左目が映す「未知の世界」。そこは壮大な物語と、異形の怪物に満ちていて

 設定でものすごくワクワクしました。

 ある時、「左目」が別の世界(または時代)の光景を見るようになる。右目を閉じて左目だけに視界を限定すると、まるでその世界にいるような気分にもなれる。

 大百足が存在し、それを退治する者がいるなど。いわゆる「妖怪退治の物語」に出てきそうな光景が、まさに現実のように目の前に展開する。

 その世界は一体なんなのか。どうして、自分にはその世界が見えるのか。

 やがて、「そこの世界の住人」の一人と言葉を交わすことが出来るようになる。そうして事情を聞くことになり、また更に壮大な物語があるような感じが見えてくる。

 読めば読むほど「未知の世界」に触れていき、胸が高鳴る感じがしました。
 海彦と山彦という存在。彼らの持つ宿命の行く末はどうなるのか。そして、この妖怪めいた存在のいる和風ファンタジーな感じの世界では、他にもどんなドラマがあるのか。

 もしも自分の目に「そんな光景」が見えるようになったら、好奇心を刺激され過ぎて現実に戻れなくなるんじゃないか。それだけ「怪奇」や「幻想」のロマンを感じさせられる、ワクワクな世界観が構築されていました。

 未知と触れる喜び。それを改めて実感させられました。

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