掌鳥

渚のジレンマ

 やってみよっと、走り回る鳥を追って見渡す限りに干潟はチドリの舞い上がるへりに背中を晒している。

 砂利が懐かしむ川の流れのように。黒い鳥は去った。

 自分の試してみる経過を評価する他者のメガネが時代に受け止められるものかというように。


「…渚をね、渚を知らない風が松の香りを抜いて来て、俺は行きたくなるんだ。ほら、昔は吊り橋のある夜は静かすぎて、その工兵橋の庭に巣箱を掛けるように」

「スローガンに宇宙の好む安全な色があるのかしら」

「踏みしめた道に思いは乗せて、また来る日を待ち望む人がいることを俺たちだけはわかるから」

「そう、思いを伝える方向はあると思うの」

「山々は渚に影を映して、あっという間に風を引いてくる人々に混じっている、そんな雑踏に連れて行くんだ。あなたの歌があるとなお嬉しいけど」

   サンタの白もかわいい

   雪を足してちょこんとしてんの


 鳥たちは、日々の暮らしに色を足して渚に待つ古い家を越えていくだろう。昔の人々が運んだ灯台は明治の不確かさを継いで、決意をあらたにするんだ。

思い出せてよかった

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掌鳥 @Hokerikon

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