盲目少女と吸血鬼

@riko1212

盲目少女と吸血鬼

舞台は中世。とある街に人間と異業種達がおりました。そこに住む盲目の人間の少女Aの物語です。少女Aは日課である朝のパンの買い出しに出かけます。すると、シルクハットを深くかぶり顔がマスクで覆われた男性とぶつかってしまいます。シルクハットの男性は「すまないね、お嬢さん。だがいずれ私に感謝する日が来るだろう」と言い残し去って行きます。少女Aは転んだ拍子に松葉杖を手から離して困ってしまいます。その少女Aを偶然見かけた吸血鬼の男性二人組が少女Aに声をかけます。「大丈夫かい?君の杖はこれだよ」そうして、事情を説明した少女Aは吸血鬼の男性二人組と一緒に、行きつけのパン屋まで買い物をする事になりました。少女Aは気が付いて居ませんがパン屋の店員さんは異業種です。吸血鬼二人組みはその事実を伝えるべきか迷い、少し沈黙がうまれた後、何事も無かったとする事にしました。少女Aと吸血鬼二人組みの関係はその日では終わりではありませんでした。少女Aの日課のパンの買い出しには毎日付き添い、少女Aが一人では体験出来なかった様々な遊びをしていきます。そうして、少女Aと吸血鬼二人組みの絆がどんどんと大きくなっていく日々です。しかし、平和な日常は長くは続きませんでした。いつもの買い出しの最中、街に設置されてる看板に、とても大きなポスターが貼られていました。吸血鬼の1人が読み上げます。「世界よ、いよいよこの時が来た」と一言。そのポスターには深くシルクハットをかぶりマスクで顔を隠した男性が写っています。翌日、異変が発生します。異業種の1人が殺害される事件が発生したのです。しかし、遺体は粉になってしまうと言う謎に包まれた事件だったのです。その日を堺に街中で異業種がどんどんと粉になってしまう事件が多発してしまいます。異業種達はこの事件の事を異業種狩りと呼びました。そう、人間だけが犠牲にならなかったのです。街には不穏な空気が流れ始めました。人間と異業種、彼らの関係に亀裂が入ってしまいます。人間達は異業種達の事を何とか助けようとする組織。異業種達は犯人は人間達であろうと決めつけるグループ。この2つに分かれます。数日が過ぎ、少女Aの家に1通の手紙が届きました。しかし盲目である少女Aは読む事ができません。そこで吸血鬼二人組みに手紙を差し出し、読んでもらう事にしました。手紙には、こう書かれていました。「やあ、元気かい?あの時は悪かったね。でももう少しで宴は終わりになる。そうしたら君は、私に感謝する事になるだろう」と。吸血鬼二人組みは直ぐに推測します。あの男が犯人ではと。そこから再度数日がたち、またもや1通の手紙が送られて来ました。手紙の内容には、言葉は何も。しかし、街で1番大きい教会の住所だけが添えられていました。少女Aと吸血鬼二人組みは、意を決して、行ってみる事にします。中に入ってみると、シルクハットを深くかぶり顔をマスクで隠したあの男性がぽつんと一人だけ立って居ます。吸血鬼の1人が大声をあげます。「お前がこの事件を起こしたのか!」シルクハットの男性が答えます。「事件?宴の事かね。ああ、そうとも私で間違いない」少女Aは拳を強く握り肩が震え声を上げる事が出来ませんでした。吸血鬼二人組みは何とかシルクハットの男性を捕まえる事は出来ないかと襲いかかりますが、シルクハットの男性もとても強く、激しい戦闘が繰り広げられます。長い、長い戦闘でした。吸血鬼二人組みは、限界をむかえ倒れ込んでしまいます。シルクハットの男性が吸血鬼二人組みに近づきます。「これで君たちも宴の仲間入りだ」そう言うとシルクハットの男性はとても小さなナイフで吸血鬼二人組みを刺してしまいます。異変を感じた二人組みは、少女Aに声をかけます。「どうやら俺達はもう駄目らしい。お嬢ちゃんは何も気にする事はない。どうか元気で。」そう言い残し、刺された吸血鬼二人組みは粉になって消えてしまいました。少女Aが状況を理解するまでに少しの時間が経ちました。声をあげます。「どうしてこんな酷い事をしたの!?あの二人を返して!」シルクハットの男性が一言。「お嬢さん、感謝する時間だ。目を開けてごらん。」少女Aはそう言われ、目を明けてみることにしました。ゆっくり、ゆっくりと瞼を開いて行きます。なんと、目が見えるようになっていました。「どうだい?わかっただろう。感謝の時間だ、お嬢さん。」しかし、少女Aの視線の先には恐らく吸血鬼二人組みであったであろう粉の塊が写ります。少女Aは困惑してしまいます。目が見えるようになった嬉しさ。しかし、二人を失った悲しさ。何故自分にここまでして目を見える様にしてきたのか。少女Aはやっとの思いで言います。「貴方はなんなの…?」シルクハットの男性が帽子を捨て、マスクを脱ぎ少女Aに声をかけます。「私は君の父親だ。どうだい娘よ。異業種達は居なくなり、お前の目を無事に見える様にも頑張ったんだ。最高の宴だっただろう?さあ、感謝の時間だ。」少女Aは答えます。「感謝なんかしない。わたしはこんなのを望んだ記憶も無いし、お願いした事も、考えたことすらない。あの二人を返して。」しばらくの沈黙が生まれます。父親を語る男性が言います。「そうか。全て私の勘違いだ。どうやら君は私の娘では無かったんだ。」男性はゆっくりと少女Aに近づきます。少女Aは生まれて初めて人を睨むという行為をします。ずっと、ずっと睨みます。男性がゆっくりと近づいてきて、少女Aの首をしめます。少女Aは抵抗する事もなくそれを受け入れます。そして、少女Aは亡くなってしまいました。

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