保健委員だよ!!成宮さん!!

林夕羅

【活動日記①】初めまして。成宮さん。

入学式当日である今日は『転生したら有名私立高校の生徒会室で漏らしていたのだが。』という人気作の最新巻を目覚まし代わりに読んでいた。生徒会に縁もゆかりもない僕は「こんな華やかな学校生活が送れるわけないよなぁ」とぼやきながらもこれから始まる学校生活に期待を抱いていた。

         ✴︎

自認勇者である僕の固有スキル(ただの性格)は"周りの空気を読む"というものだ。そんな可なく不可もない固有スキルが早々活躍する事となる。


 僕が入学した古川高校では一年間委員会が変わらないという謎の仕様がある。この高校を創造した人物はさぞ設定に困ったのだろう、ラノベをよく読む僕にはよーく分かる。そんな謎仕様もあり、入学式直後の委員会決めは困難を極めていた。

 

 「もう一回聞きまーす。誰か保健委員をやってくれる人はいないですか?」と僕のクラス、一年一組の担任である弓野(ゆみの)先生が周りを見渡しながら言った。

 

 この高校の保健委員は拘束時間が長いことで有名らしく、もちろん手を挙げる奴はおろか鳥の鳴き声すら無かった。ここで僕の固有スキル(ただの性格)が火を吹く…。

「き、決まらない様でしたら僕がやります。」皆が僕の方を振り向く。

「本当か!じゃあ平…嘉人(たいらよしと)君!よろしくお願いします!」まだ入学初日、僕の名前が分からないのか教卓に置いてある名簿を見ながら先生がフルネームで言った。そしてその直後、僕が転生していたら伝説の勇者の称号を貰えるのではないかと言わんばかりの拍手と歓声が周りから巻き起こる。ありがとう、僕の固有スキル(ただの性格)。

 

 そして次々とその他の委員会が決まっていき、最後に保健委員の女子枠が余っていた。僕の固有スキル(ただの性格)が無ければ男子も面倒な事になっていただろうなぁ。長くなるぞ?これは。

「あれ?他に手を挙げてない女子はいないですか?人数が足りないような…。」と先生。その一言にふと僕は気づく。そういえば隣の奴手挙げてた覚えないぞ?と。僕は隣の席に目をやった。

 

 そこにはドビュッシーもびっくらこくであろう亜麻色の綺麗な髪をした女子がスースー寝息をたてて突っ伏していた。何故僕はこんな可愛い存在に気づかなかった。しかも入学早々寝るとかすごいメンタルだなぁと思いながら起こしにかかった。

「あ、あのー。起きてください…。」そう僕が言うと亜麻色の髪を靡(なび)かせながらその子はのそりと起き上がった。うん、明らかにヒロインのビジュだ。

「お、はよ…。」と"ドビュッシーたそ"。「き、君、手挙げてなかったですよね?保健委員になっちゃいますよ?」と言うと

「保健委員で大丈夫、です…。」とドビュたそが言った。少し置いて「あ!わ!全く気が付かなかった…。成宮…向日葵(なるみやひまわり)さん。では、よろしくお願いします。」と忘れててごめんという感じで先生が言った。わかります。なぜか存在に気づかないですよね。てか成宮って言うんだね、ドビュたそ。


 そして急に現れた(様に感じるだけだが)亜麻色の髪の乙女を目の前に周りも気まずい感じで疎(まば)らに拍手がおこる。こんな地獄みたいな雰囲気でもお構いなしに今にも眠りそうな顔でコクコクと頷いていた。メンタルはやはり鋼色のようだ。

 

 こうして委員会決めはまさかの展開でヌルッと終わりを告げ、詰まりが取れたパイプのようにその後の行事はスッキリと進んだ。そして出席番号一番を理由に任命された人の気だるげな号令で記念すべき入学初日は幕を閉じた。

       

         ✴︎


 そろそろ教室の中も疎らになり始め、黒板の『ご入学おめでとうございます!』の文字も掠れ始めた頃、僕は頭をフル回転させていた。

 ドビュ、いや成宮さんがまだ寝ているのだ。いや起きるくね?普通。流石に声をかけてあげた方がいいよな?うん、おんなじ委員会だし!

「ド、成宮さん。おきてー!もう学校終わっちゃったよー」危ない…勝手にニックネームをつけて脳内再生するのはやめよう…。

少し経つとさっきとまるで同じ動作で成宮さんが体を起こす。

「お、はよ…。」さっきと同じすぎないか?まさかサイボーグ!?などと思いながら続けて声をかけた。

「帰らなくていいの?もうみんなほとんど帰っちゃったよ?」

「うん…。今日朝は送ってもらって、帰りは両親が仕事でいないから城南線?って言う電車で帰ってねって言われたんだけど…。よく分からないから寝てた。」

うんうん、そっか!だから寝てたんだ(^_^)とはならないぞ?しかも城南線は僕が通学に使う電車である。結構な都会を一両編成で爆走するとかいうヘンテコな鉄道だ。

「へ、へぇ…。だから寝てたんだね。城南線は僕も使うから一緒に帰る?」言ってしまった。色々と。普通にほぼ初対面の男子が一緒に帰る?とかキモいにも程がある。

「いいの!?よかったぁ…。ありがとう。」あれ、成宮さんの返事は意外にも良いようだ。危ない、危ない。

 

 昇降口を出ると少し冷ややかな風が、咲き誇った桜の花びらを乗せて僕らを迎えに来た。と同時に太陽光が目に入り、つい視線を横に逸らす。逸らした視界の先には長いまつ毛に雪の様に白い肌、そして宝石の様に澄んだ目が僕を可笑(おか)しそうに見つめていた。

「ふふ…。眩しいね。」成宮さんは目を細めた。頬は桜の様に紅(あか)らんでいる。絶景かな。絶景かな。僕はこの光景を一生忘れないだろう。そんな可愛さだった。


ーこれが、彼女と話した初めての日の事だ。ー


ーーー最後にーーー

初めてまして、林夕羅(はやしゆら)です。

この物語を読んでいただき、ありがとうございます。

初めて小説を投稿するので文章がおかしくなっていたりしているかと思いますが、絶対面白くしていくので暖かい目で見守ってくださると嬉しいです!

アドバイスをくれた友人にも感謝します。

是非、フォロー/いいねよろしくお願いします!

では、【活動日記②】でお会いしましょう!

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