いきどまり

白川津 中々

◾️

『いきどまり』

 

 精神の病を宣告され、ボチボチと生きる事となった。


 身の回りを整理して、国から保護されながら小さな部屋で過ごす。少しばかり娯楽に使える金はあるがとくに楽しみたいわけでもなかったため、余った金は箪笥に仕舞い込む。置いておいても結局使わないのだから喜捨でもすればいいのに、しみったれた根性で手放せない。どれだけ心が悪くなっても染み込んだ世俗的欲望が抜けないのは生き汚なさ故なのだろうか。我ながら愚かだと思う。


 とはいえ、何事にも気力が湧かないのは事実としてある。普段は家にいて、たまに起きられたら散歩に出かけるというような、とくに色も山もない日々を送り時間を消費していく。散策していると、こんなところに公園があったのかとか、こんなに大きな栗の木があったのだなといったような発見があって、そんな些細なでき事に、なぜだか涙が頬を伝うのだった。その涙にどんな意味があるのかさえ分からないまま、そっとそこで佇む、ただ、胸の中では「無意味な感傷だ」と、「惰弱な自分に酔いしれているだけだ」と、自己への否定の声が聞こえてくるのだ。

 自然と涙は止まり、自身のナルシシズムを恥じる。

 病んだ事も、涙の意味も、自意識。それに尽きるように思う。そうと分かっていながらも、やはり何もできず、変化もない。それもまたやはり自意識のためなのだろう。


 この先、生きて何があるのか。

 きっと、何もない。


 自らの弱さを抱え、そのまま死んでいく。想像すると、肩の力が抜けて気が楽になる。しかし、いざ自分の死体が転がっているのを想像してしまうと途端に怖気付いてしまうのだった。これも自意識である。


 真っ当に生活する事も、自ら終える事もできない。これからも、それが続いていく。

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