孤独な私と血を吸えない吸血鬼は同棲してます

氷楓

第1話

夜の闇が晴れる様に朝日が昇り始める。スマホはセットしている時刻になると部屋の主に起床を促す様に鳴り始める。


「んん……」


枕元で鳴り続けているアラームを止める。布団から足を出すとひんやりとした冷たい空気が触れ、布団の中に足を引っ込める。


「青葉様。朝ですよ」


明るい声色と共に部屋の扉が開き、足音は私が寝ているベットに向かって進む。


「起きる時間ですよ。今日は火曜日なので学校に行く日です」


彼女は私の起床を促す様に体を左右に揺らす。寝たふりをして起きないようにしたいけど、彼女の場合は寝たふりをしたとしても直ぐに気づくので、私は眠いと思いながらも渋々起きる。


「おはよう。サツキさん」

「おはようございます。今日もいい天気ですよ!」


体を起こした先にいたのは両目は真紅の宝石のように真っ赤に輝き、見慣れた和服を着用している女の子。


「この時間に起きてて平気なの?」

「青葉様が起きる時間なら平気ですよ。少しだけ仮眠は取りますが」

「寝ててよかったのに」

「朝の挨拶は大事ですから」


彼女はにっこりと笑いながら口元にある牙が光る。


「それで‥‥その……お願いがありまして」

「血でしょ?」

「はい……申し訳ないのですが」

「いいよ。そういうだから」


申し訳なさそうにしている彼女に私はパジャマの袖を捲って細い二の腕を出し、彼女の白い腕が私の二の腕に触れる。


「いただきます」


彼女の口元が開かれると私の二の腕の中心部分に噛みつく。皮膚を貫通する痛みよりも吸血衝動による性的な感触が神経を伝って私の全身に届けられる。


(見たくないから見ないようにしてるんだけど……)


彼女は人間ではない。血を栄養源としている吸血鬼で、私のお世話を命じられている。


(私たちは似た物同士だから)


孤独な人生を歩んできた私と吸血行為が苦手で実家では居場所を失っていた吸血鬼の彼女。似た物同士の私たちは同棲をしながら、絶望に負けそうになりながら、この世界を生きていく。


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孤独な私と血を吸えない吸血鬼は同棲してます 氷楓 @SHAKUURAAKOO

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