第2話

 



 どうやら、私は生まれ変わってしまったらしい。

 だがしかし、俗に言う前世の記憶とやらが無い。



、、、



いや、なんで?

いやさ、転生といったら、前世の知識を使ってなんかこう、、、

ほら、凄いことしたりさ!


なぜ何も覚えていない!

このポンコツ脳ミソめ!


 前世がどんな世界だったかすら覚えてないけど、別の人間だったことは確実に覚えてる。

 は、この世界とは別の世界の、別の存在だったはずだ。


、、、はずだ。


 現在、に来てからおそらく5年目。

 やっとまともに言葉を理解できるようになり、思考もクリアになってきた。


 それだってのに、無駄に考えられるせいで自我の概念が揺らいでる。わけが分からん。


 私は私が何者なのか全くわかっていない。


一体、私は何なんだ。

何者なんだ。


「あら?どうしたの?──ちゃん。」


 壁に向かってじっと考えていると、おばさんに声をかけられた。


 このおばさんは、孤児院の院長さん。孤児院の前に捨てられていた私を、拾って育ててくれている。


「そんなに考え込んで、何か悩みでもあるの?」


 ふるふると横に首を振る。


言えるわけないだろう、前世が云々なんて。

頭のおかしい子供扱いされてしまう。


「あら、そう?」

「ねぇおばちゃん、そいつになんか構ってないでこっちで遊んでー!」


 と、クソガキ1が何やら失礼なことを言い始めた。


「そんな酷いこと言わないの。

──ちゃん、ほんとに大丈夫?」


 首を縦に振る。おばさんを巻き込む必要はない。自分のこと。


「あらそう?なら良かったわ」

「はーやーくー!」


 今度はクソガキ3が騒ぐ。

 

早くアイツらクソガキ共のところに行って、遊んであげるといい。


「はいはい、分かったわよ。

──ちゃん。何か悩みとかあったらちゃんと私に言ってね?」


 こくり、と頷く。おばさんはいつだって優しい。

 こっちの様子を再びじっと伺った後、スススとクソガキ共の方へ歩いていく。


よし、あれでクソガキ共は静かになるな。


 孤児院には、もちろん私だけが居る訳じゃない。他の孤児達も居る。

 クソガキ12345と、リエちゃん。

 私含めて、7人がこの孤児院にいることになる。あまり大きい孤児院ではないので、狭っ苦しい。


 なぜアイツらクソガキ共をクソガキと呼んでいるか?

 4〜8歳の男児共。クソガキ以外の何者か。

 何かにつけて、私やリエちゃんにダル絡みしてくる。

 いわゆる男児のイタズラ、意地悪というやつだ。子供時代を思い出して、良い気分じゃない。


いや、今も子供なんですが、そうじゃなくてね。


 まただ、頭がおかしくなりそう。

 前世の人格(?)と今の人格がごちゃごちゃになる。


「──ちゃん。

だいじょうぶ?ぐあいわるい?」


 私がううううと唸ってると、リエちゃんことリエトちゃんに声をかけられる。


相変わらず可愛い。

くりりとした黒い瞳、サラサラの銀髪ロング。

ホント可愛い。


「うん。だいじょうぶ。ぐあいわるくないよ。ありがと。」

「ほんとに?」

「うん。ほら。」


 その場で立ったり座ったり、歩いたりしてみせる。


「ん。ならよかった!」


 にぱっと笑う。


可愛い。ほんと可愛い。


 この笑顔を見るだけでも、生まれ変わって良かったと思える。

 思わずぎゅっと抱きしめてしまった。


「えー。──ちゃん。なにー。」


 反応も可愛い。


「あらあら、仲良しなのね。」


 おばさんがやって来た。クソガキ共の相手は終わったのだろうか。


「そろそろご飯にしましょ。皆待ってるわよ。」


 そう言いながらおばさんが遊び部屋の扉を開く。


もうそんな時間か。


 考え込みすぎて、あっという間に時間が過ぎていく。


「──ちゃん。いこ?」


 リエちゃんに手を引かれる。


柔らかい。

いい匂いがする。



「まあ、

そこまで気に病む必要はないか。」



「ん?なにー?」

「ううん。なんでもない。」

「?」

「それよりさ、きょうはどんなごはんだとおもう?」

「えー!うーんとね。うーんとね。パン!」


、、、そういう質問じゃないんだけど。


まあ、いいか。


 こんな可愛い存在と仲良くできるとは、生まれ変わった甲斐もあるってもんだ。



、、、?



うん。

そうかも。

リエちゃん可愛いし、なんでもいいいや。


「わたしは〈ハンバーグ〉食べたいな。」

「?なに?それ。」

「えーっとね。こう、挽肉を─」


 言いかけて止まる。



〈ハンバーグ〉?




なんだ、それ。

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転生したけど前世の記憶が無いのでとりあえず父親探しの旅に出ます。 言描き @shousetsusukisuki

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