【外伝】宇宙(そら)の運び屋は、正月を届けます

角山 亜衣(かどやま あい)

サクラミヤ星系まで日付指定のお届けです

サクラミヤ星系:惑星サクラミヤⅢ近郊──



「この調子なら、間に合いそうね」


『はい、マスター。

 現在速度を維持した場合、到着予定は指定時刻の四十八分前です』


 あたしは、セレスティナ・エシュタール。

 AIの相棒リリスと、“貨物船レムリアス”を駆って宇宙の運び屋をやってます。


 今は日付厳守のお荷物を配送中。


「それにしても、この星系のワープ・ステーションは随分と混雑してたわね」


『そうですね。惑星サクラミヤⅢで、特別な催し物があ……、……、

 マスター、所属不明の艦船より、通信が入っています。

 音声のみ。繋ぎます』


「所属不明って……何かしら」


〔ザザ……あー、あー、聞こえるかー? そこのオンボロ貨物船。

 こちザザ……“スペース・ドンブリーズ”だ。積み荷を渡してもらおうか〕


「え? え? 何ドンブリですって?」


〔“ドンブリーズ”だ! 大人しく積み荷を渡せ!

 さもないと、飛べないようにしてから頂いてもいいんだぜ?〕


『マスター、“スペース・ドンブリーズ”とは、この星域で暴れている宙賊のようです。残虐非道。多くの貨物船が餌食になっていて、賞金が掛けられています』


「あら、それはイイわね。小遣い稼ぎしていきましょう♪

 レムリアス、バトルモードに移行!」


『了解、マスター』


 コクピット全体が沈み込み、モニターが壁に収納される。

 船体のあちこちでガンゴンズズゴゴと音がしている。変形しているのだろう。


 目の前のコンソールが開き、せり上がってきたヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着する。


『標的は三機。ビーム砲を装備しているようです』


「オッケイ♪ 軽く蹴散らすわよ! グラビティキャンセラー展開!」


 正面の敵目掛けて急加速。

 威嚇のつもりで発射されたビーム砲なら、避ける必要もない。


 敵機とすれ違いざまにミサイルを撃ち込む。

 避ける暇は与えないわよ?


『一機、大破』


「次は──」


『敵機からロックオンされました。誘導弾、来ます』


「あら、良いモノ持ってるのね。リリス、ハックしてお返ししちゃって?」


『了解、マスター。……、……、ハッキング完了。敵二番艦に“お返し”します』


 慌てて回頭してるけど、遅い遅い。


『敵二番艦、大破。三番艦、逃走開始します』


「もちろん、逃がさないわよ。

 このレムリアスが、ただの“オンボロ貨物船”なんかじゃないことを、

 教えてあげなきゃね」


 宇宙空間での感性的な常識を無視した鋭角かつ瞬発的な方向転換で敵の目の前に躍り出る。


「はい、おしまい♪」


 エネルギーを充填したビーム砲を向けて、“止まれ”の合図を送る。


〔ま、まて! 撃つな!〕


「脱出ポッドに乗って出てきなさい。あるんでしょ? ついでに荷物も頂こうかしら」


 これじゃ、どっちが宙賊かわからないわね。


「リリス、向こうで大破してる船の脱出ポッドも拾って、惑星サクラミヤⅢへ向かいましょう」


『承知しました、マスター。しかし、このままだと、お届け指定時間を超過してしまいます』


「え!? それはマズいわね。時間厳守でって言われてるもの。

 子どもたちが心待ちにしてるって──。

 えーい、宙賊はもういいわ! 急いで惑星サクラミヤⅢに向かいましょう!」



☆彡



サクラミヤ星系:惑星サクラミヤⅢ・宇宙港──



「間に合ったー」


 随分と賑やかな宇宙港だった。


 色とりどりの提灯が連なり、巨大なの上では、大きな太鼓がドンドンドドンと重低音を響かせている。


 やぐらの周囲には屋台が立ち並び、大勢の大人や子どもで賑わっている。


「いや~、時間どおりのお届け、ありがとうございます~」


 荷物の受取り人がやってきた。


「お届けの品、確かに」


 コンテナの中には、巨大な球体がひとつ納められていた。


「はい、問題ありません。報酬をお振込みいたしますね」


 受取人は手際よく電子署名を済ませる。


「随分と賑やかな港ね」


「ええ、ええ。今日は特別な日ですので。

 良ければ、運び屋さんも楽しんでいってくださいまし」


 その間に、運搬ドローンが飛来して、球体を運び上げる。

 広場の中央、上空まで運ぶと、会場はより一層活気立った。


『それでは、みなさんご一緒にカウントダウン!

 10!


 9!


 8!』


 大人も子どもも、カウントを叫びながら集まってくる。


『3!


 2!


 1!!』


 運搬ドローンが掴んでいた球体が割れて、

 中から大量の“餅”がバラまかれた。


 それと同時に、垂れ幕が──



【 祝 ★ 2026 】



 ドパパパーン☆ と打ち上がる花火!


「いや~、お陰様で、良い年明けを迎えることができました」


 大喜びで“餅”を拾い集める子どもたち。


 花火を見上げて歓声を上げる大人たち。


 宇宙港の広場は、笑顔が満ち溢れていた。


「新年早々、良い物を運ばせてもらったわ♪」



<了>



 本編の方も、応援よろしくお願いしまーす☆彡


『宇宙(そら)の運び屋は、あなたの想いを届けます』

https://kakuyomu.jp/works/822139837237150289



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