幼馴染の風雷コンビでダンジョン配信!【風の便りに乗せて】
アオハ(ry
1章 ある日いきなりダンジョン配信
第1話 人助け
暗いダンジョンの廊下を、1組の男女が歩いている。男の髪は鈍く灰色に発色しており、女の髪は黄色に光っている。
彼らの足取りは一見軽やかだが、2人とも少し考え込むような顔をしていた。
「あのさ、
「うん、そのはず! なんだけど……やっぱり玄白も思」
「グガアアアアア!!」
瞬間、急に千日の方へオーガが飛び出してきた。身長は3mか4mほどもあり、その剛腕が千日の方へ一直線に突き出される。
「“クリティカルカレント”」
「ガッ……」
だが、その腕は千日に当たる寸前で痙攣。瞬時にオーガの全身がビクッと跳ね、オーガは消滅した。残ったのは、カランと言って落ちた綺麗な結晶だけだった。
その魔結晶をそよ風で拾いながら、玄白が言う。
「明らかに敵が強い。レベルは平均より下とはいえ、ぽんぽんオーガが湧くのは中難易度ダンジョンにしてはおかしいよ」
「んー……ダンジョンが成長してるとか? これがかなり成長しただけで、実はダンジョンもちょっとずつ強くなってる……みたいな?」
「どーだろ。今少しの間だけ強くなってる、って考えた方が、今まで誰も違和感を感じていなかった理由になるよね」
「確かに!」
玄白の考えに、千日は結構納得した。
「ま、どっちにしろ強いことに変わりはないんだから。僕らは普段高難易度を潜ってるからなんとかなるけど、他の中級者たちが危ないよね」
「そりゃそーだ。じゃ、少し急ぎめに進んでこ! 晟力大丈夫?」
「もちろん。そっちこそ、魔導が途中で切れるようなことにならないでよ?“ウインド”」
そう言うが早いか、玄白の後ろから強風が吹き――通路の遥か先へ吹き飛んだ。
これには流石の千日も少し苦笑した。
「結構ぶっ飛ばしてるねえ。よし、私も急がないと。“雷魔導”――開始」
千日も一瞬稲光を生じ……消えた。
そこに残されたのは、静寂だった。
◇
「くっ……“ウォーターバレット”!」
「グガッ……」
【デンちゃんナイスショット!】
【……なのになあ】
私が放った水の弾丸はまっすぐ飛んでいきました。しかし、オーガの体力は1割削れたかどうかってところです。
仲間も懸命に回復や斬撃を行なってくれていますが……敵が強すぎます。
なんかいつもよりレベルが高いねと言いながら進んでいったら、ボス戦でもないのに現れたオーガ7体。
一緒に襲ってきたウルフはなんとか撃退し
ましたが……それでもオーガはボス戦で単体で襲ってくるタイプの敵です。
大量のオーガと戦った経験なんて、おそらく全員ありません。
【一応ボス部屋にいるようなやつよりはレベルは低そうだけど】
【だとしても7体いるのは意味わからん】
【ほんとにここ中難易度ダンジョンなの?高難易度じゃなくて?】
私は手元のスマートウォッチに表示されているコメントに目を向けます。
なるほど、ボス部屋で戦ったことがあるやつはこれよりはレベルが高かったんですね。
私はコメントに答えるために、後ろで飛び回っているドローンカメラの方を向きました。
「視聴者の皆さん、こんなことになっていますが、確かにここは中難易度ダンジョンです。できれば、ダンジョン管理庁に連絡して、このダンジョンの報告を――」
「危ない!!」
「え」
「グガアアアアアアアア!」
急いでふり返る。
目の前に迫るオーガの斧。
視界の端の時計に映る大量の【後ろ!】というコメント。
……急いで魔法で盾でも作って防がないと。いや間に合わ
「はっ!」
全速力で魔法を出そうとした私は、その直前に目の前に現れた人影に驚きを隠せませんでした。
「ルカさん!?」
【良かったぁぁぁぁぁぁ!!】
【マジでナイスルカたん!】
【怖かったよ……】
目の前にいるのは、オーガ……の斧を剣で受け止めてくれたルリさん。
なんとか攻撃を受け流して、ついでに蹴り飛ばしてくれていました。
「すみません……ありがとうございます」
「いいよ、デンっち。役割分担でしょ?」
助けてくれたのはありがたいですが、状況は明らかに劣勢。このままではやはりジリ貧ですね……。
これでも私はこのチームのリーダー、決断をするべきは私です。
「皆さん。私が晟力全部使って敵足止めするので逃げてください」
「っ!? ……だめ! デンっちを見殺しにしたくない!」
「はは、ルリさんは優しいですね」
「何言ってるのデン! 私たちも彼女と同じ意見よ! あなたを喪ってまで生きていたいわけじゃないわ!」
「もちろん僕も……!」
ああ、私のパーティーメンバーは本当に優しくて、こんな不甲斐ないリーダーのことも、大切に思ってくれて……だからこそ、死んでほしくなくて……。
――みんなも私に思ってくれているなら……これは私のエゴですね。
私のことは忘れて、この先も生きていってほしい願いは。
それなら。
「ごめんなさい、皆さん。今までありがとうございました」
「え!? 待って!!」
私は一気にオーガの集団の方に突っ込んでいきます。
後ろから止めるような言葉も聞こえますね。
【何やってんの!?】
【囮!? 本気で!?】
【若者に命投げ出すようなことはしてほしくないのに……】
【↑じじいで草】
【絶対言ってる場合じゃない】
【お前らコメントより画面見ろ!】
「“ウォーターカレント”」
その言葉と共に私の足元から発生する水流。それを、皆さんの方へ放って入口の方へ押し流していきます。
これでよし。押し続ければ、ダンジョンの外に辿り着くはずです。
【ルリちゃんたちは来た方向に押し流して……ってことは、やっぱり】
【1人で終わらせる気なの……?】
【いやだよ俺……デンちゃんがいなくなるなんて……】
【デンちゃんがいなかったら、誰があのチームまとめられるの?】
【1人で先立たれると……取り残された方の虚無感は、膨大なんだよ? デンちゃん……私はもう、あの虚無感に浸りたくないよ……】
【デンちゃん、お願い 今からでも、水流でサーフィンして一か八か逃げて】
【コメント……ちょっとでもいいから読んで……!】
少し……名残惜しいですが、最期にメンバーの顔をしっかり見て。
…………悲しい顔にさせてしまったのは申し訳ないですね。
いや、感傷に浸るのは今じゃないです。
今はただ、皆さんのために。
「“ウォーターフロウ”」
次に出した水流は、空中に浮かぶタイプです。これを自分を中心に洗濯機のように展開して、足止めします。
オーガたちが皆さんを追わないように。
追えないように。
晟力を、絞り出して。
「ファイッ……トォォォォ!!」
「グガアアアアア!?」
具現化された巨大な渦巻き。巻き込まれるオーガたち。
ぐんぐん消えていく晟力。こんなに晟力を消費する感覚は、潜りたての頃以来ですね。
【え、何これ……すっご】
【オークをぶん回してる!?】
【でも多分これ、あいつらの三半規管くらいにしかダメージ与えられてない……】
【え、これだけの出力してて!?】
これで何とかなるのは晟力が持つ間だけ。切れたらもう動けません。
そうなったら……オーガが止めを刺しにくるのでさらに時間稼ぎができます。
「あ……晟力が……」
まあ、数分持っただけマシですね。あとは、平衡感覚フラフラの鬼どもにやられるだけです。
チームメンバーを乗せた水流は……もうほとんど入口。
良かった、役目は果たせました。
――いやでもやっぱり、しにたくなかったかもなんて
今さらですね。
もうすぐそこまで迫っています。
…………視聴者にこの後を見せるのは。
そう思い、私はカメラを手に取りました。
「皆さん……ご視聴ありがとうございました。……ここで配信を切りま――」
そう言って電源を切ろうとした瞬間。
オーガが斧を振りかぶった瞬間。
一陣の風が吹き抜けて、私は――
誰かに抱えられたような気がして。
綺麗な光が通り過ぎたような気がして。
晟力が尽きて……気を失いました。
◆◆
初投稿が大晦日って……バカですね……
というわけで、初投稿ですが、読んでいただけると幸いです!
まじで大まかにしか筋書き決めてないので、今後謎のキャラ出てくるかもしれません。
見切り発車ですが頑張っていこうと思います!
幼馴染の風雷コンビでダンジョン配信!【風の便りに乗せて】 アオハ(ry @ryakusho
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