハルの気配を察知し、一個の無線機と書類を手渡した。

黒井:ハル、今回私は登記作業で忙しい。あんたが行ってきなさい。書類に住所書いてあるから。移動はミミズタクシーを呼んだ、移動費は経費で落とすから領収書も書いて貰ってね。

ハル:まって、その前に聞きたい事が…

黒井:ノンノン、仕事は待ってくれないよ。

とハルは暮原と共に追い出された。


16:26、〜祐都市恩霊おんりょう町の或る一軒家〜


ハル:ここがいわゆる事故物件ってやつですか?

暮原:ハイ…間取りが不気味でして、駅近でベッドは備え付けでして…あ、すいません、つい商売癖が…

ハルは適当に流して家に入る。すると、強烈な突風が吹く。さらには理不尽なくらい床に鼠取りが配置。やはり霊がいる。

ハルは足で鼠取りを払いながら、間取り図を広げる。

ハル:暮原さん、変な間取りっていうのは、ここのことですか?

と、ハルが指差した箇所は、家の2階の中央にある、すごく狭くあらゆるドアも仕切りもない空間。

暮原:ハイ…非破壊検査をしたんですけど、中に怪異さんの白骨死体があることがわかったんです。今なら買い手が付かなくて激安になっておりますから、高校にも近いですし引っ越されては…あ、すいません、つい商売癖が…。

突然無線機から連絡。

黒井:ハル、着いたら早速、問題の空間から死体を運んでもってこい。

ハル:え?でもどうやって…

黒井:言っておくがこれは電話じゃないぞ。死体の壁の前に来たら無線機の底面のボタンを押せ。それじゃあ。

ハル:よし、じゃあ行きましょう暮原さん!

と、後ろを振り向く。


しかし暮原の姿はない。

ハル:あれ?どこ行った?

ハルが再び前方を見ると、何者かにより階段で2階へと引き摺られる暮原の姿。さらにどこからか声がする。

??:遊び相手が来て嬉しいな、何年振りだろう。今度は逃がさない。思う存分楽しんでやるよ。

ハルは急いで階段を登る。するといきなり段差がぱたっとツルツルの坂に早変わり、ハルは滑り落ちる。

??:この家はもう僕の身体そのもの!簡単には登らせるもんか!

今度は通電されてないはずのコンセントから火花が噴き出してハルに襲い掛かる。

ハル:あちあちあつちあつち!!

??:ヒヒヒ!そう簡単には死なないようこっちも調整してるんだよ!

ハル:くそ〜、一体どうしたら…

また無線機に連絡が入る。

黒井:ハル、もし苦戦してるなら、もう底部のボタンを押していいよ。あんたも知ってるものがあるから。

ハルは早速ボタンを押すと、無線機の中にどうやってしまったのか、御幣が出てきた。

ハル:いやいや、今更除霊なんて

と言った瞬間、御幣が階段状にパタパタと展開した。

紙で体重を支え切れるかしらと疑問に思いつつ、ハルはスロープになった階段に紙垂を架けて駆け上がる。

ハル:凄い…まあとにかく行かなきゃ!暮原さ〜ん!


16:58、〜一軒家、2階〜


紙垂の階段を登るとすぐ、暮原が頭に血を流しながら柱にくくりつけられているのを見つけた。

ハル:暮原さん…良かった、脈はある。早くこの件を解決して救急車を…

間取り図を手に死体のある空間を目指すハル。しかし行けども行けどもどこかで見たような部屋ばかり、どうやらまた罠にハマったようだ。

??:どう見ても無限ループだよな〜、タネを教えよっかな〜、どうしよっかな〜

ハルは歩き疲れ思わずしゃがむ。すると、急に身体全体がバグったようにガタガタ震え始める。

ハル:あばばばばば!!何これれれ!

ハルの身体は無限に続く壁を超高速ですり抜け続ける。

??:ちぇ!もうケツワープされちゃったよー。


気がつくとハルは密室の中で死体を抱き抱えていた。

ハル:ギャッ!!…ってこれがターゲットか…。

ハルは死体の下に何か紙切れがあることに気づいた。

紙:ここまでたどり着いた人、おめでとう。ご褒美に僕の名前を教えよう。僕は「アーロンリー」。イタズラ好きの怪異さ。昔からずっと皆んなをアッと驚かせるイタズラを考えたかった。イタズラフォーラムで募集したら、匿名で協力者が現れて、易々と釣られた僕はバカさ。おかげでここに監禁されちゃってそのまま…ってわけ。」

ハル:そう、そういう事情があったのね…

アーロンリー(虚空から):さあ、僕を連れ出してくれ。でも…ボーナスラウンドをクリアしてからだけどね!!

家中が激しく揺れて、密室の壁が破れる。埃を被っていた家具たちがワキワキと踊り出す。窓枠にピシャリとシャッターが下りる。

ハルは命を最優先に、暮原を引っ張りながら玄関まで急ぐ。

しかし玄関が急に消失!

ハル:ちょっと!いい加減にしなさい!

アーロンリー:嫌だね!

ハルは激しく御幣をぶん回して猛抗議するが何も起きず、挙句に家具たちが暮原を連れ去る。

激しくピンチなその時、御幣が壁材の隙間を抜けて刺さる。そしてメガホンの形に変形して、そこから

「ブルァァァァァァァァ!!!」と叫び声が響く。

ハル:もしかして、黒ちゃん?!

壁から黒井の声。

黒井:気安く呼んでくれて嬉しいね。いまからこの"動産"を差押えるから、頭をしっかり守れよ。

家の壁から巨大な手が突入。そのまま地面を掴み、家は基礎ごとひょいと手に持ち上げられてしまった。巨大な手はもちろん黒井のものだ。

アーロンリー:なっ、なんなんだあー??!


そのままズシンズシンと黒井はある場所に進んでゆく。大きな広場の真ん中にキャンプファイアのセット。

ハルは家に空いた穴から外を覗く。

ハル:えーー!?まさか、これごと燃やすの!?

黒井:もちろん。死体が離れたがらないならこれしかない。ほれ早く脱出しな!

ハルは隙間から脱出、黒井は家をセッティングする。

アーロンリー:ひぃ!や、やめろ!やめろぉ!

黒井:よし、ついでに燃えやすくするように中にプロパン詰めてガソリン塗るか。

アーロンリー:くそお!こんなの屈辱だ!家の中では無敵の僕が…こんな出鱈目な方法で!

黒井は耳を貸さず、マッチを投げた。


ボッカーン!!

家は大爆発し、死体は跡形もなく消えた。アーロンリーはそのまま成仏し、一件落着だ。バラけた木材が燃え盛る中、ハルは質問する。

ハル:ねえ、聞きたかったんだけど、あなた授業に参加してるの?

黒井:いや、ただ制服フェチだからわざわざ役所からウチの窓口だけ移転して学校に在籍してるだけだよ。本当は3250歳だもん。義務教育なんてとうの昔に終わらせたさ。

ハル:ええ…

黒井:ところで、暮原さんは?

ハル:あ。

黒井:あ。

ハル:やばいどうしよう、さっきの爆発で死ん…

黒井:心配無用さ。暮原は独り身だし、不動産屋での立場はただの一従業員。行方不明者として戸籍を変えとくから。

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祐都悲哀 〜正気 Not Found〜 WARATTA @Waratta

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