掴みたい夢

第1話

大阪大学外国語学部、通称『阪大外語』。関西圏の外国語学部のトップである。

そこは私にとって現実的な理想である。「現実的」というのは金銭面での話だ。国公立で学費は比較的抑えめ。しかも大阪府民の私は自宅から通えるのだ。約一月半後から一年間、カナダに留学させてもらう私と我が家の家計にとっても優しい。理想というのは勉強面での話だ。今年受けた模試の判定はどれも散々な結果で、A判定とは程遠い。しかも、カナダから帰ってきても数学やら理科やらの授業はない。つまり自力で勉強しなくてはならないのだ。学校の勉強も考慮すると、同じ場所を目指す学生たちより人一倍の努力が求められる。なんとも恐ろしい話だ。

それでも目指すのには理由がある。金銭面だけでなく、将来の就活でも『阪大』というブランドは大きい。だが何より、親友と対等な場所に近いことが重点だ。私は誰よりも親友を尊敬している。人格者かつ努力家で、文武両道。絵に描いたように素晴らしいあの人は私の道標だ。あの人と私が対等になることはないだろうが、近づくことはできる。辛くても、気が狂いそうでも、死にたくても、あの人に近づけるなら、頑張る理由になる。そうして阪大外語を目指すことにした。