おっぱいから始まる恋愛模様

立入禁止

おっぱいから始まる恋愛模様

 大学の講義の合間の空き時間。

 空き教室に友人と二人で次の講義までの時間を潰していると、友人が話題を振ってきた。

「おっぱい教授は、おっぱいのどういうところが好きなの?」

「えっ、なに? おっぱい教授? それ私のこと?」

「うん。あっ。ぼいんぼいん星人がよかった?」

「いや、どっちも嫌だけど……」

「そっか。じゃあ、おつぱい先生ね」

「あぁ……うん。もうなんでもいいや」

「で、おっぱいの好きなところってなに?」

「えーっとねぇ……」

 突如始まった友人のボケなのか本気なのかわからない話題を流しつつ、おっぱいの好きなところを考えていく。

「十個答えてね。よーい、スタート」

 突然始まったタイムトライアルなのかよくわからんゲームに、脳はフル回転をして答えを探し出していく。

「形状、状態、感触……」

 指を折りながら答えていく自分もどうかと思うけど。

「食感、味、ロマン、夢、希望、羨望、聖域かな。これで十個でしょ?」

「…………きもっ」

「聞いといてなんだそれ」

 せっかく答えたのに、返ってきたのは不信感のある目つきと軽蔑する言葉だった。

「味ってなんだよ」

「味は味だよ」

 本当になんだろうね、とは思うけどとりあえず出てきちゃったから言っただけで本気で思ってないよ。とは言ってみたものの目の前の友人には伝わってなさそうだった。

「なんでそんなにおっぱいが好きなの?」

「なんでって……」

 私がおっぱいを好きなことを知っているのは目の前の友人だけだった。

 目の前の友人、絢音は高校時代からの友人で元カノ達のことも知っている間柄くらいには親しい。

 惚気ける度に毎回おっぱいの話もしていたせいか、おっぱい好きという認識がついたらしいけどなんか解せぬ。

「とにかく全体的に好きなんだよねぇ。初めて人様のを触った時の衝撃といったら凄くて。絢音ならわかるでしょ」

「全然わからん。触ったことないし」

「そうなの?」

「そうだよ」

 絢音とは高校一年からの仲だし、綾音にも彼女がいた期間もあったわけで。

「…………」

「えっ、なに?」

「じゃあ、触ってみる?」

「えっ、いいの?」

「いいけど、絢音のも触らして」

「は? きもっ……」

 心外。うそ。その通りだと思う。けど、絢音になら触られても問題ないし、絢音のおっぱいも触りたいと思っているのも事実だ。

「私のは小さいし、触っても面白くないよ」

「ちっぱいも好きだから問題ないけど」

 ちらり、と胸元を見ると両腕で隠されてしまった。

「ある人はいいよね」

「いや、私はBだし。同じくらいでしょ?」

「私はAだし」

「変わんないじゃん」

「変わるわ。手のひらに収まるかゆとりがあるかの違いでもあるわ」

「あ、うん。なんかごめん」

「よくないけど許してあげる」

「ありがとう」

 なんでこうなった。そうだそうだ、元はと言えば絢音がおっぱいの話を振ってきたからで。なんか理不尽な感じがするけど、絢音相手ならしょうがない。

「あのさ、私のおっぱいを触るなら恋人にならないと無理だよ」

「じゃあ恋人になる」

「えっ?」

「恋人になるって言った」

「それは聞こえた。志織は私のことが好きなの?」

「好きだよ」

「は?」

「好きだよ」

「あ、うん。聞こえてるから」

 さっきからなんなんだろうか。聞かれてるから答えてるだけなのに、絢音の反応が少し悪い気がする。

「怒ってるの?」

「怒ってはないけど、志織の態度がサッパリしすぎててなんか感情が追いつかなくて」

「自分から聞いてきたのに?」

「あぁ、うん。それはそう。ごめん」

「いいよ。それで、絢音は私のことが好きなの?」

「えっ?」

 私だけ好きだったら悲しい。恋人になれば触らせてくれるなら、お互いの気持ちの確認が必要だろう。

 おっぱい目当てでは決してない。

 絢音のことは高校の時から好きだった。関係を崩したくないし友達のままでいた方がいいかなと思ったから告白しなかっただけで、付き合えるチャンスがあるなら掴みたいと思うのは自然だと思う。

「まぁ、好きだけど」

「だけど?」

「軽すぎて本当に好きなのか疑わしい」

「えぇぇぇぇぇ……。じゃあどうすればいいの?」

「じゃあ、私の好きなところ十個言ってみて。よーいスタート」

「えっ、あ、ちょっ……。性格、顔、身体、優しい、気遣い屋さん、クールそうに見えて熱血なところ、ちっぱい、私と友達でいてくれる、警戒心が猫、全部好き。言った、十個言ったもんね」

「あ、うん。なんかところどころツッコミどころがあったけど、なんかありがとう」

「いえいえ。それで?」

「付き合うかどうかね。浮気しないならいいよ」

「しないよ。というか過去にもしたことないし」

 過去に二人ほど付き合ったけど浮気が原因で別れたわけではない。進路の違いと価値観の違いだったというので別れただけ。

「私のことつまんなくても?」

「しないし。絢音は面白いでしょ。なに、誰かに言われたの?」

「…………前に付き合ってた人」

 あぁ、あの先輩か。陽キャで交友関係も広そうだったし、いい噂は聞かなかったからなぁ。

「絢音の魅力がわからないなんてうんこだね。それなら私が付き合いたかったわ」

「あの時、志織は後輩ちゃんと付き合ってたじゃん」

「うん。だって絢音に恋人がいたからね」

「えっ?」

「ん?」

「どういうこと?」

「絢音のことが好きだったけど付き合うのは無理そうだし、その時に告白してくれた後輩ちゃんは他に好きな人がいてもいいって言ったから付き合ってただけだよ」

「クズじゃん」

「えー、後輩ちゃんはそれでいいって言ってたし。まぁ、最終的にはやっぱり辛いですって言われてフラれちゃったけど」

「志織の場合は、告白されるのにフラれるパターンばっかりだよね」

「ねー、みんな幻滅するんじゃない」

「おっぱい教授だから?」

「そう、それそれ」

 おっぱいが好きなのはしょうがないじゃん。

「じゃあ、付き合ってみるかなー」

「いいの?」

「いいよ。先におっぱい触らせて。私、付き合ってたけどそういうの拒否してたから触ったことも触らせたこともないんだよね」

「へぇ……」

 平静を装いつつも内心はガッツポーズだった。と同時に私も初めては絢音にとっておけばなと罪悪感が湧いてしまったけどこればっかりはどうにもならない。

「どうぞ」

「…………触るからね」

「だからどうぞって」

「…………」

「早く触ってよ」

 触ると言いながら綾音は動かない。

 それを見かねて綾音の手を掴み胸に押し当てた。

「ぅわ、ぁ……」

 今日のブラはノンワイヤーのもので生地も伸縮性のあるやつだから、触っても比較的に柔らかく感じてもらえるはず。

「揉んでみる? 感動するよ」

「いや、触っただけで結構な感動なんだけど」

 この反応から本当に人のを触ったことがないとわかった。

 日常生活でおっぱいを触る機会なんてないのは当たり前だけど。

「っ、んぁ……ごめん」

「こっちこそ揉みすぎてごめん」

 綾音の指が私のてっぺんを刺激して変な声が出てしまった。恥ずかしいし微妙な空気になってしまったしで居た堪れない。

「…………私のも触る?」

「あ、うん」

 微妙な空気のまま綾音のおっぱいを触ることになるなんて、さっきまで予想していた展開じゃない。本来ならもっと爽やかな空気感で触りたかった。

 …………このまま本当に触っていいのか。

 そりゃあ触るけど。触りたいから触るけど。ずっと夢に見ていた綾音のおっぱいだから触るけど。

「じゃあ、触るね」

「いいよ」

「………………」

 生唾を飲み込んだ音が聞こえてませんように、と願いながらおっぱいに触れると、ふにゅり、とした感触に指先から衝撃が走った。

 好きな人のおっぱいというだけで高鳴る鼓動。

 優しく包み込むように触っていくと、目の前の綾音はというと……。

「なんで笑ってんの?」

「なんか、くすぐったくて……ふふっ」

 くすぐったくなるのもわかる。恥じらいながら笑う仕草も可愛いけど、なんかそうじゃない感もあるわけで。

 でも、さっきまでの微妙な空気は綾音が笑ったことによって離散されていった。

「綾音もおっぱいのこと好きになった?」

「ならんし」

 即答で否定された。さっきまで楽しそうに私のを揉んでたくせに、とは言わなかった自分偉い。

「好きにはならないけど、志織のおっぱいは気持ちいいなと思ったよ」

「お、おう。ありがとね」

 自分だけが特別、という近しい言動に照れてしまった。

「…………味については保証できないけど」

「んぇ?」

 突然のブっ込んた発言に綾音の顔を見て固まってしまう。

「だって、味も好きなところなんでしょ?」

「そ、うだけど……」

 前から好きだったけど、ほぼ勢いのようなもので始まった関係だけにゆっくりと進めていこうとしたのに。

「……いいの?」

 綾音の気が変わらないうちにテイスティングしてみたいのはある。下心丸出しな自分が気持ち悪いとは思うけどしょうがない。綾音には今更だろう。

「だめー」

「えぇぇぇぇ……なんだよぉ」

「あはは、そんなに落ち込まんでもいいじゃん。ゆくゆくはってことで。まずはデートとかたくさんしよ」

 上半身を机の上に倒してると、不意に手を掴まれて恋人繋ぎをしてきて胸がときめいた。

「なんか、志織と恋人とか嬉しいけど照れるね」

 照れながら笑っている綾音を見て、キュン死するかと思ったくらいだ。

「今日からよろしくね」

「こちらこそ」

 こうしておっぱいから始まったお付き合いは、今日から始まっていくという嬉しさに繋いだ手に少しだけ力を入れて私からも握り返した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おっぱいから始まる恋愛模様 立入禁止 @tachi_ri_kinshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ