割る事の出来なかった卵殻
- ★★★ Excellent!!!
和の雰囲気漂うけれども、決して概念には
囚われない怪異譚の様な寓話。
鳥の様な、しかも白色レグホンの様な
生き方を強いられて来た主人公。
十六の歳に、初めて無精卵を産んで漸く
一人前と認められる彼女は、次なる
ステージ、有精卵を産み育てる事を周囲に
期待される。
まだ小さな雛の頃の淡い恋心を持った
人間の青年には重い病に臥す、同じく
人間の恋人がいた。
叶わぬ想いを叶えるべく、彼女は
と或る 申し出 をする。
これはある意味、異類婚姻の悲劇を描くが
それは単に、別の生物だからというだけに
留まらない。愛する青年を得たいと想う
彼女は、心の中に小さな棘を残しながら
それでもまんまと想いを遂げるが ──。
硬い殻を創り出してしまったのは、異形と
人間だから、という事ではない。
ラストの比翼の鳥の覚束ない羽ばたきに
あなたは何を思うだろうか。