SSR確定転生のはずが、王女はすり抜け地獄でした~サポセン頼みの第二王女、生後0日で暗殺されかける ~

ななな

第1話 すりぬけSSR王女様転生

死んだ。


正確には、机に突っ伏してそのまま戻らなかった。

俺の視界は真っ白になって、最後に聞こえたのは、上司の「悪いけど、あとこれだけ」だった気がする。


ここまではいい、よくないが。


目を開けたら、白い部屋だった。

床も壁も天井も、全部「白」。どこまでも白。

よくある転生部屋ってやつか?


「はい、お疲れさま」


声の方を見ると、そこに女神がいた。

名札に女神とある。

神々しいというより、妙に現実的な顔。

スーツを着てないのが不思議なくらい。


「え、俺、死んだ?」


「はい。過労死。テンプレ」


テンプレって言った。女神が。

俺は思わず眉間を押さえる。


「じゃあ、転生の希望とか、チートとか、世界観とか、そういう…」


「それ、廃止したの」


女神は淡々と、俺の手のひらに“何か”を置いた。


ずしり。

重い。金属でも石でもないのに、妙に存在感がある。


100面体のサイコロだった。


「なにこれ」


「事務作業軽減の為、これまでの希望チート、世界観、初期環境などの申請方法を、この100面サイコロに変更したの」


「いや、申請って、俺の人生だぞ!?」


「いちいち希望聞いてたら、残業なくならないもの」


その言い方、完全に社畜だ。


女神は机を人差し指で叩く。

ここ見ろと言わんばかりに。


《注意:振り直し不可》

《クレームはサポートセンターへ》


「はい、振って」


「待て待て待て! 説明しろ!」


「次の方も詰まってるから。早く」


俺は納得いかないまま、サイコロを握った。

なんだよこの世界。死んでも労働してんのかよ。



ころころ…と転がったサイコロは、静かに止まった。


出目は『1』


次の瞬間、白い部屋がガチャ会場になった。


どっかで聞いたような、ファンファーレがなる。

虹色の光が降ってきて、床に豪華な魔方陣が展開する。

金色の粒子が舞い、どこからともなく妙に気合いの入った声が響いた。


《SSR確定!!》


俺は思わず身を乗り出した。


(SSR!? つまりチート確定? 俺の人生、ここで逆転!)


女神は画面を見ながら、やけに軽いテンションで言う。


「お、SSRおめでとー」


虹が一段強く輝いて――


《排出:王族枠》

《属性:王女》

《初期環境:小国》

《難易度:――》


難易度の表示が、一瞬だけバグったみたいに乱れた。


《難易度:???》


俺は固まる。


「王女?」


「うん。SSR。王女。社会的地位は高いし、衣食住は保証、護衛も付く。ほら当たり」


「いやいやいや、チートは!? 能力は!? 戦えるの!? 俺は赤ん坊になるんだろ!?」


女神は肩をすくめた。


「SSRって言ったでしょ。“当たり枠”だよ」


「その難易度???は!」


俺が指差した瞬間、UIに追撃表示が出た。


《注意:このSSRは「すり抜け」を含みます》

《確定は「王族枠」であり「安全枠」ではありません》


「は?」


女神がニコッと笑う。笑うな。


「要するにね、SSR当たったー!って喜んだところで、どのSSRかは選べないの」


「SSRでもピックアップ来なくて、ゴミSSR来た経験あるでしょ」


「ゴミって言ったぁ!」


女神は画面を閉じるみたいな仕草をして、最後に小さく呟いた。


「あなた次第よ」


床が抜けた。

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