第5話 風景

地球は静かに夕暮れを迎えていた。崩れた高架橋の影が砂地に長く伸び、瓦礫は淡い光を受けて微かに反射する。黒い直方体は半ば砂に埋もれ、表面は光をほとんど返さず、沈黙を保っている。


風が低く吹き、乾いた砂と紙片を揺らした。遠くの丘陵の輪郭はかすみ、空は薄い灰色に覆われている。雲はゆっくり流れ、光は均され、影もまた静止したまま地面に落ちている。


老婆の姿も、結晶の頭部も、博士も、すべては過去の痕跡として残るのみ。時間は淡く流れ、地面と瓦礫と影だけが、荒廃の中で淡々と存在している。


遠くで風がうなる。紙片が舞い、砂が積もり、光が層をなす。何も動かず、何も語らず、荒廃した地球は静謐な景色だけを残した。

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結晶の門 zakuro @zakuro_1230

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