男女それぞれが傷心の心でみちのく一人旅を始めた所から始まります。
東北の景色やご当地グルメ、スイーツなど共有するうちにふたりの心に変化が芽生えふたりの距離が少しずつ近づいていく、その微妙な揺らぎが描かれています。
偶然の積み重ね、旅先でふと見せる素の表情――そうした小さな瞬間が積み重なって、気づけば寄り添っている二人。
東北の土地の空気感がとても丁寧に描かれていて、
旅って、景色を見るだけじゃなくて、自分の心の洗濯をしてくれる時間でもあるんだなと、しみじみ感じさせてくれます。
東北の風景と、ふたりの心の距離がゆっくり重なっていく感じが心地よく、
「どこかへ旅に出たくなる」
そんな気持ちを呼び起こしてくれる作品です。
読み終えたあと、ふたりの旅がどこへ続いていくのかを想像したくなるような、余白のある物語でした。
評価と安定を追いかけ過ぎて自分の人生を見失ってしまった男と、悪い男に絆されては騙され続けてしまった女の、淡い恋心を描いた心地良い良作です。
主人公の二人はどちらも、色々と少しずつ上手く行かなかった結果、なんとなく失敗してしまい、その空虚さを埋めるべく小旅行に出たという感じで、過剰な不幸では無いけれど、笑って忘れるには少し辛い状況、その薄ぼんやりとした不安感や苦いものは、原因や種類は違っても、なんとなく読み手として理解出来るので共感が持てる次第です。
そしてそんな二人が、不思議な偶然の末に少しずつ距離を縮めるのですが、距離を縮めるのに一役買っているのが美味しそうな料理やスイーツであり、この美味しそうな料理描写があればこそ、二人の仲が縮まる展開にも説得力が生まれるのだなあと感じます。
旅行に出かけて、美味しいものを食べて、温泉で温まって、思わぬ出会いに心をときめかせるという、シンプルに心の和む良いお話でした。