僕達の小さな戦記。

物書狸。

1





これは、俺達の小さい抵抗の記録。






あの文章を書いた夜のことは、今でもはっきり覚えている。


勢いで打ったわけじゃない。


言葉を選び、順番を考え、ちゃんと「宣戦布告」になるように書いた。







これは、俺達の小さい抵抗の記録。




まず、親世代は勘違いしてないか?


俺達はあなたたちじゃない。


自分の意志がある。だから考えるし、反抗もする。




なぜ、あなたたちが叶えられなかった夢、理想を、


俺等に押し付ける。




これは宣戦布告であり、警告だ。


お小遣い3000円増やすまでは抵抗を続けると思ってくれ。


こちらからは以上だ。







送信したあと、胸の奥が少し熱くなった。


怖さもあったけど、それ以上に、これで引き返せなくなったという感覚が強かった。




返事は、思ったより早く返ってきた。







受け取りました。


わかりました。要求を飲みましょう。




ただしこちらからの交換条件として、


掃除を私母に任せきらない。


作られたものは美味しく感謝して食べること。




たまにのお出掛けの時くらい、


可愛くなったね?


化粧いつもすればいいのに。


と褒めること!




それで2000円までは増やしましょう。




もう1000円は、


今すぐ帰ってこないと鍵閉めますからね?


わかりますね?




お母さん怒ってないから、


早く帰ってきなさい。







その最後の一文を見た瞬間、頭の奥でスイッチが切り替わった。




「怒ってないから」。


その言葉で、本当に怒っていなかったことなんて、一度もない。







こ、、、、断る!!




それは虚言だ!


怒ってないからで説教食らわなかったことはない。




なんなら、


さっきの交換条件も飲んだうえで増えもしない、


不平等条約になるのがわかる!




まだ、こちらは仕掛けていないのに、


そちらから仕掛けてくるとは、、




わかった。


こちらも相応の対応をしよう。




皆、裏の山集合だ!







言い切った瞬間、もう後戻りはできなかった。




夜、俺達は裏の山に集まった。


集団行動に出る、というだけで、少しだけ大人になった気がした。




そこに、想定外の第三勢力が割り込んできた。







お、、、おい!リーダー。


大変だ、、警察、、、




これやばいんじゃないのっ!?


ねー!!







一瞬、全員が固まった。


でも、ここで崩れたら終わりだ。







な、、なぬ。敵も策を打ってきたな。


よしみんな泣け!


今すぐ泣くんだ!




そうすれば道は開かれる。


わかったかっ?







え?


泣くの?


みんなで?




信じるからね?







えーーーーん







下手かよ!!


でももうどうしようもない。







君たちだね。


今何時かわかっているのか?


親御さん達がどれだけ心配してると思うんだ。


ほら、行くよ。







ここからが本番だった。







だ、、だっておまわりさん。




僕達、みんなでキャンプするって、


ちゃんと約束したの。




ほらこれ見て?




裏の山にみんなでいるから心配しないでね。


今日はお泊りになると思うから、


パパ泣かないでね。







ちょ、、、何見せてんのよ!


もう私学校いけない、、







うむ。


確かに許可はおりてるが、


なぜ泣いてる?







う、、うん。




僕達ね、


ちゃんと約束したから楽しみにしてたのに、


今日いきなりダメになったから飛び出してきたんだ。




でも明かりもなんもないから泣く人でてきてね。


連鎖してみんな怖くなっちゃったみたい。




おまわりさんのおかげで怖くなくなったよ!


ありがとう!




明日にはみんなここからバイバイするから、


安心してね?







お、、おう。


なんか納得させられた感はあるが、


わかった。




明日には!


明日にはちゃんとだぞ!







警察が去ったあと、風向きは一気に変わった。







あの子、明日には裏の山から降りるって言ったのですねおまわりさん?




はい、ちゃんとみんなで泊まる許可は得てる。


だから心配しないでくださいとのことで本官は降りてきました。




あら、、


これは少し急がないとまずいことなるかもしれませんね。




お魚屋さんの奥さん?


すぐに魚をくださいな。


みんなで山に向かって魚を焼いてください。




あの子達は突然の行動、


お小遣い足りないの反発なのですから、


持ってても駄菓子くらいでしょう。




これでお腹空いたと泣き出す子がいたら、


音を頼りに向かいましょう。




そこに、


お腹空いたね?


お家に帰って暖かい部屋でみんなでご飯食べましょ?って。




怒ってはダメですよ!


優しく寄り添うのです。


それで相手の戦力は大幅に削げます。




ですが、


うちの子はきっと最後まででてこないですが、


被害は最小限になるでしょう。







これはまずい、、


ゲリラの常套手段にでたか。




皆、移動するぞ!


裏に下山して、食料確保する。




お年玉全額下ろしてきている。


少し痛いが、隣町のスーパーで好きなもの買って食べて良い。




だから、


ここからはこの裏山のこの缶の中に、


スマホだけ置いておこう。




大丈夫だ。


今晩には各々家にスマホが戻っているから安心してくれ。




3日もてば我らの勝利が見える。


お願いだ。信じてくれ。







スマホ置いてくっていっても、


なんで今晩には回収されるの?







皆のスマホには見守りが法で付いているから、


GPSで親にバレるんだ。




だからマナーモード外してここにおいておけば、


ゲリラ作戦実行者が電話をかけながらこちらに向かう。




そしてみつかるのは、この缶。




契約者は親なのだから、回収するだろ?


だから3日だけまってくれ。







くっ、、


あの子こうゆうときはほんと、余計なほど頭が回るわね。




皆さん、


たぶん今頃食べ物を補給しています。




ですが、


今隣町のスーパーにいったところで、


チリヂリに逃げられてしまい、


大人の私達では太刀打ちできません。




皆様、


心配なのはわかりますが、


明後日まで旅行に行ってると思い放置してください。




脱落者が必ず出ます。


そこから甘い汁を吸わせて、内部抗争起こしましょう。




密偵みたいなものですね。




変に追うと意固地になるので、


あくまでいつもどおりにですよ?




いなくても平和だよーって見えるように。


辛いのはわかりますが、これが一番効果的です。







よし。




子供軍。




リーダー、、ごめん。俺ね。


明日みんなでお出掛けするの楽しみにずっとしてたんだ。




みんなのことバラさないから、


離脱してもいい?







うむ。


ごめんね?辛かったよね。




これ、1000円あるから、


お家までタクシーで帰って。




ただ一つお願いがあるんだ。




今の俺達の言葉、状況を、


一言一句間違わず伝えてほしい。




それだけ守ってくれないかな?







う、、うん。


でもなんで?







君が離脱したこと、


しかも安全にタクシーで帰らせる。




そして情報も全部渡す。




これで何が起きると思う?




やっぱり子供のお遊びだったんだな。ってね。




これで相手は、


変に作戦を練らなくなる。




そして、


離脱してもいいんだな。


うちの子たちは自分の意志で参加してる。




と考えてくれるんだ。




勝利の条件を全部じゃなくても、


確実に綻びは見えてくるんだよ!!







なんかよくわからないけどわかった!




今のは言わないで、


スーパーのご飯でみんなでパーティして楽しかった!って、


ママに教えてくる!




ありがとうリーダー!!







うん、


やっと離脱者でましたね。


お隣の奥様のとこの子ですか、、、




パーティ、、


あの子3000円のために、どこまでやるのかしら。




計算できない子じゃないはず。


まずい。。




皆さん!


作戦変更です!




裏山の周り、みんなで捜索しますよ!




このままだと毎年、


値上げのために同じ事されます!




総合収益でみてますよ、あの子たち!




音をたててはいけません!


確実に一人づつ摑まえますよ!




そして、


最初に見つかった子たちから、


お小遣いその場であげましょう!




わかりましたね!!







明朝。




子供軍。




点呼とってくれ。




ん。


5人も足りない…




これは肉体的に捕獲作戦か。




んーー。


見えるのは、捕まえた子に報酬を与えて、


すぐ降参するならあげる。




…つまり、


段々金額さげるのか。




長期戦になるか…







みんな!!




まずここに宣言する。


子供軍は一時解散する!




帰りたいものは早めに帰り、


報酬だけをいただき、怒られないぞ!今なら!




ただ、


長期的には負ける。




だから後は任せる!




1人でも残れば、我らの勝ち。




今帰っても、


交換条件飲まないで報酬。




我らの勝ちだ!




俺はまだやりことあるが、


ついてくるものはいるか?




ありがとう。


では行くぞ!







これはやられましたね。




残りは3名。


しかも戻ってきたものは裏をかかれ、


怒られもせず、


お小遣いだけを1日で摑みましたか。




みんな楽しかったーで帰ってくるのは、


あの子の仕業ですね。




そんなとこにカリスマ性ださないでよ。


もう。




皆様、今までありがとうございました。




私、子供に化かされてしまいましたので、


連盟の長を名乗ることはもうできません。




だから……




ここからは母として、鬼になります。




あなた、


あの子の部屋、釘を打って。







釘!?




まだローンが……







うるさい!




あの子の物、すべてそこに詰めて、


窓も板で塞ぎます。




最初から、


この家にはあの子なんていなかったんだ。




と思わせるように。




それを友達本人から聞いたあの子は、


裏山で、絶望するでしょう。




母を鬼にしたのは、


あなたですからね?




にこっ







な、、なぬ。


母ちゃんやりやがりましたね。




みんなはここで帰ってください。


多少怒られるかもしれません。


が、楽しかったね。




使いたくはなかったですが、


最終手段を使いますか。




みんな、お願いがあるんだ。




あのおまわりさんを、


ここに連れてきてくれないかな?




話があるって言ってたよーって。




俺は真正面から降伏する。




それで家に帰ると、


親のしたことはただのエゴだ。




踏み込んでいけないとこまでやったのは、


母上ですからね?




にこっ







あのあとは、


釘を抜くのが大変だったのと、


母ちゃんは平謝り、おまわりさんに。




いや俺だろ!!


思ったけどね。




ただ、その後は毎日、


みんなで家族会議して、


不満を溜めないことにする。




相手の意見は最大限は考慮する。


に落ち着いて、




今はみんなで旅行中!




ちなに、


お小遣いは4500円になりました。




完全勝利!




みんな!


またね!


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僕達の小さな戦記。 物書狸。 @monokaki-tanuki

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