暴龍飯店
ラザー・ヘブンリー
第1話 暴龍と強盗
中華街「流龍」にの一角にある中華料理店「暴龍飯店」。
そこは女主人とその夫が二人きりで営む小さな店だった。
「アイヤー、暇アル!」
厨房で女主人であるパオパオが朝から昼になっても客が来ない事に不満をこぼしていた。彼女の料理の腕は悪くない、だが最近は色んな料理店に客を取られているのが現状だ。
そんなパオパオを、店内のテーブルを拭きながら見つめる男がいた。
彼の名前はウシロ、パオパオの夫で彼女の手伝いを主にしていた。
「そうだね、暇すぎて退屈だね」
彼は気弱そうな顔を見せながらも、テーブルを真面目に拭いている。彼の心の中では客を相手にするのを怖がっているが、パオパオの為に一生懸命やる気を出していた。
パオパオは退屈のあまり、中華包丁と拳銃でお手玉をするしまつ。
ウシロもテーブル拭きが終わり、暇になったのでスマホをいじっている。
そんな暇な時間が過ぎる中、暴龍飯店のドアが開いた。
「いらっしゃ……ひっ!?」
挨拶をしようとしたウシロが怯える。無理もない、ドアを開けたのは斧と散弾銃を持ったオークの種族である男だったのだから。
オークの男は彼を無視して、カウンターにドスドスと歩みパオパオを睨む。
「お客さんアルか?お客さんなら席に座ってメニュー表読むヨロシ」
パオパオは武装したオークの男に怯えず堂々と喋る。そんな彼女にオークの男は唐突にバッグをカウンターに置き、はっきりと言う。
「店の金を全て出せ」
その様子を見たウシロは、衝撃のあまり声が出ない。手にしたスマホで通報するのも出来ずに固まってしまう。一方、パオパオは平然とこう告げた。
「アイヤー、残念だけど今はレジに金なんてないネ。さっさと帰るアル」
その言葉に青筋を立てたオークの男は、散弾銃を彼女に構える。
「嘘をつけ!財布とか持ってるだろ!有り金全部出すんだよ!」
彼が散弾銃を向けて叫ぶも、彼女はあっけらかんと言葉を続ける。
「あのネ、パオパオが今優しく言ってるうちに帰るヨロシ。アンタ命知らずネ!」
その言葉にキレたオークの男はズドンと散弾銃をパオパオの腹部にぶち込んだ。
ふっ飛ばされるパオパオ。
ウシロはその光景を見て口を開けたまま動かない、いや動けないのだ。
「あ……あ……」
彼は動けぬまま、口を開く。
「なんてことを……」
オークの男は散弾銃をウシロに向けながら脅す。
「お前もあの女みたいになりたいか?」
ウシロは怯えながら両手を上に上げて降参のポーズをとる。
もはやこれまでか、その時
「アッチャアァァァ!!!」
オークの男の背後から、なんと撃たれたはずのパオパオが飛び蹴りを彼の後頭部に直撃させたのだ!
そのまま床に倒れるオークの男。パオパオはカウンターを飛び越え、中華包丁で倒れた彼を追撃する。
「このッ!豚肉風情がぁッ!パオパオを撃つのは良いとしてッ!ウシロまで撃とうとするのはッ!許さんアルッ!!!」
中華包丁が哀れなオークの男を容赦なく襲った。
無慈悲な追撃をするパオパオの身体には散弾銃でブチ抜かれた傷跡があったが、徐々に傷跡が塞がっていく。
ウシロは見ていられないという風に両手で顔を覆った。
それから2分後、物言わぬオークの男から散弾銃でチーパオが破れていても肉体の傷が癒えたパオパオは離れ、中華包丁を布で拭く。
「まったく…こいつは肉まん確定ネ!ウシロ、一緒に保管庫に運ぶアル!」
「う、うん……相変わらずパオパオは凄いね……俺何も出来なかったよ」
ウシロはパオパオを褒めつつ、内心自分の情けなさにため息をつく。だがパオパオはそんなウシロに笑顔を見せながらもこう語る。
「なーに言うカ!ウシロはパオパオの愛する旦那様ネ!旦那様は旦那様らしくパオパオに守られるアル!」
「パオパオ…でも普通旦那様も強くないといけないよね?」
ウシロの気弱な言葉にパオパオはあっけらかんと更に強く言う。
「今どき強い旦那様とかそんなの知るかネ!パオパオはウシロの愛する旦那様!それ以下も以上もないアル!」
流石のウシロもパオパオの言葉に心をうたれたのかもうネガティブな事は言わず、彼女と一緒にオークの男を厨房の奥の保管庫に運ぶのだった。
暴龍飯店では、問題を起こした輩を具材として使うのは日常茶飯事だ。
二人で保管庫に運んだ後、パオパオは店のドアの開店の札を裏返し鍵をかける。
「今日はこんなトラブルもあったし閉店ネ!二人での~んびりするアル!」
「そうだね……もう俺も疲れた」
精神的に疲れたウシロを優しく抱きしめるパオパオ、二人はそのまま店の奥の居住スペースに入っていった。
後日、哀れなオークの男は珍材料を使った肉まんとして売られたそうな。
暴龍飯店 ラザー・ヘブンリー @mg46boy
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