スタードラゴニアン・プラネット “Angel’s Tears of Radiant Life”
@hannaritobaba
スタードラゴニアン・プラネット “Angel’s Tears of Radiant Life”
プロローグ
この空間はアナザーディメイションホールと呼ばれており、幾つもの世界が無限に
存在しているのである・・・星竜族と言う名の種族が不思議な星の力を持っておりその力を使って自然の溢れる世界を創造し、そこに人類を送り込む事で世界を創り出してきた。
星竜族とは人間と竜の要素が交じり合った種族で人類や自然を愛する種族だった。
しかし、星竜族達は世界の滅亡に巻き込まれ絶滅してしまった・・・その事を知らされた全ての世界にいる人類達は皆、悲しみに包まれていたに違いはない・・・星竜族の絶滅から長い月日が流れ・・・この物語はとある一つの世界から始まろうとしていた・・・
1章 命の少女
ここは星竜族が創造した世界の一つで物語はある村から始まった・・・
「今日はいい天気で穏やかに過ごせそうね・・・」
その村の外れには一つの一軒家があり、一人の少女が庭で朝日を見つめていた。
「・・・」
少女は光り輝く金髪で涙のような水色の瞳をしていた。
「なにかしら・・・なんだか、入り口の方が騒がしいわ・・・?」
庭で朝日を見ていると、向こうから騒めく声が聞こえてきた。
「なにかがあったのかしら・・・なんだか、嫌な予感がするわ・・・」
胸騒ぎを感じた少女は念のためにか家の中に入ると剣を持って村の入り口へと向かった。
「いいか。お前達、我々に逆らわないようにこの者達の見せしめを行う・・・」
村の入り口には人が集まっており目の前には数人の兵士と恐怖で怯えている
夫婦と兵士に取り押さえられている子供がいた。
「コイツ等は我等に納める献上物や金銭を納められずに平然と暮らしていた・・・なにも納めようとしないのは我々に逆らっている事になるのだ。」
兵士の一人が村人達に向けて言うと夫婦と子供は怯えだした。
「そんな・・・それは、貴方達が無理やり納めさせるから・・・!」
父親の男性はそう反論をしたが、兵士達は聞く耳も一切持たなかった。
(・・・あの人達、気の毒ね・・・あの家族は生活が苦しかったんでしょ・・・?)
(あぁ・・・もう金を納めている内に貧しくなって苦しくなったって聞いたぞ・・・)
村人達がヒソヒソと話し合っていると少女がやってきた。
「あのう・・・一体、なにがありましたか?」
少女はなにがあったのか村人の一人に声をかけた。
「それが・・・この村でなにも納められる事ができずに処刑される奴等が出たんだ・・・」
そう言うと、少女は奥から処刑されようとしている家族を見た。
「・・・それでは、見せしめとしての処刑を始める・・・」
兵士がそう宣言すると他の兵士達は子供の両親に剣を向けてきた。
「止めてよ!お願い誰か助けて!」
子供は泣き喚いて助けを求めたが誰も家族を助けようとはしなかった。
「うるさいぞ!静かにしろ!」
兵士が怒鳴ると子供は怖がって黙り込んだ。
「それでは処刑を開始する・・・まずはコイツの親からだ。」
兵士達は子供の両親を処刑しようとした時だった。
「待ちなさい・・・」
少女は怒りを込み上げながら村人達の背後から言った。
「誰だ?今の発言、誰が言ったんだ?」
兵士がそう言った直後に金髪の少女が剣を手にして村人達の前に出た。
「お前か・・・今の発言を言ったのは・・・」
「そうよ。この人達は貴方達が横暴な物やお金を献上させているからお金や物が無くなって貧しくなっていったのよ。」
「あぁ・・・それが、我々に逆らっているのと同じだ・・・そして、我々に反抗的な発言をしたお前も逆らった反逆者だ・・・」
兵士がそう言いながら剣を抜き少女に向けた。
「・・・謝った方が良いぞ?デスドゥンケルハイト軍に逆らえば、殺されてしまうからな・・・」
村人の一人はそう言ったが、少女は謝ろうとせずに兵士に剣を向けた。
「ほう・・・やろうって言うのか・・・いいだろう。そこの家族より、お前から先に始末してやろう!」
兵士はそう言って、少女に剣を振るって攻撃を仕掛けてきた。
「駄目だ・・・あの子は殺される・・・!」
村人達は少女が殺される光景を見ていられないと思って目を瞑った時だった。
しかし、斬られる音ではなく剣がぶつかり合う音が聞こえてきた。
「なっ・・・!」
それは、少女が持っていた剣で兵士の攻撃を受け止めていたからであった。
「コイツ・・・俺の攻撃を受け止めた・・・!?」
兵士が驚き、少女との距離を取って警戒をしだした。
「・・・この人達を解放して・・・」
少女が兵士に睨みつけながら言った。
「ふざけるな・・・!コイツ等はなにも納めなかった罪で処刑されるのだぞ・・・!」
「それは、貴方達が横暴な事ばかりしているから罪も無い人達の命が奪われていったからよ・・・」
少女はそう言うと、兵士は気にしていない口調で言ってきた。
「・・・アイツ等は我等デスドゥンケルハイト軍の規則を破った者や逆らった者達だ・・・
コイツ等はなにも納める事ができなかった以上・・・我等、デスドゥンケルハイト軍に殺されて当然だ。」
兵士がそう言った矢先に少女に攻撃を仕掛けてきた。
「・・・そんな事は絶対に許さない。」
少女はそう呟くと同時に剣を振るって、兵士の持っていた剣を弾き飛ばした。
「くっ・・・!」
兵士が痛みの走る手を片手で押さえていると少女が剣を向けてきた。
「・・・これ以上、あの人達を殺そうとするのなら・・・私が許さないわ・・・」
少女は兵士を睨み付けながらも剣の矢先を向けた。
「くっ・・・分かった。コイツ等の処刑は止めるとしよう・・・」
兵士はそう言って立ち上がると他の兵士達は処刑しようとしていた家族を開放した。
「これで済んだと思っていたら大間違いだぞ・・・我々に逆らったら・・・どうなるのか分かるだろう・・・」
兵士の一人がそう言い残すと他の兵士達と共に去って行った。
「お姉ちゃん・・・ありがとう。」
子供がお礼を言うと少女は子供を見て笑みを浮かべてから言ってきた。
「貴方を無事に助ける事ができて良かったわ・・・」
少女が子供に言うと父親が聞いてきた。
「だが・・・本当にいいのか?デスドゥンケルハイト軍に逆らったら、どうなるか分かっているのか?」
「・・・はい。ですが、私は命を奪われるのが許せなかったので・・・放ってはおけませんでした・・・」
そう言ってから、少女は村人達に背を向けた。
「・・・それでは失礼します。」
少女はそう言ってから、静かにその場を去って行った。
「・・・あの子、確か村の外れに住んでいた子ね・・・」
「あぁ・・・命を大事な物だと考えている子で命が失う事や奪われる事が嫌いだったな。」
デスドゥンケルハイト軍と戦った少女は命を失われる事や奪われてしまう事が許せないと思っていた。
「・・・本当に大丈夫なのか?あの子は兵士に逆らったんだぞ・・・?」
「そうね・・・逆らったらあの子はどうなってしまうか・・・」
村人の一人がそう言うと他の村人達も少女の背後を見てこれからどうなるかを察した。
(・・・しばらく、一人でいた方が良さそうね。)
兵士と戦い処刑されかけた家族を救った少女はしばらく時間が経ってから家へと帰る事にした。
2章 ティア・エルセレスフィナ
「ただいま。」
夕方になった頃、少女は家に帰って扉を開けて家の中に入ると少女の両親がいた。
「あら・・・ティア、何処へ行っていたの・・・?」
夕食を作っていた母親が、調理を中断してティアと呼ばれた少女に声をかけると椅子に座っていた父親が彼女の手にある剣を見て訊ねた。
「・・・ティア、まさかデスドゥンケルハイト軍の兵士と戦ったのか?」
父親がそう言ってくると、母親は驚きつつもティアに問うと黙り込んでいた。
「ティア・・・本当なの・・・?」
「えぇ・・・村の入り口が騒がしくなって様子を見に行ってみたら・・・貧しい家族がなにも納められなかっただけで処刑されようとしていたの・・・処刑されるのを我慢ができなかった私は兵士と戦って家族を助けたの・・・」
「それで、デスドゥンケルハイト軍の兵士と戦ったと言う訳ね・・・」
すると、父親はティアを見てこう言った。
「・・・ティア、お前の気持ちは分かる・・・だが、デスドゥンケルハイト軍に歯向かってしまうのは良くないぞ・・・」
父親がそう言うと、母親は宥めるように言ってきた。
「お父さん・・・ティアは命を大事な物だと思っている優しい子よ。処刑されそうになった人達を助けたのは良い事なのかも知れないわ?」
「確かに・・・だが、この子は兵士に逆らってしまっただけでなく、兵士と戦ってしまっていると言っていたぞ?」
父親は母親に言うとティアは父親に聞いてきた。
「・・・お父さんは死にそうになっている人を放っておくの?誰かが助けなければ命は失われてしまうわ・・・それでもお父さんは見殺しにする気なの?」
「ティア・・・確かにお前の気持ちは分かる・・・だが、無闇に命を守ろうとすれば他人の命の代わりに自分の命が失ってしまう時もあるんだ。状況を見なければ、守ろうが守れなかろうが、代わりに自分が死んでしまうのは当然の事だ。」
「それでも・・・私は誰かが命が失って死んでいくのを見ていられないの・・・お父さんはデスドゥンケルハイト軍によって殺されていく人達を放っておくの・・・?」
ティアがそう言ってくると父親は母親の方を見てから言ってきた。
「・・・私と母さんはかつて聖地ラヴィレイヘヴンに住んでいたのは知っているな?」
「確か・・・この世界が誕生した時に星竜族と一緒に創り出した聖なる聖地の事でしょ?」
ラヴィレイヘヴンは世界と人類を創造した星竜族と共に創り出した命の光が輝く聖なる地だと伝えられていた。
「そうだ。かつてはエレノアの血を引く一族がいた国だ・・・しかし、二十年前からデスドゥンケルハイト軍によって占領されてしまっているんだ・・・」
ラヴィレイヘヴンはエレノアの血を引く一族がいた国で二十年前にデスドゥンケルハイト軍によって占領されてしまっていた。
「私と母さんはなんとか聖地から逃げ延びてこの村に住み着いているのは知っているな。」
「それで・・・他の人達はどうなったの・・・?」
「・・・聖地に住んでいた人達はデスドゥンケルハイト軍によって殺されてしまったのよ・・・でも、エレノアの一族は何処かで生き残っているわ・・・」
「エレノアの一族は何処にいるの?もしも、生きているのならデスドゥンケルハイト軍と戦っているはずなのに・・・」
ティアはそう言ったが、父親と母親は無言になりなにも答えなくなった。
「・・・分からないの?」
「あぁ・・・悪いがそれは言えない事だ・・・仮にその一族の居場所が知られてしまえば、デスドゥンケルハイト軍に見つけられて殺されてしまう恐れがある・・・」
「そうだったの・・・でも、世界の何処かで生き延びているのは分かったわ。」
「えぇ・・・きっと、何処かで密かに生きているわ・・・それよりもそろそろ夕食の時間だから・・・ティア、お皿を並べて・・・」
「分かったわ・・・」
ティアは母親に言われた通りに食器を並べ始めた。
「できたわ。それじゃあ、食べましょうか。」
夕食が、完成しティアは両親と共に食べ始めた。
「私とお母さんで、お皿を洗っているからお父さんは休んで・・・」
「あぁ・・・任せた・・・」
父親はそう言って、自室に戻るとティアは母親と食器を洗い始めた。
「・・・ティア、やっぱりさっきのお話が気になっているのね・・・」
母親が食器を洗いながらティアにそう言ってきた。
「えぇ・・・本当はエレノアの一族は命が失われていくのを黙って見ている訳がないはずだと思うの・・・」
「お父さんはああ言っていたけれど・・・今も、何処かで生きていると思うわ・・・」
母親はそう言ったが、ティアはそれでもエレノアの一族について信じられない様子だった。
「・・・どうして、皆はエレノアの一族のように平気で人を殺すデスドゥンケルハイト軍と戦おうとはしないの・・・?」
「ティア・・・最初の頃はデスドゥンケルハイト軍と戦う人達がいたの・・・でも、デスドゥンケルハイト軍は強大で強くて戦った人達は誰も倒す事ができなかったの・・・」
デスドゥンケルハイト軍がラヴィレイヘヴンを占領した最初の頃は、逆らう人間達も存在していたが、強大すぎる軍の力に誰も勝てずに敗れて死んでいっていた。
「そうだったの・・・それで、デスドゥンケルハイト軍に逆らえずに怖がっていると言う事ね・・・」
「えぇ・・・もちろん、他の人達は殺される人達を助けたかったのだけれど・・・デスドゥンケルハイト軍が怖くて逆らえなかったのよ。」
「・・・それでも命を守らなければいけないと思うわ・・・イヴだって、どう思っていたのか・・・お母さんは知っているでしょ?」
「えぇ・・・あの子は貴方を妹のように可愛がっていた子よ。貴方みたいに人が傷付けられる事を嫌っていてティアと仲が良かったじゃない・・・」
「・・・でも、イヴが十八歳になった時に旅に出たけど、一年前から手紙が帰って来ていないじゃない・・・」
イヴと言う人物はティアとは姉妹同然に仲良くしており、十八歳になって家を出たが、一年前から消息不明になっていた。
「・・・それもそうだけど、イヴはきっと何処かで生きているわ。」
「・・・もしも、イヴがどこかで死んでいたらと思うと・・・心配で・・・」
ティアはイヴが既に故人になっているのではないかと心配に思っていた。
「ティア気持ちは分かるわ・・・イヴは貴方と同じようにお父さんと鍛えられていたから無事で生きていると思うわ・・・」
「それでも・・・私はイヴの事が心配よ・・・」
「・・・それじゃあ、お皿も洗った事だし・・・お部屋に戻りましょうか・・・」
食器を洗い終わったティアは、自分の部屋へと戻っていった。
(・・・エレノアの一族は、この世界の何処かで生きている・・・そうだったら、デスドゥンケルハイト軍と戦っているはずなのに・・・どうして、二十年も姿を見せないの・・・?)
自室に戻ったティアは、ベッドの上で横になったエレノアの一族について考え始めていた。
(・・・もう、こんな時間・・・そろそろ、眠りましょう・・・)
ティアは目を瞑ると、そのまま静かに眠り込んだ。
「むっ・・・?」
すると、父親はなにかを察して窓から外を見つめた。
「どうかしたの?」
「いや・・・なんでもない・・・」
そう言いながらも、父親は胸騒ぎを覚えながらも窓を見つめた。
(なにやら、起こりそうな気を感じだのだが・・・?)
父親は、なにか嫌な事が起きると直感をしていた・・・それが、父親と母親と暮らす最後の日になろうとは・・・まだ知る由もなかった。
3章 デスドゥンケルハイト軍の襲撃
「着きました・・・ここが、例の村です・・・」
深夜の時間になった頃、大勢の兵士達が村まで近づいていた。
「この村に我々に逆らった人間がいると言うのは本当か?」
太陽のような赤い髪と瞳をした男が一人の兵士に聞いてきた。
「はっ・・・その通りです。」
その兵士は、ティアと戦った兵士だった。
「しかし・・・なぜ、貴方様も我々とご一緒に・・・?」
「・・・ただ、俺もお前達と共に同行しろと命じられたからだ。」
赤い髪の男が、そう言うと目的の村の入り口前に着いた。
「この村に、お前に逆らった人間の少女がいるのか?」
赤い髪の男が訊ねると、兵士が不甲斐無さそうに答えた。
「はっ・・・子供かと思って油断してしまいました・・・」
「・・・そうか。」
すると、一人の兵士が赤い髪の男に声をかけてきた。
「本当に・・・この村の人達を皆殺しにする気なのか?」
「そうだ。デスドゥンケルハイト軍に逆らった者が一人でもいた以上、皆殺しにしろとあのお方に言われているはずだ。」
赤い髪の男は、そう言ったが兵士はそれでも納得はいかない様子だった。
「それもそうだが・・・少女一人で村の住人達を皆殺しにする必要がないと思うんだ。」
「・・・分かっている。だが、その少女は処刑されようとしていた家族のために
デスドゥンケルハイト軍に逆らったのは知っているはずだ。」
「しかし・・・たった一人の少女のために、村を滅ぼしてしまうのはやりすぎだと思うのだが・・・」
すると、兵士の一人が不服そうに思いながらもソルに言ってきた。
「ヘイゼル・グラウ、ソル様に言っているよりも、この村を壊滅させる方が先決だ。」
「だが・・・」
兵士の一人がそう言われて、ヘイゼル・グラウと呼ばれた兵士はそのまま黙り込んだ。
「・・・それでは、これよりこの村の壊滅と人間達の皆殺しを開始する・・・」
赤い髪の男・・・ソルが、そう宣言すると兵士達が一斉に村の襲撃が開始された。
「・・・」
ただ一人、ヘイゼルと言う名の兵士を除いて立っていた。
「どうした?ヘイゼル・・・お前は、行かないのか?」
「・・・悪いが、私はあの村の人達を殺したくはないんだ・・・」
「そうか・・・だったら、村を滅ぼさなくていいから俺と共に村の入り口で待っていろ。」
ソルにそう言われたヘイゼルは彼と共に村の入り口で村を滅ぼすまで待ち始めた。
(・・・酷い、罪も無い村の人達が殺されていく・・・)
ヘイゼルは他の兵士達によって、家は焼かれて逃げ惑う村人達が殺されていく光景を見ていられなくなりソルに声をかけた。
「・・・ソル、私達の目的は少女を捕らえに来ただけだ・・・これだけの兵力を引き連れて、なにも関係の無い村人達を殺すのか・・・?」
ヘイゼルはこれ以上見ていられない気持ちになりソルに聞いてきた。
「・・・あのお方の命令された以上、皆殺しにするのは仕方のない事だ・・・それに、その少女はデスドゥンケルハイト軍に逆らってしまっている・・・逆らう人間が現れた以上は全員を皆殺しにしろとあのお方が仰っていたはずだ。」
「それでも・・・私はこう言うやり方は反対だ・・・なぜ、反逆者が一人出たぐらいで村を滅ぼさなければならない?」
ヘイゼルが反対するかのように言っていると、一人の兵士がソルに報告してきた。
「ご報告します!この村は、完全に壊滅させて村人達を一人残らず始末しました!」
「分かった・・・我々に逆らった少女は見つかったのか?」
「いえ・・・私の見た少女は、見つかっておらず・・・どの家にもいませんでした。」
すると、別の兵士がやってきてソルに報告をした。
「ソル様、村の外れに一軒家を発見いたしました。恐らく、その家に例の少女がいるのかと・・・ここにいる村人達は、全員殺しましたので・・・」
「そうか・・・そこに、少女がいるのかも知れないな・・・ここは、俺が行こう・・・数人ぐらい、俺に連いて来い・・・」
ソルがそう言って、数人の兵士を連れて村の外れの家へと向かっていった。
「・・・ティ・・・ティア、起きて・・・」
その頃、ティアは母親に起こされていた。
「どうしたの?お母さん・・・」
「大変よ・・・デスドゥンケルハイト軍が、村に攻めてきたわ・・・」
母親の言葉を聞いたティアは完全に目を覚ましてベッドから起き上がった。
「デスドゥンケルハイト軍が・・・この村を攻めてきた・・・?」
「えぇ・・・さっき、お父さんが外の様子を見に行っていたから、次期にこの家にもデスドゥンケルハイト軍がやってくるわ・・・」
母親は、そう言ってティアを父親の元まで連れてきた。
「お父さん・・・ゴメンなさい・・・私が、殺されそうになった家族を助ける為に、逆らってしまったから・・・こんな事になってしまって・・・」
ティアは申し訳なさそうに謝ると、父親は迎え撃つ準備をしながら言ってきた。
「気にするな・・・お前が、悪いわけではない・・・それよりも、デスドゥンケルハイト軍がこちらに近付いて来ているぞ・・・」
父親はそう言って窓から様子を疑うと、ソルと数人の兵士が家に近づいているのが見えた。
「あれは・・・まさか、デスドゥンケルハイト軍の兵士達なの・・・?」
「そのようだ・・・母さん、ティアを頼む・・・」
父親が、そう言うと母親は見つからないように別の部屋に隠れる事にした。
「お父さん、私も戦うわ・・・」
「駄目だ。お前は、昼間に兵士と戦ってしまった・・・もし、見つかってしまったら間違いなく狙われて殺されるだろう。」
デスドゥンケルハイト軍が、襲撃してきた目的が村の壊滅と逆らった金髪の少女の始末でティアが見つかってしまえば、間違いなく命を狙われて殺されると父親は確信していた。
「でも・・・」
「心配するな。私は大丈夫だから、母さんと一緒に隠れていてくれ・・・」
父親にそう言われたティアは仕方なく母親と共に隠れる事にした。
「お父さんは強いからね・・・だから、心配しなくてもいいわ・・・」
「・・・」
母親はそう言っても、ティアはそれでも父親の事が気になっていた。
「数は数人いるな・・・」
父親は剣を持ち家の前に立つと、近づいているソルと兵士達を見つめた。
(それに・・・あの真ん中にいる男は、以上に強い気を感じるぞ・・・)
すると、ソルが兵士達と共にその場で立ち止まって家を見つめた。
「・・・まさか、こんな所に家があったとは・・・」
ソルが家を見つめていると、父親がソルに問うてきた。
「なにをしに来た?ここには、私しか住んでいないが・・・?」
父親は怪しまれないようにしながらも平然としたフリで話してきた。
「俺達はこの村でデスドゥンケルハイト軍に逆らった少女を探しているが知っているか?」
「・・・その少女一人のために、村人達を皆殺しにしているのか・・・?」
父親がそう言ってくると、ソルはため息を着いてから言ってきた。
「・・・デスドゥンケルハイト軍に逆らう人間が一人でもいれば皆殺しにしなければならないのだからな・・・さて、そろそろお前の家を調べさせてもらうぞ・・・」
ソルがそう言った直後に父親は剣を向けてきた。
「・・・なんの真似だ?俺達に剣を向ける事は反逆を意味するが・・・仕方ない・・・お前を殺してでも家を調べさせてもらうぞ・・・」
ソルがそう言うと、兵士達が剣を手にすると一斉に父親に襲いかかってきた。
4章 父親と母親の死
「・・・お父さんがデスドゥンケルハイト軍の兵士達と戦っている・・・」
隠れていたティアと母親は見つからないように窓から父親の様子を疑っていた。
「えぇ・・・私達が見つからないように戦っているのだと思うわ・・・」
母親はそう言ったが、ティアは父親が兵士達と戦っているのが気になっていた。
「・・・お父さんも兵士と戦っていると言う事は・・・デスドゥンケルハイト軍に逆らった事になっているわ・・・」
「きっと、お父さんは家を捜索されて私達が見つかってしまわないようにしているのかも知れないから・・・」
母親がティアを宥めるように言っていると、父親は全ての兵士達を倒していた。
「・・・後はお前だけだ。」
父親はそう言ってからソルは両手剣を手にした。
「・・・そこまでして、デスドゥンケルハイト軍に逆らうとは正気か・・・?」
「これ以上、村を荒らされたくはなかっただけだ・・・」
「・・・お前もデスドゥンケルハイト軍に逆らった・・・悪いが、反逆者は生かしておく訳にはいかないからな・・・」
ソルがそう言って、両手剣を構えると父親に向かって攻撃を仕掛けてきた。
「・・・!」
父親はとっさにソルの攻撃を防いだ。
「中々・・・やりそうだな・・・」
「あぁ・・・私は、昔から鍛えているからな・・・これぐらいなら、当たり前だ・・・」
父親とソルはその後も何度も武器がぶつかり合い戦闘が続いた。
「お母さん、お父さんがあの男と渡り合っているわ・・・」
「えぇ・・・本気で戦っているからこそ、あの男に引けを取らないように戦っているみたいね・・・」
ティアと母親はソルに負けずに戦い続ける父親を見つめた。
(でも・・・どう考えても、お父さんもデスドゥンケルハイト軍に逆らってしまっているわ・・・このままだと、お父さんは・・・)
ティアは父親を見て心配になってきていた。
「・・・お前、中々やるな・・・しかし、いい加減に逆らうのは止めたらどうだ?」
ソルはそう言ってきたが、父親はなにも言わずに無言で剣を向けるだけだった。
「そうか・・・それが、お前の答えと言う事だな・・・」
ソルは父親に向かって攻撃を仕掛けた。
(・・・もし、私がコイツにやられてしまえば・・・家にいるティアと母さんが見つかってしまう・・・)
父親は、家の中に隠れているティアと母親が気になっていた。
(それに・・・コイツは、以上に強すぎる・・・本気で戦っても余裕そうだ・・・)
ソルの実力は、高くて戦い続けていても余裕そうな様子だった。
「どうした?さっきよりも、集中できなくなっているぞ・・・」
ソルが、攻撃をしながら父親に言った時だった。
(・・・先程から、目が泳いでいるように見えたが・・・?)
ソルは、父親の目が泳いでいるように見て気になりだした。
(・・・それに、この村に襲撃してきた事を既に知っていたかのように剣を持って家の前に立っていた・・・もしや・・・)
ソルは、そう言って攻撃の手を止めて距離を取った。
「・・・お前が、歯向かう理由は家の中に誰かがいるのか?」
ソルが、そう言ってくると父親は密かに眉を潜めた。
「・・・やはり、家の中に誰かがいるようだな・・・」
「違う!ここに住んでいるのは、私だけだ!」
父親は、必死になって言ってしまい、ソルは家の中に隠れている人間がいると確信した。
「・・・今の様子だと、お前以外の人間が隠れているに違いないな・・・」
ソルは、そう言いながら魔法の詠唱を始めた。
「一体、なにをする気だ・・・?」
父親は、様子を疑っているとソルは魔法を唱えた。
『イグフレミア!』
ソルは炎の魔法を唱えて家を燃やした。
「なっ・・・!」
父親は、振り返って燃えていく家を見て驚いた。
「心配するな。潜んでいる人間が逃げられるように場所を選んだ。」
家の中にいるティアと母親は、家が燃やされている事に気が付いていた。
「この家、燃えているわ!早く、逃げないと・・・急いで!」
母親は、ティアを連れて家から脱出しようとするとソルを見て入り口で立ち止まった。
「待って・・・まだ、あの男がいるわ・・・」
母親はそう言って様子を疑った途端、父親がソルの攻撃を喰らってしまった。
「えっ・・・?」
父親がソルの攻撃で斬られて片膝を着いている様子が見えた。
「お母さん・・・お父さんが・・・」
「そんな・・・ティアはここで待っていて・・・」
そう言って、母親が家から飛び出して父親の元へと向かった。
「来るな・・・!」
父親がそう言いながら立ち上がろうした直後、ソルが攻撃を仕掛けてくると母親が父親を庇った。
「あぁ・・・!」
その斬撃は反れてしまった事が父親は母親共々斬られてしまった。
「・・・」
ソルは自らの手で斬ったティアの父親と母親を見下ろしているとヘイゼルや他の兵士達がやってきた。
「ソル様、例の少女は見つかりましたか?」
「いや・・・だが、この男が歯向かってきて戦ったが・・・この人間の妻も斬ってしまったが・・・まぁいい、ここには例の少女が見つからなかった・・・帰るとしよう・・・」
ソルが、兵士達を連れて去ろうとするとヘイゼルが父親と母親が倒れているのを見ていた。
「ヘイゼル、なにをしている?さっさと来い。」
「・・・あぁ。」
兵士の一人に言われたヘイゼルは、倒れている父親と母親を見つめてからソルや他の兵士達と共に村から去って行った。
5章 少女の旅立ち
「お父さん・・・お母さん・・・!」
その光景を見ていたティアは、燃える家から飛び出して父親と母親の元に寄った。
「しっかりして!」
ティアは、母親の元へと駆け寄ったが、既に息は無く死に絶えていた。
「ティア・・・」
父親が、力のない声で呼ぶとティアは父親の元に寄った。
「・・・今から、私の言葉を聞いてくれ・・・お前は、旅立って・・・光翼の涙を集めてほしい・・・」
「光翼の涙・・・?それって、エレノアが造り出した不思議な羽の事・・・?」
光翼の涙とは、エレノアが亡くなる前に造った不思議な羽で神秘的な光の力が宿っていると伝えられていた。
「そうだ・・・二十年前、デスドゥンケルハイト軍が攻めて来た時に・・・八つが世界中の何処かに隠されてしまった・・・」
「八つ・・・何処にあるの・・・?」
「分からない・・・だが、この世界にあるのは間違いではないはずだ・・・」
八つある光翼の涙は世界中にあるが、何処に隠されているのかが分からなかった。
「どうして、私が光翼の涙を集めなくてはいけないの?」
ティアがそう思って父親に問うと、その理由について答えてきた。
「・・・ティア、よく聞いてくれ・・・光翼の涙はエレノアの血を引く者にしか手にする事ができない物で・・・デスドゥンケルハイト軍は手にする事ができないために世界中の
何処かに取り戻す事のできない場所へと一つずつ隠したんだ・・・」
父親が言うには光翼の涙はエレノアの血を引いた者にしか触れる事ができなかった。
「それじゃあ・・・私達は、その血を引いているの・・・?」
「そうだ・・・私達は、エレノアと同じ血を引いている一族だ・・・だが、デスドゥンケルハイト軍が襲撃してきた際、私達はなんとか逃げ延びる事ができた・・・」
「知らなかったわ・・・生き残ったエレノアの一族は私達だったなんて・・・」
ティアは自身がエレノアの一族の血を引いた末裔だと知って驚きを隠せなかった。
「・・・そうだ。そして、その血を引いているのはお前だけだ・・・だから、光翼の涙を集めてデスドゥンケルハイト軍と戦って・・・この世界の平和を取り戻して欲しい・・・家の地下にお前が旅立てるように武器と服や地図も置いてある・・・それを持って光翼の涙を集めて・・・デスドゥンケルハイト軍を倒して・・・命を奪われる恐怖から開放してくれ・・・」
父親がそう言うと、ティアは父親の手を握ってから言ってきた。
「お父さん・・・私、光翼の涙を集めるわ・・・デスドゥンケルハイト軍の支配する世界を開放して全ての命も救うわ・・・」
ティアの目から、涙が流れており戦う覚悟が出来ている目だった。
「・・・それでいい・・・頼んだぞ・・・私達の娘・・・ティア・・・」
父親はそう言った直後に安心した表情で静かに息を引き取った。
「お父さん・・・!私が世界中の人達を守るから・・・お母さんと一緒に見守っていて・・・!」
ティアは、涙を拭ってから焼き崩れた家の地下に入ると剣と服と地図を見つけた。
「・・・この服と剣、お父さんとお母さんが私のために用意してくれていたのね・・・」
ティアは剣と服を手にすると、両親が作ってくれた物なのだと悟った。
「私・・・命を守るために戦うから・・・だから、見守っていて・・・」
ティアは着替えてから地下に出ると、旅立つ前にやっておかなければならない事がある事を思った。
「・・・でも、出発をする前にやらなくてはいけない事があったわ・・・」
そう言って、ティアは家の近くに穴を掘って墓を作り両親の亡骸を墓に埋めた。
「・・・他の人達のお墓に埋めないと・・・」
ティアは村の方に行って見ると、無残にも村中に村人達の死体が転がっていた。
「酷い・・・罪も無い人達が、全員殺されているわ・・・」
周りを見回したティアは、村人達が一人残らず殺害されていて民家も燃やされていた。
「・・・この人達は・・・」
ティアは村を歩いていると、見覚えのある人物達の死体を見つけた。
「・・・やっぱり、デスドゥンケルハイト軍に殺されてしまっていたのね・・・」
その死体は、デスドゥンケルハイト軍によって処刑されようとしていた親子だった。
「ゴメンなさい・・・私が、貴方達を助けようとしたために・・・!」
ティアは、親子の死体に謝りながらも彼女の目から涙が零れそうになりながらも墓を作り始めた。
「・・・今すぐ、貴方達のお墓を作るから、安らかに眠って・・・」
そう言ったティアは親子を含めた村人達の墓を作り出した。
「・・・これで、全員のお墓ができたわ・・・どうか、安らかに眠って・・・」
ティアは時間をかけて村人達を埋めて全ての墓を立て終えると、朝日が昇っていた。
「・・・行ってくるわ・・・お父さん、お母さん・・・そして、村の皆・・・世界の闇から命を守る旅に・・・」
こうして、ティアは村を出て光翼の涙を集めデスドゥンケルハイト軍と戦う旅に出た。
そして、命を奪う闇から命を救う光の少女の旅が始まった。
6章 旅立ち
旅を始めたティアは村を出てからも歩き続けていた。
「そろそろ、休憩を取った方が良さそうね・・・」
休もうと思った直後、目の前にモンスターが現れた。
「このモンスターはハムネリアね。」
ハムネリアは可愛らしいハムスターのモンスターで腹に星のマークが付いていた。
「星竜族が世界を創造した事でモンスターが自然に誕生したって本にも書いてあったのを見た事があったわ。」
ティアが、そう思っているとハムネリアが攻撃を仕掛けてきた。
「・・・これは、簡単に避けられる・・・」
ティアは、アッサリとハムネリアの攻撃を避けた。
「ハムネリアは、弱いから簡単に倒せるはず・・・」
すると、再びハムネリアが攻撃を仕掛けてきた。
「えいっ!」
ティアは、剣を振るった事でハムネリアを倒した。
「・・・今の一撃でやられてなければいいけど・・・」
ティアは、ハムネリアの様子を疑っていると立ち上がったハムネリアは逃げ出した。
「良かった・・・まだ、生きていて・・・」
慌てて逃げていく、ハムネリアを見たティアは安心した。
「ちゃんと、命を奪わずに倒す事が出来たわ・・・」
ティアは、モンスターでも命を奪わないように戦っていたためにハムネリアは、殺されずに逃亡したと言う訳だった。
「モンスターには、色々いるけれど・・・ちゃんと、モンスターの特徴と属性を把握しながら戦った方がいいわね・・・」
それからも、ティアはモンスターとの戦闘を繰り返しながら先を進み続けた。
「・・・もう、夜になるし・・・ここまでにして、キャンプをしましょうか・・・」
そう言って、ティアは枝を集めて火を起こして焚き火をし始めた。
「・・・昔から、お父さんにもモンスターと戦闘やキャンプの事を教わっていたから一人で出来るようになって良かったわ・・・」
ティアは父親に幼少の時にモンスターとの戦闘やキャンプについて教わっていた時の事を思い出した。
『・・・いいか?モンスターは色々な種類がいて攻撃方法や特徴が違う・・・』
この時のティアは父親にハムネリア以外のモンスターの事を教わっていた。
(よく見ていてくれ・・・あのモンスターがどの動きをしているかを・・・)
父親はそう言ってから、モンスターとの戦闘をしてからティアに聞いた。
『・・・他のモンスターの動きを見てどう思った・・・?』
『えっと・・・ハムネリアと違っていて攻撃や動きが違っているだけでなく、魔法が使えるモンスターもいたわ・・・』
『そうだ。モンスターは、魔法だけでなく技も使うモンスターもいて属性もモンスターの種族も違っている・・・さぁ、ティアでも倒せそうなモンスターを選んで戦って見ていてくれ。』
父親に言われたティアは自分でも戦えそうなモンスターと戦闘をして父親に言われた通りに何度も戦闘を繰り返した。
「・・・言われた通りにして、モンスターの命を取らないように戦えるようになったのよね・・・」
ティアはそう思っていると。次はキャンプを教わっていた時の事を思い出してみた。
『さてと、もう夕方になるから・・・次はキャンプについて教えよう・・・』
父親はティアを連れて村の外でキャンプについて教わっていた。
『でも・・・お母さんに言わずに出て行っちゃったけど・・・良かったの?』
ティアは母親に言わずに出ていたので帰らないのかと心配になって聞いてきた。
『心配するな・・・出発の前日に話してあるから、夕飯は母さんだけだ。』
そう言って、父親と共にテントを立てるとキャンプを始めた。
「・・・あの時の料理は、私がやっていて・・・失敗していたわ・・・」
ティアは過去の事を思いながらキャンプをした。
「もう・・・朝ね・・・」
次の日の朝になり、ティアは旅を再開した。
「・・・そろそろ、地図を見て何処に行くのかwp確認してみようかしら・・・」
しばらく、歩いてモンスターと戦いを繰り返していたティアは現在地を確認するために地図を取り出して広げてみた。
「今は・・・ここら辺にいるようね・・・」
ティアは地図を見て、現在地を把握すると何処に辿り着く場所も確認した。
「・・・ここからだと、明日には着きそうね・・・」
ティアが辿り着く場所を見て村がある事が確認された。
「とりあえず、ここに行って光翼の涙に着いて聞いてみようかしら・・・」
こうして、ティアは目的地を村に決めて歩き出した。
「まずはこの峠を通らないと村には辿り着けなさそうね・・・」
村に向かうためにティアは峠を登り始めた。
「・・・ここを通れば、村に辿り着くはず・・・」
そう思っていると、目の前にモンスターが立ち塞がってきた。
「峠にもトキシックジェルがいたのね・・・」
現れたのは有毒な液状のモンスターでトキシックジェルと呼ばれていた。
「このモンスターも弱いから簡単に倒せそうね・・・」
ティアが剣を抜こうとした瞬間に、トキシックジェルが攻撃を仕掛けてきた。
「せいっ!」
とっさに剣を抜いたティアが剣を振るい攻撃をしたが、トキシックジェルは斬られた体を吸収して再生した。
「やっぱり、トキシックジェルは斬っても再生してきたわね・・・」
そう思っていると、トキシックジェルは体の一部を飛ばして攻撃をしてきた。
「今度は体を飛ばしてきた・・・これは、避けた方がいいわね・・・」
飛んでくるトキシックジェルの一部を見極めながら避け始めた。
(・・・やっぱり、トキシックジェルの体は酸になっているから触れれば溶けてしまいそうね・・・)
トキシックジェルの一部が岩に命中した事で溶けていくのが確認された。
(岩が溶けた・・・体が酸でできているトキシックジェルが体を飛ばしてくるのを止まるまでは攻撃をしない方が良さそうね・・・)
しばらく、避け続けているとトキシックジェルは小さくなっていた。
(・・・これ以上、飛ばしたらいけないと思って止まった・・・今なら、攻撃をしても大丈夫ね・・・!)
その瞬間、ティアはトキシックジェルに攻撃をして倒した。
「さてと、先に進みましょうか・・・」
トキシックジェルを倒したティアは、峠を歩いて行った。
「もうすぐで、峠を抜けられそうね・・・あら・・・?」
そのまま歩いていると、峠の出口付近になにかが見えてきた。
「あれは・・・なにかしら・・・?」
ティアは、近づいてみると一歳年上の少年が体の長い竜のモンスターと戦っていた。
「苦戦しているみたい・・・今すぐ、助けないと・・・」
少年の状況を見たティアは、剣を手にして少年に加勢しようとした。
「おいおい・・・まさか、こんな所にロングリザードがいるなんて聞いてねぇぞ・・・!」
少年と戦っていたのは、ロングリザードと言う竜のモンスターで体が長い見た目に四足歩行で歩く竜のモンスターだった。
「また、来る気かよ・・・!」
少年は、二本の剣を持っておりロングリザードの動きを見て攻撃を仕掛けてきた時だった。
「危ない!」
攻撃を仕掛けられる前に、その場に駆け付けたティアによって攻撃を阻止した。
「大丈夫?」
「あぁ・・・俺達で、このモンスターを倒そうぜ・・・」
「えぇ、このモンスターは強敵だから気を付けましょう。」
ティアが、そう言って少年と協力してロングリザードとの戦闘を始めた。
7章 ロングリザード
「気を付けろよ・・・コイツは、手強いぜ・・・」
少年が、そう言うとロングリザードは攻撃を仕掛けてきた。
「おっと・・・」
少年は、避けると同時に二つの剣を振るった。
「やっぱ、タフだな・・・!」
しかし、ロングリザードは攻撃を受けても平然としていた。
「私に任せて!」
ティアも剣を振るって攻撃を仕掛けようとしたが、ロングリザードは尻尾で攻撃をしてきた。
「きゃあ!」
ティアは尻尾に当って飛ばされた。
「大丈夫か?」
「えぇ・・・見た目に反しては、パワーが高かいようね・・・」
ロングリザードはパワーもあってティアも吹き飛ばされるくらいの威力だった。
「・・・アイツの攻撃を何度か喰らったらヤバいな・・・」
「あのモンスターに強い攻撃か技を当てる事ができればいいのだけれど・・・
貴方は、なにか技は使えないの?」
「もちろん、使えるぜ・・・そっちこそ、どうだよ?」
「私も使えるけど・・・やってみるしかなさそうね・・・」
ティアと少年がそう話している中で、ロングリザードがこちらに近づいてきた。
「来たぞ・・・俺が、技を当てるからアンタも技で当てろよ・・・」
「分かったわ・・・」
少年が、動き出してロングリザードの背後に回り込んだ。
『神風烈翔!』
地を蹴った少年は、荒々しい神風の如く素早い斬撃を繰り出してロングリザードに鋭い斬撃を当てた。
「よっしゃ!効いているぞ・・・!」
少年は、着地するとティアは怯んでいるロングリザードに向けて技を繰り出した。
『竜滅閃光!』
ティアは竜を滅し閃光の一撃でロングリザードを斬りつけた。
「これで、コイツは倒せたはずだ・・・」
しかし、少年は勝利と確信したものの、ロングリザードは未だに動けていた。
「くそっ・・・まだ、駄目か・・・」
その途端、ロングリザードはティアの方に倒れていった。
「おい・・・!」
少年は、とっさにティアの手を掴んで引っ張り出した事でロングリザードに潰されずに済んだ。
「・・・危なかった・・・もう少しで、潰される所だったぞ・・・?」
少年が、そう言うとティアは「ありがとう・・・」とお礼を言った。
「まさか、こんなに強そうなモンスターを倒せるなんて思っていなかったから・・・」
「そうか・・・そう言えば、名前はまだ聞いてなかったな・・・なんて言うのか教えてくれよ?」
「私の名前はティア・エルセレスフィナよ。」
ティアが自己紹介をすると、少年が名前を聞いて自身の自己紹介をしてきた。
「ティアか・・・俺の名前はギルバード、ギルって呼んでくれよな。」
「分かったわ・・・ギル。」
少年はギルバート問う名で、あだ名をギルだと名乗ってきた。
「それで、ティアは何処から来た?なんだか、旅を始めたばかりに見えるが・・・」
ギルバートはそう言ってくると、ティアはその理由を話し始めた。
「それは・・・理由あって旅を始めたの・・・」
「へぇ・・・それじゃあ、旅の目的について説明してくれよ?」
ギルバートが興味深そうにその事を聞きたそうにしていた。
「・・・話したら、きっと驚く事になると思うわ・・・」
「分かったよ。だったら、話してくれよ?」
そう言われたティアは旅を始めた理由をギルバートに話し始めた。
「・・・私はエレノアの血を引いた一族でデスドゥンケルハイト軍によって隠された八つの光翼の涙を集めるために旅に出たの・・・」
ティアが旅に出た理由を話すとギルバートは少しの間、黙り込んでから言ってきた。
「そうか・・・お前があのエレノアの血を引いた末裔か・・・」
「・・・今の言葉を聞いたら誰だって驚くと思ったけど・・・驚かないの?」
「正直、驚いているさ・・・まさか、お前があのエレノアの血を引いた末裔だったなんて・・・本当にラヴィレイヘヴンを創造したエレノアの末裔だって言っていたのか?」
「そうよ。でも、お父さんはエレノアの血を引いた一族だって言っていたわ。」
「・・・それで、光翼の涙を集めてデスドゥンケルハイト軍を倒す旅を始めたのか・・・」
ティアが、そう言うとギルバートは話を聞いて納得をした。
「・・・お前の旅を始めた理由は分かった・・・本当に、デスドゥンケルハイト軍と戦うつもりかよ?」
ギルバートがそう聞いてくるとティアは「えぇ・・・」と答えてきた。
「・・・私は今まで命が失われていくのを見てきたわ・・・私の住んでいた村に攻めてきて村人達だけでなく、お父さんもお母さんも無残にも殺されてしまったの・・・」
「旅を始めた理由がデスドゥンケルハイト軍を倒して親の仇を討つためだったのか・・・まぁ、デスドゥンケルハイト軍に殺されたら誰だって恨んでいるのも当然だろうな・・・」
そう思ってから、ギルバートはティアにこう言ってきた。
「なぁ・・・だったら、俺も一緒に行ってもいいか?お前の話を聞いていたら、一緒にデスドゥンケルハイト軍と戦いたくなってきたぜ・・・」
「でも・・・それじゃあ、貴方もデスドゥンケルハイト軍に逆らってしまう事になるわ・・・」
「心配するな。ソイツ等と戦うには無理がありすぎるからな・・・それに、女一人だけで旅をするのも大変だろ?」
ギルバートが、そう言ってくるとティアはギルバートを見て言ってきた。
「分かったわ・・・これからも、よろしくギル。」
「こちらこそ、よろしく頼むぞ。」
こうして、ギルバートが加わりティアは峠を越えた。
8章 村での情報集め
峠を抜けてからも、ティアとギルバートは歩き続けていた。
「・・・つまり、ティアはデスドゥンケルハイト軍に襲撃された村の生き残りだったのか・・・」
その道中でティアは、ギルバートに村で起こった事を話していた。
「えぇ・・・処刑されようとしていた家族を助けるために、私は戦ったけれど・・・それが原因で兵士に逆らってしまった事で村が襲撃されてしまう原因を作ってしまったの・・・」
ティアは村での出来事を話しているとその惨劇を思い出して辛くなっていった。
「・・・だけど、もしもその家族を助けようとしなかったら、お前はなにをしていたと思うか考えたのか?」
ギルバートにそう質問されて、ティアはこのように答えた。
「それは・・・きっと、殺されるのを黙って見ているだけだったと思うわ・・・」
「そうだな。他の奴等も村の仲間が殺される光景を目にしていたのかも知れないのかも知れなかったからな・・・それよりも、もう村に到着するぞ。」
ティアとギルバートは、話をしている内に村に着いた。
「夕方まで、まだ時間がありそうだから村で情報を集めようぜ。」
村に着いたティアとギルバートは、光翼の涙について村人達に聞き込みを始めた。
「・・・光翼の涙が何処にあるのか、なに一つも情報が集まらなかったわ・・・」
「あぁ・・・話す処か、光翼の涙って言っただけで、怯えていたが・・・ありゃあ、本当の事を隠しているようにしか見えなかったな・・・」
村人達に光翼の涙について聞いた時に、村人達がなにかに怯えている様子が感じられた。
「・・・多分、アイツ等が光翼の涙について誰かに教えようとしたら殺すと言っていたのかも知れないみたいだったぞ・・・」
どうやら、光翼の涙について話してはいけないと二十年前から禁止されていた。
「そうかも知れないわね・・・お父さんもお母さん以外の人から、光翼の涙について聞かされていなかったから・・・」
ティアは、両親にしか光翼の涙の事を聞かされていなかった。
「・・・俺も昔、聞いた事があったけど本当らしいな・・・せっかく、旅を始めたばっかりなのに・・・なにも情報が得られないのかよ・・・」
ギルバートは恐怖で教えようとはしなかった村人の事を思い出して苛立ち始めた。
「ギル、落ち着いて・・・」
苛立つギルバートにティアが宥めようとすると、誰かが見ている気配に感じて振り向いた。
「貴方は・・・?」
振り向いた先に少女がおり、ティアは声をかけるとそのまま何処かへと逃げてしまった。
「待って・・・」
少女が逃げていくのを見て、ティアはその後を追いかけた。
「おいおい、こんな時に子供と追いかけっこをするのかよ・・・全く・・・」
ギルバートも呆れながらもティアの後を追いかけた。
「あの子、あの家の中に入って行ったみたい・・・」
追いかけていると、少女が家の中に入って行くのが見えた。
「この家に入って行ったと言う事は、あの子の家なのかしら?」
そう思っていると、ギルバートが駆けつけてきた。
「ティア、この家にさっきの少女が入ったのか?」
「えぇ、あの子は私達の話を聞いて逃げたのだと思うわ・・・」
ティアが、そう言うと少女の入った家の扉をノックすると扉が開いた。
「開いている・・・」
「全く、無用心だな・・・とにかく、入って見ようぜ。」
ギルバートがそう言うと、ティアは扉を開けて家の中に入った。
「貴方は・・・」
家の中に入ると、村長らしき男性と先程の少女がいた。
「あっ・・・」
少女は、ティアとギルバートを見て驚いた表情になった。
「どうして、私を見て逃げたの?」
ティアが、尋ねると少女は俯いたままなにも喋らなかった。
「・・・なんか、俺達を怖がられているような感じがするぞ。」
「大丈夫よ。私達は、悪いお姉さんとお兄さんじゃないから・・・だから、安心して顔を挙げて・・・」
ティアがそう言うと、少女は顔を挙げてティアとギルバートを見た。
「・・・良かったです・・・悪い人じゃなくて・・・」
少女は、二人が悪い人間でない事に安心をした。
「本当よ。私達は、デスドゥンケルハイト軍のような人間じゃないわ。私は、ティア。」
「それで、俺がギルバートでギルと呼んでくれよ。」
「・・・私の名前は、ステラ・ルミネストラです。」
少女が、ステラ・ルミネストラと名乗ると村長がティアとギルバートを見つめながら言ってきた。
「・・・先程、お前達は光翼の涙について話し合っていたな・・・?」
「どうしてそれを・・・?」
「先程、ステラから聞いたのだが・・・デスドゥンケルハイト軍が隠したと言う光翼の涙について
話しているのを見たと言っていたのだ・・・」
ティアとギルバートが、話していた時にステラは全て聞いていた。
「はい。私は、光翼の涙を探し出しデスドゥンケルハイト軍の支配から開放するために旅を始めました。」
ティアが、そう言うと村長は理解したかのように言ってきた。
「そうか・・・まさか、光翼の涙を探し出す者が現れるとは・・・いいだろう。私の知っている事を話してやる・・・」
「本当にいいのでしょうか?光翼の涙の事を話してしまって・・・」
「いい・・・この少女が光翼の涙を探していると言う事は・・・エレノア様の血を引いた一族だと言う事だ・・・」
村長がそう言うと、ステラが気になった様子で聞いた。
「この人がエレノアの血を引いているのですか・・・?」
ステラはティアがエレノアの一族だと知るとティアの顔を見つめ続けた。
「信じられないと思うが、ティアをよく見てみろよ。エレノアと同じ色をしているだろ?」
そう言われたステラはティアの髪と瞳を見つめた。
「確かに・・・絵本で見たエレノア様に似ています・・・」
ステラは、ティアがエレノアの末裔だと信じた。
「・・・それでは、光翼の涙の一つが何処にあるのかを話そう・・・この村の近くにあるナナクビノリュウの森と呼ばれる森だ・・・」
9章 森へ向かう準備
「ナナクビノリュウの森・・・?あそこは、ナナクビノリュウって言う竜のモンスターが生息している森か?」
「あぁ、ナナクビノリュウは七本の首がある竜のモンスターだ・・・デスドゥンケルハイト軍は、凶暴なナナクビノリュウがいるのであれば、戦って取り戻そうとする者がいないと思って隠したのだろう・・・それでも、ナナクビノリュウと戦い光翼の涙を手に入れるつもりか?」
村長が、戦う覚悟があるのかとティアに訊ねてきた。
「・・・もちろん、私は世界中の命を守るために戦うと誓いました。そうでなければ、この世界にいる人達の命を守る事はできません・・・」
ティアがそう宣言すると村長は納得をした。
「・・・だが、これだけは気を付けろ・・・ナナクビノリュウは、首を一つ切り落としたぐらいでは倒せんぞ・・・」
ナナクビノリュウと戦う際に注意する事を言われたティアは、静かに息を呑んだ。
「はい・・・ギル、行きましょう・・・」
ティアは、首を斬られたナナクビノリュウの事を想像してしまった。
「心配するな。ナナクビノリュウは全部の首を斬らないと死なないモンスターだから、七回首を切っても死ぬ訳じゃないから心配するなよ・・・」
ギルバートは平然と言ってきたが、それでもティアは嫌そうな表情をしていた。
「・・・ギル、そのような事を言うのは止めて・・・そう言う事を聞くのも嫌いなの・・・」
ティアがギルバートにそう言うとステラが家から出てきた。
「なんだ?まだ、なにかあるのか?」
ギルバートが訊ねると、ステラは恥ずかしそうに答えてきた。
「あっ・・・あのう・・・!」
「なんだよ?もっと、ハッキリ言ってくれよな?」
「大丈夫よ。しっかり、自分自身を持って・・・」
ティアが、そう言うとステラは恥ずかしがるのを止めて二人に言ってきた。
「・・・頑張ってください。」
そう言ったステラは、そのまま家の中へと入っていった。
「・・・たった、それを言いたかったのかよ?」
「ギル、あの子も私達の事を心配してくれているのだと思うわ。」
「そうだな・・・それじゃあ、出発する前に道具を揃えておくか・・・」
ギルバートが、そう言うとティアは道具を揃えるために店の中へと入って行った。
「いいか?ナナクビノリュウの森は、奥に住み着いていて、そこに辿り着くにはコンパスが必要だ。」
「そうね。お父さんから、教えられていたから知っているけど・・・仮に迷って二度と出られなくなってしまった時にワープベルが必要よ。」
ワープベルは思い描いた場所を念じながらベルを鳴らすだけで世界中何処でも転移する事のできるベルで旅をする際に必要な道具だった。
「それと、カンテラも暗い所にいる時に持っていた方が良いぞ。」
「後はテントだけね・・・旅をしている最中に仲間が増えて、限界人数を超える事も考えて大きいテントを選んでおいた方がいいわね・・・」
ティアは、万が一仲間が増える事があってもいいように大きめなテントを選んだ。
「さてと・・・回復アイテムも揃えた事だし・・・そろそろ、買おうか。」
「でも、これだけ買ってお金は大丈夫なの?旅立つ前にお金なんて持っていなかったけど・・・どれだけのティンクルがかかるか分からないわよ?」
ティンクルは通貨の通称であった。
「大丈夫だ。俺が、全部買っているよ・・・丁度、これを買えるだけの金は持っているから心配しないでくれ。」
そう言って、金が入っている袋をティアに見せた。
「全部で千ティンクルくらいかかりそうだけど・・・本当にいいの?」
「あぁ・・・これからの旅のために色々と揃えていた方がいいからな・・・」
そう言って、会計を済ませて色々な道具を購入して店を出た。
「・・・また、お前か。」
店を出て出発をしようとした際、ステラが店の前に立っていた。
「どうしたの?まだ、なにか言い忘れた事でもあったの?」
ティアが訊ねてくると、ステラはモジモジとしながら言ってきた。
「はい・・・絶対に無事で帰ってきてください・・・祈っていますので・・・」
「えぇ、光翼の涙を手に入れたら、ちゃんと帰ってくるから安心していて・・・」
「あぁ、だから大人しく俺達が無事に手に入れられるように祈っていてくれよな?」
ティアとギルバートが、そう言うとステラは安心した。
「・・・分かりました。二人が、無事で帰って来てくれる事を願いながら待っています。」
そう言って、ステラは安心した様子で帰って行った。
「あの子・・・きっと、私達の事が心配で来てくれたのかも知れないわね・・・」
「そうだな。アイツのために生きて帰らないと・・・悲しんでしまうからな・・・だから、アイツのために頑張って光翼の涙を手に入れようぜ。」
こうして、無事を祈るステラのためにティアとギルバートはナナクビノリュウの森へと向かって行った。
10章 ナナクビノリュウの森
「ここが、ナナクビノリュウの森ね・・・」
村から出たティアとギルバートは、数分でナナクビノリュウの森に着いていた。
「あぁ・・・森の奥に行けば、光翼の涙が手に入れられそうだ・・・」
「えぇ、ナナクビノリュウもいる事も忘れないで。」
ティアとギルバートは、一つ目の光翼の涙を手に入れるためにナナクビノリュウの森の中へと入って行った。
「ここは、コンパスの方角に従って進むぞ。」
ギルバートが、コンパスを取り出して確認して見ると方針が北の方角を指していた。
「どうやら・・・光翼の涙は北の方角にあるな・・・ナナクビノリュウがいる場所だ。」
「・・・ナナクビノリュウが、いないか眠ってくれればいいのだけれど・・・」
一つ目の光翼の涙を手に入れるためにティアとギルバートは森の中を進み始めた。
「・・・ここにも、モンスターがいるから気を付けて進めよ・・・何処から、現れるか分からないからな・・・」
ギルバートがそう言った直後に木の中からモンスターが現れた。
「コイツはテイルロールって言うモンスターだな。」
テイルロールは、森に生息しているリスのモンスターだった。
「このモンスターは、可愛いけど・・・戦うの?」
「コイツは、尻尾を使って戦うモンスターだ。ただし、襲ってこなければ害はないぞ。」
そう言った矢先にテイルロールは、尻尾を使って攻撃を仕掛けてきた。
「うおっ!いきなりか・・・」
急な攻撃に驚きつつもギルバートは、両手に剣を手にして攻撃を防いだ。
「ゴメンなさい・・・」
ティアは謝ってから、反撃をしてテイルロールにダメージを与えた。
「後は、俺に任せてくれ!」
ギルバートは、トドメを刺そうとした時だった。
「待って!」
テイルロールに攻撃をしようとした途端にティアが止めに入ってきた。
「なにすんだよ・・・トドメを指せられないだろ・・・?」
「・・・もう、戦うのは止めて・・・テイルロールは、これ以上戦う気はないわ・・・」
ティアが、そう言うとテイルロールは逃げ出して行った。
「良かった・・・ちゃんと、逃げてくれて・・・」
「・・・なんで、モンスターなんて庇った?普通、モンスターは倒すのは仕留めるのが普通だろ?」
ギルバートはそのように言ったが、ティアは首を横に振ってから答えてきた。
「本来なら、誰でもそうしているわ・・・けれど、私にはどうしてもモンスターを殺してまでも、倒すような事はしないわ・・・お父さんやお母さんにもそう教えられてきたから・・・」
ティアがそう言ってから、先へと進み始めた。
「なんだよ・・・アイツ、そんなにトドメを指すのが嫌なら、戦わなきゃいいのに・・・」
ギルバートは、そう思いながらティアの後に連いて行った。
「あら?あそこに、洞穴があるわ・・・」
森の中を進んでいる途中で洞穴を見つけた。
「この中にモンスターが、潜んでいるかも知れないから無視して行くぞ・・・」
ギルバートが、そう言った途端に、突如として洞穴の中からモンスターが飛び出してきた。
「コイツは・・・ヤバそうな奴に出会っちまったな・・・」
現れたのは、通常の熊よりも巨大な熊のモンスターで同じ見た目をした小熊のモンスターだった。
「子供がいると言う事は・・・親子連れのモンスターみたいだな。」
熊のモンスターは親子連れで無数の子供達も連れていた。
「親子と言う事ね・・・ここは、大人しく引き下がった方が・・・」
ティアはそう言ったが、ギルバートは既に戦闘態勢に入っていた。
「駄目だ。コイツは冬眠する季節以外は餌を求めているモンスターだ・・・しかも、コイツ等はデカいから好戦的だぞ・・・」
すると、親である熊のモンスターがティアとギルバートを見て威嚇をし始めた。
「・・・しかも、俺達を喰おうと狙う気だぞ・・・逃げようが戦おうが喰われるのは変わんねぇぞ・・・」
熊のモンスターは親子共々ティアとギルバートに襲いかかってきた。
「コイツ等はパワーがあって目もいいから気を付けろよ・・・!」
ギルバートはそう言ってから、親の熊のモンスターと戦闘を始めた。
「ギル・・・私はこの子達と戦わなくちゃいけないの・・・?」
目の前には、大勢いるモンスターの子供達が今にもティアに襲いかかろうとしていた。
「大丈夫だ!大人の方はヤバイが子供の方ならなんとか倒せるぞ!」
ギルバートが親の熊のモンスターと戦いながら言ってきたが、ティアは子供の熊のモンスターと戦う事に戸惑っていた。
(・・・この子達はまだ子供なのに・・・戦わなくてはいけないの・・・?)
ティアは幼いモンスターでも戦わなければいけない事に迷いが生じていた。
(ギルは戦っているのに・・・子供のモンスターでも倒さなくては駄目なの・・・?)
ティアが子供のモンスターと戦う事に迷いが生じていると子供である熊のモンスター達が一斉に攻撃を仕掛けてきた。
「来た・・・!」
ティアは攻撃を仕掛けようとしたが、剣を振らずに避け続けてばかりだった。
(駄目・・・やっぱり、子供達がいるモンスターでも、どうしても剣を振るう事ができないわ・・・!)
ティアは一切剣を振るわずに襲ってくる子供の熊のモンスター達の攻撃を避け続けるだけだった。
「きゃっ!」
攻撃を避け続けていたティアは転んで尻餅をついてしまった。
「しまった・・・!」
子供の熊のモンスター達がティアに襲いかかろうとした時だった。
「ティア!」
ギルバートは親の熊のモンスターを倒して子供の熊のモンスター達を一掃した。
「大丈夫か?親の方も倒したぞ。」
そう言われたティアは、親の方を見てみると既に熊のモンスターは親子共々、倒されおり子供の方も先程の攻撃によって倒されていた。
「・・・ティア?」
「ギル・・・どうして、子供達を殺したの・・・?」
「どうしてって・・・こうでもしなきゃ、やられていただろ?」
熊のモンスター達は親子共々、ギルバートの攻撃によって既に息を引き取っていた。
「・・・そうだとしても、家族がいるモンスターを殺すなんて酷すぎるわ・・・」
「仕方ないだろ・・・コイツ等は厄介なモンスターだったから、やられちまったら俺達が殺されていたのかも知れないんだぞ?」
ギルバートは倒したモンスターの親子を見ながらそう言ってきた。
「それでも・・・貴方が殺してしまった事に変わりはないわ・・・」
ティアはデスドゥンケルハイト軍のように熊のモンスターの親子が死んだのを見た事で村での惨劇を思い出して悲しげな表情になっていた。
「・・・モンスターは襲いかかってくるから戦って倒さなきゃ、こっちが殺されちまうからな・・・」
「ギル・・・貴方のやっている事は、命を奪っているのと同じよ・・・」
そう言いながら、熊のモンスターの親子を見て悲しみを感じながら言ってきた。
「ティア・・・悪かったよ。なるべく、殺さないように気を付けるから元気を出せよ・・・それより、さっさと光翼の涙を手に入れようぜ・・・なっ・・・?」
ギルバートが、そう言うとティアは静かに剣を鞘に戻した。
「・・・行きましょう。」
それからも、ティアとギルバートは森の奥へと進んで行った。
11章 七つの道
ティアとギルバートは、ナナクビノリュウの森の奥深くまで進んでいた。
「そろそろ、奥に着いてもいい頃だけれど・・・方角は、合っているの?」
「あぁ・・・この道が正しければな・・・」
二人の目の前には、七つに分かれた道があった。
「多分、この七つの内一つが、正解だと思うぞ?しかも、ステラの言っていたようにナナクビノリュウの首の数に合わせたかのように七つも分かれていやがるな・・・」
ギルバートは、七本ある道を一本ずつ確認し始めた。
「駄目だ・・・どの道も奥が、どうなっているか分かんねぇぞ・・・」
「困ったわね・・・外れの道を進んだら、永遠に森の中から出られそうにないわ・・・」
ティアが、どの道にするか迷っている時だった。
(・・・この感じは・・・なにかが感じてくる・・・)
なにかがティアの中に感じ取られていた。
「どうした?正解の道が、どれか分かったのか?」
「・・・僅かに何かが感じられてくるの・・・これは、光の魔力・・・?」
謎の光の魔力はティア以外にしか感じられなかった。
「なんだよ?俺にはなにも感じられないぞ?」
「分からないけれど・・・私にだけ、不思議な光の魔力が感じられてくるの・・・」
ティアは、魔力を感じながら七本の道の一番右の道を指した。
「こっちよ・・・こっちから、魔力が感じられるわ・・・」
「本当か・・・?俺には光すらなんにも感じられてこないぞ・・・」
光の魔力を感じながらもティアは一つの道を進むとギルバートも不安そうに連いてきた。
「・・・また、同じ道に戻って来たぞ。」
しかし、進んで見たが先程と同じ道が七つ並んでいた。
「いいえ・・・合っているわ。さっきよりも、少しだけ魔力が感じられてきたの。」
どうやら、今の道で間違いではなかった。
「本当か?今度は、どの道を辿ればいいんだ?」
「待って・・・今、魔力を探っているから・・・」
そう言って、ティアは魔力を探ると今度は一番左の道を指差した。
「今度は、こっちよ・・・」
一番左の道を進んで行くと、またしても同じ道が七本並んでいた。
「やっぱり、同じ場所だ・・・一体、どうなっているんだ・・・?」
「大丈夫よ。ちゃんと、合っているから心配しないで・・・」
ティアは、先程よりも魔力が強くなっている事が感じられた。
「・・・また、魔力が感じられやすくなっているわ。今度は、真ん中の道の右の道よ。」
その後も同じ道のりに辿り着いては、ティアの魔力を探って正しい道を選び、不思議な魔力も強く感じられるようになっていった。
「・・・真ん中の道から、不思議な魔力を感じられてくるわ・・・この奥を進んで行けば、光翼の涙がある筈よ・・・」
「そうか・・・だったら、真っ直ぐ行こうぜ。」
ティアとギルバートは、真ん中の道を通っていくとなにやら聖なる光が見えてきた。
「あの光は・・・?」
「・・・もしかしたら、光翼の涙なのかも知れないわ・・・」
そう言って、奥へと進んで行くと広い場所に着いた。
「ここは・・・なんだ?森の奥にこんな場所があったなんて・・・」
ギルバートが、辺りを見回しているとティアが奥にある物を見て言ってきた。
「見て・・・あそこにあるのは、光翼の涙じゃないかしら・・・?」
ティアが、そう言いギルバートは奥の方を見て見ると不思議な光と魔力が放たれている神秘的な輝きを持つ羽が浮んでいた。
「さっきの魔力は・・・光翼の涙から、あの魔力が感じられたのね・・・」
ティアが感じていた魔力の正体は、光翼の涙から放たれている神秘的な光と共に放たれている魔力であった。
「どうりで、最初の道から進む度に徐々に強く感じられていったのね・・・」
そう思っていると、ギルバートがその事について訊ねてきた。
「それじゃあ、なんでティアだけが魔力が感じられたか教えてくれないか?」
「分からないわ・・・まずは、一つ目の光翼の涙を手に入れてから考えましょう。」
「そうだな。その事は、また考えれば良いさ・・・さっさと、手に入れようぜ。」
ティアは一つ目の光翼の涙を手に入れようと近づいた時だった。
「なに・・・?今の声は・・・」
突如として、何処からかなにかの遠吠えが聞こえてきた。
「・・・どうやら、例のモンスターが来たようだぜ・・・」
ギルバートがそう言いながらも声の聞こえた方に振り向くと七本の首を持つ竜が現れた。
「ギル・・・このモンスターは・・・!」
「あぁ・・・コイツこそが、七つの首を持つ竜・・・ナナクビノリュウだ・・・!」
ギルバートが二本の剣を手にすると、ナナクビノリュウは雄叫びを挙げた。
「しかも、縄張りに入ってきた俺達を喰うつもりだぞ・・・!」
「やっぱり・・・戦うしか方法がないのね・・・」
そう言ったティアは剣を手にすると、ギルバートも二本の剣を手にしていた。
「コイツを倒さないと光翼の涙が、手に入らないぞ・・・やるぞ!」
ギルバートは、そう言って動き出しナナクビノリュウに攻撃を仕掛けようとした。
「くっ・・・!」
しかし、ナナクビノリュウの七本の首が同時に動き出した事で攻撃をする事ができなかった。
「駄目だ・・・首が、七本もあるから攻撃しにくいぞ・・・!」
「待って!私も戦うわ!」
ティアも戦闘に加わり、ギルバートと共にナナクビノリュウとの戦闘を始めた。
「いいのか?コイツを殺してしまう事になるぞ?」
ギルバートは訊ねたが、ティアは戦う事を決めているようだった。
「・・・とりあえず、喰われないようにしろよ・・・」
戦う事を決めたティアはギルバートと共にナナクビノリュウと戦い始めた。
12章 七つの首を持つナナクビノリュウ
「首が何本もあるわ・・・これは、倒すのは大変そうね・・・」
「コイツは七本も首があるからな・・・一本の首だけ攻撃しようとしたら、他の首に攻撃されてやられちまうぞ・・・」
ティアとギルバートは、お互いに警戒をしているナナクビノリュウが全ての首を使って攻撃を仕掛けてきた。
「来た・・・!」
ナナクビノリュウの首が、迫ってくるのを見たティアとギルバートは攻撃を避けた。
「はあっ!」
攻撃を避けたティアは、ナナクビノリュウの一本の首に目掛けて反撃を仕掛けようとした。
「ティア、後ろだ!」
ギルバートが、叫びティアは振り向くと他の首が迫って来ていた。
「伏せろ!」
素早くティアの前に移動したギルバートは、ナナクビノリュウの攻撃を防いだ。
「大丈夫か?だから、さっき言っただろ?一本の首を攻撃したら他の首に攻撃されるって・・・」
「でも・・・それだったら、攻撃を与えられないと思うわ。」
「だろうな・・・まずは、首の数をどうにかしないといけないな・・・」
ギルバートが、そう言うとナナクビノリュウが七つの頭が噛み付こうとしてきた。
「とにかく、反撃をしないと・・・!」
ティアとギルバートは、ナナクビノリュウの攻撃を避けながら反撃を始めた。
「駄目・・・他の首から、攻撃が仕掛けてくるから攻撃をする暇がないわ・・・」
「あの首を一本ずつなんとかした方がいいぜ・・・」
ギルバートが、そう言うとティアは覚悟を決めたかのように聞いてきた。
「ギル・・・ナナクビノリュウの首は、一本ずつ命があるの・・・?」
「いいや?ナナクビノリュウは七本の首があるが、体は一つだから確実に死ぬのは全ての首が死んだ時だ。」
「そう・・・首を全部斬らない限りは、死なないのね・・・」
ティアが、理解するとナナクビノリュウがこちらに攻撃をしようと準備をしていた。
「ティア・・・まさか、アイツの首を全部斬って死なないか聞いたのか?」
「・・・いいえ。首一本に命があるかも知れないと思って聞いてみたの・・・でも、本当にナナクビノリュウの首を全て切ってしまってもいいのかしら?」
ティアは、七本の首に命に別状がない事を知ったが本当に首を斬るか斬らないか迷っている様子だった。
「・・・ナナクビノリュウは、この森を牛耳っていると言いたそうなモンスターだ。ここにいるモンスター達もアイツに恐れているのかも知れないんだぞ?この森に生息する何匹ものモンスター命かアイツの命はどっちを倒せばいいと思っている?」
ギルバートが、そう聞いた直後にナナクビノリュウはブレスを吐こうと溜め始めた。
「ほらっ・・・どうするんだ?コイツを倒してこの森のモンスターの命を守って光翼の涙を手に入れるか・・・コイツを倒さずに光翼の涙を手に入れるのは止めるか・・・
どちらにしても、アレを手に入れる事ができないぞ?」
ギルバートが、光翼の涙を指差して言ってくるとティアはどうするべきか判断をした。
「えぇ・・・ナナクビノリュウを倒して光翼の涙を手に入れるわ・・・でも、命を奪う訳ではなく、殺さないようにしながら倒すようにするわ。」
そう宣言したティアにギルバートは笑みを浮かべた。
「よく言ったな!ナナクビノリュウは首が一本になっても生きられるから心配しないでくれ・・・」
その矢先にナナクビノリュウは、溜め終えたブレスを吐いてきた。
「かなり、グロいが・・・我慢してくれよ!」
ギルバートが、そう言った直後にナナクビノリュウはブレスを吐いてきた。
「来るぞ!避けろ!」
二人は、ブレスを避けるとギルバートが素早く動き出してナナクビノリュウの隣に移動した。
『神風烈翔!』
ギルバートが、荒々しい神風の如く斬りかかった事によってナナクビノリュウの首を三本も斬った。
「よっしゃ!もう一度、神風烈翔を喰らわせてやる!」
そう言って、ギルバートは同じようにして神風烈翔を繰り出した。
『神風烈翔!』
ギルバートは、先程と同様の技でナナクビノリュウの首をもう三本も切り落とした。
「首が、一本だけになったぞ・・・ティア!」
「えぇ・・・!」
剣を手にしたティアは、首が一本になったナナクビノリュウに駆け寄った。
(ゴメンなさい・・・!)
ティアは、密かに謝罪をしながらも技を繰り出した。
『竜滅閃光・・・!』
不服に思いながらもティアは竜を滅し閃光の一撃でナナクビノリュウに重い一撃を与えて倒す事ができた。
「やったな。これで、一つ目の光翼の涙はゲットだ・・・ティア?」
ナナクビノリュウを倒したはずが、ティアは倒れたナナクビノリュウを見てなにかを思い詰めていた。
「・・・殺さずに倒したのはいいけれど・・・首が、一つになったナナクビノリュウは家族を失ってしまったかのように孤独になってしまったみたいで・・・」
ティアは首が一本だけになったナナクビノリュウを見て、天涯孤独になったかのように思えた。
「おいおい・・・普通、ここは光翼の涙が手に入って喜ぶはずだろ?なにをそんなに悲しむ必要があるんだよ?」
ギルバートはそう言ったが、ティアはなにやら後悔の念を抱いていた。
「・・・それでも、七つの内六つの首を斬ってしまった事で残った一つの首はこのまま一人で生きていかなければならなくなったと同じよ・・・」
ティアはソルによって、両親が殺された時の事を思い出して涙を流した。
「ティア・・・あまり、そう言う事は考えすぎない方が良いぞ。」
「・・・貴方はナナクビノリュウの首を六本も斬ってしまった・・・それは、まるで家族を殺したようにも見えたわ・・・」
ティアは、ギルバートがナナクビノリュウの首を斬るのを見てそう見えていた。
「・・・もう、そう言うのを考えないでくれよ・・・さっさと、光翼の涙を手に入れてここから出ようぜ?コイツの事で色々と思いだして辛くなりそうだからな・・・」
ティアは不服に感じながらも光翼の涙を手にしようとした時だった。
「なに・・・光翼の涙が私の周りを回って・・・?」
手にしようと途端、光翼の涙がティアの周りを回りだした。
「これは、一体・・・?」
光翼の涙が、ティアの周りを回っていると徐々に光に包まれると吸収されるようにティアの体の中へと入っていった。
「今の光は一体・・・光翼の涙が私の中に・・・?」
「多分、ティアがエレノアの一族だから吸収されたと思うぞ。良かったな・・・一つ目の光翼の涙が手に入れて・・・村に戻ってステラや村長に報告しようぜ。」
こうして、一つ目の光翼の涙を手に入れたティアはナナクビノリュウの森を出て村へと戻って行った。
「二人共、お帰りなさい。」
ティアとギルバートは、村長の家に戻るとステラが無事に帰って来た様子を見て安心した。
「ただいま・・・ステラ。」
「・・・光翼の涙は、手に入れたのか?」
「はい・・・ですが、光翼の涙は私の周りを回りだして光になって吸い込まれるように体の中に入ってしまいました。」
「吸い込まれるようにとは・・・?」
「私が、手にしようとした瞬間に私の周りを回っていました。」
「そうか・・・しかし、まさか本当に光翼の涙を手に入れるとは驚いたぞ・・・
エレノア様の血を引く末裔が生きていたとは・・・今夜は、村の宿屋に泊まっていってくれ・・・」
ティアとギルバートは、村にある宿屋に泊まって体を休める事にした。
「・・・眠っているようだな・・・」
深夜、ギルバートはティアが眠っているのを確認すると部屋を出て、すぐに部屋に戻ってベッドの中に入った。
13章 村から脱出
「・・・八つある光翼の涙の内、一つが奪われてしまったと・・・?」
同じ頃、ラヴィレイヘヴンにある城の玉座の間では、ソルが何者かに報告を伝えていた。
「はっ・・・明日、そこへ行って聞き出そうと思います・・・知らない素振りをしていたとしても・・・分かっております。」
そう言って、ソルは立ち上がって玉座の間を出て行った。
「ギル・・・お早う・・・」
次の日の朝になり、ティアとギルバートは目を覚ました。
「もう、朝か・・・朝食を喰ったら、ステラに挨拶をしてから出るか・・・」
ギルバートが、ベッドから降りた時に扉が開かれて、ステラが慌てた様子で入ってきた。
「ティア・・・ギル・・・大変です・・・!」
「どうしたの?慌てているようみたいだけれど・・・なにかがあったの?」
ティアが訊ねてくると、ステラは息を整えてから話した。
「・・・この村に・・・デスドゥンケルハイト軍がやってきました・・・!」
「本当・・・?でも、どうして・・・」
「・・・もしかしたら、光翼の涙を手に入れたのを知って来たのかもしれないな・・・ここと、ナナクビノリュウの森は近かいから聞きに来るのも当然だな・・・」
ギルバートが、そう言うとデスドゥンケルハイト軍がこの村に来た理由について訊ねた。
「なぁ・・・デスドゥンケルハイト軍は、なにをしに来たか言っていたか・・・?」
「・・・昨日、ナナクビノリュウの森にあった光翼の涙の一つが奪われたと言っていました。」
「やっぱり・・・光翼の涙を手に入れた人がいないか調べに来たのね・・・それで、村の人達は集められているの?」
「はい・・・村の人達は入り口に集められていて、光翼の涙を奪った人の事を聞き出そうとしています。」
ティアは窓を覗いてみると、村の入り口ではデスドゥンケルハイト軍によって村人全員が集められているのが見えた。
「他に村を出る方法はないのか?そこには、アイツ等がいないはずだ。」
「えっと・・・反対側にありますが・・・入り口が見える場所にあるので、見つかってしまいますよ?」
村の入り口は二つあり、もう一つは反対側にあった。
「そこ以外に、村を出る方法はないと言う事か・・・見つからない内に、さっさとこの村を出ようぜ。」
ティア達は、宿を出て見つからないように裏口へと向かった。
「見ろ・・・デスドゥンケルハイト軍が、聞き込みを始めたみたいだぞ・・・」
裏口へ向かう途中、ティア達はデスドゥンケルハイト軍が村人達に尋問を始めたのを目にした。
「・・・アイツ等はナナクビノリュウの森にあった光翼の涙について聞き出そうとしているな・・・しかも、誰かが俺達の事を言わないとは限らないけどな・・・」
ギルバートは、保身を優先する者が密告する可能性があるように思えた。
「村の連中が、俺等の事を言わなければいいけどな・・・」
二人は、見つからないように密かに入り口の様子を見ていた。
「着きました・・・ここが、村の裏口です・・・」
ステラの案内でティア達は、もう一つの入り口に辿り着いた。
「・・・急いで、この村から逃げてください・・・」
「分かった・・・世話になったな・・・行こうぜ、ティア。」
ギルバートは、裏口から出ようとしたがティアは入り口の方を見ていた。
「ティア・・・なんで、入り口を見ているんだ?さっさと、逃げないと見つかっちまうぞ?」
ギルバートは、声をかけたがティアは無言で入り口の方を見つめていた。
「おい・・・どうしたって言うんだよ・・・?」
「・・・なんだか、あの赤い髪の人をずっと見ているようです。」
ステラが、そう言ってギルバートは入口の方を見てみると兵士達の間に赤い髪の男が立っていた。
「・・・!」
そこにいたのは、ソルでギルバートは驚いた表情になっていた。
「どうかしましたか?」
「いいや・・・なんでもない・・・それよりも、さっさと村を出ようぜ・・・」
そう言いながら、ギルバートはティアを連れて村から出ようとした時だった。
「・・・ギルは、ステラと一緒に村から離れて・・・」
「なに言っているんだよ?お前も逃げないとアイツ等に殺されちまうぞ?」
「私には・・・やらなければいけない事があるの・・・」
ティアが、そう言ってから剣を抜き入り口の方へと向かって走り出した。
「おい!戦うより、逃げる方が先決だろ!」
「ギル・・・ティアはどうしたと言うのでしょうか・・・?」
「とにかく、今はアイツを止めるしかないだろ・・・!」
焦った様子のギルバートは、ステラと共にティアの後を追った。
(・・・あの男が来ているなら・・・あの時と同じ悲劇が起きてしまうわ・・・!)
ティアは、自分の村での惨劇が再来してしまうと感じていた。
「なんだ?向こうから、誰かが来るぞ・・・?」
兵士の一人が、向こうからティアが来ている事に気付いた。
「アイツは・・・もしかして・・・!」
ティアを見た兵士は、ティアの村で戦った兵士だった。
「あの娘は・・・なぜ、ここに戻って来た・・・?」
村長が村人達と共にティアを見つめているとソルが声をかけてきた。
「・・・どうやら、その様子はあの人間を知っているようだな・・・後で詳しく聞かせてもらうぞ・・・捕らえろ。」
ソルが、そう言うとティアと戦った兵士が言ってきた。
「ソル様・・・以前に言っていた少女はアイツです。」
「そうか・・・やはり、あの村で生き残りがいたんだな・・・お前が、言っていた少女で間違いでないようだ・・・直ちに処刑しろ・・・」
ソルが、命ずると兵士達は一斉に剣を抜くと村人達は家の中へと逃げて行った。
「気を付けろ・・・あの小娘は、只者ではなさそうだから気を抜くな・・・」
一度ティアと戦っていた兵士が、警戒をしながら言うと他の兵士達と共にティアに向かって攻撃を始めた。
「・・・退いて!」
ティアは、仇の相手が目の前にいるからであろうか、次から次へと兵士達を倒していった。
14章 仇の相手
「・・・ギル、これは一体・・・?」
「まさか・・・ティア、コイツ等は一人で倒したのか・・・!?」
ギルバートは、ステラと同様に兵士が全員倒れている光景を見て驚いた。
「・・・兵士達を一瞬で倒すとは・・・思っていたよりも実力があったのか・・・」
ソルは、ティアと戦った事のある兵士を見て言ってきた。
「それに・・・この村で、例の村の生き残りがいたとは思いもしなかったぞ・・・」
ティアが、剣を構えながらもソルを睨み付けてきた。
「・・・貴方は、お父さんとお母さんを殺した・・・許せない・・・」
「お父さんとお母さん・・・?なるほど、あの人間達の娘と言う事か・・・」
目の前にいるティアを見たソルは、ティアの父親と母親の事を思い出した。
「あの時、貴方がなにをしたのか覚えているわ・・・お父さんとお母さんの仇・・・!」
睨み付けたティアは、そう言った直後にソルに攻撃を仕掛けた。
「・・・悪くはない動きだったぞ・・・」
しかし、ソルは両手剣を手にしてティアの攻撃を防いでいた。
「だが、今の様子だと・・・本気で仇を討とうとしてはいないな・・・」
ソルは、そう言って押し返すとティアは着地をしてから剣を向けてきた。
「それは・・・どう言う事なの・・・?」
「お前は、仇の相手が目の前にして怒りを露わにしているが・・・なにやら、仇の相手を殺したくはないと思っているように感じられた。」
ソルの言う通り、ティアは命を奪うような事を嫌っているために、ソルは両親の仇でもある相手を殺す事ができないと感づかれていた。
「・・・その様子だと、本当に殺して命を奪う事ができないようだ・・・」
「・・・!」
ソルの発言を聞いたティアは、攻撃を仕掛けようとしたがソルが先に仕掛けてきた。
「はあっ!」
ソルが、両手剣で攻撃した事によってティアの剣が弾かれた。
「ティア・・・きゃあ・・・!」
ステラが、駆け寄ろうとするとティアの剣が目の前の地面に刺さって驚き立ち止まった。
「大丈夫か?ステラ。」
「はい・・・ですが、ティアが・・・」
ギルバートが、ステラに気をかけると気をかけるとソルが両手剣をティアに向けていた。
「勝負あったな・・・仇を討ちたいのなら、本気で殺すように戦った方が良いぞ。」
「くっ・・・!」
ソルは、ティアにそう言いながら両手剣を振り上げた。
「悪く思うな・・・デスドゥンケルハイト軍には向かう人間は殺さなければならない・・・」
ソルは、ティアに目掛けて両手剣を振るってきた。
「・・・!」
その時、両手に剣を手にしたギルバートがティアの前に立ちソルの攻撃を防いだ。
「ギル・・・」
「・・・コイツは、俺がなんとかするからお前は下がっていろ・・・」
ギルバートはそう言ったが、ティアは自分で仇を討ちたいとは言えなかった。
「心配するな・・・俺は素早くて戦闘経験も多いから大丈夫だ・・・!」
そう言ってから、ギルバートは一旦距離を取るとソルは両手剣を降ろしてからティアに言ってきた。
「ここで、殺してしまうのはなんだが・・・一先ずはお前を見逃してやるとするか。」
「見逃す・・・それは、一体どうしてなの・・・?」
ティアがどう言う意味なのかと思うと、ソルがティア達を見て言ってきた。
「それは教えられないが・・・お前は数日前に滅ぼした村で兵士に逆らった人間だ・・・今後も逆らうような真似をすれば、今度こそ殺さなければならなくなる・・・その時が来るまで、死を覚悟して置いた方がいいぞ・・・」
ソルがそう言っていると、倒れていた兵士達が起き上がった。
「・・・お前達、ここは引くぞ。」
兵士達が起き上がると、ソルはティアにこのように言ってきた。
「・・・両親の仇を討ちたいのであれば、戦う時は本気で殺すつもりで戦った方が良いぞ・・・」
ソルは、ティアにそう言ってから兵士達を引き連れて撤退をした。
「大丈夫か?仇を討てなくて残念だったな・・・」
ティアは、故郷と同じ悲劇が起こる事を阻止する事ができたが、両親の仇を討てずに
仇の相手が去って行く様子を見ているだけだった。
「ギル・・・それは、あまり言わない方がいいと思います・・・」
ギルバートが、ステラに言うとティアは首を横に振って答えた。
「いいのよ・・・本当は、仇を討つのが怖くなってしまったから・・・」
「ティア・・・」
どうやら、ティアは仇討ちをする事を恐れているのだった。
「私は、小さい頃から命について色々と教えられてきたの・・・命は、一つしかない大事な物で人を殺してしまう事はその人の生命を奪ってしまう事だって・・・」
ティアが、そう言うとステラは同情した様子で言ってきた。
「・・・その気持ち、私も同じ考えです・・・人の命を奪ってしまうのは、とても怖い事で人としてやってはいけない事だと言う事は知っています・・・」
ステラは、仇討ちとはそのような意味だと理解していた。
「それに・・・仇を討つと言う事は、人の命を奪ってしまう事と一緒で、エレノア様もそのような事は望んではいませんでした・・・」
「・・・そうね。いつかは、仇を討てる時が来る・・・それに、残りの光翼の涙も集めていく内に・・・いずれは・・・」
ティアは両親の仇が討てる時が訪れる事を信じていた。
「そうだな・・・村の奴等も無事でなによりだ。」
村人達が、無事でいてくれた事にティア達は安心をした。
(・・・それにしても、なんでアイツはティアの事を見逃した・・・?)
ギルバートはなぜ、ティアを殺そうとせずに見逃したのかが気になっていた。
15章 ステラが仲間に
「貴方の御蔭で村は助かった・・・礼を言わせて貰おう・・・」
「はい・・・貴方達が、無事で良かったです・・・」
ティアとギルバートは、村人達によって見送られていた。
「それでは、そろそろ失礼します。」
そう言って、二人は村から出ようとした時だった。
「待ってください!」
ティアとギルバートは、村から出ようとするとステラが止めてきた。
「なんだ?まだ、言いたい事があるのか?」
「私も・・・旅に連れて行ってくれませんか・・・?」
ステラが、そう言うと村長が本当なのかと聞いてきた。
「・・・ステラ、この者達と旅に同行したいと言いたいのか・・・?」
「はい・・・ティアの戦いを見て命を守るために戦う姿を見て思いました・・・だから、私も二人と一緒にデスドゥンケルハイト軍と戦いたいんです・・・!」
ステラが、上手く言えなかったのか緊張しながら言ってきた。
「・・・駄目だ。俺達が、やっている旅はとても過酷だし・・・そもそも、デスドゥンケルハイト軍と戦う事になっちまうぞ?流石にそんな旅に出るのは無理だろ。」
ギルバートが、喋っている途中でティアがステラに言ってきた。
「ステラ・・・本当に私達と一緒に旅がしたいの?」
ティアが、聞くとステラは頷いて答えた。
「分かったわ・・・貴方も、一緒に旅に連れて行ってあげるわ・・・」
「ティア!」
「・・・ありがとうございます。」
ステラが、嬉しそうな表情になるとギルバートはため息をついた。
「仕方ねぇな・・・足を引っ張って迷惑をかけるんじゃないぞ?」
「はい・・・これからも、よろしくお願いします・・・村の皆も元気で・・・」
ステラは、村人達に頭を下げてからティアとギルバートと共に村を出た。
(・・・ティア、コイツを旅に連れて良かったのか・・・?)
村を出て、少し経った頃にギルバートがステラを見てティアに聞いてきた。
(えぇ・・・きっと、ステラもデスドゥンケルハイト軍となにかあったから連いて行きたいと言ったのだと思うわ・・・)
ティアとギルバートが、小声で話し合っているとステラが声をかけてきた。
「あのう・・・なにを話しているのですか?」
「ちょっと、貴方について話していただけよ・・・一つ聞くけど、貴方が私達と一緒に行きたかったのは、なにか訳があるのかと思ったからじゃなかったからなの?」
ティアが、旅に同行したかった理由について聞くとステラは俯いてから答えてきた。
「・・・実は、私もティアと同じようにデスドゥンケルハイト軍によってお父さんとお母さんは殺されてしまいました・・・」
「やっぱり・・・貴方も両親が、殺されていてデスドゥンケルハイト軍から命を守るために旅に連れてほしいと言ったのね・・・」
ティアがそう言うと、ステラは無言で頷いた。
「・・・それが理由で、連れて行って欲しいと言ったのか?」
「そうです。ギルも、私やティアの様な事があってデスドゥンケルハイト軍と戦おうと思ったのですか?」
「まぁな・・・それよりも、モンスターが現れたぞ。」
ギルバートは話を逸らしたかのような様子で言うとモンスター達が出現した。
「コイツ等は数が多いな・・・ステラはちゃんと戦えるのか?」
「私は回復魔法が得意なので・・・ちゃんと、戦う事だってできます。」
現れたのは原人の姿をしている人型のモンスターだった。
「コイツ等は群れで行動しているモンスターだ。」
モンスターは原人の見た目をしており、平原だけでなく洞窟にも生息しているようだった。
「一人だと、弱いが何人か集まって行動する事が多いから油断するなよ。」
ギルバートがそう言うと、モンスター達が一斉に襲いかかってきた。
「はあっ!」
ティアとギルバートは次から次へと襲いかかかってくるモンスター達に向けて攻撃をしていった。
「二人共・・・頑張ってください・・・」
ステラは後衛で魔法の詠唱を始めた。
「おい!そっちにも、行ったぞ!」
ティアとギルバートとは一部のモンスターがステラの方へと向かっていた。
「ステラ!」
ティアはステラに襲おうとするモンスター達を倒すと、ステラの詠唱が終えてから魔法を唱えた。
『ヒーリラ!』
ステラが回復魔法を唱えて、ティアとギルバートの傷が回復した。
「ありがとう、ステラ。後少しで倒せるわ。」
ティア達は順調にモンスター達を倒していった。
「コイツで、最後だ!」
ギルバートは、最後の一体に攻撃をして全てのモンスターを倒す事ができた。
「ふぅ・・・これで、全部倒したな・・・」
「良かったです・・・私の魔法も役に立てて・・・」
ステラは、ホッとするとギルバートは笑みを浮かべてから言ってきた。
「ステラ・・・さっきの魔法は、良かったぜ。」
「はい・・・これからも、頑張ります・・・」
それから、ティア達はステラの魔法もあって順調に進む事ができた。
16章 星竜族の遺跡へ
夜になった事でティア達は、夜空の下でキャンプをしていた。
「ステラ、初めてのキャンプはどうだ?」
ギルバートは、ステラに初野宿はどうかと聞いた。
「はい・・・夜の世界は、暗くて怖いと聞いていましたが・・・星空を見上げる事ができるのは嬉しいです。」
そう言ってステラは、夜空を見上げて星を見つめた。
「そうだな・・・ティア、次に着きそうな場所は何処だ?」
ギルバートが、聞くとティアは地図を取り出して確認した。
「・・・私達は、この辺にいるわ。」
ティアが、地図を取りだして二人に見せるとギルバートが地図を見て言ってきた。
「ティア、ここにあるのはもしかして・・・アレが、あるんじゃないのか?」
そう言ってギルバートは、地図に描かれている遺跡らしき絵に指を指した。
「えぇ、お父さんが旅をしている時に訪れていた星竜族の遺跡よ。」
ティアがそう言うと、ステラはモジモジとさせながら声をかけてきた。
「あのう・・・お願いがありますが・・・いいでしょうか・・・?」
ステラはそう言いながら目を星のように輝かせていた。
「いいけど・・・そんなに、目を輝かせてどうしたの?」
「実は、星竜族の遺跡に行って見たいと思っていました・・・!」
ステラが、目を輝かせながら言ってきた。
「ステラは、星竜族が好きなの?」
「はい!とっても大好きです!星竜族の事なら、なんでも知っています。もちろん、星竜族については色々と知っています!」
ステラの目は、更に星のような輝きが増していた。
「ステラ、落ち着いて・・・ここからだと、遺跡は近くにあるから明日になったら行きましょう・・・」
「分かりました!明日になったら、星竜族の遺跡に行きましょう・・・約束ですよ?」
「・・・分かったから、夕食を喰って早めに寝た方が良いぜ?」
ギルバートは、そう言いながら夕食をティアとステラに手渡した。
「それじゃあ、さっさと喰って寝るか・・・」
夕食を間食してから、ティア達は明日に備えて寝る事にした。
「あのう・・・ティア、ギル・・・」
眠っている途中でステラが、ティアとギルバートに声をかけてきた。
「どうしたの?眠れないの?」
「全く・・・早く寝ろよな・・・?明日、お前の寄り道に付き合わなくちゃならないからな・・・」
すると、ステラがティアとギルバートを見てこう言ってきた。
「・・・絶対に約束は守ってくださいね・・・?」
眠そうに言ったステラは、そう言い眠りに着いた。
「ステラ、明日が楽しみにしているのは分かったわ・・・だから、ゆっくりお休み・・・」
ティアも、そう言ってから眠りに着いた。
「・・・守って・・・か・・・」
ギルバートは、約束と言う言葉についてなにかを思ってから眠りに着いた。
「ステラ、着いたわ。ここが、星竜族の遺跡よ。」
次の日にして、ティア達は星竜族の遺跡に着いていた。
「ここが、星竜族の造り出した遺跡ですか・・・」
ステラは、目を星のように輝かせながらも星竜族の遺跡を興味心身に見つめた。
「・・・まるで、星竜族の世界に来ているみたいです・・・早く、遺跡の中に入りましょう。」
ステラにそう言われて、遺跡の中へと入る事にした。
「おい・・・そんなにはしゃぐなよ・・・」
ティアとギルバートもステラの後に続いて、星竜族の遺跡へと入って行った。
「これは・・・凄いな・・・」
「えぇ・・・星竜族がどんな種族か分かるわね・・・」
ティア達が、目にしたのは部屋中に星竜族の壁画が描かれていた。
「本で知りましたが、ここの壁画は星竜族が描いた物だと言われているようです。」
星竜族の描いた壁画は、自然のような芸術的な感じがしていた。
「えぇ・・・私も本とかお話とかで聞いた事があったけど・・・これだけの壁画を描ける
なんて・・・星竜族は、不思議な種族ね・・・」
ティアとステラは、壁画を見回して感心していたがギルバートは興味のなさそうにしながら壁画を見つめていた。
ここの壁画は星竜族について色々と描かれていますよ。」
「えぇ・・・星竜族の誕生から、星竜族達がどんな風に生きていたのかが、そのような歴史が見ているだけで伝わってくるわ。」
壁画に描かれていたのは、星竜族の誕生から星竜族がどのように生きてきた様子が
描かれていた。
「やっぱり、いつ見ても星竜族が自然や人類を愛する種族だと言う事が伝わって来る・・・ここにある壁画は、そのように描かれたのだと思うわ・・・」
「はい。私もこのような壁画を見たのは初めてです・・・」
ティアとステラは、興味心身で壁画を見ているとギルバートが興味なさそうな様子に気付いた。
「ギル?なんだか、詰まらなそうな顔をしています・・・もしかして、星竜族に興味がないのでしょうか・・・?」
ステラが、不安そうに聞くとギルバートは「いいや・・・」と答えた。
「・・・ただ、星竜族って凄いよな・・・と思っただけだ。」
そう言いながら、ギルバートは詰まらなそうな表情で壁画を見つめた。
「ギル・・・星竜族は、私達人間やエルフ族など、色々な種族を創造した種族ですよ?人類は、皆ユニバース様を尊敬している事は分かっていますか?」
「分かっているよ・・・全人類は、自分達を創ってくれたユニバースを崇拝しているだろ?」
「はい!星竜族は私達人類を産み出してくれたお方です!」
ステラは目を輝かせながら言うと、ギルバートは壁画を見ながら言ってきた。
「だけど・・・今では、絶滅してしまっているんだろ?今でも、星竜族が絶滅した事を悲しんでいるんだろうな・・・」
ギルバートが、描かれている壁画を目にしながら素っ気なく言ってきた。
「ギル・・・酷いです・・・」
そのように言われたステラは、絶滅した事実に悲しい表情になった。
「・・・ギル、それは言いすぎよ。ステラが、悲しんでいるわ・・・」
「悪い・・・ちょっと、言い過ぎたよ・・・」
しかし、ステラはギルバートの謝罪を聞いて俯いたままなにも言わなかった。
「ステラ・・・大丈夫よ。今日は、一日ここにいましょう。」
「はい・・・」
ティアとステラは、一日中星竜族の遺跡にいる事にした。
「なんだよ・・・本当の事を言っただけだろ・・・」
ギルバートは、不機嫌そうにブツクサと呟きながらも外へと出て行った。
(・・・あの様子だと、星竜族が絶滅してユニバースも死んだのが人類は悲しかっただろうな・・・ステラが、ああ言っただけで悲しむのも当然だろうな・・・)
ギルバートは、そう言いながらステラの事を考えてみた。
(まぁ・・・本物の星竜族に出会っていたら、アイツは目を輝かせまくるかも知れないな・・・)
それから次の日、星竜族の遺跡を出て平原を歩いていた。
「それで、昨日はどうだった?」
ギルバートが、そう訊ねるとステラは笑顔で答えた。
「はい。一日中、ティアに星竜族について語る事ができました。」
ステラが、ギルバートの発言がなかったかのように嬉しそうに話してきた。
「ステラの御蔭で、色々と星竜族について話す事ができたわ。星竜族の誕生から絶滅までの事を色々と知っていて驚かされたわ。」
昨日、一日中ティアはステラに星竜族について色々と教えられていた。
「ステラったら、目を輝かせながら色々とお喋りをして大変だったのよ。」
「・・・御蔭で、星竜族について色々と話せる人と出会えて嬉しかったです。」
星竜族について色々と話が出来たのか、ステラは満足そうな表情をしていた。
「そうか。まぁ、とにかく昨日の事は悪かったな・・・」
「いえ・・・ギルは、星竜族の事が嫌いなのかと思ってしまいました・・・」
ステラがそのように言うと、ギルバートは呆れた様子で言ってきた。
「おいおい・・・俺は人間だぜ?星竜族が嫌いな訳がないだろ?」
「・・・ギルが、星竜族を嫌っている訳ではなくて良かったです。」
「私達は、人間よ・・・人類を産み出してくれた星竜族に感謝しましょう・・・」
ティア達は、遺跡を後にして先へと進んで行った。
17章 デスドゥンケルハイト軍の竜車
星竜族の遺跡を出たティア達は、歩き続けていると港の中に着いていた。
「・・・ここから真っ直ぐ行けば、船着き場に着けるぞ。」
「えぇ・・・光翼の涙は、他の大陸に隠されているのかも知れないわ・・・」
ティアが、そう言うと後ろからなにかが走る音が聞こえてきた。
「ティア、この音は一体・・・?」
「えぇ・・・竜車の音ね。」
竜車とは馬車と同じだが、馬ではなくラプトゴンと言う竜のモンスターが竜車と呼ばれる乗り物を引いているのだった。
「よく、見て見ろよ・・・アレが、竜車だよ・・・」
後ろから竜車が走って来ると、そのままティア達の方へと向かった。
「・・・待って、あの竜車に乗っている人って・・・」
ティアは竜車に乗っている人間がデスドゥンケルハイト軍の兵士だと気付いた。
「どうして、デスドゥンケルハイト軍が竜車を・・・とにかく、隠れて様子を見ましょう・・・」
そう言って、ティアはギルバートとステラと共に港にある荷物の後ろへと身を隠した。
「・・・一体、なにを運んでいるのかしら・・・?」
ティア達は、見つからないように見てみると、竜車はそのまま船着場へと向かって行った。
「・・・見つからずに済んだな。」
「えぇ・・・あの竜車から、微かに声が聞こえてきたわ・・・」
「竜車の中からと言うのは、中に誰かがいたと言う事でしょうか?」
「えぇ・・・それに、微かに子供の泣き声が聞こえてきたわ・・・」
ティアがステラにそう話すとギルバートは言ってきた。
「・・・とにかく、アイツ等の竜車になにがあるのか調べに行ってみようぜ・・・」
「ですが・・・本当に、大丈夫なのでしょうか・・・?」
ステラが、心配そうにするとティアはこう言ってきた。
「分かっているわ・・・けれど、中にいる子供達は放っては置けないわ・・・その声は、助けを求めている声で見過ごす訳にはいかないの・・・」
ティアが、そう言うと先程の竜車の後を追ってみる事にした。
「・・・船の前に止まりました。」
竜車は、停泊している一隻の船の前に止められていた。
「見ろよ・・・あの船に乗っている奴等を・・・」
停泊している船を見ていると、ティアとステラは船を見てなんなのかを確信した。
「あの船は・・・デスドゥンケルハイト軍の船でしょうか・・・?」
「あぁ・・・あの竜車の中に、子供が大勢乗せられていてラヴィレイヘヴンに連れられて、デスドゥンケルハイト軍の兵士として無理やり教育をされてしまらしいんだ・・・」
二十年前から、兵士の素質のありそうな子供を攫っては、デスドゥンケルハイト軍の兵士として強制的に教育をさせられてしまうのだった。
「そんな・・・それじゃあ、子供達の親は・・・」
「ティアの思っている通りだ・・・中には、親を殺されている子供もいて引き離されている子供もいるって聞いた事があるぜ・・・」
ギルバート曰く、無理やり連れていかれる子供を助けようとすれば、親だけでなく友人や身内などが殺されているようだった。
「酷い・・・無理やり連れて子供を兵士に育てるなんて・・・ティア?」
ステラは、ティアの体が震えている事に気が付いた。
「・・・許せない。子供達から家族を引き離すだけでなく殺してまでも連れて行こうとするなんて・・・!」
その事を聞いたティアは、怒りが込み上げていた。
「ティア・・・落ち着いてください・・・」
「そうだぞ・・・出て行っても、竜車の子供を人質に去れるだけだぞ・・・」
ステラとギルバートは、宥めようとしたが
「それでも・・・今すぐに助け出さなければ・・・子供達が、連れていかれてしまうわ・・・!」
居ても立ってもいられなくなったティアは、剣を手にしてデスドゥンケルハイト軍の船へと走って行った。
「待てよ!仕方ねぇな・・・俺達も行くぞ!」
「はっ・・・はい・・・!」
ギルバートとステラもティアの後に連いて行った。
「なんだ?誰かが、武器を持ってこちらにやってくるぞ・・・総員、武器を手にしろ。」
兵士の一人が言うと、他の兵士達と同様に武器を手に取った。
「だが、竜車に乗せている子供達はどうする気だ?」
「そんな物は、後からでもいいだろ・・・奴を殺す事だけを考えろ・・・」
その場にいた兵士と船に乗っていた兵士達が全員降りて剣を手にした。
「子供達を連れて行かせる訳にはいかないわ・・・!」
ティアは、剣を振るって兵士達と戦い始めた。
(・・・相手の数は多そうね・・・)
船着き場にいた兵士達の数が多かった。
「一人で戦ったら、ティアがやられてしまいます・・・!」
ステラが、心配な表情でティアに言ってきた。
「数が、多いのは承知の上・・・それでも、子供達を助け出すつもりよ・・・」
ティアがそう呟いた瞬間、兵士に向かって剣を振るった。
「なっ・・・!」
兵士の一人が、ティアの攻撃が重かったのか剣を弾いた。
「がはっ・・・!」
それと同時にティアは、兵士を殺さないように攻撃をして倒した。
「くそっ!」
その途端、背後から別の兵士がティアに攻撃を仕掛けてきた。
「させるかよ!」
ギルバートが、割り込んできて二本の剣で攻撃を防いだ。
「ありがとう、ギル。」
「あぁ・・・一人で立ち向かう真似は、マジで止めてくれよ・・・?」
ティアとギルバートが、兵士達と剣がぶつかり合っている中でステラは援護するために魔法を唱えようとしていた。
「させるか!」
ステラの存在に気付いた兵士達が、一斉にステラに襲おうとした。
「ステラ!」
ティアが、ステラを助けようとしたが兵士達が立ち塞がって行けなかった。
『アスシェルネ!』
ステラが杖を振るい、無数の星の形をした魔力の光を放った。
「コイツ・・・魔法が、使えるのか・・・!」
兵士達は、ステラの魔法に当って倒れたが、一部の兵士は魔法が当らなかった。
「・・・助かりました。」
「ステラ、近づいてくる兵士達に気を付けて・・・」
ティアがそう言ってからギルバートの元に戻っていった。
「残りは後僅かだ!気を抜くなよ!」
「えぇ・・・ギルこそ、相手を殺さないように戦って・・・!」
「分かっているよ・・・そんな事は・・・」
そう言って、ティアはギルバートと共に残りの兵士に剣を向けた。
「くそっ・・・なんて、奴だ・・・たかが、少年少女のためにこれぐらいの数が
倒されるなんて・・・!」
兵士が、ティア達を見て動揺をしているともう一人の兵士が言ってきた。
「おい・・・あの少女を見てみろ・・・ソル様の言っていた少女じゃないのか・・・?」
「あぁ、それにアイツ等もその少女の元にいたと仰っていたな・・・」
兵士達は、以前ソルの言っていた事を思い出し戦っている相手が何者かと理解した。
「そうだ。コイツの村でソルと戦った少女だ。」
ギルバートが、ステラとティアを見ながら兵士達に言ってきた。
「そうだったのか・・・まさか、アイツはソル様と戦っていたとは・・・」
「だが、相手はたかが子供達だ・・・本気でやれば倒せるはずだ!」
兵士の一人が、言うと残っていた兵士達がティア達に攻撃を仕掛けてきた。
「・・・来たぞ。」
ギルバートが、そう言うとティアは無言のまま兵士達に攻撃をして倒していった。
「これで、全員を倒したようね・・・船に乗って他の大陸に行きましょう・・・」
「あぁ・・・デスドゥンケルハイト軍の船じゃなく普通の船に乗ろうぜ。」
「そうね。他の場所にもデスドゥンケルハイト軍がいるのかも知れないわ・・・見つからないように
船を降りた方がいいかも知れないわね・・・」
すると、まだ意識のあった一人の兵士が訊ねてきた。
「待て・・・なぜ、トドメを刺さない・・・?」
兵士が、弱った声で聞いてくるとティアは振り返って答えてきた。
「・・・私は、命を奪うような真似は、しないわ・・・だから、殺さずに攻撃をしていたの・・・」
ティアが、事情を話すと兵士は力尽きたのか倒れた。
「・・・船に乗りましょう」
それから、ティア達は兵士達が目を覚ます前になんとか船に乗る事ができた。
18章 山を登ると
「無事に、他の大陸に辿り着けたな。」
船から降りたティア達は、別の大陸の港に着いて新たな大陸を歩き始めた。
「どうやら、この山を越えないと街に着けないぜ。」
しばらく歩いていると、ギルバートが目の前に聳える山を見て言ってきた。
「・・・この山は、頂上に登っても降りないと街に着けないようね。」
ティアは、地図を確認しながらそう言ってきた。
「あぁ・・・ここにも、モンスターがいて大変だぞ・・・ステラは、山に登った事があるのか?」
そう聞くと、ステラは首を横に振って答えた。
「・・・いいえ。私は、一度も山を登った事がありません・・・」
「そっか・・・もし、疲れたら・・・ティア、背負ってやってくれ・・・」
「分かったわ。それじゃあ、登りましょうか。」
ティア達は、次の街に向かうために山を登り始めた。
「いいか?ここの山は、普通に見えるがモンスターがいきなり出てくるから驚くなよ・・・」
ギルバートが、そう言った矢先にモンスターが飛び出してきた。
「・・・いきなり、ミスチーフデーモンか・・・」
ミスチーフデーモンと言う名の悪魔のモンスターが驚かすように現れた。
「急に出てきたので驚きました・・・それにしても、可愛らしい見た目ですね・・・」
ミスチーフデーモンは可愛らしくて悪魔の格好をした人間の子供の姿をしていた。
「気を付けろ・・・コイツは、悪戯小僧のように悪戯好きで痛い目に合うぞ。」
ギルバートが警戒をしながら言うと、ミスチーフデーモンは素早く動き出しティア達を翻弄した。
「早い・・・まるで、悪戯小僧が逃げ回っているように見えるわ・・・」
ミスチーフデーモンの素早さは、悪戯好きな子供の逃げ足と同じように素早かった。
「コイツに攻撃を当てるには、子供の好きそうな物で誘き寄せて攻撃してくれ。」
ギルバートが、そう言うとティアはある事を思い付いた。
「ギル・・・ミスチーフデーモンの好きな物はなに?」
「あっ?確か・・・ミスチーフデーモンと同じお菓子だったが、それがどうしたんだ?」
すると、ギルバートはティアの言った事を理解した。
「なるほど・・・そうか・・・」
「二人共?一体、なにを話して・・・」
ステラが聞きだそうとする前にミスチーフデーモンが狙いを定めて襲いかかってきた。
「ねぇ、お菓子をあげるから見逃してくれない?」
ティアはキャンディを一つ取り出して見せるとミスチーフデーモンはキャンディを受け取って去って行った。
「キャンディを受け取ったら、逃げていきましたよ?」
「ミスチーフデーモンは、悪戯好きな子供と同じでお菓子をあげれば、見逃してくれると思ったけど・・・正解だったようね。」
「アイツ等はお菓子を与えれば見逃してくれるから戦わなくて済んだな。」
「良かったですね。戦わなくて・・・」
「えぇ・・・御蔭で、命を奪う戦いをしなくて済んだわ・・・」
ティアは安心して先へ進むとまた別のモンスターが岩の中から現れた。
「今度は、体が岩でできた人型のモンスターか・・・」
次に現れたモンスターは岩になっている人型のモンスターだった。
「このモンスターは固そうですね・・・」
「あぁ・・・普通の攻撃じゃ、あまり効かないからな・・・」
そう言って、ギルバートは魔力を込めてから技を繰り出してきた。
『シザースラッシュ!』
ギルバートが鋏で切るかのような斬撃を振るった事でモンスターは砕け散った。
「砕けた・・・?さっきの攻撃では、あまり効かないと思ったけれど・・・魔力を使ったから威力を上げたのね?」
「そうだ。俺の魔力を使ったから、普段よりも威力は違っていたんだ。」
技を繰り出す前に、ギルバートは自身の魔力を使った事で技の威力が上昇したのだった。
「私もお父さんから聞かされたことはあったけれど・・・貴方も上手く使っていたようね。」
「弱点を狙ってもいないのに、それだけで倒せるなんて知りませんでした。」
ステラは魔力を込めた技の威力が上昇する事は知らなかった。
「ステラ、技には色々あって効果も違うのよ。魔力の属性も考えて使うのも大事よ。」
「分かりました。これからの旅では、この事を覚えていた方がいいですね・・・」
それからもティア達はモンスターと戦いながらも山を登り続けた。
「そろそろ、頂上が見えてくる頃ね・・・もう少しで、休憩が取れそうね。」
そう言うと、目の前に頂上が見えてきた。
「あそこに着いたら、一度休憩をした方が良さそうね・・・」
「山登りは、頂上に着いたら休んでから降りた方がいいからな・・・」
「良かったわね。もう少しで頂上に着くから、そこで休憩をしましょう。」
ティアが、そう言うとステラは疲れた声で「はい・・・」と返事をした。
「・・・今、なにか頂上から音がしなかった?」
そう言って、ティアは耳を澄ますと戦闘の音が聞こえてきた。
「確かに・・・頂上で誰か、戦っているのか?」
「行って見ましょう・・・もしかしたら、危険な状況になっているのかも知れないわ・・・」
ティアが、そう言って頂上に登ってみると何者かがモンスターと戦っていた。
「モンスターの方は、大型のモンスターか・・・」
モンスターは大型で凶暴な見た目で今にも襲いかかってきそうだった。
「ティア・・・ギル・・・今、戦っている人はもしかして・・・」
その人物は、髪が地に着くくらい長く背中に竜の羽が生えていた。
「・・・私も信じられないけど・・・モンスターと戦っているのは・・・どう見ても・・・」
そう、ティア達が目にしたのは星竜族がモンスターと戦っているからであった。
「星竜族は絶滅したはずなのに・・・どうして、星竜族がモンスターと戦っているのでしょうか・・・?」
「分からないわ・・・とにかく、私達も加勢しましょう・・・」
ティアが、そう言いながら剣を抜こうとするとギルバートが止めてきた。
「待ってくれ・・・これは、加勢する必要はないぞ。」
ギルバートが、そう言うと星竜族はモンスターに攻撃を仕掛けた。
19章 星竜族ガイア
「星竜族が、攻撃を仕掛けましたよ・・・本当に助けなくていいのでしょうか?」
「ステラ、心配するな・・・星竜族だけなら、あれぐらいのモンスターならすぐに倒せるからな・・・」
「そうですが・・・大丈夫なのでしょうか?」
ステラは、星竜族が一人で戦うのが心配だった。
「星竜族は、世界を護り続けてきた種族よ・・・ギルの言う通り、ここは見ていた方が良いと思うわ。」
ティアが、そのように言うとステラは見守る事にした。
「見ろよ・・・そろそろ、襲いかかるぞ・・・」
モンスターが先に動き出し、星竜族に攻撃を仕掛けてきた。
「・・・!」
星竜族は、羽を使って羽ばたきモンスターの攻撃を避けた。
「星竜族は、飛んで避けたようね・・・勢いを着けて攻撃をするつもりかしら・・・」
「そうだろうな・・・星竜族は、戦闘能力が高いから簡単に倒せるぞ。」
そう言うと、星竜族はモンスターに向かって急降下した。
「星竜族が、剣を向けて指す気ね・・・」
ティアの思っていた通り、星竜族が急降下しながら剣を向けると、モンスターの急所に目掛けて命中させた。
「凄いです・・・強そうなモンスターを簡単に倒しました・・・」
「だろ?星竜族は、凄い種族だからこれぐらいのモンスターなら簡単に倒せるぜ。」
ギルバートが、そう言うとティア達がいた事に気が付いていたのか、星竜族は彼女達の方に振り向いた。
「・・・先程から、そこで見ていたようだが・・・一体、なにか用でもあるのだろうか?」
星竜族がティア達に声をかけてきた。
「気付いていたのね・・・私も加勢しようと思っていたけれど・・・大丈夫なのかと心配しながらも見ていたの・・・」
ティアが、事情を話していると星竜族は、その理由に納得をした。
「まぁ・・・加戦をしなくとも、私だけでも倒せたから良いが・・・その様子だと、着いたばかりのようだが・・・お前達は、理由があってこの山を登って来たかのように見えるぞ・・・」
星竜族はそう言いながらも、密かにギルバートを見ているように感じられた。
「えぇ・・・私達はこの山を登って、向こう側に行こうと登っていたの。」
「そうか。気になっていたのだが、その人間の少女はなぜ故に震えているのだ?」
ティアは、星竜族の質問に答えるとステラが震わせながら聞いてきた。
「あっ・・・あのう・・・貴方は、本物の星竜族ですか・・・?」
ステラは、目を輝かせながら聞くと星竜族は自己紹介をしてきた。
「そうだ・・・私の名は、ガイア。絶滅したと思われた星竜族の生き残りだ。」
星竜族は、ガイアと名乗るとステラは自己紹介をしてきた。
「私は、ステラと言います・・・よろしく、お願いします・・・」
ステラが、憧れを持っているかのような自己紹介をするとガイアにある事を聞いてきた。
「・・・ガイアは、星竜核晶石は持っていますか?」
「星竜核晶石・・・これの事だな?」
ガイアは、鎧の中から一つの石を取り出した。
「これが、星竜核晶石・・・本物は初めて見ました・・・」
「私は星竜族なので、所持しているのは当然の事だ。」
星竜核晶石とは、星竜族が必ず持っている不思議な石で地球と同じ色をしており、星竜族の紋章が描かれていた。
「この石は、星竜族にとって大事な石であり、絶対に無くしてはならない物なのだ。」
ガイアはそう言って、星竜核晶石を鎧の中にしまうとティアが聞いてきた。
「一つ聞いていいかしら?星竜族は、世界と一緒に絶滅したと聞いていたけれど・・・生き残っている星竜族は貴方だけなの?」
ティアが、そう聞いてくるとガイアは沈黙が入ってから答えた。
「・・・そうだ。私は、世界の滅亡から免れた星竜族の生き残りだ。」
「それじゃあ・・・まだ、星竜族は絶滅していなかったと言う訳なのね・・・」
ティアがそのように納得をすると、ステラは目を輝かせながらもガイアを見ていた。
「それで・・・お前は、どうしてこの山で熊のモンスターと戦っていた?」
ギルバートの問いに、ガイアはこのように答えてきた。
「いや・・・ただ、この山の頂上に降り立っていたら、熊のモンスターが襲いかかって来たのだ。」
「そうだったのか。まぁ、偶然に遭遇したとしても驚いただろ・・・」
ギルバートがそのように言うと、ガイアは「あぁ・・・」と答えた。
「あれぐらいのモンスターなら、私なら簡単に倒せるぞ。それよりも、お前達はこの山を降りて向こう側に行きたいと言っていたな・・・」
「えぇ・・・ここで、休憩をしてから降りるつもりよ。」
「そうか・・・せっかく、出会えたのだ・・・私の転移魔法で降ろしてやろう・・・」
「いいのか?お前の転移魔法で送ってもらって・・・」
ギルバートが、不服そうに言ってくるとガイアはステラを見ながら言った。
「あぁ・・・その人間の少女とは、仲良くなれそうだからな・・・その少女は、星竜族が好きで目を星のように輝かせるくらいだ。」
ガイアはそう言って、ステラの方を見ると未だに目を輝かせていた。
「えぇ、ステラは星竜族が好きで、色々と知っているぐらいなの。」
「はい。また、会う事ができたらお話がしてみたいです。」
ステラが、笑顔で言うとガイアはステラの表情を見つめた。
「分かった・・・それじゃあ、休憩が終わったら転移魔法で送ってやるから休んでいてくれ。」
ガイアが、そう言うとティア達は頂上で休憩を始めた。
「良かったわね。絶滅した星竜族と出会う事ができて・・・」
「はい・・・私も生き残った星竜族と出会えるなんて思いもしませんでした・・・」
「そうね。絶滅から免れた星竜族がいた事は驚いたわ。」
ティアとステラが、星竜族やガイアについて話している事に夢中になっている中でギルバートがガイアとなにかを話していた事に気が付いてはいなかった。
「そう言えば、貴方に両親はいないの?」
しばらく休憩をしていると、ティアはある事を思ってステラに聞いてきた。
「村に着いた時から、見当たらなかったようだけど・・・村にいなかったのかしら?」
ティアは村に訪れてから、ステラの両親を見ていない事に気付いていた。
「・・・」
しかし、ステラは無言のままなにも喋らずにいると元気のない声で話してきた。
「私が小さい頃に・・・私のお父さんとお母さんは、デスドゥンケルハイト軍に殺されてしまいました・・・」
ステラの両親が、デスドゥンケルハイト軍に殺された事を聞いたティアは申し訳なさそうに謝ってきた。
「ゴメンなさい・・・貴方の両親もデスドゥンケルハイト軍に殺されていた事は知らなくて・・・」
「・・・お父さんとお母さんが、死んでから村の人達に育てられてきました・・・」
両親が、死んで以来ステラは村の人達に育てられていた。
「そう言えば、貴方もと言っていましたが・・・もしかして、ティアも?」
「えぇ・・・私もソルと言う男によって両親は殺されてしまったの・・・」
話している最中で村の惨劇やソルに両親が殺害された事を徐々に思い出した。
「・・・それで、ティアは光翼の涙を集める旅を始めたのですね・・・元気を出してください。」
ステラは、ティアを宥めるように声をかけた。
「ありがとう・・・私が、世界中の命を救わないと・・・永遠に罪が無い人達の命が
奪われてしまうわ。だからこそ、私がデスドゥンケルハイト軍を倒してラヴィレイヘヴンを開放しないと・・・」
ティアは、立ち直るとステラは「はい。」と笑顔で答えた。
「・・・まさか、あの少女達にそんな事が・・・」
「あぁ・・・アイツ等もデスドゥンケルハイト軍によって家族を奪われたからな・・・光翼の涙を探し出そうとするのも当たり前だろ・・・」
「そのようだな・・・そのように戦う決意を決めたのだろう・・・」
ギルバートとガイアは二人が話しているのを密かに見ていた。
20章 街の見回り
「そろそろ休憩を終えるとしよう・・・それでは、転移魔法を唱えるので私の側に寄って来てくれ・・・」
しばらくして、休憩を終えたティア達は、ガイアの元に集まっていた。
「見ているが良い・・・これが、星竜族の転移魔法だ。」
ガイアは、そう言って詠唱を唱えた。
『ワームテレポータル!』
ガイアが転移魔法を唱えると、目の前にワームホールのような転移の穴が出現した。
「これが、星竜族の転移魔法・・・初めて見ました・・・魔法を唱えるだけで転移の穴を出現させるなんて・・・」
ステラは、ティアと同様に初めて星竜族の転移魔法を見て感心した。
「それじゃあ、さっさと入ろうぜ。」
ギルバートは、慣れているかのような様子で転移の穴へと入って行った。
「ギルが消えた?違うわ・・・何処かの場所に移動したのね・・・」
「その通りだ。ギルバートはこの穴を潜った事によって、別の場所に転移したのだ。」
「小さい時にお母さんから聞いた事があるわ。」
「ワームテレポータルは別の場所に転移するだけでなく、色んな世界に繋がっているアナザーディメイションホールと言う空間に入る事ができるのだ。」
ガイアの言うアナザーディメイションホールとは、この世界だけでなく他の世界が無限に存在している空間だった。
「その空間に入れるのは、星竜族の転移魔法だけで世界を出入りできるのも、星竜族だけだと聞かされた事があるわ。」
「あぁ・・・この魔法は、星竜族専用だ。もし、取得できる人間が存在しているのなら一握りだけなのかも知れんな・・・」
ガイアが、そう言ってくるとステラは転移の穴を見つめながら聞いてきた。
「もしかして、私でも星竜族の転移魔法が使えるようになるのですか?」
「・・・かも知れんな。それよりも、あの人間は待っているから早く入った方が良い・・・ギルバートが待っているぞ。」
「分かったわ。行きましょう。」
ティアとステラは、転移の穴に入るとガイアも後に続いて入った事で転移の穴は消滅した。
「おっ・・・やっと、来たか。」
転移の穴が、出現したのは山の下山口でティアとステラとガイアが出てきた。
「ギル、ここに転移をしていたのね。」
「何処に転移するかは、アイツ次第で聞く事も忘れるなよ?」
ギルバートが、そう言ってくるとステラはガイアにお礼を言った。
「ガイア、ありがとうございます。」
「あぁ・・・さて、私は去る事にしよう・・・また、何処かで会える時が来るだろう・・・」
ガイアは、そう言い残すと飛び去って行った。
「ティガイアテラ・・・苦労せずに山を降りる事ができたな。」
「えぇ、これもガイアの御蔭ね。もしかしたら、何処かでまた会えるかも知れないわ。」
ティアは、そう言いながら飛び去って行くガイアを見つめた。
「そうですね・・・ガイアとまた何処かで会いたいです・・・」
「そうね・・・きっと、またガイアと会えると思うわ。」
こうして、ガイアと別れたティア達は街へと向かって行った。
「ここが、目的の街だ。」
ガイアと別れてから、しばらく歩いて行くと目的地である街に着いていた。
「・・・なんだか、私の住んでいた村より人が多くて賑やかです・・・」
街の中を初めて見るように、ステラは辺りを見回した。
「街は、広くて住んでいる人が多いから、とっても賑やかなのよ。」
ステラが、街を見回している中でティアはそう説明をした。
「それじゃあ、そろそろ休むとしようぜ・・・山登りをしたせいで疲れちまったよ・・・」
ギルバートにそう言われて、ティア達は街の中にある宿屋に泊まる事にした。
「・・・ステラの奴、グッスリ寝ているな・・・」
宿屋に泊まり部屋に入った直後に、ステラは嬉しそうにしながら眠っていた。
「きっと、星竜族と会えて嬉しかったと思っているわ。」
そう言って、ティアは疲れ果てて眠っているステラを見て言った。
「そうだな・・・しかし、ステラの星竜族好きには正直驚かされたぜ・・・」
「えぇ、ステラは星竜族の事になると目を星のように輝かせぐらいだから・・・両親が生きていた時から、好きだったのかも知れないわね・・・それじゃあ、私達も寝ましょう・・・」
そう言って、ティアは壁にかかっていた時計を見てみると十時になっていた。
「あぁ・・・街を巡るのは、明日だな・・・お前は、先に眠っていてくれ・・・俺は、後で寝るからな・・・」
「分かったわ。それじゃあ、お休み・・・ギル・・・」
ティアは、ベッドに入りそのまま眠り込んだ。
「・・・さてと、少し風に当たってから寝るか・・・」
ギルバートは、ティアとステラがグッスリ眠っているか確認してから外に出て行った。
「それじゃあ、今日はステラと一緒に街を見て周りましょうか。」
次の日、街の中を見て周る事にしたティア達は宿屋を出た。
「今日は、ステラと街を見て周る気か?」
「えぇ、ステラは街が初めての様だし・・・街にも慣れさせた方がいいわ。」
ティアは、旅の最中に別の街に訪れると思っていた。
「はい・・・私は、小さい頃から村に出た事がありませんでした・・・街が、どのような場所なのか教えてください。」
「えぇ、ステラのために街を案内するのよ。」
そう言って、ティア達はステラと街を見回り始めた。
「街は、広くて人が多くて迷子になりやすいから、ちゃんと手を握っていて・・・そうしなければ、迷子になってしまうわ・・・」
「分かりました・・・しっかり、握ってくださいね・・・?」
ステラは、心配そうに言うとティアはステラの手を握りながら歩いていた。
「いいか?人ごみは、入ると出るのが大変で迷子になりやすいからしっかり握っていろよ?」
ギルバートが、そう言うと市場の入り口に着いていた。
「今度は、あちこちに色々な物が売っているお店がありますよ?」
「ここは、市場と言って沢山のお店があって色々な商品を売っているのよ。」
市場の中を歩き始めると、ステラは店にある商品を見回し始めた。
「市場に売っている物は、どれも見た事がありません・・・」
「そりゃあ、そうだろ・・・村じゃあ、売ってない物もあるからな・・・街の方がいい物が手に入りやすいからな・・・」
しばらく市場を見た後で、他の場所も案内している内に街の広場に着いた。
「見てください。目の前に噴水があります。」
広場に着いた直後にステラは、噴水に近づいて見つめ始めた。
「ステラは、噴水を見るのが初めてのようね。」
「はい。噴水と言うのは、涼しくて水も綺麗に噴き出しています。」
ステラは、噴水の水が綺麗に見えていた。
「ここで、休みましょう・・・他にも、紹介する事が他にもあると思うわ・・・」
「そうだな・・・街の案内は、休憩が必要だからな・・・」
しばらく、ティア達は噴水のある広場で休む事にした。
21章 賑やかで平和な街
それからもティアとギルバートは、ステラの街の案内を続けていた。
「どうだ?これが、街だ。」
「はい・・・人が、多くて賑やかですが・・・広くて迷子になりやすかったです。」
すると、ギルバートがある事を思い付いてティアとステラに言ってきた。
「さてと・・・ステラは、街について色々学んだ事だし・・・今度は、別行動でもして見て周ってみないか?」
「ギル、ステラは街について学んだばかりなのに、急に別行動は慣れるまでしない方が良いと思うわ。」
ティアは、そうなると思って言うと、ギルバートがこう言ってきた。
「いいか?もし、旅の最中で迷子にでもなって見ろ・・・コイツ一人で、泣いてしまわないようにして置いた方がいいぜ・・・」
「でも・・・この子は、まだ知らない事が多いわ。行った事のない場所に訪れる内に色々と知る事が出来る筈よ。」
ティアは、ギルバートに言ったがステラは首を横に振って言ってきた。
「・・・ティア、私は挑戦してみようと思います・・・今度、ガイアに会う事があれば恥ずかしいと思いますので・・・」
ステラは、ガイアに恥じぬようにしようとしていた。
「ステラ・・・でも、迷子にならないように私も連いて行くわ。」
「いや・・・ここは、俺に任せてくれないか?俺も色々な場所に行った事があるからな・・・ティアは、安心してゆっくりしていてくれ。」
「分かったわ。ギルが色々と教えてくれるから、迷子には気を付けて・・・」
「分かりました。それでは、行ってきます。」
ステラの案内をギルバートに任せて、ティアは一人で行動をする事にした。
「ギルと一緒に別行動をして・・・大丈夫かしら。」
ティアは、ステラがギルバートと別行動をする事に心配に感じていた。
「とりあえず・・・ギルを信じてみましょう・・・」
少々、心配に思いながらも彼を信じる事にした。
「・・・その間に、もう一度町を見て回ろうかしら・・・」
ティアは、時間を潰すために街の中をもう一度見て周り始めた。
「・・・この街は、人が多くて賑やかだけど・・・デスドゥンケルハイト軍が来ない限りは平和のようね・・・」
そう思っていると、ティアは街を見回していると誰かとぶつかってしまった。
「大丈夫?」
ティアとぶつかった人物は、ギルバートと同い年の好青年だった。
「ゴメンなさい・・・周りを見ていたから・・・」
「別に気にしないで・・・君は、この街に来たのは初めて?」
好青年が、優しく言うとティアは首を横に振った。
「いいえ。小さい時に、家族とここへ来た事があったの。」
「そうか・・・せっかくだし、僕と一緒に街を見て回らない?」
「いいわ。今は別行動をしているから、貴方といるのも良いと思うわ。」
「決まりだね。それじゃあ、そこの店で時間を潰さない?」
少年は、目の前の雑貨屋を指差した。
「・・・さっき、街を見て回ったけど、そこのお店に行った事がないから行って見るのもいいかも・・・」
「この店にも、色々と売っているから見てみるといいよ。」
ティアは、好青年と共に雑貨屋の中に入って行った。
「・・・ここのお店は、このような内装になっていたのね・・・」
少年に連れられたティアは、雑貨店の中に入ると色々な雑貨が売られていた。
「ここは、世界中にある色々な雑貨が売られているらしいよ。」
「世界中の?でも、貿易はデスドゥンケルハイト軍によって禁じられていたはずよ?」
この世界の貿易は、デスドゥンケルハイト軍によって管理されていた。
「それは、デスドゥンケルハイト軍に逆らう可能性がある物は禁じられていて、それ以外の貿易は許されているからだよ。」
ここにある雑貨は、安全で売る事が許可されている物ばかりだった。
「そうだったの・・・それじゃあ、ここにある商品は世界中の雑貨と言う事ね。」
「まぁ、ここは普通の雑貨が売っているだけだからね。それじゃあ、商品を見て回ろうか。」
こうして、ティアと好青年は共に雑貨店の商品を見て回った。
22章 ティアと好青年の一日
「ここの棚に売っているのは、色々なアクセサリーだよ。」
商品棚には、色々なアクセサリーが置かれていた。
「どれも綺麗ね・・・お母さんは、高級で綺麗なアクセサリーが売っているお店に行った事があるって言っていたけれど・・・ここにも、綺麗なアクセサリーが売っているわ・・・」
ティアは、商品棚にあるアクセサリーを見つめた。
「どう?ここの店で売っているアクセサリーも綺麗だよ。」
少年がそう言うと、ティアが一つのアクセサリーを見つめているのに気付いた。
「・・・なんだか、不思議な形をしているわね・・・」
ティアが、目にしたのは左右に羽が生えて金色の塗装が着いたアクセサリーだった。
「このアクセサリーが気に入ったの?君に似合いそうなデザインで君に似合いそうだよ。」
そう言いながら好青年は、ティアはアクセサリーを渡した。
「まるで、光翼の涙みたいに輝いているように見えるわ・・・」
ティアは、アクセサリーを手にして見つめていると少年が声をかけてきた。
「光翼の涙?それって、二十年前にデスドゥンケルハイト軍によって隠された・・・」
「なんでもないわ・・・あまりにも、綺麗で光り輝いていそうだったから・・・」
そう言いながら、ティアはアクセサリーを棚に戻そうとした時だった。
「待って・・・良かったら、僕が買ってあげようか?」
「えっ?でも・・・本当にいいの?」
「いいから・・・せっかく、出会えた事だから・・・それに、さっきアクセサリーを見つめていたから気にいっていたかと思って・・・」
それは、彼女がアクセサリーを欲しそうにしていたように見えたからであった。
「知り合ったばかりなのに・・・買ってくれるなんて・・・」
「僕は、二年前から旅をしているから気にしなくていいよ。」
「私の為に買ってくれるなんて・・・貴方は、とても親切な人ね。」
「気にしないで・・・それじゃあ、このアクセサリーを買って着けてみようか。」
アクセサリーを購入してもらうと、ティアは早速装着する事にした。
「ありがとう。早速、着けてみるわね。」
そう言ってティアは、買って貰ったアクセサリーを髪に着けてみた。
「どう?似合っているかしら?」
「うん。とっても、似合っているよ。」
好青年が笑顔で言うと、ティアは鏡に映っている自分の髪を見た。
「さてと・・・色々と商品を見た事だし・・・そろそろ、出ようか。」
「えぇ、ここのお店には色々な雑貨が売っていた事は知らなかったわ。」
雑貨屋を出た後でも、二人は仲良く町の中を周り続けた。
「そろそろ、君の仲間達に出会う時間じゃないかな?」
もう時間ではないかと聞いてくると、ティアは空を見上げて集合する時間だと悟った。
「・・・そうね。貴方は、これからどうするの?」
「僕?そろそろ、この街を出るつもりだよ。」
「そうなの・・・貴方とまた何処かで会える気がするわ。」
ティアは、そう言うと好青年は「そうだね。」と答えた。
「こちらこそ、アクセサリーを買ってくれてありがとう・・・ずっと、大事にするわ。」
「君が気に入ってくれて、とても良かったと思っているよ。」
その様子を見た好青年は、ティアの様子を見て良かったと思っていた。
「それじゃあ、僕はそろそろ行くから元気でね。」
「えぇ・・・また、何処かで会いましょう・・・」
そのまま別れてからティアは、彼の名前を聞いていなかった事を思い出した。
「・・・そう言えば、まだ名前を聞いてはいなかったわ・・・今度、出会う事があったら名前を聞いて置いた方が良さそうね・・・」
ティアは、今度好青年と会う時に名前を聞いて置いた方が良いと思った。
「もう、こんな時間・・・そろそろ、二人と合流しなければ・・・」
街の中にあった時計を見て、そろそろ合流する時間だと確信した。
ティアは、アランと別れてギルバートとステラを探した。
「二人は何処にいるのかしら・・・見つけたわ・・・」
しばらく、ギルバートとステラを探しているとなにかを揉めている二人を見つけた。
「全く・・・ちゃんと、手を握っていろよな・・・?」
「そちらこそ、余所見をしていないでちゃんと、手を繋いでいるか見てください・・・」
どうやら、街をうろついている途中でギルバートとステラは離れ離れになっていた。
「大体、お前が迷子にならなければ、こんな口喧嘩になってなかっただろ・・・」
「いいえ。それは、ギルが私の事を気にせずに歩き続けるからです。」
二人が、口喧嘩をしている最中にティアが目の前にいる事に気が付いた。
「おっ・・・ティア、お前を探していた最中だ。」
ギルバートは、そう言ったがティアは二人の様子を見て聞いた。
「・・・もしかして、どっちが迷子になったのか喧嘩をしていたの?」
もしやと思ったティアがそう聞くと、ギルバートとステラは図星を突かれたかのような反応をした。
「ティア・・・聞いていたのか・・・」
「えぇ、言い争っていたように見えたからもしかしたらと思ったの。」
「はい。どっちが、迷子なのかを話し合っていました。」
すると、ギルバートが、話を逸らすかのように聞いてきた。
「・・・そんな事よりも、お前の方はゆっくり休んでいたか?」
「えぇ、ちょっと、旅をしている人と知り合いになって一緒に街の中を見て周っていたわ。」
ティアは、好青年の事について二人に話した。
「・・・そうか。ソイツと一緒にいたのかよ・・・」
「ギル、どうかしたの?」
「別に・・・それよりも、街を見て回った事だし・・・そろそろ宿に帰ろうぜ。」
「そうですね。御蔭で、街について色々と学ぶ事ができました。」
宿屋に戻ったティア達は、次の日に町を出て行く事にした。
「昨日、ステラが迷子になったからクタクタだぜ・・・」
街を出てから、数時間が経っており・・・昼が近い時間になっていた。
「分かった。朝から、街でステラが迷子になったからクタクタだぜ・・・」
「・・・それは、こっちの台詞です。」
「全く・・・こんな事になるなら、やらなくちゃよかったと思ったぞ・・・」
ギルバートは、ブツクサと言っていると、ティアはその件について訊ねてきた。
「ギル、貴方はちゃんとステラの手を握っていたの?」
「当然だろ?ちゃんと、離れないようにしていたが・・・ステラが、いつの間にかいなくなっていたから、お前と出会うまでずっと探していたぞ。」
ギルバートが、そのように言ったが、ステラは首を横に振ってきた。
「・・・もう、そのお話は止めにしないとステラが怒ってしまうわ?」
「分かったよ・・・悪かったな・・・ステラ。」
「もう、終わりにして仲直りをしましょう・・・」
ステラは、そう言うとギルバートは仲直りをする事にした。
「なんだか、貴方達は兄妹みたいね。」
そのように見えたのかティアは、ギルバートとステラを見て言ってきた。
「お前だって、姉妹にピッタリだぞ。」
「そうかも知れないわね・・・ステラは、どう思うのかしら?」
すると、ステラはティアとギルバートの顔を見て言ってきた。
「はい・・・二人は、私を大事にしてくれるお兄さんとお姉さんです。」
ステラが、そう言うとティアとギルバートはお互いに見つめてから笑い出した。
「それもそうかもね・・・私達が、お兄さんとお姉さんだったら、貴方は妹になるわね。」
「そうですね。これからの旅も仲良くしながら頑張りましょう。」
無事に仲直りをして、ティア達は歩き続けた。
23章 アリアの頼み
ティア達が、この大陸に上陸してから数日が経っていた。
「・・・ここの大陸には、光翼の涙が二つもありそうだな・・・」
ギルバートが、地図を広げると現いる大陸の何処かに二つぐらい隠されていそうだった。
「はい・・・きっと、光翼の涙を見つけられると思います・・・」
ステラが、そう言うと何処からか歌声が聞こえてきた。
「なんでしょうか?誰かが、歌っている声が聞こえてきます・・・」
「向こうから、歌声が聞こえてくるわ・・・」
誰かの歌声が、聴こえてくる方へ向かって見ると、焼け落ちた屋敷に一人の少女がいた。
「見て・・・あの子が、歌っていたようよ・・・」
聞こえてきた歌声は、目の前にいる少女が歌っていたからであった。
「あの人が、歌っていた声・・・綺麗な歌声で心が安らぎます・・・」
ステラは、少女の歌声を聴いて見惚れだした。
「お話をするのは、あの人が歌い終わってからにしましょう。」
「はい。とてもいい歌声で、ずっと聴いてみたいです・・・ギル、いいでしょうか?」
「あぁ、分かったよ・・・アイツが、歌い終わるまで待っているか・・・」
ティア達はしばらく、少女の歌を聴きながら歌い終わるまで待っていた。
「おっ・・・そろそろ、歌い終わりそうだぞ。」
そう言うと、タイミング良く少女は歌い終えた。
「・・・もっと、聴きたかったですね。」
「えぇ・・・私も同じよ。」
「それじゃあ、アイツに話して見ようぜ。」
歌い終わったタイミングで、ティア達は少女に声をかける。
「こんにちは。とてもいい歌声だったわ。」
ティアが、声をかけると少女は振り返った。
「もしかして、貴方達は私の歌を聴いていましたか?」
「えぇ・・・貴方の歌は、とっても綺麗な声で歌っていて良かったわ。」
「はい。もっと、聴きたいと思いました。」
少女は、ティアとステラの感想を聞いて嬉しそうな表情になった。
「ありがとうございます。私は、アリアと言って吟遊詩人をやっています。」
「そうだったの・・・今の歌は、とても綺麗な歌声だったわ。」
アリアの歌について感想を言うと、ギルバートがここにいた理由を聞いた。
「それで・・・お前は、なんでこんな場所で歌っていたのか教えてくれないか?」
ギルバートが、ここにいた理由を聞くと、アリアがなにかを思い出した。
「いけない!あの人の事を忘れていた!」
アリアがなにかを思い出すと、ティア達に頼み込んできた。
「あのう・・・ちょっと、お願いがありますが・・・いいでしょうか?」
アリアが、なにやら深刻そうな表情で訊ねてきた。
「別にいいけれど・・・なにが、あったのか詳しく話して欲しいわ・・・」
「・・・実は、昨日の夕方で同級生と再会して・・・もう、夜になるから一緒にキャンプをしようと思って、偶然この場所を見つけて訪れていました・・・」
アリアが曰く、前日の夕暮れに同級生と呼ばれる人物と再会して、焼け落ちた屋敷前でキャンプをしている最中に、同級生が屋敷の地下を見つけて調べに行ったが、朝になっても戻っては来なかったと言う訳だった。
「・・・それで、あの人を待ちながら歌を歌っていました・・・」
アリアが、事情を話すとティア達は焼け落ちた屋敷を見た。
「まぁ・・・屋敷が焼け落ちても、地下室だけは無事なのは確かだ・・・ソイツは、地下に降りる階段を見つけて、降りて行ったと言う事か・・・」
ギルバートは、地下室に続く階段を見つけてそのように言った。
「どうして、屋敷は焼けてしまったのですか?」
ステラが、その理由について聞くと、ギルバートが答えた。
「これか?貴族がいた屋敷だと言われていたが・・・何年か前に、デスドゥンケルハイト軍に殺されてしまったと言われているらしいぞ。」
ギルバートが言うには、この屋敷に貴族が住んでいたらしいが、過去になにかがあった事でデスドゥンケルハイト軍に殺されてしまい、更に屋敷も焼かれてしまったのだった。
「そうだったの・・・ここに住んでいた人もデスドゥンケルハイト軍に・・・」
ティアは、自分の家と同じように焼かれてしまったのだと思った。
「・・・ソイツの事を同級生と言ったが、もしかしてノヴェフロル学院の事か?」
話題を変えるかのように、ギルバートはアリアにそう聞いた。
「ギル、ノヴェフロル学園と言うのは、どのような場所ですか?」
「まぁ・・・簡単に言えば、学ぶ場所で通う奴も多いと言うぜ。」
ギルバートが、ステラにそう説明をすると、アリアがその事に着いて言ってきた。
「言い遅れていましたが・・・私達は、ノヴェフロル学院に通っていました。」
「そうか・・・お前もノヴェフロル学院に通っていたのか・・・どうりで、同級生だって言っていた訳だな・・・」
同級生だと言っていた事に納得をした。
「あの人は、この屋敷があった場所に地下室が残っていたのを見つけて、気になって調べに行きました・・・もしかしたら、なにかあったのかも知れません・・・ですが、私は戦えないので、ここで待っているしか方法がありませんでした・・・」
地下室を調べに行った同級生の事が、アリアは心配に思い続けていた。
「・・・まぁいい、ソイツを助け出してやるから待っていてくれよな?ティアやステラもそうしたいだろ?」
ギルバートの問いに、ティアとステラは同時に頷いた。
「もちろんです。これ以上、心配しないようにその人を助け出しましょう。」
「アリアは、ここで待っていて・・・私達が、貴方の言っていた同級生を見つけてくるから安心して・・・」
ティアとステラが、そう言うとアリアは安心して待つ事にした。
「・・・分かりました。どうか、あの人を見つけてください・・・ですが、気を付けてください・・・」
「分かった。絶対にお前の同級生を連れて来てやるから、大人しくここで待っていてくれ・・・」
ティア達は、早速アリアの同級生を見つけるために焼け落ちた屋敷の地下室へと
入って行った。
「・・・君、どうか無事でいて・・・」
ティア達が、同級生を見つけてくれるように祈り始めた。
24章 焼け落ちた屋敷の地下室
地下室へと降りたティア達は、アランの同級生を見つける為に進んでいた。
「・・・さっきの状況を見れば・・・屋敷が、焼かれてからかなりの年月が経っていたな・・・」
先程の焼け落ちた屋敷を見て、もう数年も経っている事が考えられた。
「数年前って・・・私が、まだ幼少の時に名門家の屋敷が、火事になっていたなんて知りませんでした・・・」
ステラが、そう思っているとギルバートは立ち止まった。
「待て・・・あそこに、なにかがいるぞ・・・」
ギルバートがそこから確認してみると、なんとそこにはモンスターがいた。
「モンスター?なんで、こんな所にいるのかしら・・・?」
「元々、地下室には色んなモンスターを飼っていたが・・・焼け落ちてから、放置されて野生化でもしただろうな・・・」
屋敷には、焼け落ちる前は地下室で色んなモンスターを飼っていた。
「しかも、共食いでもしたか分からないが・・・飼っていたモンスターは、数え切れない数がいたらしいぜ・・・」
ギルバートは、あちこちにモンスターの骨や喰い散らかされた肉が落ちており、長い間放置され続けていたのか酷い腐臭を放っていた。
「これは・・・酷すぎます・・・!」
ステラは、モンスターの骨や腐敗した肉を見て顔を青ざめた。
「えぇ・・・一刻も早くアリアの同級生を見つけて出なければ、この場所を永遠に忘れられなくなってしまいそうだわ・・・」
「そうだな。ここのモンスター達も飼い主が、いなくなって野生化しているから凶暴になっているから、気を引き締めて行った方が良さそうだな・・・」
ギルバートが、そう言った時だった。
「きゃあ!」
背後から、モンスターが現れた事でステラは驚き声を挙げた。
「おい・・・そんな声を出したら・・・!」
その直後にステラの声を聞こえたのか、ティア達を発見したモンスターが唸り声を挙げた。
「・・・モンスターに気付かれたか・・・」
目の前に現れてきたのは犬と鷲が交じり合った合成獣のモンスターだった。
「ティア・・・!」
「大丈夫よ・・・怖くないから・・・」
モンスターを見て怖がり始めたステラは、ティアに抱きつくと同時にモンスターが襲いかかってきた。
「ステラ、大丈夫よ・・・」
ティアが剣を抜こうとしたが、モンスターはそのままティア達を通り過ぎて小型のモンスターに襲いかかった。
「・・・どうやら、アイツは腹減って、あのモンスターを獲物にしようとしていたみたいだな・・・」
小型のモンスターを掴むとそのまま何処かへと飛び去って行った。
「・・・私達を襲わずに、行ってしまったわね・・・」
「あぁ・・・ここの貴族は、部下を使って世界中からモンスターを捕まえては、金で買ったりしていたからな・・・何年も放って置けば、共食いするのは当たり前だろ。」
ギルバートが、そう言うとこの場所が怖くなったのか、ステラは恐怖で震え出した。
「なんだか・・・怖くなってきました・・・」
「ステラ、大丈夫よ・・・私達が、守ってあげるから怖がらないで・・・」
ティアは怖がるステラを宥めて落ち着かせようとした。
「・・・ステラ、目を瞑りながらティアから離れない方が良いぞ・・・俺もお前の後ろを歩いてやるからな・・・」
そう言うと、ティアとギルバートは怖がるステラを守りながら地下室を歩き続けた。
「・・・やっぱり、コイツもいたか・・・」
地下室を探っていると、巨大な水槽のある部屋へと着いた。
「ステラ、もう目を開けろ。ここには、骨や腐った肉もないぜ。」
「・・・なんですか?水槽にモンスターがいます・・・」
恐る恐る目を開けたステラが、目にしたのは水槽の中に、中型のワニのモンスターが何匹も泳いでいた。
「ギル、このモンスターはトラップクロコね。」
「よく、知っているな。コイツの牙は武器や罠にも使われているモンスターで知られていると言われているらしいぞ。」
トラップクロコはトラバサミと同じぐらいの大きさで、生えている牙もそれらの材料に使われている素材になっていた。
「まさか、こんなモンスターまでもが、ここで飼われていたなんて驚かされたな・・・」
ギルバートがそう言うとティアが水槽に手を触れトラップクロコ達を見つめながら言ってきた。
「・・・ギル、ここにいるモンスターもなにかに使われる材料とされているの・・・?」
「あぁ・・・そうだが?それが、どうかしたのか・・・?」
「確かに、そうかも知れないわね・・・けれど、生き物を使って道具や料理を作っていて・・・私達は、それを使っては食べている事は知っているわ・・・」
ティアの言っている言葉は、生物の命を犠牲になっている事が感じられた。
「お前の言う通りだ・・・家畜を飼っている中には、人間に役立てる為に育てられてある程度成長すれば、その生物は殺されるか用済みになるまで、飼い殺しにされちまうだけさ。」
ギルバートも家畜とされる生物の末路は、初めから決まっている事が知っていた。
「人間に利用されるためだけに、命を奪われる生物達が可哀そうに思えて来るわ・・・」
すると、ステラもティアの隣に立ち同じように水槽に手を触れた。
「私も同じ気持ちです・・・お金の為だけに、命を奪っていると思うと・・・なんだか、悲しくなってきます・・・」
ステラも家畜とされる生物達の哀れみを感じられていた。
「ステラ・・・私も同じよ・・・お金を手に入れるために、罪も無い動物やモンスターをそれだけの理由で殺してはいけないの・・・なのに、死ぬまで閉じ込めておく事は・・・自然で生きている生物達にとっては可愛そうに思えられるでしょ・・・?」
そう言いながらもティアは、憐れみを感じられたのか片目に涙が零れだした。
「ティア・・・」
「・・・もう、行くぞ。ここにいたら、悲しくなってしまうだけだ。」
「ですが、トラップクロコはどうするのですか?このままだと、餓死になりそうです・・・」
「トラップクロコは、陸でも生きていけるから心配は要らないぞ。」
すると、トラップクロコの一匹が水槽の中から出てきた。
「ほらなっ・・・コイツ等は、水の中に餌がない時は陸に上がって探しに行くぞ・・・それに、ソイツの牙と顎を使って獲物を捕るらしいぞ。」
トラップクロコは、トラバサミのような顎と牙を持っており、罠になる事で獲物を捕らえる習性を持っていた。
「・・・まぁ、気にせずに生きて行けるって事だな・・・」
ティア達は、トラップクロコの水槽のある部屋を出て、同級生の捜索を再開した。
25章 忘れ去られた魔獣
「・・・アリアの同級生の人は、一体何処にいるのかしら・・・?」
その後もモンスターに襲われたりもしながらも地下室を探索し続けた。
「そろそろ、地下を調べ尽くした事だし・・・見つかってもいい筈なのに・・・ソイツは、どれだけ奥に行ったのか謎すぎるぞ・・・」
ギルバートが、ブツクサと呟いていると、奥の部屋に誰かが倒れている事に気付いた。
「なんだ?向こうの部屋に誰かいないか?」
奥の方を見て見ると、誰かが倒れている姿が確認された。
「誰かが、倒れています・・・」
「もしかしたら、アリアの言っていた同級生なのかも知れないわ。」
「やっとか・・・全く、どれだけ興味本位で調べていたか・・・ずっと、待っているアイツの事も考えろよな・・・」
アリアの同級生を保護すべく、ティア達は人物の元に向かった。
「大丈夫・・・怪我は?」
ティアは、倒れている人物の元に駆け寄ると誰なのか気が付いた。
「この人は・・・?」
そう、倒れていた人物こそが以前ティアと出会った旅の好青年だった。
「ティア、この人の事を知っているのですか?」
「えぇ・・・街でこの人と出会っていた人なの・・・」
ティアが、ステラにそう言っているとギルバートが疑問に思うような様子になった。
「コイツ・・・なんで、こんな所で気絶なんかしていやがって・・・とりあえず、コイツが無事だったから良かったとするか・・・」
そう言ってから、ギルバートは好青年の安否を確認した。
「それじゃあ、コイツを助け出せた事だし・・・そろそろ、ここから出ようぜ。」
「分かったわ・・・回復するのは、ここを出てからになるわね・・・」
その直後、何処からか唸り声が聞こえてきた。
「・・・今の声は?」
「あぁ・・・ここにも、なにかが潜んでいたみたいだぞ・・・」
ギルバートが、そう言って奥の方を見てみると巨大な獣のモンスターが現れた。
「ここの奴等は、ヤバイモンスターを飼っていたそうだな・・・」
「・・・その人を安全な場所に置いてから戦いましょう・・・」
「あぁ・・・悪いが、ここで待っていてくれよ・・・」
ティアに言われて、ギルバートは好青年を安全な場所に置いて戦闘に入った。
「コイツ・・・長い間、生き延びたってのが、伝わってきやがる・・・」
目の前に現れたモンスターは、凶暴そうで長い間生き続けていたような見た目をしていた。
「・・・ここの家の人達は、危険なモンスターを飼っていたのね・・・」
ティア達は、危険なモンスターも飼っていたのだと実感された。
「来るわ!」
狂暴な魔獣は、遠吠えを挙げてからティア達に襲いかかってきた。
「ヤバイぞ!避けろ!」
ギルバートが、そう言うとティアに向かって勢いよく突進を仕掛けてきた。
「きゃあ!」
突進を避けた直後、魔獣が壁に激突した事で大きな揺れを感じた。
「・・・どうやら、ギルの言っていた事は本当でした・・・」
「あぁ、これだけパワーがあるって事だよ・・・」
そう言うと、魔獣はギルバートに向かって攻撃を仕掛けた。
「今度は、俺の方か・・・!」
ギルバートは、迫ってくる魔獣の隙を見てジャンプをした。
「おらよっ!」
ジャンプしたギルバートは、二本の剣を振るって魔獣の背中に攻撃をしてから、着地をして振り返った。
「・・・これぐらいの攻撃でも、効いているみたいだな・・・」
ギルバートが、そう言うと魔獣は遠吠えを挙げてから威嚇をしてきた。
「コイツは、凶暴だがデカイだけだ。手を抜かずに戦っていれば倒せるぞ。」
「・・・でも、どう見ても効いているようには見えません・・・」
そう思っていると、ティアが魔獣に向けて技を繰り出した。
『流星翔群斬!』
ギルバートは流星群が降り注ぐほどの勢いがある斬撃を連続で繰り出した。
(今の手応えなら・・・!)
手応えがあったと悟り出すと、魔獣が威嚇をすると先程までよりも大きな遠吠えを挙げてきた。
「・・・いや、攻撃は効いていたと思うぞ・・・その代わり、滅茶苦茶起こったが・・・急いで、倒しちまった方が良いみたいだぞ・・・」
ギルバートがそう言った時、魔獣が巨体な体を使って地響きを挙げ始めた。
「おい・・・まさか、ここを崩落させる気じゃないだろうな・・・?」
「このままでは、あの人だけでなく私達も巻き込まれてしまいます・・・一体、どうすればいいのでしょうか・・・?」
ティア達は、地下室が崩落させられる前に魔獣に攻撃を続けた。
「あと少しで・・・倒せそうね・・・!」
魔獣に攻撃だけでなく、技や魔法を当て続けた事で魔獣は
瀕死寸前になっていた。
「もう一息だ!トドメを刺そうぜ!」
ギルバートは魔獣に向けて攻撃を仕掛けようとした時だった。
「ギル!」
魔獣がギルバートに噛み付こうと襲いかかってきた。
「大丈夫だ・・・これぐらいでやられるわきゃねぇだろ・・・?」
その隙を見たギルバートは魔獣に目掛けて技を繰り出した。
『獣研牙!』
ギルバートは獣が研ぎ澄ました牙で噛みつくような鋭い斬撃が魔獣の急所を切り裂いた。
「・・・急所は当てたが・・・殺さないようにしているから安心してくれ・・・」
そう言うと同時に、魔獣は横になって倒れこんだ。
「これでいいだろ?お前が悲しむと思ったからやったからな。」
ギルバートは不服そうに言ったがティアは安心した表情になった。
「さてと・・・なんとか、コイツを倒せて良かったな。後はコイツを外に連れ出すだけだな・・・」
ギルバートは双剣を鞘に戻してから好青年を抱き抱えようとした時だった。
「ティア、さっさとここから出ようぜ。」
「・・・そうね。無事に見つけられて良かったわ・・・」
こうして、アリアの同級生かと思われる好青年を見つける事ができたティア達は地下室を出て行った。
26章 アランの幼馴染
「ここは・・・?」
地下室を出てから、しばらく経った頃・・・好青年は目を覚ました。
「アラン君、良かった・・・無事でいてくれて良かったよ・・・」
アリアは、彼が無事だった事に安心したのか、アランに抱き着いてきた。
「地下室で貴方が、気を失っている姿を発見したのよ。」
「そうだよ。地下室に入って帰って来ないから心配していたよ・・・」
アリアにそう言われて、アランはティアの方を見た。
「君は、街で出会った子だね。もしかして、君が助けに来てくれたの?」
「えぇ・・・私だけでなく、この二人も一緒に探してくれていたのよ。」
そのようにティアは、そう答えるとアランはギルバートとステラを見た。
「お前が、地下室に行って帰って来ないからアリアはずっと心配していたぞ。」
「そうだよ・・・偶然、この人達が来てくれたからアラン君を助けに行ってくれていたの。」
「・・・成程。アリアちゃんの言う事は分かったよ。それに、君達が助けに来てくれたなんて思いもしなかったよ・・・」
「あぁ・・・同級生だって聞いたから、もしかしたらお前なんじゃないかと思ったぞ・・・」
ギルバートとアランが、中が良さそうに話し合った。
(・・・なんだか、この二人は仲が良いみたいですね・・・)
その様子が気になって、ステラが聞くとティアは二人に聞いてみた。
「アラン、もしかしてギルと知り合いなの?」
ティアに聞かれたアランは、なにかを思い出した反応をした。
「そう言えば、まだ話していなかったね。僕の名前はアラン・アルストロセージ。彼とは同じ村で育った幼馴染だよ。」
二人は、同じ村で育った幼馴染だった。
「へぇ・・・アラン君の言っていた幼馴染は、ギルバートさんだったなんて知らなかったよ・・・」
彼が幼馴染だと知ったアリアは、ギルバートを見て関心をした。
「アリア、もしかしてギルの事知らなかったの?」
「本人には、一度も出会ってはいませんでしたが・・・何度かアラン君のお話で聞いた事があっただけでどんな人か知りませんでした・・・」
アリアは、彼の事についてアランから聞かされていたが、ギルバート本人とは一度も出会った事がなかった。
「それもそうだろ・・・学院にいた頃は、アランとしか出会ってはいなかったから俺達しか知らなかったらしいぞ・・・」
「もしかして、学院でアラン君と会っていたと言う事ですか?」
「まぁ、そう言う事だ・・・なんてったって、内緒で会っていたからな・・・」
ギルバートは、過去に学院に忍び込んではアランと出会っていた。
「・・・つまり、見つからないようにしながら出会っていたと言う事ね。」
「アイツと会うだけだから、すぐに出るつもりだったぞ。」
「ギル・・・学院の中に侵入する事は良くないわ・・・」
ティアは、呆れて物が言えなくなっていた。
「アラン君、本当なの?この人と内緒で出会っていたって・・・」
ギルバートの発言にアリアが、本当なのかとアランは呆れた様子で言ってきた。
「・・・そうだよ。ギルは、僕と出会うために学園に侵入していた事が何度かあったよ。」
「そこまでして、アラン君に会いに行こうとするなんて・・・でも、ちゃんと許可や関係者だって言えば、普通に学院の中に入れましたのに・・・?」
「最初はそうしたかったけど・・・色々面倒だったからな・・・それに、いちいち許可なんか取っていたら授業が始まっちまうからな・・・」
「それもそうかも知れないけれど・・・いつも、僕の前にいきなり現れるから驚かされたけど・・・いつ、不法侵入が発覚して僕まで責任を取らされるか思っていたよ・・・」
学生時代アランは、ギルバートと会う度に心配に感じていた。
「・・・とにかく、終わった事だからもう気にしなくていいだろ?お前だって、ちゃんと卒業をしたから問題は無い筈だ・・・」
ギルバートは、そう言ったがアランだけでなくティア達も呆れ果てていた。
「・・・とにかく、アリアちゃんを心配させちゃったね・・・それに、君達が助けに来てくれてありがとう。」
「えぇ・・・まさか、貴方がアリアの同級生でギルと幼馴染だった事は驚かされたわ。」
二人がアランとの関係が、あった事を知ったティアは納得をすると、ギルバートがある事が気になって聞いてきた。
「ところで、なんであんな場所で気を失っていたのか説明できるか?」
ギルバートにそう聞かれたアランは、気まずそうな表情になってなにも答えなかった。
「それは・・・悪いけど、あまり言えないな・・・」
「言えない?もしかして、気絶する前の出来事を忘れちゃったの?」
「まぁ・・・そうかな・・・」
アリアの問いに対して、アランは誤魔化すかのように言ってきた。
(・・・やっぱり、アレを見て気絶でもしたかだろうな・・・)
ギルバートは、アランの様子を見てそれが原因だと考えられていた。
「・・・それよりも、ちょっと休ませてもらえないかな?モンスターと戦い続けていたからクタクタだよ・・・」
アランが疲れた表情で言うと、ステラは地下室の光景を思い出した。
「・・・あのう、もしかして骨や腐った肉を見ましたか?」
「うん・・・ちょっと、匂いが臭かったけど・・・小さい子が、見たら泣いてしまうような感じだったよ・・・」
「・・・私は、もういたくないと思っていました・・・」
ステラは、あの時の光景が頭から離れずにいた。
「ステラ、もうあまり思い出さないで・・・また、顔が青くなってきているわ・・・」
あの時の光景が忘れられずにいるステラを落ち着かせようとティアは宥めた。
「・・・それにしても、ティアやギルに助けてくれるなんて・・・アリアちゃんだけじゃなくて、君達にも迷惑をかけてしまったゴメンね。」
「気にするなよ。俺だって、幼馴染が死んでしまったら悲しいからな・・・それよりも、もう夕暮れになっているし・・・今日は、野宿だな・・・」
アランを休めるために、ティア達はこの場から離れた場所でキャンプを始めた。
「それで、明日はどうする気だ?」
「えっと・・・私は、この先にある村に行って歌を歌ってお金を稼ごうと思います。」
「僕もアリアちゃんと同じ場所に行こうと思うよ。」
「そうか・・・ティガイアテラ。明日はそこに行ってみるとするか・・・」
ギルバートが、そう言うと夕食が完成した。
「それじゃあ、夕食ができた事だし・・・そろそろ、食べようか・・・」
アランが、そう言うと夕食の準備を始めた。
27章 孤児院のある村
次の日になり、ティア達はアランとアリアと共に村を目指して歩いていた。
「アリアは、歌が好きで世界中を回って歌を聞かせながら旅をしているのね。」
「はい。世界中の人達に私の歌を聴いてもらいたくて、世界中を旅しています。」
アリアは、デスドゥンケルハイト軍に苦しむ世界中の人々に自分の作った歌を聴いてもらおうと金銭を稼ぎながらも旅を続けていた。
「でも、モンスターもいるのに戦う人がいなくても大丈夫ですか?」
「大丈夫。ちゃんと、稼いだお金を払って竜車に乗せてもらっているからね。」
稼いだ金銭で竜車などに乗って、遠い場所に移動するなどで使っていた。
「・・・そうは言うが、モンスターや野党に襲われはしなかったか?」
「はい・・・襲われることはありましたが、ちゃんと戦える人が乗っている竜車を選んでいたので大丈夫でした。」
「そうだったの・・・まぁ、ちゃんと無事でいて良かったよ・・・」
アランが、そう安心をするとステラが彼女の歌について言ってきた。
「・・・それにしても、歌を歌いながら一人で旅をしていたなんて・・・世界中の人達に歌を聴いてもらいたかったのですね・・・」
「えぇ・・・デスドゥンケルハイト軍に怯える人達を少しでも、元気になってもらいたかったから・・・それに、アラン君にも私の歌を聴いてもらって良かったと言っていたよ。」
ティア達と出会う前日、アランにも自分の歌を披露していた。
「うん。アリアちゃんの歌声は、昔よりも綺麗な歌声になっていて、声質も良くなっていたよ。」
アランが、そのように言うとアリアは穂を赤らめだした。
「・・・アラン君が、気に入ってくれて良かったよ・・・」
そうアリアが呟くと、目の前に目的地である村が見えてきた。
「村が見えてきたよ・・・僕は、アリアちゃんといるからここでお別れだね。」
「あぁ・・・そうだな・・・」
村の中に入ると、アランとアリアと別れる事にした。
「それじゃあ、僕達はこの辺で・・・また、何処かで会おうね。」
そう言って、アランはアリアと共にティア達と別れた。
「さてと、私達はしばらく村を見て回りましょう。」
ティア達は、村をうろついてみる事にしたが、外には誰一人も外に出ていなかった。
「おかしいな・・・昼になっているのに人一人も見当たらないぞ?」
「・・・あまりにも静か過ぎて、なんだか誰もいないみたいで怖いです・・・」
ステラが、あまりの静けさで怖くなっていた。
「・・・確かに、この静けさは不気味ね・・・村の人達は、家の中にいるかもしれないから聞いてみましょう。」
ティアは、外には誰もいない理由を聞くために住人に話をしようと一つの民家の家の扉をノックした。
「すいません・・・誰かいませんか・・・?」
しかし、扉が開く事もなく静かだった。
「・・・この家には、誰もいないのかしら・・・?」
「いや・・・居留守を使っているみたいだ・・・
「居留守って、どうしてそんな事が分かるのでしょうか?」
ステラがなぜ、そうなのか訊ねるとギルバートは窓に指を指した。
「・・・説明するよりも、窓を除いて見ろよ。」
そう言われて、ティアとステラは窓から家の中を覗いてみた。
「・・・ティア、本当に居留守をしていたみたいです・・・」
窓から覗いてみると、家の中に住民がいる事が確認された。
「だろ?ここにいる奴等は家の中に閉じ閉じこもっているみたいだぞ。」
「でも・・・なんだか、怯えているように見えるわ・・・」
家の中にいた住民は、なにかに怯えている様に見えた。
「すいません・・・ちょっと、お話を聞かせてもよろしいでしょうか?」
ティアは、窓から声をかけてみたが、住人は耳を塞いで聞く耳を持とうとしなかった。
「返事がありません・・・しかし、どうして怖がっているのでしょうか・・・?」
「きっと、この村でなにかがあったのかも知れないわね・・・でも、一体なにを恐れているのかが分からないわ・・・」
ティアが、そう思って言うと家にいた住民の声が聞こえてきた。
「・・・孤児院だ・・・」
そう言って、住人は孤児院と言うとなにも言わなくなった。
「孤児院?」
「あぁ・・・孤児院は、家族や親せきのいない子供が暮らす場所だよ。」
「でも、どうして孤児院を怖がっているのかしら・・・一応、他の家に行って見た方が良さそうね。」
ティア達は、他の民家も尋ねてみたがどの家も孤児院の事しか言わなかった。
「これで、分かっただろ?どいつもこいつも孤児院を怯えているって・・・」
「はい・・・どの人も孤児院の事を怖がっていて、誰も話を聞いてくれませんでした・・・」
どの家も孤児院と呟くだけで、まともに話を聞く事が出来なかった。
「・・・ところで、さっきから気になっていたけれど・・・あそこに見える建物は体なんなのかしら・・・?」
ティアが向いている方を見ると、村から離れた場所に場違いな建物が建っていた。
「確かに・・・とっても、大きな建物のように見えます・・・」
すると、ギルバートがここから見える建物を見て言ってきた。
「・・・あれが、孤児院だよ。」
「あそこに見える建物が、孤児院だったのね・・・」
「そうだ・・・デスドゥンケルハイト軍のせいで家族を奪われた子供達が安心して世話をしてくれる場所だよ。」
ギルバートが、そう答えるとステラは孤児院がどのような場所か納得をした。
「そうだったのですか・・・家や家族を失って悲しんでいる子供達にとっては、新しい場所だと言えそうです・・・」
「私も同じ考えよ・・・きっと、あそこには家族を亡くした子供達が平和に暮らしている筈よ・・・とりあえず、そこに行ってみましょう。」
「・・・一応、村の連中が孤児院を恐れている理由も知りたいからな。」
ギルバートが、そう言うとアランとアリアがやってきた。
「ギル、・・・もしかして、君達も孤児院にむかうつもりかな?」
「そうだが・・・お前達も行くつもりかよ?」
もしやと思ったギルバートが訊ねると、アランは「そうだよ。」と答えた。
「村の人達に歌を聞かせようと思っていましたが、外には誰もいなくて家の中に怯えていたので・・・」
「うん・・・それで、近くにある孤児院の子供達に曲を聞かせてあげようと思って行こうと思っているよ。」
アランとアリアが、そう言うとティアが言ってきた。
「そうね・・・せっかく、向かうなら一緒に行きましょう・・・」
「おい・・・なにを勝手に・・・まぁいいか、一緒に見て置いた方が良さそうだな・・・」
ティア達は、アランとアリアと共に村から離れた場所の孤児院へと向かって行った。
28章 決まりが厳しい孤児院
「ここが、孤児院・・・とても、大きな建物だね・・・」
村を出たティア達は、孤児院の前に着いていた。
「あぁ・・・この中に入れば、数え切れないぐらいの子供がいるぜ。」
「・・・ここに、子供が沢山いるから私の歌を聴いてくれるかも・・・」
「そうだね。きっと、ここにいる子供達も喜ぶと思うよ。」
そう言ってから、ティア達は孤児院の中へと入って行った。
「・・・孤児院の中は、思っていたよりも広いです・・・」
「世界中の子供達が、デスドゥンケルハイト軍のせいで両親を失った子供達を引き取っているらしいぞ。」
ギルバートが曰く、この孤児院にいる子供達はデスドゥンケルハイト軍によって、家族を奪われてしまった子供達が集まっていた。
「・・・デスドゥンケルハイト軍に家族を殺されている子供達を育てていると言う事なのね。」
「まぁ・・・そう言う事だな。とりあえず、中に入って見れば分かるぞ・・・」
ギルバートに言われて、ティア達は孤児院に入る事にした。
「あそこにいるのは、ここの人じゃないかな?」
「良かったね。丁度、案内をしてくれそうな人がいて・・・」
そう言って、目の前にいる孤児院の人間らしき人物に声をかけて見る事にした。
「・・・客人達よ・・・我が、孤児院へようこそ。」
その人物は、思っていた通り孤児院の人間だった。
「僕達は、孤児院を見に行こうときました・・・もしかして、貴方が孤児院の院長ですか?」
「いかにも・・・私の名は、エディ。孤児院を任されている者だ。」
孤児院の院長エディとティア達に自己紹介をした。
「エディ院長、ここにいる子供達の様子を見せて貰ってもよろしいでしょうか?」
ティアが孤児院の中を見ていいのか訊ねると、エディは少し考えてから言ってきた。
「そうか・・・是非、案内させてもらうとしよう・・・」
エディがそう言うと、ステラが先程の村の事について聞いてきた。
「あのう・・・どうして、孤児院の近くにある村の人達は怖がっていたのでしょうか・・・?」
「・・・なぜ、そのような事を聞くのだ?」
「私達は先程まで、その村にいましたが・・・村の人達は怯えていて、」
ステラに変わってティアが言うと、エディは平然とした様子で言ってきた。
「・・・恐らく、デスドゥンケルハイト軍に家族を殺された子供達が悲しすぎて、悲しみが伝染をしてしまったのだろう・・・この世界は、デスドゥンケルハイト軍による支配で怯えてしまっている者達も
多くいる事は知らぬ者はおらんぞ・・・」
エディがそのように答えてから、ティア達は孤児院内へと案内された。
「・・・おかしいな。子供達の声が聞こえないなんて変だよ・・・」
建物の中へと案内されたが、先程いた村と同じような静けさが感じられた。
「本当に子供達がいるのですか・・・?」
「案ずるな・・・子供達は中にいる・・・ただ静かなだけだ・・・」
ティア達は、エディに連れられて一室へと案内された。
「ここでは、子供達に色々と教育をされているのだ。」
そう言うと、ティア達はエディに連れられて一つの部屋の中へと入った。
「ここが、その一つだ。見てみろ・・・子供達は、我等によって教育されているのだ。」
部屋の中には孤児であろう多くの子供達がなにやら作業をしていた。
「・・・なにかの作業をしているみたいですが、子供達はなにをしているのでしょうか?」
アリアは子供達が一体どのような作業をしているのか訊ねた。
「・・・詳しくは教えられんが、ここでは子供達が作業をしているのだ。」
この部屋にいる子供達はなにかを作る作業をしていた。
「親を亡くしてしまった子供達は傷付いている・・・だからこそ、我々が親に代わって指導をされているのだ。」
孤児院にいる子供達はエディ達によって、色々と教育をされているようだった。
「他にも教育もしているので、子供達を立派にする事も我々の使命とされているのだ。」
「そうでしたか・・・親を亡くした子供達の為に作業などの教育をされていると言う事ですか・・・」
アランはエディの話を聞いて納得をしたが、ステラは心配そうな表情をしていた。
「・・・あのう、ずっと気になっていましたが・・・どうして、子供達は静かに作業をしているのでしょうか・・・?」
作業をしている子供達を見て、ステラはその光景が不気味に思っていた。
「・・・それは、作業に集中しているからであろう・・・我々がここで話をしても集中できているのも成長している証だ・・・」
エディがそう言うと、孤児院の鐘が鳴り響いた。
「・・・作業が終わった時間だ。せっかく来てくれた事だ・・・孤児院にいる子供達との交流を楽しむが良い・・・」
「分かりました・・・皆、行きましょう・・・」
早速、ティア達は孤児院にいる子供達との交流を開始した。
「それじゃあ、子供達と合流しましょうか・・・ステラ、私と一緒に行きましょう。」
「分かりました。ギルは二人と一緒ですね。」
「いや・・・俺は一人でいるから、お前達は仲良く交流でもしていてくれ。」
ギルバートが誤解を招くような言い方で二人にそう言った。
「・・・ギル、そんな言い方だと二人きりでいるみたいに聞こえるよ・・・」
アランがそう言うと、アリアが穂を赤らめながら言ってきた。
「いいの・・・アラン君、気にしないで・・・」
「そうだね・・・別にそんな事じゃないから勘違いはしないでね・・・」
そう言ってから、アランとアリアは子供達と交流を開始した。
「・・・ギル、どうして二人は顔を赤くしていたのですか?」
「さぁな・・・俺は孤児院の中にいるからな・・・」
ギルバートは二人と別れると、何処かへと歩き出した。
「ティア、どうして顔を赤くしていたのですか?」
ステラがアランとアリアがなぜ、顔を赤くしているのか気になってティアに訊ねてきた。
「今度、教えてあげるわ・・・今は子供達との交流を楽しみましょう・・・」
その事について、いずれ話すと言ったティアはステラと共に孤児院にいる子供達との交流を開始した。
「・・・どの子も私達と遊ぶ処か、お話すらもしてくれないなんて・・・」
ティアとステラは、子供達と交流しようとしたが、子供達は無表情で活気のなさそうな顔をしているのを見た。
「はい・・・さっきの部屋よりも、静かで暗い感じがします・・・」
「そうね・・・誰とも遊ぼうとしないなんて・・・まるで、子供達が人形になったかのように思えてくるわ・・・」
孤児院にいる子供達は人形のように無言でいる様子だった。
「・・・ティア、これが孤児院なのでしょうか?」
人形のように動かない子供達を見て、ステラがティアの袖を握り締めながら言ってきた。
「そんな筈は無いわ・・・私の知っている孤児院は身寄りを失ってしまった子供達を預けてくれる場所で心に傷を負ってしまっていたとしても、それを克服が出来るように育ててくれるのが孤児院よ。」
ティアは孤児院がどのような場所なのかステラに説明をすると、周りにいる子供達の状況を見て、ここは思っていた孤児院ではないと確信した。
(・・・どう考えても、ここにはなにかが秘密が隠されているのかも知れない・・・けれど、怪しまれれば子供達も巻き込んでしまいそうだわ・・・)
そう思いながらも、ティアは孤児院の人間達もいる事を確認した。
(・・・きっと、ギル達も同じような事を思っていそうね・・・孤児院を出てから聞いてみましょう・・・)
それから、ティアは子供達との交流をしながらも探り続けていると孤児院の鐘が鳴り出した。
「ティガイアテラ。そろそろ、孤児院が閉まる時間だから外に出ようか。」
「分かったわ・・・孤児院から離れた場所で話したい事があるから聞いて欲しいの・・・」
ティアは孤児院を出てから、ギルバート達に話をする事を決めた。
「・・・」
それと同時に、背後からティア達をエディが見つめていた。
29章 孤児院の実態
孤児院と村の中間地で、ティアは話そうとしていた。
「それで、話ってなんなの?」
「えぇ・・・孤児院について、どう思ったのかを聞かせて欲しいの・・・」
ティアがそのように言うと、アランとアリアは孤児院をどう思ったのか話し始めた。
「・・・それで、あの孤児院は怪しいと感じられたの・・・」
孤児院について話し終えると、アランが気付いていたかのように言ってきた。
「やっぱり・・・君達も思っていたみたいだね・・・ここは、普通じゃない事を・・・」
「はい・・・子供達も元気が無いように見えました・・・」
「私も同じ意見だよ。ずっと、子供達と遊ぼうとしたりしたけど・・・歌も聴いて貰えなかったよ・・・」
ステラとアリアも孤児院の子供達の様子がおかしいと感じていた。
「・・・誰一人、話しかけようとせずに呆然としているだけだったわ。」
「どれだけ、声をかけても一切見向きもしなかったし・・・まるで、人形・・・いいや、機械のように無表情で一言も喋らなかったよ・・・」
孤児院にいる子供達は返事をしないだけでなく、まるで機械のように自我の無いように感じられた。
「・・・そう言うと言う事は・・・ティア達の方も同じだったと言う事だね?」
「えぇ・・・孤児院の人達もその光景を見ても、なんとも思ってもいないようだったけれど・・・なにかを隠しているようにも感じられたわ・・・」
ティアは孤児院で働く人間達を見て、そんな風に感じられていた。
「そうだとしても子供達があんな風にしているのは変だと思うよ。それに・・・なんだか、孤児院の人達を怖がっているようにも見えたよ・・・」
「怖がっていたって・・・孤児院の人達だよ?その子は、怒られるような事をしたから怖がっているだけなのかも知れないよ?」
アリアはそのように言ったが、今まで黙って聞いていたギルバートがこう言ってきた。
「いや・・・コイツ等の言っている事は本当だ・・・よく、思い出して見ろ・・・アイツ等の様子はデスドゥンケルハイト軍を恐れているように見えなかったか・・・?」
ギルバートの発言を聞いて、アリアは子供達の様子を思い出してみた。
「言われて見たら・・・なんだか、そんな風にも思えてきたよ・・・」
「そう言う事だ・・・あの村の連中もなにかを隠しているに違いないって事だよ・・・」
「・・・私の思い違いだったらいいけれど・・・とりあえず、話を聞いてくれるか分からないけれど・・・村の人達に聞いてみましょう・・・」
ティア達は孤児院について詳しく聞こうと、先程までいた村へと戻って行った。
「・・・やっぱり、誰も外には出ていませんね・・・」
村に戻ってきたが、やはりと言うべきか村人達は誰一人も外にはいなかった。
「・・・鍵が閉められていて、中には入れないよ・・・」
話を聞こうと扉を開けようとしたが、どの家も鍵を閉められて中には入れなかった。
「俺に任せてみろ・・・こんな時は、窓に目掛けて小石を当てれば顔を出してくれるはずだ・・・」
そう言って、ギルバートは足元にあった小石を拾って窓に狙いを定めた。
「ギル、窓に石を当てていいのでしょうか?」
「まぁ・・・ちゃんと、窓を割らないようにしていたから大丈夫かな・・・」
実はアランの家にも、小石を窓に当てて呼んだ事があるようだった。
「そりゃ!」
ギルバートは狙いを定めてから小石を投げて窓に当てたが、力加減が音を鳴らす処か窓を割ってしまった。
「窓・・・割れちゃったね・・・」
「あぁ・・・久しぶりだったから、力加減を間違えちまったよ・・・」
そう言いながらも、ギルバートは割れた窓から手を伸ばして鍵を開けた。
「・・・そんな事よりも、俺が中にいる奴と話をするから待ってくれよ・・・」
「でも・・・そんな事をすれば、泥棒だって思われませんか?」
アリアは心配をしたが、ギルバートは平然とした様子で言ってきた。
「大丈夫だって、こうするのは慣れているからすぐに話をさせてやるさ。」
そう言って、ギルバートは窓から民家の中へと入って行った。
「・・・全く、そんな事をしても話を聞いてくれないと思うけど・・・」
「ギルは慣れていると言っていましたが・・・何度かあったと言う事なのでしょうか?」
彼の言葉が気になったステラが聞いてくると、アランは呆れながらも言ってきた。
「うん・・・ギルが遊びに来る時は、いつも僕の部屋にある窓から入って来ていたよ・・・」
アラン曰く、玄関からではなく自分の部屋の窓から出入りしていた。
「それで、慣れていると言っていたのね・・・でも、どうして玄関から入ろうとしなかったのかしら・・・?」
「・・・昔のギルは悪戯好きだったからね・・・だから、内緒で良く外に連れ出して遊びに行っていたよ・・・」
幼少時代のアランはギルバートに外に連れ出されては外で遊んでいた。
「まぁ・・・よく、怒られていたけどね・・・」
アランがそう言うと、扉が開かれるとギルバートが出てきた。
「喜んでくれ。ちゃんと、話を聞いてくれるみたいだぞ。」
そう言われたティア達は家の中へと入って行った。
「・・・アンタ等は孤児院の奴等じゃなさそうだな・・・」
家の中にいた住人は、ティア達を見てなにやら安心していた。
「だから言っただろ?さてと、そろそろ事情を話してくれよ?」
「分かった・・・アンタ達はこの村から離れた場所にある孤児院に行ったのか?」
「はい。私達はさっきまで、孤児院に行きました・・・でも、どうしてこの村の人達は孤児院を怯えているのでしょうか?」
アリアがそう訊ねてみると、住人はその理由について話し始めた。
「そうか・・・それで、子供達はどんな様子だった?」
「はい・・・子供達は無表情のままなにも話をしませんでした。」
アランは孤児院にいた子供達がどんな様子だったのかを話した。
「・・・そうか。だが、そこはアンタ達の思っている場所じゃない・・・」
「思っている場所じゃない?」
どう言う意味かと思うと、住人から出た言葉は信じられない言葉だった。
「・・・あそこは、身寄りの無い子供達が集まる場所じゃない・・・子供達を洗脳してしまう恐ろしい場所だ・・・」
そう言いながらも住人は話している内に恐怖が込み上げていった。
「子供達を洗脳・・・それは、なにかの間違いではないでしょうか・・・?」
ティアが信じられないと思って言ったが、住人が首を横に振った事で真実だと言う事が伝えられた。
「いや・・・以前に、孤児院から子供が逃げて来た事があって・・・その子供はあの場所は孤児院じゃない・・・あそこにいれば、殺されるって言ったらしい・・・その子の体には、幾つもの傷跡があったらしい・・・」
孤児院から脱走した子供は体中が傷だらけで出血もしていたと言うのだった。
「・・・それで、その子供はどうなりました?」
「あぁ・・・孤児院に連れ戻されている・・・その子供が怯えている様子や孤児院の連中の態度を見た事で、あの子供が言っていた事が本当だって分かったんだ・・・」
この村に住む村人達は孤児院から逃げて来た子供の様子が本当の事だと知り、それ以来村人達は悟られないようにしていたが、匿った事が発覚するのかもしれない恐怖に怯える日々を送るようになっていた。
「幸い、孤児院の連中はこの村に無関心だったので、怪しまれずに済んだが・・・我々が子供を匿っていた事がバレたら、皆殺しにされてしまう事を怖がるようになってしまったのだ・・・」
住人が思い出したくなさそうに話していると、それを聞いたティアは体を震わせている事に気が付いた。
「酷い・・・親代わりとして、子供を育てている人達が虐待をしていたなんて・・・」
ティアは今の話を聞いて、孤児院が子供達を虐げている真実を知って怒りを露わにしていた。
「ティア・・・落ち着いてください・・・」
ステラが宥めようとすると、ティアは決心をした表情で言ってきた。
「・・・皆、孤児院に行きましょう。そこにいる子供達を助け出さなければ、その中に閉じ込められたまま死んでしまう子供が出てしまうわ・・・」
ティアは子供達を助け出すと言うと、住人の男性が顔を青ざめた。
「正気か・・・!?孤児院の奴等になにかあったとしてみろ・・・なんの関係もない我々までもが、報復されるのかも知れないぞ・・・!」
「・・・全ての責任は私が取ります。それでも、・・・あの時のような悲劇が起きるような事はしませんので・・・」
ティアは故郷の村と同じ悲劇を繰り返さないように孤児院の子供達を救うつもりだった。
「ギル、ステラ・・・行きましょう。」
「はい・・・ギル、なんだかティアが怒っています・・・」
「・・・孤児院の子供達を助け出したいからだろうな・・・まぁ、コイツは命の危険があれば、すぐに助けようとする奴だから止めても聞かないだろうな・・・」
こうして、ティア達は子供達を救出する為に、再び孤児院へと向かう事になった。
30章 孤児院への侵入
ティア達が孤児院へと向かう途中、ギルバートが心配そうに聞いてきた。
「なぁ・・・やっぱり、引き返さないか?どう考えても、子供達を誘拐しに行っているようにしか見えないぞ・・・」
ギルバートは止めるように言ったが、ティアは歩きながら返事をしてきた。
「・・・ギルは、子供達の命を救いたいと思ってはいないの・・・?」
「そりゃあ、救いに決まっているだろ・・・けれど、そんな事をしちまえば関係の無い奴等も巻き込んでしまうのが分からないのかよ・・・?」
「分かっているわ・・・でも、本当に命を救いたいと思っているのであれば、自分の死を覚悟していなければ、多くの命を救う事が出来ないわ・・・」
そう言いながらも、ティアは背を向かないまま返答をした。
「ティアの言う通りです・・・私達もその気でなければ、救えないのかも知れません・・・」
ステラに言われたギルバートは「そうだな・・・」と呟いた。
「着いたな・・・鍵は閉まっているが、どうやって侵入する気だ?」
孤児院の前に着いたティアはどう侵入するか考えていると、後ろから誰かの気配が感じられて振り向いた。
「待って・・・僕だよ。」
そこにいたのは、アランだった。
「良かった・・・その様子だと、今から入ろうとしていた所だね。」
「アラン?どうして、ここに・・・アリアはどうしたんだよ?」
「うん・・・あの村で待っておくように言っておいたよ。」
アランはティアの事が心配になって、アリアを村で待たせてから連いてきていた。
「・・・まさか、お前も孤児院に侵入して子供達の救出劇に参加するつもりか?」
「うん・・・なんだか、嫌な予感がしたから僕も協力をした方がいいかも知れないって思ったからだよ。」
ティア達が孤児院に向かった後で、アランは不吉な予感を感じてきたのだった。
「おいおい・・・相手は子供達を支配している孤児院だぜ?お前まで、ソイツ等に目を付けられでもしたらどうする気だ・・・アリアだって、お前が死んだら悲しむぞ?」
ギルバートは止めるように言ったが、アランは安心させるように言ってきた。
「それは、分かっているよ・・・でも、ここの真実を聞いた以上は見過ごす事なんてできないよ・・・」
「・・・だったら、お前も子供達を助け出すのに協力をしてもらうしか無いみたいだな・・・」
ギルバートは仕方が無さそうにしながらも、アランの協力を承知するしかなかった。
「ありがとう。僕も役に立てるように頑張ってみるよ。」
「でも、どうやって中に入ればよろしいのでしょうか?」
「連いてきて・・・ちゃんと、中に入れる方法があるからね。」
そう言って、アランはティア達を連れて孤児院の裏へと回った。
「裏から入れそうだけれど・・・どうやって、中に入るつもりなの?」
ティア達が着いた場所には、孤児院の裏口らしき扉があった。
「・・・どのようにすれば、中に入れるのでしょうか?」
「皆・・・僕が合図をしたら、中に入って・・・」
そう言って、アランは魔導書を開くと魔法を唱えた。
『フラリリア!』
アランが魔法を唱えると、咲いた花が開花するかのような眩い光がその場で放たれた。
「そろそろ、扉が開く頃だよ・・・」
そう言うと、裏口の扉が開かれて孤児院の人間達が出てきた。
「今だよ!」
アランが言うと、ティア達はその隙に裏口から孤児院内へと侵入する事ができた。
「なんとか、入り込めたわね・・・今の内に、ここから離れておきましょう・・・」
ティア達は孤児院の中に入り、子供達を救出すべく忍び込む事ができた。
「でも、本当に大勢いる子供達を救える事ができるのでしょうか・・・?」
孤児院の中を歩いている途中で、ステラがその事が気になっていた。
「・・・とにかく、見つからないように逃がすしかないだろうな・・・まぁ、それが出来たらの話だけどな・・・」
そう言いながらも、ティア達は子供達がいる部屋と思われる無数の扉の前に着いた。
「部屋がかなりあるけれど・・・子供達はこれだけ多くいたのね・・・」
「ですが、かなり静かのようですが・・・どうしてなのですか?」
「ここの子供は起床と就寝が早いって聞いた事があるからもう寝ていると思うよ。」
アランが壁に指を指すと、起床と就寝の時間が書かれた紙が張られていた。
「確かに・・・かなり、早い時間に寝ているのですね・・・」
すると、ギルバートが扉を開けようとしたが、鍵がかかっており開かなかった。
「駄目だな・・・鍵をかけられていて、中には入れねぇ・・・」
ティアも扉を開けようと試したが、やはり扉は開く事ができなかった。
「鍵が必要ね・・・」
「しかし、鍵は一体何処にあるのでしょうか・・・?」
「とにかく、鍵を置いてありそうな部屋を探して見るしかないみたいだね・・・どうしてだか分からないけど、案内板が見当たらないのも不自然だからね・・・」
子供達を助けるべく、ティア達は見つからないように子供部屋を開ける鍵を探し始めた。
「ここは、作業室か・・・」
鍵を探している途中で、昼間に訪れた作業室の中に入っていた。
「・・・別に鍵を作業室に隠すなんて、有り得ない事だと思うけど・・・一応、探してみようかな・・・?」
作業室を調べようとすると、ギルバートがなにかを発見した。
「おい・・・これを見てみろよ・・・」
ギルバートに言われて、ティア達は作業室にある物を見てみた。
「これって・・・機械や魔道具に使われているパーツみたいだね・・・」
作業室にあったのは、小さな部品で完成した物も置かれていた。
「こっちの机には、薬までも作っていたと思います。」
ステラのいる方の机には、薬を調合する材料が幾つもあった。
「・・・子供達に道具を作っていたと言う事なのかな・・・?」
「だとしても・・・機械の様な目をしていたのは、どうしてなのかが分かりません・・・」
そう思っていると、ギルバートが彼女達を呼んだ。
「皆、こっちへ来いよ・・・とんでもない物を見つけたぞ・・・」
ティアが呼ぶと、ギルバート達は集まった。
「ギル、鍵を見つけたのですか?」
「こんな所に鍵を隠している訳がないだろ・・・それよりも、ここにある物も見てくれよ・・・」
そう言って、ギルバートはその場を動くとある物が入っている箱を見せた。
「・・・ギル、こう言う物までも子供達が造っていたのね・・・」
「そうだ。ここは、武器までも造らされているんだよ・・・」
機械や魔道具に薬だけでなく、武器も造られていたのだった。
「まさか、子供達に武器を造らせていたなんて・・・これは、どう考えても子供が造るような物じゃないよ・・・」
「そのまさかだ・・・ここで、無理やりやらされていたって事だ・・・しかも、どれもこれも質が良くできていて、しかも店では売っていない物ばかりだ・・・」
ギルバートは作業室にある物は全て見た事のない物だった。
「どう考えても、体罰かなんかして失敗のないようにしていたからか・・・これだけ完成度の高い物を造らされていたなんて考えられないよ・・・」
アランはここにある物を見て、上質な非売品のようにしか見えなかった。
「酷い・・・子供達を使って、造らせていたなんて・・・とにかく、今は子供達の救出を優先しましょう・・・」
作業室を後にしたティア達は見つからないようにしながら鍵を探し続けた。
「ここは、孤児院の人達がいる部屋だね。」
子供部屋の鍵を探していると、孤児院で働く人間達の部屋に着いた。
「・・・この部屋には誰もいないようだし・・・ここで、見張っておくからお前達は鍵が無いか調べてみてくれ・・・」
「一緒に探していたのに、どうして見張る必要があるのですか?」
ステラは今まで鍵を探していたのに、急に見張りをすると言ったのか気になった。
「・・・まぁ、念の為だ・・・アイツ等が来たら、知らせてやるからお前達は鍵を探してくれ・・・」
そう言われたが、ティア達は気になりながらも鍵を探す事にした。
「まずは、机を調べてみようかな・・・なんだか、泥棒になったみたいだね・・・」
「はい・・・これも子供達を助けると思って我慢するしかないみたいです・・・」
自分達はまるで、泥棒みたいだと思いながらも部屋の中を調べ始めた。
「・・・ここには、なにもないようね。」
「もう、泥棒の真似はコリゴリだし・・・そろそろ、この部屋から出ようか。」
ティア達は部屋を出ると、ギルバートが安心して待っていた。
「鍵は見つけたのか?」
「いいえ・・・ここには、なにも無かったわ・・・」
「・・・やっぱり、鍵は院長が持っているとしか考えられないな・・・」
ギルバートは院長であるエディが鍵を持っているのではないかと思っていた。
「言われてみれば・・・ここになかったと言う事は、院長室にあるのかも知れないな・・・でも、そこに行っても鍵があるとは限らないよ?」
ティアはそう言ったが、ギルバートが推測するかのように言ってきた。
「いや・・・重要そうな物があるとすれば、その部屋か責任者が持っているかのどっちかだ・・・これだけ、探しても見つからないとなれば・・・そこにあるしか考えられないだろ?」
孤児院の中を調べていたティア達は、まだ院長室だけは調べてはいなかった。
「・・・ですが、そこに行っても人がいるかも知れません・・・本当に大丈夫なのでしょうか・・・?」
「さぁな・・・行ってみなきゃ分からないだろ・・・」
「・・・院長室は何処にあるか分かりません。」
「安心しろ・・・一番上の階にあるに決まっているさ・・・」
ギルバートが適当な口調で言うと、ティア達は彼を信じる事にした。
「分かったわ。一刻も早く、子供達を救い出したいからそこに行ってみましょう。」
こうして、ティア達は彼を信じて一番上の階へと上がって行った。
31章 孤児院の真相
ティア達は階段を上がって行くと、奥にある部屋の扉を開けようとしていた。
「多分、ここが院長室だ・・・」
ギルバートはそう言うと、扉に張り紙が張られていた事に気付いた。
「待ってください。扉になにかが書かれています。」
張り紙には、孤児院の者や関係者以外は立ち入りを禁ずると書かれていた。
「私達は入ってはいけないと言う事なのでしょうか・・・?」
「・・・そんな事を言われても、俺達は鍵を探さなきゃいけないから関係ないだろ・・・」
そう言って、ギルバートは扉を開けるとティア達も中へと入って行った。
「・・・誰もいないわね。」
「あぁ・・・その間に鍵を探してみようぜ。」
ギルバートは早速、院長室の中を調べ始めた。
「関係者以外、院長室は立ち入り禁止だけど・・・こんな事をして大丈夫かな・・・?」
「なに・・・誰もいなかったら関係ねぇよ・・・それに、子供に酷い目に合しているような場所なら話は別だからな・・・」
鍵を探しながら、ギルバートはそう言ってきた。
(・・・なんだか、ギルは孤児院の事を知っているような気がするような気がするよ・・・)
(はい・・・ギルは孤児院について知っていそうな気がしました・・・)
(・・・私もそう思うわ・・・案内図も何処にも見当たらなかったのに・・・もしかしたら、ギルは初めから知っていたのかも知れない・・・)
ティア達が小声で話し合うと、ギルバートが鍵を探しながら答えてきた。
「・・・昔、父さんと一緒に来た事があったからだよ。」
「ギルのお父さんから聞いていたのですか?」
「あぁ・・・初めて来る前に父さんから聞かされた事があったんだ。」
「お父さんと一緒に来た事があったのですか?」
ステラがそう聞くと、ギルバートは鍵を探しながら「そうだ。」と答えた。
「初めて聞かされた時は驚かされたぞ・・・まさか、そんな場所だったなんて・・・」
ギルバートは過去に訪れた事を話すと、ティアが子供達を見てどう思ったのか聞いてきた。
「ここにいる子供達を見て、貴方はどんな風に思ったの・・・?」
ティアにそう訊ねられたギルバートはなにかを思うような口調で言ってきた。
「・・・なんで、そんな事をいわなくちゃいけないんだ?」
「だって・・・子供達が今でも辛い目に合されている事を見ていたから・・・貴方も子供達が今でも苦しみ続けている事は分かっていた筈よ・・・?」
孤児院の真相を知ったティアは過去に訪れていたギルバートに対して、そのように感じられたのではないかと思っていた。
「・・・あぁ、俺もそう思っていたぞ。だが、父さんも分かっていたみたいで、この事は誰にも知られるなと言われていたんだ・・・」
彼の父親も孤児院の事を知っており、息子であるギルバートには黙秘しろと言われていた。
「・・・なぜ、真相を知っていた貴方のお父さんは黙っていたの?」
「さぁな・・・それよりも、鍵を見つけたから子供達を助けに行こうぜ。」
そう言いってから、ギルバートは鍵をティア達に見せた。
「待ってください・・・机の上に髪が置かれています。」
鍵を見つけて部屋を出ようとすると、ステラが机の上にあった紙を手にした。
「おい・・・鍵を見つけた事だし、見る暇があるなら子供達を助けに行こうぜ・・・」
しかし、ギルバートはそう言ったが、ステラはその内容を見ていた。
「・・・これを見てください。」
そう言って、ステラはティアに紙を手渡した。
「これは、報告書のようね・・・孤児院は誰かに報告をしていたと言う事なのかしら・・・?」
そう思いながら、報告書を見るとティアはそこに書かれていた内容を見て驚いた。
「・・・どうかしたのか?」
ギルバートとアランは報告書に書いてあった内容を見てみた。
『・・・これまで、教育した孤児院の子供達は無事に終えて聖地ラヴィレイヘヴンに送る・・・引き続き、立派な人間としての教育を続ける・・・もし、教育をし終えていないのであれば、どのように処分を下すか任せる・・・』
「デスドゥンケルハイト軍・・・!?それじゃあ、ここの子供達は・・・」
「えぇ・・・孤児院自体は、デスドゥンケルハイト軍と繋がっていて故郷や家族を奪われた子供達を洗脳し終えたら、ラヴィレイヘヴンに連れて行って兵士にされていると言う事ね・・・」
そう確信しながらもティアは報告書を読み続けてみた。
『・・・ただし、教育が上手くいかなかったのであれば、その子供の処分は任せる・・・脱走や裏切りを防止するためには仕方のない事だ・・・』
「・・・!」
報告書を読み終えた直後、ティアは怒りで体を震わせた。
「ティア・・・」
「・・・ギル、孤児院は子供達を洗脳して、デスドゥンケルハイト軍に引き渡していた事は分かったわ・・・今までの子供達は兵士にされて、罪も無い人達の命を奪っていたの・・・?」
「多分な・・・ここに書いてある事は本当のようだし・・・もしかしたら、兵士達の中に孤児院にいた子供達が紛れ込んでいると思うぜ・・・」
ギルバートがそう答えると、ティアは持っていた報告書を握り潰した。
「・・・家族を失った子供達が孤児院に預けられる事で、デスドゥンケルハイト軍の兵士としての洗脳教育を受けていたのね・・・」
ティアは涙目になりながらも、子供達が命を奪う人間にされていたのだと知って体の震えが止まらなかった。
「子供達を救出しましょう・・・これ以上、人の命をなんとも思わない人間が増えてしまわないようにしなければ、洗脳されてしまう子供達が出続ける事になってしまうわ・・・」
ティアはこのような事を繰り返さぬようにしようと決意をしていた。
「君の言う通りだよ・・・これ以上、知ったとなれば止めるしかないみたいだね・・・」
「急いで、子供達を助けに行きましょう。」
アランとステラもそう言うと、ギルバートは不服そうに思いながらも言ってきた。
「・・・こうなったら、子供達を助けてからここを潰してやろうぜ。」
「えぇ・・・もう二度と同じ事が繰り返されないようにしましょう・・・」
子供達を逃がし、孤児院を潰そうとティア達は鍵を持って子供部屋へと急いだ。
32章 孤児院の最期
「これで、全員だね・・・」
子供部屋に戻ってきたティア達は鍵を使って子供達を出していた。
「それにしても、これだけの子供達がこんな部屋に閉じ込められていたなんて・・・思いもしなかったぜ・・・」
「えぇ・・・子供達の部屋にしては、あまりにも酷過ぎるわ・・・」
子供部屋は大人数にも関わらず、窮屈な部屋で雑に寝かされていたようだった。
「・・・もし、この部屋に病気の子供がいたらどうするつもりだったのでしょうか・・・?」
「多分、死んじまったら雑に処分されていそうだな・・・こんな所、さっさとぶっ潰して脱出しようぜ。」
「ですが、数多くいる子供達をどうやって逃がしたらいいのでしょうか?」
孤児院にいた子供達は思っていたよりも数が多く、見つからずに脱出させるのは困難に等しかった。
「確かに・・・転移魔法やワープベルを使っても、足りなくなるし・・・だとしても、少しずつ逃がしていたら見つかってしまうかも知れないね・・・」
「一体、どうすればいいのでしょうか・・・?」
どうやって、子供達を逃がすか考えていた時だった。
「・・・侵入した形跡を見つけて、もしやと思えば・・・まさか、貴様等だったとは・・・」
そこに現れたのは、エディ率いる孤児院の人間達だった。
「エディ・・・どうして、私達が忍び込んでいた事が分かったの・・・?」
「秘密だ・・・それよりも、お前達は子供達を脱走させるつもりか?」
エディに聞かれると、ティアが前に出て言ってきた。
「・・・貴方達は家族を失った子供達を教育と偽って、洗脳をしてデスドゥンケルハイト軍に送っていたの?」
「洗脳教育とは、失礼な・・・我々は家族を失った子供達を引き取って、立派な人間として育て上げているのだ・・・子供達だって、我々に教育をされて喜んでいる筈だ。」
エディはそのように言ってきたが、子供達はどう見ても孤児院の人間達を見て怯えているようにしか見えなかった。
「子供達が貴方達を見て怖がっているわ・・・そうやって、子供達を洗脳するまで恐怖を植え付けているのは、教育をしているようには思えないわ・・・」
ティアは睨みつけながら言うと、エディは平然とした様子で言ってきた。
「・・・そうしなければ、完璧に教育する事ができんのでな・・・少しばかり、強引ではあるが・・・立派な人間に仕上げるにはそうする方法はないのだ・・・」
「少しばかり・・・子供達に恐怖を与える事が教育だと言いたいの・・・?」
ティアは子供達がエディ達による恐怖で支配されていたと知ると怒りが込み上げていた。
「さて・・・孤児院について知られてしまった以上・・・生かして帰す訳にはいかん・・・」
エディはそう言った直後、孤児院の人間達が一斉にティア達に襲いかかってきた。
「・・・孤児院の奴等と戦わなくちゃいけなくなったな・・・」
「まぁ・・・相手はデスドゥンケルハイト軍と繋がっている孤児院だからね・・・」
ティア達も対抗すべく、武器を手に取って戦闘を開始した。
「相手は子供達よりも数が少ないけど・・・ここで、戦うのは難しいと思うよ・・・」
そう、ティア達の後ろには数多くの子供がおり、一人でも子供達に近づけられてしまってはいけない状況だった。
「確かに・・・これだけの子供がいるなら、いつ人質を取ってもおかしくないな・・・」
「私達、四人だけでは子供達を守れるのでしょうか・・・?」
相手は子供達より少ないが、四人だけで子供達を守れるか不安だった。
「とにかく、やってみなきゃ分からねぇだろ・・・!」
その直後、ステラの背後に孤児院の人間が近づいて剣を振り下ろしてきた。
『マジカルチャンク!』
アランがステラを助けようとして、魔法で魔力の光を放って孤児院の人間に当てた。
「大丈夫?怪我は無い?」
「アラン、ありがとうございます。」
ステラがお礼を言うと、アランは子供達の様子を確認した。
「・・・子供達は無事みたいだね。」
「あぁ、この調子ならコイツ等を倒せそうだな・・・」
「分かっているかも知れないけれど・・・この人達を殺さないように戦って・・・」
「あぁ・・・そんな事は言われなくても分かっているぞ・・・」
ティア達は子供達を守りながらも、エディの部下達を倒していった。
「くっ・・・まさか、これ程の実力者だったとは・・・!」
孤児院の人間達を全て倒した事でエディだけだった。
「後はアンタだけだな・・・どうする?さっさと、子供を返してやった方が良いと思うぞ?」
ギルバートがそう言ってくると、エディは歯を食いしばった。
「もう、戦うのは止めて子供達を解放して・・・そして、もうこのような事は止めて・・・」
これ以上の戦いを止めさせようとしたが、エディは聞き入れようとする気はなかった。
「それは・・・できん事だ!」
エディが襲いかかろうとした直後、ティアは動き出す前に剣を向けてきた。
「貴方達も親に育てられてきた筈よ・・・それなのに、子供を育てる側の大人になっているのに、恐怖で縛り付ける事が教育だと言える訳がないわ・・・」
「・・・それが、なんだと言うのだ?子供は皆、命令に忠実な人間にすべきだろう・・・」
「それなのに・・・貴方達は育ててもらった恩を忘れたかのように、子供を無理やり教育して心を殺してしまう事で罪も無い人達の命を奪ってしまう人間として育てている事はしてもいいと思っているの・・・?」
子供を育てる大人が恐怖で無理やり支配し、心を殺させてしまう事は教育ではないとティアは訴えようとしていた。
「子供達は我々の教育によって、理想の人間として育て上げてきた・・・それこそが、我が孤児院の御蔭でもあるのだ!」
エディが笑い出した直後、ティアはキッと睨みつけてきた。
「そんなのは、教育じゃないわ!」
その時、ティアが涙を零れると同時に光が感じられた。
「なんだ・・・!?」
エディは、起き上がろうとするとティアが剣先を向けてきた。
「・・・子供達を解放して、これ以上子供達の洗脳教育をさせる訳にはいかないわ。」
ティアはこれ以上、洗脳教育をしないで欲しくはなかった。
「開放だと・・・?」
すると、エディが突如として笑い出した。
「残念だったな・・・それはできん事だ・・・」
その瞬間、地響きが鳴り始めた。
「まさか・・・ここをぶっ潰す装置を作動したのか・・・!」
「その通りだ・・・貴様等は子供達諸共、崩れ去るのだ・・・!」
エディはそう言ってから、不敵に笑い出した。
「そんな事をしてしまえば、貴方達までもが巻き込まれてしまうわ・・・」
「構わん・・・あのお方に合わせる顔がないのでな・・・」
そう言った直後、天井が崩れてエディは瓦礫の下敷きになった。
「・・・急ぎましょう、私達も倒壊に巻き込まれてしまうわ・・・!」
「皆、連いてきて!」
子供達を連れて部屋から出ようとしたが、瓦礫が出入り口を塞いでしまった。
「出入り口が・・・塞がれてしまいました・・・」
「この状況だと、ワープベルや転移魔法を使う暇が無いみたいだよ・・・!」
「一体、どうすれば・・・!」
ただ、崩壊に巻き込まれるまで待っているだけかと思っている時だった。
「これは・・・」
突如として、ティア達の目の前になにかが出現した。
「・・・これって、もしかしてだけど・・・あの・・・」
アランはそれを見ていると、ステラが彼の手を取ってきた。
「大丈夫です。私達も知っていますので、安心してください。」
「いいから、お前も来いよ!ここに残って、下敷きになりたいか!」
その時、ティア達の前に何者かが現れた。
33章 二つ目の光翼の涙の場所
「・・・どうやら、エディは孤児院の崩壊に巻き込まれてしまったようだな・・・」
崩壊した孤児院の前に、ソルは兵士達と共に現場を確認していた。
「はっ・・・どうやら、孤児院に侵入者が現れた事によって、崩壊せざるを得なかったのかも知れません・・・」
一人の兵士がソルにそのように報告をした。
「言われなくても分かる・・・俺が言いたいのは、誰が侵入して子供達を逃がそうとしたのかだ・・・」
ソルは誰が孤児院に侵入して、崩壊させたのかを問いを聞きたいようだった。
「ソル・・・様。先程、瓦礫の中を確認してみましたが・・・子供達の遺体は見つかりませんでした・・・」
報告してきたのは、兵士の一人でもあるヘイゼルだった。
「・・・恐らく、侵入者が全員を逃したのだと考えられます・・・侵入者も瓦礫に埋もれているのかも知れません・・・」
「そうか・・・だとすれば、転移をして脱出をしたのかも知れないな・・・」
ソルは瓦礫の山と化した孤児院を見つめながらそう言った。
「大丈夫だ。誰一人、孤児院に取り残してなんかいないぞ。」
時を同じくして、孤児院の近くにある村では子供達と一緒に滞在していた。
「子供達がちゃんと、全員逃げられて良かったね・・・」
「それにしても、驚いちゃったな・・・まさか、アラン君達が孤児院にいた子供達を連れて来るなんて・・・」
孤児院が崩壊した直後、ティア達が子供達と一緒に村の前に現れたのをアリアは見ていた。
「僕も見た時は驚いたけど・・・まさか、本当に存在していたなんて思いもしなかったよ・・・」
「ところで・・・ステラちゃんは何処に行ったの?」
アリアはステラがいない事を訊ねると、ギルバートが何処にいるのか言ってきた。
「あぁ・・・なんでも、ティアと一緒にアイツの所に行くって言っていたぜ。」
その頃、ステラはティアと一緒に村の中で誰かを探していた。
「見つけました・・・ここにいたのですね・・・」
ティアとステラはとある人物がいるのを見つけて声をかけた。
「子供達は貴方にお礼を言いたそうにしていたわ・・・それなのに、もう行ってしまうなんて・・・なんだか、貴方らしくないと思うわ・・・」
「そうしたいが・・・少々、忙しい事情があるのでな・・・」
その人物の正体は星竜族のガイアだった。
「それにしても、まさか貴方が助けに来てくれたなんて思いもしなかったわ。」
「なに・・・偶然、近くにいたまでだ・・・」
ガイアは孤児院の付近に降り、崩壊しようとするのに気が付いた。
『孤児院が揺れている・・・いや、これは倒壊しようとしているのか・・・急いで、中にいる人間の子供達を救出しなければ・・・!』
ガイアは倒壊しようとする孤児院へと向かった。
「それで、転移魔法で私達の元に現れたのですね。」
「その通りだ。私の転移魔法で子供部屋のある場所に転移して、そなた達がいたと言う事だ・・・」
それでは、孤児院が崩壊する直前まで時間を遡ってみるとしよう。
『・・・なぜ、そなた達がここにいるのだ?』
この時、ティア達の前に現れたのは星竜族の転移魔法でガイアはその穴から転移してきていた。
『星竜族は大昔に絶滅した筈なのに・・・それに、君達を知っているような感じだけど・・・?』
アランはガイアがティア達の事を知っているかのように見えていた。
『説明は後だ・・・ここは、もうすぐ倒壊する・・・急いで、この穴に入って脱出するのだ・・・』
『よく分からないけど・・・あの穴の中に入った方が良さそうだね・・・』
『安心してください。この穴に入れば、すぐに転移をする事ができます。』
こうして、ティア達は子供達を転移の穴を潜らせていった。
『これで、全員か?』
ガイアが聞くと、子供達はもういない事を確認した。
『あぁ・・・もう、一人も残っていないぜ・・・』
ギルバートが答えると、孤児院の倒壊がすぐそこまで迫っていた。
『残るは私達だけ・・・急ぎましょう・・・』
ティア達も穴を潜った後にガイアも続いた瞬間、そのまま消滅すると同時に孤児院は完全に倒壊して瓦礫の山と化した。
「・・・そして、私達はこの村に転移をする事ができた・・・これも、貴方が気付いて来てくれた御蔭です。」
「もしも貴方がいなかったら、私達は子供達と一緒に巻き込まれて死んでいたはずだったわ・・・」
二人の言葉を聞いたガイアは静かに彼女たちの顔を見つめた。
「そうだな・・・人類を助け出すのも、星竜族に課せられた使命でもあるのでな・・・」
そう言いながらも、ガイアは静かに夜空を見上げた。
「・・・今日の夜空は星空が出ていないようだが・・・いずれ、星の見える日が訪れるであろう・・・さて、私はそろそろ行くとので、仲間達や子供達にも伝えて欲しい・・・」
ガイアは別れを言おうとすると、ステラが寂しそうな表情をしている事に気付いた。
「分かりました・・・ガイアもお元気で・・・」
彼女の表情は寂し気な顔をしており、ガイアがもう行ってしまうのかと思っていた。
「・・・申し訳ないが、私にはやるべき事があるので構っている時間が無いのだ・・・だが、いずれは一緒にいられる日が来ると信じて待って欲しい・・・」
ガイアは羽ばたいて上空へと舞い上がってから、ティアとステラにこう言ってきた。
「・・・二つ目の光翼の涙はここから離れた場所に存在している遺跡に隠されている・・・そこに行けば、見つける事ができるであろう・・・」
そう言い残して、ガイアはそのまま夜空へと消えていった。
「ガイア、行ってしまいました・・・」
「えぇ・・・二つ目の光翼の涙はその遺跡に隠されているのね・・・この事はギル達にも伝えましょう・・・」
ガイアと別れたティアとステラはギルバート達の元へと戻って行った。
「二人共、アイツとの別れは済んだか?」
「はい・・・ガイアはもう行ってしまいました。」
ステラが寂しそうに言うと、ティアは二つ目の光翼の涙がある場所を話した。
「・・・ところで、アリアが聞きたい事があるが・・・聞いてくれるか?」
すると、アリアが信じられなさそうに質問をしてきた。
「すいません・・・そのガイアと言う人は星竜族でしたか?」
「そうよ。ガイアは星竜族の生き残りで絶滅から免れていると言っていたわ。」
ティアはそのように答えたが、アリアは納得をした。
「そうですか・・・あの人は本物の星竜族ですね・・・でも、星竜族は絶滅したと言われていたのに、まだ生き残っていたなんて知りませんでした・・・」
「うん。僕も初めて、ガイアを見た時は信じられなかったな・・・大昔に絶滅したと伝えられていた星竜族が生き残っていたなんて思ったよ・・・」
星竜族の絶滅は大昔の全人類に伝えられているようだった。
「そう言えば、子供達はどうすればいいんだ?」
ギルバートがそう言うと、子供達をどうするか考えていない事に気が付いた。
「困ったわね・・・この子達を連れて、旅に連れて行くわけにはいかないから・・・何処か、子供達を預けてくれる場所は無いのかしら・・・?」
ティアは数多くいる子供達をどうすればいいのか悩みだした。
「・・・とりあえず、先輩達に預けてもらえるかどうかかけ合ってみるよ。」
そう言って、アリアは端末を取り出して学院時代の先輩達にかけてみた。
「とりあえず・・・子供達の事は安心していいみたいですね・・・」
「えぇ・・・家族を失った子供達の為にも、デスドゥンケルハイト軍と戦いましょう・・・」
ティアは子供達の為にも、デスドゥンケルハイト軍を倒す事を決めた。
「・・・もう、遺体は残ってはいないのか?」
その頃、孤児院跡ではソル達は瓦礫の山からエディ達の死体を見つけ出し並べていた。
「はっ・・・どうやら、孤児院の崩壊に巻き込まれて死亡していたのは、エディを含む孤児院の者達のようです。」
「やはりか・・・」
「それで、子供達は見つけ次第、殺しておいた方がよろしいでしょうか?」
兵士の一人が脱走した子供達をどうするか訊ねてきた。
「・・・放っておけ、それよりもエディ達の死体をラヴィレイヘヴンに運べ・・・」
「はっ・・・」
ソルがエディ達の死体を聖地に運ぶように命ずると、星空の無い夜空を見上げた。
「・・・まさか・・・な・・・」
夜空を見上げてから、ソルは兵士達と共に聖地へと帰還した。
34章 光翼の涙が隠された遺跡
次の日になり、アランは転移魔法で子供達を先輩達の元へと送っていた。
「これで、全員みたいだね。」
「先輩達なら、引き取ってくれる人を見つけるまで、子供達の面倒を見てくれるって言っていたよ。」
アリアがそう言うと、ティア達は引き取り手が見つかるまでは安心だと思った。
「・・・ところで、皆さんはもう行ってしまうのですね。」
「えぇ・・・私達にはやらなければいけない旅をしているのだから・・・」
「そうでしたか・・・アラン君はこれからどうするつもりなの?」
アリアがどうするのか聞くと、アランは今後の事を考えてみた。
「そうだね・・・これまで通りに色々な場所へ行ってみるとするよ・・・」
アランがそう言うと、アリアはこう言ってきた。
「・・・だったら、私も一緒に行ってもいいかな?」
アリアは旅の同行をしてもいいのかアランに聞いてみた。
「気持ちは分かるけど・・・アリアちゃんは戦えないから大変な旅になってしまうから、今まで通りに歌を聞かせながら旅をしていた方が良いと思うけど・・・?」
アリアは戦えない為に、アランは旅に同行するのは止めた方がいいと言った。
「でも・・・アラン君がそう言うなら、歌を歌いながら旅をしていた方がいいかも・・・」
アリアは不服そうにしたが、彼の言う通りに同行する事を諦めた。
「安心して・・・この旅が終わったら、アリアちゃんの歌を聴いてあげるから・・・それまでは、色々な場所で歌を聞かせながら旅をしていて・・・その間に、新しい歌も作っておくのも良いかも知れないからね・・・?」
アランはアリアを心配させないようにと、そのように言ってきた。
「分かったよ・・・これからも歌を歌いながら旅をする事になるけど・・・また、何処かで会えたらいいね・・・それじゃあ、行くね・・・」
アリアは心配そうにしながらも、アランに別れを言ってから去って行った。
「行ってしまいましたね・・・本当に良かったのでしょうか・・・?」
心配に思ったステラが聞くと、アランは「大丈夫だから・・・」と返答した。
「・・・それで、お前も俺達の旅に同行したいのか?」
「うん・・・僕の考えていた事を気付いていたなんて、流石はギルだね・・・」
「なに、言っているんだよ?幼馴染なんだから、理解できるのは当然だろ?」
ギルバートは初めから、アランの思っていた事は分かっているようだった。
「まぁね・・・実は、昨日アリアちゃんにそう話しておいたからね。」
前日の夜、アランはティア達の旅に同行する事をアリアに話していた。
『ねぇ・・・本当にティアさん達の旅に同行するの?』
アリアが心配そうに聞くと、アランは「うん・・・」と答えてきた。
『君も聞いたでしょ?彼女は光翼の涙を集めてデスドゥンケルハイト軍を倒す旅に出ているって・・・』
『そうかも知れないけど・・・その旅は過酷でしょ?だったら、私も一緒に連いて行った方が良いかな・・・?』
アリアは同行しようとしたが、アランは首を横に振ってきた。
『駄目だよ・・・ティアは何度か、デスドゥンケルハイト軍と戦った事があるって言っていたから・・・そんな危険な旅に連れて行く訳にはいかないよ・・・』
アランは彼女も度に同行する事を反対したが、アリアは彼と同様に首を横に振ってきた。
『ううん・・・絶対に迷惑をかけないから、私も連れて行って・・・』
アリアは旅に同行する事を懇願してきた。
『アリアちゃん・・・』
同行を求めて来る彼女を見て、アランは落ち着いた口調で言ってきた。
『・・・僕の事が心配なのは分かるよ・・・でも、この旅だけは君まで巻き込んでしまいたくはないからね・・・』
『分かっているよ・・・!それでも、アラン君の事が心配で・・・!』
アリアは涙目になったが、アランは宥めるように言ってきた。
『だから、ここは僕に任せてアリアちゃんは世界中の人達に歌を聞かせてあげて・・・』
『・・・だったら、約束して・・・その旅が終わったら、私の歌を聴いてくれたらいいな・・・』
そう言われたアランはアリアの目から涙が零れている事に気付いた。
『分かったよ・・・ちゃんと、君の歌を聴いてあげるから・・・だから、僕の事を信じて待ってくれるだけでも嬉しいよ・・・』
アリアは彼の言葉を聞いて、穂を赤らめていた。
『うん・・・約束だよ・・・?』
アリアは旅が終わったら、アランに自分の歌を聴かせる事を約束した。
「昨日の夜遅くに、そんな約束をしていたんだな・・・」
「うん・・・アリアちゃんは初めから分かっていたから・・・これから先、デスドゥンケルハイト軍と戦う事になりそうだけど・・・僕の魔法で皆を助けてみせるよ。」
アランは既にデスドゥンケルハイト軍と戦う覚悟を決めていた。
「・・・一応言っておくが、死んじまっても責任は取らねぇぞ・・・?」
「大丈夫だよ。ちゃんと、戦うようにするから心配はないよ。」
「・・・そうか。くれぐれもアリアの約束を守ってくれよな?」
こうして、アランが仲間に加わる事となった。
「それで、ガイアの言っていた遺跡と言うのは星竜族の遺跡なのでしょうか?」
ステラが期待をしながら目を輝かせたが、アランは「違うよ。」と言ってから答えてきた。
「ううん・・・多分、星竜族の造った遺跡じゃないかな?」
そう言うと、期待していたのか星竜族の遺跡ではないと知ってステラは肩を落とした。
「そうですか・・・ガイアが言うので、星竜族の遺跡だと思っていました・・・」
「そこは、前に行っただろ?そんなに多くは造られていねぇよ・・・」
ギルバートがそうステラに言うと、目の前にモンスターが現れた。
「モンスターが現れたぞ。」
目の前に現れたモンスターは昆虫のモンスターと鳥のモンスターだった。
「それに、もう片方は鳥のモンスターでこれぐらいなら簡単に倒せそうだな。」
ギルバートがそう言うと、ティア達はアランが固まっている事に気が付いた。
「アラン?どうかしましたか?」
ステラが声をかけると、アランは恐る恐る口を開いた。
「・・・むっ・・・虫・・・!」
そう言うと、アランの顔が青ざめていくと体を震わせ始めた。
「虫?それが、どうかしたの?」
「僕・・・虫だけはどうしても苦手で・・・!」
その時、虫のモンスターがアランに攻撃を仕掛けてきた。
「うわっ!」
アランは驚いて尻餅をついてしまったが、虫のモンスターの攻撃を回避する事ができた。
「虫のモンスターを見るだけで、怯えてしまうなんて・・・」
「・・・やっぱり、アイツの虫嫌いは変わっていなかったようだな・・・」
ギルバートがそう呟くと、ティアはそれについて聞いてきた。
「アランは昔から、虫が苦手だと言う事なの?」
「そうだよ・・・アランは、昔から虫が嫌いであんな風に怖がっちまうんだ。」
アランは極度の昆虫恐怖症で、僅かでも虫を見てしまえば怯えてしまう程だった。
「しかも、作り物や絵の虫でもああなっちまうぐらいだ・・・地下室でアイツが倒れていたのを覚えていないか?」
「気絶?もしかして、あの時アランが倒れていたのは・・・」
以前、地下室でアランが倒れていた時の事を理解した。
「あぁ・・・多分、虫を見て気絶でもしていたんだろうな・・・」
ギルバートが倒れていた原因は虫を見たからだと確信しながらも虫のモンスターを攻撃するとそのまま逃走した。
「もう大丈夫だ・・・虫のモンスターは逃げていったぜ。」
「良かった・・・これで、戦えるよ・・・」
アランは安心して魔導書を開くと、鳥のモンスターに向けて魔法を唱えた。
『フリニヴェ!』
氷の魔法が命中した事で鳥のモンスターを倒した。
「これで、先に進めるね・・・」
アランは先程まで怯えていたはずなのに、何事もなかったかのように落ち着いた様子になった。
「アランは、さっきのようになるくらい虫が苦手なのですか?」
ステラが、聞いてくるとアランは「うん・・・」と恥ずかしそうに答えてきた。
「全く・・・虫嫌いなのも、度が過ぎるだろ・・・」
ギルバートが、呆れながら言うとアランはギルバートをジト目で見つめていた。
35章 光翼の涙が隠された遺跡
「ようやく着いたね・・・ここに、光翼の涙が隠されているんだね・・・」
しばらく歩いて行くと、ティア達は目的地である遺跡へと辿り着いていた。
「・・・星竜族の遺跡と違って、人間の手で造られた遺跡みたいですね・・・」
ステラは遺跡を見て、思っていた遺跡ではないと残念そうにしていた。
「残念だったな・・・大好きな星竜族の遺跡じゃなくて・・・」
ギルバートがステラに言うと、ティアが叱るように言ってきた。
「ギル・・・遺跡の中に入ってみましょう。」
「なんだよ・・・冗談なのに、本気にするなよな・・・」
二つ目の光翼の涙を手に入れるべく、ティア達は遺跡の中へと入って行った。
「・・・いたって、普通の遺跡のようだね。」
遺跡の中に入ったティア達は、大昔の遺跡にしか見えなかった
「本当に二つ目の光翼の涙があるのかな・・・?」
「デスドゥンケルハイト軍の事だから、危険そうな場所に隠しているはずよ・・・ガイアの言っていた事は本当だと思うわ・・・」
「はい。星竜族は人間を陥れる事はしませんので、本当の事を言っていたのだと思います。」
二人はガイアの言っていた事を信じていた。
「・・・それよりも、あっちを見てみろよ・・・」
ギルバートが指を指した方を見ると、鉄のモンスターがいるのを確認された。
「・・・あそこにいるのは、モンスターなのでしょうか?」
目の前にいるモンスターは機械や魔道具のような見た目をしていた。
「あぁ・・・遠くから見れば、それに見えるが物質のモンスターらしいぜ・・・」
「言われて見れば・・・機械や魔道具の見た目をしているけど、魔力を感じてみればモンスターだと言う事が見分けられるよ・・・」
モンスターは機械や魔道具に使われている部品にも見えた。
「とにかく、戦ってみないか?そうすれば、ここがなんの遺跡か分かるはずだ。」
そう言いながら、ギルバートは双剣を抜きモンスターに攻撃を仕掛けた。
「くっ・・・やっぱり、固いな・・・!」
ギルバートは双剣を振るって攻撃を当てて見たが、物質のモンスターは鉄の体をしていたので、金属音が鳴り響いただけだった。
「それもそうだよ・・・なにせ、鉄でできているから・・・」
ギルバートが、攻撃したのは可愛らしい見た目をした小さな鉄のモンスターでもう一匹の方は機械の体をしたハムネリアだった。
「今、俺が攻撃したのがリトメタルでもう一匹はメカハムネリアだ。」
すると、リトメタルとメカハムネリアが同時に攻撃を仕掛けようとしてきた。
『イグフレミア!』
魔導書を手にしたアランが魔法を唱えて炎を放ちリトメタルに命中させた。
「リトメタルは鉄でできていて炎に弱いから簡単に倒せるよ。」
そう言うと、リトメタルは溶けていったが、メカハムネリアは避けていた為に炎の玉には当たってはいなかった。
「メカハムネリアは素早いから当たらなかったか・・・それじゃあ、この魔法で・・・?」
アランは別の魔法を唱えて、メカハムネリアに向けて放った。
『アクレヴォーア!』
水の魔法が命中すると、メカハムネリアから煙が出るとそのまま倒れた。
「メカハムネリアは機械と同じだから、水には弱かったのね・・・溶けてしまったリトメタルはどうしたの?」
ティアがリトメタルの方を見てみると、溶けた体を引きずりながらメカハムネリアを運び出すとその場から逃げていた。
「リトメタルは溶けてしまっても、また別の新しい見た目になって復活するし、メカハムネリアは修理をすれば復活をするから心配はいらないよ。」
「・・・それなら、心配ないわね。」
ティア達は先へと進んで行くと、ティア達は遺跡の正体について理解した。
「やっぱり、思っていた通り・・・どう見ても、ただの遺跡じゃないみたいだね・・・」
アランの言う通り、今いる遺跡には鉄のモンスターが多く生息していた。
「・・・今、こっちの部屋からなにか聞こえないか?」
すると、ギルバートが耳を澄ましてみると、近くの部屋からなにかの物音が聞こえてきた。
「もしかして、また機械のモンスターが・・・でも、なにかを漁っているような音に聞こえてくるわ・・・」
ステラがティアに抱きつきながらも、部屋に入ると壊れた機械や部品の山があり部品もそこら中に転がっていた。
「これだけ、散らかっているとなると・・・どう考えても、あのモンスターならやりそうだね・・・」
すると、その山の中から何匹ものミスチーフデーモンが出てきた。
「ここにも、ミスチーフデーモンが生息していたのね。」
「あぁ・・・この部屋はコイツ等にとっては、遊び場になっていたって事かよ・・・」
この部屋はミスチーフデーモンの遊び場となっていたようだった。
「図鑑で書いてあったけれど・・・ミスチーフデーモンは悪戯が好きだけど、モンスターで火を吐く事もできるって・・・」
「それで、お菓子も好きだから前にもそれを使ったよな・・・誰か、お菓子を持っていないか?」
ギルバートはお菓子を与えてから逃げようとしたが誰も持ってはいなかった。
「・・・無いのかよ・・・コイツ等は数が多くて戦いにくい場所だから、ここは部屋を出てから戦うしかなさそうだな・・・」
その時、ミスチーフデーモン達が笑い出すと一斉におそいかかってきた。
「来た・・・急いで・・・!」
「ちくしょう・・・やっぱり、こうなるのか・・・!」
ティア達は部屋を出てから、武器を手にして戦い始めてみたが、ミスチーフデーモン達の足が速すぎて翻弄されてしまっていた。
「くそっ・・・!小さいし、素早しっこすぎて攻撃が当らねぇぞ・・・!」
「・・・まるで、昔のギルみたいだね・・・!」
アランがそう言っていると、ミスチーフデーモンが一斉に襲いかかってきた。
「駄目です・・・数があまりにも多すぎます・・・!ここは、逃げた方がいいと思います・・・!」
「そうね・・・皆、ここは逃げましょう・・・!」
ティアは戦いを避けようと、ミスチーフデーモン達から逃走した。
「・・・ここまで来れば、もう追っては来ないわね・・・」
ティア達はなんとか、ミスチーフデーモン達から逃げ切れる事ができた。
「この遺跡にいる生息しているのは、鉄のモンスターばかりではなかったのね。」
「・・・さっきのミスチーフデーモンを考えてみれば、殆どが鉄のモンスターで、他の種族のモンスターも生息していたみたいだね・・・」
ミスチーフデーモンから、逃走している最中にアランは遺跡に生息するモンスターを見かけていた。
「とにかく、ここは鉄のモンスターばかりじゃないと言う事だな・・・ここには、モンスターがいなさそうだからここで休憩でもしようぜ・・・」
モンスターがいない場所だと確認してから、ティア達はその場で休憩を取り始めた。
「アラン、どうして壁に耳を当てているのですか?」
休憩を取っている最中にアランが壁に耳を当てているのが気になってステラは聞いてきた。
「いや・・・モンスター達を見て気付いたけど・・・この遺跡がなにを使って造られていたのかと思って・・・耳を当ててみれば、正解だったよ。君たちも耳を済ませてみてよ
・・・色んなパーツが動いている音を・・・」
アランがそう言いながら壁に耳を当ててみると機械と魔道具のパーツが動いている
音が微かに聞こえてきた。
「確かに・・・なにか、機械の音が聞こえるな・・・」
ティア達も耳を済ませてみると、パーツの動く音が耳に入ってきた。
「でしょ?ここの遺跡は、機械や魔道具の部品で造られているらしくて、大昔の時代にも存在していた事になったと考えられるな・・・」
遺跡の中には、機械と魔道具に使われるパーツの動く音が聞こえていた。
「それに、この遺跡は大昔に造られているのにも関わらずに、今でも動いているなんて・・・やっぱり、特別なパーツを使われていると思えて来るよ・・・」
アランがそのように造られた遺跡なのだと考えられた。
「そうだったの・・・どうりで、錆びている音や軋んでいる音が聞こえなかったのはどうしてかしら?」
「分からないけど、きっとこの遺跡に秘密が隠されているのは確かだよ。」
アランがなにかが隠されていると考えると、ギルバートが興味無さそうにして言ってきた。
「・・・そんな事は、どうでもいいから光翼の涙を見つけようぜ。」
それから、休憩を終えたティア達は光翼の涙を見つけ出すために奥へと進んで行った。
36章 遺跡を進め
モンスターを倒しながら進んで行くと、ティア達はなにもない広い部屋へと着いていた。
「なんだか、大きな部屋に辿り着きました。」
部屋にはなにも無く、ただ広い部屋があるだけだった。
「これだけ広いとなると・・・なにかがあるのは間違いなさそうだ・・・」
すると、アランは部屋を見つめながら言ってきた。
「・・・これは、罠が仕掛けられていそうだね・・・」
広い部屋にも関わらず、なにも無いとは限らないとアランはそう確信した。
「見りゃあ分かるよ・・・何処かに仕掛けがあって、罠が作動するようになっているんだろ・・・?」
「慎重に進んでみた方がいいね・・・誰が先頭を歩いた方がいい?」
アランは誰が先頭を歩くのか聞いてみたが、女性であるティアとステラは行かせない方がいいと悟った。
「俺が先頭を歩いていりゃあ大丈夫か?」
「ううん・・・ギルは罠が作動しても大丈夫だと思うけど・・・やっぱり、ここは僕が先頭を歩いた方がいいと思うよ・・・」
アランは先頭を歩き出して、安全を調べながら進もうと考えていた。
「そうだな・・・お前は洞察力があるから先頭を歩いた方が良さそうだな・・・」
「・・・でも、貴方が先頭に立つのは心配ね・・・そんな事をしても、貴方が罠にかかってしまうのかも知れないわ・・・」
ティアはアランが罠にかかって死んで欲しくはないと思っていた。
「・・・気持ちは分かるけど、女性である君よりも僕が先頭を歩いた方がいいから大丈夫だよ。」
アランを先頭にして、ティア達は部屋の中を慎重に進み始めた。
「この部屋には、どんな罠があるか分からないから気を付けて・・・」
警戒をしながら慎重に進んでいると、ティア達の足元から音が聞こえてきた。
「今の音・・・なんだか、足元から聞こえてきたけど・・・?」
ティア達は足元を恐る恐る見てみると、ギルバートが罠を作動させていたのが確信された。
「ギル・・・言ったそばから踏んでしまっています・・・」
その直後、この部屋の入り口が閉まってしまった。
「入り口が閉まった・・・この状況はもしかしたら・・・」
天井から音が聞こえてくると、無数の棘が飛び出していてゆっくりと降りてきていた。
「やっぱり、天井が迫ってきている・・・潰されるぞ・・・!」
「出口は閉まっていない・・・急いで、ここから出れば助かるわ!」
ティア達は急いで駆け出して、部屋から抜け出して潰されずに抜け出す事に成功した。
「助かった・・・全く、もう少しで潰されるところだったよ・・・」
アランがジト目で見つめてくると、ギルバートは言い難しそうに言ってきた。
「しょうがねぇよ・・・まさか、罠のスイッチが足元にあったなんて思わなかったから仕方ねぇだろ・・・?」
「今度は、気を付けてくださいね?」
部屋の抜けてからも先に進んで行くと、明らかに罠がありそうな通路の前に辿り着いた。
「どう考えても、なにか罠がありそうな通路だね・・・ギル、また罠を作動させるような事だけはしないでよ・・・?」
「あぁ・・・それで、またお前が先に行くつもりかよ?」
「もちろん。僕が進んでみるよ・・・君達はそこで待っていて・・・」
そう言って、アランは最初に通路を渡り始めた。
「行ってしまいました・・・アランは大丈夫なのでしょうか?」
「・・・信じましょう。アランが無事に渡れるように見守っておきましょう・・・」
ティアがそうステラに言うと、ギルバートは腕を組みながら壁に寄りかかった。
「そうだな・・・アイツが渡りきるまで待っていようぜ・・・」
ギルバートがそう言うと、ステラがある事を聞いてきた。
「・・・ギル、またなにか押しました・・・?」
「あっ・・・?壁にもたれただけだぞ?」
「そう言えば・・・微かだけど、押したような音が聞こえてきたわ・・・」
その時、通路から無数の巨大な斧の振り子が通路を左右に振ってきた。
「・・・ギル。ちょっと壁から離れてくれてもいいかしら・・・?」
ギルバートはティアに言われた通りに、壁から離れてみるとスイッチが埋め込まれていた。
「・・・なんで、こんな所にスイッチなんてあるんだよ・・・?」
スイッチはもう押されており、罠もとっくに作動してしまっていた。
「アランは大丈夫なのでしょうか・・・?」
ステラは心配になって、アランの方を見てみると、とっくに向こうまで渡り切っていた。
「・・・ちゃんと、渡りきれたよ・・・でも、危なくなっているから気を付けて・・・」
アランは突如、出て来た罠をなんとか掻い潜ったのか息を切らしていた。
「ステラ・・・私の手を握っていて・・・」
「はい・・・しっかり握っていてください・・・」
ティアはステラの手を引っ張り、ギルバートと一緒に罠を掻い潜りながらも通路を渡り始めた。
「・・・なんとかして、渡る事ができたな・・・なんで、壁にスイッチなんかあるんだよ・・・?」
ティア達は命からがら、通路を渡り切って息を切らしていた。
「・・・ギル、お願いだから罠がありそうな場所ではなにもしないで・・・」
「分かったよ・・・二度とこんな目に合うのは御免だからな・・・」
無事に渡り切ったティア達は息を整えてから進む事にした。
「それじゃあ・・・気を取り直して先に行ってみようか・・・」
通路を渡りきった後でも先へと進んで行くと、幾つもの歯車が回っている部屋に着いた。
「・・・今度は歯車だらけの部屋に着いたな。」
ギルバートは回転している数多くの歯車を見ていると、ステラが彼にこう言ってきた。
「ギル・・・絶対になにもしないでくださいね・・・?」
「なにもするなって・・・こんな所に罠があると思っているのかよ?」
部屋中にある歯車が回っているだけで、なにか罠を作動させてしまう物は無かった。
「ここは、普通に出ればいいだけだから安心していいよ。」
アランが安全を確認して言うと、ティア達は警戒を怠らずに進もうとした時だった。
「うわっ!」
突如として、一部の歯車が外れるとティア達の前に転がってきた。
「これは、歯車じゃない・・・人面歯車だ!」
すると、その歯車が浮かび上がると顔が付いていた。
「どうやら、この部屋には人面歯車しかいないみたいだね・・・」
人面歯車は歯車に顔が付いているモンスターだった。
「ここは、人面歯車の住処で歯車に擬態していたのか・・・!」
人面歯車が回転し出すと、ティア達に向かって襲いかかってきた。
「逃げるぞ!ここで戦ったら大変な事になるからな・・・!」
ティア達は人面歯車から逃走し、なんとか歯車のある部屋を脱出する事ができた。
「逃げている内に、部屋から出る事ができたようだね・・・」
すると、ティアは近くに落ちていた部品を拾って見せた。
「これって、機械や魔道具の部品じゃないのかしら?」
ティアは拾ったパーツをアランに渡してみた。
「確かに・・・どう見ても、それらに使うパーツのようだね・・・やっぱり、この遺跡は
機械や魔道具のパーツで造られていた事は間違いないみたいだよ・・・」
「これまでの罠も機械や魔道具のパーツとか使っていたのか?」
「多分そうだと思うけど・・・二回も罠を起動させた君が言っても説得力は無いと思うよ・・・」
アランが呆れた表情で言うと、ギルバートは「悪ぃな・・・」と言い辛そうに謝ってきた。
「待って・・・この感じは向こうに行けば、光翼の涙が隠されているわ・・・」
すると、ティアに光翼の涙の魔力が感じられてきた。
「連いてきて・・・奥に光翼の涙があるわ・・・」
ティアにそう言われて先へと進んで行くと、奥にある部屋に二つ目の光翼の涙があった。
「あそこにあるのが、光翼の涙だね・・・ティア、君は一体何者・・・?」
「そう言えば、その事について話していませんでしたね・・・」
まだティアの事について、話していない事に気付くとティアはアランに話す事を決めた。
「アランには、まだ話していなかったけれど・・・私は・・・」
ティアがエレノアの血を引いた末裔だと話そうとした時だった。
「おい・・・なんか、音が聞こえてこないか?」
ギルバートに言われたティア達は耳を澄まして見た。
「なんだか、機械や魔道具の動く音みたいだけど・・・」
その音はなにかが起動しようとしているように聞こえてきていた。
「はい・・・ギルがまた罠を作動させてしまったのかと思いました・・・」
「おいおい・・・俺はなにもやっていないぞ・・・?」
すると、部屋の中心が開くと中からなにかが姿を現した。
「これは・・・まさか、こんな物まで隠されていたなんて・・・!」
目の前に現れたのは、鉄の体を持った巨大な人形だった。
37章 遺跡を守りし鉄の人形
「まさか、このような物があったなんて・・・」
巨大な人形は人型での鉄の体をした姿をしていた。
「これって、魔力で動く人形か・・・知っているのと、見た目が違うように見えるぞ・・・?」
「確かに・・・見た目の感じからしては人形のようだけど・・・モンスターの図鑑にも載ってはいなかったよ・・・」
目の前にいる鉄の人形はモンスターの図鑑に記載されてはいないようだった。
「・・・コイツが現れたって事はどう考えても戦いになりそうだな・・・」
ギルバートがそう言った直後、鉄の人形が拳を振り上げて襲いかかってきた。
「この力は巨大なモンスターみたいにパワーが高いみたいだね・・・」
「あぁ・・・コイツは大昔に造られていそうでパワーも桁違いだしな・・・」
鉄の人形が攻撃をした跡を見てみると床に穴が開いていた。
「・・・誰か分からないが、ヤバいのを造りやがって・・・」
ギルバートがそう呟いてから、巨大な鉄の人形に攻撃を仕掛けてきた。
「喰らえっ!」
ギルバートは攻撃をしたが効いてはいないように感じた。
「コイツ・・・硬過ぎだろ・・・!」
「ここは、僕に任せて・・・!」
魔導書を開いてからアランは鉄の人形に向けて魔法を唱えた。
『エウィナリーネ!』
アランは風の魔法を唱えても、鉄の人形はビクともしていなかった。
「・・・やっぱり、風属性の魔法は効いていないみたいだよ・・・!」
「あぁ・・・コイツはヤバいって事が伝わってくるぜ・・・ステラ、お前は支援魔法を使えたよな?それを俺達にかけてくれないか・・・」
「分かりました・・・ですが、私が魔法をかけても・・・?」
「さぁな・・・とにかく、能力を上げながら戦ってみなきゃ分からねぇだろ・・・」
ギルバートにそう言われたステラは心配に思いながらも支援魔法の詠唱を始めた。
「ステラ、僕達でなんとかするから詠唱が終わったら魔法を僕達にかけて・・・」
アランはそう言いながらも鉄の人形に向けて魔法を唱え始めた。
「・・・どんなに攻撃しても、傷一つが付かないなんて・・・なんて、防御力の高い体をしているのかしら・・・」
それからもティア達はどんな攻撃や魔法を当てても鉄の人形には傷一つ付ける事ができずにいた。
「そろそろ、支援魔法の詠唱が終わっている頃だ・・・」
ギルバートはステラの方を見てみると、既に詠唱を終えていて支援魔法を唱えようとしていた。
「お待たせしました・・・支援魔法をかけます・・・!」
そう言って、ステラは支援魔法を唱えてティア達にかけた。
「頑張ってください・・・!」
ステラは同時に二つの支援魔法を唱えると、ティアとギルバートのパワーを上昇し、アランの魔力も上昇させる事ができた。
「これなら、なんとかいけるかな・・・?」
「相手は高性能なタイプの鉄の人形だ・・・能力を上げた状態ならやれるかも知れないぞ・・・」
ティアとギルバートは上昇したパワーで攻撃をすると、アランは上昇した魔力で魔法を唱え始めた。
「私も・・・魔法で皆を援護しないくちゃ・・・」
ステラも魔法で援護しようとすると、鉄の人形がゆっくりと彼女へと迫ってきた。
「アイツ、ステラに攻撃する気だぞ!」
ギルバートは、とっさに攻撃を仕掛けようとしたが鉄の人形の拳で飛ばされて壁に激突して気を失ってしまった。
「ギル!」
ステラはこちらに近付いてくる鉄の人形を見て怯えだした。
「・・・そうはさせないよ。」
ステラを助けるべく、アランは自身の魔力を込めた魔力の玉を放って攻撃をした。
「駄目だ・・・能力が上がっても効いていないよ・・・一体、どうすれば・・・ティア・・・?」
どうすればいいのか考えていると、ティアがゆっくりと鉄の人形に歩み寄った。
「ティ・・・ティア・・・一体なにを・・・?」
アランがなにをする気か見ていると、吹き飛ばされて壁に激突したギルバートが意識を取り戻した。
「やっ・・・止めろ・・・お前までやられちまうぞ・・・!」
しかし、ティアは止まろうとせずにステラと鉄の人形の間に入った。
「ティア・・・どうして攻撃しようとしないのですか・・・?」
ティアはなにもしようとせずにそのまま立っているだけだった。
「・・・私達は遺跡を荒らしに来た訳ではないわ・・・私達はここにある光翼の涙を取り戻そうと来た・・・ただ、それだけなの・・・」
ティアがそのように言うと、鉄の人形は光翼の涙を見た。
「貴方はただこの遺跡を守りたかった・・・、貴方を造り出してくれたその人が遺した場所でずっと、遺跡を争うとする人達から守ろうとしていたのね・・・」
「ティア・・・どうして、そんな事が分かるの・・・?」
アランがなぜ、そう言う事が分かるのか聞くと、ティアは鉄の人形を見つめながら答えてきた。
「分からないわ・・・けれど、この鉄の人形には、そのような過去があったみたいで私にはそう伝わってくるの・・・」
理由は不明だが、ティアには鉄の人形が襲った理由や目的があると感じていた。
「・・・このまま戦い続けてしまえば貴方は壊れてしまうのかも知れない・・・大事な物を守りたいのは分かるわ・・・でも、無理に戦ってしまえば造ってくれた人が悲しんでしまうわ・・・」
長い年月をかけて遺跡を守り続けて来た存在にティアは壊れてしまっては意味が無い事を伝えようとしていた。
「見て・・・鉄の人形が動かなくなったよ・・・」
鉄の人形から音が聞こえてくると、そのまま動かなくなった。
「・・・どうやら、機能停止したみたいね・・・」
ティアは鉄の人形に手を触れて、もう機能が止まっている事を確認した。
「良かったな・・・ステラが助かって、光翼の涙が手に入れられるな・・・」
「えぇ・・・この鉄の人形も安心して、静かに眠りにつく事ができたようね・・・」
ティアは鉄の人形を見上げながらそのように言ってきた。
「きっと、大事な人が造り出した遺跡を守りたかったのだと思うわ・・・」
「もしかしたら、そうだったのかも知れないね・・・ずっと、停止しないで動いていたなんて誰も思ってはいないと思うよ・・・」
「・・・そんな事よりも光翼の涙を手に入れようぜ。」
祭壇にあがってみると、二つ目の光翼の涙がティアに吸収されていった。
「これで、二つ目ですね。」
「えぇ・・・今回も私の中に吸収されていったわ。」
すると、その光景を見ていたアランは不思議に思いながらもティアに聞いた。
「ティア・・・光翼の涙が君の中に吸収されたけど一体・・・?」
アランに聞かれて、ティアは自分がエレノアの血を引いた末裔だと話した。
「なるほど・・・君はエレノアの一族だったなんて思わなかったよ・・・」
「えぇ・・・お父さんから聞かされたばかりだけど・・・さっき、光翼の涙が吸収されたから間違いはないわ・・・」
「よく分かったよ。これで、残りは6つと言う事だね。」
「えぇ・・・そろそろ、ここを出ましょう・・・」
こうして、無事に二つ目の光翼の涙を手に入れたティア達は遺跡を出る事にした。
(・・・私の中に光翼の涙があるなんて・・・まるで、私の中で一体化をしているみたいに感じられてくるわ・・・)
ティア達はワープベルを使って遺跡を脱出した。
38章 アランの担任教師
「店で買っていた御蔭で、すぐに出られたな。」
ティア達はワープベルを使った事で遺跡の入り口まで転移していた。
「・・・おやおや、そこにいるのはアラン君ではありませんか?」
遺跡を出た直後、ティア達に声を掛けてきた人物がいた。
「貴方は・・・」
近づいてきた人物は、眼鏡をかけた知性的な感じのする男性だった。
「久しぶりですね・・・アラン君。」
「はい・・・先生。」
アランが先生と呼んだ人物に挨拶をした。
「アラン、この人とは知合いですか?」
ステラが訊ねてきて、アランはダチュリエル目の前の人物について紹介をした。
「紹介するよ。この人は学院時代の担任だったダチュリエル先生だよ。」
アランが紹介すると、ダチュリエルと呼ばれた教師はティア達に挨拶をしてきた。
「初めまして・・・私の名はダチュリエル、ノヴェフロル学院で務めております・・以後、お見知りおきを・・・」
ダチュリエルが礼儀正しく自己紹介をするとティアの前に手を差し出してきた。
「私はティアと言います。」
「ステラです。」
ティアとステラは握手をしながら自己紹介をした。
「・・・ギルバート。」
最後にギルバートも自己紹介をしたが、ダチュリエルと握手をしようとはしなかった。
「ギル、どうして握手をしなかったのですか?」
「別にいいだろ・・・それよりも、アンタは態々生徒に会おうとして来たのかよ?」
ギルバートがそう言うと、アランはダチュリエルの目的について聞いた。
「まぁ・・・少々、この遺跡に訪れましてね・・・そこへ、君達が遺跡の中から出て来たと言う事でして・・・」
ダチュリエルは遺跡に訪れていた最中に、ティア達が遺跡の中から出て来たところへ声をかけたのだった。
「まさか、偶然君と出会うなど思いもしませんでしたよ。」
「そうでしたか・・・ダチュリエル先生は遺跡を調べに来たのですか?」
「はい。せっかくですので、この遺跡を調べてみようと思いましたので・・・」
すると、ダチュリエルはティア達を見て関心をした。
「・・・ところで、アラン君と一緒にいる方々は仲間のようですが・・・なにか、目的があるように見えると考えられますね・・・」
ダチュリエルはそう言いながらも、ギルバートを見つめた。
「・・・なんだよ?俺の顔になにか付いているのか?」
「いえ・・・アラン君から聞いていた通り、とても良い友人を作っていたのだと思いましてね・・・」
「・・・悪いかよ?」
ギルバートが、ダチュリエルの発言に眉をひそめた。
「もし良ければですが・・・なにを目的として旅をしているのか、私にもその理由を聞かせてもらえないでしょうか?」
ダチュリエルが旅の理由を聞こうとすると、ギルバートがティアに耳打ちをしてきた。
(なぁ・・・アランの担任だった奴にも光翼の涙を集めてデスドゥンケルハイト軍を倒す旅に出ているって言う気か・・・?)
(えぇ・・・そうだけれど、この人は悪い人じゃないから話しても問題はないと思うわ・・・)
ティアはそう言ったが、ギルバートは用心するように言ってきた。
(あのなぁ・・・コイツに正直に話してみろ・・・もしも、デスドゥンケルハイト軍に俺達の事を言われたら、追っ手や刺客が送り込まれる事になったら、光翼の涙を手に入れるのが難しくなるのかも知れないんだぞ・・・?)
ギルバートは、無関係の人間に本当の事を無暗に話す事は止めた方がいいと思っていた。
(待って・・・この人はどう見ても、そんな事をするような人には見えないわ・・・?)
どう見ても、ダチュリエルが自分達を内通するような人間には見えなかった。
(それに、教師をしているのであれば、生徒達に希望を与えてくれと思うわ・・・)
ティアがそう言うと、ギルバートはため息をついてきた。
(・・・勝手にしろ・・・どうなっても、知らないからな・・・)
ギルバートが説得を諦めると、ティアは旅に出ている理由と自分の事について全て話した。
「そうでしたか・・・デスドゥンケルハイト軍を倒すために光翼の涙を集めていると・・・どうりで、君の髪や瞳の色がエレノアと同じだと感じていましたよ・・・」
ダチュリエルはティア達が旅に出ている理由と彼女がエレノアと似ている事に納得をした。
「はい・・・私もお父さんから聞かされた時は驚きました。」
「君のご先祖様がエレノアの末裔だったとは・・・それで、光翼の涙は本当に君が持っていると言うのですか?」
ダチュリエルが光翼の涙について聞くと、ティアは先程二つ目の光翼の涙を手に入れていた事を話した。
「なるほど・・・先程、この遺跡から手に入れたばかりと・・・本当にエレノアの一族である事は間違いではないみたいですね・・・」
本当に末裔であると知ったダチュリエルが、ティアに興味を示すかのようにそう呟いた。
「・・・それでは、残りの光翼の涙を手に入れるつもりですか?」
ダチュリエルの問いにティアは「はい。」と答えた。
「・・・そろそろ、お話はこれぐらいにしましょうか。」
ティア達は話を終えて、遺跡を後にする事にした。
「それでは、僕達はこれで・・・遺跡の調査をする際には、モンスターがいて罠もありましたので気を付けてくださいね?」
「分かりました・・・気を付けますので、なにも心配はいりませんよ・・・」
そう言うと、ダチュリエルは最後の質問としてティアに訊ねてきた。
「さて・・・一つ聞いてもよろしいですか?仮に君の友人・・・もしくは、家族がデスドゥンケルハイト軍に囚われてしまったら・・・君なら、どうしますか?」
ダチュリエルにそう聞かれたティアは俯いたままなにも答えなかった。
「・・・アンタ、家族についてあまり言わない方が良いぜ・・・コイツは両親を殺されていて、その時の事を思い出しちまうからな・・・」
すると、ティアが顔を上げてギルバートに言ってきた。
「気にしないで・・・もしも、家族や友人が捕まってしまったのであれば、私は必ず助けに行きます・・・そうしなければ、命を救う事ができません・・・」
ティアが先程の問いに答えると、ダチュリエルが興味深そうに頷いた。
「それが、君の答えですか・・・そう言えば、とある場所にデスドゥンケルハイト軍が支配している町がありましてね・・・そこには、監獄が設立されていて逆らった人間達を捕らえているらしいのですが・・・その町に行くのであれば気を付けてくださいね・・・?」
ダチュリエル曰く、その町にはデスドゥンケルハイト軍が設立した監獄があるのだった。
「・・・僕も一人で旅をしている時に訪れましたが・・・捕まっている人達が監獄の中に入れられて行くのを見た事があります。」
「そうですか・・・少しだけですが、時間を取らせてしまいましたね・・・」
そう言ってから、ティア達はダチュリエルと別れて遺跡を後にした。
(・・・エレノアの一族・・・あの少女に感じられた魔力は・・・ただの光の魔力ではありませんでしたね・・・これは、興味深い発見をしました・・・)
それと同時にダチュリエルはティアの背後を見て笑みを浮かべていた。
39章 デスドゥンケルハイト軍の監獄がある町
「見えてきた・・・あそこにあるのが、ダチュリエル先生が言っていた監獄のある町だよ。」
ティア達が歩いていると、監獄のある町が見えてきた。
「真ん中にある建物がデスドゥンケルハイト軍が拠点としている監獄だ。」
ここからだと、無数の建物の真ん中に大きな建物が見えていた。
「あのう・・・私達はあの町に向かおうとしているのでしょうか・・・?」
「そうだろうな・・・どう見ても、ここを通らなくちゃ行けなさそうだからな・・・」
ギルバートが地図を見せてくると、向こうに渡る橋が町の中にあった。
「確かに・・・その川は底が深くて、水中に生息するモンスターも多いから橋を渡らなくちゃいけないね・・・」
「当然だろ?ティアだって、そう思うよな?」
ギルバートがそう言ってきたが、ティアはなにも言わずに立っていた。
「おい・・・どうしたんだよ?」
再度、声をかけてみるとティアは我に返った。
「ごめんなさい・・・少し、考え事をしていたわ・・・」
「全く、しっかりしてくれよな・・・」
ティア達は監獄のある町の中へと入って行った。
「・・・とても、嫌な空気が漂ってくるのが感じられてくるわ・・・」
町の中に入った直後、ティア達はとてつもなく不穏な感じが伝わってきていた。
「そりゃあ、監獄があるからに決まっているだろ?誰だって、あんなのが建っていたら怖くて眠れないのも当然だ。」
ギルバートが平然とした様子で言ってくると、ステラが不安そうに辺りを見回しながら聞いてきた。
「・・・監獄があるだけじゃなく、兵士達も見回りをしているからだろ?」
ギルバートが目の前を指さしてみると、デスドゥンケルハイト軍の兵士が徘徊している事に気付いた。
「兵士がいます・・・それに、町の人達も怯えているように見えます・・・」
町の住人達は徘徊する兵士を見て怯えており、因縁を付けられないように避けようとしながら、兵士達と目を合わせないようにしている者達もいた。
「この町では、アイツ等に目の気に障るような事をすれば酷い目に合されるらしいぜ。」
「・・・とにかく、怪しまれないようにこの町を見て回りましょう・・・」
ティア達は兵士達となるべく、遭遇しないように町の中を周り始めた。
「・・・何処に行っても、怯えている人達しか見当たりませんでした・・・」
「うん・・・それどころか、ずっと警戒をしているようにも見えてくるよ・・・」
町の様子を見れば、重たい空気が周りから感じられてきていた。
「ここにいる奴等からすりゃあ、デスドゥンケルハイト軍を気に障るような事をしたくないからな・・・それほど、神経を尖らせているって事だよ・・・」
ギルバートが町の状況を見て言うと、奥の方で誰かが揉めている声が聞こえてきた。
「見ろ・・・町の人が兵士から難癖を付けられているみたいだぞ・・・」
奥の方を見てみると、男性が一人の兵士にから噛まれている様子が見えた。
「ティア?一体、どうしたのですか?」
ステラはティアが呆然としている事に気付いて声をかけた。
「・・・なんでもないわ。」
ティアがそう言ってから、急いでその場へと駆けつけた。
「待てよ・・・ステラが見たら不味そうだからコイツとここで待っていてくれ・・・」
ギルバートがそう言ってからティアを追い、ステラはアランと共に待機する事になった。
「・・・なぁ、止めたりでもしたら兵士達がやってきちまうぞ・・・?」
逆らってしまえば兵士が一斉にくると言ったが、ティアは剣を持っており止まろうとはしなかった。
「分かっているわ・・・それでも、見過ごせる訳にはいかないの・・・」
「そうは言うけどな・・・おい、暴力を振るい出したぞ・・・」
兵士が男性に暴行を加え始めた。
「待ってください・・・私が一体なにをしたというのですか・・・?」
「なにをだと?それは、反抗的な目をしたからに決まっているからだろ・・・?」
そう言いながら、兵士はうずくまっている男性に暴行を加え続けた。
「そんな・・・別にそのような事は・・・!」
男性は傷を負いながらも無実だと言おうとしたが、それでも兵士は誤解だと言う事を聞き入れようとはしなかった。
「いや・・・反抗をするような目をしていた・・・なぜなら、俺がそのように感じられたからだ・・・」
兵士が屁理屈を言い出すと、ティアとギルバートが駆けつけてきた。
「なんだ?もしや、お前も反抗するつもりか?」
息を切らしながら立っている二人を見て、兵士は暴行を止めて睨み付けた。
「・・・」
しかし、ティアは剣を持ったまま無言で見ているだけだった。
「たっ・・・助けて・・・!」
男性はボロボロになりながらもティアに助けを乞いできた。
「・・・まぁいい、今は機嫌が良いので見逃してやろう・・・二度とこのような事はするんじゃないぞ・・・」
そう言って、兵士は男性を蹴ってから去って行った。
「おい・・・アンタ、大丈夫か?」
ギルバートが声をかけてみたが、男性は痛みで気を失っていた。
「こりゃあ酷いな・・・お前、回復魔法が使えたよな・・・今すぐに治してくれ・・・」
今すぐに回復魔法をかけるように言ったが、ティアは剣を片手に立っているだけだった。
「・・・ティア!」
「ごめんなさい・・・少し、考え事をしていたわ・・・」
そう言って、ティアは魔法で男性を治療してから家に帰した。
「なぁ・・・もしかしてだが、あの事を考えていたのか?」
ギルバートがそう訊ねてみると、ティアは悲しそうな表情をしながら答えてきた。
「えぇ・・・傷付けられている人を見ていたら、私の村で会った時の出来事を思い出してしまったの・・・」
男性が兵士に傷つけられている様子を見たティアはかつて自分の住んでいた村と同じような光景を思い出していた。
「・・・確か、その時は処刑されそうになった家族を助けたって言っていたよな?」
「えぇ・・・私は居ても立ってもいられなくなって、兵士と戦ってその家族を助けたの・・・けれど、私のせいで村が襲撃されて関係の無い村の人達までも巻き込んでしまった事には変わりはないわ・・・」
ティアは自分のせいで、関係の無い村人達まで死に追いやってしまったと思っていた。
「・・・過ぎた事だし、そんなに深くは考えるなよな・・・?」
「そうね・・・私ったら、嫌な事を思い出してしまっていたみたいね・・・」
ティアとギルバートは気まずそうにしながら、ステラとアランの元に戻って行った。
「アイツ等、何処に行ったんだ?」
しかし、元の場所に戻っても二人は何処にもいなかった。
「ちょっといいか?」
背後から声が聞こえて振り向いてみると、見知らぬ人物が立っていた。
「アンタがティアとギルバートか?」
声をかけてきた人物はギルバートやアランと同い年の青年だった。
「そうだが・・・お前こそ誰だよ?」
「俺の名前はケリー、反乱軍に所属している隊長だ。」
青年がケリーで反乱軍の隊長だと言うと、ギルバートは思い出したかのように言ってきた。
「そういや・・・反乱軍はデスドゥンケルハイト軍を倒すために結成された組織だって聞いた事があったな・・・」
「反乱軍は色んな場所で活動しながら、デスドゥンケルハイト軍と戦っているからな。」
そう言うと、ケリーはティアとギルバートにこう言ってきた。」
「さてと・・・アランの言っていた二人と出会えた事だし・・・あの中で話の続きをしようか・・・」
ケリーの案内で連れて来られたのは一軒の酒場だった。
「酒場の店主は俺達の仲間だから安心してくれ・・・」
酒場に入ると反乱軍の一員である酒場の店主がケリー達を見て、棚を動かすと隠し部屋の入り口が出現した。
「ここなら、デスドゥンケルハイト軍が来てもバレないから安心してくれ・・・お前達は、酒場の
客のフリをして誤魔化していてくれ・・・」
ティアとギルバートは隠し部屋に入ると、反乱軍のメンバーだけでなくステラとアランもいた。
40章 反乱軍
「ケリー、二人を連れてくれたみたいだね。」
アランの接する様子を見て、ティアが気になって聞いてきた。
「アラン、この人とは知り合いだったのね?」
「そうだよ。ケリーはノヴェフロル学院にいた頃の同級生だったからね。」
どうやら、アランとケリーは学生時代の同級生のようだった。
「・・・そう言えば、アリアも同級生だって言っていたわね・・・」
ティアはアリアの事を思い出した。
「それよりも、なんでお前達がこんな所にいるんだ?」
「君達が離れた後で、ケリーと出会っていたからだよ。」
二人が離れて行った直後に、ケリーと出会い酒場へと連れられていたと言うのだった。
「それで、ここに連れて来られたと言う事か?」
「はい。最初は知らない人でしたが、アランの同級生だと知って一緒に連いて行きました。」
「まぁ・・・いきなり、知らない奴に声をかけてきたらそう思うよな・・・」
そう言いながらもケリーはティア達に話の続きをする事にした。
「それじゃあ、話を始めるから椅子に座ってくれ。」
ケリーにそう言われて、ここにいる全員が席に座って話を始めた。
「・・・これを見てくれ。」
部屋に入った直後にケリーは机に置かれていた数枚の紙を手渡してきた。
「なんでしょうか・・・なんだか、人の名前が書かれているみたいです・・・?」
紙に書かれていたのは、何人もの名前が書かれた資料だった。
「これは、監獄の中にいる捕まった囚人達の名前をチェックしているんだ。」
そこには、はこれまで監獄に収監された人間達のリストで数多くの名前が書かれていた。
「これだけの人が捕まっていると言う事だね・・・」
「だが、どうやってチェックしたんだ?まさか変装とでもして進入したとでも言いたいのか?」
ギルバートがそう訊ねてくると、ケリーは「そうだ。」と返答をした。
「いつでも侵入ができるように服を何着も調達してきているからな・・・これを着ていれば、奴等の事を色々と調べまわる事ができるからな・・・」
すると、ケリーの方から連絡音が聞こえてきた。
「おっと・・・連絡が入った・・・ちょっと待ってくれ・・・」
ケリーが立ち上がると、端末を取り出して連絡を取り始めた。
「はい・・・分かりました・・・」
連絡を終えたケリーはティア達に報告した事を伝えた。
「リーダーから、監獄に捕らわれている人々を救出して欲しいと連絡がきた・・・」
「本当か?どうやって、侵入するつもりだ?」
「心配するな・・・我々が行うのは、監獄に捕らえられている人間達の救出だ・・・
全員を逃す事ができれば、この町から撤退をすればいいだけだ・・・」
ケリーは作戦を伝えた後で、名前が書かれた紙をティア達に見せた。
「これは?」
「監獄に捕らわれている人達の名前だ・・・今、牢屋にいる人間達はこれだけいるぞ。」
そう言われたティア達はリストに書かれている名前を確認し始めた。
「・・・かなりの数の人達が捕まっています・・・」
「今、渡したのが収監されている囚人のリストで数日前にそこにいる囚人達の名前が書かれているぞ。」
渡してきたリストは最近の物だった。
「・・・死んでしまった囚人達もいるのか?」
「あぁ・・・リストの中には死んだ囚人もいるかも知れないな・・・」
リストに載っていた名前の中に獄中死してしまった囚人も存在しているのかも知れなかった。
「そうなの・・・これだけの人数がいれば、いつ死ぬか分からない恐怖に怯えていそうね・・・」
ティアは囚人達の名前を見ている時だった。
「どうかしたのか?」
ギルバートはティアがリストを見ると、なにやら必死そうな表情になっていた。
「・・・急いで、助け出さなければ・・・あの人は・・・」
そう呟いたティアは立ち上がると、慌てた様子で部屋を出て飛び出してしまった。
「おっ・・・おい・・・どうしたんだよ・・・?」
突如、部屋を出て行った様子を見て、ギルバートも後を追って行った。
「一体、どうしたのでしょうか・・・?」
ステラは気になってティアが見ていたリストを確認してみた。
「・・・さっきの表情は命の危機を察知したように見えました・・・」
ステラがティアの事を心配すると、ケリーがギルバートの持つリストを見て言ってきた。
「もしかしたら・・・このリストの中に知っている奴がいたからかも知れないな・・・」
「そうだね・・・あの様子を見れば、そんな風に思えてくるよ・・・」
アランとケリーはティアの知る人物の名前がリストにあるのか調べ始めた。
「・・・もしかしたら、その人物が捕まっている事を知ったから、ティアは助け出そうとして向かったのかも・・・」
「どうしましょう・・・今すぐにティアを助けに行った方が良いと思います・・・」
早く、ティアを止めに行こうとしたがケリーは後を追う事を反対してきた。
「駄目だ。お前も一緒に捕まるだけだぞ。」
「ですが・・・このままでは、ティアが捕まってしまいます・・・」
ケリーはそのように言ったが、ステラはティアの事が心配に感じていた。
「心配はするな・・・近々、監獄を襲撃して囚人達を助け出す作戦を実行する予定だ。彼女を助けてから、襲撃を仕掛けるから安心してくれ・・・」
この町にいる反乱軍は監獄にいる囚人達を救うための作戦の準備もしていた。
「恐らく、明日には実行する予定だから・・・それまでは、待っていた方が良いぞ。」
「やっぱり心配です・・・ティアが生きているかどうか分かりません・・・」
ステラは明日まで待っていれば、ティアが死んでしまうのではないかと心配に思っていた。
「・・・一緒に行っても捕まって拷問を受けていたら、ただじゃ済まされないはだ・・・ティアだって、そんな事は思ってもいないのに行くつもりか?」
ケリーにそのように言われて、ステラは信じて明日まで待つ事にした。
「大丈夫だよ・・・ちゃんと、ティアも助けてくれるからね・・・」
「・・・はい。」
「ケリー・・・ここは、僕達も協力させてもらえないかな?他にも捕まっている人達も助けるだけじゃなく、戦闘も避けられない確率は皆無に等しいよ。」
戦いを避ける事は不可能だと推測したアランにケリーは同級生として協力する事を許可した。
「・・・分かった。だが、俺達の指示に従ってもらうぞ?」
「ありがとう。それじゃあ、まずは作戦を聞かせてもらえないとね。」
こうして、ギルバート達は明日の作戦に備えて準備を始めた。
41章 囚われたティア
「・・・ここに、あの人が捕まっているのね・・・」
その頃、ティアは既に監獄の前まで来ていた。
「待っていて・・・今、私が行くから・・・」
ティアは誰かと出会おうとして、目の前にある監獄へと歩き出した。
「止まれ!ここは、立ち入り禁止だ!」
門番をしていた兵士の言葉を聞いても、ティアは止まろうとせずに進み続けた。
「止まれと言っているのが、分からんのか!止まらんと殺す!」
忠告を聞かないのを見て、剣を抜こうとしたが、もう片方の兵士が止めに入った。
「待て・・・あの少女はもしや・・・」
そう言われて、兵士の二人は彼女を見て正体を把握した。
「確かに・・・ソル様やあの方々が、仰っていた少女で間違いないようだ・・・まさか、一人でここに来たとでも言うのか・・・?」
二人の兵士は光翼の涙を持つ少女だと確信すると、ティアは兵士達の前で立ち止まってからこう言った。
「・・・私を監獄の中に入れて・・・」
ティアがそう言うと、兵士達は疑うように聞いてきた。
「なんだ?まさか、態々監獄に収監されに来たのか?」
「いいだろう・・・貴様には拷問をしてから、牢の中に入れてやろう・・・死ぬまでな・・・」
兵士達はティアを捕らえると、そのまま監獄の中へと入って行った。
「遅かったか・・・アイツ、自分で監獄に入りに行きやがって・・・」
ギルバートはティアを連れ戻そうとしたが、既に監獄の中に入って行ってしまった後だった。
「・・・この流れだと、明日には襲撃されちまうぞ・・・」
明日に備えるかのように呟いたギルバートは酒場へと戻って行った。
(ティア・・・助けに入るまでは、死なないでくれよ・・・)
そう呟いてから、ギルバートは酒場へと戻った。
「さてと・・・ここには、監獄長であるブリトニー様がおられる・・・すぐに拷問を受ける事になるので、心の準備をしておくようにしておけ・・・」
そう言って、兵士が扉を開けると監獄長である女性が立っていた。
「ブリトニー様、例の少女を連れて参りました。」
奥に連れて来られたティアは両手を後ろ手に拘束された状態でブリトニーと呼ばれる人物がいた。
「・・・ほう、アンタがエレノアの末裔の少女かい・・・?」
ブリトニーが振り返ってティアを見みつめてきた。
「まさか、一人で堂々とこの監獄に入って来るとはね・・・」
「・・・貴方がここの監獄長なの?」
「そうさ・・・アタシは監獄長さ・・・」
ブリトニーはデスドゥンケルハイト軍から、監獄長として任されていた。
「それで、一人で来るなんて、なにかがありそうだね・・・」
一人で監獄に訪れたティアを見て、ブリトニーは目的があるのではないかと睨んだ。
「・・・どう見ても、アンタが一人で捕まりに来るなんて引っかかるね・・・さぁ、ここへ来た本当の理由を喋りな・・・」
しかし、ティアは黙り続けたままなにも喋ろうとはしなかった。
「黙っていちゃあ・・・話ができないじゃないか!」
痺れを切らしたのかブリトニーはティアの顔を思いっきりはたいてきた。
「くっ・・・!」
ティアは立ち上がろうとすると、ブリトニーが彼女の胸倉を掴んできた。
「・・・喋れないのかい?だったら、拷問をして吐かすしかなさそうだね・・・」
「やっぱり・・・監獄に連れて行かれた人達は皆、拷問をして殺していたのね・・・」
ティアは囚人達を拷問死させていた事を知ってブリトニーを睨みつけた。
「なんだい・・・その目は・・・」
ブリトニーは睨みつけられた事に怒り、ティアの顔を何度も平手打ちをしてきた。
「おっ・・・お母さん・・・もう止めて・・・」
ブリトニーの背後から子供が怯えた様子で止めに入ってきた。
「キット・・・アンタ、母親であるアタシに逆らうつもりかい・・・?」
キットと呼ばれた子供はブリトニーの発言を聞いて怯えだした。
「いっ・・・いや・・・お姉ちゃんに暴力を振るうのは良くないよ・・・?」
「・・・親であるこの私に指図をする気かい・・・それが、親に向かって反抗をしているって事だよ!」
ブリトニーはティアを放してからキットの前に立つとその髪を掴んで引っ張り始めた。
「痛い・・・・ごっ・・ゴメンなさい・・・!」
キットは髪を引っ張るのを止めると、ブリトニーは鞭を手にした。
「・・・一体、なにをしようとしているの・・・?」
「なにって、教育をしてやっているだけさ・・・親に反抗するような態度を取ればお仕置きを与えてやるのが世話と言う物だよ!」
そう言いながらもブリトニーは子供であるキットに向かって鞭を振るい始めた。
「やっ・・・やめて・・・お母さん・・・!」
すると、ティアはキットを庇って代わりに鞭で打たれ始めた。
「・・・まだ幼い子供に手を挙げるなんて・・・親が子供に対して、絶対にやってはいけない事よ・・・!」
ティアは鞭に打たれながらもキットを庇い続けた。
「・・・まぁいいさ。この後拷問するから、その方がいいからね・・・」
ブリトニーは鞭打ちを止めると、兵士達がティアをキットから引き離した。
「それにしても、なんだか思い出すね・・・一年も牢屋にいるあの女の事を・・・」
そう言うと、ティアはその女の事について訊ねてきた。
「一年も・・・?」
「そうさ。その女はこの街にやってきて、うちの兵士達と揉めたのさ・・・そうしたら、ソイツが逆らってきてね・・・それで、牢屋の中に入れてやったと言う事さ・・・」
この町にやって来た女性は兵士達と逆らっており、その罪で監獄に収監されていると言うのだった。
「やっぱり・・・この監獄にいるのね・・・」
「アタシだって、今でも凄い奴だと思っているよ・・・なんでも、厳しい拷問をしているのにも関わらず・・・アイツは今でも生きているなんて・・・」
なんと、その女性は一年もの拷問に耐え続けていた。
「アタシにとっては、滑稽だったよ・・・鞭打ちや拷問をしてやったら怯えてさ・・・まるで、キットのように怖がっていたよ・・・」
ブリトニーは拷問を受けている女性が怯える様子を思い出すと笑みを浮かべた。
「・・・許せない!」
怒りが爆発したティアは兵士達の拘束を振りほどいて、ブリトニーに飛びかかろうとしたが鞭で打たれた事で倒れてしまった。
「生意気に歯向かうんじゃないよ・・・アンタも拷問を受けさせてやるから待っておきな・・・拷問室へ連れて行きな!」
「「はっ!」」
ブリトニーの命令で兵士達はティアを引きずらせながらも拷問室へと連れて行かれた。
「全く、アンタが割り込んでくるから、拷問室に連れて行くまで数分かかった
じゃないか!」
ブリトニーは不機嫌そうに言うと、キットは怯えながらも言ってきた。
「・・・だって、お母さんが暴力を振るっているから・・・」
「うるさいよ!アンタがアタシの息子になった以上、逆らう事は許されないんだよ!
後で厳しく教育してやるからそこで待っていな!」
そう言って、ブリトニーは扉を思いっきり閉めて拷問室へと向かって行った。
(・・・また誰かが拷問されている・・・)
ティアの拷問が始まった頃、牢獄にある一つの牢では拷問音が聞こえてきていた。
(・・・やっぱり、死ぬまでここにいなくちゃいけないのかな・・・?)
牢の中にいたのは、ティアとは三つ歳上の女性で拷問に怯えていた。
(・・・叔父さんと叔母さんは元気にしているといいけど・・・あの子はどうしているのかな・・・?)
女性は耳を塞ぎ、拷問に怯えながらも叔父や叔母の事を思い始めた。
(・・・ティア。)
拷問で苦しむ声と拷問音が耳に入り女性は怯え続けた。
42章 拷問されるティア
「くっ・・・あっ・・・!」
拷問室へと連れて行かれたティアは長時間もの拷問に耐え続けていた。
「どうだい・・・?そろそろ、吐く気になっただろ・・・?」
ブリトニーは息を切らしながら言ってくると、ティアは意識を途切れんばかりと堪え続けていた。
「私は・・・それでも・・・」
しかし、ティアの目は霞んでいて意識が朦朧としていた。
「まだ話さないつもりかい・・・こんなに時間のかかる拷問はあの女以来だよ・・・」
その後もティアはブリトニーによる拷問を受け続けた。
「ほらほら!まだまだ、行くよ!」
ブリトニーが鞭を振ろうとすると、扉が開かれて誰かが入ってきた。
「待て・・・ブリトニー。」
現れた人物を見たティアはそれが誰なのかを見て意識をハッキリさせた。
「貴方は・・・!」
そう、ティアにとっては両親の仇の相手でもある男ソルだった。
「また会ったな・・・まさか、お前が捕まりに行くとは思いもしなかったぞ・・・」
ソルは拷問で負傷しているティアを見てそう言ってきた。
「なぜ、貴方様がここへいらしたのでしょうか?」
一人の兵士がここへ来た理由をソルに訊ねてきた。
「・・・例の人間の少女が監獄で拷問を受けていると聞いてきたまでだ。」
そう答えたソルは傷だらけのティアを見てからブリトニーに聞いてきた。
「これだけの傷を負っているとなれば・・・長時間もの拷問に耐え続けていたと言う事で間違いはないな?」
ソルにそう聞かれたブリトニーは平然とした様子で答えてきた。
「えぇ・・・コイツが、一人でここに来た理由を聞こうとしても答えようとはしなかったから拷問をして吐かせようとしたまでだよ・・・」
「そうか・・・しかし、なぜ一人で監獄に来たのか分からないが・・・なにか、目的が
あったからに違いはないようだな・・・」
ソルはティアの瞳を見ていると、ブリトニーにある事を思って聞いてきた。
「・・・ブリトニー、牢獄の中に少女と関係のある人間はいないのか?」
「そう言えば・・・一年前に収監した女の事を聞かせてやった後に誰かの事を呟いていたね・・・」
「そうか・・・一つ聞くが、その人間とはどのような関係がある?」
ソルがその女性について聞いてみると、ティアは力のない声で喋ってきた。
「・・・その人は・・・私の大事・・・な・・・」
喋ろうとしたがティアは意識を失ってしまった。
「気を失ったか・・・まぁいい、目を覚ましたら聞けばいいだけの事だ・・・ブリトニー、この人間を牢に入れるのであれば、俺に収監を任せてくれないか?」
「監獄にいる奴等の仕事だよ?」
「分かっている・・・だが、この人間を牢に入れるのだけは俺にやらせて欲しいと思っただけだ・・・」
「構わないよ・・・そろそろ、休みたいと思っていた所だったからね・・・ソイツの事は頼んだよ・・・」
「・・・ちゃんと、牢に入れておくので心配するな。」
ブリトニーは兵士達と共に拷問室を出て行った。
「まだ、息があるようだな・・・」
死んでいない事を確認したソルは気を失っているティアを運ぼうとした時だった。
「・・・イヴ・・・」
ティアは微かだが意識を取り戻していた。
「・・・今すぐに、お前を牢に収監する・・・傷が痛むかもしれないが我慢してくれ・・・」
ソルはティアを担ぎ、牢獄へと運び入れ始めた。
「どうして・・・貴方が私を・・・?」
「・・・お前が捕まった事を聞いて様子を見に来たまでだ・・・だから、俺の手でお前を牢に入れてやろうと思っただけだ・・・」
「でも・・・」
ティアが喋ろうとしたが、またしても意識を失ってしまった。
「分かっている・・・俺はお前の両親を殺してしまった仇の相手だと・・・それに、この傷だと放っておけば、そのまま死んでしまう事になるだけだ・・・」
そう言っていると、ソルはティアを担いで牢獄へと入った。
(・・・近付いて来る・・・また拷問をされる・・・?)
誰かが入ってきた事に気付いた女性は怯え始めた。
(・・・その様子だと、この人間こそがイヴで間違いなさそうだな・・・)
女性のいる牢の前に立ったソルは怯えている女性を見てティアの言うイヴだと確信した。
「・・・お前がイヴか?」
ソルに自分の名前を呼ばれた女性は顔を挙げた。
「そうだけど・・・もしかして、また拷問をする気なの・・・?」
「違う・・・俺はこの人間をこの牢に入れようと来ただけだ・・・」
そう言って、ソルは牢を開けて中に入ると、ティアを牢の中に置いた。
「喜べ・・・この牢にはお前の言うイヴと言う人間がいるぞ・・・」
ソルは慎重にティアを牢の中に置くと、イヴは自分の名前を知っている事に驚いていた。
「どうして・・・アタシの名前を・・・?」
イヴはなぜ、自分の事を知っているのかと聞こうとしたが、ソルはそのまま牢を出て鍵を閉めた。
「・・・俺はこれで、下がらせてもらうぞ。」
彼女を牢に収監し終えたソルはそのまま牢獄を出て行った。
「あの人は一体・・・?」
ソルの事を思いながらも、ティアを見るとイヴはその顔を見て驚愕した。
「この子、もしかして・・・!」
気を失っているティアを見て、イヴは必死になって呼びかけた。
「ティア!ティアなの!?」
イヴは必死になって呼び続けてみたが、ティアは完全に意識を失っていたので目を覚まさなかった。
「しっかりして!お願い、目を開けて!」
イヴは拷問によって、傷付いたティアの体を見て絶句した。
「・・・イヴ・・・なの・・・?」
辛うじて意識を取り戻したティアはイヴに声をかけた。
「えぇ・・・どうしてこんな所に・・・叔父さんと叔母さんは元気なの・・・?」
「・・・お父さんと・・・お母さんは・・・殺されてしまったわ・・・」
ティアが力のない声で言うと、イヴは「そんな・・・」と衝撃を隠せなかった。
「だから・・・光翼の涙を手に入れるために・・・デスドゥンケルハイト軍と・・・戦っているわ・・・」
「光翼の涙を手に入れるために・・・?」
「えぇ・・・私にはエレノアの一族の血が・・・流れていたの・・・」
そう言った瞬間、ティアは再び意識を失ってしまった。
(・・・エレノアの一族・・・まさか、ティアにエレノアの血が通っていると言うの・・・?)
そう思っていると、ティアの拷問でできた傷を見た。
(・・・アタシの受けた傷よりも酷い・・・かなりの拷問を受けていたなんて・・・アタシには手当てをする術も無いし・・・一体どうすればいいの・・・?)
イヴはせっかくティアと再会したのに、傷を癒す事ができない事の無力さを感じた。
「お姉ちゃん・・・」
声が聞こえて振り向くと、牢の前にキットが立っていた。
「・・・お姉ちゃんはこの人の妹・・・?」
「まぁ・・・一応はそう言えるけど・・・誰なの?」
すると、キットは持っていた薬草を牢屋の前に置いた。
「これを使って・・・少しでも、傷を治した方が良いよ・・・?」
「大丈夫なの?こんな事がバレたら大変だと思うよ?」
「うん・・・でも、僕は放っては置けないよ・・・」
そう言い残して、キットは牢獄を出て行った。
「・・・アタシは、ティアを一年間も心配をさせちゃった・・・だからこそ、アタシがいてやらないと・・・」
キットの置いた薬草を手にすると、自分ではなくティアに使う事にした。
「待っていて・・・今、薬草で治してあげるから・・・」
イヴはティアの傷を少しでも癒そうと薬草を使用した。
43章 ティア救出大作戦
次の日、明朝に四人の兵士達が監獄の前にいた。
「いいか・・・怪しまれないようにするんだぞ・・・」
それは、兵士の恰好をしたギルバート、ステラ、アラン、ケリーだった。
「ギル・・・この格好、ブカブカです・・・」
ステラは小さいためか、兵士の服を着てもサイズが大きすぎた。
「仕方ないさ・・・今ある服はこれしかないからな・・・」
「でも、君も一緒に来てくれるなんて・・・なんだか、心強いよ。」
「仲間達は近くで待機させていて、すぐに駆け付けられるようにしているから安心してくれ。」
ここにはいないが、反乱軍のメンバー達は牢獄付近で待機していた。
「入るぞ・・・準備はいいな・・・?」
ギルバート達は怪しまれないように監獄に入ろうとすると見張りの兵士が止めてきた。
「待て・・・」
兵士が止めてくると、ギルバート達は恐る恐る立ち止まった。
「・・・なっ・・・なんでしょうか?」
すると、見張りの兵士がギルバート達の格好を見てきた。
「・・・そこのお前、服がブカブカだな・・・」
兵士はステラの格好を見て怪しいと思い始めた。
「えっと・・・それは・・・」
ステラはどう答えるべきか迷い始めた。
「すいません・・・コイツは小柄で大きさに合うのがなかったので・・・」
ケリーがとっさに嘘を付くと、兵士は納得をした様子で言った。
「そうか・・・まぁいい、今度サイズに合う服を用意してやるから我慢してくれ・・・」
「はい・・・それでは、失礼します・・・」
なんとかバレなかくて済んだギルバート達はそのまま監獄へと入って行った。
「危ないところでした・・・」
「全くだ・・・声をかけられた時には驚かされたぞ・・・」
「しょうがないよ・・・変装がバレないようにするのがさっきよりも大変だと思うよ・・・」
監獄の中へと入って行くと、数多くの兵士達がいた。
「これだけいたら、私達が変装している事がバレたらどうしましょう・・・」
数え切れない人数の兵士達があちこちにいる光景を見せられた。
「ケリーから聞いたけど・・・ここに捕まっている人達はこの監獄にある牢屋の中に入れられているらしいよ。」
「まずは、牢屋が何処にあるか探して見るしかないな。」
ギルバート達は怪しまれないようにしながら牢屋を探し始めた。
「これだけ探しても、牢屋が見つからないなんて・・・ティアは一体何処にいるのでしょうか・・・?」
しかし、どれだけ探しても牢屋を見つける事ができなかった。
「・・・それに、孤児院と同じで案内図も見当たらなかったよ。」
孤児院と同様に案内図が無く、牢獄がどうなっているのか分からなかった。
「あぁ・・・デスドゥンケルハイト軍に関係している施設は中がどうなっているのか知られずにしているからな・・・アイツ等にしか、知らないようにしているらしいぜ・・・」
ギルバートがそう言うと、ステラが不審に思って聞いてきた。
「ギル、どうして知っているみたいに分かるのですか?」
「勘だよ・・・孤児院もソイツ等の施設だったのを忘れた訳じゃないだろ?」
「・・・そうでした。」
「こうなったら、忘れたと言って聞き込みをしてみるしかなさそうだな・・・」
「でも、そんな事をしたらティアを助ける処じゃなくなるよ?」
聞き込みをしていたら、侵入者だと発覚してしまう恐れがあった。
「確かに・・・ソイツ等にしか知らされていないとなると・・・一発で見破られてしまいそうだ・・・しかし、一体どうやって牢獄を見つければいいんだ・・・?」
ケリーにそう言われた一同はどうするべきか考えている時だった。
「・・・お兄ちゃん達はお姉ちゃんの事を知っているの・・・?」
声が聞こえた方を見ると、キットが立っていた。
「子供?なんで、監獄に子供がいるのかな?」
すると、ステラがキットの傷を見て驚いた。
「怪我をしています・・・急いで、手当てをしなければ・・・!」
ステラが回復魔法を唱えようとすると、キットは首を横に振って拒否してきた。
「大丈夫だから・・・お姉ちゃんのいる場所へ連れて行ってあげる・・・」
「お姉ちゃん?もしかして、ティアの事ですか?」
ステラが訊ねてみると、キットは無言でコクリと頷いた。
「・・・お兄ちゃん達がお姉ちゃんの話をしているのを聞いたから・・・」
「それで、ティアは何処にいるの?」
「・・・ここの地下にいるよ。」
「地下?もしかして、牢獄の事を言っているの?」
「うん・・・だから、連いて来て・・・」
キットがそう言ってから、牢獄のある場所へと歩き始めた。
「これで、ティアを助ける事ができます・・・ギル?」
ステラが喜んでいると、ギルバートはなにかを思う様子でキットを見つめていた。
「どうかしましたか?ティアを助け出す事ができますよ?」
「なんでもない・・・それよりも、さっさとアイツに連いて行こうぜ。」
こうして、キットの案内によって牢獄のある地下室へと着く事ができた。
(・・・なんだか、ギルはあの子を見つめていた気がしたけど・・・気のせいかな・・・)
怪しいと思ったアランがギルバートの後ろを見てそう感じた。
「・・・この中にティアがいるのですか?」
「うん・・・今、鍵を開けるから待っていて・・・」
キットは持っていた鍵を使って牢獄の扉を開けると、無数の牢屋に囚人達が収監されていた。
「牢屋にいる人達は元気が無いです・・・」
収監されている囚人達を見て、希望が無く絶望している様子を目にした。
「いつ拷問で死ぬか分からない状況でいるんだ・・・これだけいるとなると・・・全員を救出するには難しそうだな・・・」
監獄に収監された囚人は人数が多くて、見つからずに発覚をするのは困難だった。
「あそこに・・・お姉ちゃん達がいるよ・・・」
キットが指を指した牢に向かうと、傷だらけのティアとイヴがいた。
「止めて!この子にだけは手を出さないで・・・!」
イヴは怯えながらもティアを庇いながら言ってきた。
「僕だよ・・・この人達は悪い人達じゃないよ・・・」
そう言うと、ギルバート達は兵士の服を脱いで敵ではないと伝えた。
「兵士達じゃない・・・貴方達は一体・・・?」
「その話は後にしてくれ・・・今、ここから出る事だけを考えろ・・・」
ギルバートが牢の鍵を開けて中に入ると、ステラは魔法でティアとイヴの傷を回復させた。
「ティア、立てる?」
回復した後でイヴはティアを起こした。
「えぇ・・・なんとか、イヴは大丈夫・・・?」
「なんとかね・・・」
ティアとイヴは立つ事はできたが、負傷している為か足元がフラフラとしていた。
「これからどうするつもりだ?囚人が出ていたら牢屋に逆戻りだぞ?」
「・・・どうしても、戦闘は避けられそうにないな・・・今すぐに連絡を取っておいた方が良いな・・・」
後は監獄を占領するだけだったが、残りの囚人達は助けるのは後回しになりそうだった。
44章 監獄からの脱出
「待って・・・閉じ込められている他の人達も助けて・・・?」
その直後、ティアが収監されている囚人達も開放するに言ってきた。
「・・・悪いが不可能だ。戦闘になれば、巻き込まれて犠牲を出してしまうからな・・・助けるのは後にしてくれ・・・」
そう言って、ケリーが連絡を取り始めるとイヴが言ってきた。
「・・・とにかく、この人達の事を信じましょう。」
「分かったわ・・・必ず、この人達も助けてあげて・・・」
「あぁ・・・お前達を出してからにするから安心してくれ・・・」
ケリーは作戦の際に囚人達を絶対に救出すると約束した。
「・・・襲撃が始まる前にここから出ようぜ。」
ギルバート達はティアを救出した事で希望を感じられたが、牢獄の扉を開けた事によって絶望へと変わった。
「残念だったね・・・アンタ等が侵入して来た事はお見通しだったよ・・・」
その理由は牢獄を出た直後、ブリトニーと兵士達が待ち構えていたからであった。
「まさか、最初から分かっていたのか・・・!」
ギルバート達が警戒をすると、ブリトニーがキットを見つめた。
「お母さん・・・!」
鞭を持つブリトニーを見て、キットは怖がりギルバート達の後ろに隠れた。
「・・・まさか、アンタがコイツ等を手引きさせたのかい・・・悪い子だね。」
ブリトニーの言葉を聞いたキットは恐怖で体を震わせた。
「もしかしてだけど、この子の母親なの?」
イヴが疑うように聞くと、ブリトニーは不機嫌そうに答えてきた。
「・・・そんな事は別にいいだろ?脱獄しようとする奴には制裁が必要だね・・・やっちまいな!」
ブリトニーの命令で兵士達が一斉に襲いかかってきた。
「ここは狭くて後ろには牢獄があるから」
今いる場所では幅が狭く、背後には牢獄もあるために戦い難かった。
「確かに・・・俺達の方が不利だ・・・だが、囚人達までも巻き込む訳には・・・」
どうすればいいのか思っていると、ティアが覚悟をした様子で言ってきた。
「・・・私も戦うわ。」
「なに、言っているんだよ?そんな体じゃ戦ったら死んじまうぞ?」
拷問に耐え続けていたティアは、戦うのが困難な状態だった。
「そうだとしても、皆が死んでしまうのは見たくはないわ・・・」
「拷問で酷い傷を負ったんだ・・・だったら、戦わせる訳にはいかないだろ・・・ステラとアランは魔法で援護をしながらコイツ等を守ってくれ・・・」
彼に言われたステラとアランはティア達を守りながら戦う事にした。
「後ろにいて・・・僕達がいるから安心していてね。」
ティアとイヴとキットはステラとアランに守られながら見守る事となった。
「大丈夫・・・この人達が守ってくれるからね・・・」
ギルバート達が身構えると同時に、兵士達が一斉に襲いかかってきた。
「来たよ!」
「分かっているよ・・・!」
ギルバート達は拷問で負傷したティアとイヴを守りながら戦い始めた。
「があっ!」
その中でギルバートは素早い動きを駆使して兵士達を全て倒した。
『ヒーリラ!』
ステラの回復魔法によって、ギルバートとアランだけでなく、ティアとイヴの傷も
回復していた。
「ありがとう・・・私達も回復してくれたのね・・・」
「私が魔法で傷を癒しますので、無理はしないでください・・・」
苦戦をしながらもギルバート達は兵士達を次々と倒していった。
「・・・なんとかいけそうだな・・・ここで、一気にやってみるか・・・」
そう言いながらケリーは大剣を地に向けて叩き付けた。
『グラウンド・バースト!』
叩き付けた大剣の振動によってひびが入り、兵士達の足元まで入って行った。
「なんだ・・・うわっ!」
その直後、足元から衝撃が放たれると同時に兵士達は吹き飛んだ。
「これで、かなりの兵士達を倒せたな・・・」
今の技は地面から怪物が襲いかかるような衝撃波を放つ技だった。
「相手はあと少しだよ・・・」
「あぁ・・・残りは俺に任せろ・・・」
ギルバートは素早く攻撃をして、残っている兵士達を一斉に倒した。
「・・・どうやら、部下達は全員やられたようだね・・・どいつもコイツも役に立たない奴等だね・・・こうなったら、自分でお仕置きをするしかなさそうだね・・・」
そう言って、ブリトニーは鞭を床に叩きつけた。
「・・・!」
すると、キットが鞭を撃つ音を聞いて耳を塞いで怯え始めた。
(この子・・・こんなに怖がっているなんて・・・きっと、酷い事をされてきたのが伝わってくるよ・・・)
イヴは恐怖を堪えながらも怯えるキットを優しく抱いた。
「気を付けて・・・あの鞭はとても強力よ・・・私もあの鞭で拷問されていたから覚えているの・・・だから、気を付けながら戦って・・・」
ティアがブリトニーを見て、ギルバート達にそう忠告した。
「そんな事、言われなくても分かっているよ・・・アイツの鞭は、滅茶苦茶痛いから気を付けて欲しいだろ?」
その直後、ブリトニーに攻撃を仕掛けた。
「おっと・・・!」
ブリトニーが鞭を振るってくると、ギルバートは横へと移動して避けた。
「思いっきり、攻撃をするなよな・・・!」
「そんな事をしたら、鞭が当たらないだろ?」
そう言って、ブリトニーは再び鞭で攻撃を仕掛けてきた。
45章 監獄長ブリトニー
ギルバート達は戦ってい続けていたが、ブリトニーは引けを取らずに鞭を振るっていた。
「遠くから魔法で援護しているけど・・・あの人の鞭の扱いが上手いな・・・」
ステラと共に後衛にいたアランはブリトニーの鞭の扱いを見て優れていると確信した。
「・・・きっと、それだけ拷問をしていたと考えられてくるね・・・」
「これでも喰らいな!」
ブリトニーが思いっきり鞭を振るって技を繰り出してきた。
『ブレイクウィップ!』
ブリトニーは威力と破壊力が増した鞭を振るってきた。
「避けて!」
イヴが叫ぶと、ギルバートは共に避けると同時に床に当って穴が開いた。
「床に穴が・・・これは、無闇に近寄ってもやられてしまうわ・・・」
「あぁ・・・これ以上長引けば、体力や魔力が消耗されるから厄介だ・・・」
今でも戦闘が長引いており、ステラとアランの魔力もかなりの量を使用していた。
「どうだい?アタシの技は・・・当たれば致命傷は負うと思うよ?」
「一体、どうすれば・・・当たったらかなり深手になりそうだよ・・・」
どうすれば言いか迷っていると、ティアが剣を手にしている事に気付いた。
「・・・ここは私が身代わりになるから、ギルは皆と一緒に逃げて・・・」
ティアは負傷を負っておきながらもブリトニーと戦おうとしていた。
「こんな傷じゃ、戦うなんて無理に決まっているだろ?」
「いけません・・・このままでは、ティアが死んでしまいます・・・!」
ギルバートとステラが止めに入ったが、それでもティアはギルバート達を逃がすために戦うつもりだった。
「・・・その子はブリトニーに虐待を受けている・・・一緒に逃げ出さなければ、ここに閉じ込められている人達と一緒に死んでしまうわ・・・」
そう言って剣を構えようとした直後、ブリトニーはティアに向けて鞭を振るった。
「あっ・・・!」
鞭を撃たれたティアは剣を落とすと、次々とブリトニーの攻撃が振るわれ続けた。
「ティア・・・!」
イヴは止めようとしたが、アランが止めに入ってきた。
「駄目だよ・・・そんな体じゃ、君までがやられてしまうよ・・・」
「離して!ティアが・・・!」
鞭を撃たれ続けてもなお、ティアは剣を拾い戦おうとしていた。
「落ち着いてください!ギル、なんとかしてください!」
ステラが焦り出すと、ギルバートはティアを見て歯を食いしばった。
「くそっ・・・アイツ、俺達を逃がすために無茶をしやがって・・・!」
そう呟いたギルバートはとっさに、ブリトニーの攻撃からティアを庇った。
「こんなに傷付いているのに死にたいのか!」
「でも・・・私は・・・」
「幼い子供を守るより、お前の命が失ってもいいのか?」
ティアは、ギルバートにそう言われるとキットを見つめた。
「・・・それでも、命の危険にさらされている人は放っておく訳にはいかないわ・・・」
それでも、ティアは自分の身に変えても命を救いたいと思っていた。
「自分の命が無くなったら、守れなくなるって言うのに・・・」
ギルバートは状況を見て、ステラ達に言ってきた。
「ここは、俺がなんとかするから・・・お前達はコイツ等を連れて逃げてくれ・・・」
「でも、そんな事をしたらギルが・・・」
すると、ギルバートは心配させないようにティアに言った。
「お前はこれだけの傷が付いているのに・・・これ以上の無理をされたら死んじまう・・・それだったら、お前達だけでも逃げた方がいいに決まっているぜ・・・」
「・・・分かったわ。だけど、絶対に戻って来て・・・」
「あぁ・・・ちゃんと、殺されないでいてやるから安心しろ・・・」
ステラ達はこの場をギルバートに任せて脱出を優先する事にした。
「ギル・・・本当にいいんだね・・・?」
「気にするな・・・ちゃんと、無事に帰るから早く行ってくれよ・・・」
後の事は彼等に任せると、ギルバートはブリトニーと対峙した。
「・・・まさか、アンタが止めに入るとはね・・・」
「あぁ・・・俺もこんな事になるなんて思わなかったぞ・・・アンタの息子も行っちまったが止めなくてもいいのか?」
「構わないさ・・・なんたって、欲しくて産んだ子じゃないからね・・・」
どうやら、ブリトニーはキットに関心が無く、望んで出産した子ではないようだった。
「・・・とんでもない女だな・・・アンタは・・・」
そう呟いてから、ギルバートは双剣を構えた。
「もう少しで出られるぞ。後の事は任せてくれ。」
同じ頃、ティアを救出したステラ達は監獄を出ていた。
「ここなら、もう大丈夫だよ。」
ステラ達は安全な場所へと移動した。
「急いで手当てをしないと・・・!」
ステラはティアの傷を治そうと回復魔法を唱えた。
『ヒーリラ!』
ステラは回復魔法を唱えた。
「良かったです・・・これで、二人の傷が回復して・・・」
しかし、回復はしたがティアが目を覚まさなかった。
「ティア?どうしかしましたか?」
異変に気付いたステラは声をかけたが、ティアは返事が返ってはこなかった。
「ティアの様子が変です・・・!」
「もしかしたら・・・さっきので、限界が来ていたのかも知れないね・・・」
先程の鞭打ちでティアの体が限界に達していたのだとアランはそう考えられた。
「そんな・・・それじゃあ、ティアはもう助からないとでも言うの・・・?」
「残念だけど・・・彼女はもう助からないのかも知れない・・・」
アランがそう告げると、イヴは信じられずにティアを揺さぶった。
「ティア!目を開けて!」
イヴは必死になって呼びかけたが、ティアは目を覚ます気配はなかった。
「嘘だよね・・・?ティアが死んでしまったなんて・・・」
イヴは絶望をしていると、ステラは背後から気配を感じて振り向いた。
「・・・ガイア。」
すると、ガイアがこちらに近付いてくると意識のないティアの容態を見た。
「瀕死の重傷を負っている・・・このままでは、この人間はすぐに死んでしまう事になるだろう・・・」
ガイアがそう判断すると、イヴの顔が絶望に染まっていた。
「安心しろ・・・この薬を使えば、意識を取り戻せるはずだ。」
そう言って、ガイアは薬の瓶を取り出した。
「心配はするな・・・ちゃんと、最後まで飲ませるから安心してくれ・・・」
そう言って、ガイアは栓を抜いて薬をティアの口に注ぎ始めた。
「ティアに毒を飲まさないで!」
イヴは止めたが、ガイアは最後の一滴までティアに飲ませ続けた。
「毒ではない・・・このまま安静にしていれば、時期に目を覚ます事ができるだろう・・・この町も解放されるので安心して休ませておくべきだ・・・」
ティアに薬を飲ませたガイアが立ち去ろうとした。
「待って・・・ティアを助けてくれてありがとう・・・」
イヴは警戒を解いたのか、ティアを助けてくれた事にお礼を言った。
「・・・人類を救済する事が星竜族の使命なのでな・・・」
ガイアはそう答えてから飛び去って行った。
「・・・ガイア、ありがとうございます。」
ステラは飛び去るガイアを見ていると、監獄を脱出したギルバートと合流する事ができた。
「探したぞ・・・もうじきこの町からデスドゥンケルハイト軍がいなくなるから安心してくれ・・・」
デスドゥンケルハイト軍はこの町から撤退をしており、監獄に収監されていた人間達は反乱軍によって全員が救出されている最中だった。
「監獄はもう反乱軍が占領したから、デスドゥンケルハイト軍が撤退をしたらしいぜ。」
ギルバートがそのように言うと、キットが気にした様子で聞いてきた。
「・・・お母さんは?」
虐待をされていたのにも関わらず、キットは母親であるブリトニーの事を心配していた。
「アイツか・・・とっくに逃げているぞ・・・」
「・・・分かった。」
そう言いながらキットは母親がもういない事を寂しく思った。
「まぁ・・・母親と別れられたんだ・・・アンタの事も聞きたいし、ティアが元気になるまで待っていた方が先決だな・・・」
ギルバートは安らかに眠っているティアを見た。
「ティア、看病してあげるからゆっくり休んでね・・・」
デスドゥンケルハイト軍から町を開放し、後の事は反乱軍に任せティアの回復を待つ事にした。
「・・・」
その様子を見ている人物がいたが、誰もその存在について気付かなかった。
46章 イヴとティア
「・・・ここは?」
ティアが目を覚ますと、何処かの一室にあるベッドの上だった。
「良かった・・・貴方が無事で・・・」
隣にはイヴがおり、彼女が目覚めした事に安心した。
「イヴ・・・もう大丈夫なの・・・?」
「なんとかね・・・それよりも、貴方が目を覚ましてくれて良かった。」
イヴがそう言うと、ティアはステラも部屋にいる事に気付いた。
「ステラ・・・貴方もここにいたのね。」
「はい。この人と一緒にティアの側にいました。」
机の上には治療道具の入っている救急箱が置かれていた。
「別にいいって言ったけど、この子もティアの事が心配でずっと一緒に看病をしてくれていたの。」
「はい。この人も傷が残っていたので治療をしながらお手伝いをしました。」
ステラは回復したばかりのイヴの事に無理をさせないように看病を手伝っていた。
「・・・まさか、ティアがこの町に来るなんて思いもしなかったよ。」
「えぇ・・・私もイヴが監獄に閉じ込められていた事は知らなかったわ。」
イヴがそう言うと、ティアは自分の体の痛みと傷が無くなっている事に気付いた。
「鞭の傷が無くなっている・・・それに、痛みも感じないわ・・・もしかしたら、何日も眠っていたからなのかしら・・・?」
「違います・・・ティアは昨日まで眠っていました。」
ティアが目覚めたのは前日の出来事から翌日まで眠っていたのだった。
「それじゃあ、たった一日で完全に回復したと言う事?」
ティアはそう思ったが、イヴは首を横に振ってきた。
「いいえ・・・星竜族が貴方に薬を飲ませてくれたお陰なの・・・確か、ガイアと言う名前だってこの子が言っていたよ。」
イヴはステラにガイアの事を聞かされていた。
「そうなの・・・ガイアが助けてくれたのね・・・」
ティアがそう思うと、イヴがある事が気になって聞いてきた。
「・・・ねぇ、ちょっといいかな?貴方をアタシのいた牢屋に入れた人・・・なんだか、貴方の事を知っていた気がしたけど・・・ティアはその人となにか関係があるの?」
イヴがそう言うと、ティアは監獄にいた時の事を思い出した。
「・・・やっぱり、あの出来事は夢ではなかったのね・・・」
ティアは現実だったと思うと、ステラは心配そうにティアを見つめた。
「ティア・・・本当に話してしまうつもりですか・・・?」
「分かっているわ・・・だけど、本当の事を伝えた方がいいと思うわ・・・」
話す事を決めたティアはソルとの関係についてイヴに全てを話した。
「そんな・・・その男に叔父さんと叔母さんは殺されていたなんて・・・」
「本当の事よ・・・それで、私が旅に出た理由もその一つよ・・・」
ティアが話し終えると、イヴは両親と村人達の死や村が滅ぼされている事に衝撃を受けた。
「アタシが監獄にいる間にそうなっていたなんて・・・それで、ティアだけが無事に生き残れたの・・・?」
「えぇ・・・私だけは見つからずに済んだけれど・・・でも、お父さんやお母さんだけでなく村の人達も全員殺されてしまったわ・・・」
そう言いながら、気まずそうな表情をしながら俯いた。
「ティア?どうかしたの?」
イヴが声をかけると、ティアは静かに言ってきた。
「・・・イヴ、こうなってしまったのは私のせいなの・・・」
ティアは故郷が滅ぼされ村人や両親が殺されたのは自分のせいであると悲しそうにしながらイヴに告げた。
「ティア・・・それって、どう言う事・・・?」
すると、ティアの目から一滴の涙が零れた。
「・・・そうなってしまったのは、ティアのせいじゃないよ・・・だから、自分を責めないで・・・」
イヴが宥めるように言うと、ティアは彼女の顔を見つめた。
「イヴ・・・それでも、私が原因で引き起こしてしまった事に変わりはないわ・・・」
「そんな事はないよ・・・だから、これ以上自分を責めないで・・・」
すると、扉が開かれるとアランが部屋に入ってきた。
「ティア、起きていたんだね。」
アランはティアが目を覚ましている様子を見て安心した。
「えぇ・・・心配をかけさせてしまったごめんなさい・・・」
ティアが謝ってからこの町の状況について聞いてきた。
「アラン、デスドゥンケルハイト軍はどうなったの?監獄に捕まっていた人達は無事?」
「うん。昨日の戦いでデスドゥンケルハイト軍は撤退して、牢屋に入れられていた人達も無事に助けたってケリーが言っていたよ。」
この町からデスドゥンケルハイト軍が撤退した事で町は支配から解放されていた。
「そうなの・・・もう、罪もない人達が監獄に入れられて拷問で殺される人が出なくなって良かったわ・・・」
ティアは収監されて獄中死する事がなくなって安心すると、キットがどうなったのか気になった。
「・・・そう言えば、あの子はどうしたの?」
「キットの事?ちゃんと、無事に保護されているから安心して。」
ブリトニーに見捨てられたキットは反乱軍に保護されていた。
「ちゃんと、反乱軍が面倒を見てくれるから大丈夫だって言っていたよ。」
イヴは無事に面倒を見てくれる事を告げると、扉が開かれてギルバートが部屋の中に入ってきた。
「なんだ・・・もう、目を覚ましていたのか・・・」
「ギル、何処に行っていたの?いつの間にかいなくなったから心配したんだよ?」
「悪ぃな・・・すぐに戻るつもりだったけどな・・・?」
そう言いながら、ギルバートはイヴを見つめてから言ってきた。
「・・・アンタは一年前にデスドゥンケルハイト軍に逆らったと聞いたが・・・本当か?」
「あの時は、殺されるかも知れないと感じたら・・・兵士に歯向かった結果、牢屋に入れられたと言う訳なの・・・」
一年前、イヴはこの町に訪れていた際に、兵士に歯逆らった事によって監獄へと収監されていたのだった。
「監獄に連れて行かれてから、アタシは毎日拷問を受ける日々を送るようになったの・・・」
「それで、一年も拷問に耐え続けていたのかよ・・・普通なら、一か月も持たないと思うけどな・・・」
ギルバートは一年間も拷問に耐え続けていた事に驚きを隠せなかった。
「まぁね・・・ティアだけじゃなく、叔父さんや叔母さんを悲しませたくなかったから・・・ここで、死ぬ訳にはいかないと思っていたから・・・」
「・・・そのために拷問に耐え続けていたなんて・・・きっと、苦しい生活を一年も送っていたのね・・・」
ティアは一年間もの間、拷問に耐え続けながらも生き続けてきたのだと感じられた。
「とにかく、苦しい日々から解放されたから十分に休ませておいた方がいいよ。」
「そうだね。ティアも元気になった事だし、そうさせて貰おうかな。」
ティアが元気になった事でイヴも十分に体を休ませる事にした。
「それじゃあ、俺達は散歩でもしていようぜ。」
そう言って、ギルバートはアランと一緒に部屋を出た。
(・・・アイツの傷、どう見てもアレは・・・)
ギルバートは監獄で見たイヴの傷について気になっていた。
「どうかしたの?」
「いや・・・それよりも、奴等が町に潜んでいないか探して見ないか?」
「そうだね。散歩がてらに探して見るのもいいかもしれないね。」
ギルバートとアランは町に兵士達が潜んでいないか見回り始めた。
47話 イヴの秘密
町を開放してから二日後の夜、ティア達は泊っている部屋に集まっていた。
「イヴ、話があるって聞いたけど・・・一体なにを話すつもりかな?」
「・・・アタシの秘密を教えようと思ったから。」
そのように言うと、ティアは心当たりがあるように聞いてきた。
「・・・本当に、あの事を話すつもりなの?」
「えぇ・・・ちゃんと、話した方がいいと思ったからだよ。」
そう言って、イヴは服を上げてきた。
「おいおい・・・急に服なんて脱ぐなよ・・・まさか、裸を見せるつもりかよ?」
「ううん・・・そんなつもりじゃないから・・・これを見れば驚くから・・・」
イヴが見せてきたのは裸ではなく、体中にある傷や傷跡の方だった。
「酷い傷だな・・・この傷も拷問で受けた傷なのか・・・?」
「違うの・・・これは、小さい時に付けられた傷なの・・・」
イヴの体にある傷をよく見れば、拷問によってできた傷ではない事が分かった。
「言われて見れば・・・拷問の傷と違っているように見えるな・・・一体、誰がこんな傷を付けられたんだよ?」
「・・・これから話す事はその子にとって、キツイ話になりそうだけど・・・大丈夫?」
そう言われると、これから話す事はステラが怖がるような内容だと言う事が分かった。
「ステラ、聞くのが嫌なら部屋を出ていた方がいいわ。」
「大丈夫です・・・この人も悲しい事があったと思うので聞かせてください。」
「別にいいけど、これ以上聞きたくなかったら部屋を出てね。」
そう言って、イヴは体の傷について話し始めた。
「・・・アタシはティア達と出会う前に虐待を受けていたの。」
イヴは前の両親に虐待を受けていて、拷問で受けた傷よりも深く残っていた。
「虐待って・・・それじゃあ、その傷も虐待で受けた傷って事だな・・・」
「・・・アタシの虐待が始まったのは、お父さんがいなくなってしまってから、お母さんが新しい男を連れて来てからなの・・・」
彼女曰く、母親が新しい父親となる人物が現れた事で虐待の日々が始まったのだった。
「くそっ・・・なんのために離婚した父親と結婚したんだよ・・・」
「酷すぎます・・・その人はどうしていなくなってしまったのですか・・・?」
ステラが前の父親について訊ねると、イヴは嫌な事を思い出しながらも答え出した。
「分からなかった・・・お母さんはその理由について教えてくれなかったし・・・結局、最後までなにも言わずにい続けたの・・・」
話している内に、イヴの表情が辛くなってきていた。
「イヴ・・・辛そうな顔をしているのに、無理に話そうとしなくてもいいぞ・・・」
ギルバートは止めたが、それでもイヴは最後まで話すつもりだった。
「分かっているけど、話させて欲しいの・・・ある日を境に、お母さん達は家に帰って来なくなったの・・・」
「・・・それって、君だけを置いて出て行ったと言う事?」
「多分ね・・・いつも、外に出るなと言われていたから、ずっと怯えながら帰って来るまで待っていたけど・・・何日も帰って来る事がなかった・・・」
当時のイヴは家から一歩も出るなと言われており、母親達が帰って来るまで待ち続けていたのだった。
「それから、何日か経っていく内に食べる物が無くなったアタシは・・・ただ、餓死するまで待つしかできなかった・・・だけど、ある人がアタシの前に現れた事で運命は変わったの・・・それが、ティアのお父さんである叔父さんだった・・・」
イヴの家に訪れたのは、ティアの父親で餓死寸前になっていた彼女を救ったのだった。
「もう、死ぬと思った時に・・・ティアのお父さんが、虐待をしている両親がいると言うのを聞いて来てくれたから、アタシを助けに来てくれたらしいの。」
イヴを虐待している両親がいる事を聞いたティアの父親が来てくれた事でイヴはなんとか一命を取り留める事ができたのだった。
「それから、アタシはティアの住んでいる村に連れて行かれたの。」
当時のイヴは九歳でティアが六歳だったので三つも歳が離れていた。
『お帰りなさい・・・あら、その子は・・・?』
父親が帰宅すると、母親は見知らぬ子供を連れている事に気が付いた。
『あぁ・・・この子は遠くの場所で虐待を受けていた子供で連れて帰ってきた・・・』
父親がそう言うと、母親はイヴの傷を見て本当の事だと理解した。
『・・・結構、辛かったのね・・・さぁ、こっちに追いで・・・』
母親が近付いてくるとイヴは父親の後ろで怯え始めた。
『・・・まだ、私達の事に慣れていないからだろう・・・私達は君の両親のような事はしないの・・・だから、安心してくれ・・・』
父親はイヴを安心させようとすると、まだ幼かった頃のティアがやってきた。
『お父さん・・・このお姉ちゃん・・・?』
『ティア、今日からここで暮らす子だ・・・仲良くやってくれ・・・』
父親がそう言うと、ティアがイヴに近付いてきた。
『よろしく・・・お姉ちゃん・・・』
ティアは笑顔で言うと、イヴは恐る恐る顔を上げた。
『うん・・・』
イヴはティアの事が信じられる気がした。
「・・・それから、ティアの家で暮らしている内に、まるで姉妹みたいに育てられてきたから・・・色々な事を教えられて一人でも旅ができるようになったの。」
イヴはティアと共に叔父であるティアの父親に鍛えられていた。
「・・・それにしても、君の母親は酷い人だったんだね・・・」
「えぇ・・・お腹を痛めてまでも産んでくれたのに・・・その苦痛を忘れて、新しい男の人が好きになって、子供に暴力を振るえるなんて・・・私にはそのような事があってしまってはいけない事なの・・・」
腹を痛めながらも出産した母親が子供に暴力を加えてはいけないとティアにも伝わっていた。
「なぁ、ソイツってどんな奴だったのか覚えていないのか?」
「うん・・・お父さんがいなくなる前は、そんな事はしない人だったけど・・・新しい人が来てからお母さんが変わってしまったの・・・」
イヴの母親が新しい父親になる人間を連れて来てから、母親は急変したかのようにイヴを虐待するようになっていた。
「私もイヴから聞かされた時はその人達が許せないと思ったわ・・・親も子供の時があったのに、そんな事ができるなんて・・・」
ティアはイヴの母親と父親と名乗る人物が許せないと思っていた。
「・・・その傷は拷問よりも酷いって事は分かった・・・これから、どうするか考えているのか?」
ギルバートがそう訊ねると、イヴは服を降ろしてから答えてきた。
「もちろん・・・ティアに連いて行くよ。だって、叔父さんと叔母さんはソルと言う男に殺されているんだよね・・・?それだったら、アタシも一緒に戦ってみせるからね。」
イヴは既に覚悟を決めており、旅に同行してデスドゥンケルハイト軍を倒そうとしていた。
「叔父さんと叔母さんを殺した相手がいるデスドゥンケルハイト軍を倒すためにティアは光翼の涙を手に入れる旅をしている・・・それに、もう二つも手に入れているから残りは八つ・・・それだったら、アタシにも手伝わせて欲しいの・・・いいでしょ?」
イヴが旅に同行するつもりで言うと、ティアは心配に思っていた。
「・・・イヴも戦いたいと言う気持ちは分かるけれど・・・私達の旅は過酷でデスドゥンケルハイト軍を相手にしなくてはならないわ・・・」
「当然、今度はアタシがティアを助けなくちゃ・・・だって、貴方と仲が良いでしょ?」
イヴは自身の覚悟を伝えると、ティアの瞳を見て理解した。
「ティア・・・これからもずっと一緒だね。今まで、心配させちゃった分は頑張るからね。」
こうして、イヴが加わる事になると光翼の涙の手掛かりについて訪ねてきた。
「でも、アタシはまだ戦えなさそうだから少しの間は見ているかもね。」
イヴは体に本調子が戻ってはいなかった。
「アタシの調子が戻るまで、戦闘は休む事になるけど大丈夫?」
「えぇ、心配はしないで。」
「うん・・・ちゃんと、良くなるまで見守ってあげるからね・・・」
本調子が戻るまで、イヴは先頭を見ている事になった。
「ところで、光翼の涙の手がかりは無いの?」
三つ目の光翼の涙が何処にあるのかイヴが訊ねると、アランは思い出したかのように答えてきた。
「確か・・・反乱軍から聞いたけど・・・三つ目の光翼の涙はエルフの森の近くにあるらしくて、霧鳥と幻の渓谷の何処かに隠されているらしいよ・・・」
「そこに、三つ目の光翼の涙があるのね・・・」
「そう言う事だ・・・先に行くよりも近くにあるエルフの森に行ってみようぜ。」
「えぇ・・・霧鳥と幻の渓谷について、知っている人物がいるのかも知れないからね・・・」
数日間休んだ後で、ティア達はエルフの森に向かう事を決めた。
48章 エルフの森
数日後、十分に体を休ませたティア達はエルフの森に着いていた。
「ここが、エルフの森・・・森の中に集落があったのね・・・」
「あぁ・・・しかも、霧鳥と幻の渓谷の近くにあるからすぐに行けるぜ。」
霧鳥の渓谷はエルフの森の近くにあり、そこから徒歩で着ける距離にあった。
「その渓谷について、色々と聞き出してみようぜ。」
「そうね。エルフ族ならなにか知っているのかも知れないわね。」
ティア達は、早速エルフ族の集落で情報を聞く事にした。
「・・・どうやら、族長が知っているようだからそこに行きましょう。」
霧鳥と幻の渓谷を知っていると思われるエルフの族長の家へと向かった。
「・・・なるほど、そなた達は霧鳥と幻の渓谷に行きたいと・・・?」
族長の家に訪れたティア達は霧鳥と幻の渓谷について話を聞こうとしていた。
「はい・・・私達は、ある目的があって霧鳥と幻の渓谷に登りたいのですが・・・その場所に着いて、色々とお話をしてもらおうと思ってきました。」
ティアが霧鳥と幻の渓谷に登る目的を伝えると、族長はどうするか考え込んだ。
「しかし・・・あの渓谷には、神鳥と呼ばれるミスティ様がおられるのだが・・・本当に登るつもりでいるのか・・・?」
本当に霧鳥と幻の渓谷に向かうのか訊ねると、ギルバートが疑うように言ってきた。
「なんだよ?俺達が、落ちて死ぬのが心配だって言いたいのか?」
「ちょっと・・・そんな事を言わないでよ・・・族長が不審がるよ・・・」
イヴはギルバートに指摘すると、族長が首を横に振って言ってきた。
「お主達の事は怪しい人間だとは思ってはいない・・・ただ、霧鳥と幻の渓谷は霧がかかっている渓谷で神鳥であらせられるミスティ様が住み着いていらっしゃるのだ・・・」
族長曰く、幻と霧の渓谷にはミスティと呼ばれている神鳥が住む渓谷と伝えられていた。
「ミスティ様は霧のように白くて美しい神鳥だ・・・ミスティ様にお会いしようとする人間達は霧の中で彷徨い続けるか、霧の中で足を踏み外して落ちるか、最悪ミスティ様の怒りを買ってしまえば、二度と出られなくなると伝えられているくらいなのだ・・・」
エルフ族達の間ではそのような言い伝えがあるのだった。
「神鳥ミスティ様は・・・エルフ族にとっては偉大な存在だと言う事ですか?」
ティアがそう訊ねてみると、族長はその様子を見てもしやと思った。
「まさかと思うが・・・ミスティ様に会いに行く訳ではあるまいな・・・?」
「・・・そこには、私達の探している物があります・・・そうしなければ、世界を闇から開放したいと思っています・・・」
ティアがそう宣言をすると、族長は今の言葉を聞いて驚愕した。
「世界を闇から開放・・・だと・・・?」
「はい・・・既に八つある光翼の涙を二つも手に入れているので残りの六つはまだ手に入れてはいません・・・だからこそ、私達が行かなければ、世界に光を取り戻す事はできません・・・」
ティアが、ハッキリと霧鳥と幻の渓谷に行く理由を話すと族長は彼女の言葉を聞いて驚いた。
「そっ・・・その発言は・・・エレノアの発言に似ている・・・!」
族長が、ティアがエレノアのように見えて動揺を隠せなかった。
「確かに・・・本人だったら言いそうだな・・・ティア、コイツに教えてやれよ・・・お前こそがエレノアの一族だって事を・・・」
ギルバートがそう言いながら、ティアの肩に手を置いた。
「驚くと思いますが・・・私にはエレノアの血を引いています。」
ティアがエレノアの末裔であると族長に伝えた。
「そなたが・・・いや、貴方様がエレノア様の末裔だったとは・・・確かにエレノア様と似ていらっしゃる・・・どうか、先程のような事をお許しください・・・!」
ティアの正体を知った族長は、慌てながらも謝罪をしてきた。
「構いません・・・どうか、霧鳥の渓谷について教えてください・・・」
「かしこまりました・・・それでは、お話をさせて頂きます・・・」
族長は咳払いをしてから霧鳥と幻の渓谷について話し始めた。
「・・・霧鳥と幻の渓谷とは、エルフの森の近くにある渓谷でミスティ様がいらしている場所でもありますが、向かう道のりには深い霧がかかっておりまして、足場を踏み外してしまえば奈落の底に落ちるか永遠に霧の中に彷徨ってしまうと伝えられております。」
霧鳥と幻の渓谷は深い霧がかかっているために足場も悪くて落下死する確率が高かった。
「ですが、貴方様はエレノアの血を引いた末裔・・・きっと、光翼の涙の光の魔力を感じる事ができるのであれば、ミスティ様の巣へと着けるでしょう・・・」
「教えてくれてありがとうございました。必ず、光翼の涙を手に入れます。」
話を終えたティア達が出ようとすると、族長に呼び止められた。
「お待ちください・・・やはり、貴方様が行かれるのは心配ですので・・・どうか、護衛を付けさせてもらえないでしょうか?」
そう言って、族長は部屋にある奥の扉に声をかけた。
「シルヴァーナ・・・出てきなさい。」
族長に呼ばれた事で扉が開くと、エルフの女性が出てきた。
「初めまして、私はシルヴァーナと申します。」
シルヴァーナと言う名のエルフの女性がティア達に挨拶をした。
「この者を連れて行ってください。この者は耳が良くて弓を扱えるので、周りが見えない時に役に立つと思います・・・」
「よろしく、シルヴァーナさん。」
「えぇ・・・一緒に霧鳥の渓谷に行って、光翼の涙を手に入れましょう・・・」
こうして、エルフの女性シルヴァーナが同行する事になり、霧鳥の渓谷へと向かった。
49章 霧鳥と幻の渓谷
「そろそろ、霧鳥と幻の渓谷に入る事になりますが・・・準備はよろしいですか?」
入り口の前まで着くと、シルヴァーナがティア達に確認を取った。
「よろしいですね・・・それでは、行きましょうか。」
シルヴァーナがそう言うと、ティア達はエルフの森を出て霧鳥と幻の渓谷へと足を踏み入れた。
「いいですか?深い霧がかかっているので、周りが見えにくいと思いますが・・・慎重に歩きながら気を付けて行きましょう・・・」
霧鳥と幻の渓谷に入った直後に霧がかかり、一瞬にしてティア達の周りが見えなくなった。
「・・・どう考えても、かかりすぎだろ・・・一歩でも踏み外せばアウトじゃねぇか・・・」
ギルバートがそう言うと、アランがある事を思い出してシルヴァーナに言ってきた。
「そう言えば・・・一人で旅をしている時に聞いた事があるけど、霧鳥と幻の渓谷に入れば誰かが手招きをされて抜け出せなくなる噂あるらしいけど・・・本当かな?」
「はい・・・大昔から伝説として語られていて、霧の中に現れた魔物が渓谷に訪れた人間達の前に現れて霧の中に連れ去ってしまうと伝えられています・・・」
幻と霧の渓谷に伝えられている伝説は霧の中から現れては霧の中に連れ去る魔物がいると言う伝説があった。
「魔物・・・もしかして、今でも何処かにいると言う事なのでしょうか・・・?」
「恐らくは・・・なにかを見ても聞こえても近付いてはなりません・・・」
シルヴァーナはがそう言った直後、何処からかなにかの音が聞こえてきた。
「この音は・・・まさか・・・!?」
聞こえてきたのは虫の羽音のようでアランの顔が真っ青になっていった。
「霧によって見えにくいと思いますが、古代トンボの羽音で大きくなっているようです。」
古代トンボとは、巨大なトンボのモンスターだった。
「どうやら、私達に気付いてはいなさそうなので、見つからない内に行きましょう。」
「図鑑でも視力がいいって書いてあったから、深い霧の中でも見つかりそうだね・・・今の内にここから離れなくちゃ・・・」
見つからないようにして進もうとしたが、アランは耳を塞ぎながらしゃがみ込んでいた。
「おい・・・早くしろよ・・・」
ギルバートはアランの腕を掴んで引っ張った時だった。
「・・・どうやら、気付かれてしまったみたいです。」
古代トンボはティア達がいる事に気付いて羽音が大きくなっていった。
「私に任せてください!」
シルヴァーナは羽音が聞こえる方向に石を投げて当てると、目に当たった古代トンボはフラフラと飛び回り始めた。
「古代トンボは目が弱点で少しでも触れれば、眼鏡がない人のように視界が悪くなります。」
その隙にティアは古代トンボから離れる事ができた。
「アラン、もう大丈夫だ。」
ギルバートにそう言われて、アランは安心して耳から手を離した。
「良かったな。もしも、近付いてきたらもっとモンスターを引き寄せていたかも知れなかったぞ・・・」
「・・・貴方は虫が苦手のようですね・・・それでは、行きましょうか。」
その後も、霧の中を進んで行くと、シルヴァーナが先頭で立ち耳を立てながら歩いていると、またしても別のモンスターが動いている音が聞こえてきた。
「この音は、地上に生息するモンスターのようです・・・まだ、こちらには気付いて
いませんので、静かにしながら進みましょう・・・」
ティア達にそう言うと、シルヴァーナと共に慎重に歩き出した。
「・・・なんだか、周りがよく見えなくなってきました・・・」
幻と霧の渓谷の中を進んで行く度に霧が濃くなっており、近くにいなければ何処にいるのか分からないぐらいに見えなくなっていた。
「霧が濃くなってきた・・・足元に気を付けながら歩けよ・・・?」
「はい・・・ここら辺は落下しやすい場所なので慎重に進んでください・・・」
「族長も言っていたね・・・ここは、ゆっくりと歩かないとね・・・」
ティア達は足場に気を付けながら歩き出したが、足元も霧がかかっていて見えにくかった。
「いいですか・・・ここは、慎重に歩いてください・・・僅か一歩でも踏み外して
しまえば落ちてしまう事になります・・・」
シルヴァーナは足元に注意しながらも進もうとしていた。
「・・・そんな怖い事を言われたら・・・足が、すくんで動けなくなってしまいます・・・」
ステラが、不安そうにしながらゆっくりと進んでいる時だった。
「待って・・・」
進んでいる途中でイヴが立ち止まった。
「イヴ、どうかしましたか?」
ステラが声をかけると、二人は話し始めた。
「ティア・・・あそこにいる人達って・・・」
イヴは深い霧の中で誰かを見つけていた。
「・・・誰もいないわ?」
しかし、霧がかっている中で人が見えるはずがなかった。
「そんな事はないよ・・・だって、目の前にいるのに・・・」
イヴが見ていた人物とはティアの両親だったが、どう言う訳かティア達には誰も見えなかった。
「この状態は・・・今すぐにイヴ様を止めてください!」
状況を察したシルヴァーナが声を挙げたが、イヴは目の前を両親がいる場所へと歩き始めた。
「私達から離れてはいけません!」
ギルバート達は霧の中で消えてしまわないようにイヴを押さえた。
「落ち着いて・・・お父さんとお母さんはもうこの世にいないわ・・・!」
「離して!叔父さんと叔母さんが・・・!」
イヴは振り解こうとしてくると、ギルバートとアランはなんとか押さえ込んだ。
「イヴ・・・目を覚ましてください・・・!」
その時、ステラが足場を踏み外してしまった。
「ステラ!」
ティアは急いでステラの腕を掴んだが、引っ張られるようにティアも落下しそうになった。
「くっ・・・!」
ティアは直前に崖を掴んだ事で落下せずに済んだ。
「ティア・・・!」
ステラの腕をもう片方の手で掴んでいるためか、片手だけの状態で上がる事は不可能だった。
「ティア・・・アタシが引っ張ってあげるから・・・だから、頑張って・・・!」
イヴは正気に戻ったのか、ティアの手を掴んで引っ張り上げようとするとギルバート達も協力がしてティアとステラは救出する事ができた。
「良かった・・・貴方方が落下せずに済んで・・・」
「えぇ・・・まさか、叔父さんと叔母さんの幻が見えたなんて思いもしなかったよ・・・」
ティアがそう言うと、イヴは両親の幻が見えた理由について言ってきた。
「もしかしたら・・・伝説になっている魔物の正体じゃないのかな・・・?」
「恐らくですが、そのようだと思います・・・大事な方々の幻を見せられた人間達は近付こうとした事によって、霧の中を永遠に出られなくなるか崖から落下して死んでしまう事によって、幻と霧の渓谷に魔物が住んでいると伝えられたのかも知れませんね・・・」
シルヴァーナは幻と霧の渓谷の魔物の正体がその人物にとって大事な人間の幻だったのだと考えられていた。
「ステラ、ごめんなさい。」
イヴは怖い目に合わせてしまった事をステラに謝罪した。
「・・・正気に戻ってくれて良かったです。」
こうして、ティア達は足場が危険な場所を渡った後でも濃い霧の中を進んで行った。
50章 神鳥ミスティ
しばらく進んで行くと、霧が徐々に晴れてきていた。
「・・・なんだか、霧が晴れてきたな・・・」
「はい・・・ミスティ様の巣には霧がかかってはいませんので・・・」
霧のかかっていない場所に到着すると、神鳥ミスティの巣を見つける事ができた。
「あそこにおるのが、神鳥ミスティ様です。」
霧の中から現れたのは美しい白い羽毛をした鷲のモンスターだった。
「でも・・・なんだか、怒っているように見えるけど・・・?」
イヴの言う通り、神鳥ミスティはこちらを睨んでいるように見えた。
「あの様子を見りゃあ・・・どうやら、俺達が巣を荒らしに来た人間だと思っているように見えるぜ・・・」
「多分そうだと思うよ・・・あの様子を見れば、今にも襲いかかってきそうだよ・・・」
そう言っていると、神鳥ミスティの巣の中に光翼の涙がある事に気付いた。
「見て・・・巣の中に光翼の涙があるわ・・・」
「ここは、私が取って参りますので、ここでお待ちになってください・・・」
シルヴァーナが光翼の涙を取りに行こうとすると、神鳥ミスティが翼を広げて威嚇をしてきた。
「駄目です・・・完全に私達を敵だと思っています・・・!」
その直後、神鳥ミスティが巣の中から飛び出して襲いかかってきた。
「やっぱり、こうなったか・・・!」
ティア達は武器を手に取ると、神鳥ミスティが攻撃態勢に入った。
「ミスティ様は飛行力と機動力が高く、力もありますので苦戦を強いられることになってしまいますが、ご気を付けながら戦ってください・・・!」
神鳥ミスティが攻撃をしようと飛びかかってきた。
シルヴァーナは手にした弓で矢を放ったが、神鳥ミスティには当らなかった。
「避けないと、鋭い爪で深い傷を負います!」
その直後、神鳥ミスティがシルヴァーナに向けて爪で攻撃を仕掛けてきた。
『神風烈翔!』
間に入ったギルバートが荒々しい神風の如く素早い斬撃を繰り出してシルヴァーナを守った。
「危なかったな・・・アンタはアイツ等と後ろで援護してくれ。」
「はい・・・私はお二人と一緒に後ろで戦いますので・・・前衛の皆様は油断なさらず戦ってください・・・」
そう言って、シルヴァーナはステラとアランのいる後衛に移動した。
「それじゃあ、前衛で戦う俺達は気を付けながら戦うぞ。」
ギルバートはティアとイヴに言うと、神鳥ミスティは羽を幅か足せて竜巻を作り出した。
「ミスティ様が竜巻を作って攻撃をしてきました・・・巻き込まれないように避けてください!」
ティア達は、神鳥ミスティが羽を羽ばたかせて作り出した竜巻を避けた。
「今度はこっちにも来ました!」
竜巻はステラ達の方にも向かってきてが、とっさに回避した事で巻き込まれずに済んだ。
「危なかったですね・・・もう少しで竜巻に巻き込まれてしまうところでした・・・特に空を飛ばれたりでもすれば、もっと厄介になるかもしれません・・・」
シルヴァーナがそう言った直後、神鳥ミスティは羽を羽ばたかせ上空へと飛び上がろうとした。
「そろそろ、飛ぶのではないかと思いました・・・飛び上がる前に倒さなければ倒すどころか戦う事が難しくなってしまいます・・・!」
そう言って、シルヴァーナは狙いを神鳥ミスティに狙いを定めると技を繰り出した。
『ファルコンショット!』
シルヴァーナが矢を放つと、隼の如く素早い矢が神鳥ミスティに目掛けて飛んで行った。
「きゃあ!」
しかし、神鳥ミスティが飛び上がった事で風圧が発生し、放たれた矢は強風で舞い上がって地面に刺さった。
「空へと飛んで行ってしまいました・・・」
「不味いですね・・・このままでは私達の方がやられてしまいます・・・」
神鳥ミスティは空高く飛び上がると、今にも襲いかかって来そうな予感がしていた。
「・・・警戒をしていた方がいいぜ・・・」
そう言った直後、神鳥ミスティが地上へと目掛けて急降下してきた。
「空にいられては前衛の方々の攻撃が届きません・・・こうなれば、地上に落とすしか方法がありませんね・・・!」
シルヴァーナがそう言うと、ティアは上空にいる神鳥ミスティに目掛けて魔法を唱えてみた。
『ルミシャネス!』
ティアは光の魔法を放ってみたが、神鳥ミスティは強力な光の魔法を避けた。
「大きな体をしているのに、魔法を避けるなんて・・・」
「今度は僕がやってみるよ・・・」
そう言って、アランは魔法を唱えようとすると神鳥ミスティが急降下をして攻撃を仕掛けてくると、またしても空へと舞い上がって行った。
「・・・攻撃を当てられないように、空から攻撃をしているみたいだよ・・・」
既に詠唱を終わらせていたアランは立ち上がってから魔法を唱えてみたが神鳥ミスティは簡単に避けられてしまった。
「駄目か・・・やっぱり、僕の魔法も避けられているみたい・・・!」
しかし、神鳥ミスティは風の刃を回避していしまっていた。
「ティア、今度は僕と一緒に魔法を唱えてくれないかな?」
「同時に魔法を唱えるのね・・・でも、貴方の言う通りにやってみせるわ・・・」
ティアはアランに言われた通りに二人で一緒に魔法を唱えた。
『『ルミシャネス!』』
ティアとアランは同じタイミングで唱えると光の魔法が放たれた。
「ステラ、シルヴァーナさんに支援魔法をかけて・・・」
光の魔法が外れると、アランは支援魔法をシルヴァーナにかけてもらうように頼んだ。
「分かりました・・・それでは、私は技の準備をいたします。」
ステラは彼の考えを理解したかのように詠唱を始めると、シルヴァーナは神鳥ミスティに向けて狙いを定めてか矢を放ち始めた。
「だったら、俺等も手伝ってやるか・・・」
「アタシ達も協力をしないとね・・・」
ギルバートとイヴも神鳥ミスティに向けて剣と双剣を振るった。
『『天竜翼波!!』』
二人は魔力を込めてから思いっきり剣を振るうと、天空に舞う竜が竜翼から裂けるような斬波が神鳥ミスティに目掛けて放たれた。
「少しでも、狙いやすくするために体力を削った方がいいかも知れないな・・・」
シルヴァーナが狙いを定めるまで、ティア達は斬波と魔法を放ち続けた。
「・・・あと少しで狙いが定まります・・・皆さん、頑張って下さい・・・」
シルヴァーナは狙いを定め続けていると、詠唱を終えたステラがシルヴァーナに支援魔法をかけた。
「これだけ、かければ大丈夫です・・・」
ステラの支援魔法を何度も唱えて、シルヴァーナのパワーを限界まで上昇させた。
「ありがとうございます・・・これなら、命中させる事ができそうです・・・」
神鳥ミスティが急降下してきたタイミングでシルヴァーナは狙いを定めてから矢を放った。
「申し訳ありませんが・・・これ以上、戦闘を長引かせる訳にはいきませんので・・・!」
シルヴァーナの放った矢は突風を伴う速さまで加速させて神鳥ミスティの胸に命中した。
(支援魔法の効果もあって、矢の威力が増したのか・・・)
矢が命中した神鳥ミスティはそのままティア達の前に不時着した。
「・・・どうやら、微かに息がありそうです・・・いつ、襲って来るのか分からないので仕留めておいた方がいいでしょう・・・」
シルヴァーナがそう言うと、ティア達が神鳥ミスティの近くに寄った。
「ティア様?どうかなさいましたか?」
「矢が胸に刺さっていて、急所が外れているから致命傷にはなっていなさそうね・・・」
矢が刺さっている部分を確認すると、ティアは慎重に矢を抜こうとした。
「・・・痛いけど、我慢して・・・」
ティアは神鳥ミスティを苦しませないと慎重に矢を抜いた。
「ステラ、お願い・・・」
ティアがステラを呼ぶと回復魔法をかけ始めた。
『『ヒーリラ!』』
ティアとステラの回復魔法によって、神鳥ミスティの傷は徐々に癒えていった。
「襲いかかってきたモンスターの手当てをするとは・・・流石はエレノアの血を引いた末裔であるお方・・・実に心優しい人間でいらしているのですね・・・」
シルヴァーナがそのように関心をすると、神鳥ミスティの傷は完全に回復した。
「・・・私達は貴方を倒しに来た訳ではないの・・・だから、巣の中に光っている物があるからそれを譲ってくれれば私達は帰るわ・・・」
ティアがそう言うと、神鳥ミスティは巣の中にある光翼の涙を嘴で加えてきた。
「ありがとう。」
ティアは神鳥ミスティから光翼の涙を受け取ると、そのままティアの中へと吸収されていった。
「三つ目の光翼の涙を手に入れましたね・・・しかし、ミスティ様はなにかを守ろうとしているように見えたのは気のせいだったのでしょうか・・・?」
シルヴァーナは戦闘中に疑問に感じており、神鳥ミスティが襲いかかってきたのは理由があったからではないかと思っていた。
「・・・きっと、ミスティ様は幻と霧の渓谷を守りたかったのだと思います・・・」
ティアが眺めている方向を振り向くと、夢の世界のような景色が広がっていた。
「これは・・・まるで、夢の中にいるようで綺麗に見えます・・・」
「ここ以外は霧が濃くて全く見えなかったけど・・・ここからだと、霧がかかっていないここなら夢のような景色が見る事ができたと言う事ね・・・」
ティア達は夢の世界に見える綺麗な景色を眺めている時だった。
「流石はエレノアの一族・・・ミスティ様を殺さずに手当てをして和解するとは・・・」
聞き覚えのある声を聞いたアランが振り向くと、ダチュリエルが笑みを浮かべながら立っていた。
51章 憧れの教師の正体
「ダチュリエル先生?どうして、ここに・・・?」
「いやはや・・・案の定、三つ目の光翼の涙を手に入れる事ができたようですね・・・」
「どうして光翼の涙がここにある事を知っているのですか・・・?」
アランが恐る恐る聞いてくると、ダチュリエルは不敵に笑みを浮かべながら言ってきた。
「・・・アラン君には教えてはいませんでしたが・・・せっかくここまで来ましたので
よければ、私の正体について教えてあげましょう・・・」
そう言いながら、ダチュリエルは自分の正体について話し始めた。
「私はノヴェフロル学院の教師・・・しかし、それは仮の姿であり本当の正体はデスドゥンケルハイト軍の幹部でもある魔道士でもあります。」
「ダチュリエル先生が・・・デスドゥンケルハイト軍の魔導士・・・?」
彼の言っている事はアランにとっては信じられない事だった。
「そんな・・・ダチュリエル先生がデスドゥンケルハイト軍の一員だったなんて・・・!」
アランは驚きを隠せずに驚愕をしていた。
「嘘ではありませんよ・・・私は事実を教えたまでなのですから・・・」
ダチュリエルがそう言うと、神鳥ミスティを見て言ってきた。
「それにしても、襲いかかってきた神鳥ミスティを仕留めずに手当てをするとは・・・やはり、エレノアの血筋を引く末裔なら当然の事と言うべきですね・・・」
「ティア・・・この男は貴方がエレノアの末裔だって知っているよ・・・」
イヴが言うと、ティアはいつ気付かれていたのか思い出してみた。
「もしかして・・・貴方と初めて出会った時から気付いていたの?」
「正解です・・・初対面の際に気が付いていました・・・」
以前、ダチュリエルと出会った遺跡の時からティアの正体について既に感づいていた。
「まさか、あのお方が仰っていられた少女と偶然、出会う事になるとは思いもしませんでした。」
そう言ってくると、ステラがダチュリエルと別れる直前ティアに質問をした事を思い出した。
「・・・ティアに質問をしたのも、その町に行く事を分かっていたからですか?」
「はい・・・まさか、監獄にそんな人がいたなんて思いもしませんでしたが・・・その人を救うために自らが監獄に入るなど・・・血筋は争えないと言う事ですね・・・」
監獄に彼女にとって、大切な人が牢獄に入っていた事は知らず、彼女自らが監獄に出向いて収監されるとはダチュリエルは思いもしないようだった。
「・・・」
イヴはダチュリエルの言葉を聞いて、ただ無言で拳を握っているだけだった。
「たった一人の人間を救い出すために、死ぬ覚悟をして監獄に出向いて来るとは・・・いやはや、死んでいるのか不明なのに投獄されに行くなどと・・・自身の命が惜しくはないように見えますね・・・」
ダチュリエルが冒涜するかのように言ってくると、イヴが怒りの表情で睨みつけてきた。
「アンタ・・・ティアがどんな思いで拷問に耐えてまでも、アタシを助けに来たのか分かっているの・・・!」
「知りませんね・・・ともかく、あの町に反乱軍が潜んでいたとは思いもしませんでしたし・・・まぁ、ある人物の情報提供で酒場を調べてみた結果・・・反乱軍の一員を捕らえる事ができましたからね・・・」
ティア達が町を出た後で、酒場を襲撃されて反乱軍の一員が捕まっていた。
「反乱軍にはケリー君もいたようですが、本部に帰ってしまったので巻き込まれなかったのは良かったと思いました。」
「・・・そう言えば、町を出る三日前に本部に帰ると言っていたわ・・・」
酒場が襲撃される三日前にケリーは本部に帰還していたのだった。
「私達が出た後に反乱軍の人達が捕まっていたなんて・・・」
ステラの様子を見たダチュリエルは考えてから言ってきた。
「その時間帯は・・・貴方方が町を出た直後だと思いますね・・・」
ティア達が町を出た後で酒場を襲撃されているようだった。
「そんな・・・ですが、いつの間に知られていたのでしょうか・・・?」
「・・・我々の仲間が情報を提供してくれたからです。」
「仲間だって?まさか、反乱軍の中に紛れ込んでいたとでも言うのかよ?」
ギルバートがそう言ってきたが、ダチュリエルはなにも答えなかった。
「さぁ・・・どうでしょうかね?もしかしたら、貴方達は出会っていたのかも知れませんよ・・・?」
ダチュリエルは意味深な口調で言ってきた。
「まさか、今ここで俺達とやるつもりか?」
「いいえ・・・今回は戦う気がないのでこれで失礼させていただきます・・・それと、アラン君・・・仮に教師として、君がどれほど成長したのか見せてもらうとしましょう・・・」
ダチュリエルはそう言ったが、アランは呆然としたままなにも喋らなかった。
「未だに信じられないようですね・・・気持ちは分かりますが、事実を受け入れなければいけませんよ・・・」
そう言ってから、ダチュリエルは転移魔法を唱えた。
『テレポート・ドライブ!』
ダチュリエルが転移魔法を唱えると、魔法の力によってこの場から一瞬で転移した。
「行っちまったか・・・まぁ、今は見逃されただけでいいとするか・・・」
ギルバートが先程、ダチュリエルが言っていた件について言ってきた。
「それにしても、なんで酒場が反乱軍の拠点になっていた事を知っていたんだ?内通している奴がいるのかも知れないな・・・?」
ギルバートがそう聞いたがアランは呆然としていた。
「アラン・・・アラン!」
何度も声をかけると、アランは我に返った。
「ゴメン・・・ちょっと、先生の事を考えていたんだ・・・」
アランは未だにダチュリエルの正体が信じられずにいた。
「全く・・・お前はアイツの事を尊敬していたのか?」
「うん。僕の担任の生徒だったからね・・・ダチュリエル先生は僕の憧れていた先生だったから・・・」
「憧れの先生?」
「・・・それは落ち着いたら話すよ・・・僕達もここから出ようか。」
アランがそう言うと、神鳥ミスティは背を向けてきた。
「どうやら、背中に乗るようにと言っているようです・・・お言葉に甘えて、エルフの森まで送ってもらいましょう・・・」
こうして、ティア達は神鳥ミスティに乗せてもらいエルフの森へと帰還した。
「どうやら、三つ目の光翼の涙を手に入れたようですな・・・」
「はい。シルヴァーナさんのご協力もあって三つ目の光翼の涙を手に入れる事ができました。」
「族長様、ミスティ様も気に入られていますので、今後は仲良くやっていけると思います。」
シルヴァーナが、そう言うと神鳥ミスティは鳴き声を挙げた。
「そうだな・・・今日はゆっくりと休んで行ってください・・・我々もご歓迎をしますので・・・」
体を休めたティア達は、次の日にシルヴァーナと別れてエルフの森を後にした。
52章 アランの憧れていた人物
ここは、ラヴィレイヘヴン・・・そこにある城の中にある部屋で会話があった。
「なるほど・・・三つ目の光翼の涙を手に入れた奴等を見逃したと言う事か・・・」
玉座のある部屋でソルとダチュリエルの報告をしている最中だった。
「はい・・・まぁ、いずれは死ぬ事になるので問題はないでしょう・・・」
ダチュリエルがそのように言ってくると、ソルは確かめるように質問をしてきた。
「一つ聞くが・・・なぜ、あの人間達を殺さずに見逃した?」
「・・・ただ様子を見に来ただけでしたので・・・それに、殺せと命令されてはいなかったのはどう説明しますか?」
ダチュリエルがそう言うと、ソルは少し黙ってから言ってきた。
「もういい・・・だが、俺やあのお方の命令が無くても戦え。」
「分かりました・・・それでは失礼いたします・・・」
ダチュリエルが部屋を出ようとすると、なにかを思い付いてソルに聞いてきた。
「そう言えば、貴方はエレノアの末裔である少女の両親を殺したようですね?」
ダチュリエルがそう聞いてくると、ソルは平然とした様子で聞いた。
「・・・なぜ、そのような事を聞く必要がある?」
ソルがそう訊ねると、ダチュリエルは平然とこう答えた。
「少々、質問しただけです・・・あの少女は両親の仇を討つ事も旅の目的としているようですが・・・貴方は殺してしまった夫婦と同じように殺すつもりなのですか?」
ダチュリエルの質問に対して、ソルはなにも答えなかった。
「・・・その様子だと、殺してしまった事を悔やんでいるようですね。」
「なにを言っている?俺は初めからあの夫婦を殺すつもりはなかっただけだ・・・家の中に潜んでいた人間が庇おうとしなければ、一緒に死なずには済んだはずだ・・・」
ティアの両親を殺してしまったのは、本気ではなく思わぬ出来事が生じたと言うのだった。
「なるほど・・・つまり、最初からその夫婦を殺す気はなかったと・・・それが、貴方様のお答えですね?」
「あぁ・・・もういいだろう・・・」
ソルの答えを聞いたダチュリエルは部屋を出て行った。
「・・・いきなり、意味深い質問をしてくるから、どのように答えるか分からなくなったが・・・あのような答えを出すしかなかったぞ・・・」
ソルが、そう言うと部屋の中にあった玉座の前に何者かが座っている事に気づいた。
「・・・いつの間に、いらしていたのですか?」
ソルが振り返って玉座の方を見ると、玉座に座っている人物がいた。
「ソル・・・デスドゥンケルハイト軍に脱走者が出た・・・」
「脱走者・・・一体、どのような人間なのでしょうか・・・?」
玉座に座る人物は闇の威圧感を放っていた。
「次に向かう大陸は何処に行くか決めているの?」
一方、エルフの森を後にしたティア達の方はと言うと地図を確認していた。
「えぇ・・・この大陸に向かおうかと思っているの。」
そう言って、次に向かう大陸を指差した。
「その大陸だね。幸い、港もある事だし・・・次の大陸に向かう船に乗ろうか。」
次に向かう大陸を決めたティア達は港へと訪れる事にした。
「着いたぞ。ここの船に乗って、次の大陸に向かおうぜ。」
ティア達は港に着くと、ステラがある事が気になって聞いてきた。
「そう言えば、前の港ではデスドゥンケルハイト軍がいましたが大丈夫なのでしょうか?」
ステラが前の大陸にある港にも、兵士達がいるのではないかと思っていた。
「大丈夫だよ。デスドゥンケルハイト軍がいない普通の港だからすぐに船に乗れるぞ。」
そう言われて、見て見ると兵士達が何処にも見当たらなかった。
「ここにいる奴等も怪しくなさそうだし・・・気にせずに船に乗れるぜ。」
「そうですか・・・それなら、安心して船に乗れます。」
そう言って、ティア達は船着き場に向かった。
「・・・着いたのはいいけど、どうやって船に乗るつもり?」
船着き場に着いたが、数多くの兵士達が取り締まっているようだった。
「やっぱり、兵士達がいました・・・あの人達はなにをしているのでしょうか・・・?」」
ティア達は完全に闇の帝国に目を付けられているのだと感じられた。
「まぁ・・・何度も敵対をしていたら目を付けられるだろうな・・・しかも、エレノアの血を引いた一族だと知れば血眼になるのも当たり前か・・・」
ギルバートがそう呟くと、これからどうするかティアに訊ねた。
「それで、また戦ってから船に乗るつもりか?」
「いいえ・・・ここは、人が多そうだから巻き込む訳にはいかないわ・・・」
以前に訪れた港よりも人間達の数が多く、戦おうとすれば関係のない人間達も
巻き込んでしまう程だった。
「ティアの言う通りね・・・ここは、変装して船に乗るのはどうかな?」
イヴはそのように提案したが、ギルバートは首を横に振って答えた。
「いや・・・アイツ等に限って、そう言うのは有り得なさそうだぜ・・・」
「そうだね・・・どんなに変装をしても、隅々までチェックされるからバレないとは限らないみたいだよ・・・」
兵士達による厳しいチェックがあるので、見つからずに船に乗るのは不可能だった。
「それじゃあ、どうやって船無しで次の大陸に向かうつもりなの?」
どうするのか聞くと、アランが言ってきた。
「大丈夫だよ。僕の転移魔法を使えば目的の大陸に着けるよ。」
アランは転移魔法が使えるようだった。
「転移できる場所も調べておいたから、万が一なにかがあっても安全な場所に避難をさせる事だってできるよ。」
アランが一人で旅をしていた時に、安全に転移が可能な場所を色々と調べていた。
「そうと決まれば、港に出て転移魔法を唱えよう。」
そう決めて、ティア達は港から離れた場所へと移動した。
「これだけ離れていれば、魔法を唱えても気付かれないはずだ・・・頼むぞ。」
早速、アランは転移魔法を唱えた。
『テレポート・ドライブ!』
アランが転移魔法を唱えると、ティア達は目的の大陸へと転移した。
「・・・着いたよ。」
ティア達が転移した場所は誰もいない平原だった。
「どうやら、ちゃんと目的の大陸に転移できたみたいだね・・・確か、ピラミッドがあったと思うけど・・・」
ティア達が転移した大陸にはピラミッドがある砂漠の大陸だった。
「ピラミッド?お父さんから聞いた事はあったけど、本当にピラミッドのある大陸にいるのね。」
ピラミッドとは、三角形の形をした遺跡で砂漠にあると伝えられていた。
「確かに・・・そこだったら、光翼の涙が隠されていそうだね・・・」
アランはピラミッドの中に四つ目の光翼の涙が隠されていると確信した。
「デスドゥンケルハイト軍なら、そんな場所に隠すのも当然だね。」
そう思っていると、アランがなにかを思う表情になっていた。
「アラン、まだダチュリエルの事を考えているのか?」
「うん・・・やっぱり、ダチュリエル先生の言っていた事がどうしても信じられなくて・・・」
アランはダチュリエルの正体が未だに信じられないようだった。
「いい加減に理解しろよな?あんな奴等に憧れるのも良くないと思うぜ?」
ギルバートがそう言ったが、アランは思い詰めた様子で言ってきた。
「ゴメン・・・ちょっと、一人にさせてくれないかな・・・?」
そう言って、アランはその場から離れていった。
「ちょっと待て、俺も一緒に連いて行かせてくれよ。」
「分かったよ・・・近くにいるから、君達は待っていてくれないかな・・・」
二人はティア達を残して、離れた場所で話し合いをする事にした。
「ここなら話ができそうだな・・・」
少し離れた場所に移動した二人はここで会話を始めた。
「さっきは悪かったな・・・あんな言い方をしちまって・・・」
「別にいいよ・・・僕も憧れていた先生がデスドゥンケルハイト軍だったなんて、信じられなかったから動揺してしまって・・・」
「・・・なぁ、アイツの正体を知ってもまだ憧れを持てるのか?」
ギルバートがそう聞いてくると、アランは「うん・・・」と答えた。
「ダチュリエル先生がデスドゥンケルハイト軍の一員だとしても、今でも憧れの先生だって思っているよ。」
「そうか・・・正体を知っても、憧れ続けているんだな・・・」
「ダチュリエル先生は生徒達を大事に思ってくれていて、誰でも優しく接してくれていたから憧れの先生だって言われていたよ。」
ダチュリエルの評判は全校生徒だけでなく教師達にも尊敬されているぐらいだった。
「アリアちゃんもケリーも分からない事があったら色々と教えてくれていたよ・・・それなのに、ダチュリエル先生の正体を知ったらきっと驚くだろうね・・・」
アランが全生徒や教師がダチュリエルの正体を知った時の反応を想像した。
「そうだったのか・・・それで、憧れの教師になるために、世界中を旅していると言う事だよな?」。
「・・・どうして、僕が世界中を旅しているのかを分かっていたんだね・・・」
「俺達は同じ村で育った幼馴染だ。友人がなにを思っているのか理解するのも当たり前だろ?」
そのように言われたアランは「そうだね。」と笑みを浮かべた。
「君にそんな事を言われるなんて・・・まぁ、小さい時からずっと一緒だったからお互いに分かるようになったのかも知れないね。」
ギルバートとアランがお互いに笑い出した。
「それじゃあ、落ち着いた事だし・・・そろそろ、皆の元に戻ろうかな。」
「あぁ、アイツ等にも心配させちまったから謝った方がいいぞ。」
話を終えてからティア達の元に戻ると、アランは心配をさせてしまった事を謝罪した。
「そうなの・・・私達はもう心配していないから気にしないで・・・」
「本当にゴメンね・・・それじゃあ、ピラミッドのある砂漠に向かおうか・・・」
こうして、ティア達は四つ目の光翼の涙がある砂漠を目指して歩き始めた。
53章 それぞれのキャンプ会話
何処かにある浜辺に一人の兵士が打ち上げられていた。
「・・・ここは?」
兵士が起き上がって、浜辺を見回しているとなにかを思い出してきた。
「そうだ・・・ラヴィレイヘヴンから逃げ出そうとして・・・他の兵士達に追われて・・・」
どうやら、兵士はラヴィレイヘヴンから脱走しようとしたが、発覚した事で兵士達に追われていた事を思い出した。
「追い詰められた私は覚悟を決めて海の中に飛び込んで・・・それで、この浜辺に打ち上げられたのか・・・」
兵士はこれまでの事を思い出してから立ち上がった。
「・・・だが、奴等は私の事を探しているのかも知れん・・・一刻も早く、逃げ出さなければ・・・あの部隊も既に探し始めているはずだ・・・」
そう言って、兵士は自分の格好を見た。
「・・・この格好では怖がられてしまう・・・やはり、外しておくべきか・・・」
今の格好では不味いと思った兵士はその場で鎧を脱ぎ捨てた。
「これでいい・・・後は追っ手から逃げなければ・・・途中で武器や装備品も手に入れる事ができるといいのだが・・・」
兵士の正体はヘイゼル・グラウでそのまま追っ手から逃げるように浜辺を歩き出した。
「・・・すっかり、夜になっているね・・・」
この大陸に着いてから時間が経過し、日が暮れて夜になった事でティア達はキャンプをしていた。
「思い出すね・・・叔父さんと一緒にこうやって、キャンプをした事を・・・」
「えぇ、あの時は数日間の稽古をするためにしていた事は覚えているわ。」
ティアとイヴは過去にキャンプをしていた時の事を思い出した。
「その時って・・・小さい頃からしていたのか?」
「勿論。まぁ、キャンプと言っても村の近くでやったけどね。」
「キャンプをする時に火を起こして、料理をした事もあったわ。」
ティアとイヴがそう言うと、過去にキャンプをしていた時の事を思い出した。
『火を起こす方法を教えるからよく見ていろ・・・』
父親は幼少のティアとイヴに木の枝と太い木を使って火を起こす事を教えていた。
『枝を使って火を起こすのね・・・』
『そうだ。これをやっている内に、煙が上がって火を付ける事ができる・・・』
父親がそう言っていると、こすった場所から煙が出てくると火が付いた。
『凄い・・・こすっただけで火が付くなんて・・・信じられないよ。』
『結構大変だと思うが、慣れてくれば簡単にできる・・・ちゃんと、見せるために昼間から火を起こしてみたが、夜になればお前達で起こしてみろ。』
それから、二人は父親に稽古をしている内に夜になった。
『丁度、夜になってきたな・・今度はお前達で火を起こしてみるんだ。』
父親がそう言うと、ティアとイヴはお互いに火を起こし始めた。
『難しいな・・・そっちの方はどうなの?』
『中々・・・火が付かない・・・』
二人がやっても火を起こす処か、一向に煙が上がる事はなかった。
『お前達にはまだ難しかったようだな・・・何度かしている内に、煙を出せるようになると思うから無理をせずに頑張るんだぞ・・・』
そう言って、父親は火を起こす魔道具を使って焚き火に火を起こした。
「それから何度かやっている内にアタシ達は火を付けられるようになったのよね・・・」
「最初の頃は手が疲れて大変だったけど・・・やっている内に慣れていって火が付けられるようになったわ。」
何度もキャンプをした事でティアとイヴは自分でもキャンプができるようになった事を思い返しながら振り返ってみた。
「そう言えば、俺達もキャンプをした事があったよな?大人に見つからないようにやった事があるだろ?」
ギルバートがキャンプについて言ってくると、アランは苦笑いをしながら思い出してみた。
「そっ・・・そうだね・・・なんだか、懐かしいな・・・」
アランの引きつっている顔を見て、ステラが気になって聞いた。
「アラン、あまり思い出したくなさそうですが・・・なにかあったのでしょうか・・・?」
ステラがそう聞いてくると、アランはあまり思い出したくなさそうに言ってきた。
「僕達がキャンプをした時は色々と大変だったからだよ・・・」
それは、ギルバートとアランが八歳の時だった。
『・・・本当にここでキャンプをするの・・・?』
『あぁ・・・ここなら誰にも気付かれずにキャンプができるぞ・・・』
ギルバートがそう言いながらキャンプの準備を始めたがアランは心配に思っていた。
『でも、ここって村長の家の裏庭だよね?こんな所でキャンプなんてしたら見つかると思うよ?』
ギルバートは誰にも見つからないようにと、村長の家にある裏庭を選んでキャンプをしようとアランを誘っていた。
『大丈夫だって、明日の昼までに帰って来ないから大丈夫だよ・・・そんな事より、ちゃんとキャンプをするような物を持ってきたのか?』
『うん・・・食べ物少しだけど・・・』
そう言って、アランは持ってきた食料を見せた。
『そうか・・・それじゃあ、火を起こして食べようぜ。』
『えっ?でも、子供が火をつけた事がバレたら怒られちゃうよ?』
『大丈夫だって・・・最近、お前は魔法が使えるようになったって言っていただろ?その魔法を使って火を点けてくれよ?』
ギルバートはそう言ってきたが、アランは不安そうに言ってきた。
『だけど、まだ覚えたばかりだよ?それに、魔力の調整も難しいから暴走するかも知れないよ?』
『ちゃんと、水の入ったバケツも用意しているから心配するなって・・・』
彼等の近くには水の入ったバケツが置かれていた。
『・・・本当にそんな事をしていいのかな・・・?』
『大丈夫だって、火事になるような事があっても水の魔法で消せばいいんからな・・・バレても、知らないフリをすれば大丈夫だからな。』
アランは心配に思いながらもギルバートに言われた通りに集めた枝に向けて炎の魔法を唱えた。
『イグフレミア!』
アランが炎の魔法を唱えた事で集めた枝に火を点けた。
『これで、手間かけずに火を付けられたな・・・後は、お前の持ってきた食い物を
焼くだけだな・・・』
そう言って、ギルバートはアランの持っていた食料を枝に刺して焼こうとした時だった。
『ヤバっ・・・!』
ギルバートが食料を焼こうとして火に近づけた途端に枝が折れて焚き火の中に落ちてしまった。
『・・・食べ物が落ちちゃったね・・・これじゃあ、食べられないよ・・・』
『仕方ないな・・・こうなったら、焚き火だけでも楽しむか・・・』
そう言って、ギルバートはアランと共に焚き火をする事にした。
「・・・その時の煙が火事だと勘違いされて見つかった時には大変だったよ・・・」
過去の事を語るアランにギルバートは「そうだったな・・・」と思い出したかのように言ってきた。
「しばらくしたら、煙を見た人が家事だと思われて大騒ぎになったんだよ・・・」
「そうだった・・・その御蔭で子供が火遊びをしていると思われて、お前の母さんや帰って来た村長に叱られたんだったな・・・」
ギルバートがそう言うと、アランは思い出したくなさそうに頷いた。
「俺だって、ああなるとは思わなかったからしょうがねぇだろ・・・」
「全く・・・そもそも、ギルが勝手にキャンプに誘うからあんな事になったんだよ・・・」
過去の事を思い出したギルバートにアランが呆れた表情で見つめた。
「・・・皆はそう言う風にキャンプをしていたのですね・・・」
ステラはティア達のキャンプの話を聞いて自分も言ってきた。
「そう言えば、ステラは旅に出る前にキャンプをした事がなさそうだね・・・」
「・・・私はティア達と出会うまでは一度もキャンプはした事はありませんでした・・・
ですが、旅を初めてから何度もキャンプをしている内に色々と学ぶ事ができました。」
ステラもティア達の旅に同行を始めてからキャンプの事を知る事ができていた。
「そうね。ステラも初めて野宿をした時よりも慣れているように見えるわ。」
ティアがそう言うと、ステラは「はい・・・」と答えた。
「・・・もしも、この旅がずっと続いていたらいいのに・・・そうしたら、綺麗な夜空が
見られると思います・・・」
そう言って、ステラが夜空を見上げると綺麗な夜空が広がっていた。
「そうだな・・・だが、ずっと旅なんかしていたらデスドゥンケルハイト軍を倒す事ができないぞ?」
「そうでした・・・」
「まぁ・・・旅が終わってもいつでも見られるからな・・・それじゃあ、飯にしようぜ。」
こうして、ティア達はキャンプの話題に盛り上がりながら夕食を食べた。
54章 ヘイゼルの追手
「・・・ここには、誰も住んではいないようだな・・・」
一方、森の中にある空き家に誰かが入っていた。
「少々錆びているが・・・武器が置いてあって良かったぞ・・・」
それは、脱走兵のヘイゼルであり、空き家を捜索した結果古びた斧を見つけた。
「とりあえず、身を守る為にもこれを持って行くとしよう・・・」
錆びた斧を手にしたヘイゼルは空き家を出ようとした時だった。
「・・・折ってか・・・まさか、暗殺部隊か・・・!」
ヘイゼルの前に現れたのは暗殺者の格好をした人間達だった。
「逃げられると思ったか・・・我が暗殺部隊を舐めんじゃないぞ・・・?」
暗殺者達の間に現れたのは暗殺者達のリーダーらしき男だった。
「私を始末するために暗殺部隊を差し向けて来るとは・・・!」
「あぁ・・・裏切り者が一人も逃がさないように命令されているからな・・・そんな事より、脱走者のお前を始末させてもらおうとするか・・・」
暗殺者のリーダーがそう言うと同時に、周りにいた暗殺者達が一斉に襲いかかってきた。
「くっ・・・!」
ヘイゼルは逃亡の疲れが出ていたのか、攻撃をする暇も無く襲いかかってくる暗殺者達の攻撃を避けるしかなかった。
「その様子だと、俺が出る幕までもないようだな・・・」
そう言って、ヘイゼルの様子を見て判断し部下に任せる事にした。
(駄目だ・・・相手の数が、多すぎる・・・!このままでは持ちそうにないようだな・・・!)
暗殺者達の攻撃を避け続けていたが、次々とヘイゼルに無数の傷ができていった。
「・・・そろそろ、トドメを刺せ・・・」
「「はっ!」」
暗殺者のリーダーの命令で暗殺者達は、トドメを刺そうとヘイゼルに攻撃を仕掛けた。
「ふんっ!」
ヘイゼルはとっさの判断で斧を振るったが、暗殺者達は距離を取って避けた。
(・・・今なら逃げられる・・・!)
その隙にヘイゼルは急いでその場から離れて行った。
「追え・・・逃がすな・・・」
リーダーの命令で暗殺者達はヘイゼルを追いかけ始めた。
「はあっ・・・はあっ・・・!」
ヘイゼルは暗殺者達から逃げ続けて、なんとか撒く事ができた。
(なんとか逃げ切れたが・・・何処から見ているか分からん・・・)
逃げ切れたのはいいもの、暗殺者達は何処に潜んでいるのか分からなかった。
(・・・警戒をしていなければ、いつ奇襲を仕掛けられてもおかしくはない・・・)
ヘイゼルはそう思いながら歩いている時だった。
「・・・とお前はそう考えていたんだろ?」
何処からか声が聞こえてくると、ヘイゼルの背後から気配が感じられた。
「残念だったな・・・暗殺部隊は逃す事はないからな・・・」
現れたのは暗殺部隊のリーダーでヘイゼルの背後から双剣を振るってきた。
「しまっ・・・!」
しかし、気付いたのが遅くヘイゼルは斬られてしまった。
「デスドゥンケルハイト軍随一の暗殺者アイザック・ノクティメントハート・・・これ程の実力者だったとは・・・!」
暗殺者のリーダーはアイザックと言う名で他の暗殺者達と違っていた。
「部下達に追うフリをさせていた御蔭で、俺の奇襲に感づかれずに済んだぞ・・・」
「・・・まさか、気付かれぬように潜んでいたとでもいたのか・・・!」
「そうだ・・・密かに追跡をした結果・・・お前の前に現れたと言う事だ・・・」
「どうりで・・・暗殺部隊のリーダーであるアイザックが動こうとしていなかったはずだ・・・」
ヘイゼルはアイザックが動かなかったのはそう言う事だったと思った。
「なぜ・・・お前はデスドゥンケルハイト軍を脱走した?」
「・・・人の命を奪うような事はしたくはなかった・・・これ以上、罪も無い者達を殺し続けるのは耐えきれなかったのだ・・・」
ヘイゼルは重傷を負いながらも脱走をした理由を話した。
「そうか・・・脱走者であるお前を生かしていたら・・・後々大変な事になりそうだからな・・・悪いが、ここで大人しく死んでくれないか・・・」
そう言いながら、アイザックはゆっくりとヘイゼルに近付いた。
「ぐっ・・・!」
重傷を負っていたヘイゼルにはアイザックから逃走するのは不可能だった。
(もはや・・・これまでか・・・!)
ヘイゼルが己の死を覚悟したその時だった。
「むっ・・・!」
背後からなにかが飛んできたアイザックは振り返って双剣で切った。
(・・・今なら、逃げられるはずだ・・・!)
ヘイゼルはその隙を見て、とっさに横の草木の中に飛び込んだ。
「俺とした事が・・・逃げられてしまったようだな・・・」
アイザックが逃げられたと判断すると、部下の暗殺者達が駆けつけて来た。
「アイザック様!先程、音が聞こえましたが・・・もしや、裏切り者を見つけたので・・・?」
「あぁ・・・たった今、逃げられたが・・・」
アイザックがそう答えると、持っていた双剣を鞘に戻した。
「追え・・・深手を負わせたからこの森から抜けるのは難しい・・・」
アイザックに命じられた暗殺者達はヘイゼルを探し始めた。
(・・・アイツはさっきの攻撃で重傷だからそんなに遠くには逃げられないはずだ・・・)
そう思いながら、アイザックは木に飛び移りながらヘイゼルを追跡した。
「はあっ・・・はあっ・・・」
暗殺部隊から逃げ延びたヘイゼルは森を抜けても血を流し続けていた。
(・・・恐らく、まだ森の中にいると思って探し続けている・・・その間に逃げ延びなければ・・・)
そう思いながら走り出していると、ヘイゼルは傷口から流れている血を見つめた。
(・・・出血が酷い・・・これ以上、血を流しすぎてしまえば倒れてしまう・・・一刻も早く、人のいる場所を探し出さなければ・・・!)
そのまま走り続けていると、ヘイゼルは朝日が昇ろうとしているのが見えた。
「朝日が昇り始めた・・・しかし、ここはどの大陸か分からん・・・」
このまま明るくなれば、村や町がある場所が分からなかった。
「日が昇っては人のいる場所が把握できん・・・しかし、いつまでも歩き続けている訳には・・・」
そう思ったヘイゼルだったが、その場で倒れ込んでしまった。
(不味い・・・血が出すぎてしまったか・・・)
ヘイゼルは出血量が多く、体は既に限界に達していた。
(駄目だ・・・血が流れすぎて・・・もう・・・)
意識が薄れゆく中、ヘイゼルは己の死を悟り出した。
(・・・私はここで死ぬのか・・・だが、この地獄から解放されるのなら・・・それでいい・・・)
ヘイゼルはそのまま意識を失った。
55章 助けられた脱走兵
太陽が昇って朝になり、ティア達は砂漠を目指して歩いていた。
「目的地まではかなり遠くにあったのね・・・」
イヴが地図を見て、目的地までは距離がある事を確認した。
「そうだな。砂漠まではまだ距離があるから休んでおいた方がいいみたいだな。」
「ここからだと、村も近くにあるからそこで休憩が取れるね。」
そのまま歩いていると、ティア達は目の前に誰かが倒れている事に気付いた。
「あれ?あそこに誰か倒れていない?」
誰かが倒れている事に気付いたティア達は急いでその場へと駆けつけた。
「ねぇ・・・この人、ボロボロだけど・・・なにがあったのかな・・・?」
倒れていた人物はヘイゼルで暗殺部隊による深い傷を負っていた。
「この傷・・・それに、コイツはひょっとすると・・・」
すると、ギルバートは倒れているヘイゼルとその傷を調べ始めた。
「・・・これは、どう考えてもデスドゥンケルハイト軍に襲われたに違いないみたいだ・・・」
「デスドゥンケルハイト軍が?確かに・・・こんな傷を付けられるのはあの連中しかいないのかも・・・」
イヴもそう思えて来ると、ティア達はデスドゥンケルハイト軍の被害者であると判断した。
「この人もデスドゥンケルハイト軍に襲われて力尽きたと言う事でしょうか?」
「どう見たってそうだろ・・・こんな風にできるのはアイツ等しかいないからな・・・それに、こんな傷を付けられるのもアイツ等だな・・・」
ギルバートはなにかを言いかけたが、口を滑らさないように言うのを止めた。
「ギル、襲って来たのは誰か心当たりがあるの?」
「なんでもねぇよ・・・そんな事より、さっさとコイツを埋めた方がいいぞ・・・」
ギルバートがそう言うと、ティアが疑うように聞いて来た。
「・・・まだ息があるのか確認をしていないのに・・・どうして、すぐに見捨ててしまうような事が言えるの・・・助かる可能性もあるはずなのに・・・?」
「いや・・・これだけ傷付いているのに生きている訳がないだろ・・・お前だって、村にいた奴等を墓に埋めていたなら分かっているだろ・・・?」
その時、微かだが何処からか小さな声が聞こえてきた。
「なにか聞こえなかった?」
「いや・・・気のせいじゃねぇのか・・・?」
すると、ティアはヘイゼルの元に近寄り脈を取った。
「この人の脈は動いているわ・・・今すぐに手当てをすれば助けられるはずよ。」
ティアは急いで、手当てをすれば助けられると判断した。
「そんな事を言っても・・・間に合わないんじゃねぇのか・・・?」
「それでも・・・助けようとしなければ、見殺しにしてしまう事になってしまうわ・・・この近くに人のいる場所はないのかしら・・・?」
「ここからまっすぐ行けば、村があるからそこに行けば大丈夫だよ。」
現在地から目の前に進んで行けば村が存在していた。
「急ぎましょう・・・この人を死なせる訳にはいかないわ・・・!」
「私も同じ気持ちです・・・一生懸命に手当てをしましょう・・・」
ティア達はその村でヘイゼルの手当てをする事を決めた。
「また、宿屋で手当てをするなんて思わなかったね・・・この村には病院が無いからアタシ達が手当てをして助けないとね・・・」
村に到着してすぐに宿屋へと向かい、ヘイゼルの手当てをする事にした。
「・・・それじゃあ、俺は終わるまで待っているか・・・」
そう言って、ギルバートはそのまま部屋を出ようとしていた。
「待って、何処に行くつもりなの?」
「なんだよ・・・助かるどうか分からない奴の治療をしても助からないと思ったからだよ・・・」
「どうして?微かに息があるなら手当てをしていれば、助かる可能性があるはずよ?」
なぜ、治療に専念をしないのか訊ねるとギルバートはこのように答えて来た。
「あのなぁ・・・もし、手遅れだったらどうするつもりだよ・・・?」
ギルバートは助けられなかったらヘイゼルの死を哀れむだけだと言ってきた。
「ティアやステラだって、両親が死んだ時は悲しかっただろ?コイツを助けられなかったら余計に悲しんでしまうだけだと言っているんだ・・・」
両親の死についてティアとステラにそう言った。
「ギルの言う通り・・・人が死んでしまう事は悲しいです・・・ですが、私達はこの人が死んでしまう事を放っておきたくはありません・・・」
「私も同じ気持ちよ・・・微かにも助けられる可能性があるのであれば私達は迷わずに助けるわ・・・目の前で、死にそうになっている人がいるなら私達の手でその人を救わなければいけない・・・私達が手を差し伸べない限り、その人が宿している命を消してしまう事になってしまうわ・・・」
ステラは放ってはおけない気持ちとティアの助けたいと伝えると、ギルバートはヘイゼルを見てため息をついてから言ってきた。
「分かったよ・・・俺も手伝ってやるからそれでいいんだろ・・・?」
ギルは仕方なさそうにしながらヘイゼルの手当てをする事に承知した。
「ギル、一緒にこの人の命を救うためにも頑張って治療をしましょう。」
「あぁ・・・そんなに他人の事を思っているなんて、やっぱりお前等らしいな・・・」
諦めずに助けようとするティアとステラにギルバートは笑みを浮かべていた。
「「ありがとう・・・ギル。」」
ティアとステラがお礼を言うと、ギルバートは治療の準備を始めた。
「・・・さっさと、コイツの集中治療を始めようぜ。」
それから長時間もの間、ティア達はヘイゼルの手当てに専念をし続けた。
「これで・・・全ての傷を癒しました。」
「えぇ・・・結構な魔力も使ったけど、無事に助ける事が良かったよ。」
ティアとステラは協力して、回復魔法を何時間もかけ続けた事でヘイゼルの傷を完全に癒す事ができた。
「それに、俺達の手当てもあったから、コイツは安静にしているみたいだぞ。」
ギルバート達の方も魔法を使わずに手当てや治療を行っていた。
「しばらくしたら、目が覚めると思うから安心して待っていましょう・・・」
「そうだね。後は起きるまで待ち続けていようか。」
手当てを終えたティア達はヘイゼルの様子を見ながら休む事にした。
「それにしても、ギルはちゃんと手当てもできるんだね。」
「昔、アランが風邪を引いた時に見舞いに行っていただろ?俺にだって、そう言うのがあったからちゃんとそう言う経験も積んでいたからな。」
「あの時はギルがお見舞いに来てくれて嬉しかったよ・・・まぁ、怒られるような事はしなかったのは良かったけど・・・それよりも、あの人の様子を見に行こうか。」
アランにそう言われたティア達はヘイゼルの様子を見に行く事にした。
「・・・誰だ?」
扉を開けて中に入ると、ヘイゼルが目を覚ましていた。
「気が付きましたか?貴方は倒れていていたのでここへ運びました。」
ティアがそう言うと、ヘイゼルは意識を失うまでの出来事を思い出した。
「そうだ・・・私は意識が薄れゆく中であの場に倒れていたのか・・・」
そう思い返しているヘイゼルにギルバートが聞いてきた。
「なぁ・・・アンタの傷、どう見てもデスドゥンケルハイト軍の暗殺部隊にやられたものじゃないのか・・・?」
ギルバートがそう言ってくると、ヘイゼルは自身の傷を見て「そうだ・・・」と答えてきた。
「ねぇ・・・どうして、そんな傷だって分かったの・・・?」
「・・・昔、そんな風に殺られた人間を見た事があるからだよ・・・」
「そうか・・・私と同じように見た事があるのだな・・・暗殺部隊に殺された人間の死体を・・・」
ヘイゼルがそう言うと、ティアは自分の方を見つめているのに気付いた。
「どうかしましたか?」
「いや・・・なんでもない・・・私はしばらく安静にしているので安心してくれ・・・」
「そうですか・・・私達は、貴方が元気になるまでここにいますので、なにかあったらいつでも言ってください。」
「・・・そうするとしよう。」
そう言って、ティア達はヘイゼルのいる部屋を出た。
「あの人が元気になって良かったですね。」
「そうだね。あの人が元気になるまで面倒を見ていた方がいいと思うよ。」
「アイツが無事に目を覚ました事だし・・・それまではゆっくり休んでいようぜ。」
ヘイゼルの手当てを終えたティア達はしばらく休む事にした。
「・・・やはり、アイツは生きていたようだな・・・」
ティア達が外に出たのを見て、何者かが屋根の上からヘイゼルを見つめていた。
「時期に死ぬと思ったが、エレノアの末裔に助けられたのか・・・」
見ていた人物とは暗殺部隊のリーダーでベッドの上にいるヘイゼルを見ていた。
「まぁいい・・・今の状態なら殺すのは簡単だな・・・」
そう言って、アイザックは感づかれないように姿を消した。
「・・・アラン、アイツの様子はどうだ?」
その夜、ティアはギルバート達にヘイゼルについて色々と話し合っていた。
「ヘイゼルさんは静かに眠っていたし・・・あの様子だったら、すぐに治ると思うよ。」
ヘイゼルの様子を確認しに来たアランはすぐに完治すると言ってきた。
「そうか・・・それは、良かったな・・・」
ギルバートがそっけなく言うと、ステラはその様子が気になっていた。
「何だか、嬉しくなさそうに見えますが・・・ギルは嬉しくないのですか?」
「そう言うのじゃねぇよ・・・それよりも、アイツの事はどうするつもりだ?」
そう聞かれると、ヘイゼルの事をどうするか決めていない事に気付いた。
「そう言えば・・・治療に集中していたので考えてもいませんでした・・・」
「だったら、治ったらその人が住んでいた場所に送った方がいいんじゃないかな?」
「でも、その人は何処から来たのか分かないからヘイゼルさんが目を覚ましたら聞いてみた方がいいよ。」
ティア達が話し合った結果、ヘイゼルに故郷が何処なのか聞く事にした。
「それじゃあ、ヘイゼルさんを無事に故郷へ送るために教えてもらいましょう。」
故郷について聞く事にした直後、ヘイゼルのいる部屋から物音が聞こえてきた。
56章 ヘイゼルの正体
「今の音は・・・ヘイゼルさんのいる部屋から聞こえなかった・・・?」
「はい・・・なんだか、凄い音が聞こえてきました・・・」
「今の音にしては大きかったけど・・・ヘイゼルさんになにかがあったのかも知れないと思うわ・・・」
なにかあったのだと思ったティア達はヘイゼルのいる部屋へと向かった。
「ヘイゼルさん?どうかしましたか?」
ティアは扉をノックしたが、ヘイゼルの返事はなかった。
「返事がない・・・もしかして、なにかがあったのかな・・・?」
「・・・もしかしたら、ベッドから落ちた音じゃねぇのか?」
「そんなはずはないわ。あの人はまだ動けるような状態でもなかったはずよ?」
ティアはドアノブを回してみると、鍵がかかっていない事が確認された。
「鍵はかかっていないみたい・・・」
ティアは扉を開けて、部屋の中へと入って行った。
「ヘイゼルさん、どうかしましたか・・・?」
扉を開けてみると、ティア達は目の前の出来事を目にした。
「これは一体・・・!」
部屋の奥には双剣を持った人間がおり、床にいるヘイゼルを殺そうとしていた。
「来るな・・・そなた達まで殺されてしまうぞ・・・!」
月の光が差し込むと、光に照らされてその正体が判明した。
「なっ・・・!」
その人物の正体は暗殺部隊のリーダーアイザックだった。
「・・・さっきの音がデカすぎて気付かれたか・・・」
先程の物音はアイザックが襲いかかった事でヘイゼルがベッドから落ちた音だった。
「とにかく、裏切り者のコイツを始末してからお前達を殺せばいいだけだ・・・」
アイザックはヘイゼルを殺すのを後にして、ティア達を暗殺しようと襲いかかってきた。
「逃げろ・・・ソイツは暗殺部隊の中で、一番の実力者だ・・・!」
ヘイゼルがそう言った直後、アイザックが攻撃を仕掛けて来た。
「悪いが、お前達には全員死んでもらおうか!」
アイザックは双剣を振るってくると、ティアはとっさに剣を抜いた。
「そんな事は・・・させないわ!」
ティアが動き出し、剣を振るってアイザックの攻撃を防いだ。
「・・・エレノアの末裔か・・・今ここで、殺してやりたいが・・・ここで、殺るよりかはいいだろうな・・・」
一旦距離を取ったアイザックは後ろに下がってからティアに言ってきた。
「・・・密かにコイツを殺す予定だったが、バレたら仕方ないか・・・悪いが、俺はここで立ち去らせてもらうぞ・・・」
そう言って、アイザックは窓から飛び降りて撤退した。
「待て!」
ギルバートは後に続くようにアイザックを追いかけていった。
「ギル・・・一人で行ってしまいましたが大丈夫なのでしょうか・・・?」
「あの速さなら追いつくと思うけど・・・勝てるかどうかは分からないよ・・・」
ティア達はヘイゼルが無事かどうか確認をした。
「ヘイゼルさん、大丈夫ですか?」
「なんとか・・・それよりも、皆が無事でなによりだ・・・」
ヘイゼルは彼女達が無事な事を安心すると、ティアを見て関心をするかのように言ってきた。
「しかし、エレノアの血を引いた人間に助けられていたとは・・・」
「ヘイゼルさんにはまだ言ってはいませんでした。」
「・・・では、君こそが本当にエレノアの血を引いた人間なのだな?」
ヘイゼルの問いにティアは「はい・・・」と静かに答えた。
「そうであったか・・・どうりで、エレノアのように見えていたと言う訳だ・・・」
そのように納得をすると、イヴがヘイゼルの事が気になって聞いて来た。
「・・・一つ聞きたいけど、さっき暗殺部隊って言わなかった?」
イヴは彼の正体が気になって恐る恐るヘイゼルに訊ねてきた。
「イヴ、何を言っているのですか・・・?」
「だって、襲って来た相手の事を知っているような言い方だったでしょ?」
イヴの発言にアランは先程ヘイゼルが言っていた言葉を思い出した。
「・・・言われて見れば、さっきも一番の実力者だって言っていたような・・・」
「まだ名乗ってもいない相手を知っていたのは・・・」
すると、ステラがヘイゼルの察したのかティアの後ろへと隠れた。
「ねぇ・・・もしかしてだけど、貴方は何処から来たの?それと、自分の事についても詳しく教えてくれない・・・?」
イヴにそう聞かれたヘイゼルだったが、しばらく沈黙が入ってからティア達に訊ねてきた。
「話してもいいが・・・私の正体を知ってしまえば、後悔する事になってしまうが・・・それでも、構わぬなら話してみるとしよう・・・」
ヘイゼルはなにやら気まずそうにしていたが、ティア達は聞くつもりだったので話す事にした。
「・・・まずは、私の正体について話すとしよう・・・」
そう言って、ヘイゼルは初めに自分の正体について話し始めた。
「この格好を見て信じられないと思うが・・・私はデスドゥンケルハイト軍の兵士だったのだ。」
「デスドゥンケルハイト軍・・・!」
その直後、ティア達は信じられない表情になった。
「兵士・・・それは、本当なのですか・・・?」
「そうだ・・・しかし、私は君達の思っているような人間ではない・・・」
ヘイゼルは言い辛そうに答えたが、イヴは敵意を見せながらヘイゼルを睨み付けてきた。
「・・・私は危害を加えるつもりはない・・・それに、私はもう裏切り者として狙われているのだ・・・だから、話を最後まで聞いてはもらえないだろうか?」
ヘイゼルがそのように言っても、イヴは敵意を向けるのは止めようとはしなかった。
「いいえ・・・何人も殺している人間の言う事なんて信じないから・・・!」
イヴは耳を貸さないで敵意を向けて続けているとヘイゼルがこう呟いた。
「・・・やはり、デスドゥンケルハイト軍の言う事が信じてくれないようだな・・・」
「そうだよ・・・アンタ等のせいでアタシやティアは監獄で拷問を受けていたから・・・その監獄はもうなくなったけどね・・・」
イヴは苦悩の日々を思い出しながらも、表情を露わにせずにヘイゼルに言った。
「イヴ・・・落ち着いてください・・・」
落ち着かせようとしたステラにイヴは興奮した状態で言ってきた。
「これが、落ち着いていられるとでも言うの!」
怒りの発言にぶつけられた事で、ステラはその声に驚いて怯え始めた。
「イヴ・・・ステラが怖がっているわ。」
ティアは怯えているステラを宥めた。
「・・・それよりも、この男をどうするつもり?まさか、一緒に行くっていう気じゃないでしょうね・・・?」
イヴがヘイゼルに敵意を向けながら訊ねてくると、ティアは彼を見てどうするか答えを出した。
「・・・この人が命を狙われているなら、私達と一緒にいた方がいいと思うわ。」
「それって、この人も連れて行くと言うつもりなの?」
まさかと思って聞いたイヴに、ティアは静かに頷いて答えた。
「嘘でしょ!?この男も仲間に加えようとするなんて!」
イヴは激昂しながら反対したが、それでもティアはヘイゼルを仲間に加えるつもりだった。
「落ち着いて聞いて・・・このまま放っていれば、いつ命が狙われてしまうのかも知れないわ・・・例え、故郷にいても罪も無い人達まで巻き込んでしまう恐れがあるわ・・・」
ティアはデスドゥンケルハイト軍や暗殺部隊からも守るためにヘイゼルを仲間に加えようと考えていた。
「それで、この人を守るために連れて行くと言いたいの?」
「えぇ・・・ヘイゼルさんは殺して命を奪うような人ではないわ。」
ティアはデスドゥンケルハイト軍のような人間ではないと気が付いていた。
「・・・もしかしたら、アタシ達を油断させておいて殺すつもりだったらどうする気なの?」
「イヴ、そんな事は有り得ないわ・・・それに、また何処かで殺されるのかもしれないから、一緒に旅をしていた方がこの人にとってはいいと考えたの・・・」
自分達といればデスドゥンケルハイト軍に襲われてもヘイゼルを守れると思っていた。
「・・・そんなの信じられる訳がないじゃないの!」
彼の事が信じられないイヴはヘイゼルを追い出そうとしたが、ギルバートが二人の間に割り込んで止めに入ってきた。
「おいおい・・・一体、どうしたんだよ・・・?」
「ギル退いて!早く、この男を追い出さなくちゃ・・・!」
イヴは必死だったが、ギルバートは今の状況について把握していなかった。
「待ってくれよ・・・一体、なにがあったのか誰か教えてくれよ・・・?」
ティアはギルバートにこの状況について話した。
「なるほど・・・コイツを旅に加えようとしたら、イヴがキレながら反対してきたと言う事か・・・そりゃあ、コイツにしたらとばっちりだな・・・」
「はい。イヴはデスドゥンケルハイト軍の人を加えたくないばかりに、ヘイゼルさんを追い出そうとしていました。」
ステラがそう言うと、ギルバートはヘイゼルを見てからティア達に言った。
「・・・まぁ、コイツがいればデスドゥンケルハイト軍について色々と知っていそうだからな・・・一緒に旅をしても問題なさそうだし・・・連れて行ってもいいんじゃねぇのか?」
「ギルまで・・・分かった・・・」
イヴは不服に思いながらもヘイゼルを仲間に加える事にした。
「感謝する・・・」
「だけど、万が一裏切るような事がないように見張っておくからね?」
「心配はするな・・・私はそのような事はしないので安心してくれ。」
こうして、ギルバート達はヘイゼルが旅に加わる事になった。
(そう言えば・・・ギルは、暗殺者を追いかけていたけど・・・傷もついていないし・・・逃げられちゃったのかな・・・?)
アランはギルバートを見て、アイザックに逃げられたのかと思っていた。
57章 イヴの監視
「体の調子はどうですか?」
次の日、ヘイゼルは自分の体の調子を確認してみた。
「・・・なんとか、戦闘が行えるまで回復ができたようだな・・・あまり無理な事をしなければ大丈夫なはずだ・・・」
ティア達の治療の効果があったのか、ヘイゼルは万全に近い状態まで回復する事ができていた。
「まだ、完全に治り切れていないので無理はしないでください。」
「分かっている・・・自己管理も忘れずにしているので安心してくれ。」
「そうですか。あまり無理をしないでくださいね。」
ティアがそう言うと、ヘイゼルは彼女達を見てこう言ってきた。
「・・・一人で逃げていれば、いずれは殺される事になる・・・私も君達と共に戦いに加わる事になるが、エレノアの血を引く者に手を貸すのもいいだろう・・・」
「デスドゥンケルハイト軍を倒して、ラヴィレイヘヴンを開放しましょう。」
ステラがそのように言うと、ヘイゼルは安心した様子で笑みを浮かべた。
「これからは仲間として・・・遠慮なく接してくれ・・・ただし、私の事を快く思ってはいない者がいるようだが・・・」
そう言いながら、ヘイゼルはイヴが不機嫌な様子を確認した。
「・・・それって、アタシの事?」
イヴは気に障るような態度を取ってきた。
「ゴメンなさい・・・イヴはまだヘイゼルさんの事を信じていないみたいで・・・」
「どうやら、デスドゥンケルハイト軍である私を警戒しているようだが・・・蟠りを解いてくれるまでは時間が掛かるのかもしれないな・・・」
不機嫌そうにしているイヴを見たヘイゼルは自分の格好を見てみた。
「さて・・・今すぐにでも出発したいのだが・・・この格好では戦う事はできんな・・・」
ヘイゼルは自分の装備が無いのを見て、武器と防具を買おうと思った。
「・・・すまぬが、武器屋と防具屋に行っても構わないだろうか?」
「そう言えば、ずっとそんな格好でしたね。ここを出る前に武器と防具を買っておいた方がいいと思います。」
アランはそう言ったが、ヘイゼルは気まずそうに言ってきた。
「私もそうしたい所だが・・・所持金が無いのでなにも買えないのだが・・・」
ヘイゼルは一銭も持っていない言葉に、イヴは不機嫌そうに訊ねてきた。
「・・・それって、一銭も無いから貸して欲しいと言う事なの?」
イヴが不機嫌そうにしていて金を貸す気などなかった。
「そうだ・・・申し訳ないが誰でもいいのでティンクルを貸して貰えないだろうか?」
「言っておくけど、アタシは一銭も貸してあげないからね?」
金を貸さないと言うイヴにティアは持っていたティンクルの入った袋をヘイゼルに手渡した。
「ヘイゼルさん、私がお金を払いますので気にしないでください。」
「礼を言う・・・いずれ、貸した金は返すとしよう・・・」
「貧しい人がいたら、少しでもお金を恵んでおいた方がいいってお父さんとお母さんが言っていましたので・・・」
「・・・そうだな。」
ヘイゼルはティンクルの入った袋を手にすると、その足で武器屋と防具屋へと向かって行った。
「ねぇ・・・なんで、あの男にお金を渡したの?」
「今のヘイゼルさんには武器と防具が必要よ・・・このまま外に出てモンスターと遭遇してしまえば戦う事なんてできないわ。」
「でも、お店に行くフリをして、お金を持って逃げたのかも知れないのに?」
「・・・あの人はそんな事をするような人じゃないわ。」
ティアはそう言ったが、イヴは彼の事が信じられなかった。
「・・・アタシも調子が良くなってきたから、そろそろ戦った方がいいかな・・・」
そう言って、イヴはヘイゼルと共に武器と装備を買いに店に向かった。
「・・・この先、あの二人が一緒でも大丈夫なのかな・・・?」
「あぁ・・・ティアや両親の事があるから信じられないだろうな・・・」
そう思っている頃、イヴは武器屋の中に入っていた。
(さてと・・・腕が鈍っていなかったらいいけど・・・)
イヴが武器を見ていると、ヘイゼルが銃を選んでいる様子を目にした。
(・・・銃を選んでいると言う事は・・・銃の扱いに慣れているのは間違いないみたい・・・)
そう見た後でイヴは自分に合いそうな武器を選び始めた。
(アタシは槍を使っていたけど・・・久しぶりに戦うから薙刀の方が扱いやすそうかもね・・・)
槍ではなく薙刀を購入したイヴは武器屋を出ると、ヘイゼルが防具屋に入って行くのが見えた。
「今度は防具屋に・・・ついでに見に行こうかな・・・?」
イヴは後に続くように防具屋の中へと入って行った。
「ねぇ・・・まだ、どれにするか決められないの?」
防具屋の中に入ってからヘイゼルはどれにするか決められずにいた。
「・・・これまで兵士の格好をしていたからな・・・自分の格好に似あうような服を選ぶ事などなかったのだ・・・」
「そう・・・これ以上、長くは待たせないでよね・・・?」
しばらくして、ヘイゼルは自分に似合いそうな服を選んで見せてきた。
「これにしようと思うのだが・・・この私に似合うだろうか?」
手にしているのはヘイゼルにとって似合いそうな服だった。
「なんでもいいけど・・・なんで、鎧もあったのにそれにしようと思ったの?」
「・・・長年兵士として、苦しい日々を送って来た事を思い出さぬよう・・・もう二度と鎧など身に着けたくなかったのでな・・・」
長年もの間、ヘイゼルは兵士として過酷な生活を送っていた。
「そう・・・兵士はもう嫌だったから、その恰好を選んだと言う事ね・・・」
「その通りだ。購入してから装備をするので先に戻っていてくれ。」
「分かった・・・これ以上、アンタといたくないから先に戻っているね。」
ヘイゼルにそう言われて、イヴは先にティア達の元へと戻って行った。
「ヘイゼルは後から来るらしいから・・・先にピラミッドのある砂漠について話すか・・・」
ギルバートが目的地を話し始めようとした。
「・・・ちょっと待って、元デスドゥンケルハイト軍の兵士がいるのにピラミッドがある砂漠の事を話したりなんかしたら駄目だと思うけど・・・?」
イヴは話せば、ヘイゼルが裏切るのではないかと思っていた。
「それに、光翼の涙を見つけたら裏切る事も考えられないの・・・?」
「・・・私の事を話していたらしいが、密告や裏切りなどできるのであれば瀕死の状態で倒れているのはどう説明をすればいい・・・?」
背後から声が聞こえて振り向くと、購入した装備を装着したヘイゼルが立っていた。
「ヘイゼルさん、もう武器と防具を買って来たのですか?」
「あぁ・・・さきほど、ピラミッドのある砂漠と言ったが・・・そこは、どのような場所なのか知っているのか?」
「いいえ・・・砂漠とピラミッドがある事しか知りません・・・」
ティアがそう言うと、ヘイゼルはその場所について話し始めた。
「ラヴィレイヘヴンにいた頃に聞いた話だが・・・そこには、ピラミッドの主がいて二十年前から光翼の涙を守る番人になったと言われているのだ・・・」
ヘイゼル曰く、この世界が創造された時代に砂漠の中にピラミッドが建設された際にピラミッドの主が存在していると伝えられていた。
「ピラミッドの主・・・それは、どのような人物か知っていますか?」
「いや・・・主がいる事を聞いただけでそのような話を耳にした事があるだけだ。」
「・・・ピラミッドの主がどんな奴なのか分からないが・・・とにかく、ソイツに勝つ事さえできれば、光翼の涙を手に入れられそうだな・・・」
「それで、砂漠と言うのはどのような場所なのでしょうか?」
ステラが砂漠について訊ねると、ヘイゼルはその場所について話し始めた。
「辺り一面砂だらけで暑い気温の場所が砂漠と言う場所だ。」
「砂ばかりで暑い・・・なんだか、干乾びてしまいそうです・・・」
ステラは砂漠で干乾びて死んでいく自分達を想像して不安になった。
「そこに向かう前にコンパスやワープベルだけでなく水も必要になり、それが無い状態で砂漠の中に入ろうとするのは自殺行為に等しいだろう・・・」
ヘイゼルがそう言うと、ティア達は砂漠に向かう準備をしようと決めた。
「大丈夫よ。砂漠に向かうための準備をしていれば、私達は砂漠の中で死ぬような事はないと思うわ。」
ティアは宥めるように言うと、ステラはその言葉を聞いて安心した。
「まぁ・・・それらの道具を忘れなければ、砂漠でさ迷ってしまう事には変わりはないが・・・」
ヘイゼルがそのように言うと、ステラはまたしても不安そうな表情になった。
「・・・ヘイゼル、ステラがまた不安になっちゃったぞ・・・?」
ギルバートがそう言ってくると、ヘイゼルは「スマン・・・」と謝ってきた。
「ちゃんと、準備万端で行った方がいいな・・・昨日、店で水筒を買っていたからいつでも砂漠に入れるぜ。」
こうして、ティア達は砂漠に向かうための道具を揃えた後で砂漠へと向かって行った。
58章 ピラミッドのある砂漠
砂漠へ向かっている途中、ティア達はモンスターの群れと遭遇した。
「モンスターが現れたぞ。」
ティア達は武器を取って戦闘に入っていた。
「はあっ!」
「そりゃ!」
ティアとギルバートは剣と双剣を振るって、モンスター達を攻撃していった。
「ステラ、僕等も・・・」
ステラとアランは魔法でティア達の援護をした。
「・・・どうした?」
ヘイゼルは戦闘中にイヴがこちらを見ている事に気が付いた。
「別に・・・裏切って、攻撃して来ないか見ているだけ・・・」
「まだ、私の事を疑っているのか?」
そう訊ねると、モンスターが余所見をしているイヴに襲いかかろうとしていた。
「危ない!」
ヘイゼルがとっさに銃を構え、モンスターに狙撃をして倒した。
「もう大丈夫だ・・・既に倒している・・・」
しかし、イヴはお礼を言わずにヘイゼルを睨み付けてきた。
「・・・モンスターが死んでいる・・・アンタが余所見をさせるような事をしたから・・・」
モンスターは先程の銃撃で死んでいた。
「そう言えば・・・皆はモンスターを殺さずに戦っていたのだったな・・・」
「とにかく、アタシ達を裏切る真似をしたら絶対に許さないからね・・・」
イヴが釘を刺すように言ってくると、他のモンスターと戦い始めた。
(・・・まさか、これほどまでに私の事を嫌悪しているとは・・・今後、イヴと向き合うにはどうしたらいいものか・・・)
それから、無事にモンスター達を倒して先へ進む事ができた。
「砂漠は滅茶苦茶広くて暑いからな・・・ちゃんと、水分補給も忘れるなよ?」
「大丈夫だよ。村を出る前に水を入れておいたよ。」
水筒を購入した後で水を補給してから村を出ていた。
「ここが砂漠・・・周りは砂しかなくてなにも無い場所のようね・・・」
ティアが砂だらけの世界を見回していると、ステラが汗をかきながら暑そうにしながら言ってきた。
「暑いです・・・砂漠が、こんなに暑いなんて思いませんでした・・・」
「ここは、気温が高すぎるから熱中症にも気を付けろよ。」
「それじゃあ、ここはコンパスの出番だね。」
そう言って、アランは持っていたコンパスの針を確認した。
「・・・北の方角をさしているね。」
「コンパスの針を辿って行かないといけないのか?」
「うん。ピラミッドは広いから迷いやすいよ。」
「そうか・・・仮に方角が間違っても責任は取れねぇぞ?」
ギルバートが不安そうにしていたが、コンパスの針を頼りに進むしかなかった。
「・・・ずっと、北の方を指しているね・・・」
砂漠の中を歩き始めてからティア達は北の方角を歩き続けていた。
「なんだか、ずっと北を歩いているが方角はあっているのか?」
「砂漠は広大な広さだ・・・針がずっと北を指していないはずがない・・・」
ヘイゼルがそう言うと、コンパスの針が左に動いて東を指した。
「針が東にさしたよ・・・今度は東に進めばいいよ。」
しばらく歩いて行くと、コンパスの針が東から北西をさして西の方角を歩き出した。
「また針の向きが変わったわ・・・今度は西の方角よ・・・」
ティアがそう言うと、ギルバートがウンザリした様子で言ってきた。
「なぁ、それって本当に方角はあっているのか?」
「もちろんだ。コンパスのさした方角へと進んで行けば、ピラミッドに到着するはずだ。」
ヘイゼルがそのようにギルバートに言うと、ステラが針の生えた植物を見つけた。
「どうして、砂漠の中に植物が生えているのでしょうか?」
ステラはその植物が気になって、興味津々にしながら見つめた。
「これは、サボテンと言う名で砂漠に生えている植物だ。」
ヘイゼルが説明すると、ステラはサボテンをじっくりと観察し始めた。
「そうですか・・・この暑さで枯れないのでしょうか・・・?」
そう思って見ていると、ステラは隣にあるサボテンを見て疑問に思い込んだ。
「どうかしたのか?」
「いえ・・・今、一瞬動いたような気がしました・・・」
その時、サボテンの背後から何かが飛び出してきてステラに襲いかかってきた。
「ステラ!」
ギルバートが双剣を振るって、襲いかかってきたものを両断にした。
「・・・どうやら、サボテンの後ろにモンスターが潜んでいたみたいだな・・・コイツはサボテンに夢中になっている隙に知らずに飛び出してきたな・・・砂漠に因んだモンスターも生息しているから油断は禁物だぞ。」
それから、ティア達が砂漠を歩き続けていると、砂の中から蠍のモンスターの群れが飛び出してきた。
「厄介なモンスターと遭遇してしまったな・・・尻尾の針に刺されてしまえば、毒に犯されてしまうので距離を詰めすぎて戦うのは危険だ・・・」
「そっ・・・そうだとしても・・・!」
ヘイゼルがモンスターの説明をすると、アランが顔を青ざめて腰を抜かしてしまった。
「なにをそんなに怯えている?毒があって危険なのは分かるが・・・私達が苦戦を強いられる数ではないはずだが・・・もしや、怖がっているのか?」
「はい。アランは極度の虫嫌いであのようになってしまいます・・・」
怯えるアランの代わりにステラがその理由をヘイゼルに説明した。
「それで、この状態になれば戦う事ができなくなるのか?」
「あぁ・・・虫となれば、ああなっちまうからな・・・」
これ以上、アランを怖がらせないためにもティア達はなるべく急いで倒す事にした。
「なるべく早く倒した方がいいな・・・尻尾には毒があるのであまり近づきすぎないようにしながら戦うのだ・・・」
ヘイゼルがそう言うと、イヴが蠍のモンスターに向けて技を繰り出した。
「いくよ!」
イヴは突きを連続で繰り出して蠍のモンスター達に攻撃をしていった。
「尻尾さえ、気を付ければなんとかなるのかもしれないよ。」
「えぇ、この調子なら倒せるわ。」
ティアとアランはお互いの技と魔法で蠍のモンスター達に繰り出した。
『天竜翼波!』
ティアは天空に舞う竜が竜翼から裂けるような斬波を放った。
『マジティクル!』
ステラも後に続くように魔法を唱えると、魔法の粒子のような光を放ってモンスター達を一掃した。
「アラン・・・もう終わったぞ。」
ギルバートが言うと、アランは辺りを見回して確認をしてから安心した。
「良かった・・・僕の事を気にしながら戦ってくれてゴメンね・・・」
「しかし、それ程の虫嫌いだったとは知らなかったぞ・・・」
「・・・昔、あんな事があって・・・」
「あんな事?」
何かを言いかけようとしたが、アランはなにも答えようとはしなかった。
「なんでもないよ・・・」
「まぁ・・・とにかく、ピラミッド探しを続けてみようぜ。」
ティア達が砂漠の中に入ってから数日が経った頃、持っていた水筒の水が尽きようとしていた。
「砂漠に入ってから、どれだけ経ったのでしょうか?」
「分からないわ・・・もう水があまり残ってはいないから、そろそろ見つけられればいいのだけれど・・・」
ティア達は歩き続けていたが、一向にピラミッドに着く気配はなかった。
「・・・このままだと、砂漠の暑さで蒸し焼きになってしまいそうです・・・」
すると、アランが立ち止まってコンパスを見てある事に気付いた。
「どうかしたの?」
「それが・・・分からなくなって・・・」
コンパスをよく見れば、針が勝手に動き出しどの方角をさしているのか分からなくなっていた。
59章 ピラミッドへの道のり
「よく見せてみろ・・・どうやら、この暑さでコンパスは狂ってしまっているみたいだ・・・」
ギルバートはコンパスを見て、既に壊れている事を確認した。
「そんな・・・私達は砂漠の中で迷子になってしまったのですか・・・?」
「案ずるな・・・ワープベルがあるので脱出する事ができる・・・」
ヘイゼルはワープベルを取り出そうとしたが、いつの間にか無くなっている事に気付いた。
「おかしい・・・店で買っておいたはずだが・・・?」
「・・・もしかして、砂漠を歩いている内に落としちゃったのかな・・・?」
「どうする気だ?こんな所にいたら、熱中症で死んじまうぞ?」
「心配ないよ。僕は転移魔法が使えるから、魔力がある限りはいつでも抜けられるよ。」
転移魔法が使えるアランがいるので、いつでも脱出がする事ができた。
「でも、転移魔法を使ったとしても、ここへ戻って来られる保証はあるの?」
ティアがそう聞いてくると、アランは転移魔法を使っても大丈夫か考えてみた。
「その事なら心配しなくてもいいよ。ちゃんと、目印を残して置けば簡単に転移ができるよ・・・まぁ、砂漠だから埋もれてしまう可能性も考えられるけど・・・」
アランは転移魔法を使っても、安心できないと考えられた。
「それで、どうすんだ?野垂れ死ぬ前にピラミッドを見つけ出すか、覚悟を決めて転移魔法を使うかどっちにするつもりだ?」
どちらを選択するか聞かれると、ティア達はどっちにするのか悩み始めた。
「そんな事を言われても・・・どうすればいいのでしょうか・・・」
「そうだね・・・水はあまり残っていないから一度、脱出した方がいいかも・・・」
転移魔法で脱出するか探索を続けるか迷い始めた。
「なぁ・・・あそこで休みながら考えてみたらどうだ?」
ギルバートが指を指した方を見てみると、オアシスらしき場所が目の前に見えた。
「あれって・・・オアシスじゃない?」
「水も補給できるし、ゆっくり休みながら考えてみないか?」
「でも・・・蜃気楼じゃないのかしら?」
「分からないぞ・・・そこに行ってみなきゃ分からないだろ・・・」
そう言って、その場所にオアシスがあってほしいと祈りながらも向かってみる事にした。
「本物のオアシスであって良かったね。」
ティア達は無事にオアシスに辿り付けた事で休憩を取っていた。
「そうだな・・・それで、どうするか決めたのか?」
ギルバートが、聞くとティアはどうするか言った。
「・・・もう少し、この砂漠を調べましょう。もしかしたら、コンパスを使わずにピラミッドに辿り着ける方法があるのかも知れないわ・・・」
「そうか・・・それじゃあ聞くが、どうしてそう言う理論が出てきたんだ?」
ギルバートがその理由を問うと、ティアは自分の胸に手を置いて答えた。
「・・・今までのように、光翼の涙を感じられると思ったからなの。」
ティアはこれまでのように光を感じ取る事ができれば、光翼の涙を見つけられるのかもしれないと思っていた。
「エレノアの一族だから、今までの場所でもそんな風に感じていたな。」
「えぇ・・・きっと、光翼の涙を何処かで感じ取れてくるはずよ・・・」
休憩を終えてオアシスを出たティア達はピラミッドと光翼の涙を探りながら歩き続けた。
「光翼の涙の光を辿って行けば、本当に辿り着ける事ができるのだろうか?」
「これまでだって、光を辿って行けば光翼の涙があったんだ・・・まぁ、アイツを信じてくれよな・・・」
ギルバートがヘイゼルにそう言うと、ティアは光翼の涙の光を探り始めた。
「・・・ねぇ、まだ歩き続けなくちゃいけないのかな・・・?」
かなりの時間が経っても、未だにピラミッドを発見する処か、光翼の涙の光を感じ取れる気配が一向になかった。
「えぇ・・・まだ、なにも感じ取れてはいないわ・・・」
「もう水筒が空になっているし・・・いい加減に見つけてくれよな・・・」
ギルバートがそう言いながら、空の水筒を逆さにして空だと言う事を証明した。
「そう言う言い方はないじゃないの?ティアだって、暑いのを我慢しながらピラミッドを探しながら光翼の涙の光を感じ取ろうとしているじゃないの・・・」
イヴの言う通りだった。ティアも光翼の涙を感じ取るのに集中しており、水を飲む事は一切していなかった。
「さっきも、ティアは自分の水を飲んで欲しいと言っていました。」
ステラもティアに自分の水もステラにくれていた。
「悪かったよ・・・幾らなんでも、ここの砂漠は広すぎないか?それにしても、何度も同じような場所を回っているように見えるのは気のせいか・・・?」
そう言って、ギルバートは辺りを見回してみたが砂の世界が広がっているだけだった。
「・・・なんで、何処を見ても砂しかないんだよ・・・まぁ、砂漠だから仕方ないけどな・・・誰でもいいから俺達を案内しに来てほしいぐらいだぜ・・・」
ギルバートがぶつくさと言っていると、ティアがその場で立ち止まって辺りを見回した。
「どうした?光翼の涙の光を感じ取れたか?」
「違うわ・・・何処からか、声が聞こえてくるの・・・」
「声?こんな広い砂漠に声がしたのか?」
ギルバート達は辺りを見回してみたが、誰もおらず声も聞こえなかった。
「気のせいじゃないの?この砂漠に人が住んでいるなんて有り得ないと思うけど・・・」
「いいえ・・・本当に誰かの声が聞こえてきたわ・・・」
すると、誰もいないはずの場所にティアに話しかける声が聞こえてきた。
「・・・分かったわ。貴方を信じればいいのね・・・」
ティアは聞こえてくる声との会話を続けた。
「ティア・・・一体、誰とお話をしていましたか?」
「分からないけど、話が終わるまで待っていた方がいいかも・・・」
イヴはティアの話が終わるまで待った方がいいとステラに言った。
「分かったわ・・・皆にも伝えるから・・・お願いするわ・・・」
そう言って、ティアは声の声との会話を終えた。
「・・・誰か知らないけど・・・なんて言っていたの?」
「話しかけてきた相手はピラミッドの主と言っていて、私の声を頼りにしてピラミッドまで来て欲しいと言っていたわ・・・」
「ピラミッドの主?確かにピラミッドに主がいるって聞いたけど・・・でも、どうしてティアだけに話してきたのかな・・・?」
ピラミッドの主の声が聞こえたのは、ティアだけでギルバート達には聞こえていなかった。
「私がエレノアの一族だと知っていたみたいで、ピラミッドの場所を教えるからピラミッドまで来て欲しいと言っていたの・・・」
ティアが話していると、ギルバートが疑問を持つかのように言ってきた。
「・・・もしかしたら、聞こえてきた奴の言う事は信じない方がいいかも知れないぞ?ソイツの言う通りにしていたら罠だったと言う事も考えられそうだしな・・・」
「確かに・・・ピラミッドの主は現に光翼の涙を守る番人となっているのだ・・・我々を誘き寄せて罠に嵌めようとしているのかも知れないのだぞ?」
ヘイゼルもピラミッドの主がティア達を騙しているのではないかと思えた。
「・・・絶対にそのような事をするなんてありえないわ・・・私がエレノアの一族だと分かっていたから、どう考えても私達を嵌めようとしているようには見えなかったわ。」
「たったそれだけで、ソイツの言う事を信じるとでも言うのか・・・とにかく、どうなっても知らねぇからな?」
ティアは再度、ピラミッドの主に呼びかけてみた。
「お願い・・・貴方のいるピラミッドが何処にあるのかを教えて・・・」
ティアがそう言うと、ピラミッドの主はティアに自分の居場所であるピラミッドの場所伝えてきた。
「こっちの方角に進めば進いいのね・・・分かったわ。」
ピラミッドの主の声を頼りにティア達は砂漠の中を歩き始めた。
「・・・ちゃんと、正しい方角を教えてくれているから安心して連いてきて・・・」
その後もティア達はピラミッドの主の声に導かれるように歩き続けた。
「もう少しで到着すると言っているわ。」
「・・・そろそろ、着くみたいだぞ・・・日干しにならずに済んで良かったな・・・」
「日干しって・・・干した食べ物じゃないんだから・・・」
アランがギルバートの言葉にツッコミを入れると、ティア達は探し求めていたピラミッドに到着する事ができた。
「これが、ピラミッドですか・・・大きくて三角の形をしていますね・・・」
「ピラミッドは人間が造り出された時に三角形の形になったって歴史の授業でも言っていたよ。」
一同がピラミッドを見上げていると、ピラミッドの主の声がティアに話しかけてきた。
「・・・ピラミッドの主は光翼の涙を持っていると言っていたわ。」
ピラミッドの主との会話を終えたティアは、目の前に聳え立つピラミッドを見上げた。
「ここの主はどのような人物なのかは分からぬが油断は禁物だ。」
「例え、これが罠だとしても私達は光翼の涙を手に入れなければいけないから・・・」
覚悟を決めたティア達はピラミッドの中へと入って行った。
60章 第一の試練
『・・・エレノアの血を引く者よ・・・ようこそ、我がピラミッドへ・・・』
ティア達がピラミッドに入った直後、何処からか謎の声が聞こえてきた。
「誰だ!」
ヘイゼルが銃を構えたが、気配が何処にも感じられなかった。
『そう警戒するな・・・余はアヌビス、このピラミッドの主だ・・・』
声の主の正体はアヌビスと言う名でピラミッドの主と名乗り出した。
「アヌビス・・・貴方が私と話していた声の正体ね。」
『そうだ。余のテレパシーでエレノアの血を引く者に話しかけてきたのだ・・・』
砂漠にいた時にアヌビスはティア以外に話しかけていなかった。
「どうりでティアにしか聞こえなかった訳だな・・・そもそも、なんで俺達にはなにも話そうとしなかったんだよ?」
ギルバートが疑問に思って聞くと、アヌビスはこのように答えてきた。
『余はただ、エレノアの血を引く者に伝えていたと言ったのだが・・・?』
「なんだよ?ひょっとして、俺達の事を信用できないのか?」
「つまり、エレノアの血を引いているティアにしか話さなかったと言う事だね?」
アランがそう考えて言うと、アヌビスは『そうだ・・・』と答えた。
『余のいる場所まで来るがいい・・・しかし、試練を乗り越える事ができるかどうか見せてもらうぞ・・・』
そう言い残すと、アヌビスの声が聞こえなくなった。
「試練を乗り越える・・・そう簡単に会わせられないと言う事だね。」
「そうね・・・待っていてアヌビス・・・」
ティア達はアヌビスに会うために、ピラミッドの中を進んで行った。
「なんの部屋かな?こんな所に壺があるけど・・・」
進んでいる内に部屋の中に入ると、目の前に五つの壺が置かれていた。
「なんだか、高そうな壺だな・・・きっと、高く売れるかも知れないぞ・・・」
そう言って、ギルバートが壺に触れようとした時だった。
『勝手に持ち出すではない・・・これは、金に換える事のできない壺なのだ・・・』
アヌビスの声が聞こえた直後、壺の中からなにかが一斉に飛び出してきた。
「コイツ・・・使いのコブラだったのか・・・!」
壺の中から飛び出してきたのは、コブラのモンスターで使いのコブラと言う名前だった。
『一つ目の試練だ・・・五匹もいる使いのコブラの内に一匹だけが鼠を喰っている・・・見事に正解すれば、先へと進む道が開けるぞ・・・』
「どれが、鼠を食べているのか当てるのか。」
アヌビスが試練を与えたと理解したティア達は使いのコブラを見て考え出した。
「鼠を食べた使いのコブラを当てるなんて・・・一匹の鼠を争って傷が付いているはずだけど・・・どれも同じに見えて分からないよ・・・」
使いのコブラは争っている様子はなく、どれを見ても同じ姿をしていた。
『言い忘れていたが、ここにいる使いのコブラは仲が良い・・・一匹の鼠を巡って争うような真似はせんぞ・・・』
「駄目か・・・だったら、壺にヒントがあるのかも・・・」
壺を見てみたが、どれも一緒の柄をしていた。
「壺の柄は関係ないみたいです・・・どれが、鼠を食べているのでしょうか・・・?」
五匹の使いのコブラを見たが、一向に見分けられずにティア達は悩み続けた。
「困りました・・・同じ見た目と同じ柄の壺で見分けが付かないくらい一緒です・・・」
「あぁ・・・どいつもコイツも高そうな壺の中に入っているからな・・・」
どれが鼠を食べた使いのコブラか悩んでいると、ステラが使いのコブラを見てある一言を言ってきた。
「もしも、使いのコブラが質問に答えてくれればいいのですが・・・」
ステラがそう言うと、その言葉を耳にしたティアがなにかを思い付いた。
「質問に答えてくれれば・・・アヌビス、使いのコブラは人の話を聞く事ができるの?」
ティアがアヌビスに質問をすると、アヌビスが彼女の言う事について答えてきた。
『無論だ・・・使いのコブラは人間に対して忠実で人間との会話が通じるぞ。』
使いのコブラは忠実で人間に言う事を聞くモンスターだった。
「・・・今から、質問をしたいから答えてもらってもいいかしら?」
ティアは五匹の使いのコブラに質問をしようとした。
『いいだろう・・・それでは、聞いてみるがいい・・・』
アヌビスの声が聞こえなくなると、ティアは五匹の使いのコブラの前に立った。
「ティア、どれが鼠を食べたのか分かったのですか?」
「えぇ・・・それじゃあ、聞かせてもらうわ・・・貴方達は本当に仲良しなの?」
ティアが使いのコブラに質問をすると、全ての使いのコブラが同時に頷いて答えた。
「そう・・・全員、仲良しなのね・・・」
すると、ティアの様子を見てステラが聞いてきた。
「あのう・・・使いのコブラに話しかけていますが・・・一体、なにを話そうとしているのでしょうか・・・?」
「えぇ、使いのコブラの中に一匹だけが嘘を付いていると思って質問をしているの。」
ティアは嘘を付いている使いのコブラがいると思って質問をしていた。
「・・・貴方達の中に秘密にしている事はあるか教えて?」
ティアが質問すると、使いのコブラ達は一斉に首を横に振った。
「そう・・・教えてくれないのね・・・だったら、貴方達の壺の中身を調べさせてくれないかしら?」
そう言ったが、使いのコブラ達は自分達の入っている壺の中を調べられたくないのか激しく首を横に振って拒否をしてきた。
「心配しないで、貴方達の壺を割るような事はしないから・・・それが嫌なら、正直に話してくれるならなにもしないわ・・・」
ティアは使いのコブラ達に約束をすると、どれが鼠を食べたのかを問い始めた。
「誰が鼠を食べたのかを教えてほしいの・・・そうしてくれたら、貴方達になにもしないと約束をするわ・・・」
ティアにそう言われて、使いのコブラ達は大人しくなって動かなくなった。
「安心して・・・すぐに終わらせるから・・・」
ティアは五匹の使いのコブラ達の様子を確認し始めた。
「いよいよ、どれが正解か当てるな・・・」
すると、ティアは右に二番目の使いのコブラの目が合った。
「鼠を食べているのは貴方ね・・・一瞬だけど、目をそらしているように見えたけど・・・見間違いではなかったわ・・・」
そう言うと、ティアの選んだ使いのコブラは白状したかのように壺の中から鼠の尻尾を取り出して見せた。
「ちゃんと、言う事を聞いて鼠を食べていたと答えてくれました。」
「使いのコブラは主人には逆らってはいけないと思っているらしいからね。」
ティアが試練を乗り越えると、アヌビスの声が聞こえてきた。
『よくぞ、第一の試練を乗り越えた・・・さぁ、先に進んで次の試練を受けるがいい・・・』
アヌビスがそう言うと同時に、奥の前の壁が動き出すと階段が現れた。
『次の試練を行う場所で説明をしよう・・・』
そう言われたティア達は奥に現れた階段を上がって行った。
61章 第二の試練
ピラミッドを上がって行くと、ティア達は部屋に辿り着いた。
『それでは、二つ目の試練を行う・・・目の前を見るのだ・・・』
辿り着いた部屋には長い一本道と底なしの穴が両脇にあった。
「両脇に穴があるけど、ここではどんな試練をするの?」
『そうだ。第二の試練は渡り切ればいいだけだ・・・』
「この道を?本当にそれだけ?」
イヴは疑ったが、アヌビスからなにも答えが返ってこなかった。
「・・・なんで、なにも言わないの?」
『渡って見れば分かる事だ・・・さぁ、この道を渡るがいい・・・』
アヌビスの声が聞こえなくなると、ティア達は目の前の一本道を見た。
「そう言われても、普通の道にしか見えないよ?」
「とりあえず、気を付けながら渡った方いいぞ・・・前の遺跡みたいに仕掛けが隠されているに違いないからな・・・」
ギルバートはそう言ったが、アランは呆れながら呟いてきた。
「・・・二回も仕掛けを作動させていた君が言っても説得力がないよ・・・」
そう呟かれてもギルバートは気にせずに遺跡のような仕掛けがないか調べてみた。
「・・・なにも無いな。」
「良かった・・・前みたいに起動させてしまうかと思いました・・・」
「なんだよ?俺だって、知らなかったから仕方なかっただろ?」
ステラはギルバートが罠を作動してしまうような事がないと安心した。
「・・・とにかく、先に進んではどうだろうか?もしかすれば、進んでいる内に罠が動く可能性も考えられるぞ。」
ヘイゼルにそう言われたティア達は警戒を怠らないように渡り始めた。
「なにかあったら心配だから、慎重に渡った方が良さそうだね。」
「・・・壁の中や深い穴から、なにかが飛び出してきたりするような気配はないが・・・本当に試練を行っているのだろうか・・・?」
ヘイゼルとこれが試練なのか疑問に思った。
「待ってください。」
ステラが呼び止めてくると、その場で耳を澄まし始めた。
「ステラ、危ないから離れていた方がいいわ。」
「・・・今、穴の方からなにかの音が聞こえた気がしました。」
ステラは耳を澄ましてみると、なにかの音を聞き取っていた。
「はあっ?奥が見えないぐらいに深い穴なのに・・・」
ギルバートも耳を済ませてみると、アヌビスの声が聞こえてきた。
『・・・人間の少女よ。よくぞ、気が付いたな・・・いつまでもこの道に留まり続けていれば、とんでもない目に合うので渡り切っておいた方が良いぞ・・・』
「ちょっと待って、それってどう言う意味なの?」
イヴの聞き出そうとしたが、アヌビスはなにも答えようとはしなかった。
『時期に分かる事だ・・・無事に渡り切る事ができれば話すとしよう・・・』
そう言い残して、アヌビスの声が聞こえなくなった。
「この道に留まるのは危険だと言っていたが・・・なぜ、アヌビスはそのような事を言ったのだ・・・?」
「なんだか、嫌な予感がしてきます・・・急いで渡った方がいいみたいです・・・」
アヌビスの言葉を聞いたステラは急いで渡り切った方がいいと言ってきた。
「さっき、ステラが言っていた穴から音が聞こえた事も気になるわ。」
「急がなくちゃ・・・多分、大変な事になると思うよ・・・」
急いで渡ろうとすると、穴の中からなにかの音が聞こえてきた。
「この音は・・・さっき、聞こえてきた音です・・・穴の方から聞こえてきます・・・」
ティアが耳を澄ましながら穴を覗いてみると、なにかがこちらへと上がろうとしていた。
「アラン?顔が青くなっているけど・・・?」
イヴはアランの顔が真っ青になっている事に気付いた。
「そりゃあそうだろ・・・アラン、絶対に見ない方がいいぞ・・・」
しかし、ギルバートが言った時には既に手遅れだった。
「ギル・・・あれって・・・!」
「遅かったか・・・そうさ。お前の嫌いな虫が溢れ出て来たぞ・・・」
アランが顔を青ざめるのも無理も無かった・・・そう、大量のスカラベが穴から溢れ出ようとしている事が目に見えた。
「まさか、アヌビスが大変な目に合うって言っていたのはそう言う事だったの・・・!」
「急いで渡り切るぞ!」
ティア達は急いで走り出そうとしたが、アランがその場で蹲って動かずに怯えてしまっていた。
「アラン!立ち上がって・・・!」
「無理だよ・・・体が震えて動けない・・・!」
アランは恐怖で動けなくなっていた。
「スカラベはそこまで来ている・・・急がなければ、喰われてしまう事になるぞ!」
すぐそこまでスカラベが這い上がっており、渡り終えた道の方からもスカラベで埋もれていた。
「もう、スカラベがそこまで来ている・・・アラン、俺の背に乗れ!」
ギルバートはとっさにアランを背負うとティア達は急いで走り出した。
「アラン、しっかり捕まってくれよ・・・」
「ゴメンよ・・・僕が虫嫌いなばかりに・・・」
「俺達は友達だろ?だったら、見捨てる訳にはいかないじゃねぇか!」
「・・・ギル。」
そのまま走り出している中でスカラベが近くまで迫って来ていた。
「急いで!スカラベが、そこまで迫って来ているわ!」
その時、部屋の出口が徐々に閉まりだした。
「マズイぞ・・・扉が完全に閉まれば、スカラベの餌食になっちまう・・・!」
「なにをしている?このままだと、皆スカラベの餌食になってしまうぞ!」
「急いで!閉じ込められてしまうわ!」
完全に扉が閉まる直前にティア達は部屋から脱出する事ができた。
「危なかったな・・・もう少しで、スカラベの餌になるところだったぞ・・・」
「ゴメンね・・・僕のために・・・」
落ち着きを取り戻したアランがギルバートだけでなくティア達にも謝罪した。
「お前の虫嫌いには困った物だな・・・いい加減に慣れてくれよな?」
「・・・うん。」
そう言って、アランを起こすとアヌビスの声が聞こえて来た。
『よくぞ。第二の試練を乗り越えた・・・突然、スカラベが這い上がってきた事に驚かされたに違いない・・・』
アヌビスがそう言ってくると、アランは息を整えてから言ってきた。
「当然だよ・・・まさか、穴の中から大量のスカラベが溢れ出て来るなんて・・・」
なぜ、スカラベの事を教えてくれなかった事に根を持っているようだった。
「・・・アラン、怒っていますか?」
「それもそうだよ・・・試練の内容を教えてくれても良かったと思っているよ・・・」
アランが不機嫌そうに言うと、アヌビスはこのように答えてきた。
『この試練の内容は教えないようにしているのだ・・・渡る前に言ってしまえば、試練にはならぬぞ?』
「だとしても・・・なにかが出て来る事だけは伝えて欲しかったよ・・・」
アランがそう言うと、アヌビスが「すまぬ・・・」と謝ってきた。
『無事に乗り越えた事なので、第二の試練について教えよう・・・先程の部屋で行っていた試練とは・・・一本道を辿って穴の中から溢れ出ようとしているスカラベから死肉としてスカラベの餌食にならぬように部屋を出る事だったのだ・・・』
「・・・それで、扉を閉めてスカラベの餌食にするつもりだったんだね・・・」
アヌビスから試練の内容を聞いたアランは怒りが込み上げていた。
『簡単に言えば、スカラベが満たされた部屋に永遠に閉じ込められるだけでなく、死肉として喰われぬようにするには部屋から脱出する事が第二の試練だったのだ。』
アヌビスから試練の内容を聞いたアランは怒りが込み上げるどころか、想像してしまった事により顔が真っ青になって気を失う寸前になっていた。
「アラン・・・無事だったし、その事を忘れようぜ・・・?」
ギルバートはアランが気絶をしてしまわないように落ち着かせた。
『それでは、次の階まで上がってくるがよい・・・』
第二の試練も乗り越えたティア達はピラミッドの中を上がっていった。
62章 アヌビスとの対面
それから、ティア達はピラミッドを上がって行くと棺桶が幾つもある部屋に着いた。
「今度は棺桶がいっぱいある部屋に着いたね・・・ここに、ピラミッドで眠っている人かな?」
イヴがそう思っていると、アヌビスの声が聞こえてきた。
『その通りだ・・・この部屋はピラミッドで眠る者達だ・・・そして、ここが最後の試練を行う場所となっているのだ・・・』
ティア達のいる部屋は最後の試練を行う場所だった。
「最後の試練が罰の当たりそうな場所なのかよ・・・俺達に祟られてくれと言わんばかりで気味が悪ぃぞ・・・」
ギルバートは縁起でもない事を口にしながら棺桶を見回した。
「ギル、不安になる事を言わないでください・・・それに、棺桶の中で静かに眠っている人達に失礼だと思いますよ?」
「そりゃあそうだな・・・ここで、眠っている奴等に聞こえちまうよな・・・」
ステラはギルバートを叱っていると、ティアはここで行う試練の内容について訊ねた。
「ここでは、どのような試練を行えばいいのかしら?」
『・・・この部屋に眠っている者達を倒せるかどうか、確かめさせてもらう試練となっている・・・』
「それって、どう言う・・・」
その直後、部屋に置いてあった棺桶の蓋が開いた。
「これって・・・ミイラじゃない・・・!」
棺桶の中に出てきたのは、包帯を巻かれていた人間のミイラ達だった。
『そなた等にはここで眠る者達を倒せるかどうかを見させてもらうぞ・・・』
アヌビスがそう言うと同時に、棺桶の中にいたミイラ達が一斉に呻き声を挙げながら動き始めた。
「まさか、ミイラと戦わなければいけないの・・・?」
『その通りだ・・・ここにいるミイラ達をどう対処をするかを確かめさせてもらう試練だ・・・健闘を祈るぞ。』
そう言って、アヌビスの声が聞こえなくなるとミイラ達が次々と棺桶の中から出てきた。
「ミイラはゾンビみたいなものだから、動きが鈍いからなにも問題ないよ。」
戦闘が始まり武器を手にしたが、ティアだけは剣を抜こうとしなかった。
「ティア、早く剣を抜けよ?」
「ごめんなさい・・・既に死んでいる人達を傷付ける事なんてできないわ・・・」
ティアはミイラ達と戦う事に拒絶をしていた。
「なにを言っているんだよ?コイツ等は人間じゃないから問題ないだろ?」
ギルバートはそう言ってきたが、ティアは剣を手にしようとはしなかった。
「ミイラは元々人間だった事はギルだって知っているでしょ?」
包帯を巻いた人間の死体からミイラに変化してしまった哀れな存在だと言う事がティアには伝わってきていた。
「まぁ、コイツ等はもう死んでいるが・・・お前にとっては死んだ人間として見ているから戦いたくなくなるのも当たり前だよな・・・」
そう言っている間にもミイラ達は目の前まで迫って来ていた。
「ティア、気持ちは分かるけど・・・この状況をどうにかしなくちゃ・・・」
「・・・本当にこれでいいと思うの?」
ティアはそう言ったが、仲間達はミイラと戦闘を始めた。
「相手はゾンビみたいだから光属性には弱いよ。」
アランはミイラに向けて魔法を唱えた。
『フラリリア!』
アランが魔法を唱えると、咲いた花が開花するかのように輝く眩い光が放たれた。
「やっぱり・・・フラリリアでも効果があるみたいだね・・・」
ミイラは光の魔法に触れた事で苦しみ始めた。
「暗い場所にいる奴は光に弱いみたいだな。」
ギルバート達が戦っている最中に戦闘に参加しなかったティアを見ていた。
「皆、申し訳なさそうに戦っていますが・・・本当にこれで良かったのでしょか・・・?」
その様子を見て、ステラが不安そうにティアに聞いた。
「なんだか、死んでいる人達と戦っているみたいでこれ以上は見ていられません・・・」
見ていられなくなったステラは、目を瞑りながらティアに抱き着いた。
「私も同じ気持ちよ・・・死人と戦う事は間違っていると思うわ・・・」
そう言うと、ティアはステラを優しく抱きしめた。
「・・・これが試練だとしても、死人と戦ってはいけない事なの・・・それなのに、皆はミイラ達と戦っている・・・この方法では死んでいる人達を冒涜してしまう事と一緒よ・・・」
ティアはこれ以上、死人を戦わせたくないと思うとステラが意を決した。
「もう止めてください!」
ステラは声を挙げて、ギルバート達の戦闘を止めた。
「ステラ?」
突如、ステラが声を張り上げてきた事で驚いて戦闘を止めた。
「これ以上、戦わないでください・・・ここで眠っていた人達が可哀想です・・・」
ステラはミイラ達との戦闘が続いている事に悲しんでいた。
「・・・だが、今でも私達の事を襲いかかって来ているぞ?」
ヘイゼルはそう言ったが、ステラは首を横に振ってきた。
「いいえ・・・襲って来たのではなく、眠りを妨げられたくなかったからだと思います・・・」
そう言うと、ティアがステラに代わって話し始めた。
「ステラの言う通りよ・・・死人を倒してしまう事は人を殺してしまっている事と一緒で・・・アヌビスはきっと、ミイラ達を倒す試練ではなくて死人を相手にどうすればいいのかを考えらせられる試練だと思うの・・・ステラもその事に気付いているはずよ・・・」
ステラは静かに頷くと、ギルバート達は二人が戦闘に加わろうとしなかった訳を理解した。
「はい・・・棺桶で眠っていた人を傷付けてしまってはいけない事です・・・人間だった人の魂が悲しませてしまいます・・・」
すると、イヴは二人の言っている事が正しいと思った。
「そうだね・・・叔父さんに人を殺さないように戦う事を教えられてきたから・・・もちろん、アタシもだけど・・・それに気付かなかったからミイラ達を傷付けて・・・ゴメンね。」
イヴはその事に気付かずにミイラ達と戦っていた事を謝罪した。
「・・・これまでだって、ティアはモンスターやデスドゥンケルハイト軍と戦っても命を奪うような事をしないように戦って来ました・・・例え、危険なモンスターや人間相手でも殺すような事はして来なかったはずです・・・」
ステラは旅を始めてから、ティアが戦闘で相手を殺すような事はしてこなかった理由を知っていた。
「それもそうだな・・・ナナクビノリュウの時だって、トドメを刺そうとした所を止められた事があったけな・・・」
ギルバートは以前ナナクビノリュウにトドメを刺そうとした際にティアが止めに入ってきた事を思い出した。
「やっぱり、お前もティアと同じで命を大事に思ってくれているんだな・・・」
そう感心しているとミイラ達が標的を変えたのかティアとステラに近付こうとしていた。
「ヤバイぞ・・・ティアとステラに、標的を変えやがった・・・!」
二人を助けようとしたが、ティアが止めに入って来た。
「待って・・・この試練の本当の意味が分かったの・・・」
「ティア、それはどう言う事なの?」
ティアは冷静にしながらミイラ達と話し始めた。
「・・・私達は貴方達と戦うつもりはないの・・・だから、これ以上襲ってくるのは止めて安らかに眠っていてほしいの・・・」
ティアは戦う事がないと伝えると、ミイラ達は言葉が伝わったのか敵意が無くなった。
「見てください・・・ミイラ達が棺桶に戻っていきます・・・」
ミイラ達はティアの言葉を聞いて大人しくなったのか棺桶の中へと戻って行った。
「ティア・・・今のどうやって、ミイラ達を棺桶に戻したんだ?」
「分からないの・・・突然の事だったから・・・」
ティアがそのように言うと、ギルバートは疑うように聞いた。
「それじゃあ、あの光がなんだったのか分からないのかよ・・・?」
そう思った直後、アヌビスの声が聞こえてきた。
『流石はエレノアの血を引いた末裔・・・そなたに秘められている光の力が溢れ出た事でミイラ達を棺桶に戻すとは・・・やはり、エレノアの血を引いている者は命を大事な物と思ってくれている人間であるな・・・』
アヌビスがティアの行動に満足げにしているように聞こえた。
63章 エレノアの試練
「なぁ・・・その秘められている光の力ってなんだよ?」
ギルバートが光の力とは一体どのような力なのかを訊ねてきた。
『エレノアの血を引く一族達には先祖代々受け継がれていた特別な光の力が秘められているのだ・・・』
「それじゃあ、さっきの光となにか関係しているのか?」
『無論だ。その者から放たれた光こそがエレノアの光なのだ・・・』
ミイラ達に襲われる際にティアから放出された光こそがその力と言うのだった。
「大体は分かったよ・・・それじゃあ、最後の試練もクリアした事だし・・・そろそろご対面させてくれよ?」
『いいだろう・・・そなた達は全ての試練を乗り越えた・・・それでは、余と対面をする事を許可しよう・・・』
アヌビスがそう言うと、目の前にあった扉が開かれた。
『光翼の涙を手に入れたければ余の元まで来るがよい・・・光翼の涙を渡すかどうかは・・・そなた次第によっては授けてやろう・・・』
試練を全て乗り越えたティア達はアヌビスのいる部屋と入った。
「・・・正直、駄目かと思っていたけれど・・・倒さずに済んで良かったわ・・・」
ミイラ達が眠っている棺桶を見て、ティアは安らかに眠っている事に安心をした。
『よくぞ、ここまで来た・・・エレノアの血を引く末裔よ・・・』
部屋に入った直後、ティア達の前にアヌビスが姿を現した。
「ようこそ・・・余はアヌビス・・・このピラミッドの主なり・・・」
アヌビスはジャッカルの獣人の姿をしていた。
「貴方がアヌビスね・・・」
「そうだ・・・さて、エレノアの末裔よ。ピラミッドに来た理由を問うてみよ・・・」
ピラミッドに訪れた理由を聞かれたティアはここへ来た理由を話し始めた。
「・・・私がここへ来たのは光翼の涙を手に入れるために来ているの・・・」
「なるほど・・・それで、ピラミッドへと訪れて来たのだな・・・いいだろう。」
アヌビスは持っていた杖を振るうと、瞬時に四つ目の光翼の涙が現れた。
「そなた等の探している光翼の涙はこれで間違いはないな・・・?」
「えぇ・・・」
そう答えると、アヌビスが彼女を見つめた。
「さて・・・これを受け取る前に一つだけ聞かせて貰おう・・・エレノアの血を引く人間よ・・・そなたはなぜ、光翼の涙を集めてまでもデスドゥンケルハイト軍を倒そうと思っているのだ?」
アヌビスが旅をしている理由を訊ねてくると、ティアはその理由を全て答えた。
「・・・デスドゥンケルハイト軍によって、故郷である村を滅ぼされてある男によって私の両親は殺されてしまったの・・・」
「なるほど・・・つまり、光翼の涙を探し出し、デスドゥンケルハイト軍を倒そうとするだけでなく、殺された両親の仇を討ちたいと・・・そう言いたいのだな?」
旅をして入り理由を聞いたアヌビスが納得をするとティアは「えぇ・・・」と答えた。
「これまでも三つの光翼の涙を手に入れていて・・・今でもその光が私の中に感じられてくるの・・・」
ティアがそう言いながら胸に手を当てると、体の中にある三つの光翼の涙が感じられた。
「確かに・・・どうやら、光翼の涙がそなたと一体化をしているようだな・・・これだけの光翼の涙を集めたのであれば・・・エレノアの力を発動するには十分に足りているな・・・」
「エレノアの力?」
ティアがアヌビスの言う力とはなんなのかと思うと、アヌビスは彼女の様子を見て確信した。
「その様子だと、そなたの両親に聞かされていなかったようだな・・・光翼の涙とはエレノアの力によって、作り出された翼だ・・・しかし、デスドゥンケルハイト軍の侵攻してきた事により、聖地と共に光翼の涙は奪われてしまった事で八つもあった光翼の涙は七つを一つずつ世界中に隠されてしまったのだ・・・」
二十年前、デスドゥンケルハイト軍が聖地を占領された事で八つの内の七つは世界中に隠されたと言うのだった。
「しかし、当時はエレノアの血を引いた赤子が産まれていなかったためにエレノアの力を受け継ぐ者がいなかったために奪われてしまったのだろう・・・そして、なんとか脱出したエレノアの血を引く人間は四年後に一人の子を産んだのだ・・・」
「・・・その人は私のお母さんなのね。」
そう、エレノアの血を引く人間こそがティアの母親だった。
「その四年後に私が産まれて・・・今まで、エレノアの末裔だと言う事を隠しながら育ててきた・・・きっと、話す時が来るまで黙っていたのね・・・?」
「そうだ・・・しかし、そなたの両親はデスドゥンケルハイト軍に殺されてしまった際に話したのかも知れぬぞ?」
父親が死を間近にした際に全てをティアに話したのだと感じられた。
「アヌビス、さっきは七つと言っていたけれど・・・最後の光翼の涙は何処に隠されているのか分からないの?」
八つ目の光翼の涙について聞こうとしたが、アヌビスは首を横に振ってきた。
「分からぬ・・・八つ目の光翼の涙だけは何処に隠されているのか知らぬ・・・」
アヌビスはあと一つの光翼の涙だけは知らないようだった。
「場所が何処にあるのか知っていれば教えられたが・・・力になれずに申し訳ない・・・」
アヌビスが申し訳なさそうにしながら謝罪をしてきた。
「それにしても・・・ティアが、ラヴィレイヘヴンを治めていたエレノアの末裔だったなんて・・・今でも、信じられないと思っているよ・・・」
「私も初めて光翼の涙が私の中に吸収された時はエレノアの血を引いていたと思っていたわ・・・」
ティアも改めて、エレノアの末裔である事を実感するとアヌビスが言ってきた。
「さて・・・現在、大勢の人間達を連れて余のピラミッドへと近付こうとしているが・・・この意味が分かるな・・・?」
アヌビスが意味深に言うと、ティア達は理解していた。
「これを見れば、説明しなくとも分かるぞ・・・」
アヌビスが魔法で映像を出すと、砂漠の中で軍隊がピラミッドを目指している様子が映し出された。
「デスドゥンケルハイト軍も砂漠に来ているみたいだね・・・しかも、僕達のいるピラミッドに向かっているみたいだよ・・・でも、どうして僕達がここにいる事が分かったのかな・・・?」
「・・・これって、誰かがばらしたからじゃないの?」
イヴがそう言ってくると、ステラ達も同様の事が感じられた。
「確かに・・・誰かが言いふらしたせいでここへ来たのだと考えられます。」
「・・・それだったら、アンタならできるよね?」
ヘイゼルこそが内通者だと、イヴは断定して指を差してきた。
「そもそも、脱走した事も怪しいし・・・あそこで倒れていたのも芝居を打っていたからだと考えられない?」
「・・・まだ、私の事を疑っているのか?」
「当然でしょ?そもそもラヴィレイヘヴンから逃げ出した時点で怪しいし・・・きっと、暗殺部隊と一枚噛んでいたに違いないと思うけど・・・?」
「イヴ・・・ヘイゼルは私達を裏切るような人では」
彼と初めて出会ってから、ティアはヘイゼルが裏切るような人間ではないと信じていた。
「・・・ティアがそう言うなら、あの男が内通者じゃないとなると・・・誰がここにいる事をばらしたの・・・?」
イヴは誰が内通者だと思う中でギルバートはヘイゼルを見つめていた。
「しかし、これだけの人数がいるとなると・・・私達だけでは不利になるのではないのか?」
ヘイゼルが兵士達の数が多いと知ると、アヌビスが落ち着いた様子で言ってきた。
「そのようだ・・・このままでは、皆殺しにされるのも時間の問題であろう・・・それまでに、エレノアの血を引く末裔の力を引き起こす試練を与えよるとしよう・・・」
アヌビスがそう言うと、ギルバートはどう意味なのかと思って聞いた。
「試練って・・・さっきので、終わったんじゃないのかよ?」
「余の用意した試練は終わっているが・・・エレノアの力を発揮させる試練だけが残っている・・・デスドゥンケルハイト軍がここに来るまでには時間がかかる・・・それまでに試練を乗り越え、そなたの中に秘められているエレノアの力を発揮させるのだ・・・」
エレノアの力を覚醒させようと、アヌビスはティアに試練を与えるつもりだった。
「分かったわ・・・それで、どのような試練を行えばいいのかしら?」
「まずは、余の前に立つがよい・・・試練を行うのはそれからだ・・・」
ティアは言われた通りにアヌビスの目の前に立った。
「それで、一体なにを・・・」
試練の内容を聞き出そうとすると、アヌビスが目を光らせるとティアは倒れてしまった。
「ティア!?」
「殺してなどおらぬ・・・試練を行うために、意識を試練の場に飛ばしたまでだ・・・心配はするな・・・終われば目を覚ますだろう・・・」
アヌビスはティアの意識を試練の場に飛ばしたと言うのだった。
「試練が終わるまで、俺達はここで待っていればいいのか?」
「さよう・・・仮にデスドゥンケルハイト軍がここに辿り着いたとしても、そう簡単にここまでは来られる訳がなかろう・・・それまでは試練を終えるまで待っているがいい・・・」
こうして、ギルバート達はティアに与えられた試練を終えるまで待つ事にした。
64章 過去の映像
「・・・ここは?」
ティアが目を覚ますと、辺り一面が真っ暗な空間だった。
「確か・・・エレノアの力を発揮させる試練を受けてからアヌビスの前に立っていたら・・・」
意識を失う前の事を思い出すと、ティアは周りを見回してみた。
「それよりも・・・ここは、一体何処なのかしら・・・?」
ティアが周りを見回してみたが、真っ暗でなにもない空間が広がっているだけだった。
「なにもなさそうね・・・・これから一体、どうすればいいの・・・?」
そのまま歩いていると、ティアの目の前に光が飛んできた。
「この光は・・・?」
光を見つめていると、光の中から映像が映し出された。
「なにかが見えて来たわ・・・」
ティアは光を見つめていると、その中から映像が流れ始めた。
「これは・・・」
光の中で見えてきたのは赤ん坊だった頃のティアだった。
「・・・どうやら、既にピラミッドの中に入っているようだな・・・」
一方、ピラミッドの外ではソルと大勢の兵士達が到着していた。
「はっ・・・足跡を見れば分かると思いますが、奴等はピラミッドの中にいると思われますが、いかがいたしましょうか?」
兵士の一人がどうするか訊ねてくると、ソルはピラミッドを見上げながら言ってきた。
「・・・あの人間達が出てくるまではこの場で待機だ。」
そう言うと、兵士の一人がソルの発言に驚いた。
「待機ですか?しかし、我々はエレノアの末裔とその仲間達の始末を命じられて来たはずです。それにこの暑さに耐え切れずに倒れてしまうと思いますが・・・」
「これを見ろ・・・」
そう言って、ソルが自身の魔力が込めて玉を作りだすとピラミッドに向けて放ちだした。
「・・・どうやら、侵入された直後に結界を貼られているようだ。」
ピラミッドには結界が張られており、魔力の玉は結界によって跳ね返された。
「この結界は強力だ。アヌビスが結界を破らない限りは出入りする事ができないぞ。」
跳ね返された魔力の玉が後ろの方角へと落ちていった。
「俺達が入らなくても・・・四つ目の光翼の涙はアヌビスが守っている・・・そう簡単には奪われてしまう事はないだろうな・・・」
自らが態々止めに行かなくてもアヌビスがいるから大丈夫だとソルは思っていた。
「お言葉ですが・・・奴等が光翼の涙を手に入れてしまう前に我々もピラミッドへと入って阻止するべきだと思います・・・」
待機し続けるよりもピラミッドの中に入った方がいいと兵士は断言した。
「分かっている・・・あの人間達ならアヌビスの元へ辿り着いているはずだ・・・アヌビスに勝つ事ができなければ手に入れる事ができないだろう・・・」
ソルは既にアヌビスと出会っているだろうと考えていた。
「それならば、今すぐにでもアヌビスに加勢を・・・」
「いや・・・アヌビスは簡単に倒せる存在じゃない・・・あの人間達が束になっても敵う訳がないと仰っていたぞ・・・二十年前に光翼の涙を守る番人としている事を忘れたか?」
二十年前にアヌビスは光翼の涙を守る番人として守り続けているのでピラミッドに入らなくていいと言ってきた。
「つまり、アヌビスがいれば奴等は敵わないと・・・?」
「そう言う事だ・・・万が一、アヌビスが敗れたとしても結界を解かなければピラミッドの中に閉じ込められる事になるだろうな・・・」
アヌビスが敗れても結界がある限り、ティア達が出てくるのは不可能だった。。
「流石はソル様・・・そこまで、お考えになられているとは・・・」
「よく、考えてみれば当然の事だ・・・突入しなくても、待機しておいた方がいいぞ・・・」
「はっ・・・それでは、我々も待機しております・・・」
ソルにそう言われた兵士達は、ピラミッドの前でティア達が出てくるのを待つ事にした。
「これだけ見せられたら・・・懐かしく思えてくるわ・・・」
同じ頃、ティアは誕生してから現在までの出来事を見せられていた。
「・・・今までの出来事を見せられている・・・これまでの思い出が映し出されていると言う事は・・・あの惨劇が起こった日までも見せられて・・・」
ティアがそう思った直後、映し出されている映像が変わった。
「・・・やっぱり、この時の映像も見せられるのね・・・」
映し出された映像には故郷の村で起きた惨劇が引き起こされている映像に切り替わった。
「・・・私は殺されそうになった家族を助けようとして兵士と戦った・・・そのせいでこの村に住む人達は殺されて村は滅ぼされてしまった・・・」
映像には罪も無い村人達がデスドゥンケルハイト軍に皆殺しにされている光景を見た。
「そして・・・私の家にまでやって来てお父さんは私とお母さんを守るために戦ってくれた・・・」
光の中に映し出されている父親とソルが戦っている映像に切り替わっていた。
「・・・戦っている最中にソルは魔法で家を燃やして私とお母さんを燻り出そうとしていたのも覚えているわ・・・」
映像が切り替わると、ソルの魔法で家を焼かれた光景が映し出された。
「そして、お母さんはお父さんが危ないと思って、庇おうとして一緒に殺されてしまった・・・それなのに私はその光景をただ見ているだけだった・・・」
映像はソルが両手剣を振るって両親が斬られてしまった光景を見せられた。
「・・・お父さんはエレノアの一族だと言う事を伝えてから世界中に隠されている光翼の涙を集めてデスドゥンケルハイト軍を倒してほしいと私に希望を託してから息を引き取った・・・これが、私の旅の始まりだった・・・」
ティアは映像を見ていると、悲しくなってきて涙が零れ始めた。
「・・・お父さん、お母さん・・・そして、村の皆ごめんなさい・・・」
過去に起きた映像を見た事で、ティアの涙が止まらなくなっていた。
「私が・・・殺されそうになった人を助けようとしたせいで・・・関係のない人達も死なせてしまって・・・!」
ティアはかつて処刑されそうになった家族を助けた事で惨劇を招いてしまった事を悔やみながらも悲しみや涙が止まらなかった。
「・・・あの時、私が助けてしまったから殺される事はなかったの・・・?」
ティアは家族を助けようとしなければ、あの惨劇が起こらなかったと思った時だった。
「そうね・・・貴方があそこに行かなければ、関係のない人達が殺される事はなかったのよ・・・」
声が聞こえたティアは顔を挙げると、もう一人の自分が立っている事を目にした。
「貴方は・・・どうして、私と同じ姿をしているの・・・?」
「私はティアだから・・・もう一人のティア。」
「もう一人の・・・私・・・?」
ティアはもう一人の自分を見ていると、もう一人の自分であるティアが言ってきた。
「えぇ・・・だから、もう一人のティアとして貴方とお話をしているのよ。」
そう答えると、もう一人のティアは涙を流しているティアにこう聞いてきた。
「それじゃあ、一つ聞くけれど・・・貴方はどうして命を守るために戦うの?」
もう一人のティアに訊ねられると、ティアは本当の事を話し始めた。
「それは・・・命が失ってしまうのを診たくないから・・・」
「そう・・・でも、殺さないように戦っているせいでいつまでも経っても仇の相手を殺せずにいるのは間違いではないでしょ?」
もう一人のティアにそう言われたティア本人でもその事について理解していた。
「貴方の言う通り・・・これまでだって、人だけでなくモンスターの命を奪う事もなく戦い続けて来たわ・・・ソルと戦った時も命を奪いたくはないという気持ちを強く感じられていた・・・エレノアも命を奪わないようにしていたはずよ?」
「その通りよ・・・エレノアも貴方と同じように命を奪ってしまうような事は望んではいなかった・・・貴方だって、その事について教えられてきたでしょ?」
「えぇ・・・お父さんやお母さんにエレノアの事について教えられてきたわ。」
ティアは幼少時代に両親からエレノアについて教えられていた。
「貴方の家族もエレノアと同じように命を大事な物だと思ってくれているのね・・・だったら、少しばかり確かめさせてくれないかしら?」
もう一人のティアがそう言うと、ティアは彼女を見つめた。
「貴方が私を倒せる覚悟はあるかどうか・・・確かめさせてもらおうかしら?」
剣を抜き構えた自分を見て、ティアは本気で殺すつもりなのだと悟った。
「・・・エレノアの試練と言うのはもう一人の自分と戦わなければいけない事だったのね・・・」
「そうよ。貴方が人間同士と戦って殺し合ってまでも私を倒せるかどうかよ?」
エレノアの試練とは自分同士が戦い勝つ事だが、命を奪うような事はしないティアにとっては過酷すぎる試練だった。
「別に無理をしなくてもいいけど・・・貴方は一体どうするつもりなのかしら?」
もう一人の自分に聞かれたティアは少し考えてから剣を抜き構えた。
「勿論・・・受けて立つわ・・・」
「そう言うと思ったわ・・・それじゃあ、自分同士の戦いを始めようかしら・・・」
自分同士が戦い合うエレノアの試練が開始された。
65章 自分との対決
「たった今・・・エレノアの試練が開始された・・・」
ティアの試練が始まったと悟ったアヌビスは試練が始まった事をギルバート達に伝えた。
「いよいよ、始まったんだな・・・エレノアの試練が・・・」
ギルバートが呟くと、ステラが倒れているティアを気にしながら聞いてきた。
「あのう・・・ティアは試練が終わるまでこの状態のままなのでしょうか?」
ステラが心配そうに聞くと、アヌビスはティアを見て平然とした様子で答えてきた。
「無論だ・・・先程も言ったのだが、この者は死んでおらず意識が別の場所に移し出されているので、試練を終えるまでは目覚める事はないだろう・・・」
しかし、アヌビスにそう言われてもティアは死んでいるようにしか見えなかった。
「・・・どう見ても、死んでしまっているようにしか見えません・・・」
ステラはティアが倒れている事が心配に感じていた。
「確かに・・・そう思えてもおかしくないよな・・・なぁ、アイツがどんな試練をしているか見させてくれないか?」
「良かろう・・・」
ギルバートの頼みを聞いたアヌビスは魔法でティアが試練を行っている映像を映した。
「見ろよ・・・ティアが二人いるぞ・・・」
映し出された映像にはティアがもう一人の自分と戦っていた。
「どうやら、自分同士と戦っているようだな・・・」
「はい・・・ティアはかなりの苦戦をしているみたいです・・・」
ティアは自分と同じ姿をした相手と戦い辛いのか、本物のティアはもう一人のティアに苦戦を強いられているようだった。
「この者は自分自身と戦っている・・・エレノアは一切の殺生をしない事を知っているな・・・?」
意味深なアヌビスの発言にギルバート達は完全に理解した。
「・・・それって、ティアが自分と戦って勝てるかと言う事だよね?」
「そんな事をしてまでも人間相手と殺し合っても大丈夫か試すつもりかよ?」
イヴとギルバートがそう言うと、アヌビスは平然としながら「そうだ。」と答えた。
「そなた等が思っているように・・・自分と一線を交えさせ、人間同士で戦えるかどうかを確かめさせてもらう試練となっておる・・・」
エレノアの試練、それは自分同士で戦い打ち勝つ事が試される事がエレノアの試練だった。
「自分同士が戦い続けるなんて・・・ティアは本当に大丈夫なのでしょうか・・・?」
ステラは心配をしたが、ただそこで見守っているしかなかった。
「はあっ・・・はあっ・・・!」
ティアはどうなっているのかと言うと、自分自身との戦いに苦戦を強いられている最中だった。
「どうしたの?それが貴方の力なの・・・?」
もう一人のティアが剣を向けてくるとティアは立ち上がった。
「いいえ・・・まだ、戦えるわ・・・」
「そう?どう見ても、自分を殺す処か人間同士と戦う事を恐れているようにしか見えないようだけど・・・?」
やはり、自分自身との戦いでも殺さないように戦っている様子だった。
「はあっ!」
ティアはそう言われてもなお攻撃を仕掛け続けた。
「・・・さっきよりも攻撃の勢いが弱くなっているわ・・・」
もう一人のティアは攻撃を避けてから反撃を仕掛けた。
「くっ・・・!」
ティアは攻撃を避ける暇も無く、もう一人の自分によって攻撃を受けてしまった。
「辛いでしょうね・・・自分自身に攻撃をされる気分はどうかしら・・・?」
ティアは自分自身の攻撃によって深い傷を負った。
「えぇ・・・私に傷を負わされた事が悲しく感じてくるわ・・・」
「・・・貴方の攻撃を喰らっているなら痛いほどに伝わってくるでしょ?」
もう一人のティアが嫌な記憶を彷彿させるように言ってきた。
「これまでの戦闘を思い出してみれば、人だけではなくモンスターにも殺さないように戦い続けてきた・・・」
「そうよ・・・貴方はどんな相手でも殺さないようにしながら戦ってきた・・・でも、そんな事をしても世界中の命を守れると思っているの?」
そう言ってから、もう一人のティアは剣を振るってきた。
「うっ・・・!」
ティアは避ける暇も無く、自分自身の攻撃を受けて倒れ込んだ。
「全く・・・貴方は本気で戦っていないようね・・・どう考えても、戦う以前に殺さないようにしているからいつまで経っても甘いままなのよ・・・?」
もう一人のティアがティア本人を見下すように言ってきた。
「本気で殺しに来れば勝てるのに・・・なんで、情を捨てきれないのかしら・・・?」
すると、もう一人のティアの発言にティアは立ち上がろうとしながら答えてきた。
「・・・同じ世界で産まれて来たのならお互いに傷つけ合いながらも人類同士が命を奪い合う事なんて・・・誰もそのような事は望んではいないわ・・・」
ティアは立ち上がりながらも殺し合いや戦争などで命を奪い合ってほしくはないと返答した。
「そうは言っても・・・初めから私と戦う事を拒んでいたでしょ?」
もう一人のティアは図星を突いたかのように挑発をしてきた。
「・・・まるで、自分自身を殺そうとしているみたいで貴方とは本当に戦いたくはないと思っていったわ・・・」
「つまり、貴方自身とも戦いたくはなかったと言う事なのね?だったら、この試練を諦めるとでも言いたいのかしら?」
「・・・誰もそのような事は言ってはいないわ。」
もう一人のティアが攻撃を仕掛けた直後、ティアは立ち上がり攻撃を剣で防いだ。
「私は・・・失われようとしている命を守りたい・・・例え、悪い人達でもその命を奪ってはいけない・・・人を殺して命を奪ってしまう事と同じだから・・・」
ティアは命を奪う事がなにかを語りながらも立ち上がる事ができた。
「・・・だったら、見せて貰おうかしら・・・生命を守るために・・・貴方と殺し合えるのかをね・・・」
二人のティアが同時に動き出し、お互いの剣が何度もぶつかり合った。
「そろそろ・・・この一撃で終わらせましょう。」
「そうね・・・どっちのティアが死ぬのかしらね・・・」
そう言うと同時に二人のティアは、この戦いを終わらせようとするために、光属性の魔力を体中に込めると同時に光る斬撃を繰り出した。
「本気で攻撃をしたのに・・・私と同じ攻撃をしてきて・・・」
そう言うと、ティアは片膝を着いてその場で倒れた。
「そっちこそ・・・負傷をしているのに・・・貴方にそのような力が秘められていたなんて・・・」
もう一人のティアも同様に片膝を着いてその場に倒れた。
「・・・この勝負・・・私の・・・」
勝負の勝敗を言おうとする前にティアは消滅した。
「・・・勝ちのようね。」
起き上がったティアは本物で勝利したのは彼女の方だった。
『よくぞ、試練を乗り越えた・・・そなたを元の場所に戻すとしよう・・・』
アヌビスの声が、聞こえてくるとティアはまたしても意識が失った。
「・・・ここは?」
目を覚ましたティアは、元の場所に戻っている事を察した。
「ティア、試練はどうだった?」
「えぇ・・・無事に試練を乗り越える事ができたわ。」
ティアの傷がなくなっており、ギルバート達に試練を乗り越えた事を伝えた。
「さて、試練を乗り越える事ができた事で光翼の涙をそなたに託すとしよう・・・半分しか集まってはいないがエレノアの力を発揮させる事ができるであろう・・・」
そう言って、アヌビスは光翼の涙をティアの前に出現させた。
「これが光翼の涙か・・・実物を目にするのは初めてだ・・・」
ヘイゼルはそのまま目にしていると、光翼の涙はティアの体の中へと吸収された。
「ティア・・・今まで以上に、光っているぞ・・・」
光翼の涙が吸収されたと同時に、今までにない光を放っていると言われたティアは、
自分の体を見て異変に気が付いた。
「えぇ・・・なんだか、前よりも光の力と魔力が上がったみたいに感じて来るわ・・・」
ティアはこれまで光翼の涙を四つも吸収した事で今まで以上に光の力が強まっている事が感じられた。
「八つある光翼の涙を半分も取り戻したのだ・・・これにより、エレノアの力を使えるまでになったのだ・・・」
「これまで、集めた光翼の涙は四つ目を手に入れた事で残りは半分・・・でも、最後の
一つだけはデスドゥンケルハイト軍が持っているけれど・・・」
ティアがそう言うと、イヴはデスドゥンケルハイト軍がピラミッドに向かっている事を思い出した。
「ティア、デスドゥンケルハイト軍がここへ来るの!」
「デスドゥンケルハイト軍が?」
「そうだ・・・もう既に余のピラミッドの目の前にいる・・・そなた等がピラミッドから出て来るのを待っているようだぞ・・・」
アヌビスが映像を見せてくると、兵士達がティア達を待ち伏せしている様子が映し出された。
66章 ティアに秘められた力
「これは・・・どうやら、既にピラミッドに辿り着けているようだぞ・・・」
その映像には数多くの兵士達が待機している様子が映し出された。
「この様子だと、私達がここへ来ている事を知っていて待ち構えているようだ・・・」
ヘイゼルがそのように推測すると、イヴがそっけない態度で言ってきた。
「それなら、元兵士のアンタが投降でもしたらどう?そうしたら、アンタを人質にしてアタシ達は逃げられると思うけど・・・?」
イヴは不機嫌そうに提案をしたが、ステラが止めに入ってきた。
「駄目ですよ!ヘイゼルを人質にしてはいけません!」
「冗談だよ・・・アタシはこの男を信用できないから言っただけ・・・それで、アタシ達はどうしたらいいのか教えてくれないかな?」
イヴはこの状況をどうすればいいのかアヌビスに聞いてみた。
「このまま出て行けば多くの兵士達に取り囲まれる事になってしまう・・・なので、余が結界を解いた後で転移すれば逃げられるだろう・・・」
アヌビスがそう言うと、映像が変化し数多くの兵士達が幾つも映し出された。
「何人いるのでしょうか・・・ワープベルや転移魔法を使う時間はあるのですか・・・?」
「あぁ・・・どれだけいるか分からないが俺達を殺しにかかるぐらいの数がいるのは間違いないみたいだぜ・・・」
次々と切り替わる映像には数えきれない人数の兵士達が幾つも映し出されていた。
「幸か不幸か・・・暗殺部隊はいないようだが・・・これだけの人数がいるとなれば・・・ここの被害も避けられそうにはないな・・・」
ピラミッドにも被害が被ってしまうと思っていると、ティアとイヴが切り替わっていく映像にある人物が映ったのを目にしていた。
「ティア・・・あの男も来ているよ・・・」
ティアとイヴはソルが映し出されたのを見て息を呑んだ。
「ソル・・・貴方もここへ来ていたのね・・・イヴ、お父さんとお母さんの仇を討つためにも必ず・・・」
「・・・分かった。」
見ていた映像が消えると、アヌビスがティア達に言ってきた。
「さて・・・余は守るべきだった光翼の涙をそなた等に託した事でその責任を問われるだろう・・・しかし、余にとっては好都合に等しい事だ・・・」
処分が下される事を悟っていたアヌビスは余裕がある様子でティアを見た。
「エレノアの末裔よ・・・デスドゥンケルハイト軍と戦う覚悟はできているか?」
アヌビスが訊ねると「えぇ・・・既に覚悟はできているわ。」とティアは答えた。
「つまり、貴方はエレノアの力を扱えるかどうかを確かめてもらいたい・・・貴方が言いたいのはそう言う事なのね?」
アヌビスが言いたかったのはそう言う意味だとティアは理解していた。
「流石はエレノアの血を引いた人間・・・デスドゥンケルハイト軍と戦っている間にもエレノアの力が発揮できるのかを知れないと思ったのだが・・・どうだ?このままなにもせずに投降するよりかは力を上手く扱えるか確かめるいい機会ではないのか?」
アヌビスの言い方はまるで修行の成果を試してもらおうと言うかのようだった。
「どうする?そなた等が出て来なければピラミッドの中で滞在し続ける事になるぞ?」
そう言われたティアは今の状況を考えてデスドゥンケルハイト軍と戦う決意をした。
「・・・アヌビス、私をピラミッドから出して・・・」
「良かろう・・・今から結界を解くので、そなた等を出すのはそれからだ・・・」
要望通りに魔法を唱えようとすると、ギルバートがアヌビスを止めてきた。
「ちょっと待てよ・・・エレノアの力が発揮できなかったらどうなるんだ?」
「・・・殺されてしまえば、そなたの血を引く者が途絶えてしまう事になるだろう・・・」
万が一エレノアの力が発揮できなければ、ティア達が死にエレノアの血を引く一族は絶滅してしまうだけだった。
「待てよ・・・それじゃあ、ティアが最後のエレノアの末裔だと言う事か?」
「そなたの言う通り・・・この者こそが唯一生き残っているエレノアの一族なのだ・・・」
アヌビスはティアがこの世で最後のエレノアの末裔だと言うのだった。
「私が最後のエレノアの一族・・・」
ティアは自分が最後の末裔だと知ると、アヌビスは軍勢が多い事を考えていた。
「しかし・・・あれほどの軍勢を一人で立ち向かうなどと、あまりにも無謀すぎる・・・ここは一致団結して戦うべきではないのか?」
「それもそうかも知れないわね・・・私は両親の仇を討つだけでなく、アヌビスだけでなくピラミッドで眠る人達も守りたい・・・だって、ここには大昔の人達が眠っているから・・・」
ティアはアヌビスやピラミッドの中で安らかに眠る魂達も守りたがっていた。
「貴方ならそう言うと思ったよ・・・皆も手伝ってくれるよね?」
イヴがギルバート達に問うと、一同が頷いて答えた。
「決まりね・・・アヌビス、結界を解いてから私達を入り口まで転送して・・・」
「あぁ・・・今から結界を解くとしよう・・・」
アヌビスは魔法でピラミッドを張っていた結界を解除した。
「結界は解いた・・・頼むぞ。エレノアの血を引く少女よ・・・」
ピラミッドを守ってくれるように祈りながら、アヌビスはティア達を入り口へと転移した。
「結界が解かれた・・・となれば、奪われたか死んだかのどちらになるな・・・」
そう思った直後、ティア達が目の前に転移して来た事で状況を理解した。
「・・・俺達の前に現れたとなると・・・アヌビスは守れなかったようだな・・・」
ソルはそう判断をすると、ティアから光が感じられた。
「ティア・・・四つ目の光翼の涙を手に入れているが・・・一体、どうやってアヌビスから光翼の涙を手に入れる事ができた・・・?」
ティアは宿敵から訊ねられても、落ち着いた様子で答えてきた。
「アヌビスが試練を乗り越えた事で託してくれたからなの。」
「試練・・・アヌビスが言っていたのは本当だったようだな・・・そのような存在がデスドゥンケルハイト軍に忠誠を誓うはずがなかった事が分かったぞ・・・」
ソルはアヌビスが裏切ったと悟ると、ヘイゼルもいる事を見て言ってきた。
「・・・ヘイゼル、まさか裏切り者のお前も生きているとなると・・・暗殺部隊は暗殺に失敗してしまったか・・・」
ソルは裏切り者であるヘイゼルが生きている様子を見て、暗殺に失敗したのだと悟った。
「アイザック・・・いや、暗殺部隊の詰めが甘かったとしか考えられないな・・・」
なにかを思う表情をしながらもギルバートが周りにいる兵士達について訊ねてきた。
「それにしても、いくらなんでも援軍を連れて来すぎなんじゃねぇのか?」
「なにを言っている?お前達が半分も光翼の涙を手に入れたとなれば、大勢の兵士を連れて来るのも当然の事だ・・・」
そう言っている間にも、周りにいた兵士達の殺気が強まっていった。
「・・・エレノアの末裔であるお前だけでなく、裏切り者のヘイゼルが生きていて仲間に加わっていたとは・・・まぁ、ダークタナトス様にとっては好都合な事だな・・・」
「ダークタナトス?それって、アンタ達の一番偉い人って事?」
「お前達には関係のない事だ・・・ただ、言える事があると言えば俺はそのお方の側近でもあるぞ。」
ソルはダークタナトスと言う人物の側近だった。
「側近・・・どうりで、あれほどの実力があったのね・・・」
以前ソルと戦った時にどれだけの実力者なのかがティアには伝わってきていた。
「俺の強さに気が付いていたようだが・・・まぁいい、これまでの光翼の涙を全て取り返させてもらうぞ・・・」
ソルがそう言うと同時に、全兵士が一斉に襲いかかってきた。
「・・・兵士達と戦っている暇はないわ・・・」
そう言って、ティアは一人で前進し兵士達を薙ぎ払って行った。
「待って!アタシも戦うよ!」
イヴもティアの後に連いて行った。
「まさか、イヴも行ってしまうとなると・・・私達は兵士達と戦っていた方がいるとしよう・・・」
「でも、相手が一人で強いのに・・・ティアはともかくとしてイヴがやられちまうぞ?」
ギルバートがそう言うと、ステラが心配そうにしながら訊ねてきた。
「・・・私達も一緒に行った方が良かったのでしょうか・・・?」
「あぁ・・・アイツ等がピンチになったら駆けつけた方がいいかもな・・・」
そう言って、ギルバート達は数多くいる兵士との戦闘を開始した。
「ですが・・・貴方達だけで、あの人と戦うのは心配です・・・」
ステラが二人の心配をしている最中に大勢の兵士達が迫って来てギルバート達は武器を取り戦闘を開始した。
67章 二度目の仇討ち
「また襲いかかってくるよ・・・!」
ティアとイヴはソルの元に向かおうとしたが、数多くの兵士達が行く手を阻まれていた。
「そこを退いて!」
次々と襲いかかる兵士達に攻撃をしながら払い除けて行くと、ティアとイヴはソルの元まで辿り着く事ができた。
(来たか・・・もう一人いるが、この人間も加勢をするつもりか・・・)
ソルが加勢するのかと思うと、イヴが彼を見てティアに聞いた。
「・・・ティア、あの男がソルで間違いないよね?」
「えぇ・・・太陽のように赤い髪と瞳は忘れられるはずはないわ・・・」
ティアがそう答えると、ソルがイヴを見て牢獄にいた時の事を思い出した。
「思い出したぞ・・・お前はその人間を入れた牢にいた人間か・・・」
「そうだよ・・・まさか、叔父さんと叔母さんを殺した相手にアタシのいた牢屋に入れられるなんて思いもしなかったけどね・・・」
イヴはティアの両親を殺したソルに怒りを露わにしていた。
「・・・その目は両親を殺された事に対する怒りだな・・・もしかしすると、ティアとは姉妹だったのか?」
イヴの目を見たソルはティアと同様の目をしている事に気付いた。
「・・・なんで、仇の相手に教えなくちゃいけないの?悪いけど、叔父さんと叔母さんを
殺した相手に教えるつもりなんかないよ。」
そう言ってから、イヴは薙刀を構えながらソルを睨み付けた。
「そうか・・・妙な事を聞いてしまったな・・・」
ソルは両手剣を構えると、ティアはイヴに小声で言った。
「イヴ・・・ソルは両手剣を使うから重い一撃には気を付けて・・・」
ティアがそう言うと、イヴは頷いてから息を呑んだ。
「相手はかなりの実力者だよ・・・アタシ達だけで、勝てるかどうかは・・・」
「分かっているわ・・・前に戦った時にもそう感じていたから・・・」
ティアとイヴが同時に動き出してソルに向けて攻撃を仕掛けた。
「二人同時で仕掛けて来たか・・・」
しかし、ソルは微動ともせずに二人の攻撃を同時に受け止めた。
(かなりの実力がある・・・ティアはこれだけ強い相手と戦っていたの・・・?)
攻撃を受け止めたソルを見てイヴはその強さに驚いていた。
「・・・以前よりも実力を上げているな・・・だが、まだ本気で殺すつもりで戦ってはいないように見えるぞ・・・」
ソルはそう言ってから二人を押し退けてから距離を取った。
「いつまでも本気にならなければ、両親の仇を討つ事はできないぞ?」
そう言われながらもティアは落ち着いた様子で言ってきた。
「えぇ・・・私が仇を討つ覚悟をしない限り・・・死んでしまった人達がいつまでも浮かばれないわ・・・」
ティアにとっては仇を討ちたいと言う気持ちはあった。
「・・・俺には命を奪う事に迷いが生じているようにしか見えないが・・・エレノアの血を引いている影響とも言えるな・・・」
ソルが血筋は争えないと思っていると誰が二人の前に入り込んできた。
「大丈夫か?」
そこに現れたのはヘイゼルで本人しかいなかった。
「・・・ソル、この者達の命を奪うつもりなのか?」
ヘイゼルは二人までも殺すつもりなのかソルに聞いてきた。
「ヘイゼル・・・忘れたのか?デスドゥンケルハイト軍に逆らった者には死があるのみだと・・・兵士だったお前もその事は忘れてはいないはずだぞ・・・」
「・・・やはり、いくらなんでも仇を討とうとしている相手を殺してしまうなど・・・間違っているのではないだろうか・・・?」
ヘイゼルはこれ以上戦わせまいと説得をしてきていた。
「気持ちは分かるぞ・・・俺もあの人間達を殺す気はなかった・・・しかし、原因を作ったのはそこにいる人間だ・・・逆らってきた相手を静粛するのはあながち間違ってはいないはずだぞ?」
今の発言を聞いたイヴは激昂しながら攻撃を仕掛けてきた。
「ふざけないで!アンタが叔父さんを庇おうとした叔母さんと一緒に殺したって・・・
ティアから聞いたんだから!」
イヴは何度も薙刀で攻撃をすると、ソルは突きを避けながら話してきた。
「・・・確かに俺はティアの両親を殺している・・・だが、歯向かってきたのは父親でソレを庇おうとしてきたのは母親だ・・・そもそも、母親が余計な事をしていなければ死んではいなかったはずじゃないのか・・・?」
ソルがそう言った途端、イヴの怒りが増し攻撃の勢いが増した。
「なにを言っているの?叔父さんと叔母さんを殺したくせによく言うよ・・・アンタみたいな人殺しの言う事なんて信じないから・・・!」
イヴはティアの両親が殺した事が許すつもりなどなかった。
「・・・両親を殺した人間の話など、聞く耳を持つつもりはないと言う事か・・・」
そう言って、イヴの猛攻を受け止めていたソルは反撃を仕掛けた。
「くっ・・・!」
致命傷は免れたがイヴに傷はできてしまっていた。
「大丈夫か?」
ヘイゼルがイヴの傷を見ようとしたが、手を振り払われてしまった。
「触らないで!」
イヴは痛みに堪えながらも薙刀を構えた。
「イヴ・・・すまなかった・・・」
「ヘイゼル、これ以上命を奪うような事をしたくないのなら武器を捨てろ・・・そうすれば、ダークタナトス様に許してもらえるように頼んでもらってもいいが・・・?」
「・・・断る。」
その時、ソルが魔法を唱えてきた。
『イグフレミア!』
ソルが超強力な炎の魔法を放ってきた。
「ティア!」
魔法をとっさに横に避けると、ティアは反撃の魔法を唱えてきた。
『ルミシャネス!』
ティアは光の魔法を唱えてみたが、簡単に避けられてしまった。
「私に任せろ・・・」
ヘイゼルが銃口を向けた直後、イヴがソルに攻撃を仕掛けてきた。
「そこっ!」
ティアとの戦闘に夢中になっている隙を見て、イヴは力を振り絞って突きを繰り出した。
「くっ・・・!」
ソルは避ける暇もなく、イヴの突きを喰らっていた。
「俺とした事が・・・油断をしてしまったようだな・・・」
薙刀の先端がソルの鎧を貫いており、引き抜くと傷口から血が出ていた。
「・・・俺に隙ができる瞬間を待っていたようだな・・・」
薙刀を引っこ抜いた後でもソルはティア達と戦い続けた。
「・・・アイツ等、ソルとこれだけ長く戦えるなんて思わなかったな・・・」
ギルバートは兵士達と戦いながら遠くからティア達の様子を窺った。
「ギル!」
ギルバートはアランの声で振り向くと、兵士達が攻撃しようとしている事に気付いた。
「順調に倒していっている・・・これなら、すぐにティア達の元に・・・」
アランは魔法を唱えて次々と襲いかかってくる兵士達を倒していった。
「助かった・・・だけど、魔力の方は大丈夫なのか・・・?」
「なんとかね・・・ティア達に加勢するまで持つといいけど・・・」
戦っている兵士達の人数は残り僅かだった。
「ティア・・・私達も頑張りますので待っていてください・・・!」
ギルバート達も残りの兵士達を倒してから加勢しようとした時だった。
「きゃあ!」
イヴがソルの攻撃を喰らってしまい大きなダメージを受けた。
「があっ・・・!」
それと同時にヘイゼルもソルに攻撃されて片膝を着いた。
「残念だ・・・裏切らなければ、お前も死なずに済んでいたはずだ・・・」
そう言って、ソルは両手剣を振り上げてきた。
「ヘイゼルが・・・でも、今の一撃が重すぎて・・・!」
イヴはソルの一撃によって動けなくなっていた。
「・・・裏切り者のお前を生かしておくなと言われている・・・悪いがこの場で死んでもらうぞ・・・」
そう言って、ソルがヘイゼルにトドメを刺そうとした。
(このままだと、お父さんとお母さんのように殺されてしまうわ・・・!)
ソルの両手剣を振り下ろされようとした直後、ティアに光翼の涙と同じ不思議な光に包まれ始めた。
68章 エレノアの力
「なんだ・・・なぜ、ティアに光が放たれている・・・?」
ソルを含む全員が突如としてティアから光が放たれた様子を見つめだした。
「ティアが光っている・・・一体、なにが起きているの・・・?」
「分からぬが・・・光翼の涙のように光っているのは確かだ・・・」
「・・・光翼の涙がティアに力を与えているようだ・・・やはり、過去に言っていた事は本当だったようだな・・・」
ソル達だけでなく、兵士達を全て倒し終えたギルバート達にも見えていた。
「ティアが光っていますが・・・もしかして、エレノアの力を発揮しようとしているのでしょうか・・・?」
「多分そうだと思うよ・・・光翼の涙がティアにエレノアの力を使えるようにしてくれているのかも知れない・・・」
光の正体は光翼の涙によるものでティアを包み込んでいた。
「・・・この力が・・・エレノアの力だと言うのね・・・」
ティアは自身を包み込む光こそが自分自身に新たな力が宿っている事を感じ取った。
「そうだ・・・その光こそがエレノアの力によるものなのだ・・・」
アヌビスは映像でエレノアの力を発揮しようとするティアを見ていた。
「凄い・・・ティアが天使になっている・・・」
エレノアの力を発動したティアは背に天使の羽の形をした光が生えており、その姿はまるで天界から降り立った天使のように見えた。
「これが・・・エレノアの力・・・?」
ティアは自分自身に感じる光の力を感じていて背に羽が生えている事に気付いていた。
「そうだ・・・その姿こそがエレノアの力が発動された姿だ・・・」
「やはりか・・・言い伝えで聞いた通りの姿をしているな・・・」
ソルは言い伝えで聞いていた通りに天使と化したティアを見た。
(覚醒したばかりなら攻撃を仕掛けるか・・・まだ力の扱いに慣れてはいないはずだ・・・)
今の内に攻撃をしようと、ソルが両手剣を振るってきた。
「しまった・・・!」
すると、ティアがその場で攻撃を防いだ。
「止めて・・・」
ティアは羽を広げると、凄まじい光の魔力が放出された。
「ティアの羽から光の魔力が溢れ出ています・・・」
「これだけの光属性の魔力は感じ取った事がないよ・・・」
エレノアの力で生えた羽から神秘的な光の魔力が放たれていた。
「・・・どうやら、本当にエレノアの使っていた力を使っているようだな・・・!」。
「ソル・・・もうこれ以上は戦っても意味はないわ・・・」
ティアが戦いを止めるように言ってきた。
「・・・この力を手に入れたとしても、相手の命を奪いたくはないの・・・」
ティアはそう言ってから、ソルとお互いに距離を取った。
「その力を手に入れてまでも誰も殺したくはないのか・・・それでは、エレノアの力を手に入れた意味がないぞ・・・」
ソルはエレノアの力を手に入れた意味がないと指摘をしてきた。
「えぇ・・・光翼の涙を半分も手に入れた事でこの力を使えるようになったわ・・・でも私には分かるの・・・エレノアの力と言うのは人を殺すために与えられた能力ではなくて生命を守るために使う力だと言う事が伝わってくるの・・・」
ティアはエレノアの力は人々の生命を守る力だと分かっていた。
「・・・エレノアの一族は命を奪うような事はしないと伝えられていたが・・・末裔であるお前にも伝わってきているようだな・・・」
そう言って、ソルは斬波を放って攻撃を仕掛けてきた。
「・・・」
ティアは微動ともせず、羽を羽ばたかせて上空へと飛び上がって斬波を避けた。
「・・・まだ、戦おうとするつもりなの?」
そう言って、ティアは急降下してソルに攻撃を仕掛けた。
「くっ・・・!」
ソルが攻撃を仕掛けてくる前にティアが剣を振るった事でソルの両手剣が砕かれた。
「俺の剣が・・・!」
「・・・これ以上、戦う必要はないわ・・・まだこの力を扱うのは慣れていないから間違って貴方を殺してしまうのかも知れない・・・だから、貴方を殺してしまう前に戦うのは止めて・・・」
ティアは剣を降ろして、これ以上戦う気はない事を証明した。
「これ以上、戦う気はないと言う事か・・・だが、ここで殺さなかった事を後悔する時が来るだろう・・・」
これ以上、戦闘を行うのを止めたソルはティアがエレノアの力を解除すると背の羽が消えていくのを見た。
「後悔はしないわ・・・いずれ、仇を討つ覚悟が決まるまで戦い続けるわ・・・」
「そうか・・・俺はここで退かせてもらう・・・撤退だ。」
ソルが撤退を告げると、起き上がった兵士達は気を失っている兵士達を連れて撤退した。
「ティア・・・エレノアの力を発揮できる様になっても、アイツを殺さなかったのか?」
ティアはギルバートの質問に答えずにそっぽを向いた。
「言わないで・・・」
本心では命を奪わずに済んだ安心と仇を討とうとしなった事に後悔をしているようだった。
「ティア・・・別に無理をして殺さなくても良かったと思うよ?まだ光翼の涙を半分しか集めていないし・・・仇を討つチャンスがまたあるかも知れないからね・・・」
「そうね・・・イヴ。」
ティアはイヴにそう言われて安心をした。
「さてと・・・これで、四つ目の光翼の涙とエレノアの力を手に入れた事だし・・・残りの半分も見つけに行こうぜ・・・」
すると、何処からかアヌビスの声が聞こえてきた。
『よくぞ、エレノアの力を上手く扱う事ができたようだな・・・余だけでなく、あの世で見ているエレノアも嬉しく思っているぞ・・・』
「アヌビス・・・光翼の涙が私に光を与えて力を解放してくれたの・・・そうしたら、背中に羽が生えて空を飛ぶ事ができたわ。」
『そうか・・・かつて、エレノアも同様の力を使っていたのでな・・・その姿はまるでエレノアが現世に舞い戻って来たかのようで余は思っていたぞ・・・』
アヌビスにはティアは自分がエレノアと同じように見えていたのだと思えた。
「アヌビス、五つ目の光翼の涙がある場所は何処にあるのか教えてくれないか?」
『そうだな。既に光翼の涙を四つも手に入れているので教えてやろう・・・五つ目の光翼の涙が隠されている場所は雪原地帯にある雪山の山頂にある。』
五つ目の光翼の涙が雪山にあると聞いたアランはその大陸について言ってきた。
「雪山・・・その大陸にはノヴェフロル学院もあるよ。」
「そう言えば・・・お前の通っていたノヴェフロル学院があったな・・・」
アランとギルバートがそう言うとヘイゼルが言ってきた。
「しかし・・・その大陸に向かうためには船に乗る必要があるが・・・全国の港には兵士達が管理をしてしまっているので船に乗る事など不可能だぞ?」
ヘイゼルは全ての港に知っているようで、見つかってしまえば戦闘になってしまい、周りにいる人間達も巻き込んでしまう恐れが考えられた。
「アンタの言う通りだ・・・前に訪れた港にもデスドゥンケルハイト軍がいたからな・・・それで、またアランの魔法を使って・・・」
ギルバートがそう言いかけると、アヌビスがティア達に言ってきた。
『いや・・・ここは、余の魔法でその大陸に送らせてもらいたい・・・』
「いいのですか?でも、貴方が私達の味方をしても大丈夫なのですか?」
光翼の涙を守っていたアヌビスはティア達に協力をしても大丈夫なのか気になった。
『そなた等のおかげで光翼の涙を守る番人としての使命を終える事ができた・・・だからこそ、余をデスドゥンケルハイト軍から解放してくれた礼がしたいのだ・・・』
すると、ギルバートが反対するように言ってきた。
「いいや・・・気持ちは、嬉しいが・・・使命を終えたならゆっくり休んだ方がいいと思うぜ?」
「ギル、港に兵士がいるから船に乗れないよ?ここはお言葉に甘えて送ってもらった方がいいと思うけど・・・」
アランにそう言われて、ギルバートは仕方なさそうに送ってもらう事にした。
「分かったよ・・・アンタの魔法で向かわせてもらうからな・・・」
『承知した・・・それでは、その大陸へと送るとしよう・・・』
アヌビスが詠唱を唱えると、ティアはピラミッドの方を見つめながら言ってきた。
「ありがとう、アヌビス。」
ティアはピラミッドの中にいるアヌビスに向けてお礼を言った。
『ティアよ・・・世界に光を蘇らせてくれる事を祈っているぞ・・・』
詠唱を終えたアヌビスは転移魔法を唱えてティア達を転移させた。
「・・・あの者に会った事でエレノアが死ぬまでの出来事を思い出したぞ・・・」
アヌビスは、過去にエレノアの事を色々と思い出した。
「しかし・・・あの者から邪悪な気を感じられたが・・・どう見ても、監視をしているようにしか見えなかったぞ・・・」
アヌビスはティア達の動向を監視している者がいる事に気が付いていた。
「・・・無事にデスドゥンケルハイト軍から解放されたか・・・既に半分も手に入れたようだが、これだけではデスドゥンケルハイト軍を倒す事は不可能だ・・・大人しく撤退をしたとなると・・・考慮をしていたからか・・・それとも・・・」
上空ではガイアがおり、ティア達の戦闘をずっと見ているようだった。
「・・・とりあえず、色々と知っておいた方が良さそうだな・・・」
ガイアはそう呟いてから飛び去って行った。
69章 ノヴェフロル学院のある大陸
「そうか・・・その人間はエレノアの力を発揮できる様になったのだな?」
ラヴィレイヘヴンへと帰還したソルはダークタナトスに今回の事について報告をしていた。
「はっ・・・光翼の涙がエレノアの末裔である人間に光を与えた事によって、天使のような姿となり、光の力と魔力が強くなっているのが感じられました・・・」
ソルはエレノアの力を使用したティアの実力が確かだと伝えた。
「・・・つまり、半分の光翼の涙を手に入れた事によって、エレノアの力が解放されたのだと・・・そう言いたいのだな?」
ダークタナトスがそう訊ねてくると、ソルは「はい・・・」と答えた。
「既に八つある光翼の涙の半分はティア自身の中に吸収されエレノアの力が覚醒された事によって、脅威が増してきていると思われるでしょう・・・」
「そうか・・・それと、アイザックから聞いたのだが・・・脱走兵の暗殺に失敗してしまったようだな・・・暗殺部隊から逃げられる者はいないと思っていたのだが・・・?」
「はっ・・・その事についてですが、脱走兵の始末はいかがいたしましょうか・・・?」
そう聞かれたが、ダークタナトスはウンザリした様子で言ってきた。
「言わなくても分かるだろう・・・当然、エレノアの末裔とその仲間達も闇へと葬り去ればいいだけの話なのでな・・・」
「・・・それでは、アイザックの件もお咎めなしとするおつもりですね?」
「そう言う事だ・・・あの者は一向にエレノアの末裔を始末しようとしない・・・もしや、情が移ってしまったようにしか思えんのだ・・・」
「確かに・・・以前、連絡をしてきた際にそう感じられました・・・」
ダークタナトスが何者かの事を思っていると、ソルは報告を終えて立ち上がった。
「・・・それでは、失礼いたします。」
そう言って、ソルは玉座のある部屋を出て行った。
「あの人間の息子だ・・・裏切るような事がなければいいが・・・」
その人物とはデスドゥンケルハイト軍の一員で誰かの息子の事だった。
「ここは・・・ノヴェフロル学院のある大陸で間違いないみたいだね・・・」
ティア達はアヌビスの魔法で目的の大陸へと転移させてもらっていた。
「地図で確認してみましょう。」
そう言って、ティアは地図を広げて大陸を確認してみた。
「えっと・・・今はここにいるから、雪山までかなりの距離がありそう・・・」
イヴが現在地を確認していると、アランが地図を覗いて言ってきた。
「目的地の雪原地帯も遠いし・・・先に辿り着くのはノヴェフロル学院だね・・・」
「それに・・・雪原地帯に着けるのも何日もかかりそうだな・・・それじゃあ、お前の通っていたノヴェフロル学院に行ってから、雪原地帯にある雪山に向かってみようぜ?」
「そうだね・・・一度、ノヴェフロル学院の様子を見に行きたかったし・・・」
「もしかしたら、アリアやケリーにも会えるかも知れません。」
アランがそう言うと、ティア達はノヴェフロル学院を目指して歩き始めた。
「ノヴェフロル学院は、学ぶ場所だと言っていましたが、アランはそこに通っていたのですか?」
ステラに学院について聞かれたアランは答えた。
「そうだよ。ノヴェフロル学院はとってもいい場所だったから君も気にいると思うよ。」
「・・・ノヴェフロル学院か・・・あの場所は今では・・・」
ヘイゼルがなにかを言いかけようとすると、口を閉じて言わなくなった。
「どうかしたの?」
「いや・・・なんでもない・・・」
話し合った結果、ノヴェフロル学院に向かう事を決めた。
「・・・ねぇ、アンタに家族はいるの?」
道中を歩いている中でイヴがヘイゼルに家族について訊ねてきた。
「・・・なぜ、そのような事を聞くのだ?」
「ただ・・・なんとなく、気になっただけ・・・」
イヴがそう言うと、ヘイゼルは家族の事について話してきた。
「・・・私には父はいるが・・・母は病気で亡くなっているのだ・・・」
「そうなの・・・アタシにはお父さんとお母さんがいたけど・・・」
その直後、イヴは過去に虐待をされた時の出来事をフラッシュバックした。
「イヴ?悲しそうな表情をしているが・・・なにかあったのか?」
ヘイゼルは心配して訊ねてきたが、イヴは答えないままそっぽを向いてしまった。
「別に・・・なんでもないから・・・」
「なんでもなくはないだろう・・・もしや、デスドゥンケルハイト軍に家族を殺されているからなのか?」
そう聞いてみたが、イヴはなにも答えようとはしなかった。
「・・・どうやら、家族についてはあまり話したくはないようだな・・・辛い事を思い出させてしまったのかも知れないが気にしないでくれ・・・」
それからも先へと進んで行くと、ティア達の前にモンスターが立ち塞がってきた。
「イヴ、モンスターだ。」
「・・・分かった。」
目の前に現れたのは人間と動物が交じり合ったモンスターだった。
「モンスターは野盗獣で色々な武器を持っているね。」
野盗獣はあらゆる武器を手に持っている獣人型のモンスターだった。
「コイツ等は色々なタイプがいるな・・・オツムも獣だから油断は大敵だな・・・」
「うん・・・だけど、野盗獣は強いのもいるから気を付けた方がいいよ。」
アランがそう言うと、野盗獣が斧を振るってきた。
「うおっ!コイツ、パワーがありすぎだろ!」
ギルバートが直後に双剣を抜いて野盗獣の攻撃を防いだ事でどれほど危険なのかが伝わった。
「俺を・・・舐めんな!」
渾身の力で押し返したギルバートはそのまま攻撃をして野盗獣を倒した。
「危なかったぜ・・・危うく半分にされる所だったぞ・・・」
ギルバートがそう言った途端、倒したはずの野盗獣が立ち上がり遠吠えを挙げた。
「まだ、倒れていなかったのか・・・!」
その直後、遠吠えを聞きつけたのか色々な武器を持った野盗獣が駆けつけてきた。
「コイツ・・・仲間を呼びやがった・・・!」
ギルバートが再度攻撃をして野盗獣を倒してから他の野盗獣達の方に向いた。
「野盗獣の数が多すぎる・・・一撃には気を付けろ・・・!」
「だったら、あまり攻撃を受けずに戦うべきだね・・・」
イヴそう言うと同時に、野盗獣の群れと戦い始めた。
「ステラとアランは近接の武器を持つ野盗獣には気を付けて・・・」
「分かっているよ・・・!」
ステラとアランも遠くで魔法を唱えて援護を始めた。
「結構タフなモンスターだな・・・どうりで武器を上手く扱える訳だ・・・!」
野盗獣達は体力も多くて武器を使って戦うのが得意だった。
「やはり、野盗獣と言うモンスターは厄介だ・・・油断をせずに戦った方がいい・・・」
ヘイゼルがそう言いながら攻撃をしていると、背後から野盗獣が迫っていて攻撃を仕掛けてきた。
「ヘイゼル!」
それに気付いたイヴは背後から野盗獣を攻撃してヘイゼルを守った。
「助かったぞ・・・目の前に夢中で気が付かなかった・・・」
「呆れた・・・元兵士のくせに油断しちゃって・・・」
イヴがため息をついて言うと、またしても背後から野盗獣がイヴの後ろに現れた。
「えっ・・・」
イヴの反応が遅れたのか、野盗獣の攻撃によってイヴの肩を掠められた。
「くっ・・・!」
イヴは肩の痛みを堪えながらも反撃をしてなんとか野盗獣を倒す事ができた。
「イヴ・・・大丈夫か・・・」
ヘイゼルが心配をして駆け寄ると、イヴの傷口から虐待の跡が見えた。
「見ないで・・・!」
イヴは見られたくなく、片手で肩の部分を隠した。
「・・・一瞬だが、痣らしき物が見えたが・・・あの傷は一体・・・?」
先程の痣が気になっていると、ステラがその事を言ってきた。
「・・・ヘイゼルさん、イヴは小さい頃に虐待を受けていたので痣と傷が今でも残り続けています・・・」
ステラの言葉を聞いてヘイゼルは先程のイヴの様子を思い出した。
(そうだったのか・・・どうりで、見られる事を拒んでいたのか・・・)
ヘイゼルはそう思いながら、戦闘をしているイヴを見つめた。
「さてと、回復も終わった事だし・・・先へ行きましょうか。」
野盗獣を全て倒し終えたティア達は回復をしてから先へと進んだ。
「・・・あの感じ、最初の頃のイヴみたい・・・」
イヴの様子が気になったティアの発言にヘイゼルは心の中でイヴについて考え始めた。
(なるほど・・・どうりで家族について話そうとはしなかったのは・・・イヴに辛い過去があったから話そうとはしなかったと言う事だな・・・)
それからイヴは無言になり、一言も話そうとはしなくなった。
70章 星竜族が造り出した塔
ノヴェフロル学院を目指して歩いていると、ステラが遠くからある物を見つけた。
「見てください・・・大きな塔が見えます。」
歩いている最中にステラがここから見える塔らしき物に指を差した。
「あそこに建っているのは世界が創造された時に星竜族が建てたと伝えられている塔だよ。」
この大陸には星竜族によって、建てられた塔として存在していた。
「星竜族が建てた塔・・・それでは、あそこに見える塔は本当に星竜族が・・・?」
「あぁ・・・さっき、アランから星竜族が建てたって言われただろ?」
ギルバートがそのように言ったが、ステラは塔を見て目を輝かせていたので聞いてはいないようだった。
「・・・こりゃあ、聞いちゃいねぇな・・・」
ギルバートがステラの様子を見て呆れていると、ティアもその事について思い出した。
「私も星竜族が建てた塔がある事をお母さんから聞いた事があるわ。なんでも、その塔を建てるのにユニバースも協力したと言い伝えがあるのよ。」
実は塔の建設に星竜族の王ユニバースも関わっていたと言われているようだった。
「よく知っていたね。せっかくだから、その塔に行ってみないかな?」
アランがそう言うと、ステラが振り返ってきて目の輝きが増しながら訊ねてきた。
「本当ですか?あそこに見える塔に連れて行ってくれるのですか?」
ステラは目を輝かせながらもアランの顔に迫った。
「うっ・・・うん。良かったら、行ってみようと思って・・・」
「それでは、今すぐにそこへ行ってみましょう!」
ステラは一刻も早く、その塔へと向かいたがっていた。
「分かったから落ち着いて・・・」
アランは早く行きたくて興奮しているステラを引きはがした。
「ノヴェフロル学院に向かうより、先に塔に寄る事になったけどいいかな?」
アランがそう訊ねると、ギルバートは眉をひそめながら言ってきた。
「寄り道か・・・?道草ばかり食っていたらデスドゥンケルハイト軍は倒せねぇぞ?」
「分かっています・・・でも、私は星竜族が造り出した塔へ行ってみたいです・・・!」
それでもステラは星竜族が建てた塔へ行きそうにしていた。
「分かった・・・分かったから、落ち着いてくれ・・・」
ギルバートは仕方なさそうに塔に行く事を決めた。
「すいません、興奮してしまいました・・・ティア達は反対ですか・・・?」
心配に感じたステラは塔に行く事が嫌かティア達にも聞いてきた。
「えぇ・・・ステラが喜んでくれるなら一緒に行きましょう。」
「当然、二人も賛成だよね?」
イヴがそう訊ねてくると、アランとヘイゼルも賛成と答えるように頷いた。
「ありがとうございます!早速、塔へ行きましょう!」
こうして、楽しみにしているステラのために星竜族の塔へと向かって行った。
「早く来てください!日が暮れてしまいますよ!」
ステラは元気そうにしながらもティア達の先頭を歩いていた。
「あれほど元気に歩いているステラを見るとなると・・・余程、星竜族を崇拝しているように見えるな・・・」
元気そうに歩くステラを見たヘイゼルは微笑みを浮かべていた。
「あの子は小さい時から星竜族が大好きで星竜族について色々と知っています。」
ティアがそう言うと、ヘイゼルはステラの様子を窺いながらこう言った。
「嬉しそうにしているとなると・・・まるで、星竜族と出会っているかのようにも思えてきそうだな・・・」
ヘイゼルがそのように言うと、ティア達はお互いに顔を見合わせた。
「そうですね・・・もしかしたら、そこで星竜族と会えるかのように思っている風に見えてきますね・・・」
すると、ヘイゼルがティアの発言を聞いて意味深に思って聞いてみた。
「・・・まるで、星竜族と出会っているような口振りのようだが・・・もしや、出会った事があると言う事か・・・?」
ヘイゼルの質問に対して、ティアは正直に話し始めた。
「はい。私達も何度か星竜族と会った事があります。」
そう言うと、ヘイゼルが少しだけ間を置いてから呟き始めた。
(・・・星竜族と会っているだと・・・しかし、世界の滅亡と共に絶滅したと言われていたが・・・しかし、それが本当であるならば・・・)
なにやら星竜族について呟いていると、ティアが心配になって聞いてきた。
「あのう・・・なにか思うような事がありましたか・・・?」
ティアに聞かれたヘイゼルは我に返って呟くのを止めた。
「失礼した・・・それで、星竜族の名はなんと言っていたのだ?」
ヘイゼルが星竜族の名を訊ねると、ステラが立ち止まって名前を出してきた。
「はい。名前はガイアと言う名前でとても心優しい星竜族でした。」
ステラがガイアの名を出してくると、ヘイゼルが反応するかのような動きが感じられた。
「どうかしたの?なんだか、思い詰めた顔をしているけど・・・?」
「なんでもない・・・本当に星竜族と出会っていたと思っただけだ・・・」
「僕やイヴも初めて出会った時は驚きましたが、絶滅から免れて生き続けていたとステラから聞いた事があります。」
アランとイヴは以前にガイアの事をステラから聞かされていた。
「そうか・・・私も是非、会ってみたいものだな・・・」
話を終えたティア達は目的の塔を目指して歩き続けた。
「これが・・・星竜族の手によって建てられた塔・・・」
目的の塔に辿り着くと、ステラが塔を見上げながらも目を星のように輝かせていた。
「入る前から目を輝かせているね。それじゃあ、中に入ってみようか。」
アランが扉を開けると、ティア達は塔の中へと入って行った。
「・・・どう見ても普通の塔にしか見えないな・・・」
周りを見回してもよくある内装の塔にしか見えなかった。
「ねぇ・・・思っていたのと全然違うけど・・・?」
「そんな事はないよ。だって、ここを造ったのは星竜族達だからね。」
アランにそう言われても星竜族が造ったとは思えなかった。
「これじゃあ、時間の無駄だな・・・ほらっ、さっさと行こうぜ。」
そう言って、ギルバートは塔から出ようとするとステラは断固拒否してきた。
「行きません・・・この塔を調べ上げるまでは出て行きません・・・」
ステラが真剣な眼差しでギルバートに言った。
「・・・そんな事を言われてもこんな塔の中に秘密でもあるのか?」
「ギル・・・星竜族が造ったのであれば、きっとなにかが隠されているはずよ。それだったら、塔の中を調べてみないかしら・・・もしかしたら、星竜族にしか分からない秘密があるのかも知れないわ?」
ティアにそう言われたギルバートは仕方なく塔の中を調べてみる事にした。
「分かったよ・・・なにかあったらいいけどな・・・」
「ありがとうございます・・・早速、塔の中を調べて見ましょう。」
それからも塔の中くまなく調べてみたが、最上階に上がってなにも見つからなかった。
「まぁ・・・塔の中を色々見る事ができたし、これもいい思い出になったと思うよ。」
「そうですね・・・星竜族に関係している場所に行ったのは、星竜族の遺跡に行った事があったので、ここにも来る事ができて良かったです。」
ステラはなにも見つからなくて残念そうにしていた。
「・・・もう、夜は遅いし・・・近くで野宿になるな・・・」
塔の中を出た頃には既に夕暮れになっていたので、ティア達は塔から離れた場所でキャンプをする事となった。
「今日はこの塔の観光をするだけで終わったな・・・」
「大昔の時代に星竜族達の手で造られた塔だよ?ステラだってなにも無くても喜んでいたよ?」
アランはそう言ったが、ギルバートは疲れた様子で言ってきた。
「あのなぁ・・・俺達はデスドゥンケルハイト軍を倒す旅に出ていていつ死ぬのかも分からないのに思い出作りなんかやっている暇があるのかよ?」
「それもそうだけど・・・でも危険な旅をしている疲れを癒すためにも思い出を作る事も重要だと思うよ?」
アランは思い出を作る事も大切だと伝えるとギルバートは笑みを浮かべた。
「それもそうだな・・・小さかった時にも色々とあったが・・・あの時が来るまで、色々な事をして遊んでいたよな・・・」
ギルバートはまだ幼かった頃にアランと遊んでいた事を思い出した。
「うん・・・ティアの旅に加わってからずっと君と一緒にいられたからね・・・
今でも、思い出を作れていると思うよ・・・」
ギルバートとアランが子供時代の出来事に懐かしさを感じた。
「そうだな・・・旅を続けていたら、色々な思い出も作れそうだな・・・」
ティア達は夕食を終えてから、テントの中に入って眠りに入った。
「・・・ステラ?」
その夜、ティアが目を覚ますとステラがいなくなっている事に気づいた。
「ステラ・・・一体、何処に行ったのかしら・・・?」
テントから出ると、塔のある方角から光が感じられた。
「あの光は一体・・・もしかしたら、ステラはそこに行っているのかも知れないわ・・・」
ティアは塔にステラがいるのかも知れないと思ったティアは塔へと向かって行った。
71章 星のように光り輝く塔
「塔が光っている・・・ここへ来るまでは光ってはいなかったのにどうして・・・?」
ティアは星のように光輝いている塔を見上げた。
「・・・もしかしたら、ステラは光る塔を見て中に入って行ったのかも知れないわね・・・」
光り輝く塔の中にいるのかもしれないと思ったティアは扉を開けて中へと入ってみた。
「これは・・・」
扉を開けて中へと入ったティアは星のように輝いているのを目にした。
「なんて綺麗なの・・・さっきまではこのように光ってはいなかったのに・・・」
ティアは光り輝く綺麗な空間を見て信じられないと思った。
「ティア?もしかして、貴方も光り輝く塔を見に来たのですか?」
声が聞こえて振り向いてみると、ステラが階段から降りてきていた。
「ここにいたのね・・・貴方がいなくなって、塔が光っていたから中にいると思って来たのよ。」
「そうでしたか・・・ティアもこの塔が輝いているのを見て来たのですね。」
どうやら、ステラも光り輝く塔を見て中に入っていた。
「そうでした。ここへ来ている方がいました。」
すると、階段から何者かが降りてくる音が聞こえてきた。
「・・・貴方もここへ来ていたのね?」
階段から降りて来たのは星竜族のガイアだった。
「ティアか・・・他の者達はいないようだが一人で来たのか・・・?」
「えぇ・・・ここへ来たのは私だけよ。」
「・・・そうか。塔が光りだした事にも気づかずに眠り続けているとは・・・実に残念だ。」
ガイアが残念そうに思うと、ティアが周りを見ながら言ってきた。
「この塔は中も星のように綺麗に光りだすなんて思ってはいなかったわ。」
「我々、星竜族が造り出した塔なのだから当然の事だ・・・それよりも辺りをよく見れば、一体なにを表しているのかよく分かるぞ。」
そう言われて、辺りを見回してみると周りに無数の星が輝いており壁にも星が描かれていた。
「塔の中も光っているから、まるで星が輝いているように見えてくるわ・・・」
「私も見た時は驚きました・・・星空の中にいるように綺麗な空間だと思いました。」
塔の中が光りだす事によって、描かれていた星が本物の星のように見えた。
「この塔は夜になれば星のような輝きを持つ光を放たれ、塔の中も光りだすように造られているのだ。」
星竜族が造り出した塔は夜以外だと普通の塔にしか見えないが、夜になれば塔は星の輝きを放つようになり、中に入れば星の中にいるような空間に変化していた。
「せっかく、この塔に来てくれたのだ・・・ここよりもいい場所へと案内してやろう。」
こうして、ティア達はガイアの案内で塔の最上階まで上がって行った。
「ここは・・・最上階?」
「あぁ・・・ここに、塔の中に隠された秘密があるのだ・・・」
ガイアが天井に指を指すと、ティア達も天井を見上げてみた。
「綺麗に描かれているなんて・・・星竜族なら考えられそうね・・・」
天井には星座のようなものが描かれていた。
「はい・・・この塔に隠された秘密なのです・・・」
「そうだ。最上階の天井に描かれているのは夜にしか見る事ができないようになっているのだ。」
「つまり、夜じゃなければ、見る事ができないと言う事なのね?」
「その通りだ。この塔は夜以外の時間帯だと、普通の塔にしか見えないが夜になればこのように星の輝きを放ち隠されていたものが見えるようになるのだ・・・・」
星竜族が造り出した塔は夜でなければ、見られない秘密が色々とあった。
「この天井も夜にしか見る事ができない・・・それが、この塔に隠された秘密だったのですね・・・」
ステラが天井に映し出された星座を見ているとなにかに気付いた。
「・・・もしかして、描かれているのは星竜族ですか?」
ステラが星座を指差してみると、線を見て星竜族のように見えると言ってきた。
「言われてみれば・・・天井の星座が星竜族に見えてくるわね。」
「よく分かったな・・・流石は我が星竜族を愛する人間だ・・・そう、これこそが星竜族達の星座だ・・・そして、あの星座も見てくれ。」
天井に描かれた星座の中にはドラゴンの星座もあった。
「あれは、ドラゴンのモンスターでしょうか?」
「いや・・・あの竜は星竜族がドラゴンに変化した姿だ。」
「そう言えば聞いた事があるわ・・・なんでも星竜族にはドラゴンに変化する力を持っているって・・・」
星竜族には敵わない相手と戦う際には、ドラゴンに変化する能力を持っていた。
「はい。星竜族よりも強い相手と戦う時にはドラゴンになって戦う事ができると言われています。」
ティアがそう言ってからステラは竜に変化するように頼み込んだ。
「ガイア、ドラゴンに変化する事ができるのなら私達にも見せてくれませんか?」
竜になるように頼み込んでみたがガイアはステラの頼みを断ってきた。
「すまないが・・・今はドラゴンに変化する気にはなれん・・・その変わりにいい物を見せてやろう・・・」
そう言って、ガイアは鎧の中から星竜核晶石を取り出した。
「よく、見ているのだ・・・これから、この塔に凄い事が起きるからな・・・」
そのまま掲げていると、ガイアの手にしていた星竜核晶石が光りだした。
「星竜核晶石が・・・光っています・・・」
ステラが星竜核晶石の輝きを見ていると、ティアが周りの光景に気付いた。
「ステラ、天井を見て・・・綺麗に光り輝いているわ・・・」
天上が輝きだした事によって、描かれていた星座が光りだすと同時にそこからティア達の周りに無数の小さな星の光が降り注いできては周りに浮かび上がっていた。
「驚いているようだな・・・私の持つ星竜核晶石の光によって、この塔が共鳴して天井から小さき星が降り注ぎ浮かび上がるのだ。」
ガイアがそう説明をすると、ティアとステラは星だらけの光景を見回した。
「綺麗です・・・ガイア、ありがとうございます。」
「あぁ・・・私も久しぶりに見る事ができて嬉しいと思っているぞ。」
それから、ティアとステラはガイアと共に夜が明けるまで光を見続けた。
「もう夜が明ける・・・この塔は朝になれば光が消えるぞ。」
そう言った直後、朝日が昇った事によって塔の光は消えて普通の塔に戻った。
「貴方が見せてくれた光は綺麗でした。」
「とても綺麗で星の世界にいるみたいに思えたわ。」
ティアとステラはこの塔の出来事はとてもいい思い出になっていた。
「そろそろ、仲間達の元に戻った方がいい・・・何処に行ったのか心配させてしまう・・・それでは私もここを去るとしよう・・・」
ガイアはそう言って、最上階から飛び上がろうとした時だった。
「待ってください・・・」
ガイアが飛び上がろうとした途端、ステラが呼び止めてきた。
「なんだ?」
「・・・また、あの光を見たくなったら、また見させてくれますか?」
ステラがそう言ってくると、ガイアは笑みを浮かべた。
「あぁ・・・見たくなったのであれば、いつでも私に言ってくれ・・・」
「約束・・・ですよ?」
ステラが恥ずかしそうにしながらもガイアに約束を交わそうとした。
「分かった・・・約束しよう・・・」
約束を交わしたガイアはそう言い残して飛び去って行った。
「行きましょう。私達もそろそろ戻らなければギル達も心配をするわ。」
こうして、ティア達はギルバート達が起きる前に元の場所へと戻って行った。
「・・・それで、お前等はガイアに会ったのかよ?」
「えぇ・・・あの塔は夜にしか見る事のできない光る塔だったの。」
「それは、まるで星の世界にいるみたいでとても綺麗でした・・・それに、ガイアが星竜核晶石を使った事でより一掃綺麗な光景を見る事ができました・・・」
ステラはそう言いながら、あの夜の塔で見た光景を思い出しながら見惚れていた。
(・・・ガイアの奴、あの塔に来る事を・・・言ってくれたらいいだろ・・・)
ギルバートは、なにやらガイアが塔に訪れていた事を不服に思っていた。
「なにか、言いましたか?」
「いいや・・・塔の観光も終わった事だし、ノヴェフロル学院に向かおうぜ?ひょっとしたら、アランの同級生にも会えるのかも知れないからな?」
「そうだね・・・それじゃあ、行こうか・・・」
こうして、ティア達は星のように輝いていた塔を後にしてノヴェフロル学院に向かった。
72章 ノヴェフロル学院
「もうすぐ、ノヴェフロル学院に着くよ。」
アランがそう言うと、ノヴェフロル学院が見えてきた。
「久しぶりに学校に訪れるなんて・・・なんだか、里帰りをした気分だよ・・・」
アランがそう言いながら学生時代の思い出を振り返った。
「ここが、僕の通っていた懐かしい学校だよ。」
ティア達はノヴェフロル学院の中に入ると、制服を着た数多くの生徒達がいた。
「この学院はとても広くて生徒の数もかなりいるよ。」
アランがそう言うと、ティア達は周りにいた生徒達を見回してみた。
「見てください。どこを見ても生徒である人達がいます。」
「そりゃあ、世界中から集まって来ているんだから多いのは当然だろ?」
「ちなみに僕も生徒だったけど、ノヴェフロル学院には世界中で色々な人達が集まって来ているよ。」
学院に通う生徒達は数が多く世界中から学園に入学をしていた。
「全校生徒の数が多いから、働いている教員達も大変だって言っていたぐらいだよ。」
そう話していると、二人の人物がティア達が訪れたのを見て近付いて来た。
「アラン君?やっぱり、アラン君だよ!」
「あぁ・・・まさか、アイツも来ていたのか・・・」
近づいてきた二人の人物はアランの同級生であるアリアとケリーだった。
「アラン君!」
アリアは嬉しそうにしながらアランに抱き着いてきた。
「アリアちゃん?ケリーも久しぶりだね。」
「あぁ・・・お前もここに来ていたなんて思っていなかったぞ。」
「君達もここに来ていると言う事は・・・学院の様子を見に来たの?」
「うん。偶々、近くに寄ったから新しく作った歌を生徒達に聞かせてあげようと思ってきたの。」
「それで、ケリーも様子を見に来たの?」
アランはここに訪れた理由を訊ねたがケリーはなにも言わなかった。
「俺がここへ来た理由も一応あるが・・・聞いたら驚く事になるがいいのか?」
「別にいいけど・・・ケリー君、一体なにを話すつもりなの?」
「そうか・・・ここではなんだし・・・誰もいない所で話すから来てくれ・・・」
ケリーに連れられたティア達は誰もいない場所で話を聞こうと移動した。
「誰もいないし、ここならじっくり話せそうだ・・・まずは最初に伝えておくが・・・実は反乱軍のリーダーが暗殺された事でアジトも壊滅させられてしまっている・・・」
ケリーの口から出た言葉は信じられない内容だった。
「壊滅って・・・それと学院に来た理由となんの関係が・・・?」
「・・・何週間か前にデスドゥンケルハイト軍がアジトを襲撃してきたんだ・・・」
数週間前、反乱軍のアジトに起きた事だった。
『大変です!デスドゥンケルハイト軍が、アジトに攻めてきました!』
『なんだと!直ちに迎え撃て!』
反乱軍のリーダーに迎え撃つように命じられてケリーや反乱軍の一員達と共に応戦を開始した。
『捕虜にせずに始末しろ!反乱軍を壊滅させるのだ!』
デスドゥンケルハイト軍の兵士達が一斉にアジトに襲撃を始めた。
『相手の方が数は多い・・・一致団結しながら戦うんだ!』
ケリーの言葉に一致団結した反乱軍とデスドゥンケルハイト軍との戦いが始まった。
「・・・俺や皆と一緒にデスドゥンケルハイト軍と戦ったんだが・・・相手の方が戦力が上で歯が立ちそうになかった・・・しかも最悪な事に戦っている最中でリーダーが殺されてしまっていたんだ・・・」
デスドゥンケルハイト軍の勢力が強く、反乱軍側は苦戦を強いられておりケリーは急いでリーダーの元へと向かった。
『リーダー!敵がそこまで迫っています!直ちにアジトを捨て・・・』
リーダーのいる部屋に辿り着いたケリーは扉を勢いよく開けた直後に彼の顔が凍り付いた。
『リー・・・ダー・・・?』
そこにいたのは反乱軍のリーダーが何者かによって殺害されて遺体となっていた。
「・・・部屋に入った時にはもうリーダーは死んでいたんだ・・・」
「それって、暗殺部隊の仕業?」
「いや・・・奴等の中には暗殺部隊はいなかったぞ・・・」
まだ部屋にも到達していないのにデスドゥンケルハイト軍はどうやってリーダーのいる部屋に忍び込んで殺害する事ができたのかが謎だった。
「・・・それで、リーダーを殺した相手は誰だったの?」
「それが・・・殺した相手が誰だったのか分からなかった・・・リーダーのいる部屋に入った時にはもう殺されていたぞ。」
部屋に入った時から、リーダーは既に殺害されていたと言うのだった。
「もしかして、転移魔法を使って侵入したからじゃないのかしら?」
「あぁ・・・俺達もそう思っていたんだが・・・アジトには魔力を感知する機械を設置しているから僅かにでも魔力を感知すれば警報音が鳴るように設定しているのに転移魔法を使って侵入した形跡が無かったんだ・・・」
なぜ、警報音が鳴らなかったのか疑問に思うとヘイゼルがある事を口にした。
「・・・恐らく、何者かの手によって手引きされて侵入したのだろう・・・だが、どのようにして侵入させたのかが分からんが・・・先程、暗殺部隊はいないと言っていたな?」
「あぁ・・・ひょっとしたら、何処かに暗殺部隊が潜んでいたから侵入された可能性が考えらえるな・・・あの連中は魔法が使えないはずだからな・・・」
ケリーがどのようにして、リーダーが暗殺されたのか推測をしてみた。
「まずは、デスドゥンケルハイト軍を迎え撃つために外に出るから警備が手薄になるだろ?その時は全員が出撃していたからアジトはリーダーだけになる・・・その間に、入り口から侵入されてリーダーのいる部屋に入って殺した・・・あれだけの数が攻めてきたら、警備が手薄になるのも無理はないな・・・でも、一体誰がリーダーを殺した・・・?」
どのように侵入してきたのか分かったが、一体誰がリーダーを殺害したのかが分からなかった。
「とにかく、無事でいられたのは確かだな・・・それで、アジトや他の奴等はどうしているんだ?」
ギルバートが襲撃されたアジトや他のメンバー達の所在について訊ねた。
「・・・その後は無事に逃げられたが・・・かなりの数がデスドゥンケルハイト軍に殺されていて、新しいアジトも見つからない場所に移しているぞ。」
「まぁ・・・全員が殺されなくて良かったね・・・」
アランがケリーを慰めるとギルバートがアジトについて聞き出そうとしてきた。
「・・・それで、そのアジトって何処に作ったのか教えてくれないか?」
「悪いな・・・反乱軍以外は知られてはいけないから無理だ・・・」
アジトを襲撃されて以来、反乱軍について話す事を禁じておりメンバーにしか知らせない事になっていた。
「・・・つまり、誰かに知られないようにしたいと言う事だね。」
「あぁ・・・そろそろ、コイツがいる事について教えてくれないか?」
そう言いながら、ケリーはヘイゼルを睨み付けてきた。
「もしかしてと思っていたが・・・アンタ、デスドゥンケルハイト軍の兵士だろ?」
ケリーはそう言ってから、大剣を抜こうとするとティアが止めに入って来た。
「待って・・・ヘイゼルさんは悪い人ではないわ・・・他の兵士達とは違って人を殺した事は一度もないと言っていたの・・・」
ティアがヘイゼルを弁護するようにケリーを止めに入った。
「どうかな・・・そもそも、デスドゥンケルハイト軍から抜け出すのは不可能だって言われているのにコイツはラヴィレイヘヴンから脱出できたのも怪しすぎると思えないのか・・・?」
ケリーはヘイゼルの事が信じられずに疑っていた。
「ケリー君、ティアさんの事を信じましょう。ヘイゼルさんは人を殺してしまうような人には見えないよ・・・」
アリアにそう言われたケリーは信じる事にしたのか警戒を解いて睨み付けるのを止めた。
「洗い浚い吐かせようと思ったが・・・お前達が言うなら信じて見るか・・・だが、妙な真似をしたら覚悟はしておけよ。」
ケリーが警戒を解いたのを見てアリアは安心した。
「良かった・・・てっきり、ヘイゼルさんが捕まっちゃうと思ったよ・・・」
「・・・とにかく、ここで会ったのはなにかの縁だ・・・久しぶりに案内をしてみるとするか・・・」
それから、ティア達は学院内の案内をしてもらって全教師も紹介してくれた。
73章 かつての教室にて
「どうかな?大きい建物だから初めての人は迷いやすいから気を付けてね。」
中へ入ってみると、学び場とは思えない広い空間だった。
「ノヴェフロル学院はとても広いのね。」
「生徒数が思っていたよりも多かったからとても広い学院になったらしいよ。」
ノヴェフロル学院が設立されようとした時は入学する生徒が多いので広大な学院になったと言われていた。
「それで、大きな学院になったと言うのね?」
「あぁ・・・特に一年生は慣れていないからか、迷子になりやすくて大変だったからな・・・」
「ノヴェフロル学院はとても大きな学院だったのですね・・・」
学院内は広すぎるので入学したばかりの迷ってしまう一年生が多かった。
「・・・そう言えば、アリアちゃんもよく迷子になっていたね。」
「うん・・・一年生の頃は何処にいるのかよく分からなくなっていたよ・・・でも、アラン君が探しに来てくれた時は嬉しかったよ・・・」
アリアが迷っていた時によくアランが彼女を探しに来てくれていた。
「うん。一年生だった頃は迷ってばかりだったけど、心配ばかりかけさせたくなかったから迷わないように学院の中を覚えられたよ。」
それから、ティア達は学院内を色々と見て回った。
「どうだった?ノヴェフロル学院はとてもいい場所だったでしょ?」
「あぁ・・・生徒達は熱心に授業を受けていたな・・・」
ギルバートがそう言うと、ヘイゼルが疑問を持った様子で言ってきた。
「・・・一つ聞くが、ノヴェフロル学院はあのような授業を受けていたのか?」
ヘイゼルが訊ねてきたが、ケリーとアリアはなにも答えなかった。
「いや・・・ちゃんと授業を受けさせてもらっていたぞ・・・俺達が卒業をするまでは・・・」
ケリーがそう言ってから、授業の光景について話し始めた。
「お前達はここの授業を見てどう思った?」
「・・・生徒達はとっても辛そうな表情をしながら勉強をしていたよ。」
授業の光景を見た際に生徒達が辛そうにしつつも授業をしている様子を見ていた。
「私が言うのもなんだが・・・デスドゥンケルハイト軍が行っていた訓練とは違がって静かであったぞ。」
ヘイゼル曰く、デスドゥンケルハイト軍の訓練は過酷で体罰も厳しい環境のようだった。
「私も生きるためにも、稽古や体罰を受けていたのでな・・・まるで、拷問を受けていたかのように厳しかったぞ・・・」
ヘイゼルは兵士としての生活を思い出すと苦しそうな表情になった。
「・・・あまり、思い出さない方がいいぞ?」
「私とした事が・・・ところで、一つ気になったのだが・・・この学院では殺す術や命を奪う方法を学ばされているのだろうか?」
ヘイゼルがそう言ってくると、ティア達は学院内の様子を思い返して見た。
「確かに・・・皆、暗そうな顔をしながら授業を受けていたね・・・」
「どの教室も皆辛そうな表情をして授業を受けていた・・・それなのに教師達は申し訳なさそうにしながらも色々と教えていた・・・これは、どう考えてもおかしくないと思わないだろうか?」
「・・・なんだか、私達が学んでいた事と全然違っていたけど・・・やっぱり、授業の内容が変わっちゃったのかな・・・?」
アリアがそう言うと、ケリーは教室の様子を考えてみた。
「・・・俺達が卒業してから、学院でなにかがあったのかも知れない・・・そのためには学院を調べ回った方がいいかもしれないな・・・」
ケリーそう言うと、学院のチャイムが鳴り始めた。
「・・・丁度、チャイムも鳴った事だし・・・学院の中を調べてみようか?」
「決まりだね。アラン君とケリー君は私と一緒に探しに行きましょう。」
アランはティア達と別れてアリアとケリーと調べる事となった。
「・・・なんで、俺達と一緒に行こうと思った?」
「だって、三人で一緒にいられるのは久しぶりでしょ?それだったら、一緒にいた方がいいと思ったからだよ。」
アリアは三人が学院で再会できた事に嬉しそうにしていた。
「まぁ、せっかく出会えたんだ・・・学生だった頃の事を思い出しながら探してみるのもいいかも知れないな・・・」
こうして、三人は学生時代の思い出を振り返りながらも調べまわってみた。
「今度は私達の教室に行ってみようかな?」
アリアにそう言われた二人は学生時代にいた教室へと向かった。
「懐かしいな・・・ここで、ダチュリエル先生の授業を受けていたな・・・」
アラン達は自分達がいた教室へと入って行った。
「・・・私達が卒業するまではダチュリエル先生に色々と教わっていたからね・・・綺麗に歌える方法も色々と教えてくれたとってもいい先生だったよ。」
そういいながらアリアは学生時代の思い出に浸っていた。
「アラン?なんだか、うかない顔をしているが・・・どうかしたのか?」
「なんでもないよ・・・入学式で僕達が初めて出会った事を覚えていないかな?」
アランにそのように言われたアリアとケリーは入学式の事を思い出してみた。
「入学式が始まる前・・・あの時は友達ができるかなと思いながら歌っていたら・・・アラン君やケリー君と出会えたから仲良くなれたよね・・・」
「うん・・・アリアちゃんの歌声が聞こえて来てみれば・・・二人と出会う事ができた事は今でも覚えているよ。」
「俺も歌声が気になって来てみれば・・・お前達と出会ったな・・・」
三人が出会う事ができたのはアリアの歌の御蔭でもあった。
「それからも一緒に勉強を頑張ったね・・・アラン君は魔法でケリー君は剣術で私は世界中の人達が私の歌を聞いてもらえるようにしたいと思って歌の勉強をしていたよ・・・」
アリアがそう言うと、アランとケリーも同様に授業を受けていた時の事を思い出した。
『それでは、このページを開いてください。』
ダチュリエルが教科書に書いてあるページを開くように言うとアリアが手を挙げた。
『このページに書かれている問題は難しいと思いますが・・・私にもできますか・・・?』
『えぇ・・・私が、ちゃんと教えてあげますので、心配しないでください・・・』
心配そうにしていたアリアに対して、ダチュリエルは笑顔で答えてきた。
『ありがとうございます・・・ダチュリエル先生がいい先生で良かったです・・・』
アリアは安心をしてダチュリエルにお礼を言った。
「・・・ダチュリエル先生は私の憧れで音楽の才能を磨き上げれば、吟遊詩人にもなれるって言ってくれたのを覚えているよ。」
「そう言っていたな・・・俺も将来を聞かされて勇敢な人間になるかも知れないって言われて見た結果・・・反乱軍の一員になった・・・アランはどんな将来だと言われていた?」
ケリーがそう聞いてくるとアランはかつて、自分の座っていた机に手を触れながら言ってきた。
「僕の夢は・・・まだ、見つけていないんだ・・・」
「見つけていないって・・・どう言う事なの?」
「うん・・・でもギルと出会った事でそれを見つけられるかも知れないって思ったんだ・・・」
そう言いながら、ギルバートから将来について訊ねられた時の事を思い出した。
『なぁ・・・将来は何になりたいと思っている?』
この時のアランはギルバートに外に連れ出されていた。
『どうして将来の事を聞くの?』
『そっか・・・それじゃあ、お前の母親が将来を決めているかと思ったからだよ。』
『まぁ・・・お母さんに色々と勉強をさせられているからね・・・遊ぶ暇もないぐらいに将来の事を考えた事がなかったよ・・・』
アランの母親はアランに勉強ばかりさせている厳しい母親だった。
『お前の母親は厳しすぎるんだよな・・・この前だって、コッソリお前の部屋に遊びに来ただけで怒られたし・・・』
『・・・あれは、勝手に部屋の中に入ってくるからだよ・・・』
『そうだったな・・・それよりも、勉強ばっかりしてもいいって思っているのか?』
『まぁ・・・色々と学んでおいた方がいいって言っていたし・・・将来、何かの役に立てるかも知れないからね。』
アランがそう言ってくると、ギルバートはなにかを思い付いて言ってきた。
『・・・だったら、自分で夢を見つけ出すのはどうだ?それだったら、お前の母親の言う事を聞き続けていたら、将来どうなるか分かんないぞ?』
『でも・・・そんな事をしても僕の将来を見つける事ができるのかな・・・?』
アランが不安そうに言ってくると、ギルバートが青空を見上げながら言ってきた。
『あぁ・・・見つかるさ。将来は親が決める事じゃない・・・自分自身の力で決める事なんだ・・・誰かの言う事を聞くよりも自分の手でなりたい自分を見つけるべきなんじゃないのか?』
そのように言われたアランはギルバートの言葉で決意が決まった。
『・・・決めたよ。僕は色々と学んでから、世界中を旅して自分の夢を探し出す旅に出てみるよ・・・』
そう言って、ギルバートとアランはお互いに笑い出した。
「卒業した後で旅を始めてからまだなにも見つけられてはいないけど・・・ティア達と出会ったからなりたかった自分を見つけられる気がしてくるよ・・・」
「アランなら、すぐに見つけられそうだな。」
「私達も信じているよ・・・アラン君がなりたい自分を見つけるのを・・・」
アリアとケリーはアランの夢が見つけられる事を信じた。
74章 デスドゥンケルハイト軍の学び場
夜になり、ティア達は一度学院の外に出て合流する事にした。
「全員いるな・・・今から、話す事はアランやアリアだけじゃなくアンタ等も驚く事になるが・・・聞く覚悟はできているか?」
ケリーが念を押すかのように聞いたがティア達はなにも答えなかった。
「・・・聞かなくてもできているみたいだな・・・」
「それでは、聞かせてくれないだろうか・・・何故、この学院は殺しや命を奪う事について学んでいるのかを・・・」
その直後にケリーから発せられた言葉は信じられない物だった。
「色々と調べて見たんだが・・・この学院は俺達が卒業した二年前にデスドゥンケルハイト軍によって支配されていたみたいだったぞ・・・」
三人で調べてみた結果、ノヴェフロル学院はデスドゥンケルハイト軍の管轄に置かれていると言うのだった。
「学院がデスドゥンケルハイト軍に・・・それは、本当なのですか・・・?」
「そうだ。学院内を見て回っている時に生徒だけじゃなく先生達も辛そうな顔をしていただろ?あれは無理やり学ばされていた事が分かったからだ。」
ティア達は全員が辛そうな顔をしながら授業を受けていた事を思い出した。
「貴方の言う通り・・・生徒達が学ばされていたのはデスドゥンケルハイト軍がやりそうな殺し方が黒板に書かれていたわ・・・」
「あぁ・・・今では有望な兵士を育て上げるための兵学校としてしまっているんだ。」
現在、ノヴェフロル学院は有望な兵士に育て上げる教育方針と化し、デスドゥンケルハイト軍に関する事や人を殺めるような戦闘術や魔法を嫌でも学ばなければならなくっているのだった。
「・・・」
「洗脳教育と言うべきか・・・教員達は申し訳なさそうにしつつも生徒達に教えていた訳だ・・・」
「なにそれ・・・学級崩壊よりも酷いじゃないの・・・」
ティア達がそう思っていると、アリアがある事を思い出した。
「それじゃあ、どうして皆は普通に授業を受けていられたのかしら?」
ティアがなぜ普通に授業を受けている事が疑問に感じた。
「先生達の会話から聞いた事だけど・・・なんでも、学長の方針だから仕方がないって言っていたよ。」
三人で別行動をしていた時に教師達がそう話していたのを聞いていた。
「ちょっと待って・・・それじゃあ、先生達は分かっていて、あんな授業を受けさせられていたの・・・?」
「その通りだ。だが、学長の事はなにも言わなかったのはどうしてだ?」
ティア達が学院に訪れてから誰も学長について話さなかった。
「そう言えば、私とケリー君がここに来た時から学長は一度も見ていなかったよ?」
「あぁ・・・学院の中にいる時も学長がいなかったから入らなかったはずだ。」
学院の中を見て回っていた時に学長室に訪れようとしたが、学長が不在だったので入らずにいた。
「今日の授業が終わっても学長は一度も姿を現さなかった・・・しかも、生徒や先生達にも学長について聞こうとしたがなにも話さなかった・・・どう考えても、黒だと思わないか・・・?」
ケリーは学長がデスドゥンケルハイト軍と繋がりがあると睨んでいた。
「ちょっと待って・・・ケリー君、学長もデスドゥンケルハイト軍と手を組んでいると言う事なの・・・?」
アリアが信じられないと思ったが、アランは学長と繋がりがある事が考えられなかった。
「ううん・・・僕には学長が裏切るなんて思えないよ・・・」
「俺だって、信じられないさ・・・あの学長が、デスドゥンケルハイト軍の手下になっているなんて・・・だが、あの状況を見ればそう考えされるのも無理もないか・・・」
学長が裏切り者ではないとアラン達は信じていた。
「・・・どうして、皆は普通に授業を受けていたのでしょうか?」
「・・・あれだけ、嫌な事ばかり学ばされているのに、学長の事をなにもしなかったのもおかしいね・・・」
「学長の方針だから誰も逆らおうとしないからだ・・・だとすれば、今すぐにでも事実を確かめに行ってみれば分かるのかも知れないな・・・」
「だよね・・・学校は閉まっているから、警備員しかいないから心配はないと思うよ。」
ティア達は事実を確かめるべく、学院に侵入して学長室に向かい始めた。
「学院中に警備用の機械や魔道具が設置されているから気を付けた方がいいよ。」
ノヴェフロル学院の警備はとても厳重で有名だった。
「・・・二年前よりも、警備が厳重になっているな・・・学長室に着くまでは時間がかかりそうだ・・・」。
「なぁ・・・幾らなんでも厳重にしすぎじゃねぇのか・・・?」
「そうだね・・・アタシのいた監獄と同じぐらいに厳重に思えてくるよ・・・」
イヴは以前に収容されていた監獄の厳重さが酷似しているように思えた。
「監獄に忍び込んだ時には数え切れないくらいの兵士達がいました。」
「・・・だとすれば、ここはデスドゥンケルハイト軍の所有物件になっている事だな・・・これは、学長に文句を言わなくちゃスッキリしないぜ・・・」
ティア達は警備を掻い潜りながらも無事に学長室へと辿り着いた。
「開いている・・・皆、特にアランとアリア・・・準備はいいな・・・?」
「うん・・・アラン君だって、覚悟はしているよね?」
「・・・勿論だよ。」
そう言って、ケリーは扉を開けるとティア達は学長室へと入って行った。
「学長、お話したい事が・・・」
ティア達が学長室の中に入ったが学長は何処にも見当たらなかった。
「いない・・・もう、帰ってしまったのでしょうか・・・?」
「いつもなら学長がいる時間なのに・・・もう帰っちゃったのかな・・・?」
アランは時計を見て学長がいる時間である事を確認した。
「違いますよ・・・ケリー君。」
声が聞こえた方を振り向くと、いつの間にかダチュリエルが現れていた。
「ダチュリエル先生?どうやって学長室に?」
突如、現れたダチュリエルにティア達は驚いた。
「先程ですよ・・・二人はともかくとして君達の方は理解していると思いますが・・・?」
そう言って、ダチュリエルは警戒をしているティア達を見た。
「アラン君?それに、皆もどうしてそんなに警戒をしているの?」
「・・・二人共、ダチュリエル先生もデスドゥンケルハイト軍の一員だよ・・・」
アランがダチュリエルの正体を告げると、ケリーとアリアはその事に驚いた。
「アラン・・・それは、本当なのか・・・?」
「はい・・・アラン君の言う通りです。流石は私が見込んだ生徒・・・いや、逸材とでも言っておきましょうか・・・」
ダチュリエルの発言を聞いた二人はまさかの一言に驚きを隠せなかった。
「そんな・・・ダチュリエル先生がデスドゥンケルハイト軍だって・・・嘘ですよね・・・?」
「アリア君・・・アラン君の言う事は本当です。」
ダチュリエルは嘘偽りなく言ってくると、ケリーはアラン達を見て本当の事だと悟った。
「・・・どう見ても、嘘を言っているようには見えないな・・・」
担任を務めていた教師が敵だと見做したケリーは大剣を抜き構えた。
「落ち着きなさい・・・私は君達と戦いに来た訳ではありませんよ・・・」
ダチュリエルが落ち着いた様子でケリーにそう言った。
「確認する資料を忘れていたので取りに来たまでです。」
そう言って、ダチュリエルは学長室にあった椅子に座り込んだ。
「さてと・・・君達、卒業生が様子を見に来てくれたのは嬉しいですが・・・こんな夜中に忍び込んだだけでなく、勝手に学長室に入って来るとはいけない事ですね・・・」
許可なく学長室に入ってきた事を指摘すると、アランは緊張しながらも聞いた。
「・・・ダチュリエル先生、学長は何処にいらしているのですか?」
「学長・・・あぁ、あのお方ならもういませんよ・・・」
「もういない・・・?まさか、学長はもう殺されていて・・・」
ティアはそう思ったが、ダチュリエルは首を横に振ってきた。
「いいえ・・・殺したのは兵士達でその後任として私が就任したまでです・・・」
二年前、三人が卒業してから学長はデスドゥンケルハイト軍に殺されてしまっていた。
「後任って・・・まさか、ダチュリエル先生が学長を・・・?」
「はい・・・二年前に私は学長として学院の長として務めさせてもらっています。」
前学長の死後、ダチュリエルは現学長として就任していた。
「あの人はデスドゥンケルハイト軍の申し入れを断ったので、見せしめとして始末した結果、教師達は大人しく私を学長として受け入れてくれましたよ。」
ダチュリエルがそう話してくると、ティアが睨み付けてきた。
「・・・つまり、貴方が学長になって以来、生徒達に人の命を奪う事を学ばせていたと言う事なのね・・・?」
「まぁ・・・そう言う事になりますね。ですが、勘違いはしないでください・・・あくまでも兵士としての教育でもあり、デスドゥンケルハイト軍に徴兵をされる人材を探し出すためでもあるので・・・素質のない生徒がいても逆らわないように教育をしていますのでご安心を・・・」
「そんな事・・・教育でもなんでもないわ!」
ティアが激怒して剣を抜こうとしたが、アランが止めに入ってきた。
「さてと、私は忙しいですので、君達はお帰りください。」
「・・・それでは、失礼しました。」
アランは頭を下げてから全員を学長室から出した。
(・・・二人は憧れの先生がデスドゥンケルハイト軍だった事を受け入れられていない・・・それに僕達がいたから見逃してくれたのもかも知れないのかも・・・)
ティア達を始末しようとしなかったのは、元教え子達がいたからではないのかとアランは、そんな事を考えながらも学院を後にした。
75章 ティアの思い
学院から離れた場所にある街に訪れたティア達は宿に泊まっていた。
「・・・ダチュリエル先生がデスドゥンケルハイト軍で学長になっていたなんて・・・」
「しかも、生徒達に良くない教育をしていたのもダチュリエル先生の方針だったのか・・・」
アリアとケリーはダチュリエルと学院の現状を考え込んでいた。
「・・・まさか、ダチュリエル先生が、学長になって学院を支配していた事には驚かされたな・・・」
「うん・・・どうりで、生徒や先生達も学長の事を言わなかった訳だよ・・・」
アリアとケリーは、未だにダチュリエルがデスドゥンケルハイト軍の一員だった事実を受け入れる事ができずにいた。
「・・・結局、事実を受け入られないままなのか?」
ギルバートはそう言ってきたが、アランは今日の事を忘れようと眠ろうとしていた。
「・・・かつて、憧れていた人間の本性を知ってしまえば現実を受け入れるのには時間がかかるだろう・・・」
「それはそうと、ティアがいないけど・・・屋上にいるのかな・・・?」
「はい。ティアは先程、屋上へと上がって行くのを見かけました。」
ステラは部屋を出ていた時にティアが屋上に向かっているのを見かけていた。
「そう・・・ところでギルもいないみたいだけど・・・何処に行ったのか知らない?」
イヴがそう言うと、ステラ達はギルバートがいなくなっている事に気が付いた。
「本当だ・・・いつの間にいなくなったんだろう・・・?」
一同が何処に行ったのかと思っているとヘイゼルが言ってきた。
「・・・もしかすれば、ティアの元へ向かったのだと考えられるな・・・」
「ですが、今日は星空が見えませんよ?」
「違う・・・ギルバートは彼女の様子が気になり、屋上へと上がったのかも知れぬと言う事だ・・・」
ヘイゼルはティアの事が気になって、彼女の元へ向かったのではないかと考えられていた。
「今日は星が一つも見えないようね・・・」
一方、ティアは星が一つも見えない夜空を見上げていた。
「これだけ、暗い夜空となれば・・・村が襲撃された時を思い出してしまうわ・・・」
村が襲撃された時を彷彿させるような夜空だとティアにはそう感じられていた。
(・・・星が見える夜空は命が輝いているように見えて綺麗だけれど・・・星が一つも見えない夜空はまるで命が消えてしまったかのように・・・)
星の見えない夜空を見て、ティアは命の輝きが失われたかのように感じていた。
「誰・・・?」
背後から気配を感じたティアは振り向くとギルバートが立っていた。
「ここで、星空を見ようとしていたのか?」
「えぇ・・・今日は一つも星が見えなかったけれど・・・」
ティアがそう言われたギルバートは夜空を見上げてみたが一つも星が見えなかった。
「今日は星が見えなくて残念だな・・・それじゃあ、俺は部屋に戻っているからお前もすぐに来いよ?」
そう言って、ギルバートは屋上から出ようとするとティアが呼び止めてきた。
「ギル・・・もし良かったら、私の話に付き合ってくれないかしら?」
「・・・別にいいけど、なにか心配事でもあるのか?」
ギルバートが訊ねてみると、ティアは頷いてから話を始めた。
「えぇ・・・この旅を始めてからずっと思っているの・・・殺されそうになった人達を助けてしまったせいで・・・」
ティアは旅を始めて以来、家族が死に故郷が壊滅してしまったのは自分のせいだと思い続けていた。
「・・・もしかして、ずっと考えていたのか?」
「えぇ・・・旅を始めた時からずっと頭から離れられないの・・・」
旅を始めてからもティアは後悔の念を抱き続けながらも旅を続けていた。
「あのなぁ・・・まだその事を思い詰めているのか・・・?」
「・・・私が殺されようとしている人達を助けようとしてしなければあの惨劇が引き起こされてはいなかったはずだと思えてくるの・・・」
ティアは兵士に逆らってまでも親子を助けてしまったせいで惨劇を招いてしまったのだと感じていた。
「お父さんとお母さんはだけでなく、故郷の村にいた人達までも巻き込んでしまった・・・全部、私が招いてしまったから死んでしまったの・・・!」
話している内に惨劇を思い出してしまいティアの目から涙が零れ始めた。
「ティア・・・そんなに自分を責めるなよ・・・」
ギルバートは宥めようとしたが、ティアは悲しみながら否定をしてきた。
「いいえ・・・お父さんとお母さんや私が助けた親子に村にいた人達までも全員が殺されてしまった・・・仕方がなくなんてないじゃない・・・!」
ティアは自分のしてしまった事に後悔を抱きながらも戦い続けていた。
「だって、そうでしょ?殺されそうになった人達の命を守るために歯向かった結果を招いてしまったのは私のせいなの・・・」
ティアは徐々に悲しそうになりながらも話しているのが分かった。
「・・・だったら、一つ聞かせてくれないか?お前が殺されそうになったその家族を見殺しにしていたら、他の奴等や両親までも殺されずに済んで村も滅ぼされなかったはずだって思っていられるのか?」
ギルバートが助けずに見捨てた場合はそう思う事ができるのか訊ねてきた。
「そんな事は絶対に思わないわ・・・例え、私が助けていなくても悲しくない人はいないはずがないじゃない・・・!」
ティアは悲しみがこみ上げながらも涙が零れ続けていた。
「だから・・・ずっと後悔をしているの・・・命を守るために戦っているのにあの事が忘れられずにいる事が怖く思えてくるの・・!」
「ティア・・・」
すると、ギルバートは悲しんでいるティアの元に近寄った。
「・・・お前の悲しみは俺にも分かるぞ・・・」
「えっ?」
ティアはギルバートの発言を聞いて涙の跡が付いた顔を上げた。
「人の命を守ると言う事は命をかけていると言う事だ・・・なんて言ったって、お前の場合は自分の命を懸けてまでも他人の命を優先にして守ろうとするからな・・・」
「えぇ・・・私は命が失われる事が許せないから、生命を守りたいと思いながらも戦い続けて来たの・・・」
「そうか・・・俺も父さんの話で聞いた事だが・・・エレノアはどんな強敵や過酷な場所でも命を守るためなら自分の命を顧みない奴だって聞いた事があるが・・・その血を引いているお前にも色んな生命を守りたいと言う気持ちが強いと言う事だな・・・エレノアと同じ力を持っているから世界中の命を守れると俺にはそう思えて来るんだ・・・」
ギルバートはティアならデスドゥンケルハイト軍を倒す事ができると信じていた。
「・・・これまで、聖地を開放してお父さんとお母さんの仇を討つために戦い続けてきたわ・・・その力を持っている私を信じてくれていると言う事なのね?」
「そうだ。これまでの戦いを思い出してみろよ?何度もデスドゥンケルハイト軍やヤバそうなモンスターと戦ってきただろ?」
ギルバートにそう言われたティアはこれまでの戦いを思い返してみた。
「言われてみれば・・・何度も過酷な旅をしては色々な人達と出会ってモンスターと戦ってきた・・・それが、多くの命を守るために私は戦い続けてきた・・・」
「そうだ。聖地を取り戻したとしても生命を守り続けると言う使命が続くんだ・・・お前がいなければ、誰がデスドゥンケルハイト軍と戦ってだよ?」
ギルバートにそう言われるとティアは涙を拭った。
「ギル・・・私はデスドゥンケルハイト軍に支配された世界を開放するわ・・・」
「それでこそティアだ・・・お前がいなくちゃ、この世界は闇に包まれたままだからな・・・」
ギルバートが安心した様子で言ってきた。
「そのためにも残りの光翼の涙を集めましょう。」
「あぁ・・・それさえ集めれば、デスドゥンケルハイト軍を倒せそうだからな・・・命の光であるお前が闇を浄化してくれる事を祈っているぜ。」
ギルバートがそう言うと、ティアは悲しみを忘れて笑っていた。
「そうね。私なら世界に光を取り戻す事ができる・・・」
「あぁ・・・」
すると、ティアはギルバートの手を両手で握り締めた。
「ティア・・・?」
「ギル・・・約束よ・・・」
ティアがそう言って、ギルバートとの約束をしようとしていた。
「約束・・・俺は・・・」
「お願い・・・約束して・・・」
ギルバートがなにかを言う前にティアは約束を交わしてほしいと求めてきた。
「分かったよ・・・約束だ・・・」
「ギル・・・約束をしてくれてありがとう・・・」
こうして、ティアとギルバートは約束を交わしてからも二人でいるのだった。
76章 雪山へ
次の日になり、ティア達はアリアとケリーと別れようとしていた。
「アラン君・・・私達はそろそろ行くから・・・気を付けてね・・・?」
アリアが心配そうにしながら別れを言ってきた。
「アリアちゃん、君もアジトに向かっても大丈夫?」
昨日の夜、アリアが反乱軍の元へ向かう事を聞かされていた。
「うん・・・反乱軍の人達が心配だから元気づけたいから一緒に行こうと思ったの。」
「そう言う事だ・・・ちゃんと、アリアを守るから安心してくれ・・・ちなみにお前達が向かおうとしている雪山は吹雪いているから遭難には気を付けた方がいいぞ。」
「分かったよ。二人も気を付けてね。」
こうして、二人と別れたティア達は街を出て雪山へと向かって行った。
「それにしても・・・アンタの敵対心が解けて良かったね・・・」
「あぁ・・・なんとか、敵意を背く事だけはできた。」
その道中でケリーがヘイゼルの正体を見破った事について話していた。
「ケリーがアンタを兵士だって見破った時はビックリしたけど・・・もしかしたら、アンタの事を見た事のある人が言っていたのかも知れないと思わない?」
「恐らくだが・・・その後でデスドゥンケルハイト軍に関する情報の提供をしたので・・・ケリーがアジトに帰還してから伝えるとなると、反乱軍は皆が分かってくれたのかも知れないな。」
「そう・・・反乱軍に捕まらなくて・・・良かったね。」
ヘイゼルが安心をした様子を見てイヴはそっぽを向いた。
「どうかしたのか?」
「ううん・・・なんでもない・・・」
「イヴ・・・もしや、私の事を気にくれているのではないのか?」
ヘイゼルがそう言ってくると、イヴはそっぽを向いたまま言ってきた。
「そんな事ないって・・・ただ、反乱軍に捕まらなくて良かっただけ・・・別にアンタの事を心配している訳じゃないからね・・・」
そう言いながらもイヴは密かに穂を赤らめていた。
「・・・そう言う事にしておこう。」
ヘイゼルはイヴの様子を見て笑みを浮かべると、ステラがイヴに声をかけてきた。
「イヴ、もしかして照れているのですか?」
ステラが穂を赤らめているのを見て言うと、イヴが慌てた様子で言ってきた。
「べっ・・・別にそんな事じゃないから・・・勘違いしないで・・・!」
イヴは穂を赤らめながらも速足で先頭を歩き出した。
「イヴ・・・やっぱり、ヘイゼルさんの事で穂を赤らめているように見えます。」
「今の様子を見たら・・・前よりもヘイゼルさんを目の敵にしている様子が少なくなってきているように感じてくるよ・・・」
以前よりもイヴはヘイゼルに対する敵対心が薄れていた事が感じられた。
「そうですね。最初の頃はヘイゼルさんがデスドゥンケルハイト軍の兵士だったと言う理由で嫌っていましたし・・・なんだか、以前と変わっているように見えます・・・」
ステラも同様にイヴの対応に変化があると気が付いていた。
「えぇ・・・いつの日か、イヴとヘイゼルが和解できる日が来ると思うわ・・・」
ティアはいずれ二人が和解する日が訪れると思った。
「雪原の中にある雪山か・・・確かに五つ目の光翼の涙がありそうだな・・・」
街を出てからもティア達は歩き続けた事によって雪山のある雪原へと足を踏み入れていた。
「ここは、雪原地帯で雪が積もっていて寒いよ。」
アランがそう説明すると、ステラが寒さでクシャミをした。
「・・・寒いです。」
「ここは、一年中ずっと雪の世界だから寒いのも無理もないよ。」
「つまり、ここだけがずっと冬の季節が続いていると言う事なのでしょうか?」
「そうだよ。それに、ここは氷属性のモンスターが多いから炎属性は有利だよ。」
この辺りでは氷属性のモンスターが多く生息していた。
「それじゃあ、さっさと行って五つ目を手に入れるか・・・こんな場所に長くいたら風邪を引いちまいそうだしな・・・」
こうして、ティア達は雪山を目指して雪原の中を歩き始めた。
「・・・こんなに寒いって言うのに・・・モンスター達は元気なのかよ・・・」
雪原を歩いて行くと、雪原地帯に生息する白い狼の群れと遭遇した。
「ここに住む狼の群れだな。」
現れたのは白い毛をした狼の群れだった。
「相手はモンスターじゃないから、動物相手でも命を奪わないようにしなくちゃね・・・」
イヴがそう言ってくると同時に狼達がティア達に襲いかかってきた。
『イグフレミア!』
アランが魔法で炎を放った事で狼達は慌てだした。
「雪原の狼達は寒い場所に生息しているから炎が弱点だからすぐに逃げ出すよ。」
そう言うと、狼達は散り散りになりながらも逃げて行った。
「ほらねっ・・・全員、逃げた事だし先へ進もうか・・・」
狼達が逃走した後でも雪山に向けて進んで行った。
「見てください・・・歩いた所に足跡が残っていますよ。」
そう言いながらステラは後ろを見て、自分達の足跡が残っている事を確認された。
「そりゃあ、雪を踏んでいるから足跡が残るのは当たり前の事だろ?」
「いえ・・・足跡が綺麗に残っていると思いまして・・・」
足跡をよく見れば、自分達の足の裏と同じ形が綺麗に残っていた。
「それもそうだろ・・・なんか、話していたらお前と一緒に雪の中で遊んだ事を思い出して来たぞ・・・」
ギルバートは過去にアランと雪遊びをしていた事を思い出した。
「懐かしいな・・・冬の時に雪が積もった外で遊んだ事があったね・・・」
「だろ?雪が積もっている時に遊んだぐらいだからな・・・」
そう言いながら、過去に雪遊びをした事を思い出に浸っているとアランがなにかを思い出して苦い顔をしながらギルバートに言ってきた。
「思い出したけど・・・その時に僕が風邪を引いていた事があったのを覚えていないかな?」
「風邪?あぁ・・・一度、お前が風邪を引いた事があったな・・・」
「それなのに、風邪で寝込んでいた僕を無理やり外に連れ出していたよね・・・?」
アランがそう言ってくると、ギルバートは覚えていないのか首を傾げてきた。
「そうだったか?俺はてっきり、遊んでいれば風邪なんか吹っ飛ぶと思ったから遊びに連れてったけどな・・・」
ギルバートがそのように言ってくるとティア達は呆れだした。
「ギル・・・風邪を引いている人を遊びに連れて行くなんて・・・」
「ギルバート・・・それは流石に良くないのではないのであろうか・・・?」
「アランは、風を引いていたのに幾らなんでも酷すぎます・・・」
「ギル・・・病気の人を外へ連れ出すなんて・・・良くないよ・・・」
ティア達がギルバートを軽蔑するかのように言ってきた。
「あの時は遊んでいる内に風邪が治ると思ったんだよ・・・アランだって、フラフラしながらもやっていただろ?」
しかし、ギルバートの発言を聞いたアランはため息をついた。
「・・・あのねぇ、風邪と言うのは安静に寝ていなくちゃ駄目なのにギルが暇だからって無理やり外に連れ出したのに・・・そのせいで風邪が長引いちゃったけどね・・・」
アランは風邪を引いていた時の事を思い出したくなさそうな口調で言ってきた。
「まさか、悪化するなんて知らなかったんだ・・・最初から、そう言ってくれれば良かったのだろ・・・?」
ギルバートが、誤魔化すように笑い出してきた。
(アランって・・・よくこんな人と絶交しなかったね・・・)
(・・・ギルは僕にとって初めてできた友達だったからね・・・絶交したいだなんて言えなかったよ・・・まぁ、何回かはそう思っていたけどね・・・)
アランは密かにイヴに言うと、ティア達はギルバートを置いて歩き出した。
「なんだ?先に歩くなよ・・・おいっ・・・待てって・・・」
ギルバートはティア達の元に戻っても気まずそうな空気が続いていた。
77章 吹雪いてくる雪山
ティア達は雪山を目指して寒地の雪原を未だに歩き続けていた。
「かなり冷えてきたわね・・・なんだか、寒くなってきている気もするわ・・・」
歩き続けている中で徐々に寒さが増してきている事が感じられた。
「恐らく、気温が下がる時間帯となっているのであろう・・・これだけ、寒くなっているとなると辿り着けるかどうかは時間の問題だ・・・」
ヘイゼルは気温が下がり続けていけば、今日までに辿り着けるのか分からなかった。
「つまり、しもやけになるぐらい寒くなると言う事なのね・・・」
「あぁ・・・そうなる前にとっとと雪山を見つけちまおうぜ。」
ギルバートがそのように言ってくると、アランは昔の事を根に持っていたのか呆れた表情で彼を見つめていた。
(・・・僕が風邪を引いているのに外に連れ出していた君が言う事なのかな・・・?)
すると、アランの視線を感じたのかギルバートは誤魔化すように言ってきた。
「とっ・・・とにかく、雪山を見つけちまおうぜ・・・なっ?」
「そうだね。本当に風邪を引いちゃったら大変だからね。」
気を取り直したティア達は気温が下がって行く雪原を歩き出した。
「・・・そろそろ、吹雪いてきたね・・・」
気温が下がって行く中で吹雪が吹雪いてきた。
「これだけ吹雪いてくるとなると・・・これ以上の探索はしない方がいい・・・」
「あぁ・・・野宿でもしていたら凍え死になりそうだからな・・・」
この気温ではテントを張っても野宿ができるかどうか怪しい寒さだった。
「大丈夫だよ。ちゃんと、寒い場所でもキャンプができる魔道具を持っているから心配しなくてもいいよ。」
アランがキャンプ用の魔道具を見せようとすると微かに気配が感じられた。
「今・・・なにかを感じたような気が・・・?」
すると、吹雪の音で聞き取りづらいが微かに泣き声のような物が聞こえてきていた。
「どうやら吹雪の中で私達を見つける事ができたようだ。」
ヘイゼルがそう言って銃を構えると、なにかが近づいてくる気配が感じられた。
「そこだ!」
ヘイゼルは気配を感じた方角へ銃を向けて撃つと微かに聞こえた悲鳴を耳にした。
「やはり、モンスターが近付いていたか・・・」
聞こえた方へ向かってみると、ヘイゼルはモンスターを倒している事を確認された。
「急所が外れているので、まだ息がありそうだ・・・今すぐにトドメを刺しておいた方がいい・・・」
そう言って、ヘイゼルは銃をモンスターに当てて引き金を引こうとした。
「待って!」
発砲しようとする直前にティアが割り込んで止めてきた。
「ティア・・・連いて来ていたのか・・・」
「・・・もう、これ以上トドメを刺す必要はありません。」
「しかし、確実にトドメを刺していなければ、また襲われる事になるのだぞ?」
しかし、
「ヘイゼル、コイツの言う事を聞いてやれよ・・・俺もモンスターにトドメを刺そうとする度に何度も止められているぞ・・・」
ギルバートはモンスターを仕留めようとする際にティアに止められていたようだが、今では彼女の影響を受けたのか殺さないようにしながら戦うようになっていた。
「アンタが元デスドゥンケルハイト軍の兵士だったのは分かるが・・・モンスター相手でも殺さないように戦ってくれよな・・・そうしないと、ティアが怒ってしまいそうだからな・・・」
ギルバートにそう言われたヘイゼルはティアの方を見て事情を理解したのか、モンスターにトドメを刺すのを止めて見逃す事を決めた。
「分かった・・・エレノアの末裔であるティアが望むのであれば、トドメを刺さずに見逃す事にしよう・・・」
ヘイゼルはトドメを刺すのを止めると、ティアはそのモンスターに近寄って魔法で回復させた。
「なぜ故にモンスターに回復魔法をかけているのだ?」
「モンスターにも命があるので自然の中で生きていくべきです・・・例え、危害を加える存在でも殺してはいけないと思っています・・・」
生ける者の生命を奪ってはならぬと考えているティアは例えモンスターであろうと命を奪うような事はしたがらなかった。
「もう大丈夫よ・・・私達は行くから貴方も元気で・・・」
回復したモンスターは逃げるように去って行った。
「やはり、エレノアの一族は殺生もせずに敵味方関係なく誰の命も大事に思ってくれているかのように見える・・・」
「まぁ・・・そのせいで仇の相手を殺せずにいるけどな・・・」
それから、吹雪が強まる中でアランの持っていた魔道具を使ってキャンプをする事ができた。
「・・・やっと、雪山に辿り着けたな。」
夜が明けてから歩き続けていたティア達は目的に辿り着いており目の前に雪山が聳え立っていた。
「・・・山頂がよく見えねぇや・・・」
雪山を見上げてみても、高くて頂上が見えなかった。
「頂上が雲に隠れていて見えない・・・覚悟を決めて登るしかないね・・・」
イヴがそう言ってから、ティア達は山頂を目指して雪山を登り始めた。
78章 モンスターの多い雪山
「これで、先に進めるね。」
登山を続けていたティア達は何度もモンスターと戦いながら頂上を目指して雪山を登り続けていた。
「さっきから、モンスターと戦ってばかり・・・もしかしたら、吹雪で遭難するよりも危険なモンスターが出てきたりするかも・・・」
イヴがそう言った矢先に足音と共にモンスターがこちらに近づいてきた。
「・・・どうせ、また氷属性のモンスターが出てくるんだろ・・・?」
ギルバートはそう言っていたが、現れたのは巨人のモンスターだったのが確認された。
「コイツは・・・デカイモンスターだな・・・」
現れたのは巨大な体をした巨人のモンスターだった。
「気を付けて・・・あのモンスターは巨人だよ・・・」
「そう言えば、巨人はこの山に生息していると言われていたな・・・」
巨人は雪山にも生息しているようだった。
「うん・・・しかも、巨大なために体力が多くてパワーも強いから、油断していたらやられてしまう事になるよ・・・!」
アランは警戒をしながら言うと、巨人が雄叫びを挙げてきた。
「襲ってくるぞ!油断はするな!」
巨人はゆっくりと近付いて来ると、ティア達に向けて攻撃を仕掛けてきた。
「動きは遅いが、一撃は重いので致命傷になりかねないぞ!」
ティア達は巨人の攻撃を避けてから反撃をした。
「「はあっ!」」
ティアとイヴは同時に反撃をしたがあまり攻撃は効いていなかった。
「攻撃をしても、ビクともしていないなんて・・・!」
「やっぱり、これぐらいの攻撃ではあまり効かないみたいね・・・」
すると、巨人がゆっくりとこちらに振り返って近づいてきた。
「なぁ・・・コイツって、知力が低かったよな・・・?」
戦闘中にギルバートがアランに訊ねてきた。
「そうだけど・・・?」
「俺の思っていた通りだ・・・だったら、お前の魔法でコイツのオツムにお眠の時間を与えてやった方がいいぜ。」
「・・・君の思っている事は分かったよ。」
ギルバートの考えている事を理解したアランは詠唱を始めると巨人に目掛けて魔法を唱えた。
『フリニヴェ!』
アランが魔法を唱えると、巨人の頭上に目掛けて氷を落とすとそのまま頭に直撃した。
「当てたけど・・・次はなにをすればいいの?」
「なにもしなくていいぞ・・・これで、十分に効いたはずだからな・・・」
ギルバートが余裕の笑みを浮かべていると、巨人はそのまま気を失い倒れ込んだ。
「コイツは頭が弱そうだから、硬い物でもぶつけちまえば、気絶させられる事を思い付いたからな。」
ティア達は無事に巨人を倒してからも雪山を登り続けた。
「・・・あれは、一体なんなのでしょうか?」
しばらく、登り続けていると道に幾つもの雪ダルマが並んでいた。
「雪だるまと言って、雪で作られた人形みたいな物よ。」
ティアが説明をすると、ステラは雪だるまを見つめ始めた。
「よく見てみれば、雪だるまは可愛く見えてきますね。」
「そうね。他にも雪だるまがあるけど・・・誰かが作ったのかしら・・・?」
ティアは周りを見て同じ雪だるまが幾つもある事が気になった。
「他にも雪ダルマがあるね・・・作った人は何処にいるのかな・・・?」
「どれも同じで雪だるまで綺麗に作られているみたいです・・・」
そう言うと、ステラは他の雪ダルマにも近付いてみた。
「・・・雪山の中に誰が作ったのか分からない雪ダルマ・・・?」
雪だるまを見ていると、アランがなにかに気が付いた。
「ステラ、近づいちゃ駄目だよ!」
アランが叫んだ瞬間に周りにあった雪ダルマが一斉に動き出した。
「これは・・・やっぱり、フェイクスノーマンだよ!」
「それって、雪ダルマにソックリで本物の雪ダルマに紛れ込んで襲うモンスターか?」
最初に見た雪だるまは本物であったが、それ以外はフェイクスノーマンが擬態していた。
「うん・・・ここにいるモンスターは、フェイクスノーマンと言う名前で雪のある場所に生息しているから僕達のように近付いて来た人間達に襲いかかって来るよ。」
アランはそう言いながらも魔導書を開くと魔法の詠唱を始めた。
「確か・・・フェイクスノーマンは、氷の息を吐いて来るから気を付けた方がいいよ・・・」
イヴがそう言った矢先に無数のフェイクスノーマンは一斉に氷のブレスを吐いてきた。
「くそっ・・・寒くて、堪らねぇのに、氷のブレスなんか吐きやがって・・・!」
ギルバートが寒さ悶えながらも氷のブレスを避けた。
「アランは魔法の詠唱を始めているし・・・とにかく、魔法の詠唱が終わるまで耐えるしかなさそうだね・・・!」
アランの魔法の詠唱が終わるまで、ティア達はフェイクスノーマンの吐く氷のブレスを避け続けた。
「おい・・・まだ、終わらないのか・・・?」
ギルバートはアランの方を見てみたが、魔法の詠唱はまだ終わってはいなかった。
「まだかよ・・・」
その時、氷のブレスがギルバートの下半身を凍らされてしまった。
「しまった・・・!動けねぇ・・・!」
全てのフェイクスノーマンはギルバートに止めを刺そうと近づいてきた。
「ギル!」
ティア達は助け出そうとしたが、フェイクスノーマンはブレスを吐き出してきた。
「駄目・・・間に合わない・・・!」
その時、詠唱を終わらせていたアランは炎の魔法を唱えた。
「フェイクスノーマンが解けていく・・・!」
アランの魔法によって、フェイクスノーマンは炎によって溶け出していった。
「なんとか、間に合ったね・・・皆、大丈夫だった?」
「遅いぞ・・・もう少しで、凍らされる所だったな・・・おい、俺の氷も溶かしてくれ・・・」
アランは火傷させないように炎の魔法でギルバートの氷を溶かし始めた。
「ねぇ・・・これって、どう見ても殺しているんじゃないの・・・?」
イヴが溶けたフェイクスノーマンを見て恐る恐るアランに聞いた。
「アラン、フェイクスノーマンを溶かさなくても良かったと思うわ・・・」
ティアは溶けて水になったフェイクスノーマンを見てアランにそう言ってきた。
「大丈夫だよ。しばらくしたら、また復活するから放っておいても大丈夫だよ。」
「それって、どう言う事なの?」
すると、フェイクスノーマンが説けた状態で逃げていった。
「ほらねっ・・・ここなら、砕けたり溶けたりしても、しばらく安全な場所に移動してから雪と冷気で体を再生させるから殺した訳じゃないよ。」
「そうだったの・・・溶けてしまった時は、貴方が殺してしまったのかと思っていたけれど・・・フェイクスノーマンが死んでいなくて良かったわ・・・」
フェイクスノーマンが殺されていない事に安心して登り続けた。
(・・・雪だるまを作ったのは誰だったのでしょうか・・・?)
ステラは最初に作られていた雪だるまを誰が作ったのか気になっていた。
79章 雪山で待ち伏せる者
「なんだか、知らない場所に着きました。」
しばらく雪山を登って行くと、ティア達は広い場所に辿り着いた。
「とても広い場所に着きました・・・ここが山頂なのでしょうか・・・?」
「いや・・・どう見てもここは頂上じゃないから・・・休憩をするのはもっと先になりそうだな・・・」
ギルバートにそう言われたステラは不安そうに頷いた。
「ステラ、もっと安全そうな場所で休ませるから安心して・・・」
ティアがステラを宥めてから先へ進もうとした時だった。
「・・・誰かいるの?」
ティアの背後から気配が感じられて振り向こうとすると、日本の剣が振り下ろされてくるとティアはその場からとっさに避けた。
「・・・流石はエレノアの一族だな・・・俺の不意打ちをいともたやすく、避ける事ができるなんて・・・」
ティアに攻撃を仕掛けてきたのは以前にヘイゼルを暗殺しようとしていた暗殺部隊のリーダーであるアイザックだった。
「アイザック!?なんで、こんな所に!?」
「ダークタナトス様の命でお前達を始末しろと来たんだ・・・別に言わなくても俺がここにいる事は分かっているだろ・・・?」
アイザックが現れた理由について問いてくるとヘイゼルが答えてきた。
「・・・私達がここへ来ると悟って、私達を待ち伏せていたと言う事なのか?」
「あぁ・・・そう考えるだろな・・・」
「ちょっと待て・・・アンタは・・・?
ギルバートが不思議に思って聞いてくると、アイザックはなにも答えなかった。
「・・・アイツに、頼まれたからここまで来られたとでも言ってもいっておくか・・・」
「アイツ?誰の事を言っているのかな・・・?」
「まぁ・・・ヒントをあげるとすれば、ここに来られたのは、ある人物に転移させて
もらったからだ。」
アイザックは何者かが転移された事でこの場へと先回りをしていた。
「転移・・・?」
「そう言う事だ・・・話しはこれぐらいにするか・・・いい加減に、お前達を殺っておかないと、あのお方に処罰しかれないからな・・・」
そう言って、アイザックが殺気を放ってくると、ティア達は一斉に武器を手にした。
「いくぞ・・・お前達の首はあのお方に授けてやるとしよう・・・」
アイザックは目にも止まらない速さで動き出してティア達を翻弄してきた。
「足元には雪が積もっているから動きにくそうだけど・・・アイザックはそれでも素早く動いているみたいだよ・・・」
現在地の雪は積もっているが、アイザックは素早く動く事ができていた。
「・・・暗殺部隊はどのような場所でも活動ができるように鍛えられているので素早く動けると聞いた事がある・・・」
暗殺部隊はどのような場所であろうと翻弄するような動きができるように鍛錬をしていた。
「動きにくい場所で戦うなんて・・・かなり大変な戦いになりそうです・・・」
ティア達は動き辛い場所で戦う事は困難で不利だった。
(速い・・・ギルよりも素早いなんて・・・!)
アイザックの動きはギルバート以上に素早く動き出していた。
「気を付けろよ・・・コイツの速さは只者じゃねぇ・・・!本の一瞬でも油断しちまえば首がぶっ飛ぶぞ・・・!」
ギルバートが双剣を構えながら警戒をしていると、アイザックが彼の前に現れて攻撃を仕掛けてきた。
「マジで殺る気か・・・!」
ギルバートが攻撃を防ごうとしたが、ティアが庇うように前に出てアイザックの攻撃を防いでくれた。
「殺されようとしている奴を庇いたがるとは・・・流石はエレノアの一族特有の血族だな・・・」
「人の命を守るためなら、これぐらいの事は怖くないわ・・・」
そう言って、押し返すとアイザックはティアと距離を取ってからある事を言ってきた。
「・・・だが、その考えのせいで関係のない周りの人間も巻き込んでしまっているのにも関わらず・・・他人の命を守ろうとしているのか?」
痛いとこを突かれたティアはそう言われても冷静に答えた。
「・・・勿論よ。」
「そうか・・・だったら、本当に守れるのかを見させてもらうとするか・・・」
アイザックがティアの事を試すように再び素早く動き出して翻弄させてきた。
「また消えた・・・いや、見えなくなったか・・・」
「アイザックはこれまでその素早さで何人もの人間を暗殺してきた男だ・・・並みの人間ではそう簡単に動きをとらえる事も不可能に近いぞ・・・!」
ヘイゼルがそう言った直後、背後からアイザックが攻撃を仕掛けてきた。
「そこっ!」
偶然近くにいたイヴがアイザックに気付いて薙刀で突いた事が避けられてしまった。
「・・・よく、俺がいる事が分かったな・・・」
「ヘイゼルの近くにいたから、アンタの気配を感じられたからだけど・・・攻撃を仕掛ける時には微か気配を感じ取れるから、そこを狙ったからだよ・・・」
イヴは偶然ヘイゼルの近くにいたためか、アイザックが攻撃をする気配を微かに感じ取れていた。
「そうか・・・だったら、これはどうだ・・・?」
アイザックはそう言うと同時に気配を消した。
「また見えなくなってしまいました・・・今度は誰に攻撃をされてしまうのでしょうか・・・?」
ステラがそう言った途端、アイザックが目の前に姿を現した。
「今度はステラの方か・・・!」
ギルバートはとっさに動き出して背後から攻撃しようとしたが、アイザックはその場から避けようとせずに攻撃を受け止めた。
「お前か・・・思わず攻撃を受け止めてしまったぞ・・・」
「こんなに、小さい子供までも殺るっていうのか!いくららなんでもやりすぎだろ!」
ステラを攻撃されかけた事でギルバートが怒り出すとアイザックはなにも思っていない素振りでそのまま押し退けてきた。
「なんだ?この俺に説教をするのか・・・任務を全うしている以上、目撃者や小さな子供から老人まで殺らないと暗殺にはならないだろ?」
アイザックは無表情を貫きながらもそう言ってきた。
「・・・いくらなんでも、小さい子供まで殺すのはなんとも思わないのかよ・・・?」
「・・・暗殺指令が出ている以上・・・エレノアの血を引いた少女や仲間達も皆殺しにしなければならないからな・・・お前だって暗殺者がどんな存在か分かっているはずだろ・・・」
アイザックの正論に対してギルバートは不服そうにしていた。
『ヒーリラ!』
その隙にステラが回復魔法で、ティア達の傷を回復させた。
「・・・私にも皆の迷惑をかける訳にはいきません・・・ガイアだって、私が役に立ててくれると信じています・・・!」
「ガイア・・・成程、そう言う事か・・・」
ステラの発言を聞いたアイザックは密かに笑みを浮かべた時だった。
「なっ・・・!」
剣を一本鞘に戻したアイザックはステラの背後に回って剣の先を向けた。
「ステラ!」
「動くなよ・・・一歩でも動けば、コイツの首に剣を刺して殺すからな・・・」
ステラを人質に取ったアイザックは剣先をステラの首に向けてきた。
「なんて、卑怯な事を・・・!」
「悪く思うな・・・これもお前達を皆殺しにするためだ・・・武器を捨てなければ少女の可愛い顔に傷が付く事になるぞ・・・」
アイザックが見せしめとして剣先でステラの穂を掠めさせると、そこから僅かな血が零れた。
「・・・武器を捨てましょう。」
ティアにそう言ってから、持っていた武器を足元に置いた。
「そうだね・・・ステラの命には変えられないし・・・」
ギルバート達も同様に続いて武器を捨てた。
「それでいい・・・お前の事を心配してくれる奴等で良かったな・・・」
アイザックがそう言うと、ステラはティア達を見つめた。
「約束よ・・・ステラを離して・・・」
「分かっている・・・だが、解放するのはお前達を殺してからだ・・・」
そう言って、アイザックはティア達をどのように殺すのか考えた。
「話が違うじゃないの・・・」
「なに・・・お前達が終わったら解放をしてやる・・・まぁ、解放したとしてもすぐに後を追う事になるのが・・・」
そう言って、アイザックがステラを人質にしながらティア達を殺そうとした時だった。
「なんだ・・・この音と揺れは・・・?」
なにかの音と揺れを感じて聞こえた方を見ると、雪崩がこちらへと迫って来ている事を目撃した。
「雪崩・・・だと・・・!?」
「不味いぞ!」
ティア達は捨てた武器を拾い上げたが、アイザックに捕まっているステラを助け出そうとしても雪崩がすぐそこまで迫っていたので間に合わなかった。
「駄目・・・間に合わない・・・!」
それでも、ティアは助け出そうとしたがギルバートが腕を掴んで引っ張ってきた。
「なにやっているんだよ!雪崩に飲み込まれたいのか!」
「離して!ステラが・・・ステラが・・・!」
その直後、ステラがアイザック共々雪崩に飲み込まれてしまった。
「ステラ・・・!」
ティア達はステラを助け出す事ができずに雪崩に巻き込まれてしまった。
(ステ・・・ラ・・・!)
ティアは雪崩に飲み込まれながらもステラを助けられないと感じながらも意識を失った。
80章 雪山のガイア
「・・・ここは?」
ステラが目を覚ますと何処かの洞穴だった。
「気が付いたか・・・ここは雪山にある洞穴の中だ・・・」
洞穴の中で焚き火をしていたのは星竜族のガイアだった。
「ガイア・・・どうして、ここに・・・?」
「偶然、この雪山に訪れてみれば・・・雪崩が発生している音を聞いて来てみれば・・・
お前達雪崩に飲み込まれている事に気付いて救出をしたのだ・・・」
ガイアがそう言ってくると、ステラはティア達の事を思い出した。
「そう言えば、ティア達は・・・何処にいるのですか・・・!」
「分からん・・・雪崩から救出できたのはステラしか救う事ができなかった・・・あの人間達なら生き延びているであろう・・・最も、雪崩に飲み込まれてしまった事で仲間と逸れてしまったのは変わりないが・・・」
雪崩から救出できたのはステラだけのようだった。
「・・・ティア達が無事だったとしても、雪崩に飲み込まれて逸れてしまったのかも知れません・・・」
仮にティア達が生きていたとしても、ステラは雪崩に飲み込まれて死亡してしまったのかと思って悲しんでいるのではないかと思った。
「・・・これまで、デスドゥンケルハイト軍と戦いながら光翼の涙を手に入れた人間達だ・・・雪崩如きで死ぬ人間ではないはずだ・・・」
ガイアがそう言ってくると、ステラはティア達が無事に生きていると思い始めた。
「・・・ティア達はきっと、生きていて今でも雪山を登っているのかも知れません・・・」
「そうだ。もしかすれば、合流してステラを探しているはずだ。」
ガイアはそう言ったが、ステラは不安そうに首を横に振った。
「いいえ・・・私だけが見つからなくて、悲しんでいるのかも知れません・・・きっと、私だけが見つからなくて雪崩に飲み込まれてしまって死んでしまったと思っているのかも知れません・・・」
例え、ティア達が生存していてもステラだけが雪崩で死亡してしたと思っているのではないかと考えられた。
「・・・ならば、エレノアについて少し話してやるとしよう・・・」
ガイアがそう言うと、ステラにエレノアの事を話し始めた。
「エレノアは生命を守るためにあらゆる命を救い出してきた・・・だが、その中には救えなかった生命もあった事は知っているな・・・」
「はい・・・エレノアは生命を守り続けていましたが、中には救う事のできなかった生命もあったと聞いた事があります。」
エレノアは生命を守り続けていたが、中には守る事のできなかった生命もあるようだった。
「それは、自然災害や事故などで命を落としてしまった人間達のためにもエレノアは生命を守る事ができなかった不甲斐無さを感じながらも謝罪を含めて安らかに眠ってくれるように祈ってくれていたのだ・・・」
「・・・その気持ちは私にも伝わってきます・・・ティアが聞いたら同じように感じられてくると思います・・・」
「エレノアの一族にとって、生命を失われる事が責任重大なのでな・・・さて、ここにいるよりも暖かくした方がよいぞ・・・」
そう言われたステラは焚き火の前に座り込んで当たり始めた。
「・・・温かいです。」
焚火に当たったステラは安心をしてきた。
「ここへ来てからずっと、火を消さずに焚き続けていたのだ。」
ガイアがそう言うと、ステラがある事を聞いてきた。
「ガイア、以前から聞きたかった事があるのですが・・・聞いてもいいでしょうか?」
「構わん・・・言ってみるがいい・・・」
「貴方はユニバース様に仕えていた星竜族だと仰っていましたが・・・ガイアの他にどのような星竜族がいましたか?」
ステラはガイア以外には他の星竜族にどのような人物がいたのか気になっていた。
「色々な者達はいたが・・・なぜ、その事を聞こうと思った?」
「もしかしたら、故郷の世界が滅亡した事によって、貴方の知人達も亡くなってしまったのではないのかと思いましたので・・・」
ステラにそう言われたガイアは彼女の顔を見て話す事を決めた。
「そう言う風に思ってくれているのであれば・・・聞かせてやるとしよう。かつて、私が故郷の世界でユニバース様に仕えていた時の事を・・・」
ガイアは過去の出来事やユニバースを含む星竜族にこれまでに出会ってきた人間達の事を詳しく話し続けた。
「・・・まだ幼かった私はユニバース様に仕えるべき星竜族として育てられてきたのだ・・・その時に主君であるユニバース様のために一生を尽くすと忠誠を誓ったと言う事なのだ・・・」
ガイアは幼少時代に星竜族の王に仕える星竜族として育っていた。
「それで、ガイアはユニバース様に仕える星竜族になったのですか?」
「それから長い年月が経ち・・・私は星竜族の王であるユニバース様に絶対の忠誠を誓う星竜族としてお仕えになられる事となったのだ・・・」
「ガイアは子供の時からユニバース様に仕える事が決まっていたからですね。」
「その通りだ・・・他にもユニバース様に仕えていた星竜族は何人かいたのだが・・・その中から私を側近としてユニバース様は選んでくださったのだ・・・」
ガイアはユニバースに仕えている星竜族の中から側近として抜擢されており、他にも仕えていた星竜族は数人も存在していたのだった。
「そうでしたか・・・貴方のように自然や人類を思ってくれている星竜族であれば、ユババース様の側近として選ばれるのは素晴らしい事です・・・」
話を聞いていたステラは目を星空のように輝かせながらも尊敬をしていた。
「幼少時代から、あのお方に仕えたいと言う願いが届いたのであろう・・・側近となった私は仲間の星竜族達と共に世界の創造をしては危機にさらされている数多くの世界を守り続けてきたのだ・・・」
ガイアが話していると、ステラは本で読んだ事を思い出した。
「・・・これまで見た星竜族の本には書かれていた事と貴方のお話した事はどれも書いてあった内容と似ていると感じました・・・」
「本や書物に書かれている事は実際に起きた出来事を記録した物であり、ユニバース様は全ての世界の人間達にも星竜族の記録を見てもらいたいとお考えになられた結果、書物などに記録して残すように出来事をそのまま残すようにと決めているのだ・・・」
ユニバースはこれまでの星竜族の活動を記録し、書物と言う形で全ての世界の人間達に知ってもらおうと残していた。
「そうだったのですか・・・書物で書いてあった事は本当にあった出来事だと言うのですね・・・」
「あぁ・・・しかし、長い年月が経ち・・・故郷の世界が滅亡し星竜族達も巻き込まれてしまった事によって、絶滅してしまう悲劇が起きてしまったのだ・・・」
ガイアが急に深刻な表情をするとステラは息を呑んだ。
「・・・知っています。突如として、星竜族の世界が滅亡した事で逃げる事のできなかった星竜族達は巻き込まれてしまった事は本にも書いてあったのを読んだ事があります・・・」
「知っていたのか・・・その通り、私達の故郷である星竜族の世界は、失われてしまいユニバース様はお亡くなりになられたのだ・・・」
ガイアはあの時の惨劇を思い返すと、あの時の出来事に体を震わせだした。
「・・・それから、故郷の世界と同胞を失ってしまっても、あらゆる世界に転移しては一人で人類を守護しようとしていたのだ・・・」
絶望の淵に立たされても、ガイアは世界を護ろうとして一人になっても戦っていた。
「貴方だけで・・・それは無理があったのではないのでしょうか・・・?」
ステラがそう言うと、ガイアは「あぁ・・・」と答えてきた。
「ガイアは星竜族の世界が滅亡してからもずっと戦い続けていたのですね・・・」
「あぁ・・・二十年前までは・・・」
「二十年前?」
「なんでもない・・・先程の事は忘れてくれ・・・」
ガイアが忘れるようにステラに言った。
「しばらく、一休みをしたらティア達の元へと送ってやるとしよう・・・」
「ありがとうございます。」
ステラがお礼を言うと、ガイアがここへ訪れた目的を聞いてきた。
「ところで・・・先程、この山を登っていると言っていたが・・・もしや、頂上にある光翼の涙を手に入れるために登山をしているのではないだろうか?」
ガイアが、そう聞いてくるとステラは「はい。」と答えた。
「お前の仲間達は頂上にいる可能性が高い・・・十分に休ませてから、私達も頂上へと送ってやるとしよう・・・」
そう言ってガイアはステラを休ませてから頂上まで向かう事にした。
81章 古代モンスターアイスベルク・マムート
「やっと、頂上に辿り着けたか・・・当分は山に登りたくないぜ・・・」
その頃、ティア達の方はと言うとガイアの想像通りに頂上まで辿り着いていた。
「ここには、大きな氷の壁が張られているみたいだな・・・」
頂上には巨大な氷の壁が張られている場所のようだった。
「これは、大昔の時代の氷が壁のようになったと考えられると思うよ。」
アランが氷の壁に手を触れながらそのように説明をした。
「そうなの・・・ギルはあまり関心ないみたいだけどね・・・」
「当たり前だろ?こんなに寒いのに・・・大昔からある氷の壁が今でも残っている謎を解明するよりもとっとと光翼の涙を見つけちまおうぜ・・・?」
ギルバートが寒さで体を震わせながらもそう言ってきた。
「・・・ティア・・・大丈夫?」
イヴが心配そうにしながらティアの様子を窺った。
「・・・もう少し、雪崩に気付いていたら・・・ステラは・・・」
ティアは未だにステラを助けられなかった事を思い詰めているようだった。
「あれから、ずっとこの調子だけど・・・一体、どうすればいいのかな・・・?」
「・・・雪崩に飲み込まれた俺達はなんとか助かったが・・・ステラだけは見つからなかったからな・・・」
雪崩に飲み込まれた結果、ティア達は無事だったがステラとアイザックは雪崩に飲み込まれて行方不明となっていた。
「あの雪崩に飲み込まれてしまったら、生きてはいられぬものだ・・・仲間の犠牲を乗り越えない限りは戦う事など不可能だ・・・」
ヘイゼルが犠牲を払わなければいけない事もあるとティアに告げた。
「・・・そうだとしても、ステラを助けられなかった事は事実よ・・・」
それでもステラを守る事ができなかった事にティアは自分の不甲斐なさを感じていた。
「まぁ・・・俺も止めに入って悪かったと思っているが・・・今は光翼の涙を手に入れる方が先決だろ?」
五つ目の光翼の涙は目の前にある氷の中で静かに光を放っているようだった。
「アラン、炎の魔法で溶かせるか?」
「どうかな・・・冷気の強い氷だから炎で溶かせるかどうかは・・・」
アランが言うように光翼の涙が入っている氷は冷気がとても強く、炎でも溶かせるかどうかは分からなかった。
「これだけ寒いと場所になると、すぐに炎が消えてしまいそうかも・・・」
山頂は氷の壁から放たれている冷気もあるので、とてつもない寒さを感じていた。
「とにかく、やってみるしかないだろ。」
ギルバートにそう言われたアランは炎の魔法を唱えようとした時だった。
「待って・・・一瞬、なにかが揺れた気が・・・」
イヴがそう言った直後に、またしても揺れたような感覚を感じた。
「奥の方から気配が感じる・・・一度、離れて様子を見るぞ・・・」
ティア達は急いで氷の壁から離れると、巨大なモンスターが氷の壁を破壊して姿を現した。
「コイツは・・・なんて、デカイモンスターだ・・・!」
突如として氷の壁を破壊して現れたのは氷山のように巨大なマンモスのモンスターだった。
「コイツって・・・アイスベルク・マムートじゃないのか・・・!?」
「確か・・・アイスベルク・マムートは、一匹も残らずに絶滅したはずなのに・・・?」
アイスベルク・マムートは、かつてこの大陸に生息していた巨大なマンモスの姿で大昔の時代に絶滅してしまったモンスターだった。
「目の前に現れたとなると・・・絶滅を免れた個体が存在していたと言う事だ・・・」
その直後、アイスベルク・マムートはゆっくりとこちらに近付いてきた。
「相手は絶滅したと言われているモンスターだから、間違っても殺さないようにして戦わなくちゃ・・・!」
「あぁ・・・生き残っていた絶滅種を殺してしまえば、俺等が絶滅させちまった事と同じだからな・・・!」
ギルバート達は武器を構え出したが、ティアだけは剣を持つ手が震えていた。
(ティア・・・まだステラを助けられなかった事を気にしているのか・・・)
そう思っていると、アイスベルク・マムートは鼻から冷気を吹いてきた。
「鼻から氷の息を出すのかよ!しかもかなりの寒い場所で威力も上がっているぞ!」
ヘイゼルが、言うとティア達は冷気を避けてからアイスベルク・マムートの背後に回った。
「コイツはデカイから簡単に動き回れるな・・・!」
背後に回り込んだギルバートはアイスベルク・マムートの背後から技を繰り出した。
『獣研牙!』
ギルバートは獣が研ぎ澄ました牙で噛みつくような鋭い斬撃を振るってアイスベルク・マムートを斬った。
「・・・やっぱ、ビクともしてねぇな・・・」
アイスベルク・マムートはギルバートの攻撃を受けてもビクともしなかった。
『鷹ノ嘴!』
イヴも続いて鷹が狙いを定めて嘴で突くような勢いで急所に目掛けて薙刀で突いた。
「・・・ちゃんと、急所を狙って当てたのに・・・効いている気配が無いみたい・・・」
薙刀で突いても平然としており、イヴは薙刀を抜いてアイスベルク・マムートから距離を取った。
「アイスベルク・マムートは巨大な氷属性のモンスターだけど、ここだと寒さで炎の威力が下がるからあまり効果が無いみたいだよ・・・」
この場では炎が不利になるとアランは推測していると、アイスベルク・マムートがティアを踏み潰そうとしていた。
「ティアを踏み潰す気だぞ!」
ティアが踏み潰される直前にギルバートが彼女を庇って避ける事ができた。
「しっかりしろよ!今は戦闘中だろ!」
ギルバートはそう言ったが、ティアは抜け殻のように呆然としていた。
「・・・ごめんなさい。」
「ステラの事で分かるが、戦闘に集中してくれ・・・!」
ギルバートは呆然としているティアを起こした。
「あまりにも、巨大だから体力が減っている様子が感じられない・・・!」
「流石は絶滅モンスターの生き残りだ・・・!自分が生きるために必死で戦っていたようにも見えてくる・・・!」
それからも戦い続けたが、ティアだけはステラの事を気にしていて、戦闘に集中できずにいた。
(・・・さっきから、ティアは集中できていないように見えるけど・・・ステラの事があるから強い絶望を感じているように見えてくるな・・・)
アラン魔法を唱えながらもティアの様子を窺いながらもアイスベルク・マムートに向けて魔法を唱えた。
『ドラゴンボリューム!』
アランが魔法で竜巻を放ってみたが、アイスベルク・マムートは微動ともしなかった。
「やっぱり、この魔法でも駄目か・・・次はこの魔法で・・・」
次の魔法を唱えようとするアランだったが、アイスベルク・マムートが長い鼻で叩き付けようとしてきた。
「アラン!」
ティアがとっさに動き出し攻撃をした事でアランを助けた。
「大丈夫?アイスベルク・マムートは長い鼻も使ってくるから詠唱には気を付けて・・・」
「ゴメン・・・アイスベルク・マムートは手強くて本気で戦ってきているね・・・」
アランがアイスベルク・マムートを見上げながらティアに言ってきた。
「それもそのはず・・・絶滅したモンスターの生き残りだから、死んでしまった仲間達の分まで生きようとしているのだと考えらえられるよ・・・」
すると、アランの言った発言でティアはなにかを思い付いた。
「アラン、アイスベルク・マムートは絶滅したモンスターだって言われているのね?」
「うん・・・大昔に絶滅したって図鑑で書いてあったよ?」
「分かったわ・・・だったら、この戦いを終わらせるにはこうするしかなさそうね・・・」
そう言って、ティアはエレノアの力を発揮させた。
「ティア、一体なにをするつもりなの?」
イヴが訊ねると、ティアは羽を羽ばたかせた。
「ここは、私に任せて・・・アイスベルク・マムートを落ち着かせてみせるから・・・」
「えっ?それは、どう言う・・・」
ティアは羽ばたかせて飛び上がると、アイスベルク・マムートの前で立ち止まった。
82章 絶滅種への説得
「ティア・・・?」
ギルバート達はティアがアイスベルク・マムートの目の前で止まったのを見て戦闘を止めた。
「おいおい・・・アイツ、なにをする気だ・・・?」
「・・・ティアはアイスベルク・マムートを説得するつもりだと思うよ・・・」
アランが先程のティアが言った事がそう言う意味だった。
「説得って・・・あんな馬鹿でかいモンスターに説得なんかできるか?幾らなんでもモンスターを説得するなんて無茶だぞ・・・」
モンスターを説得など不可能に等しかった。
「彼女を信じよう・・・ティアならアイスベルク・マムートを説得して戦闘を終わらせてくれる事を祈ろうではないか・・・」
ヘイゼルに言われたギルバート達はティアを信じて見守る事にした。
「・・・話を聞いて、これ以上は貴方と戦いたくはないの・・・貴方だけが生き残ってしまった気持ちは分かるわ・・・」
ティアは落ち着いた口調で言ったが、アイスベルク・マムートは冷気を強めていた。
「私達は貴方を捕まえに来た訳でもないわ・・・だから、私達と戦うのは止めて話を聞いて・・・」
しかし、アイスベルク・マムートは説得を聞く処か、強い冷気を吐いてティアを吹き飛ばした。
「ティア!」
吹き飛ばされたティアは氷の壁に激突して雪の上へと落ちた。
「だから、言わんこっちゃっねぇ・・・!」
ギルバート達が、ティアの元に駆け寄ろうとした時だった。
「待って・・・ここは、私が戦いを止めて見せるから・・・!」
ティアはそう言って、よろめきながらも立ち上がった。
「でも・・・!」
「・・・大丈夫・・・私を信じて・・・」
ティアは再び飛び上がると、アイスベルク・マムートへの説得を続けた。
「・・・貴方が襲いかかってきているのは私達が敵だと思っているけれど・・・私達はこの場所にある物を手に入れるために来ただけなの・・・」
ティアは落ち着かせようとしてみたが、アイスベルク・マムートは長い鼻を振り下ろしてティアを叩き付けてきた。
「おいっ・・・今のヤバいんじゃねぇのか・・・?」
「雪がかなり積もっているから、叩き付けられても威力が弱まっていると思うよ・・・」
アランの言う通り、ティアは雪の上で叩き付けられたので重傷は免れていた。
「・・・私達は、貴方がいた事は知らなかったの・・・生き残りである貴方を捕まえようとしては絶滅をさせようと殺しに来た訳でもないわ・・・信じて・・・」
必死の説得にも関わらず、アイスベルク・マムートはティアに向けて冷気を吐いてきた。
「うっ・・・」
ティアは強力な冷気を堪え出した。
「コイツから離れろ!凍っちまうぞ!」
ギルバートは慌てて言ったが、ティアは冷気を堪えながら羽ばたき続けた。
「ティア・・・このままじゃ、貴方が凍らされちゃう・・・!」
「いいえ・・・私は絶対に諦めないわ・・・!」
すると、冷気を浴び続けた事によってティアの体が凍り始めた。
「ティア!お願いだから、もう止めて!このままだったら・・・!」
イヴは必死に言ったが、それでもティアは逃げようとはしなかった。
「・・・これ以上、戦うのは止めて・・・そうしなければ、貴方が殺してしまう事になってしまうわ・・・!」
そう言った直後、限界が訪れたのかティアの背に羽が消えその場へと落ちた。
「ティア!」
ギルバート達が駆けつけきた時にはティアの体の一部が凍り付いていた。
「・・・説得が上手くいかなかったわ・・・」
「無茶な事をするからだ・・・それよりも一旦引いた方がいいぞ・・・」
「でも・・・光翼の涙はどうするつもり・・・?」
イヴは目の前にある光翼の涙を見て、諦めてしまうのかと感じた。
「ここは、態勢を立て直した方がいいと思うよ・・・とにかく、今はこの場所から離れてみないと・・・」
ギルバート達はティアを担いで逃げ出そうとした時だった。
「なっ・・・!」
逃げると悟ったのか、アイスベルク・マムートが鼻から氷の塊を飛ばしてティア達の周りを囲んで逃げ道を塞いでしまった。
「どうやら、僕達を出す気はないみたいだよ・・・」
ここから出る手段が無くなると同時にアイスベルク・マムートが迫ってきた。
「駄目だ・・・俺達も氷付けにされちまう・・・!」
ギルバート達は覚悟を決めた時だった。
「・・・!」
何処からか何者かの声が微かに耳に入ってきた。
「今の声・・・ステラの声がしなかった・・・?」
「・・・こんな状況でなにを言っているんだよ・・・こんな時に・・・」
ギルバートが空耳だと言おうとした時だった。
『いや・・・気のせいではないぞ。』
すると何処からか、別の声が何処からか聞こえてきた。
「・・・その声って、もしかして・・・?」
その直後、目の前に巨大な竜がアイスベルク・マムートの前に降り立ってきた。
「どうして、ドラゴンがこんな所に・・・?」
「分からないけど・・・あのドラゴンの背中に乗っているのはもしかして・・・」
アランが竜の背中に乗っている人物を見て指を差してきた。
「良かったです・・・皆が無事に生きてくれて・・・」
なんと、竜の背に乗っていたのは雪崩に飲み込まれたはずのステラだった。
「ステラ・・・無事に生きていたのね・・・!」
ティアはステラが生きていた事で安心をして涙が零れだした。
「はい・・・心配をかけてしまってすいませんでした。」
ステラはそう言ってから、慎重に竜の背から降りた。
「・・・てっきり、雪崩に巻き込まれて死んでしまったのだと思っていたわ・・・」
「ガイアが助けてくれました。今すぐに回復させますので安静にしてください。」
ステラがティアに回復魔法をかけようとするとイヴが訊ねてきた。
「ちょっと待って・・・さっき、ガイアが貴方を助けたって言わなかった?」
「はい。ガイアに助けて貰って、ここに連れてきてもらったのです。」
イヴはアイスベルク・マムートの前に立っているドラゴンの事を言っているのではないかと思った。
「それじゃあ・・・あの竜は本当にガイアと言う事?」
「私が乗っていた竜はガイアが変化した姿です。」
ステラがそう言うと、アイスベルク・マムートはいつの間にか大人しくなっていた。
『・・・なんとか、この人間達は敵ではない事を理解させる事ができたか・・・』
ドラゴンは安心すると、ティア達の方を見て言ってきた
『お前達はこの姿を初めて目にしているが・・・今すぐに元の姿に戻って事情を話すとしよう・・・』
光りだすと見る見る内に小さくなって人型になった。
「ガイア、ステラを助けてくれてありがとう。」
ステラの魔法で回復したティアがお礼を言うと、ドラゴンから背中に竜の羽が生えた人型になっていく光景を目にしていた。
「・・・待たせた。」
ティア達の前にいたのは竜ではなくガイアが立っていた。
83章 五つ目の光翼の涙
「この姿であれば、落ち着いて話ができるだろう。」
「やっぱり、ガイアが変身した姿だったんだね。」
竜のいた場所でガイアがいた事で変化したのだと理解された。
「さて・・・この雪山で密かに生き残っていたアイスベルク・マムートと戦っていたようだが・・・なんとか、犠牲が出てしまう前に収められたようだな・・・」
元の姿に戻ったガイアが、ティア達が無事を見てそう言ってきた。
「・・・先程、竜に変化していた私がこの姿に戻ったのか聞きたいのか?」
「えぇ・・・本当に竜に変化する能力を持っていたのね?」
「そうだ・・・先程の竜は私が変化した事によって竜の姿なのだ。」
星竜族にはドラゴンの姿に変化する能力を持っており、いつでも竜に変化する事ができていた。
「この能力は竜に変化する事によって能力は上昇し、通常の姿では敵わない相手と戦うために使うようにしている・・・」
星竜族は竜に変化する事で能力が上昇する特性を持っていた。
「・・・ただ、この力を使用すれば武器だけでなく技や魔法も使う事ができなくなってしまうのが欠点だが、竜の姿でなら使用可能となる技を扱えるようになるのだ・・・」
竜の姿だと人型形態の技や魔法が使えないが、竜の息や技が扱えるようになるのだった。
「だから、さっきの姿でステラを乗せて頂上に着いたと言う訳だね。」
アランがそう考えて言うとガイアは「そうだ。」と答えた。
「私達は洞穴で一休みをしてからガイアが竜に変身して、ここまで連れて行ってくれました。」
ステラがそう言うと、ティアはガイアが救い出してくれたのだと理解した。
「雪崩からステラを救ってくれたのは貴方がステラを助けてくれたからなのね。」
「ステラから聞いたが・・・そなた達が雪山の頂上に向かっていると聞いて、私がステラを乗せてここへ現れたと言う事だ。」
「そうだったのね。ステラ、私はずっと心配していたけれど・・・貴方が生きていてくれて良かったわ・・・」
ティアはステラが無事だった事に安心をすると、ガイアは氷の中にある光翼の涙を見て訊ねてきた。
「・・・あそこに光翼の涙があるが、氷の中にあって取る事ができないのか?」
そう言うと、ガイアはその氷に触れようとすると、とてつもなく冷たい冷気が感じられた。
「ここにある氷は特別に硬い・・・溶かす事は不可能だが普通だと時間はかかるが破壊ができるはずだ・・・」
どうやら、山頂にある氷は溶けずに破壊する事は可能だった。
「破壊って・・・光翼の涙まで壊れるの・・・?」
「いや・・・光翼の涙は破壊ができぬから安心をしてくれ・・・」
ガイアは大丈夫だと言ってきたが、ティア達は破壊しそうで心配に思った。
「では、どのようにすれば砕く事ができるのだ?」
ヘイゼルが氷を破壊する方法を訊ねると、ガイアはアイスベルク・マムートに言ってきた。
「アイスベルク・マムート・・・一つ頼みたい事があるのだが、聞いてもらっても構わないだろうか?」
ガイアがそう訊ねてくると、アイスベルク・マムートは彼の言葉が通じたかのように鳴き声を挙げた。
「まさか、また襲ってくるつもり・・・!」
「安心しろ・・・アイスベルク・マムートはお前達が敵ではないと理解してくれているのでもう襲いかかる事はないだろう・・・」
「良かった・・・一瞬、また戦うのかと思ったよ・・・」
イヴがホッとするとガイアは光翼の涙がある氷に指を差して命じた。
「アイスベルク・マムート、この氷を砕いて光翼の涙を取り出すのだ。」
ガイアが命ずると、アイスベルク・マムートは承知したかのように鳴き声を挙げた。
「頼むぞ。」
アイスベルク・マムートは氷の前に立つと鼻を振り下ろして、氷を砕いて光翼の涙が取り出された。
「受け取るがいい・・・求めていた五つ目の光翼の涙だ。」
ガイアは光翼の涙を手にして渡してくると同時に光翼の涙が光となってティアの体へと吸収されていった。
「アイスベルク・マムート・・・貴方の御蔭で光翼の涙を手に入れる事ができたわ。」
ティアはお礼を言うと、アイスベルク・マムートはそのまま去って行った。
「敵ではないと判断した事によって、住処へと帰って行ったようだ・・・」
「ガイア、貴方の御蔭で絶滅を免れていたモンスターを私達の手で絶滅させるような事がなくて良かったわ・・・」
ティアはアイスベルク・マムートが帰還していく姿を見て安心をした。
「そうか・・・私も大昔の時代に絶滅したと言われているモンスターと戦っている様子を見た時は驚いてしまったぞ・・・」
ガイアがそう言うと、ステラはティア達に頭を下げて謝罪をしてきた。
「心配をかけさせてしまって申し訳ありませんでした・・・」
「気にしないで・・・貴方が無事で生きてくれていただけでも良かったと思っているわ・・・ずっと、貴方の事を心配していたのよ・・・」
ティアはステラが生きてくれていて安心だった。
「・・・これで、お前達が、求めている光翼の涙は残り三つになったな・・・」
「えぇ・・・残りの居場所が何処にあるのか分かればいいのだけれど・・・」
ティアがそう言うと、ガイアが八つ目の光翼の涙が何処にあるのか考えてみた。
「もしかすれば・・・八つもある光翼の涙の内、一つだけは私達が分からぬ場所に隠したのだと考えられるな・・・」
ガイアが考慮するように言ってきた。
「例え・・・全てを集めきれていない状態で聖地に乗り込んだとしても倒すことなど不可能だと考えておいた方が良いぞ・・・」
「・・・そうね。光翼の涙が揃っていない状態では無理だと思うわ・・・」
「今の状態ではラヴィレイヘヴンに潜り込む事は止めておいた方がいい・・・残り三つの光翼の涙を手に入れてから乗り込む方が画策ではないか?」
ガイアがそのようにした方がいいと言ってくると、ギルバートが議論を出すかのように言ってきた。
「そろそろ、アイツ等が光翼の涙を持っていたらどうするつもりだ?」
ギルバートはデスドゥンケルハイト軍が残りの光翼の涙を所持していた場合の事を聞いてきた。
「ギル・・・仮にあったとしても、聖地に乗り込むなんて無謀だよ?」
「分かっているさ・・・もしかしたら、そこにある可能性も考えた方がいいと思っただけだよ・・・」
ギルバートがそう言うと、ティア達にどうするか聞いてきた。
「どうするつもりだ?ラヴィレイヘヴンに行くか・・・それとも、残りを見つけてから聖地に殴り込みに行くか・・・どっちにするのか決めているのか?」
ギルバートがそう聞いてくるとティアはどうするのか答えてきた。
「そうね・・・残りの光翼の涙を手に入れてからでも、ラヴィレイヘヴンに向かった方がいいと思うわ。全てを集めきらなければ、デスドゥンケルハイト軍を倒す事なんて不可能よ。」
「ティアの言う通りにした方がいいだろう・・・ギルバート、全ての光翼の涙を集めてからデスドゥンケルハイト軍を倒し聖地ラヴィレイヘヴンを開放する事で良いな・・・?」
ガイアがそう問いてくると、ギルバートは仕方なさそうに「あぁ・・・」と返事をした。
「それでいい・・・光翼の涙が八つ揃っていなければ、意味もない事と同然なのだからな・・・」
「ガイア、光翼の涙が何処にあるのか知っていますか?」
ステラに聞かれたガイアは沈黙が入ってから話し始めた。
「・・・勿論、知っているぞ。」
そう言って、ガイアは六つ目の光翼の涙がある場所を教えた。
「・・・本当にそんな場所にあるの・・・?」
「あぁ・・・そこは、今までよりも危険な場所に隠されている場所で・・・溶岩地帯の島にある火山と言う場所はとにかく危険な場所なのだ・・・」
六つ目の光翼の涙が隠されている場所と言うのは火山のある島で溶岩地帯になっている危険な島だった。
「でも・・・その島に行く船は危険だから誰も近付かない場所だよ?」
アラン曰く、火山のある島は危険地帯とされており近付く者など誰もいなかった。
「そんな危険な場所に行く奴としたら俺等ぐらいだろうな・・・」
ギルバートはそう呟くと、イヴはその島に行く方法について聞いた。
「それで、どうするの?このままじゃ、そこには行けないよ?」
「大丈夫です。ガイアがいるのでその島に連れて行ってくれます。」
ステラがそう言いながらガイアの隣に立った。
「心配はするな。竜化した私の背に乗って行けば、安全に火山へ辿り着けるぞ。」
「ガイア、本当にいいの?そんな危険な場所に乗せて行ってもらって・・・」
「構わん・・・光翼の涙を手に入れようとしているのであれば、私が送っていってやろうと思っていただけの事だ・・・」
ガイアは火山まで辿り着けられるようにティア達を乗せるつもりだった。
「そうしなければ、光翼の涙を手に入れる事はできませんよ。」
「ガイア、ありがとう。」
五つ目の光翼の涙を手に入れたティア達はガイアの転移魔法で雪山を降りる事となった。
84章 辺鄙の地にある町
雪山を降りたティア達は宿屋に泊まっているとヘイゼルがガイアとなにかを話していた。
「・・・目的の島に向かう前にその町に行きたいと言うのだな?」
「そうだ・・・一度、その町の様子を見に行こうと思っているのだが・・・寄っても構わないだろうか・・・?」
火山のある島に行く前にヘイゼルの言う町に訪れたいと頼み込んでいるようだった。
「おいおい・・・そこは、辺境にあるからから・・・そんな、場所に行くなんて・・・なにを考えているんだよ・・・?」
ギルバートが正気を疑うように言うと、ヘイゼルは「正気だ。」と答えた。
「へぇ・・・それだけ行きたいなら、その理由について聞かせてくれよ?」
「・・・分かった。今から、話すので皆を集めてくれ・・・」
ヘイゼルにそう言われたギルバートはティア達を呼んだ。
「集まったようだな・・・皆にも聞かせておいた方がいいと思って、ギルバートに集めさせてもらった・・・」
「ヘイゼルさん、お話と言うのはどのような事を伝えようとしているのでしょうか?」
「今から、話すので是非聞いてもらいたい・・」
一同が集まっている様子を見て、ヘイゼルはその町に行きたい理由について話した。
「なるほど・・・そこにある町に行きたいと言う事ですね・・・」
「あぁ・・・それで、その町に行こうと思っている・・・なにか聞きたい事があれば聞かせてもらおう・・・」
ヘイゼルがそう言うと、ギルバートが言ってきた。
「なぁ・・・一つだけ聞かせてくれないか?どうしてそんなに辺鄙な所に行こうと思ったんだよ?」
ギルバートに聞かれたヘイゼルは決意をした表情で言ってきた。
「・・・なぜ、私がそこへ行こうとしているか・・・その町の出身者であるからと言っておこう・・・」
ヘイゼルは辺鄙の地にある町の出身のようだった。
「そうだったのか・・・どうりで行きたがっている訳か・・・」
ギルバートはヘイゼルがそこにある町の出身者だと知って納得をした。
「・・・私はどうしてもその町へと訪れたい理由がある・・・良ければ、私の故郷への動向を求めても構わないだろうか・・・?」
ヘイゼルがそう言うと、彼の話を聞いたティアは答えた。
「はい。貴方が産まれた場所へと訪れたいのであれば構いません。」
「感謝する・・・私の故郷は人里から離れた場所にあるので人口も少ないのだ。」
その町は辺鄙な地にあって住んでいる人口も少なかった。
「人が少ないと言う事はあまり人が来ないと言う事ですか?」
「余所者が滅多に来る事は無いが、町の者達で力を合わせながらも仲良く暮らしているぞ。」
「集落で協力をしながら暮らしていると言う事になりますね。」
「そうだ。町は平和そのもので平穏に暮らしているぞ。」
話している最中にステラが彼の事が気になって訊ねてきた。
「ヘイゼルさんはとても平和な場所で暮らしていたのにどうしてデスドゥンケルハイト軍の兵士となったのですか?」
ステラはヘイゼルが兵士になった理由が気になって訊ねてみたが、彼はなにも答えようとはしなかった。
「・・・今は教える事ができん・・・」
「すいません・・・貴方を不安にするような事を言いましたか?」
ステラは心配したが、ヘイゼルは思い詰めた表情をしていた。
「それではお話を変えます・・・その町へ行きたいのはなにかの目的があるからなのでしょうか・・・?」
話題を変えたステラはその町に行く理由について訊ねてきた。
「・・・私がそこに行きたいと思っているのは実の父親と再会するためだ・・・」
「そう言えば・・・貴方にはお父さんがいる事を言っていたね・・・」
イヴは以前に父がいる事を聞かされた事を思い出した。
「・・・兵士となって以来、父と離れ離れになってしまった・・・だからこそ、いつ死ぬか分からぬ旅をしているのであれば家族と出会っておく必要があると考えていた・・・」
「分かりました・・・ガイアもそれでいいでしょう?」
ティアがガイアに問うと、静かに頷いて答えた。
「いいだろう・・・家族の事を心配に思っているのであれば、その人間の故郷まで連れて行ってやるとしよう・・・」
「・・・礼を言う。」
ヘイゼルが故郷へ連れて行ってくれる事にガイアにお礼を言った。
「予定の場所よりもヘイゼルさんの故郷に向かう事になったけどいいかしら?」
「あぁ・・・明日から、そこへ行ってみようぜ。」
ギルバート達は聞かれなくても承知をしていた。
「それじゃあ、ヘイゼルの故郷がある島へと向かうとしよう・・・」
次の日、宿屋を出たティア達は離れた場所でガイアは転移魔法を唱えた。
「少し離れてくれないか・・・ドラゴンに変化するには離れておく必要がある・・・」
ティア達は距離を取る中でステラはガイアが竜に変化する事を期待しながら目を輝かせた。
「皆・・・是非、見せてください・・・ガイアが竜になります・・・!」
「えぇ・・・ガイアのドラゴンになる所を見るために離れていましょう・・・」
ティアは目を輝かせながら期待しているステラの手を取った。
『トランスオブドラゴン!』
ティア達が離れたのを確認してから、ガイアは竜に変化する能力を使った。
「見て・・・ガイアが光りに包まれていくわ・・・」
ガイアは地球の色の光に包まれていった。
「星竜族はドラゴンに変化する時に、光の中で徐々に竜へと姿が変わっていきます・・・!」
ステラが目を輝かせながらも開設をしてくると、光の中に包まれていたガイアの姿が徐々に変化していった。
「ガイアが竜に変わってきている・・・これが、星竜族の力なのか・・・」
「はい・・・これが、竜に変化したガイアです・・・」
光が大きくなっていくと同時に地球の色と同じ光が放たれた。
『・・・待たせたな。』
ティア達の前にはガイアではなく、雪山の山頂で現れた竜が立っていた。
「凄い・・・ガイアが昨日の竜になった・・・」
『驚いたであろう?これこそが星竜族の力だ。』
ガイアは地球と同じ色をした竜に変化していた。
『そろそろ向かうとしようか・・・ヘイゼルの故郷がある地へと・・・』
そう言いながら、ガイアはティア達を背に乗せてから飛び上がった。
『速めに飛んで行けば、すぐに着けると思うが・・・せっかくなので、空の旅を楽しんでもらいたい・・・初めて、乗る人間が五人もいるのだからな・・・』
ガイアは上空に舞い上がると、ゆっくりと目的地へと向かって飛び始めた。
「凄い・・・ドラゴンになった星竜族に乗るのは初めて・・・」
すると、ガイアが飛行をしながら会話を始めた。
『どうだ?ステラは一度乗っているが・・・お前達は初めてだろうがモンスターの背に乗っている事と少々異なっているように感じるであろう・・・?』
「えぇ・・・本物の竜と乗っているのと違うように思えてくるわ・・・」
「星竜族がまだ絶滅していなかった頃は、色んな世界の人達を助けるために乗せていたみたいでした。」
ステラは洞穴で休んでいた際にガイアから聞かされているようだった。
『私は過去に色んな世界を転移して、人類と世界の危機を何度も救ってきたのだ・・・人間を助けるのは、我々星竜族にとっては重大な使命なのだからな・・・』
ガイアの活動を聞いたステラは目を輝かせながら見惚れだした。
「流石は星竜族です・・・それほどの活動をしていたなんて・・・」
「・・・ステラ、また目が光っているよ・・・それにしても、ステラってガイアとお似合いに見えてくるよ・・・」
イヴがガイアの事を見惚れているステラを見てそう言ってきた。
「ステラって、星竜族が好きじゃない?だからと思ったから言ってみたの・・・」
「そんな事を言われたら・・・なんだか、照れてしまいます・・・」
イヴにそう言われたステラは顔を赤らめだした。
「ステラ、顔が赤くなっているよ?」
イヴがステラにそう言ってくると、ギルバートがヘイゼルの方を見つめながら言ってきた。
「そんな事、言っておきながら・・・お前もヘイゼルの事が気になっているだろ?」
ギルバートに思いがあるかのように言われたイヴはキッと睨みつけてきた。
「そんな顔をするなよ・・・最初の頃は敵対視していた癖に最近のお前等が打ち解けていっているように見えただけだよ・・・」
そう言うと、イヴはヘイゼルに対するこの頃の態度が変わっていっている事を思えてきた。
「そうね・・・最初の頃はデスドゥンケルハイト軍の兵士だからという理由で敵対視しているようだったわ・・・」
「ティア・・・それよりも上空からの景色を見ない・・・?」
イヴはそう言いなながらもギルバートの手の甲を抓っていた。
『・・・しばらく、黙っておいた方が良さそうだ・・・』
今の状況を見たガイアはイヴの機嫌が直るまで慎重に飛ぶ事にした。
85章 辺鄙の地にある町
『・・・もうすぐで、目的地へと到着するぞ。』
一時間後、ティア達はガイアの背に乗ってスラムの方角へと飛び続けていた。
「やっとか・・・イヴの機嫌が直っているかが・・・」
ギルバートはそう思いながらもイヴの方を見たがすぐにそっぽを向かれてしまった。
「・・・やっぱ、まだ機嫌が悪そうだな・・・」
「それもそうだね・・・ギルがあんな事を言うからだよ・・・」
「なんだよ?この頃、ヘイゼルを気にしているような感じをしていたから、本当の事を
言ってみただけだぞ?」
しかし、それはギルバートの口から出たのは余計な言葉だった。
「ギル・・・失礼な事を言っているのに気付かないなんて・・・」
アランは呆れていると、目的の町が見えてきた。
『到着だ。ここが、ヘイゼルの故郷である町だ。』
町の近くに降り立ったガイアは一度ティアを降ろしてから元の姿へと戻った。
「帰って来たのだな・・・私の故郷へと・・・」
ヘイゼルは一足先に自分の故郷である町へと入って行った。
「・・・ヘイゼルは久しぶりに帰って来る事ができて嬉しそう・・・アタシ達も一緒に見て回った方が良さそうだね・・・」
「イヴ・・・私達も同じ意見よ。」
彼女の言う事にティア達は賛同した。
「私はここにいよう・・・お前達はこの町を見て回るがいい・・・」
「分かりました。なにかあったら知らせに来てください。」
ガイアと別れたティア達はヘイゼルの故郷である町へと入って行った。
「・・・兵士は誰一人もいないと・・・一応は伝えておくべきだったか・・・町の状況を見れば・・・どのように思うかは考えなくても分かるな・・・」
ガイアはそう思いながらも町の中へと入って行くティア達を眺めた。
「ここが、ヘイゼルの住んでいた町か・・・思っていたのと全然違うな・・・」
その町は建物がボロボロで活気が全く無いとティア達はそう感じられていた。
「なんだか、思っていたのと違うけど・・・本当にここがヘイゼルの故郷で合っているの・・・?」
イヴが疑いながらも訊ねてみると、ヘイゼルは言い難しそうにしながら答えた。
「・・・間違いなく、ここは私の産まれた故郷であっている・・・」
ヘイゼルは信じられない様子で自分の故郷で間違いはないと言ってきた。
「それじゃあ、ここがヘイゼルさんの・・・」
「・・・とりあえず、今は町を見て回っていればなにかが分かるのかも知れん・・・」
ティア達は事情を探るべく、町の中を見回り始めた。
「ここに住んでいる人達は身なりもボロボロな格好をしているね・・・」
「とても暗い顔をしていて・・・町の人達も元気がないように見えます・・・」
周りにいる人間達をよく見てみると、全員が絶望に満ちている表情をしていた。
「そうだね・・・周りにいる人達は痩せこけていて、足元がおぼつかない人達が多いみたいだよ・・・」
「今にも死にそうな奴等がうじゃうじゃといやがるぞ・・・」
ティア達は周りにいる人間達の様子を窺っていると、イヴがヘイゼルに訊ねてきた。
「さっき、人口が少ないって言っていなかった?さっきから、同じような人達を見かけるのは気のせいじゃないよ・・・?」
イヴが不安そうにしながら言うと、ヘイゼルはこの町の状況について話してきた。
「・・・かつては人口が少ない平和な町だったが、十数年前からこの町は変わり果ててしまっているのだ・・・」
「えっと・・・どういう意味なのでしょうか・・・?」
その後にヘイゼルの口から発せられたのは衝撃的な発言だった。
「よく聞いてほしい・・・ここはデスドゥンケルハイト軍の被害者達が集まる地となってしまっているのだ・・・ここに人が集まりすぎた事で荒れ果ててしまっている・・・」
この町にいる人間達の大半がデスドゥンケルハイト軍の被害者達だった。
「そんな・・・これだけの人達がいたのはそのような理由があったなんて・・・」
現在、この町はデスドゥンケルハイト軍によって、被害にあった人間達が集っている場所へと成り果てていた。
「どうりで人が多かったのはそう言う理由があったからだね・・・」
「そのような理由があって、帰る場所を無くした人々にとっては最後の場所とでも言っておこう・・・今でもそのような人間達が集まって来ているのだが・・・」
そう言うと、入り口の方であまりボロボロになっていない人間達を見かけた。
「最近、流れ着いた者達だ・・・恐らく、故郷を失ったのであろう・・・」
その人間達は生気の無い表情をしながらもティア達の横を通り過ぎて行った。
「可哀想です・・・見ているだけでも悲しくなってきます・・・」
ステラがデスドゥンケルハイト軍の被害にあった人々を目にして悲しくなっていた。
(・・・俺だって、本当は行きたくもなかったのに・・・こんなのは見ていられねぇよ・・・)
町の酷い有様を見たギルバートは快く思ってはいないようだった。
「さて・・・そろそろ父の事について訊ねてみるとしよう・・・」
そう言って、ヘイゼルは近くにいた住人に訊ねてみる事にした。
「すいません・・・少し、お話をしてもよろしいでしょうか・・・?」
しかし、町の住人はなにも話さずに通り過ぎてしまった。
「なにも答えませんでした・・・元気が無かったからなのでしょうか・・・?」
「仕方ない・・・他の人達に聞いて見るしかないみたいだね・・・」
それからもヘイゼルの父親について訊ねようとしたが、住人達は話す処か素通りされては一言も話そうとはせずに立ち去って行くばかりだった。
「・・・誰も話してくれなかったね。」
「どういう事かな・・・誰もヘイゼルのお父さんの事を話そうとしないなんて・・・」
町の住人達から聞き出そうとしたが、ヘイゼルの父親について誰も話さなかった。
「あら?あそこに私達を見ている人がいるわ。」
ティアが自分達を見ている人物に気付くとそのまま逃げて行った。
「今の人・・・なんだか、ヘイゼルさんの事を見ていたように感じたのは気のせいだったのかしら・・・?」
ティアは先程の人物がヘイゼルを見ていたように感じられた。
「まぁ・・・こう言う環境で暮らしていたんだ・・・もう、とっくに死んでいるのかも知れないぜ?」
ギルバートが素っ気ない態度で言うと、イヴが怒りを堪えた口調で言ってきた。
「ギル・・・そんな事を言わないでよ・・・」
「そうね・・・今の発言は酷いと思うわ?」
「冗談だよ・・・そもそもこんな環境でヘイゼルの家族が生きていられる訳が・・・」
その時、目の前で人が集まっている事に気付いた。
「見てください・・・あそこに人が集まっています・・・」
「でも、一体なにをしているのかしら・・・?」
なにやら、住人達がティア達を見て騒めいているようだった。
「・・・アイツ等、俺達を警戒しているように見えるな・・・さっき、ヘイゼルの父親について聞いていたから集まって来たのかもしれないぞ・・・」
「これは・・・やはり、私の事を気付かれてしまったようだ・・・」
ヘイゼルがそう思っていると、集まっている住人達がこちらに近付いてきた。
86章 傀儡と化した役場
「すいません・・・少しお話をしてもらっても・・・」
話をしてみようとした直後、スラムの住人達が一斉にこちらを睨み付けてきた。
「・・・アンタ等はコイツの知り合いか?」
住人の一人が敵意を向けるような眼差しで訊ねてきた。
「そうですが・・・ここでなにがあったのかをお話をしてもらっても・・・?」
すると、スラムの住人達は一斉に話し合い始めた。
「あのう・・・どうかなさいましたか・・・?」
ステラが声をかけると、住人の一人がヘイゼルを指差して言ってきた。
「・・・アンタ等がコイツの知り合いなら出て行ってくれないか?」
突然、出て行けと言われたティアはどう言う事なのか訊ねた。
「それは、一体どう言う事なのでしょうか?急に出て行くと言うなんて・・・」
ティアの質問に対して、別の住人が不機嫌そうに言ってきた。
「どうもこうも・・・コイツの父親は町長でこの町を地獄に変えたからだよ・・・」
「私の父が・・・地獄に変えただと・・・!?」
ヘイゼルも父親がこの町で暴挙を働いている事に驚いた。
「なにを驚いている?デスドゥンケルハイト軍に入った癖によく言うぜ・・・」
「・・・」
そう言われやヘイゼルはなにも言えなくなった。
「ちょっと待ってください・・・ヘイゼルさんが自分でデスドゥンケルハイト軍に入ったなんて・・・その事は一度も聞いた事はありません・・・」
アランがそう言ったが、住人が「そうだよ・・・」と不機嫌そうに答えた。
「コイツの父親は自分の息子をデスドゥンケルハイト軍に売りやがった・・・今ではこの町にいる俺達の監視役となっていて、デスドゥンケルハイト軍の犬へと成り下がったんだよ・・・!」
そう言いながら、住人は町に設置されている監視用の機械に指を差した。
「先程から見かけている機械はこの町を監視するためだったのですか?」
「あぁ・・・町にいる奴が結託をして、デスドゥンケルハイト軍に逆らう奴等が出ないようにするためさ・・・」
「つまり、この町に逆らう人達が出ないように見張っていると言う事なのでしょうか?」
ティアは反逆者が出ないように監視するためなのかと思った。
「そうだ・・・四六時中監視されて堪った物じゃないぜ・・・」
「それにこの町に訪れれば最後、二度と出られなくなっちまうからな・・・」
別の住人が言うと、アランがどういう意味なのかと思って訊ねた。
「ちょっと待ってください・・・どうして、この町に訪れたら二度と出られなくなるのですか?」
「なぜかって?そりゃあ、役場で管理されているからだよ。」
そう言って。住人達が自分の腕をティア達に見せてきた。
「これを見ろ・・・なにか分かるよな?」
「はい・・・絆創膏が張られているようですが・・・」
住人達の腕には一つずつ絆創膏が張られていた。
「そうだ・・・その下を見れば分かるはずだ・・・」
そう言って、絆創膏を剥がすと注射を刺した跡が残っていた。
「役場の奴等は健康診断と言って、町にいる奴等に注射をしているんだ。俺達は最近、受けたからまだ残っているぞ。」
「健康診断はいい事なのにどうして悪い事なのですか?」
「分からないのか?奴等は健康診断と言って、俺達が脱走しないようにチップを埋め込まれているのさ・・・当然、町に訪れた奴も同然だ・・・」
「コイツを埋められれば、町から出ようとするか逆らおうとすれば役場の奴等が駆けつけて来るからな・・・」
役場は健康診断と称して、いつでも監視ができるようにチップを埋め込まれていた。
「話は分かっただろ?見つかる前にソイツを連れてこの町から・・・」
その直後、ティア達の背後に役場の職員らしき人物達が現れた。
「お前達・・・この町に暮らす新入りだな・・・?」
役場の職員達が現れたのを見て、住人達は一斉に逃げ出した。
「・・・私は元から住んでいるのだが、父はなぜこのような事をするようになったのかを教えてくれ・・・」
ヘイゼルは父親の暴挙について聞き出そうとしたが、役場の職員達はなにも答えなかった。
「教える気は無い・・・大人しく、役場に行って健康診断を受けろ・・・」
そう言って、役場へ連れて行こうとティア達に近付いてきた。
「・・・無理やり健康診断を受けさせるつもりだよ・・・」
「戦いましょう・・・捕まってしまえば、永遠にこの町から出られなくなるわ・・・」
ティア達は武器を取って、役場の職員達と戦い始めた。
「・・・なんとか、倒す事ができたな・・・」
役場の職員達は武器を持っていたが、ティア達は殺さずに倒す事ができた。
「これ以上、騒ぎが大きくなる前にここを離れましょう。」
ティアがそう言うと、ヘイゼルは父親の事が信じられずにいた。
「違う・・・父がそのような事をするはずがない・・・」
「だったら、お前の父親の所に行って真実を確かめてみるか?」
「無論だ・・・当初から、父に出会う予定だったのでな・・・役場の場所は覚えているので連いて来てもらいたい・・・」
ティア達は真実を確かめようとするヘイゼルの後に連いて行った。
「・・・ヘイゼルさんとはなにかあったのでしょうか?」
「分からない・・・でもヘイゼルはお父さんの事を信じているみたいだし・・・無事に再開してくれたらいいけど・・・」
イヴはヘイゼルの後姿を見てそう言うと、役場の前に辿り着いた。
「着いたぞ・・・ここが私の暮らしていた役場だ。」
ティア達の前には町の雰囲気とは違った建物が建っていた。
「本当に役場なの?町の雰囲気に合わない建物だけど・・・?」
役場は町の雰囲気とは合わないほどの豪華な内装だった。
「あぁ・・・十数年前までとは変わってしまっているが・・・」
そう言って、ヘイゼルは役場の前へと足を踏み入れた。
「皆はここで待っていてもらいたい・・・父と話をしてくる・・・」
「一人で大丈夫なの?アタシ達も一緒に行った方が・・・」
イヴはそう言ったが、ヘイゼルは役場へと入って行った。
「・・・待っていた方がいいみたいですね。」
ティア達はしばらく待っていると、ヘイゼルが役場の中から出てきた。
「ヘイゼルさんが出てきました。」
役場から出てきたが、ヘイゼルはなにかを思い詰めた表情をしていた。
「どうだった?お父さんと出会う事ができたの?」
しかし、ヘイゼルは質問に答えずにその場を走り去ってしまった。
「ちょっと待て・・・何処に行くつもり・・・?」
「・・・きっと、なにかがあったからなのかも知れないわ・・・」
ティアがそう思って言うと、イヴは心配している様子で言ってきた。
「・・・アタシ、ちょっと追いかけるからティア達は先に入っていて・・・」
そう言って、イヴはヘイゼルの後を追って行った。
「・・・とにかく、俺達は役場に入ってアイツの親父に会おうぜ。」
「そうね・・・私を見て、通報されなければいいけれど・・・」
真相を確かめるべく、ティア達は役場の中へと入って行った。
「・・・役場の人達はいなさそうね。」
役場の中に入ってみたが、役場の役員は誰もいなかった。
「もしかしたら、さっき戦った人達が全員だったのかも知れませんね。」
「多分な・・・辺鄙な場所にあるから、数が少なかったからかも知れないな・・・」
「あれだけの数がいても警備をしなくても大丈夫だったのかな・・・?」
役場の中に入っても警備をしている者は誰もおらず普通に入る事ができた。
「ここが町長室ね・・・」
ティアは扉をノックすると、部屋の中から「誰だ?」と声が聞こえた。
「失礼します・・・」
そう言って、扉を開けて中へと入ると町長が椅子に座っていた。
87章 ヘイゼルの父親との対面
「貴方がこの町の町長でヘイゼルさんのお父さんですか?」
「そうだが・・・役場の者ではないようだが・・・もしかすると、息子が言っていた者達なのか?」
町長であるヘイゼルの父親はティア達が不審者ではないかと疑っていた。
「失礼しました・・・私達はヘイゼルさんの様子が気になりましたので・・・」
ティアがそう答えると、町長は思い詰めた表情になった。
「・・・そうか。」
そう納得をすると、ティアは彼の事をヘイゼルの父親に聞いてみた。
「・・・先程、なにかを思い詰めているような表情をしていましたが・・・過去にヘイゼルさんとなにかがあったからではないのでしょうか?」
ティアがそのように訊ねてみると、町長は先程の事を思い返してから言ってきた。
「息子が出て行く様子を見ていたのか・・・少しばかり、昔の事を話していただけだ・・・」
町長がそう言ってくると、ティアはなにを話したのか訊ねてみた。
「・・・もし、良かったらヘイゼルさんと話していた事についてお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
ティアが事情を聞こうとしたが、町長は気難しそうな表情をしていた。
「いや・・・君達が話を聞くには荷が重すぎる・・・」
「構いません・・・私達に隠さずに教えてください。」
全員が話を聞く覚悟を決めていたが、それでも町長は話したがらなかった。
「すまない・・・これは家族の問題なので、部外者は介入しないでもらいたい・・・」
町長が話すつもりがないと見たイヴが前に出てきて机を叩いてきた。
「きゅ・・・急に机を叩くなど無礼だと思わないのかね・・・?」
町長は驚きつつも注意をすると、イヴは真剣な眼差しを向けて頼んできた。
「お願いします・・・ここで、どのようなお話をしていたのか聞かせてください。」
イヴは親子でなにを話していたのか聞き出させるつもりのようだった。
「・・・私の口からでは言えぬ事なのだ・・・申し訳ないが、詳しい事は息子に訊ねてみたら話してくれるはずだ・・・?」
町長がヘイゼルに聞かせてもらうようにと断ってきた。
「せっかく、家族と再会したのに・・・どうして、ヘイゼルとなにを話していたのかをお話しするつもりはないのですか・・・?」
事情を聞き出そうとしているイヴに対して、町長は気まずそうにしながら口を開かなくなった。
「・・・なにも言わなくなったと言う事は・・・ヘイゼルとなにかがあったから話せないと言う事ですよね・・・?」
イヴが詰め寄るように問うてくると、町長は俯いたままなにも喋ろうとはしなくなった。
「アタシ達はヘイゼルと出会ってから一緒に旅をしていました・・・だからこそ、あの人の子供である貴方となにかがあったのかを聞いておく必要があります・・・なので、なにを話してヘイゼルになにがあったのかを教えてくれませんか?」
すると、イヴの押しに負けた町長は観念したかのように話し始めた。
「・・・これほどまでに息子の事を心配してくれるとは・・・」
「アタシ達もヘイゼルから聞かされていたので色々と知っています。」
イヴは旅をしている内にヘイゼルの事を思うようになっていた。
「うむ・・・本当に息子の事を思ってくれているのであれば・・・本当の事を伝えるべきなのは確かなようだ・・・」
「ちゃんと話す気になったのですね?」
「君達にも是非、話させてもらいたい・・・」
そう言って、町長はヘイゼルとなにがあったのかを話す事にした。
(・・・息子と話していた事を聞けば間違いなく驚く事になるだろう・・・事情を話せようとしていた娘も私の事をどう思うかどうか・・・)
町長は心の準備をしてからヘイゼルとなにがあったのかを話し始めた。
「実は・・・つい先ほど、私の息子であるヘイゼルが帰って来た事に驚いた・・・それから、十数年間も苦しんでいた事を話していたのだ・・・」
ヘイゼルが町長室で父親と再会した際に十数年もデスドゥンケルハイト軍にいた時の出来事を聞かされていた。
「この町が変わり果ててしまっている事について追及してきたので、息子にも事情を分かってもらえるように話している・・・」
「はい。貴方達が健康診断と偽って、逃げられないようにチップを埋め込まれていると町の人達から聞かされました。」
「・・・私が説明しなくとも住人達から聞かされていたのか・・・現在、この町ではデスドゥンケルハイト軍の被害にあった人々が集うようになったのは知っているはずだ?」
「町の人達は貧しそうで痩せこけていました。」
「そうか。なぜ、数多くの人間達がこの町に集まって来ている事は知っているかね?」
そう言って、町長は机の引き出しから一枚の紙を取り出してティア達に見せてきた。
「これを世界中に巻いた事によって、デスドゥンケルハイト軍の被害にあった者達が集うようにしているのだ。」
紙にはこの町の詳細に地図が描かれていた。
『何々・・・帰る場所を失った者達よ。この町に訪れれば、デスドゥンケルハイト軍に怯えなくて済む・・・ここへ来れば、安全な生活を約束しよう・・・地図を頼りにすれば、必ずこの場所へと着けるだろう・・・町長が皆が安心してくれる事を祈っている・・・』
アランが紙を手にすると、書かれていた内容を読み上げた。
「・・・これは、どういう事なのでしょうか?この町の状況と紙に書かれていた事と異なっているように思えてきます・・・」
ティアがそう言ってくると、町長は申し訳なさそうにしながら答えてきた。
「あぁ・・・それは分かっている・・・しかし、私も本当はこのような事はしたくはなかった・・・」
「どう言う事ですか?もしかして、初めから嘘をついて人を集めるような事はしたくはなかったと言う事でしょうか?」
「無論だ・・・初めから、このような事はしたくはなかったのだ・・・」
町長は初めから、余所者を騙したくはないと思っているようだった。
「この町に訪れた者達には健康診断と偽って、注射器を打って体の中にチップを埋め込んでいるようにしている。」
「それで、役場の人達が注射器を持っていたと言う訳だね・・・」
先程、ティア達は職員達の側に注射器が転がり落ちているのを見ていた。
「本来は役場で健康診断を受けさせるのだが・・・拒否して来る者達にはその場で注射を打たせるようにしているので、肌身離さずに持ち歩いているのだ。」
「もしかしたら、注射が怖い人でも打っていたのですか・・・?」
「そう言う事になる・・・監視している機械もチップに対応しているので、問題があれば管理している役場にいる職員達が取り押さえに行くようになっているのだ。」
監視する機械もチップに対応しており、脱走や暴動を起こす住人達を発見する事で役場にいる職員達が駆けつけてくるようになっているのだった。
「健康診断を受けさせてしまえば、この町から二度と出られなくなってしまうのだ・・食料が足りなくなっても調達をする事もできんのだ・・・」
この町の食料の問題が深刻のようであった。
「・・・それ程までに苦しい状況になっていたのですね・・・」
ステラが話を聞いて想像をした事で顔を真っ青にしだした。
「あぁ・・・それにより、いつ死ぬか分からない状況へとなってしまった・・・」
「・・・よく分かりました。そろそろ、貴方とヘイゼルさんの間になにがあったのかを聞かせてもらえないでしょうか?」
ティアがヘイゼルの事について訊ねると、町長は覚悟を決めた表情をした。
「分かった・・・それだけ聞きたいのであれば、ここであった事について話してみようではないか・・・」
そう言って、町長はヘイゼルとなにがあったのかを話し始めた。
「息子はデスドゥンケルハイト軍の兵士だったが・・・なぜ、あのような人間が所属したのかが気にならないか・・・?」
「言われてみれば・・・その事はなにも言っていなかった・・・」
ティア達はヘイゼルがデスドゥンケルハイト軍に入った理由について聞かされていないようだった。
「やはり・・・十数年前の事を話したくはなかったようだ・・・」
「それでは、ヘイゼルさんとはなにかがあったからなのでしょうか?」
ティアにそう問われた町長は気まずそうにしつつも話してきた。
「・・・それは、デスドゥンケルハイト軍に私の息子を・・・・売ってしまっているのだ。」
ヘイゼルの実の父親である町長の口から出た言葉は衝撃的な発言だった。
88章 売られた息子
「ヘイゼルを売っていた・・・?」
「あぁ・・・とある事情があって、息子をデスドゥンケルハイト軍に売ってしまったのだ・・・」
そう言いながらも町長はあの時の事を思い出して後悔をしだした。
「それでは、貴方の子供を人身売買したと言う事ですか?」
「・・・そうだ。」
町長は答えながらも後悔が圧し掛かっている様子だった。
「どうして?なんで、彼をデスドゥンケルハイト軍に売ってしまったの?」
イヴがヘイゼルをデスドゥンケルハイト軍に売った理由を問いてみた。
「・・・妻を助けるためだ。」
「つまり、貴方の奥さんであの人のお母さんでもある人を助けたかったからヘイゼルさんを売ってしまったと言う事なのですね?」
「・・・病気の妻を救い出すには仕方のなかった事だ・・・なにせ、深刻な病気だったので医者の診断では病気が治らなかった可能性があった・・・」
「・・・それで、ソイツを売る事にしたのかよ?」
「そう言う事だ・・・病気の妻を治療するためには息子を売るしか方法がなかった・・・当然、息子にも話してみたが・・・その直後に部屋を出て行ってしまった・・・」
先程のヘイゼルが思い詰めた表情をしながらなにも言わなかった理由はそう言う事だった。
「・・・それで、ヘイゼルさんになんと言いましたか?」
アランがなにを言ったのか聞いてみると、町長は言い辛そうにしながら話してきた。
「十数年前・・・突如として、妻が病にかかってしまい・・・治療をする術がなく、困り果てていたのだ・・・デスドゥンケルハイト軍が世界を支配してからというもの・・・世界の状況が一向に悪化していくばかりだ・・・」
辺鄙の地にある町を治める町長でも世界の状況について把握していた。
「当然、世界中で死者が出るようになった事により、余所の大陸から訪れて来る人間達の数が減った事により、腕のいい医者を呼べずにいた・・・」
「確かに・・・今でも港で船に乗る人達は少ないです。」
「そう言えば、だいぶ前に乗った船にいたお客さんも少なかったと思います。」
以前、船に乗っていた事があり、乗船していた乗客達が少ない事を目にしていた。
「そのために・・・外の世界で医者を呼べないと確信した私はある決断をしたのだ。」
「・・・それが、ヘイゼルをデスドゥンケルハイト軍に売る事・・・」
イヴに先に言われた町長は「そうだ・・・」と苦々しく答えた。
「それで、奥さんを助けたいからヘイゼルをデスドゥンケルハイト軍に売ったと言う事かよ?」
ギルバートがそう言ってくる、とヘイゼルの父親は俯いて答えるだけだった。
「デスドゥンケルハイト軍によって、世界が一変してしまった世の中だ・・・私は妻を助けたい一心で
ヘイゼルを売ってデスドゥンケルハイト軍から病気を治す薬を手に入れる事を選んでしまった・・・」
「・・・それでは、病気の奥さんを助けるために貴方はヘイゼルを売ったと言う事なのですね?」
「そのとおりだ・・・それからと言うもの、徒党を組まれる事がないように町で監視するように命じられてからは嘘の情報を書いた紙を世界中にばら撒く事で被害にあった者達を集めては町で隔離するようにしてきた・・・」
「・・・やっぱり、この紙に書かれていた事は嘘だったんですね?」
「あぁ・・・妻の病気を治すためにも息子を兵士として徴兵させてしまった・・・だが、今では聖地から脱走した挙句、君達と旅をしてデスドゥンケルハイト軍を倒そうとする旅に加わっていると聞いた時は驚かされたが・・・」
すると、ティアはかつて竜車に乗せられていた子供達がデスドゥンケルハイト軍の船に乗せられようとしていた時の事を思い出した。
「・・・港で竜車に乗せられていた子供達も船に乗せられて、徴兵させられようとしていた事を思い出したわ・・・」
「はい・・・子供達も悲しそうな表情をしていました・・・」
二人は港で子供達を救うために戦っていた時の事を思い出した。
「それはそうと、アンタの奥さんは助かったのか?」
ギルバートが妻を助けられたのか聞いてみた。
「あのう・・・その人の病気は治っているのでしょうか?」
ステラも妻について訊ねてみたが、父親はなにも答えずに俯いてしまった。
「いや・・・もう亡くなってしまったのだ・・・」
町長のその様子はまるで、悪い話をするかのような伝え方だった。
「待ってください・・・ご病気はもう治ったのではないのでしょうか・・・?」
「あぁ・・・」
「息子を売ってから、妻に薬を飲ませた事で完治はしたが・・・そのまま息を引き取ってしまったのだ・・・」
デスドゥンケルハイト軍から貰った薬を使って病気を治す事ができたが、病が長期間病に侵されていたからか、程なくして町長の妻は亡くなってしまっていた。
「・・・それで、役場から出てきた時に思い詰めている表情をしていたのもそう言う事・・・?」
「君達は見ていたのか・・・自分が売られた真相を知ったヘイゼルの事を見ていたのだな・・・あの時、ヘイゼルを売っていなければ、治療もできずに妻を見殺しにするだけだった・・・そうなれば、息子が悲しんでしまう事になってしまう・・・」
そう言いながら町長は悔やみながらも頭を抱えだした。
「そうでしたか・・・ですが、幾らなんでも子供を売るのは酷いと思います。」
「・・・これも妻を救うために仕方がなくやった事だ・・・分かってくれ・・・」
ギルバートが怒りを露わにした表情で言ってきた。
「・・・アンタは子供の事を思っているくせに愛する妻が死なせたくねぇからって・・・病気を治すための薬と引き換えてしまったのかよ・・・!」
息子を売った事に対して、ギルバートは怒りを露わにしていた。
「・・・人間は極致に立たされてしまえば、身内を犠牲にしなければ解決する事ができない方法もある・・・因果応報の如く、妻も亡くしてしまっているのだ・・・!」
「・・・アンタの話しはよく分かった・・・そんな事を言ってしまえば、ヘイゼルがああなるのは当たり前だ・・・」
ギルバートは非難するかのようにヘイゼルの父親を睨み付けてきた。
「悪ぃ・・・気分が悪くなったからちょっとうろついて来るぜ・・・」
そう言って、ギルバートは町長室を出て行った。
「でも、ヘイゼルさんはどうするの?」
「私達も探してみた方がいいと思います。」
「そうね。ヘイゼルさんを探して見ましょう。」
「・・・」
ティア達は役場を出てヘイゼルを探しに行った。
89章 ヘイゼルとイヴ
(・・・この町はこれほどまでに変わり果ててしまったのだな・・・)
町を眺められる場所でヘイゼルがおり、過去の町の光景を思い浮かべていた。
(あれから数十年・・・父はなぜあのような事をしたのだ・・・?)
ヘイゼルは売られた当時の事を思い出している時だった。
「ここにいたんだね・・・ヘイゼル。」
後ろを振り向いてみると、息を切らしているイヴがいた。
「イヴか・・・皆はどうした?」
「・・・別々で探しているよ。」
イヴは息を整えてから、ヘイゼルにそう返答をした。
「そうか・・・後で皆と合流をするとしよう・・・」
そう言うと、ヘイゼルはイヴを見てある事が気になりだした。
「・・・一つ聞いても構わないか?」
「別にいいけど・・・ちょっと待って・・・」
イヴは完全に息を整えてから訊ねてきた。
「それで、一体なにが聞きたいの?」
「イヴ・・・なぜ、心配に思っていた?」
ヘイゼルの質問に対して、イヴは呟くような声で答えてきた。
「・・・アタシと似ていたから・・・かな・・・?」
「似ていると言うのは?」
「ヘイゼルはデスドゥンケルハイト軍に連れて行かれて兵士として生き続けて来たじゃない?」
「あぁ・・・いつ死ぬのか分からぬ場所で生きていたのだからな・・・」
イヴにとっては悲しい過去を背負っている者同士としての共感を持っていた。
「私も同感だ・・・深い心の傷を負いながらも生き続けて来た事が伝わってくるぞ・・・」
「そう・・・アタシ達は似た者同士だからね・・・」
そう言うと、イヴは虐待を受け続けていた時からティア達と出会った時の事を話しだした。
「アタシはお母さんと義理の父親と一緒に虐待をされていた・・・まるで、デスドゥンケルハイト軍みたいで酷く傷つけられていた事は今でも忘れる事はできないの・・・」
イヴは過去に虐待されていた時の事を思い出して苦しい表情になった。
「私も同じ気持ちだ・・・父から話を聞いてからも、過去の事が思い浮かんでくる・・・」
ヘイゼルはそう言うと、デスドゥンケルハイト軍に自分が売られた時の事を思い出した。
「・・・あの時は、今でも覚えている・・・是非、話させてもらいたい・・・」
ヘイゼルは、デスドゥンケルハイト軍に自分が売られた時の事を語り始めていた。
『その薬があれば、お母さんの病気が治るんだね?』
それは、父親である町長が母の病気を治す薬を手に入れたと聞いていた。
『あっ・・・あぁ・・・交渉をしてみた結果、手に入れる事ができたのだ・・・これを飲ませれば病気も治るだろう・・・』
町長が言い辛そうにしつつも幼少のヘイゼルにそう言うと、その背後からデスドゥンケルハイト軍の兵士が部屋の中に入ってきた。
『お父さん・・・この人達は・・・?』
すると、兵士達はヘイゼルの事を見てきた。
『コイツがお前の息子で間違いないな?』
『はい・・・この子なら、有望な兵士に育つ事は間違いないでしょう・・・』
町長がそう言うと、兵士達はヘイゼルを捕らえた。
『お前はデスドゥンケルハイト軍の兵士になるのだ・・・さぁ、来い!』
そう言って、兵士達はヘイゼルを乱暴に引っ張ってきた。
『なにをするの!お父さん助けて!』
ヘイゼルは父親に助けを求めたが、助けに入らずにただ見ているだけだった。
『スマない・・・許してくれ・・・これも妻を助けるためだ・・・』
町長が申し訳なさそうにしながらヘイゼルに謝罪をしてきた。
『約束どおり、お前の息子と引き換えに薬を渡してやったぞ。』
『はい・・・』
兵士に連れられて行くヘイゼルに対して、町長はただ呆然と見ているだけだった。
「・・・それから、ラヴィレイヘヴンに連れられてからは、兵士として教育され十数年もの間、兵士として生きてきた・・・しかし、人の命を奪う事などせずにただ苦しい環境で堪えていたある日の事・・・エレノアの末裔が光翼の涙を集めてデスドゥンケルハイト軍を倒そうとしている情報を聞いた事で逃げ出す決意ができたのだ・・・」
ヘイゼルがデスドゥンケルハイト軍から脱退した動機はエレノアの末裔であるティアの存在を知って脱走する決心が着いたからであった。
「そう・・・さっきも貴方のお父さんからその話をしていたのね?」
「無論だ。父が聞いた時は信じられない表情をしていたぞ。」
そう言いながら、ヘイゼルは父親と話していた事を全て話し始めた。
「・・・当時、父がどのようにして手に入れたのか分からない薬を手に入れてきたと聞いた時はおかしいと思ったのだが・・・」
町長がどのように薬を手に入れてきたのか言ってきた時点でヘイゼルは疑問に思っていた。
「この町では手に入れる事が不可能な薬と交換をした私はデスドゥンケルハイト軍に売られてしまったのだと悟った・・・しかし、父は母に薬を飲ませようとはしなかった・・・」
自分の息子を売買して手に入れた薬を母親に服用をしなかったと言うのだった。
「ちょっと待って・・・まさか、お母さんに薬を飲まさなかったの・・・?」
「あぁ・・・恐らく、私を売ってしまった事を後悔して自分の申し訳なさが勝ったのだろう・・・母に薬を与えずに看病をしていたが・・・虚しくも母は病気で亡くなってしまった・・・」
町長は貰った薬を使用せずに自力で看病を続けてみたが、病気が良くなる事もないまま妻は病死をしてしまっていたのだった。
「ちょっと待って・・・薬を与えていないってどう言う事?」
イヴはヘイゼルの口から出た発言を疑った。
「・・・そうだ。父はデスドゥンケルハイト軍から受け取った薬を使わずに母の看病をしていたのだ。」
「でも・・・ちゃんと、薬を与えたって・・・でも、亡くなってしまった事も聞いているのに・・・?」
疑問を抱いたイヴはどういう意味なのかと訊ねてみた。
「数十年間・・・父は罪悪感に苛まれながらも町長として勤め続けてきた・・・それ故に母を病気で亡くなってしまった事で、自らが招いたせいだと後悔をしていたとなれば・・・それを私にしか話していなかったのだろう・・・今でも思い続けている事が伝わってきていたのを感じられた・・・」
親子との再会を果たしてから、ヘイゼルは父親から後悔の念が伝わってきていた。
「そうだったの・・・まぁ、デスドゥンケルハイト軍からもらった物を使うなんて嫌だね・・・」
「父は後悔の念に捕らわれている・・・だからこそ、本当の事を聞くために会って念を払う必要があると思ったのだ・・・」
故郷に帰りたがっていた本当の理由を告げると、イヴは少し黙り込んでからヘイゼルに言ってきた。
「ねぇ・・・話があるけど・・・一緒に来てくれない?」
「別に構わんが、一体なにを話そうと?」
「いいから・・・ちょっと、話したい事があるの・・・」
イヴは強引にヘイゼルの手を掴んで連れて行った。
90章 お互いの過去の打ち明け
「・・・ここなら、誰もいないしちゃんと話しができそう・・・」
人のいない場所にヘイゼルを連れて来たイヴは周りに誰もいないかを確認した。
「イヴ・・・ここに連れて来て、どのような話をするつもりだ?」
ヘイゼルがなにを話すつもりなのか問うと、イヴは真剣な表情でヘイゼルに聞いてきた。
「・・・正直に聞かせて、デスドゥンケルハイト軍の人間として苦しかった?」
「無論、苦しかったぞ・・・私だけでなく、デスドゥンケルハイト軍に連れていかれた者達と同様に罪もない者達を誰も殺したくはないと思っていた様子を見ていたのだからな・・・」
「そう・・・ヘイゼルもその一人だったと言う訳ね・・・」
イヴは苦しい思いをしながら生きてきたのだと再認識した。
「・・・いつ死ぬか殺されるか分かぬ場所にいたのだ・・・命を奪うような戦闘の訓練を朝から晩まで強制的に行わされ、誰かが死ぬ事があれば、弔う事も許されず雑に処分されてしまうような環境だった・・・当然の如く、死人が出るのも日常茶飯事であったぞ・・・」
ヘイゼルは幼少の時から戦闘の訓練を受けられており、何人もの人間達が死ぬ光景を嫌でも目にし続けていた。
「私は死にたくはないと思いながらも次々と死人が出る環境を生き抜きながらも挫けずに耐え忍んでいたのでな・・・」
「ヘイゼル・・・よっぽど、辛かったね・・・それで、貴方をデスドゥンケルハイト軍に売ったお父さんは許せないと思っているの?」
イヴはまだ父親の事を恨んでいるのかとヘイゼルに聞いてみた。
「もう恨んではおらぬ・・・父だって、母を救おうとしたかった・・・だが、罪の意識が芽生えた事で、それができなかった・・・父だって、ずっと後悔をしていたはずだ・・・」
「・・・確かに父は私をデスドゥンケルハイト軍に売った・・・だが、もしも私を売っていなければ、病で亡くした母親を目にして泣いていた事になっていたはずだ・・・そうなってしまう事の考えられていたのかも考慮されるぞ・・・」
「・・・地獄の様な場所で育ってきたのに、誰も殺さないようにしながら生きてきたのは分かったよ・・・」
「・・・誰一人も殺せずにいた私は何度も体罰を受けてきた・・・以前、私の事を治療していた時も目にしていたはずだ・・・」
「えぇ・・・あの時は酷い傷だと思ったけど・・・まるで、アタシの傷みたいで痛々しく思えたよ・・・」
かつて、瀕死寸前のヘイゼルを治療した際にティア達は体罰を受けた跡を見ていた。
「・・・貴方の傷を見て、暗殺部隊の傷じゃないって・・・」
「分かっていたのか・・・そう言えば、以前にイヴの体に痣や傷があるのを見たのだが・・・あの傷は一体・・・?」
ヘイゼルが以前に見たイヴの傷について訊ねてくると、イヴは苦しい顔もせず落ち着いた様子で話し始めた。
「・・・あの傷はアタシが小さい時に虐待を受けていたからだよ・・・これを見れば、きっと分かると思うから・・・」
そう言って、イヴは服を上げて体の傷をヘイゼルに見せた。
「イヴ・・・その体は・・・」
ヘイゼルが見たのは過去に虐待を受けた傷や痣が残っているイヴの体だった。
「これが、小さい時に虐待を受けてできた傷で今でも残っているの・・・」
幼少時代からイヴの体にある虐待の傷や痣をヘイゼルに見せてきた。
「・・・これは酷すぎるな・・・今でも、傷や痣が残っているとは・・・どれ程、過酷な
虐待を受けていた・・・?」
ヘイゼルが、虐待の傷と痣を見ていると、イヴは過去に虐待を受けていた時の事を
思い出しながら話してきた。
「・・・アタシは二人に暴力を受けては暴言を浴びせられ続けてきたの・・・止めてって泣きながら言っても止めずに暴力を振るわれては体も心もボロボロになりながらも辛い思いをしてきたの・・・」
イヴ過去の虐待を思い出しながら語るも過去の苦しみに堪えながら話してきていた。
「それは酷いな・・・子を持つ人間達がやるような所業ではないぞ・・・」
ヘイゼルがイヴの話を聞いて、母親と義理の父親の存在に嫌悪感を抱いていた。
「それだけじゃないよ・・・何日も食べ物や水を与えてくれずに暗い所にずっと一人で閉じ込められたりしていて・・・苦しくて怖かったのは今でも覚えているよ・・・」
「そうだったのか・・・その傷や痣が残り続けているほどに刻まれていると言うのか・・・」
話を終えたイヴは服を降ろした。
「・・・それじゃあ、お話はこれぐらいにしましょうか。」
イヴは、先へ行こうとすると、ヘイゼルがティアの事をどう思うか聞いてきた。
「待て・・・ティアの事をどう思っている?」
「どうって・・・アタシの事を大事に思ってくれていると思うよ?最初の頃は虐待を受けていたせいで人と関わる事が怖かったけど・・・ティア達と暮らしている内にアタシの心が徐々に打ち解けていったの・・・だから、とてもいい人達だと思っているよ。」
イヴは虐待で受けていた事で心も傷も付いており、人と関わる事が怖がるようになっていたが、ティア達と暮らしている内に心が打ち解けていった。
「それから、ティアと達と一緒に暮らしていたの。」
「イヴにとって、新たな家族ができたかのようにティア達と共に暮らしていたと言う事なのだな・・・」
「でも・・・叔父さんと叔母さんは死んでしまったのを聞いた時は信じられなかったけど・・・だからこそ、叔父さんと叔母さんに代わって、アタシがティアを守ってやりたいと決めたの・・・」
イヴは胸に手を当てながら言うと、ヘイゼルはこれまでの話を振り返りながら言ってきた。
「・・・イヴ、愛するもの同士が結ばれ子を産む・・・その中で築き上げられるのが家族と言う物だ・・・それをしているのにも関わらず、別の者を愛するとなると、自分の家族を裏切る事と同様だ・・・愛する者と一緒になる決意を固めたのであれば、最期まで一致団結をして家族を守らなければならない・・・」
ヘイゼルは家族について語ると、イヴが続きを話すように言ってきた。
「・・・共に助け合い協力をする者達であって、親は子供が大人になるまで色々な事を学ばせて育てていく事が親としての使命・・・子供が自分で歩き出して言葉を出せるようになったら、親以外の大人達に教育をしてもらって、自分自身を学習して育んでいくのが重要だから、大人になった子供達は結婚をして、新たらしい家族でもある赤ちゃんを産む・・・家族としての使命を受け継いでいくのが家族と言う訳ね・・・」
イヴが最後まで話すと、ヘイゼルは笑みを浮かべながら「そうだ。」と答えた。
「エレノアの血が繋がっていないアタシにとってはエレノアの末裔でもあるティアを守る事が・・・あの子のためになる使命と言う事は分かっているよ・・・」
イヴは家族について話した事で色々と共感をした。
「そうだ・・・例え、血が繋がっていなくても、家族と言う名の人間達を守る使命を
背負っている・・・それもティアと暮らす事となったイヴも同じ事だ・・・」
「そう・・・色々と教えてくれてありがとう・・・ヘイゼル。」
イヴは穂を赤らめながらもヘイゼルにお礼を言ってきた。
「家族は新たにできた時は嬉しいが、失ってしまう時は悲しい・・・よく、覚えているといい・・・」
こうしてイヴとヘイゼルはお互いに分かり合う事ができた。
「二人共、ここにいたのね。」
すると、そこへ丁度ティアとステラがやってきて合流した。
「ティガイアテラ・・・アランは一緒に来なかったの?」
「私は先程ティアと合流したので、恐らくはまだ探していると思います。」
「そうか・・・それよりも、父と話がしたいので付き合ってくれるか?」
「別にいいですけど・・・?」
「助かる・・・後で探しとして、先に父の元へ戻るとしよう・・・」
こうして、ティア達は再び役場へと出向く事を決めた。
91章 親子の和解と謎の人物との会話
役場の前に着いたティア達は役場へと入ろうとしていた。
(・・・父は母の病を治すために私を売ったのだ・・そう、欲に負けて薬と引き換えていた訳ではない・・・)
ヘイゼルは悪意があって、薬と交換をした訳ではないと信じていた。
「それでは、そろそろ入るとしよう・・・準備はできているのでな・・・」
ティア達は役場へと入って、町長室へと再び足を踏み入れた。
「・・・ヘイゼル。」
町長が部屋の中に入ってきたティア達にヘイゼルも紛れ込んでいるのを見て驚いた。
「・・・まさか、戻って来るとは・・・やはり、まだ根に持っているのか・・・?」
ヘイゼルが帰ってきたのを見た町長は気まずそうにしながら訊ねてきた。
「そのような事は思ってなどはいない・・・ただ、もう一度話をしたいと思って来た・・・」
そう言うと、ヘイゼルは町長の前に立って話し始めた。
「単刀直入に言おう・・・私は一度も父を恨んだ事は一度もない・・・」
「分かっている・・・数十年間もの間、お前は苦しんできた・・・今でもその事で後悔をしている・・・」
町長がそう言ったが、ヘイゼルに対して気まずそうにしていた。
「・・・もしも、息子を売るような事をしなければ、妻が亡くなってしまった様子を見る事になってしまう・・・それだけは避けたくて、デスドゥンケルハイト軍と取引をしてお前を売る事で薬をもらっていたのだ・・・」
少しの間沈黙が入ったが、町長は落ち着いた対応で話した。
「分かっている・・・しかし、貴方はその薬を使おうとはしなかった・・・それは私を売ってしまった事を悔やんで使えなかったからだ・・・」
「お前の言う通りだ・・・その後で薬を飲ませようとしたが、私が愚かな選択をしてしまったと思って、妻に薬を与えずに自らの力で治療をしていたのだ・・・」
そう言ってから、父親は薬の入った瓶を服の中から取り出して見せた。
「これがその薬だ・・・その時から、肌身離さずに持っている・・・それでも、お前をデスドゥンケルハイト軍に売り飛ばした私を許すと言うのか?」
町長がそう言ってくると、ヘイゼルは怒りもせずにこう言ってきた。
「あぁ・・・・・・本当は私の事を思ってくれていたから・・・貴方は薬を使用せずに自らの手で愛する妻を助けようとしていたのは分かった・・・もうこれ以上、過去の事に捕らわれずに現実を受け入れてほしい・・・私にとってはただそれだけでいい・・・」
ヘイゼルに現実を見てほしいと言われた町長・・・いや、ヘイゼルの父親は体を震わせて泣きながら謝罪をしてきた。
「ヘイゼル・・・本当にスマなかった・・・!」
ヘイゼルの父親はただ目の前にいる息子の前で泣き続けた。
「良かったね・・・お父さんと分かり合えて・・・」
イヴは二人が和解した様子を見て安心した。
「なんだか、イヴも嬉しそうにしています。」
「えぇ・・・きっと、ヘイゼルと心が通じ合える事ができたからだと思うわ・・・」
ティアもイヴとヘイゼルが以前と関係が良好になっている事に気付いていた。
「そう言えば・・・二人はどうしているのでしょうか・・・?」
その頃、アランの方は未だにヘイゼルを探し続けていた。
「やっぱり、僕も一緒に行った方が良かったのかな・・・一緒になって探した方が見つかると思ったのに・・・」
アランはそう考えていると、ギルバートが歩いている様子が見えた。
「ギル、イヴとヘイゼルを見て・・・」
二人を見なかったか聞こうとしたが、ギルバートはこちらに気付かずに歩き続けた。
「何処へ行くつもりだろう・・・?とりあえず、連いて行ってみようかな・・・」
アランも気になって、ギルバートを尾行し始めた。
「・・・誰もいなさそうな場所に着いたけど・・・どうしてこんな所に・・・?」
ギルバートを追っている内にアランは誰もいない路地裏へと辿り着いていた。
「いた・・・誰かと話しているみたいだけど・・・ここで、待ち合わせでもしていたのかな・・・?」
アランは誰かと話しているのを確認しようとしたが、ここからではよく見えなかった。
(よく見えないな・・・でも、話し声は聞こえて来るみたいだね・・・)
耳を立てると、ギルバートが何者かとの会話が聞こえてきた。
「・・・いい加減にやったらどうかって?」
ギルバートがなにやら、意味深な発言を口にした。
(・・・なにか、重要な話をしているみたいだけど・・・一体なにを話しているのかな・・・?)
そのまま立ち聞きをしていると、会話の続きが聞こえて来た。
「分かっているよ・・・そんな事は、何度やろうとしても上手くいかねぇんだよ・・・」
ギルバートが言い難そうに言うと、会話の主が不機嫌な口調で言ってきた。
『嘘を付くな・・・これまで何度も嘘の報告をしていたはずだ・・・』
「・・・アンタもとっくに気付いていたのかよ・・・」
ギルバートは既に気付かれていたかのような反応を取った。
(・・・一体、なんの報告だろう・・・それに、あの人の声は何処かで聞いたような気がするような・・・?)
アランはギルバートの会話をしている人物の声に聞き覚えがあるようだった。
(それにしても・・・嘘の報告って、誰かと報告をしていた・・・?)
そう思っていると、会話の続きが聞こえて来た。
『・・・しかし、エレノアの末裔である少女と運よく遭遇したのは良かったが、使命を忘れて光翼の涙を集める旅に協力をしていると聞くじゃないか・・・』
「それは・・・」
反論しようとしたが、ギルバートはなにも言えなかった。
『まぁいい・・・次は火山の中にある光翼の涙だったな・・・』
「あぁ・・・あそこは溶岩まみれでだって聞くぜ・・・」
『そうだ。そこで、最後のチャンスをやろう・・・今度こそ、お前の手で殺って見せろ・・・』
声の主が念を押すように言ってくると、ギルバートは不満そうにしながら聞いてきた。
「やっぱり・・・いい加減にやらなくちゃ駄目なのか・・・?」
「・・・もし、それでも果たす事ができなければ・・・分かっているだろうな・・・?」
「なぁ・・・そこまで、やらなくてもいいんじゃねぇのかよ・・・?」
ギルバートは止めた方がいいと思っているようだった。
(ギル・・・君と話している人は一体・・・?)
誰と話しているのかと思っていると、会話の主から出た衝撃の発言に驚いた。
「・・・とにかく、これ以上お前が、奴等に協力する気であれば・・・お前を殺してでも殺らなければならないぞ・・・」
(殺す・・・!?しかも、ギルまでも・・・?)
「分かった・・・ちゃんと、殺るからそんな事は言わないでくれよな?」
「当たり前だ・・・当然の事だが、あのお方は痺れを切らしているようだったぞ・・・そろそろ、エレノアの末裔に光翼の涙を手に入れさせるのに、協力をするような事があれば・・・どうなるか分かっているだろうな・・・」
声の主が脅すように言ってくると、ギルバートは言い辛そうにしながら答えた。
「あぁ・・・ちゃんと、やるからアイツ等に言ってくれよ・・・?」
ギルバートがそう言った後で連絡を切る音が鳴った。
(・・・今の音・・・もしかして、端末を使って連絡を取っていたのかな・・・?)
アランがそう思っている時だった。
「いい加減に出て来いよ・・・そこにいるのは分かっていたぞ。」
ギルバートはアランのいる方向を見ながら声をかけてきた。
92章 火山のある島
「ギル・・・ここで、なにをしていたの?」
アランは立ち聞きをしていた事を悟られないようにしながらも大人しくギルバートの前に出て来た。
「別に・・・誰もいない場所で、一人でいちゃ悪いのかよ・・・?」
ギルバートは白を切るように言ってきていた。
(・・・やっぱり、ギルは端末を使って話していたのに嘘を付いているみたいだね・・・)
アランは怪しまれないように平然とした様子で答えた。
「そんな事は言っていないよ・・・偶然、ここに着いたら君が一人でいたからちょっと気になってね・・・」
アランはそう誤魔化すとギルバートは「そうか・・・」と呟いた。
「そうだ。ヘイゼルさんを探しているけど・・・何処に行ったか知らないかな?」
「知らねぇよ・・・役場に戻っているんじゃねぇのか?」
「とにかく、役場を見に行ってみようかな・・・君も後でおいでよ。」
アランがそう言うと、先程の会話で聞こえてきた声の主が気になりだした。
(・・・ギルは一体誰と話をしていたんだろう・・・それに、話していた相手の声はどう考えても・・・)
先程の声は心当たりがあるとアランにはそう感じられていた。
「どうかしたのか?」
「ううん・・・なんでもないよ・・・」
アランは気になりながらも役場へと戻って行った。
「お待たせ・・・一日、外で待たせてしまって・・・」
次の日、ティア達は町長の命で泊まる事が許可された宿に泊まる事となった。
「ヘイゼルはいないが、まだ役場にいるのか?」
ガイアはヘイゼルがいない事を訊ねた。
「えぇ・・・町長に別れを言いたいから、先に行って待っていてほしいと言っていたわ。」
「そうか・・・こちらも昨晩一緒にいて眠っていたようだが・・・」
ガイアは隣で眠そうにしているステラを見た。
「昨日、ガイアと一緒にいるからって言っていたね・・・」
「はい・・・ずっと、一人で待っていたので、昨日の夜から一緒にいました。」
前日の夜、ステラはスラムの外で待機しているガイアの元で一晩中彼と共に一夜を明かしていた。
「ステラ、外は寒くなかった?」
ティアがそう訊ねてくると、ステラは穂を赤らめながらもガイアの羽に手を触れた。
「はい・・・ガイアが私を羽で包んでくれましたので寒くはなかったです。」
「ステラが寒そうにしていたので、羽を覆わせて暖めていたぞ。」
「はい。温もりを感じられて暖かかったです・・・」
ガイアは自身の羽でステラを覆わせながらも眠っていたと言うのだった。
「昨日の夜はとてもいい夜でした・・・星竜族について、色々と語り合いながらもユニバース様の事についても色々と話してくれました・・・」
そう言いながら、ステラは満足そうな表情をしていた。
「良かったじゃない・・・一晩中ガイアと夜を明かせられて・・・」
すると、会話を終えたヘイゼルが戻ってきた。
「待たせた・・・ガイア、一日中外で待たせて申し訳なかった・・・」
「構わん・・・ステラから、町の宿に泊まる事となったのを聞いたので大丈夫だ・・・それでは、向かうとしようか・・・六つ目の光翼の涙がある火山へ・・・」
そう言ってから、ガイアはドラゴンに変化してティア達を背に乗せた。
「ガイア、お願い・・・」
『それでは、行くぞ。』
ガイアは羽を羽ばたかせながら上空へと舞い上がり火山のある島へと向かった。
「ギル。なんだか、浮かない顔をしていますよ?」
飛行中にステラはギルバートがなにかを思っている様子が気になって声をかけてみた。
「いやっ・・・なんでもないぞ。」
ギルバートはそう言ったが、やはり浮かなそうな表情をしていた。
(・・・ギル、やっぱり昨日の話しをしていたからなのかな・・・?)
アランは前日の会話をしていたからだと思っていた。
「見て・・・火山の島が見えてきたよ・・・」
イヴがそう言って見て見ると、幾つもの溶岩の側が流れており火山も見えていた。
『あそこにある火山には光翼の涙が隠されているはずだ・・・』
上空から見れば、溶岩地帯の中心に巨大な火山が見えた。
「見てください・・・地上では溶岩の川が幾つも流れています・・・」
「ガイア、火山に近づける事はできる?」
ティアがそう聞いてくると、ガイアは溶岩地帯に降りられるのか考えてみた。
『・・・不可能だ。溶岩地帯は熱気が強いので近づく事は不可能だ・・・例え、火山口から入ったとしても噴火でもしたりすれば、焼け死ぬ事になってしまうぞ。』
ガイアがこの地を見て、降り立つのは危険だと判断した。
「・・・だったら、歩いて火山に行くって言うのはどうだ?」
「でも下は溶岩だよ?それに、歩いて行けたとしても火山に辿り着けるかどうかは分からないよ?」
アランはそう言ったが、ギルバートは気にしていない様に言ってきた。
「大丈夫だ・・・溶岩の熱気があまりない場所に降りて歩いて行けばいいだけだろ?」
「ですが・・・近くにいるだけでも火傷してしまいそうです・・・」
ステラは地上を眺めながら見てみると、溶岩の川がグツグツと煮えたぎっていた。
「でも・・・溶岩のある場所には降りる事はできないわ・・・ガイア、火山の近くでもいいから降りてみたらいいと思うわ。」
ティアにそう言われて、ガイアは火山の付近を飛び回って安全かどうか確認をした。
『大丈夫だ・・・火山の付近なら降り立つ事ができるぞ。』
「・・・そうか。」
ガイアはそう言ってくると、ギルバートは浮かない顔をしていた。
「・・・ギル、浮かない顔をしているけど・・・なにか、不満でもあるの?」
「いや・・・なんでも・・・」
『それでは、火山の前に降りるぞ・・・』
そう言って、ガイアは急降下して火山付近へと降り立った。
『私は後から追うので、お前達は先に入って行ってくれ・・・』
ガイアはティア達が降りるのを見てから後で来ると言った。
「分かりました・・・絶対に来てくださいね・・・?」
「心配するな・・・すぐに駆けつけてやるので安心をするがいい・・・」
ガイアはステラにそう言うとティア達は火山の入り口を見つけて中へと入って行った。
(・・・六つ目の光翼の涙を手に入れた直後、あの人間の正体を知る事になれば、あの人間達は驚く事になるだろう・・・)
そう呟きながらもガイアは元の姿へと戻った。
93章 溶岩が煮えたぎる火山
「ここは、とても暑いね・・・」
火山の中に入ったティア達はすぐに火山の中の熱さが異常だと感じられた。
「はい・・・外よりもとても暑いです・・・」
「・・・火山の内部の方が外の溶岩地帯以上に熱気はあるようだな・・・」
火山の中に流れている溶岩以上に熱い熱気が漂っていた。
「さっきの場所で流れている溶岩の川も火山の内部の方が溶岩の熱気が強いみたいだね・・・」
アランは溶岩を見下ろすと、グツグツと熱気を放ちながら溶岩が煮えたぎっていた。
「なんだか、お風呂のお湯よりも熱そうです・・・」
「絶対に入るなよ?溶岩の中に入ったら人間なんてすぐに溶けて死んじまうぞ?」
「溶けて死んでしまう・・・それ程までに熱いと言う事ですか・・・?」
ギルバートの発言によって、ステラの顔が真っ青になった。
「あぁ・・・火傷するだけじゃ済まないらしいぜ・・・溶岩に漬かったら体が、焼けて骨だけになっちまうぐらいだからな・・・」
まるで怖い話をするかのように言っていると、ティアがギルバートに注意をしてきた。
「ギル・・・ステラが怖がっているから止めましょう・・・」
ティアに叱られたギルバートはステラの表情を見て話すのを止めた。
「分かったよ・・・無駄話は止めて、さっさと光翼の涙を見つけようぜ・・・」
それから、ティア達は火山の内部を探索し始めた。
「ここには炎属性のモンスターが多く生息しているみたいだから、水属性が弱点だから簡単に倒せるよ。」
アランがそう言った直後にモンスターが経ち塞がってきた。
「・・・全く、こんな時に出て来るなよ・・・」
ギルバートが嫌そうにすると、モンスターは攻撃を仕掛けてきた。
「・・・このモンスターは簡単に倒せそうね・・・」
ティアも剣を抜き、モンスターの攻撃を防いだ。
「ギル、今の内に攻撃をして・・・!」
その隙に攻撃ができないかと、ティアは近くにいたギルに声をかけた。
「あっ・・・あぁ・・・」
しかし、ギルバートは攻撃もせずにいるとティアは押されて尻餅をついてしまった。
「きゃあ!」
ティアは立ち上がろうとしたが、モンスターが攻撃を仕掛けようとしてきた。
『フラリリア!』
その直前にアランが魔法を唱えて花が開花するような光を放ち、モンスターの目を晦ませた。
「今の内に攻撃をしたら倒せるよ!」
そう言うと、ティアは立ち上がってモンスターに攻撃をした。
「はあっ!」
ティアが渾身の力を振り絞って剣を振るいモンスターを倒した。
「良かったな・・・無事に倒せられて・・・」
双剣を戻しながらもギルバートが言うと、ティアは攻撃をしなかった事について訊ねた。
「ギル、どうして、攻撃をしなかったの?あの瞬間なら、倒す事ができたはずよ?」
「悪ぃ・・・攻撃をするのが遅れちまって・・・相手は炎属性だっただろ?アランが水属性の魔法を唱えたからなんとかなっただろ・・・?」
ギルバートはなにかを隠していそうな様子でそう言ってきた。
「・・・でも、いつもなら素早く動いて攻撃を仕掛けているのに、すぐに動かなかったなんて・・・なんだか、ギルらしくないよ?」
アランに指摘されたギルバートは沈黙が入ってから「・・・分かったよ。」と食い気味に返事をしてきた。
「・・・気を取り直して、先に進むとしよう。」
それからもティア達は火山の中を進み続けた。
「ここを渡れば、向こうに辿り着けそうだな・・・」
先へと進んで行くと、ティア達は溶岩が流れている川の前に着いた。
「火山の中でも火山が流れています。」
下を眺めてみると、火山地帯でも見た溶岩が流れており、その上には岩の橋が架かっていた。
「幸い、上の方は渡れそうだけど・・・ここを通らないと先に進め無さそうだよ・・・」
「あの橋を渡れば、普通に渡れそうだ・・・何事もなければいいのだが・・・」
ヘイゼルが心配に思いながらもティア達は橋を渡り始めた。
「ちゃんと普通に渡れるけど・・・なんだか、溶岩の中からモンスターが出てきそうな気がしてくるよ・・・」
橋を渡っている途中でイヴがそう思っていた矢先に溶岩の中からなにかが両側に飛び出してきた。
「・・・私達が通るのを見て、モンスターが潜んでいたな・・・」
溶岩の中から飛び出してきたのは下半身が溶岩のように光る鱗を持つ人魚のモンスターだった。
「コイツ等はラーメイドのようだな・・・」
「ラーメイドは溶岩のある場所に生息しているモンスターだったね・・・しかも、こんな大量に・・・」
両側には、無数のラーメイド達に囲まれていた。
「しかも・・・囲まれていて足場も悪いから・・・戦うのは難しそうね・・・」
橋の両側にはラーメイド達が塞いでいたためにこの場で戦うのは困難だった。
「これは、足元に気を付けながら戦わないといけないみたいだね・・・」
その直後にラーメイド達が一斉に襲いかかってきた。
「皆、あまり動かずに集まって・・・そうしなければ、溶岩に落ちてしまうわ・・・!」
ティア達は集まりながらもモンスター達との戦闘を開始した。
「はあっ!」
「せいっ!」
ティアとイヴは動かないように剣と薙刀を振るって攻撃をしていった。
『ドラゴンボリューム!』
アランは魔法で竜巻を両側に放って、次々とラーメイド達を倒していた。
「この調子で行けば、全て倒せそうだ・・・」
ヘイゼルは攻撃をしながらもギルバートに言った。
「・・・そうだな。」
ギルバートはなにやら浮かない表情で返事をすると、ラーメイドの群れが一斉に彼に向けて襲いかかってきた。
「ギルバート!」
ヘイゼルが叫ぶと、ギルバートは我に返ってとっさに避けた。
「きゃあ!」
避けた拍子にぶつかったティアが橋から落ちてしまった。
「ティア!」
イヴがとっさに腕を掴んだ事でティアは溶岩の中に落ちずに済んだ。
「イヴ、助かったわ。」
ティアを引き上げると同時に、モンスターを全て倒し終える事ができていた。
「もう、モンスター達は倒したから、先に進められるよ。」
アランがそう言うと、イヴがギルバートを睨みつけてきた。
「・・・ギル、さっきの事だけど・・・貴方がティアとぶつかったせいで落ちそうになったよ・・・?」
イヴは危うくティアが落ちそうになってしまった事を叱ってきた。
「悪かったよ・・・でも、倒したから別にいいだろ?」
「そう言う問題じゃ・・・ティアにも謝っていた方がいいよ?」
イヴの発言を聞いたティアが言ってきた。
「いいの・・・ギルだって、わざとぶつかった訳でもないわ・・・」
「でも・・・ギル、今度は気を付けて戦ってよね?」
「・・・分かったよ。」
イヴは不服に思いながら言ってきたが、ギルバートはそっぽを向いて答えてきた。
「その様子だと、あまり信じられないけど・・・気を付けてくれるならいいかな・・・」
橋を渡り終えたティア達は先へと進みだした。
94章 化石の眠る場所
しばらく火山の中を進んで行くと、溶岩の熱気が感じにくい場所に着いた。
「なんだか、あまり熱さを感じない場所に着いたね。」
「ここには溶岩が流れていないので熱気が感じられないからであろう・・・」
この中には熱気も無ければ、溶岩も流れてはおらずに涼しそうな場所のようだった。
「そう・・・ここなら、しばらくは休憩が取れそうね・・・」
しばらく休憩ができそうな場所だと思ったティアはこの場で休む事にした。
「やっと、熱くない場所で休む事ができたね・・・あれ?あそこは、なんだろう・・・?」
アランが奥の方に入り口らしき穴が開いている事に気付いた。
「本当・・・あそこになにかがありそうね・・・」
「ちょっと、見てくるから待っていて・・・モンスターの巣かも知れないからね・・・」
奥にある穴の中を確認するために、アランは一人で調査しようと中へと行った。
「・・・アラン、一人で行ったけど、大丈夫かしら・・・?」
「心配するなよ。アイツは仲間に加わるまでは一人で旅をして来たから大丈夫だよ・・・」
ギルバートがそう言った直後に、アランが穴の中から出てきた。
「皆、ちょっと来てよ・・・この中には凄い物を見つける事ができたよ・・・」
アランにそう言われたティア達は穴の中へと入って行った。
「凄い物って・・・なにを見つけたの・・・?」
「いいから・・・君達も来てみれば驚くと思うよ・・・」
そう言われたティア達は穴の中を見て驚きを感じた。
「これは・・・」
「凄いでしょ?これは、大昔からあったらしいよ・・・」
穴の中に入ったティア達が目にしたのは地面や壁に幾つものドラゴンの骨が埋まっている光景だった。
「この骨はドラゴンのように見えますが・・・かなりの昔に白骨化しているみたいに見えます・・・」
部屋中にある骨は大昔の時代に存在しているように思えた。
「アラン、ここに埋まっているのはドラゴンの化石なの?」
ティアが地面と壁に埋まっているドラゴンの骨を見て化石なのかと聞いてきた。
「そうだよ。大昔の時代に生息していたドラゴンが白骨化して化石になった事が考えられるよ・・・」
アランがそう言いながら、あちこちに埋まっている化石を見回してみた。
「化石と言うのは大昔の骨と言う事ですね・・・ここにある化石は元々大昔の時代に生きていたドラゴンが死んで化石になったのですか・・・」
ステラは興味津々に言うと、イヴは化石を見回してみた。
「まぁ・・・そう言う事になるみたいだね?アタシも一人で旅をしていた時に大昔のモンスターの化石が何処かで眠っているって噂で聞いた事があったよ。」
イヴは一人で旅をしていた時に化石についての噂話を耳にした事があった。
「そして・・・僕達がいる場所には沢山の化石がある・・・僕達がこれだけある本物の化石を発見した事が凄いと思わないかな・・・?」
アランがそう言ってくると、ティア達は自分達が大量の化石を発見した事の重大さを理解した。
「・・・そうかも知れないわ。私達は大昔に生きていたドラゴンの化石を発見したと言う事は大きな発見をしたと思えるわね・・・」
「ティアの言うとおりです・・・ここに、化石があると言う事は大昔のドラゴンが
生きていて、どのような生き方をしていたのか想像ができます・・・」
ティアとステラは大昔のドラゴン達が化石になるまではどのように生きてきたのかを想像し始めた。
「確かに・・・ここにある化石達の事を考えてみてみれば・・・大昔に生きていた頃が思い浮かんでくるのかも・・・」
「はい。ガイアや他の星竜族もここに来たら、そのように感じられてくると思います・・・」
星竜族達がここに来た時の反応を想像していると、ギルバートは興味無さそうな態度で言ってきた。
「なぁ・・・そんな事を考えてなんの意味があるんだ?」
「そんな事は言わないでください。化石になる前までは生きていたドラゴンです。」
「そうね・・・大昔に生きていたドラゴンが骨になって、今でも残り続けている姿を見て・・・どのような時代で生きてきたのかが思えてくるはずよ・・・」
ティアとステラには化石を見て、大昔の時代や化石になる前のドラゴン達が生きていた頃はなんだったのかが考えられていた。
「・・・俺はただ化石の価値が分からなかっただけだよ。」
「そうかな?大昔の時代がどんな感じだったのか・・・考えるだけでもいいと思うけど・・・それに、この化石だって綺麗に・・・」
近くにあった一つの化石を見たアランはなにやら異変を感じて近づいた。
「どうかしたのか?」
「いや・・・なんだか、一瞬魔力を感じた気が・・・」
そう言いながら、アランは不審に思いながらも化石を確認しようとした時だった。
「うわっ!」
突如として目の前の化石が動き出して骨のドラゴンになった。
「コイツはボーンラプトゴンだ!」
ボーンラプトゴンは白骨化したラプトゴンだった。
「下がって!」
アランが魔法を唱えた事でボーンラプトゴンを倒した。
「ビックリした・・・まさか、モンスターが紛れ込んでいたなんて・・・」
ボーンラプトゴンはアランの魔法によって体がバラバラになっていた。
「今のモンスターはここだけじゃなく墓地に生息しているって聞いた事があっただろ?」
「そうだったね・・・ボーンラプトゴンは骨が埋まっていそうな場所に生息しているって図鑑で書いてあったけど・・・化石の中に紛れていたみたいだね・・・」
アランはバラバラに砕け散り動かなくなったボーンラプトゴンを見つめた。
「待って・・・お祈りをしてから行きましょう・・・ボーンラプトゴンだって、元は生きていたドラゴンだったはずよ・・・」
「私もお祈りをします。」
ティアとステラはバラバラに砕け散ったボーンラプトゴンの前に立ち祈り始めた。
「・・・アタシ達も祈りましょうか・・・ここにある化石の分も・・・」
イヴが、そう言うとアランとヘイゼルも同様に祈り始めた。
「・・・俺達も祈ってみるか・・・」
残ったギルバート達もティア達が祈っているのを見て自分も祈り始めた。
95章 溶岩の川を越えて
化石のある部屋を出た後で進んで行くと、大きな溶岩の川が流れている場所に辿り着いた。
「今度は広い溶岩の川に着いたな・・・進む道も見当たらないと言う事は・・・この川を越えなくちゃいけないのか・・・」
ギルバートはそう言って、溶岩の川の流れを見て長く続いているのを見た。
「どうやら、他に渡る道は見当たらないようだ・・・引き返して別の場所を探すか?」
「でも・・・ここに来るまで、他の道はなかったはずよ・・・もしかしたら、ここを渡って行けば、光翼の涙がある場所に辿り着けるのかも知れないわ・・・」
ティアはそう言いながら川の流れを確認してみた。
「ティア、ここからだと光翼の涙の光を感じられない?」
イヴにそう聞かれたティアは光が感じられないか試す事にした。
「・・・やってみるわ。」
ティアは光翼の涙が感じ取れるか確かめてみた。
「どう?なにか、感じられた・・・?」
「えぇ・・・微かだけど、この川の流れる方角から光翼の涙の光が感じられたわ。」
光翼の涙は感じ取られたが、溶岩の川を渡って行く事は不可能だった。
「・・・でも川を渡らないと無理みたいじゃない?」
しかし、溶岩の川を渡る方法がなければ、光翼の涙を感じ取った意味がなかった。
「溶岩の川を渡って行く方法はなにかあればいいのだけれど・・・」
周りを見回しても、川を渡る方法がなにもなかった。
「仮に船があったとしてもすぐに沈みそうだし・・・渡れる方法がなかったら引き返して他の道を探した方がいいのかな・・・?」
「岩でできた船でも無い限りは渡れるのかも知れないが・・・岩を削って船を造れたとしても渡り切るまで溶岩に耐えられるかどうか分からないぞ?」
岩でできた船があっても溶岩の川を渡る事は不可能だと考えた。
「・・・引き返して、別の道を探し見るしかなさそうだな・・・」
「マジかよ?ここに来るまで色々と見ていたが、他に通れそうな所は何処にも見当たらなかったぞ?」
ここまで来た道のりを思い出してみると、他に通行が可能な所は一つも見当たらなかった。
「・・・やっぱり、ガイアに頼んで転移魔法で光翼の涙がある場所に転移させてもらったら方が良かったと思いませんか・・・?」
ステラがそう思って言うと、イヴも同じような事を言ってきた。
「そうだね。今、思ったけど・・・最初からガイアに頼んでおいた方が良かったんじゃないのかな・・・?」
イヴにもそのように言われて、ステラも初めからそうすれば良かったと思えてきた。
「そうでした・・・火山の中に入る前にガイアに頼むべきでしたね・・・」
「いつも、普通に光翼の涙がある場所まで自力で向かっていたから、その事は考えてはいなかったわ・・・一度、火山から出てからガイアに相談してみましょう・・・」
そう思って言うと、ギルバートは考えてから言ってきた。
「・・・ガイアの転移魔法なら、光翼の涙がある場所まで転移させてくれたのかも知れないな・・・だけど、また同じ道を引き返さなければならないのに時間がかかるんじゃないのかも知れないぞ・・・?」
ギルバートは時間がかかると言ってくると、アランは安心した様子で答えた。
「大丈夫だよ。魔力も残っているし、ワープベルも持っているから危なくなったらいつでも脱出できるからね。」
そう言いながら、アランはワープベルを取り出そうとした時だった。
「あっ・・・!」
突如として、ギルバートがぶつかってきた事でアランの手にしていたワープベルが溶岩の川へと落ちてしまった。
「ギル・・・一体なにを・・・?」
「悪いな・・・ちょっと足を引っ掛けちまった・・・」
ギルバートが謝罪したが、ヘイゼルはその様子がおかしいと思えた。
(・・・どう見ても、自然と足を引っかけるような足場ではないと思うのだが・・・もしや、ギルバートは分かっていてやった事なのだろうか・・・?)
今の行動を見ていたヘイゼルはギルバートがワザと足を引っかけてぶつかったようにしか見えなかった。
「それで、ワープベルはもうないのか?」
「そうだよ・・・まぁ、僕の魔法でも脱出できるからいいけど・・・」
アランがそう答えると、ギルバートが止めるように言ってきた。
「ちょっと待てよ・・・ここで、火山を脱出してガイアに頼んでも光翼の涙がある場所まで転移できる事は期待しない方がいいんじゃないのか・・・?」
突如として、ギルバートがガイアに頼み込む事を阻止しようとしてきた。
「ギル、ガイアは火山に光翼の涙がある事を教えてくれました。光翼の涙が隠されている場所を知っていると言う事はガイアも私達がデスドゥンケルハイト軍を倒してくれる事を願ってくれているからだと思います・・・」
ギルバートがガイアの事を信じていないように見えたステラが言ってきた。
「・・・なんで、そう言い切れるんだ?」
「ガイアは星竜族です。人間達が困っている様子を見過ごす訳がありません。」
ステラはガイアを信じているようで彼を疑う事は一切なかった。
「・・・分かったよ。」
不服そうに思いながらもギルバートは納得をした。
「・・・だったら、ここを渡れるモンスターに乗ってみたらどうだ?」
「確かに・・・ですが、この中にそのようなモンスターがいるのでしょうか?」
ステラがそう言うと、溶岩の川からなにかが流れ着いてきた。
「これは、都合よくモンスターが現れたようだな・・・」
溶岩の川から、流れ着いてきたのは巨大で溶岩に耐性がありそうなモンスターだった。
「ねぇ、このモンスターの背中に乗って、向こう側に渡れないのかな?」
「コイツが言う事を聞くようには思わない方がいいぞ・・・渡っている途中で振り落とされるのが目に見ているぞ・・・」
ティア達はモンスターに近づいてみると、モンスターは襲いかかるつもりはないようだった。
「・・・大丈夫よ。このモンスターは私達を襲う気はなくて、ここで一休みをしてからまた溶岩の川を下りそうよ・・・」
モンスターはティア達を襲うつもりはなく、ただ一休みをしているだけだった。
「しばらくしてからモンスターに乗りましょう・・・私達が乗っても振り落とす気もないように見えるわ・・・」
ティア達は休憩を終えてからモンスターの背中に乗る事にした。
(・・・さっきの行動と言い・・・ギルバートはなにかを隠しているように見える・・・)
これまでの様子を見ていたヘイゼルはギルバートが怪しいと感じていた。
「モンスターの方も休憩が終わったから、私達はその背中に乗って川を渡りましょう。」
しばらく、休憩を取った後でティア達はモンスターの背に乗るとそのまま溶岩の川を流れるように下り始めた。
96章 溶岩の川を下る戦闘
モンスターに乗ったティア達は順調に溶岩の川を下っていた。
「この調子で進んで行けば、光翼の涙がある場所に辿り着けそうだな・・・」
「えぇ・・・光翼の涙に近付いている事が感じられてくるわ・・・」
ティアは光翼の涙がある場所まで近づいて来ているのが感じられていた。
「このまま乗っていれば、着きそうだからそれまではゆっくりできるね・・・」
モンスターはゆっくりと溶岩の川を下り続けた。
「それにしても、コイツは遅いな・・・向こうに着くまで退屈だぜ・・・」
溶岩の川に流されながらもモンスターはティア達を乗せてゆっくりと下っていた。
「ゆっくりしているので、しばらく時間がかかると思いますよ。」
「分かっているよ・・・それじゃあ、向こうに着くまでのんびりしようぜ・・・」
「そうだね・・・しばらく、ゆっくりしていようか・・・」
退屈そうにしているギルバートを見て、アランがそう言った途端に溶岩の中からモンスターが飛び出してきた。
「どうやら・・・ゆっくりしている暇はなないみたいだよ・・・」
溶岩の川から、飛び出して背中の上に上がって来たモンスター達は先程戦ったのと同じラーメイドの群れだった。
「また、ラーメイドか・・・」
「今度は狭い橋じゃなくてモンスターの上だから安心は・・・できなさそうだね・・・」
今いる場所は巨大なモンスターの上で周りは溶岩の川で落ちたら命を落とす状況で戦うしかなかった。
「万が一、転んで溶岩に落ちてしまわないように気を付けた方がいいね・・・」
ティア達が武器を手に取った直後に、ラーメイド達が一斉に襲いかかってきた。
「足場はさっきよりマシになったけど・・・気を付けた方がいいよ・・・!」
今いる場所がモンスターの背中なので、溶岩に落ちないようにしながら戦う事を決めた。
「アランはステラと同じで魔法を使えるからお前等は動かずないで済むな・・・!」
ギルバートは双剣を振るいながら魔法の詠唱を唱えているステラとアランを見た。
「後ろだ!」
ヘイゼルの声が聞こえると、ギルバートの背後に三匹のラーメイドが攻撃を仕掛けようとしてきた。
「これでどう?」
イヴは雨が激しく降り注ぐように薙刀で突いた事で三匹まとめて倒した。
「余所見は禁物だよ。」
「悪ぃ・・・助かった・・・」
ギルバートは申し訳なさそうにイヴに謝った。
「余所見をしている暇があったら攻撃をして。」
「分かっているよ・・・そんな事は・・・」
ギルバートは気を取り直して技を繰り出した。
『天竜翼波!』
素早い攻撃が得意なギルバートはその場で天空にいる竜の竜翼から裂けるような斬波を放った。
『ヒーリラ!』
杖を振るったステラが回復魔法を唱えてティア達は回復させた。
「この調子で行けば倒せそうだ・・・このまま、一気に行くぞ!」
ティア達は次々と溶岩の中から飛び出してくるラーメイド達を倒していった。
「ようやく・・・光翼の涙がある場所まで着きそうだな・・・」
しばらく、ラーメイドと戦っている内にモンスターは向こう岸に辿り着こうとしていた。
「光翼の涙が近くにあるわ・・・この先から感じられてくるの・・・」
ティアが光翼の涙の光を感じていると、モンスターは溶岩の川から出て陸へと上がった。
「ありがとう。貴方の御蔭でここまで辿り着く事はできたわ。」
ティアがお礼を言うと、モンスターはゆっくりと去って行った。
「奥の方から光翼の涙が感じられてくるわ・・・行きましょう。」
そう言って、ティア達は奥へと進んで行くと、溶岩の湖が広がっていた。
「どうやら噴火口の中らしいな・・・」
ギルバートが頭上を見上げると、噴火口の中だと言う事が分かった。
「ガイアが火山口から入らなかったのも噴火する可能性もあったからなのね・・・」
ティアがガイアもそう考えていたのだと察すると、目の前に光翼の涙がある場所に指を差した。
「見て・・・六つ目の光翼の涙があるわ・・・」
溶岩の湖の奥に足場があり、その中心に光翼の涙が浮んでいた。
「そこに光翼の涙があるのに・・・溶岩があるから向こうには行けないわ・・・」
「溶岩の上を飛んで行かなければいけませんね・・・ガイアがいれば私達を向こう側に連れて行ってくれると思います・・・」
ティア達は奥の島にある光翼の涙を見つめている時だった。
「なんだ・・・?」
徐々に地響きが聞こえてきて、地面も徐々に揺れ始めた。
「この揺れは・・・まさか、火山が噴火しようとしているのか・・・!」
ティア達はなんとか堪えようとすると、溶岩の中からなにかが飛び出してきた。
「噴火じゃなくて、モンスターが潜んでいたようね・・・!」
溶岩の中から、出てきたモンスターは体に燃えている部分がある巨大な獣のモンスターだった。
「このモンスターは・・・もしかして、マグマグルス・・・?」
ステラが溶岩の中から出てきたモンスターを見てそう言ってきた。
「マグマグルスって・・・本当にいたの・・・てっきり、伝説かと思っていたけど・・・まさか本当にいたなんて・・・」
「これは、大変な戦いになるのかも・・・」
マグマグルスは伝説として語られているモンスターだった。
「聞いた事があるよ・・・火山の噴火は、マグマグルスが引き起こしているのかも知れないって本で読んだ事があるよ・・・」
アランがイヴにそう言っていると、マグマグルスはティア達を見てから遠吠えを挙げてきた。
「どうやら、私達を敵だと判断したようだな・・・」
ヘイゼルがそう言うと、ティアが前に出て戦闘を止めようとマグマグルスに声をかけた。
「待って・・・貴方と戦う気はないわ・・・あそこにある、光翼の涙を手に入れるためにここへ来ただけなの・・・」
しかし、マグマグルスはこちらを睨みつけてきた。
「マグマグルスは好戦的な性格をしているから、誰かがやって来たらすぐに襲って来るからな・・・気を付けろよ。」
「・・・気を引き締めないと、やられてしまう事は分かっているよ・・・これまでのモンスターだって、油断しないで戦ってきたから大丈夫だから・・・」
ティアだけでなく、ステラ達も理解していて気を引き締めながら武器を手にしていた。
「・・・それじゃあ、戦うとしますかね・・・」
ギルバートも双剣を構えると、マグマグルスが溶岩の中から上がってきた。
「ティア・・・コイツはナナクビノリュウよりも強いと思うから気を付けろよ・・・」
「えぇ・・・」
マグマグルスはティア達に向かって攻撃を仕掛け始めてきた。
「・・・奴等は、マグマグルスと戦い始めている頃だな・・・」
同じ頃、火山の付近では何者かが火山中にいるティア達の状況を見下ろしていた。
「さてと・・・あまり、待たせては悪いからな・・・この戦いが終わったらやるとするか・・・」
そう呟いてから、何者かが何処かへと向かって行った。
97章 マグマグルス
ティア達はマグマグルスと戦い続けていたが苦戦を強いられていた。
「コイツ・・・ナナクビノリュウよりも手強すぎるぞ・・・」
マグマグルスは以前に戦ったナナクビノリュウよりも強敵だった。
「しかも、コイツの炎は強力すぎるから近づいただけでも焼けてしまうぞ・・・」
「マグマグルスの炎は近くに寄るだけで大火傷を負ってしまうぐらいの熱さだって図鑑で読んだ事があったよ・・・」
アランは図鑑にはそのように書いてあった事を思い出していると、マグマグルスが炎を吐いてきた。
「そんな事を思っている暇があったらお前も魔法を唱えろよ・・・」
ギルバートがマグマグルスの吐いた炎を避けながら言うとアランは魔法を唱えた。
『スパボルオン!』
アランは魔法で電撃を当てたが、マグマグルスはビクともしていなかった。
「あまり効いていないみたいだね・・・」
「次は水属性の魔法を唱えてみたらどうでしょうか?」
「それもそうだけど・・・マグマグルスの炎が強いからか、さっき水属性の魔法を当てても全然効いてないように見えたよ・・・」
アランはつい先ほど水属性の魔法を唱えたが、マグマグルスは効いている様子はないように見えた。
「そうですか・・・一体、どうすればいいのでしょうか・・・」
ステラはそう思いながらもティア達に支援魔法をかけた。
「ちゃんと攻撃を当てているのに・・・全く、倒れる気配がないみたいだね・・・」
炎を吐くタイミングを見計らって攻撃をしていた。
「ステラの支援魔法をかけてもらっても苦戦をしているなんて・・・」
「あぁ・・・いくらなんでもコイツは強すぎるぞ・・・」
「だけど、僕達が戦わないと光翼の涙は手に入れる事はできないよ・・・」
「分かっているさ・・・アイツにやられたら、俺達はここで焼け死ぬ事になっちまうからな・・・」
そう言って、ギルバートはマグマグルスの吐いた炎を避けてから攻撃を仕掛けた。
「僕も頑張らなくちゃ・・・ギルも協力して・・・」
アランはマグマグルスの元へ近づきながらも魔法の詠唱を唱えだした。
「・・・いくら攻撃をしてもなんともないなんて・・・」
マグマグルスと戦い続けていたが、ティア達の方が圧倒されていた。
「やっぱり・・・火山があるからこんなに強くいられるから・・・溶岩や熱気がアイツにとっては相性がいいから能力も上がったのかもしれないな・・・」
「ギル、本当なの?」
ギルバートの呟きが聞こえていたのかティアが訊ねてきた。
「いや・・・なんでもねぇから忘れてくれ・・・」
そう言って、ギルバートは誤魔化すかのようにそっぽを向いた。
「教えて・・・貴方はこの状況を乗り切れる方法を言っていたはずよ。」
詳しく教えてもらおうとするティア達にギルバートは彼女に教える事を決めた。
「・・・と言う訳で溶岩と熱気があるから強いと思ったんだ。」
「それはマグマグルスが強い理由だったと言うのね?」
「まぁ・・・そう言う事になるよな・・・なんとか、冷やしてやればなんとなるかも知れないだろうな・・・」
ギルバートの言葉を聞いたティアはある事を思い付いた。
「分かったわ・・・火山の溶岩と熱気はマグマグルスにとっては相性がいいから歯が立たないぐらいに強くなっていると言うのね・・・?」
戦っている場所は火山口の中なので、マグマグルスにとっては好都合な状況のようだった。
「溶岩と熱気がなくなれば、マグマグルスが弱体化するかも知れないぞ・・・」
「でも・・・ただでさえ暑い場所にいるのに、仮に溶岩を冷やそうとしても効果がないんじゃないの?」
イヴが周りの溶岩を見て不可能だと言ってきた。
「大丈夫・・・ステラがアランに魔力を上昇させる支援魔法をかけた状態で水や氷の魔法で溶岩を冷やしていけば熱気も下がっていく事で溶岩も凍るはずよ。」
「でも、支援魔法をかけている途中で、マグマグルスが襲いかかって来ます?」
ステラは支援魔法をアランにかけている最中にマグマグルスが襲いかかって来るかも知れないと言ってきた。
「大丈夫よ。私達が囮になっている間にステラは支援魔法をかけながらアランは魔法で溶岩を冷やし続けていれば、溶岩を凍らせる事ができると思うわ・・・それまでは、貴方の支援魔法でアランの魔力を上昇させて・・・」
「なにを勝手に・・・こんなに暑いのに無理・・・」
ギルバートは無理だと言おうとしたが、ステラは決意をした表情で言ってきた。
「分かりました・・・アラン、支援魔法をかけますので溶岩を冷やしてください。」」
そう言って、ステラは魔力を上昇させる支援魔法をアランにかけ始めた。
「私達は溶岩が冷えるまでは耐えきりましょう。」
ティアはエレノアの力で羽を生やし、ギルバート達と共に時間稼ぎを行う事となった。
「アタシ達はステラとアランの方に行かないようにしながら戦わなくちゃ・・・」
「あぁ・・・俺もそうするよ・・・」
ティア達はマグマグルスの気を逸らそうと、ステラとアランを気にしながら戦い始めた。
「魔力を上昇させます・・・」
目の前にいるティア達が囮になってくれたのを見て、ステラは魔力を上昇させる支援魔法をアランにかけ始めた。
「いいか?限界まで上昇したら魔法で溶岩を冷やせよ?」
「分かっているよ・・・僕も一生懸命に魔法を唱えているから・・・」
アランがそう言った矢先にマグマグルスの炎がこちらに迫ってきた。
「来たぞ!」
ギルバートが叫ぶと、ステラとアランは炎を避けてから、ステラは引き続き支援魔法をアランにかけ続けた。
「その調子だ・・・溶岩と熱気をどうにかすれば、マグマグルスを倒す事ができるぞ・・・」
ギルバートは、アランの様子を疑いながら、マグマグルスの囮になっている
ティア達を見つめた。
(・・・マグマグルスを倒したら、六つ目の光翼の涙を手に入れちまう・・・そうなったら俺は・・・!)
ギルバートはなぜか光翼の涙を手に入れる事に反対的だった。
「ギル、限界までアランの魔力を限界まで上げました・・・!」
その直後、ステラの支援魔法によって、アランの魔力が限界まで上昇していた。
「それじゃあ、魔法を唱えるよ・・・!」
魔導書を開いたアランは、溶岩に向けて魔法を唱えた。
『フリニヴェ!』
アランは溶岩に目掛けて氷の魔法を唱え始めた。
「・・・やっぱ、氷じゃ溶岩を固まらせる事ができないな・・・」
ギルバートは残念そうに言ったが、ステラは熱気に異変を感じた。
「見てください・・・徐々に冷えてきています・・・」
魔力を上昇させる支援魔法をかけられたアランの魔法によって、溶岩は凍らせる事ができなかったが冷えていく事で溶岩の熱が下がっていった。
「魔力を上昇させた氷の魔法を唱えたから溶岩が冷えているみたいだな・・・」
「これだけ熱が下がったら、もう一度同じ魔法を唱えれば・・・」
そう言って、アランは再度溶岩に向けて氷の魔法を唱えた。
『フリニヴェ!』
アランが再び氷の魔法を唱え続けてみた事によって、溶岩は完全に凍り付いた。
「この調子でいけば・・・!」
その時、熱気が下がっている事に気付いたマグマグルスはアランに向けて炎を吐いてきた。
「それは、想定済みだよ・・・」
アランは炎に目掛けて氷の魔法を放って炎を凍らせた。
「凄い・・・魔法でマグマグルスの炎を凍らせてしまいました・・・」
「君が支援魔法をかけてくれた御蔭だよ・・・炎と相性の悪い氷でも魔力を上昇させていれば、溶岩やマグマグルスの炎でも凍らせる事ができるからね・・・」
そして、アランの魔法によって溶岩は完全に凍りつかせた。
「溶岩を凍らせたよ・・・後はマグマグルスを倒すだけだよ・・・」
「はい・・・私達も加勢しましょう・・・」
ステラとアランはティア達の戦闘に加わろうとすると、ギルバートは戦闘を止めて距離を取っていた。
「ギル・・・どうかしましたか?」
「悪いな・・・少し休ませてくれ・・・」
「もしかして、何処かが痛むのですか?」
ステラは心配して言ったが、ギルバートが拒むように言ってきた。
「気にするなよ・・・少し、休んでいるから皆と一緒に戦っていてくれ・・・」
「だけど、ステラに回復魔法をかけてもらった方がいいと思うけど?」
「いや・・・それよりもアイツ等の戦闘に加わってくれ・・・たいした傷じゃねぇから気にしないでくれ・・・」
そう言って、ギルバートが戦闘から離脱した代わりにステラとアランがティア達の戦闘に加わった。
「皆、加勢に来たよ!」
二人が駆けつけると、ステラは杖を振るって回復魔法を唱えた。
『ヒーリラ!』
ステラが回復魔法を唱えた事で、ティア達の傷は完全に回復した。
「溶岩が凍った事で能力が落ちてきているな・・・」
周りの溶岩が凍って熱気がなくなったのか、マグマグルスの能力が低下していた。
「これなら倒せそう・・・本気で行くよ・・・」
ティア達は好機だと悟って反撃を開始した。
「せいっ!」
「はあっ!」
ティアとイヴはマグマグルスに攻撃を続けた。
「この調子なら、倒せそうだ・・・!」
そして、詠唱を終えていたアランは魔法を唱えた。
『アクア・トライデント!』
アランが魔法を唱えると、無数の三叉槍が彼の周りに出現した。
「これは、ただの槍じゃないよ・・・」
そう言うと、三叉槍がマグマグルスに向けて放たれて命中していった。
「水属性の効果があるから、油断は大敵だよ。」
アランの魔法で怯んだマグマグルスに向けてティアが攻撃を仕掛けた。
「「はあっ!」」
ティアが攻撃をした事によってマグマグルスは倒れた。
98章 ギルバートの正体
「無事にマグマグルスを倒したようだな・・・まだ、息はあるがしばらくすれば目を覚ますであろう・・・その前にここから出ればいいだけの事だ・・・」
ヘイゼルは、そう言いながらマグマグルスが気を失っている事を確認した。
「後は凍った溶岩を歩いて光翼の涙を手に入れるだけね・・・そう言えば、ギルは何処に行ったのかな・・・?」
「ギルなら、あそこで休んで・・・」
しかし、そこにいたギルバートは、いつの間にかいなくなっていた。
「あれ?何処に行ったんだろう・・・さっきまで、あそこにいたはずだけど・・・?」
辺りを見回しても、ギルバートは何処にもいなかった。
「いつの間にいなくなってしまったのでしょうか?」
「とにかく、光翼の涙を手に入れてからギルを探した方がいいね。」
ティア達は凍りついた溶岩の上を歩いて光翼の涙がある場所へと着いた。
「これで六つ目ね・・・」
ティアは光翼の涙の前に立ち、手に触れようとし時だった。
「もう、マグマグルスを倒したのか・・・」
後ろから声が聞こえて振り向くと、いつの間にかギルバートが戻って来ていた。
「ギル・・・マグマグルスと戦っている間にいなくなっていたから心配していたわ・・・」
「あぁ・・・ちょっとな・・・それよりも、さっさと光翼の涙を手に入れてここから出ようぜ?」
ギルバートがなにやら焦っているような様子で言ってきた。
「ギル?なんだか、落ち着いていないように見えますよ?」
ステラは落ち着かない様子のギルバートに聞いてきた。
「ちょっとな・・・ティア・・・さっさと、手に入れてくれないか・・・?」
ティアはギルバートに言われたとおりに光翼の涙を手に触れた。
「これで・・・残り二つ・・・」
光翼の涙がティアの周りを回っているのを見てギルバートは呟き出した。
「・・・言われた通りにやるか・・・」
光翼の涙がティアに吸収されようとした直後にギルバートが双剣を抜いてきた。
「ギル・・・なんで、双剣を抜いて・・・?」
アランは聞いたが、ギルバートはなにも言わずに近付いてきた。
「・・・悪く思うな。」
その直後、ギルバートがティアに向けて駆け出した。
「えっ・・・?」
光翼の涙がティアに吸収された直後に、ギルバートが攻撃を仕掛けようとしている事に気が付いた。
「きゃあ!」
ティアは状況が飲み込めずに攻撃を受けてしまった。
「ギル・・・どうして・・・?」
ギルバートの攻撃によって、ティアは負傷を負ってしまった。
「悪いな・・・ここで、死んでくれよ・・・」
「なぜ、このような事を・・・?」
ティアは負傷を負ったのにもかかわらず、ギルバートの言っている事が理解できずにいた。
「アイツに言われたんだよ・・・光翼の涙を手に入れてから殺せって・・・」
そう言うと、アランはスラムでギルバートが何者かと話していた時の事を思い出した。
「まさか、あの時に話していた相手は・・・!」
アランは目の前で起きている状況を見て理解した。
「・・・今、起きている事を実行するためだった・・・?」
「アラン・・・やっぱり、聞いていたのかよ・・・まぁ、ここで全員殺すから口封じをする必要もないか・・・」
「殺すとは・・・もしや、私達を殺すつもりと言う事なのか・・・?」
双剣を構えたギルバートから、殺気を放っているのが感じられた。
「・・・まさか、ギルと戦わなくてはならないの・・・?」
ティアが動揺をしていると、何者かがギルバートの後ろに現れた。
「お前は・・・!」
彼の後ろに現れてきたのは、デスドゥンケルハイト軍の暗殺部隊だった。
「暗殺部隊!どうして、ここに!」
「アンタ達に構っている暇はないの!」
その時、ギルバートの目の前に何者かが現れた。
「なんだ・・・まだ始末していなかったか・・・」
そこに現れたのは以前、ヘイゼルを暗殺しようとしては雪山でティア達を殺そうとしたアイザックだった。
「てっきり、覚悟を決めて殺していると思ったんだが・・・その様子だと、ソイツを始末するのに失敗したみたいだな・・・」
アイザックがティアを見て、不機嫌な態度でギルバートに言ってきた。
「・・・ちゃんと殺すつもりでやろうとしたが・・・ミスっちまって・・・」
「嘘だな・・・本当はこの娘を殺す事に迷いでも生じたのは見ていたぞ・・・」
アイザックがギルバートを睨みつけた。
「ギル・・・どうして、アイザックと会話をしているの・・・?」
ティアが恐る恐るアイザックとの関係を聞き出そうとすると、ギルバートはアイザックの方を見てから言ってきた。
「・・・もう、隠さない方がいいな・・・デスドゥンケルハイト軍暗殺部隊のリーダーアイザックの息子で俺もデスドゥンケルハイト軍の一員ギルバート・ノクティメントハートだ・・・」
悲しげな表情をしながらギルバートがティアにそう告げてきた。
「アイザックが・・・ギルの父親・・・?」
「あぁ・・・俺の戦い方も父さんであるアイザックに鍛えられたからだ・・・戦い方も似てなかったと思わなかったか・・・?」
これまでのギルバートの戦い方を思い出してみると、戦術に身軽な動き方は暗殺部隊と同じだと言う事に気が付いた。
「確かに・・・ギルの戦い方は素早い動きで双剣を使っていたから、戦い方も暗殺部隊やアイザックに似ていたわ・・・」
「以前から薄々と感づいていたが・・・暗殺部隊やアイザックと似ていると思いきや、まさかリーダーの息子だったとは思いもしなかったぞ・・・」
「あぁ・・・暗殺部隊の奴等しか知らされていないからな・・・」
アイザックとギルバートとの親子関係がある事は暗殺部隊にしか知らされてはいなかった。
「嘘でしょ・・・アイザックが、貴方のお父さんだなんて・・・」
すると、ティアはギルバートの正体が信じられずにいた。
「ヘイゼルはデスドゥンケルハイト軍にいた時にギルと会っていなかったの?」
「あぁ・・・私のいた部隊は、暗殺部隊とは別の部隊だったから、関わる事が
全くなかったのだ・・・ギルバートもデスドゥンケルハイト軍にいた事すら知らなかったぞ・・・」
ヘイゼルが所属していた部隊は暗殺部隊とは関わりのない部隊だったために、ギルバートが暗殺部隊に所属している事は知らなかった。
「暗殺部隊は他の部隊との関わりが全くないからな・・・どんな人物が所属しているのか知らされていないから気付かなかっただろ・・・」
アイザックがヘイゼルだけでなくティア達に向けて言っていた。
「・・・お前達、ソイツ等は任せた・・・俺はギルバートとコイツを殺しておく必要があるからな・・・」
アイザックがそう言うと、暗殺者達がステラ達に襲いかかってきた。
「ギルバート、俺達は少女を殺すぞ。」
「・・・」
ギルバートとアイザックはティアを始末しようと動き出した。
99章 ギルバートの真相
ステラ達は武器を手に取り、暗殺者達と戦い始めた。
「来た・・・ティアを助けなくちゃいけないのに・・・!」
暗殺者達が襲いかかって来る事でティアを助けには行けなかった。
「・・・アイツ等が戦っている間にコイツを殺すぞ・・・」
「あっ・・・あぁ・・・」
そう言って、アイザックはギルバートと同じ双剣を抜き構えた。
「ギル・・・貴方は私の話を聞いて光翼の涙を集めてデスドゥンケルハイト軍を倒すために協力をしてくれたのに・・・本当に私を殺すつもりなの・・・?」
ティアは未だにギルバートがデスドゥンケルハイト軍の暗殺者でアイザックの父親だと言う事が受け入れられずにいた。
「・・・任務を実行するために一緒にいただけだ・・・」
「任務って・・・?」
「だったら、冥土の土産に教えてやるか・・・何故、コイツがお前達と一緒に旅をしていた理由を話してやろう・・・」
アイザックが冥土の土産と証して話してきた。
「待ってくれ・・・別にそんな事を話さなくてもいいだろ?」
「なにを言っている?もう、お前の任務は終わっているぞ・・・別にこの場で言ってから殺しても問題ないだろ?」
そう言って、アイザックはギルバートの任務ついて話し始めた。
「・・・まずは、ギルバートに与えられた任務だが・・・ソルが兵士を引き連れて滅ぼした村に生き残りがいないか向かわせてみた結果・・・モンスターと戦っていた最中に偶然、お前と出会ったと報告が来たから・・・ソイツを殺すように命令をされていた・・・」
ティアが旅を始めたばかりの時にギルバートが、ロングリザードと戦っている時の事を思い出した。
「お前の住んでいた村に向かう途中で、ロングリザードと遭遇してしまったが・・・そこで、お前が現れたと言う事だ・・・その後でギルバートに持たせていた端末を使ってエレノアの血を引いた少女と出会ったと報告して来たぞ・・・」
ギルバートが持っていた端末の機械を取り出して見せた。
「その後はお前を殺すために同行させていたが・・・ギルバートは一向に殺そうとしないで、それどころか光翼の涙を手に入れるのに協力しているなんて思わなかったぞ・・・」
そう言いながらアイザックは、ギルバートの方に怒りを露わにしていた。
「そんな・・・本当は私を殺すつもりで連いて来ていた・・・でも、これまでも一緒に旅をして来たのに・・・私を殺す事なんて一度もそんな事はなかったわ・・・」
ティアはこれまでギルバートと一緒に旅をして来た事を振り返ってみて、ギルバートが自分を殺そうとしていた事すら一度も思ってもみなかった。
「それって、私が村を滅ぼされた事やソルに両親を殺された事を話したからなの?」
ティアがギルバートと出会った時に、自分の素性を話した時の事だと思った。
「そう言う事だ・・・コイツはお前の話しを聞いたのか同情してしまっていて・・・コイツの任務はお前を殺していない事や光翼の涙が奪われるのを阻止する事ができなかった事を報告するばかりだ・・・なのに、ギルバートはお前を殺そうともしないで・・・あの時、息子に任務を与えた結果がこれだ・・・ギルバートは、こうなるまでお前を殺そうとしなかったからな・・・」
アイザックがそう話してくると、ギルバートは俯いたままなにも喋らなくなった。
「ほらなっ・・・やっぱり、コイツはお前を殺せないんだ・・・任務のために同行をしていたとはいえ・・・仲間達と出会って光翼の涙を手に入れるのに協力までもしたせいで・・・何度、ダークタナトス様にお叱りになった事か・・・」
アイザックの話を聞いていたティアはギルバートを見つめた。
「・・・」
しかし、ギルバートは俯いたままそっぽを向いた。
「お前はもういいぞ・・・コイツは俺が殺すからな・・・引っ込んでいろ・・・」
アイザックがそう言うと、ギルバートは大人しく後ろへと下がった。
「それじゃあ、そろそろお前を殺させてもらうぞ・・・」
そう言って、アイザックは双剣を手にしてティアの前に近づいた。
「マズい・・・ティアが殺されそうだよ・・・!」
急いで助けに行きたがったが、未だに暗殺者達と戦っていた。
「このままじゃ、ティアが・・・!」
「だが・・・これだけの数だと、本当にティアを殺すつもりだろう・・・」
暗殺者たちの数が多すぎて、ティアを助けには行けなかった。
「よく見ていろ・・・エレノアの末裔の最後を・・・」
そう言いながら、アイザックは双剣を振り上げた。
「・・・」
ティアは先程の話しやギルバートの事について、色々と知った事で呆然としていた。
「終わりだな・・・」
アイザックはそのままティアに斬りかかった。
「待て!」
その時、何処からか声が聞こえてきた。
「この声は・・・」
ステラが上を見上げるとガイアが火山口から入って来た。
「ガイア、ティアを助けてください・・・!」
「あぁ・・・そのつもりで、来たのだからな・・・」
ガイアはステラに返事をすると、ティアの後ろに降り立った。
「・・・なにをしに来た?」
「決まっているだろ・・・ティア達を助けに来たまでだ・・・」
そう言いながら、ガイアは剣を抜き構えた。
「ガイア・・・」
「ここは、私に任せろ・・・」
ガイアがアイザックと距離を取ってから剣を構えた。
「・・・俺とやるって言うのか・・・いいだろう。私達に逆らう気なら、お前でも容赦はしないぞ・・・」
アイザックはそう言った瞬間にガイアに攻撃を仕掛けてきた。
「はあっ!」
ガイアはアイザックの動きを見て剣を振るった。
「・・・ふんっ!」
アイザックは剣で攻撃を防いでからもう一本の剣を振るった。
「くっ・・・!」
そのまま、ガイアはなんとかもう一つの攻撃を防いだ。
「ティア!」
それと同時にステラ達の方も暗殺者達を倒し終えてティアの元に駆けつけた。
「怪我はないか?」
「・・・」
しかし、イヴの言葉にティアは聞いておらず、ギルバートを呆然と見つめているだけだった。
「ティア、大丈夫?」
再び声をかけてみたが、ティアは魂が抜けたような状態になっていた。
「駄目だ・・・ギルバートの事を知ってしまい、衝撃を受けてしまっているようで抜け殻のようになってしまっている・・・」
「しっかりして・・・ティア・・・」
イヴはティアに声をかけたが、やはりなにも言わずにギルバートを見ているだけだった。
「ティア・・・」
「・・・ギル。」
今でも、ティアはギルバートを見つめている中でガイアが戦いながら言ってきた。
「心配するな・・・なんとかするので、お前達を逃してやる・・・!」
ガイアがそう言って、アイザックを押し退けた。
「・・・そんな事を言っていいのか?これ以上、俺と戦うと言うのであれば、お前も反逆をしている事になるんだぞ?」
「無論・・・承知の上だ。私は人間に命の危機が迫っているのは見過ごす事ができないのでな・・・」
ガイアはそう言いながら剣を構えた。
「それがお前の答えか・・・星竜族は、全員そういう考え方だったたな・・・だが、星竜族の王ユニバースは世界と一緒に滅んだ以上・・・その考えを持つのは意味がないように思うぞ?」
挑発をしてくるようにアイザックがそう言ってくると、ガイアは苦い表情になった。
「・・・その様子だと、あまり思い出したくなさそうだな・・・まぁいい、生き残りの星竜族を殺して絶滅させてしまうが・・・これも、ダークタナトス様の命令だ・・・一緒に死んでもらうぞ・・・」
そう言って、アイザックはガイアに向かって攻撃を仕掛けてきた。
「ガイア!」
ステラが叫ぶと、ガイアは羽を広げてから隕石の如く突進をしてアイザックを突き飛ばした。
「父さん、大丈夫か?」
「俺とした事が・・・突進で突き飛ばされるとは・・・」
アイザックはギルバートに気を掛けられて起き上がった。
『ワームテレポータル!』
その瞬間、ガイアが転移魔法を唱えて転移の穴を出現させた。
「さぁ、この穴に入ってこの場から逃げろ・・・」
ガイアは逃すそうとしたがティアはギルバートを見つめ続けていた。
「・・・ティア、なにをしているの?」
「ティア、急いでください・・・」
しかし、ティアは一向に動く気はなかった。
「・・・私は行かないわ。」
「なにを言っているのだ・・・今、ここで逃げないとお前は殺されてしまう事になってしまうのだぞ・・・」
「・・・あの人は本当にこんな事はしたくないと思っているはずだから・・・」
そう言っている間にもアイザックが攻撃をしようとこちらに向かって来た。
「一先ず逃げるぞ・・・ティア、立てるか?」
ガイアはティアの腕を引っ張って転移の穴に入れようとした。
「ギル・・・私は、信じているから・・・」
ティアはギルバートを見て言うと、ガイアに引っ張られ転移の穴に入って転移した。
「逃すか!」
そのまま、ステラ達も転移の穴に入ると、転移の穴は消えた。
「・・・逃げられたか。」
「あぁ・・・この事を話せば、ダークタナトス様は厳しくお叱りになるぞ・・・」
すると、ギルバートが火山口から夜空を見上げた。
(・・・ティア。)
ギルバートはティアを騙していた事や仲間達までも裏切ってしまった事で強い後悔と罪悪感に苛まれているのだった。
100章 立ち直れないティア
「なるほど・・・それで、ギルバートの正体を知った事で、エレノアの末裔は抜け殻のようになったと言うのだな・・・?」
アイザックとギルバートは聖地ラヴィレイヘヴンに帰還しており、ダークタナトスに火山での出来事や任務の報告を伝えていた。
「はっ・・・ギルバートの事を信じていたようで、あの様子では立ち直るのは難しいのかと・・・」
「それもそうだが・・・六つの光翼の涙は奴等の手に渡ってしまっているようだが・・・この責任をどう取るつもりだ・・・?」
ダークタナトスが眉を潜めながらギルバートを見て言ってきた。
「申し訳ございません・・・殺す隙が中々見つからなかったので・・・」
ギルバートは言い訳をするかのようにダークタナトスに報告をした。
「・・・貴様の処分については後で考えるとしよう・・・さて、誰に任せるか・・・」
処分が下るまで待機を命じられたギルバートは旅服から暗殺部隊の鎧を着ていた。
「ダークタナトス様。ここは、俺にお任せください。」
「お前か・・・エレノアの末裔と何度も戦ってきているのであれば、奴の事をよく知っているのだからな・・・」
ダークタナトスはソルに任せるべきか考え始めた。
(・・・ソルであれば、奴等の息を止める事ができそうだが・・・以前、砂漠で戦った時にエレノアの末裔があの力を使えるようになった事で苦戦を強いられたと聞いた・・・そうなるとすれば・・・)
ダークタナトスはどうするか考えていると、ある事を思い付いた。
「・・・ならば、ギルバートも同行させようではないか・・・」
「はっ・・・?」
すると、ギルバートが驚いた表情で顔を上げた。
「なぜでしょうか?これは、俺に与えられた使命であり・・・これまでだって、ティアを殺さずに一緒に旅をしていた人間がいても足手まといになってしまうだけでしょう・・・」
ソルがそう言ってくると、ダークタナトスはギルバートを見ながら言ってきた。
「この者はエレノアの末裔と出会って旅を続けて来たのだ・・・奴等の弱点や戦術も色々と知っているので、名誉挽回として同行をさせておいた方が良いと思ったのだが・・・構わぬな・・・?」
「ダークタナトス様がそう言うのであれば・・・ギルバートもそれでいいな?」
アイザックが構わないか訊ねてくると、ギルバートは食い気味に答えた。
「あぁ・・・俺も同行すればいいんだよな・・・?」
「そうだ。お前も一緒に来れば、奴等は戦い辛くなるはずだ・・・ダークタナトス様もそのようにお考えになられていたはずだが?」
アイザックにそう言われて、ギルバートは渋々と承知した。
「七つ目の光翼の涙を手に入れれば、ここへ来る事は間違いない・・・そうなる前に奴等を始末するのだ・・・」
「はっ・・・分かりました・・・」
「良かったな・・・今度こそ、俺の名に恥をかかすような真似だけはするな・・・」
ギルバートは立ち上がろうとすると、ダークタナトスが呼び止めてきた。
「待て・・・ギルバート、少しばかり我の前に来てくれるか・・・?」
「・・・なんでしょうか?」
「いいから来い・・・すぐに終わる事だからな・・・」
ギルバートは言われた通りに前に立つと、ダークタナトスが手の平をギルバートに片手を翳すとなにかを呟き始めた。
(・・・訳の分からない言葉だな・・・一体なにを言っているのか分からねぇよ・・・)
まるで呪文を唱えているようだと思っているとダークタナトスは呟くのを止めた。
「これでいい・・・もう行ってもよいぞ。」
「はっ・・・」
ギルバートはソルと共に部屋を出ようとした。
「それでは行って参ります・・・ギルバート、行くぞ。」
「あぁ・・・それじゃあ、行ってくるよ・・・」
ソルとギルバートは部屋を出て行った。
「・・・本当に息子も同行させてよろしかったのでしょうか?」
「無論だ・・・それにもし奴が裏切るような事がなければの話だが・・・まぁ、エレノアの血が途絶える事ができれば関係のない事だ・・・」
そう言いながら、ダークタナトスは不適に笑みを浮かべた。
「・・・そのような事がなければいいのですが・・・」
部屋を出るとギルバートは少し歩いてから立ち止まった。
「どうかしたのか?」
「いや・・・なんでもない・・・それより、早く行こうぜ。」
ソルとギルバートは七つ目の光翼の涙がある場所へと向かって行った。
「・・・あれから何日か経つけど・・・ティアはまだあの調子なのかな・・・?」
その頃、ティア達の方は安全な場所に転移してとある町にある宿屋へと滞在をしていた。
「はい・・・ずっと、ギルの事を思っていて食事にも手を付けていません・・・」
火山で六つ目の光翼の涙を手に入れた直後にギルバートがデスドゥンケルハイト軍の一員だった事実が受け入れられずにいるようだった。
「ステラと共に様子を見ていたのだが・・・ギルバートの事を思っていたからであったか・・・魂が抜けているような状態になっていたぞ・・・」
六つ目の光翼の涙を手に入れてから数日が経っており、ティアはギルバートの裏切りが信じられずにただ彼を思いながら呆然としていると言うのだった。
「ティアはギルバートの事を信じていたようだったが・・・デスドゥンケルハイト軍の人間で暗殺部隊に所属していただけでなく、父親がアイザックであったと知ってしまった以上は・・・あのような状態になってしまうのも無理もないだろう・・・」
火山の中に隠された六つ目の光翼の涙を手に入れてから数日が経っており、ティアはギルバートについて未だに真実を受け入れられずにいた。
「これまで、ギルバートは共に旅をして光翼の涙を集めながらデスドゥンケルハイト軍と戦ってきた・・・しかし、ギルバートの正体を知ってしまった事でティアは魂が抜けたように呆然としてしまっているらしいのだ・・・」
ティアにとっては最初に出会った仲間であり、今ではギルバートも彼女の事を思うようになっていた事を知っていた。
「ですが・・・どうすれば、ティアを立ち直らせる事ができますか?」
「なんとか、立ち直らせるしかないだろう・・・もう一度、話をしてみれば分かる事だ・・・ステラとイヴも協力をしてくれ・・・」
彼女は立ち直らせようとガイアはステラとイヴと共にティアのいる部屋へと入った。
「ティア・・・大丈夫ですか?」
「・・・」
ティアはその場で振り向いてステラ達を見てもなにも返事をしなかった。
「あれから、数日が経っているが・・・まだ、ギルバートの事が信じられずにいるのか?」
「だからアタシ達もギルはデスドゥンケルハイト軍のような人じゃないって思うの・・・それは皆だって、同じ気持ちだよ?」
「はい・・・ギルだって、本当はあのような事はしたくなかったと思います・・・」
ステラ達にそのように言われたティアは口を開いてギルバートについて話し始めた。
「・・・ギルはこれまでだって、光翼の涙を手に入れる旅に協力をしてくれて、強いモンスターやデスドゥンケルハイト軍と戦ってくれて・・・私が監獄の中で捕まっていた時も助けに来てくれたわ・・・」
「ティアの言う通り・・・ギルがいてくれたからこそ、アタシ達は何度も助けられては協力をしながら戦ってきたからね・・・」
「えぇ・・・ギルは初めの頃とは変わっていて・・・命が大事な物だと言うに気付いて人間以外にも、生命が宿っている事を思ってくれるようになったわ・・・」
「・・・これまでの旅でギルバートは行動を共にしていく内に人間以外にも生命があるのだと感じられるようになっていたのだな・・・」
ガイアがそのように納得をすると、ティアがギルバートの事を言い始めた。
「・・・例え、ギルがデスドゥンケルハイト軍の一員でアイザックの父親だと言う事実が分かっていても見捨てる訳にはいかないわ。」
「ギルは口が悪くてぶっきらぼうな所もありますが、優しい性格でアランとは仲良しでした。」
ギルバートは命を奪うような人間ではないとティアとステラは信じているようだった。
「・・・正体を知ってもなお、ギルバートの事を信用していると言うのだな?」
「勿論だよ。アタシ達も信じているよ。」
「えぇ・・・火山にいた時のギルは私を殺したくはないと思っている表情をしていたわ・・・」
ティアは火山でのギルバートの表情から本心のような物を感じ取っていた。
「本当はこのような事はしたくはないと思っているのかも知れないわ・・・本当に殺すつもりだったら、あの場所で私はギルに殺されていたのかもしれない・・・私を殺したくはないと思ってくれていなければ、本来ならあの場所で死んでいた事になるわ・・・」
そう言いながらもティアはギルバートが命を奪ってしまうような事は望んではいないと宣言をした。
「・・・その様子だと、無事に立ち直る事ができたようだな・・・」
「良かったですね。後でアランやヘイゼルさんにも伝えに行きましょう。」
ティアが無事に立ち直る事ができたので、別室にいるアランとヘイゼルに伝えにいった。
101章 七つ目の光翼の涙の場所
「ゴメンなさい・・・心配をかけさせてしまって・・・」
立ち直る事ができたティアは皆に心配を掛けさせてしまった事を謝罪した。
「気にするな・・・無事に立ち直ってくれただけでも嬉しく思っている・・・」
ヘイゼルはティアが立ち直ってくれた事に安心をしていた。
「・・・それでは、七つ目の光翼のある場所を教えるとしよう・・・地図を貸してもらえないだろうか?」
アランはガイアに言われた通りに、地図を取り出して広げて見せた。
「七つ目の光翼の涙がある場所はこの大陸に隠されているのだ。」
ガイアは地図に描かれていた一つの大陸に指を指した。
「この大陸は・・・」
「アラン・・・なにか、知っているの?」
「うん。ここには、僕とギルが育った村があった大陸だよ・・・」
そう言って、アランはギルバートと共に育った村がある場所を指差した。
「ここが、僕の村があった場所だよ・・・」
「あった場所・・・もしかして、その村も・・・」
まさかと思ったティアはアランの方を見た。
「うん・・・皆にはまだ話していなかったけど・・・僕等の育った村もデスドゥンケルハイト軍に滅ぼされてしまっているんだ・・・」
その村もティアの故郷である村と同様に滅ぼされているようだった。
「そうだったの・・・私の住んでいた村と同じように・・・」
「うん・・・まぁ、何人かが逃げ延びる事ができたけどね・・・」
アランはそう言うと、ガイアがある事を思い出して言ってきた。
「・・・この大陸にはとある貴族が治める街があり、ギルバート達の故郷が存在していた場所にあるらしいのだが・・・地図を見れば分かるので見てもらいたい・・・」
そう言って、ガイアがアランの言っていた村と離れた場所にある街に指を差した。
「この街がヘリオドラコ家の治めていた街だよ。」
指を差した街からギルバートとアランの村から距離があった。
「ヘリオドラコ家?」
「ステラは知らないようだけど、ヘリオドラコと言う名門家の貴族だって言われていたらしいよ。」
この大陸にはヘリオドラコ家と言う名門の貴族が治める街があると言うのだった。
「ヘリオドラコ家・・・そう言えば、お父さんやお母さんから聞かされた事があるわ。」
「なんでもヘリオドラコ家はこの世界で名門と言われているぐらいの貴族で剣術と炎の魔法に優れていると言われていたらしいよ。」
イヴの説明が聞こえたティアはなにかを思い始めた。
「・・・それだけの実力者だったなんて・・・まるで、あの人みたいに・・・」
ティアはヘリオドラコ家と聞いて、心当たりのある人物がいるように思えた。
「どうかしたの?」
「なんでもないわ・・・その人達はこの街にいるのかしら?」
ティアはそう思ったが、ガイアは首を横に振ってきた。
「いや・・・この街は既に廃墟と化しているのだ・・・」
「・・・その街はもうないと言うのね?」
すると、ヘイゼルがその街になにがあったのかを話し始めた。
「ティアは知らぬと思うが・・・十三年前、デスドゥンケルハイト軍を倒そうとした事でヘリオドラコ家や街の人々は殺されてしまったと聞いた事がある・・・」
現在、ヘリオドラコ家が治めていた街はデスドゥンケルハイト軍によって皆殺しにされた事によりその街は壊滅させられてしまっているというのだった。
「・・・有名な貴族でもデスドゥンケルハイト軍に敵わなかったのね・・・」
ティアがそう思っていると、ガイアが間を挟むかのように言ってきた。
「・・・それよりも七つ目の光翼の涙について語っていたのだが・・・?」
「そうだったわね。話が変わってしまったけれど・・・光翼の涙はこの大陸の何処にあるのね?」
ティアが訊ねてくると、ガイアは気難しそうにしながら答えてきた。
「それは・・・知らないのだ・・・」
「知らない・・・もしかして、七つ目の光翼の涙がある場所を知らないの?」
「生憎だが・・・七つ目の光翼の涙はこの大陸に隠されているのは知っているが・・・具体的な場所は何処にあるのか分からぬと言う意味だ・・・」
ガイアは七つ目の光翼の涙がある事は分かっているが、その大陸の何処に隠されているのか知らないと言うのだった。
「力になれて申し訳ない・・・ただ、この大陸にある事は間違いではないぞ。」
「ガイア、気にしないでください。私達はどうすればいいのでしょうか?」
ステラがどうすればいいのか訊ねると、アランは地図を見てから言ってきた。
「それだったら、僕とギルの育った村とヘリオドラコ家が治めていた街を調べてみないかな?もしかしたら、光翼の涙が隠されている場所の手がかりが見つけたられると思うよ?」
アランがそう言ってくると、ティア達もそうする事を決めた。
「そうしよう・・・二つの場所へ行って、手掛かりを差が手見るとしよう・・・」
こうして、ティア達は七つ目の光翼の涙が隠された大陸に向かう事となった。
「それでは早速、その村と街に向かうとしよう・・・」
ガイアはドラゴンに変化してティア達を乗せてから空へと飛び上がった。
『・・・まず先に向かうのはギルバートとアランが暮らしていた故郷の村か・・・ヘリオドラコ家が領主として治めていた街か・・・どっちを調べるのか言ってくれ。』
ガイアにそう言われたティア達はどちらに向かうか考え出した。
「ティア、どっちにする気なの?」
「そうね・・・まずはギルやアランの住んでいた村に行きましょう・・・」
『・・・分かった。』
ガイアが承知すると、アランが呟きだした。
「・・・僕達の住んでいた村に戻るのは何年ぶりかな・・・久しぶりに故郷の村に帰るから、昔の事を色々と思い出してきたよ・・・」
故郷の村へ行く事になったアランは過去に暮らしていた時の出来事を思い出した。
「・・・ギルがいなかったのは残念だけど・・・怒られていた事しか思い出せないよ・・・」
思い出に振り返ってもアランはギルバートと共に遊んでは叱られている事しか思い出せなかった。
(・・・もしも、ギルがいたら笑っていただろうね・・・いないだけでもこんなに寂しく感じてくるよ・・・)
心の中で孤独を感じていると、目的地である大陸の上空へと飛んでいた。
『もうすぐ、到着するぞ・・・』
大陸の下にガイアの影が差しかかると、二人の住んでいた村の方角へと飛んだ。
「ギルバート、なぜ落ち着かなそうにしている?」
同じ頃、ソルはソワソワしているギルバートに声をかけてきた。
「なにって・・・まだ来ないのかと思っただけだよ・・・」
「先程から、その様子だが・・・ティアや友人の事を思っているのか?」
ソルにそう言われて、ギルバートは食い気味に答えた。
「別に・・・ただ、アイツ等が来るかどうか気になったからだ・・・」
「・・・俺にはそのように見えないが・・・その調子が続くのであれば、聖地に戻ってもらう事になるぞ?」
ソルにそう言われて、ギルバートは立ち止まった。
「なぁ・・・ちょっと、確認したい場所があるけど・・・いいか?」
「なに?持ち場を離れるのは厳禁だ・・・そう簡単に何処かへ行かれてしまっては逃亡したと見做される事になってしまうぞ?」
すると、ギルバートが頼み込むようにソルに懇願してきた。
「・・・俺の住んでいた村にどうしても行きたいんだよ・・・なぁ、満足したらすぐに帰って来るし・・・頼むよ・・・」
ギルバートが頼み込んでくると、ソルは行かせるかどうか考えた。
「分かった・・・だが、村を見終えたらこの場所に戻って来てもらうぞ。」
「あぁ・・・アンタが迎えに来るまで待っているから安心してくれ・・・」
「・・・俺の魔法で送って行ってやろう・・・」
そう言って、ソルは転移魔法の詠唱を唱え始めた。
102章 ギルバートとアランが育った村
ガイアの背に乗って、ティア達はギルバートとアランの故郷だった村へと向かっていた。
『到着したぞ。』
アランの言っていた村に着くと、ティア達を降ろしてガイアは元の姿に戻った。
「久しぶりに帰って来たね・・・皆、ここで僕達が育った村だったよ・・・」
降り立った後で見回して見ると、廃墟と化した土地にいくつもの一軒家が建っていた。
「・・・無残にも滅ぼされているようだな・・・」
その村は既に壊滅している状態でティアの暮らしていた村と同じ有様だった。
「・・・まるで、私の村のように襲撃されていて・・・ここにもデスドゥンケルハイト軍が襲撃されていたなんて・・・」
ティアがそう思って見回していると、アランは静かに言ってきた。
「うん・・・小さい時にデスドゥンケルハイト軍の被害にあったからだよ・・・」
アランの口から出てきた言葉は嘘ではないとティア達には伝わってきていた。
「やっぱり、貴方・・・いいえ、ギルも私の時と同じような被害にあっていたのね・・・」
「うん・・・お母さんや他の人達は無事だったけど・・・その時にギルがいなくなってしまっていたんだ・・・」
アランを含む数名は襲撃から逃れる事はできたが、ギルバートが行方を眩まし消息が不明となっていた。
「・・・デスドゥンケルハイト軍に連れて行かれたと言いたいのだな。」
「うん・・・どれだけ探してもギルは見つからなかったから・・・もしかしたら、捕まってしまっているのかもしれないと思ったよ・・・」
あまり思い出したくない表情をしながらもアランは話してきた。
「・・・だが、ギルバートはアイザックの息子と判明したから殺されずにいたのではないのか?」
「それもそうだね・・・襲撃の後に調べて見たら・・・ギルの死体は何処にも見当たらなかったから・・・きっと、デスドゥンケルハイト軍に攫われたのかもしれないって思ったんだ・・・」
この村にデスドゥンケルハイト軍が襲撃されて亡くなった村人達の中にギルバートの死体が見つからなかったと言うのだった。
「僕の予想が的中したのか・・・ギルはデスドゥンケルハイト軍の一員として活動していたと言う事になるね・・・それも暗殺部隊でアイザックの息子だったなんて・・・誰も思いもしなかった事だよ・・・」
「正直、アタシ達も驚いているよ・・・まさか、ギルがデスドゥンケルハイト軍の暗殺者だったなんて・・・どうりで同じぐらいに運動神経が良かったからね・・・」
イヴがそう思って言うと、ガイアがアランの様子を見て止めてきた。
「・・・これ以上、ギルバートについて話す事は止めておいた方がいい・・・」
「そうだったね・・・それじゃあ、村を見て回ろうか・・・」
ティア達と過去の話を止めて、村の中を見回り始めた。
「・・・アランには申し訳ないが言いたい事があるのだが・・・話しても構わないだろうか・・・?」
村を回っている最中で。ガイアがなにかを話したそうに訊ねてきた。
「いいけど・・・」
「・・・話せば驚く事になると思うが・・・それでも、聞く覚悟はできているだろうか?」
「・・・一体、なにを話すつもり?」
そう言うと、ガイアは全員に話を聞かせようとしている様子が感じられた。
「・・・それでは、話すとしよう・・・この村が滅ぼされたのは・・・とある理由があって、襲撃してきたと言う噂を耳にした事があるのだが・・・」
ガイア曰く、この村は目的があって襲撃したと聞いた事があるのだった。
「・・・それじゃあ、その理由で僕達の村が滅ぼされたと言う事・・・?」
「そうだ。厳密に言えば、ある子供の確保と言っておくべきだろうか・・・村人達を殺して回ってまでも見つけたかったようだったぞ・・・それだけでなく、アイザックがその指揮を執っていたと言われているらしいのだ・・・」
「・・・当時、暗殺部隊が襲撃をしていたと言う事なのだろうか?」
「いや・・・アイザック以外は通常の兵士達で、襲撃を任せて子供を探しているだけだった・・・その子供を見つけ出すために何人もの村人達が犠牲になった事か・・・」
アイザックはたった一人の子供を確保するために、兵士達を使って襲撃をした事によって、罪もなく事情を知らない村人達が殺されてしまっていた。
「アイザックの探していた子供は保護されてからは自身の父親だと告げて、暗殺部隊の一員として育て上げてきた・・・今でもその子供はその部隊の一員として所属している・・・」
「・・・それが、ギルだったのね。」
ガイアの話を聞いて、ティアはその子供が誰なのかを把握して言ってきた。
「そうだ。アイザックは自分の子供までもが殺されたくはなかったので保護に近い形で聖地へと連れ去ったのだ・・・」
当時のアイザックは拉致ではなく、保護する形で聖地ラヴィレイヘヴンに連れ去ったと言うのだった。
「なんだか、ギルが誘拐されたみたいに感じてくるね・・・」
「・・・攫われた子供はデスドゥンケルハイト軍の兵士として教育される事となっている・・・ヘイゼルにもその事について知っているはずだ・・・」
過酷な環境で無理やり教育されていたヘイゼルにとって、どのような事をされてきていたのかしっかりと把握していた。
「・・・その環境で、ギルは育っていたの?」
ガイアの話を聞いていたアランがそんな環境でギルバートは育ってきたのかと訊ねてきた。
「あぁ・・・暗殺部隊は通常の兵士達とは違っていて、ヘイゼルのような教育は行わずに・・・暗殺者としての教育を施されるのだ・・・」
暗殺部隊は通常の兵士達とは違い、暗殺術を学ばされているのだった。
「私も暗殺部隊の存在していた事は知っているが・・・それ以外の兵士達とは会う事があまりないので、どのような人物がいるのかを知る人間は少ないと言われているのだ・・・」
アイザックを含む、暗殺部隊の人間達を知っているのはごく僅かでヘイゼル等の兵士達とは出会う機会が滅多にないので、誰が所属しているのかを知るはずもなかった。
「・・・アイザックがリーダーを務めていた事は知っていたが・・・まさか、ギルバートも暗殺部隊の一員だったとは思いもしなかったぞ・・・」
「そう・・・ヘイゼルはギルがいた事は知らなかったんだね・・・」
ヘイゼルはギルバートも所属していた事は知らないようだった。
「デスドゥンケルハイト軍に教育された人間達は皆、罪もない人間達を殺したくないと思っている・・・だが、デスドゥンケルハイト軍には向かえば死があるのみだ・・・」
デスドゥンケルハイト軍によって、教育をされた子供達は兵士となっているが、本心では殺したくはないと思っているが、逆らう事があれば殺される恐怖で逆らえなかった。
「私もそうだった・・・過酷な環境での生活を強いられ・・・強制的に戦闘訓練が繰り返される日々を送っていたぞ・・・」
数十年も聖地にいた過去を思い出したヘイゼルは苦い表情をした。
「・・・貴方のお父さんに売られて、生きながらえようと堪え続けてきた・・・それからも苦しんできた事はちゃんと伝わってきているよ・・・」
兵士だった頃の時を思い出すヘイゼルを見て、イヴは辛い気持ちが伝わってきていた。
「でも・・・貴方は覚悟を決めて、ラヴィレイヘヴンから逃げだしたはずです。」
「アタシ達がヘイゼルを見つけて治療をして仲間になった・・・貴方は、アタシ達と出会ってからデスドゥンケルハイト軍と戦ってくれている・・・きっと、運命が導いてくれていたのかもね・・・」
イヴはヘイゼルに対する当初の自分を振り返りながらもそう言ってきた。
「そうだな・・・私が生きているのはティア達と出会えた事に感謝だ・・・」
ヘイゼルはそう言いながらも笑みを浮かべた。
「さて・・・ここで、立ち話をしていれば、日が暮れてしまうぞ?」
「そうであったな・・・気を取り直して、探索を続けるとしよう・・・」
それから、話を終えたティア達は村を調べている内に夕暮れになっていた。
「もうじき日が暮れる・・・ここで、キャンプをして明日には目的の街に向かった方がいい・・・」
ガイアが沈みゆく太陽を見つめながらそう言ってきた。
「それじゃあ、テントを・・・」
キャンプの準備を始めようとした時だった。
「待って・・・」
始めようとする直前に、アランが止めに入ってきた。
「どうしたの?」
「良かったら・・・僕の家に、来ないかな?」
アランが申し訳なさそうに言ってきた。
「お前の家に?しかし、この村は誰も住めないぐらいに廃墟となっているはずだが?」
先程、村を調べた時にアランの家も調べていたが、この村は誰も住めなくなるぐらいに廃墟と化していた。
「だからと言って、お前の家に行く必要がないはずだが?」
ガイアにそう言われてもアランには分かっているようだった。
「分かっているよ・・・でもどうしても来てほしいけど・・・駄目かな?」
アランはどうしても自分の家に来てもらいたそうな様子をしていた。
「・・・そこまで言うのなら、アランの家に泊まらせてもらいましょう。」
「ありがとう・・・それじゃあ、僕の家で色々と話をしたかったから・・・ちゃんと、僕の部屋で泊まる事になるけどね・・・」
ティア達はアランの家へと向かって行った。
「ほらっ・・・遠慮しないで入って・・・アランの家の前に着いた。
「入って・・・皆が、眠れるような部屋はあるから・・・」
そう言って、アランが扉を開けてティア達と共に家の中へと入って行った。
103章 ギルバートとアランの出会い
「この部屋に入って・・・」
アランが、扉を開けると一つの子供部屋だった。
「ここは、僕が小さい頃にいた部屋だよ。」
「確かに・・・子供の勉強机があると言う事はアランの部屋で間違いはないようだな・・・」
ガイアが部屋の中にあった机を見てアランの部屋だと認識した。
「懐かしいな・・・小さい頃、この窓からギルはよく入って来たんだっけ・・・」
アランはそう思いながらも一つの窓を見てそう呟いてきた。
「もしかして、いつも窓から入って来ていたのですか?」
「そうだよ・・・お母さんに見つからないように、ギルはこの窓からいつも入って来ていたよ・・・」
アラン曰く、ギルバートが来た時にはいつもこの窓から出入りをしていたのだった。
「つまり、入り口からではなくて、この窓からギルは入っていたのね・・・」
「うん・・・僕のお母さんは厳しい人だから勉強ばかりさせられていたからね・・・初めて、ギルが入ってきた時は驚いたけど・・・」
そう言うと、アランは幼少時代の事を話したい気持ちを感じた。
「・・・良かったら、聞いてくれないかな?僕達がまだ小さかった頃の話を・・・」
アランはそう言ってから、ティア達に幼少時代の出来事を話し始めた。
『今日も勉強を頑張らなくちゃ・・・』
勉強机に座っている子供は幼少時代のアランで勉強を始めようとしていた。
『さてと・・・今日は、どんな勉強をしようかな・・・』
アランはどのような事を学ぼうかと本を選び始めた。
『決めた・・・今日は、魔法について勉強に・・・』
アランは、魔法に関する学習をしようと本を開いた。
『・・・魔法は詠唱を唱える事で魔法が発動される・・・』
アランが書いてあった文章を読んでいる時だった。
『えっ・・・?』
突然、窓が開いたと同時に誰かが部屋の中に入って来た。
『なっ・・・なに・・・?』
窓から入って来たのはアランと同い年の少年だった。
『悪いけど、ちょっと隠れさせてくれ・・・!』
少年がそう言って、部屋のベッドの下に隠れた。
『ちょっと・・・急にそう言われても・・・』
『いいから・・・大人が来ても、俺は来ていないと言ってくれ・・・』
ベッドの下から少年がそう言われると、窓から血相を変えた男性がアランに訊ねてきた。
『どっ・・・どうかしましたか?』
『君・・・ここら辺に君と同じ歳の男の子が来なかったか?』
息を切らしながら訊ねられると、アランは少年の言われた通りに話しだした。
『いっ・・・いいえ・・・来ていません・・・』
アランは少年に言われた通りに来なかったと嘘を付いた。
『そうか・・・なんて、逃げ足の速い奴だ・・・』
男が悔しがると、アランはなにがあったのか訊ねてみた。
『あのう・・・その少年となにかあったんですか?』
『なに・・・ちょっとな・・・それよりもその少年を見かけたら言ってくれ・・・』
男はそう言い残して、アランの家から離れて行った。
『・・・もう、大丈夫だよ。』
アランがそう言って、窓を閉めるとベッドの下から少年が出てきた。
『危なかった・・・もう少しで、捕まってしまう所だった・・・』
少年が安心をすると、アランはなにがあったのか訊ねてみた。
『ねぇ、君はどうしてあの人に追いかけられていたの?』
アランの質問に少年は苦笑いをしながら言ってきた。
『・・・ちょっと、悪戯をしていたら、見つかって・・・』
『悪戯って・・・そんな事をすれば、誰だって怒って追いかけてくるよ・・・』
アランが呆れて言うと、少年は笑い出した。
『それもそうか・・・それにしても、お前の部屋は地味だな・・・』
少年はアランの部屋を見回しながらそう言ってきた。
『僕は毎日勉強をしているから、部屋がこんな風なのは当たり前だと思うよ?』
『勉強?お前、勉強をしていたのか?』
『うん・・・丁度、君が入ってくる前から、底の机で勉強をしていたよ。』
アランが机に置いてあった本を見せると、少年はその本の表紙を見てみた。
『・・・なんだか、色々な本があるな・・・魔法や武器・・・それに、モンスターの本もあるぞ・・・』
机に置かれていた本は色々な知識を学ぶための内容ばかりだった。
『そうだよ。お母さんに色々学ぶ事は、大事だって言っていたからだよ。』
『なるほど・・・それで、お前はこの部屋で勉強ばかりしているのか?』
『そうだけど・・・君は勉強をしていないの?』
『いいや・・・俺は、勉強なんかしないで遊んでいるぞ。』
少年がそう答えてくると、アランにある事を思いついて訊ねてきた。
『なぁ・・・ひょっとして、友達がいないのか?』
『うん・・・いつも、勉強ばかりしているから・・・他の子達と遊ぶ事がなくて・・・』
これまで、勉強をしてきたアランにとっては友達が一人もいなかった。
『友達がいないって・・・それで、遊ばないで勉強ばっかりしているのか?』
『ううん・・・偶に、遊んでもいいって言ってくれる時があるけど・・・どうしても、遊ぶ事になるとどうしても・・・』
アランの言葉に対して、少年は呆れながらも言ってきた。
『・・・そんな事だから、お前に友達が一人も作れないんだ・・・』
『悪かったね・・・友達が一人もいなくて・・・』
すると、少年がアランにこう言ってきた。
『だったら・・・俺がお前の友達になってやるよ。』
『えっ?でも、本当にいいのかな?』
『あぁ・・・勉強ばかりしているお前には、友達が必要だ・・・だから、今日から俺がなってやるよ・・・お前の友達に・・・』
アランは少年に言われた通りに友達になる事を決めた。
『・・・分かった。今日から、僕が君の友達になるよ。』
『決まりだな・・・俺は、ギルバート・・・今日から、お前は俺の友達だ・・・仲良くなった握手しようぜ。』
自分の名を名乗ったギルバートが、手を差し出してくるとアランは、片手を差し出して握手をした。
『これからもよろしくね・・・ギルバート。』
それ以来、ギルバートはアランの友人としての関係を結んだのだった。
「・・・こうして、僕はギルと友達になったんだ。」
「そうだったの・・・貴方達はその時から仲の良い友達となったのね・・・」
アランが苦い表情をしている事が気になったステラがもしやと思って訊ねてみた。
「もしかして、アランが勉強をしていても来ていたのですか?」
「うん・・・例え、勉強中でもギルはやって来て僕を連れて外に遊びにも連れて行っていてくれていたんだ。」
友達同士になってからも、ギルバートは遊びに来ては誘っていたが、勉強をしている最中にも関わらずに遊びに来る程だった。
「・・・ギルったら、勉強をしている人の家にしょっちゅう来るなんて・・・まぁ、考えてみたらギルならやりそうだね・・・」
イヴがそのように思っていると、ステラがアランのある事について訊ねてきた。
「そう言えば、以前から思っていましたが・・・どうして、アランは虫が苦手になったのですか?」
ステラがその事について聞かれたアランは覚悟を決めたか表情をして口を開いた。
「そうだね・・・それも話しておいた方がいいみたいだね・・・僕がどうして極度に虫が怖くなったのかを・・・」
嫌そうにしながらもアランは昆虫恐怖症になった理由について話し始めた。
104章 アランが虫嫌いになった理由
『ほらっ・・・早く来いよ・・・』
ある日の事、ギルバートとアランが村の近くにある森に訪れていた。
『ギル・・・あまり、進みすぎたら帰れなくなるよ?』
ギルバートと出会ってから半年が経っており、アランはギルバートの事をギルと呼ぶようになっていた。
『心配するな・・・ワープベルも持ってきているから、迷ってもすぐ村に帰れるぞ。』
ギルバートはそう言って、所持していたワープベルをアランに見せた。
『無くさなくちゃいいけど・・・大丈夫かな・・・?』
アランが心配に感じていると、ギルバートが立ち止まって匂いを嗅ぎ始めた。
『なぁ・・・あっちから、甘い匂いがしないか?』
『甘い匂い?』
そう言われて、匂いを嗅いで見ると、なにやら甘い匂いが漂ってきていた。
『あっちからだ・・・そこに、甘いなにかがあるんだな・・・』
ギルバートとアランは奥の方へと進んで行くと、樹液が出ている木々や幾つもの綺麗な花が咲いていた。
『見てみろよ・・・ここは、自然がいっぱいだ・・・』
二人が辿り着いた場所は花畑が生い茂っている場所だった。
『そうだね。花畑のある場所には虫もいっぱい集まって来ているよ。』
樹液の出る木や花畑に数多くの虫達が生息していた。
『なぁ・・・あの木から、甘い匂いがするぞ・・・行ってみようぜ。』
奥の方から、先程の甘い匂いを漂わせている匂いが漂う木が生えていた。
『・・・どうやら、この木から甘い匂いの樹液が出るみたいだね。』
『持って帰ったら、何日分のおやつにもなりそうだな・・・』
そう言って、ギルバートが木の実を採ろうと木を登り始めた。
『なぁ、この蜜を持って帰らないか?』
『別にいいけど・・・落ちないように気を付けた方がいいよ?』
『大丈夫だよ。これぐらいの木なんて朝飯前だ・・・』
木に登ったギルバートは、甘い樹液が出ている部分に上り詰めた。
『これだな・・・滅茶苦茶、甘いな・・・』
ギルバートは、樹液を舐めてみると、その甘さが口に広がった。
『滅茶苦茶美味いぞ!お前も登って舐めて見ろよ!』
アランにそう言った直後、ギルバートは足を踏み外した。
『うわっ・・・!』
ギルバートは足を滑らせて木から落ちそうになった。
『ギル、大丈夫・・・?』
その直後、樹液の出ている部分に手が当たると、甘い蜜が噴き出てアランにかかってしまった。
『大丈夫か・・・?』
木から落ちてきたギルバートは声を掛けたが、アランは樹液にまみれてしまっていた。
『うん・・・とても、ベタベタするよ・・・』
『悪いな・・・すぐに洗い流しておいた方がいいな・・・』
そう言って、ギルバートがワープベルを使おうとした時だった。
『待って・・・なんだか、体がムズムズするよ・・・』
アランは体の異変を感じると、ギルバートが顔を真っ青になった。
『ラッ・・・アラン・・・お前の体・・・!』
『僕の体が、どうした・・・の・・・!?』
アランは自身の体を見た直後に、背筋が一気に凍り付いた。
『ギッ・・・ギル・・・!』
その理由はアランに樹液にまみれた事によって、虫が集っていたからであった。
『たっ・・・助けて・・・!』
アランは虫に集られながらもギルバートに近づいてきた。
『来るなよ・・・!さっさと、振り払えって・・・!』
『無理だよ・・・数が多すぎるし、樹液で集まって来ているよ・・・!』
アランに集っている虫達は、付着した樹液によって体中にたかられていた。
『とにかく、ここから逃げろ!』
そう言って、ギルバートが先にこの場から逃げ出した。
『待ってよ・・・ギル・・・!』
必死に虫を払おうとしながらも、アランはギルバートの後を追った。
「・・・体中に集っていた虫達をなんとか振り払う事ができたけど・・・後でギルがワープベルを落とした事に気付いて森の中をさ迷っていたけど・・・村の人達が心配して僕達を見つけてくれたんだ・・・結局、怒られたけどね・・・」
二人の帰りが心配になった村人達が探しに来てくれた事で助かったが、その後で二人は村長からこっ酷く叱られていた。
「・・・あの時から、僕は虫を見るだけで震え上がってしまうようになったんだ・・・」
あの時から、アランは虫が苦手になってしまい、本物の虫でなくても怯えるようになってしまった理由こそがその時の出来事だった。
「それで、甘いものを口にしなくはなったのね・・・」
「うん・・・それから、甘い物が食べられなくなって・・・まぁ、最後に口にしたのが樹液だったのは皮肉だけどね・・・」
その樹液を最後にアランは甘い物を一切口にする事などないのだった。
「・・・どうりで、甘い物を食べないと思っていたわ・・・」
アランがこれまで砂糖菓子やチョコレート等の甘い物を拒んでいた事を思い出したティアはその理由について納得をした。
「そんな事があっても、ギルは僕の所に来てくれたんだ・・・今でも、友達だって思っているよ・・・」
「・・・そのような事があっても、今まで絶交もせずに友でいられたのか・・・」
ガイアがそう言ってくると、アランは「まぁね・・・」と照れ臭そうに答えてきた。
「・・・でも、デスドゥンケルハイト軍が攻めてきたから、村は無くなってギルと離れ離れに・・・いや、アイザックがギルを保護しようとした事だというべきだね・・・村を滅ぼされてからは、生き残った人達は別の場所で暮らし始めていたんだ。」
住んでいた村が壊滅させられた後でアランは母親と共に別の場所で暮らしていた。
「でも・・・ギルが無事に生きてくれていた事が嬉しかったと思っていたよ・・・」
アランはギルバートと再開したときの事を思い出した。
「・・・ギルは僕にとっては大切な友達だった・・・だけど、ギルは僕達を殺そうとは思ってもかったし・・・本当は、殺したくないと思っているはずかも知れないよ・・・」
アランが、そう言いながら窓を見つめた。
「・・・アラン。」
窓の近くにギルバートが密かにその会話を立ち聞きしていた。
「もう、いいだろう・・・そろそろ、戻らないか?」
その様子を見ていると、ソルがいつの間にかやって来ていた。
「分かった・・・さっさと、あの場所に戻ろうぜ・・・」
そう言ってから、ギルバートはソルと共にアランの家から離れた場所に移動した。
「ギルバート・・・まさか、ガイア達が来ているとは思いもしなかったな・・・」
「あぁ・・・」
すると、ギルバートがある事をソルに聞いた。
「なぁ・・・アンタはティアの両親を殺してしまったと言っていたが・・・本当にティアも殺そうと思っているのか・・・?」
ギルバートが、そう聞いてくるとソルは背を向けずに答えてきた。
「・・・なぜ、そのような事を聞く?」
「いや・・・ちょっと、気になってよ・・・これまでだって、本当に殺す気はあったのか気になっちまってよ・・・」
「本気で殺す気になれば、皆殺しにしていたに違いないと言いたいのか?」
ティアの村を襲撃した時は大勢の兵士達を連れて村を壊滅させ村人達を皆殺しにしたのは兵士達だった。
「別にそんなつもりじゃ・・・アンタだって、何度もティアと戦っている癖に、本気で殺そうとしていなかったじゃねぇか・・・」
「当然の事だ・・・俺は手加減なしで戦ってはいた・・・そのように、お前にはそのように見えていただけに過ぎないぞ・・・」
そう言った後で、ソルはなにも言わなくなった。
(ソルの奴・・・どう考えても、アイツの親を殺してしまった事を後悔しているように見えてくるな・・・多分、アイツもこんな事はしたくないと思っているのか・・・?)
ギルバートはソルの様子を見てそう思いながら村を出て行った。
105章 ヘリオドラコの街
次の日、アランの家に泊まったティア達は、村を後にしてヘリオドラコ家が治めていた領地へと向かっていた。
「どうかしましたか?」
ステラがヘイゼルの様子を見て声をかけた。
「いや・・・そこにある街に行く事になるとはと思っていたのだ・・・」
「もしかして、その街に行った事がありましたか?」
「一応は・・・デスドゥンケルハイト軍にいた際に、その街について聞いた事があっただけだ。」
すると、ヘイゼルの話を聞いたアランが訊ねてきた。
「もしかして、ヘイゼルさんはその街に住んでいた人から聞いたのですか?」
ティアが向かっている町について訊ねたが、ヘイゼルは言い辛そうにしながら言ってきた。
「・・・その街の出身者から聞かされただけで、今ではどうなっているのかも知ってはいるが・・・」
そうは言ったが、ヘイゼルは損人物が誰なのか言おうとはしなかった。
「ヘイゼルさん?その人が誰なのかを話したくないような表情をしていますが・・・?」
ステラはヘイゼルの顔を見てその人物について話したくない様子に思えられた。
『・・・そろそろ、例の街に着くぞ。』
それと同時に、ガイアがヘリオドラコ家の治めていた街へと降り立った。
「到着したか・・・」
その街は昨日の村と同様に廃墟と化していた。
「どうやら、もう誰一人も住んでいないようだね・・・」
「・・・十三年前、ヘリオドラコ家がデスドゥンケルハイト軍を倒そうとしていたが・・・敗れてしまった事によって、この町の人間達は世界中の人間達への見せしめとして、一人残らず皆殺しにされてしまっているのだ・・・」
ガイアがこの街であった事を語ると、ステラはその事について訊ねてきた。
「ガイア、どうしてこの街にあった事を知っているのですか?」
ガイアの発言を聞いていたステラがその事について訊ねてきた。
「その事について、聞かされていたからだ・・・デスドゥンケルハイト軍が支配してからと言うもの・・・逆らった者が一人でも出たのであれば、この街だけでなくティアやギルバートとアランの村と同様に壊滅させられてしまうようになってしまったのだ・・・」
「デスドゥンケルハイト軍に逆らう者達には容赦は一切しない・・・一度でも逆らってしまえば、反逆者共々、皆殺しにされてしまうので、誰にも逆らえなかったのであったな・・・」
ヘイゼルがそう言うと、ティアとアランは過去にデスドゥンケルハイト軍が襲撃してきた時の出来事を思い出した。
「・・・それこそが、デスドゥンケルハイト軍のやり方だ・・・それ以外の人間達の命がどうなろうと気にしない人間達だ・・・だが、皆殺したくはないと思っているが・・・恐怖に支配されているので強制的に殺害を強制させられてしまっているのだ・・・」
そう話していると、ステラがガイアに近寄って腕を掴んだ。
「・・・ガイア。」
ステラは悲しそうな表情で話すガイアを宥める目で見つめた。
「少しばかり長引いてしまったようだな・・・話はこれぐらいにして、この街を調べ回るとしよう・・・」
それから、ティア達は七つ目の光翼の涙の手がかりを探し出そうとこの街を調べ始めた。
「この街の人間達は街の領主であるヘリオドラコ家を尊敬しており、その剣術に憧れを持った数多くの人間達が弟子入りして教えを請おうと入門していたのだ・・・」
この街の住民達はヘリオドラコ家を崇拝されており、剣術を学びに外から来る人間達までもが弟子入りしていたと言うのだった。
「ヘリオドラコ家の人達は弟子ができるぐらいに強い人達で、先祖代々この街を統治していたらしいよ。」
「アタシも聞いた事があるけど、ヘリオドラコ家の人達はとても強い人が領主を務めていて、デスドゥンケルハイト軍が襲撃しても安心だって言われていたけど・・・結局、敵わなかったけどね・・・」
アランとイヴがヘリオドラコ家について語ってきた。
「名門家と言われていたヘリオドラコ家でも、デスドゥンケルハイト軍には敵わなかったと言える・・・」
「そう言えば、炎の魔法も得意だと言っていましたが・・・どうして、炎属性の魔法しか使えないのでしょうか?」
「・・・それは、ヘリオドラコ家は強大な炎の魔力を持っているが、他の属性以外は覚える事ができなかったのだ・・・」
「その人達が炎の魔力がとても強かったからだったと言う事だね?」
「あぁ・・・そして、この広場に描かれている紋章こそがヘリオドラコ家のものだ。」
話している間に街の広場に着いており、その広場にヘリオドラコ家の紋章が描かれていた。
「・・・これが、ヘリオドラコ家の紋章だよ・・・昔、この街に訪れていた旅人に見せてもらった事があるから知っているよ。」
アランは過去に旅人からヘリオドラコ家の紋章を見せてもらっていた。
「まるで、太陽と竜を思わせるような紋章ね・・・」
描かれている紋章は太陽と竜を彷彿させるように描かれていた。
「太陽と竜を足したようにみえるのはどうしてなのでしょうか?」
ステラが気になっていると、ガイアは説明をし始めた。
「・・・当時、領主になった人間がそのように名付けたと聞いた事があるぞ。」
ガイアがそう言うと、イヴはその事についてなにかを思い出した。
「そう言えば、この街を治めていた領主はアポロンと言う人で領主の妻だった女の人はレアだって聞いた事があったけど・・・?」
「アポロンは剣術と炎の魔法の使い手だ。この世界で敵う人間などいないと言われていたぐらいの実力者だったのだ・・・」
すると、話している途中でティアがガイアに訊ねてきた。
「でも・・・この世界に敵う人間はいないと言われていた人なのに・・・どうして、デスドゥンケルハイト軍に歯向かってしまったのかしら・・・?」
ティアがその事が気になっていると、ガイアはその理由について問うてきた。
「・・・なぜ、そのように思った?」
「今の話を聞いて思ったのだけれど・・・ヘリオドラコ家は誰かを助けようとして、デスドゥンケルハイト軍と戦っていたのではないかと考えられるの・・・」
「確かに・・・反乱軍もデスドゥンケルハイト軍からこの世界中の人達を助けるために、戦っていたからね・・・」
ティアの答えを聞いたガイアが息を整えてから答えてきた。
「・・・その通りだ。ヘリオドラコ家は捕らわれてしまったとある人間を救おうとデスドゥンケルハイト軍と戦っていたのだ・・・それでも敵わずに全員が処刑されてしまっているのだ・・・」
ヘリオドラコ家の領主アポロンは何者かを助けるためにデスドゥンケルハイト軍から戦ったが敗れてしまい、弟子や街の住民達までもが処刑されてしまっていた。
「そんな・・・この街の人達まで殺されてしまったと言う事ですか・・・?」
「・・・そう言えるだろう。その後は誰一人いなくなった街はこのように廃墟と化し、誰も近寄る事もない街として語り継がれているのだ・・・」
ガイアが話を終えると、ステラが助けようとした人物について訊ねようとした。
「・・・その人が絶対に助け出さなければいけないぐらいに助けたかった人とはどのような人だったのですか?」
しかし、ステラが質問をしてもガイアはなにも答えなかった。
「ガイア?」
「城を調べてからでもいいのではないか?」
「どうしてですか?」
「理由は後で話す・・・ともかく、その後で詳しく語るので安心してほしい・・・」
「えぇ・・・その後で話してくれるならいいわ。」
ティア達は不審に思いながらもガイアの後に連いて行く事にした。
(・・・さっきから、ガイアの様子がおかしい気が・・・もしかしたら、この街に住んでいた人達の事を知っていたのかしら・・・?)
そう思いながらも、ティアはガイアに不信感を抱きながらヘリオドラコ家の城へと向かって行った。
106章 ヘリオドラコ家の城
ティア達は街の中にある城の前に着いた。
「ここが、ヘリオドラコ家が住んでいたと言われていた城だ。」
ガイアが扉を開けると、ティア達は城の中へと入って行った。
「・・・ヘリオドラコ家のお城・・・ボロボロだけど、豪華なのは確かだね・・・」
「この城は十三年前まではヘリオドラコ家の人間達が住んでいたのだが・・・今でも、城は取り壊されずに残り続けているのだ・・・」
この街に誰もいなくなっても城は壊されずに放置されていた。
「ガイア・・・さっきの話しについてなにかを知っているのでしょうか?」
ステラが訊ねてくると、ティアはガイアの後姿を見つめた。
「そうね。ガイアはなにかを隠しているのが分かるわ・・・でも、すぐに話すより時間を置いた方がいいから・・・それまでは、大人しくしていましょう・・・」
話してくれる事を信じて、ティア達はガイアの後に連いて行った。
「まずは、領主の部屋を調べてみるぞ・・・先に重要そうな部屋を調べていれば、手掛かりが見つかる可能性があるぞ。」
そう言ってから、ガイアが扉を開けて領主の部屋をティア達に見せた。
「領主部屋はこうなっていたんだ・・・」
領主の部屋を見ていると、ガイアが壁に掛かっていた絵を見て言ってきた。
「見るがいい・・・これが、ヘリオドラコ家の現領主だったアポロンとその妻レアだ。」
壁に掛かっている絵を見てみると、領主と妻らしき人間の肖像画が描かれていた。
「この肖像画に描かれている人間こそが、領主であるアポロン・ヘリオドラコとその妻レア・ヘリオドラコだ。」
そこには、太陽のような赤い髪と瞳をした夫婦が描かれていた。
「この人達が・・・肖像画だけど、初めて見たよ・・・」
「いかにも、名門家に相応しい顔立ちだな・・・
肖像画を見ていると、ティアがヘリオドラコ夫妻を見ていると違和感を抱かれた。
「あら・・・?」
「ティア、どうかしたの?」
「・・・なんだか、誰かに似ている気がして・・・」
ティアがそう言うと、ステラ達もその違和感に気が付いた。
「言われてみたら・・・赤い髪や瞳も誰かを思ってくる気が・・・」
ティア達はヘリオドラコ夫婦を見て、彷彿してくる人物がいると感じ始めた。
「・・・次の部屋に向かう・・・この部屋には手掛かりがなさそうなので、次の部屋を調べてみるとしようか・・・」
ガイアにそう言われたティア達は領主の部屋を後にした。
(・・・ガイア、さっきからなにかを思っている様子をしている気がするわ・・・)
ティアは彼の様子を窺いながらも、次の部屋に向かって行った。
「・・・ここが、ヘリオドラコ家の子供の部屋だ。」
ガイアが扉を開けて見たのは、ヘリオドラコ夫妻の子供部屋だった。
「この部屋はデスドゥンケルハイト軍に連れ去られた子供がいた部屋だ。」
子供部屋に入ると、ティア達はその部屋を見回した。
「ここが、連れ去られた子供がいた部屋・・・どう見ても、子供の部屋にはあまり見えないね・・・」
イヴが部屋を見回して子供らしさがないと感じた。
「まるで、僕の部屋みたいだね・・・そう言えば、ヘリオドラコ家の子供は将来有望で剣術や炎の魔法も天才的な能力を持っていたって噂で聞いた事があるよ・・・」
「そうだ・・・この写真を見てみれば、どのような容姿をしているのか伝わる・・・」
ヘイゼルが棚に置かれていた写真立てを手にして見せてきた。
「ここに写っているのが、領主の子供ですね。」
「いかにも、天才的な能力を持っているような顔だね・・・」
ティア達は写真に写されていた領主の子供の写真を見てみた。
「・・・この顔をよく見てくれないだろうか・・・誰かに似ていると思っては来ないだろうか?」
ヘイゼルが写真を見せてくると、ティア達は写っている子供の顔を見つめた。
「・・・この顔、誰かに似ている気がします・・・」
「えぇ・・・私もそう思っていたわ・・・この顔はどう見ても・・・」
ティアが写真の人物に似ている人物の名を言おうとすると、ガイアが写真立てを取り上げて棚に戻してきた。
「次の部屋に向かわないか?本当の事を話すのは、それからでも遅くはないはずだ・・・」
そう言ってから、ガイアはそのまま部屋を出て行った。
「ガイア、なんだか写真に写っていた子供の事が知られたくないような気がしたのは気のせいでしょうか?」
「・・・今の様子を見れば・・・そう言う風に感じられてくるのは気のせいではないみたいね・・・」
ティアは先程のガイアとこの屋敷に秘密があると睨んでいた。
「ガイアが・・・それは、どうしてなのでしょうか・・・?」
「分からないわ・・・ガイアは、ヘリオドラコ家についてなにかを知っていると思う気がしてくるの・・・その後で、話してくれるのかも知れないわ・・・」
それからも、ガイアの後に連いて行って城の中を探索してみたが手掛かりがなに一つも見つからなかった。
「以上だ・・・それでは、一度外に出てみるとしようではないか・・・」
ティア達は一旦城の外に出る事となった。
「さて・・・手掛かりは見つからなかったが・・・城内を見てどのように思った?」
ガイアがそう聞いてくると、ティア達は感想を述べた。
「どうって言われても・・・あれだけ、すごい貴族がこのお城に住んでいたと思ったけど・・・?」
「もしも、ノヴェフロル学院にあの子が入学していたら、たった一年で生徒会長になっていたのかも知れないと思ったよ・・・」
アランとイヴが、城の中を見た感想を言ってくると、ヘイゼルが訊ねるように
ガイアに言ってきた。
「ガイア・・・そろそろ、教えた方がいいのかも知れないな・・・」
「そうだな・・・ヘイゼル。」
ヘイゼルとガイアがそう言い合うと、ティア達に話す前に訊ねてきた。
「・・・これから本当の事を話す事になるのだが・・・耳にする覚悟はできているか?」
「覚悟って・・・別に戦う訳じゃないけど・・・」
その中で、ティアは既に覚悟を決めているようだった。
「教えて・・・貴方が隠している事を・・・本当の事を全て話して・・・」
ティアにそう言われたガイアはヘイゼルの方を見てから話す事を決めた。
「それでは、話すとしよう・・・これから、話す事を聞けば驚く事になると思うが・・・仕方のない事だ・・・」
ガイアは覚悟を決めた様子で話を始めた。
「まずは、領主の子供について聞かせてもらうが・・・写真に写っていた子供を見てどう思った?」
そう訊ねてくると、ティアが答えてきた。
「・・・あの写真に写っていた子供はソルに似ていると思ったわ・・・」
ティアは領主の子供がソルと似ていたとガイアに答えた。
「えぇ・・・私も写真を見た時に思ったけれど・・・太陽のような赤い瞳や髪も領主の部屋で見た夫婦と同じだったのはどうして・・・?」
「そうか・・・やはり、そのように思っていたのだな・・・その子供がヘリオドラコ夫婦とソルに似ているのは当然の事だ・・・」
ガイアがそう言ってくると、ティア達はその言葉を理解した。
「・・・やっぱり、あの子供はソルだったのね・・・」
「そうだ。お前達が想像していた通りであろう・・・ヘリオドラコ家の子供とはティアにとって、両親の仇の相手でもあるソルの事だったのだ・・・」
ガイアがティア達に話すと同時に、申し訳なさそうな様子に感じられた。
「ヘリオドラコ家は太陽の意味を持つ名を付けられた人間達が後継ぎとして誕生してくる者が多く、ソルも太陽に由来しているのでヘリオドラコ家の血を引いているのは当然であろう・・・」
ガイアが、そのように言ってくるとティア達は、肖像画で見たヘリオドラコ夫婦とソルと同様の瞳と髪をしていた理由に納得をした。
「言われて見れば・・・そんな気がして来たよ・・・」
「まさか、ソルがヘリオドラコ家の人間だったなんて、思いもしなかったわ・・・」
ティア達がそう思っていると、ガイアが続きを話してきた。
「・・・そして、ソルはダークタナトスに能力を魅入られた事で今では側近としてデスドゥンケルハイト軍にいる・・・皆だって、あの強さを見ているのであれば分かるはずだ・・・」
「ガイアはどうしてその事を知っているのですか?これまでも光翼の涙がある場所について知っていたのはどうしてなのでしょうか?」
すると、ステラが気になって聞かれた事でガイアはその答えを出した。
「・・・なぜ、光翼の涙の在り処を知っていたのか・・・その理由は実に明白な事で・・・私がデスドゥンケルハイト軍の一員であったからなのだ・・・」
ガイアは、言い辛そうにステラを見つめながらも自分自身の事を告白した。
107章 七つ目の光翼の涙の場所
「ガイアが・・・デスドゥンケルハイト軍の一員・・・!?」
衝撃の発言を聞いたティア達は驚きが隠せずに愕然となった。
「・・・それって、嘘じゃないよね?」
「嘘ではない・・・これまでだって、お前達と出会ってからはデスドゥンケルハイト軍に悟られないようにと手助けをしていたのだ・・・」
ガイアが本当の事を告げると、ステラは驚いた表情になっていた。
「そんな・・・ガイアがデスドゥンケルハイト軍の一員だったなんて・・・!」
ガイアの正体を知ったステラは彼の事が信じられずにいた。
「ステラ・・・今まで、黙っていてスマなかった・・・」
「・・・ガイア。」
ガイアが申し訳なさそうにすると、ステラは落ち着いた表情で言ってきた。
「構いません・・・ガイアが誰であっても、星竜族の貴方を愛する事ができます・・・」
「ステラ・・・」
ステラは正体を知ってもなお、ガイアの事を愛する事ができると宣言をした。
「ところで、ガイアの正体を知っていたなら、そう言う事を早く言っても良かったんじゃないの?」
イヴがその事について聞かれると、ヘイゼルも申し訳なさそうに答えてきた。
「・・・その事を話してしまえば、光翼の涙が何処にあるか分からなくなってしまうからだ。それに、ガイアもデスドゥンケルハイト軍に絶対の忠誠を誓った訳でもなく、いずれデスドゥンケルハイト軍からこの世界を解放させたいと思っていた事を聞かされた事がある・・・」
ヘイゼルはガイアの正体について知っていたようだった。
「だから、貴方はガイアと出会っていても、言わなかったと言うのですね・・・もしかして、ギルの事も・・・」
「恐らく・・・ギルバートも私と同じ事を考えているはずであろう・・・皆、ガイアがデスドゥンケルハイト軍の一員だと知れば、敵対するかと思って言わずにいた・・・今まで、黙ってきて本当に申し訳なかったと思っている・・・」
ガイアが今まで自分の正体を黙っていた事をティア達に謝罪をしてきた。
「・・・私もティアがエレノアの血を引いた人間だと知った時はこの世界を救う事ができると思って、密かに色々と協力をしていたのだ・・・」
これまで、ガイアがティア達を手助けしてくれていたのはデスドゥンケルハイト軍を倒すためだった。
「私達に協力をしてくれていたのはそう言う理由だったのね。」
ガイアの言う事に納得をしたティアが優しい口調で言ってきた。
「・・・ガイア、デスドゥンケルハイト軍の闇に包まれた世界に光を取り戻しましょう・・・貴方だって、この世界に来た時からそう思っていたはずよ・・・?」
「私も同じ気持ちです・・・これからは、私達の仲間です・・・」
ティアとステラがそう言ってくると、ガイアは笑みを浮かべてから言ってきた。
「仲間か・・・いいだろう。私もかつては、ユニバース様にお仕えになっていた星竜族だ・・・この世界の闇から世界を開放するべく、デスドゥンケルハイト軍と戦う事に協力をしようではないか・・・」
ガイアが共に戦う事を宣言すると、ステラが抱きついてきた。
「ガイア・・・ありがとうございます・・・」
「ステラ、この私をお前達の仲間として受け入れてくれるのだな・・・」
ガイアはステラの様子をみただけで、ティア達も信じている様子が確認された。
「ステラ、ガイア。ギルを説得する事ができるのなら、私達の元に戻って来てくるはずよ・・・例え、戦う事になってしまったとしても・・・」
ティアは戦ってもギルバートを連れ戻すつもりだった。
「ギルバートも命を奪うような事などは望んではいないはずだ・・・なんとか説得をすれば、我々の元に戻って来てくれるのかも知れんぞ・・・」
その時、ティア達の背後から魔力を感じて振り向くと転移の穴が出現していた。
「この穴は・・・まさか、星竜族の転移魔法・・・!?」
「・・・」
出現した転移の穴を見ていると、穴の中から何者かが出てきた。
「・・・やはり、その人間と同行をしていたか・・・」
転移の穴から出てきたのは、ティアの宿敵で両親の仇でもあるソルだった。
「ソル・・・!」
「まさか、俺の故郷だった街に来ていたとは・・・しかも、俺の住んでいた城の前にいたとなれば・・・城の中を調べたていたと言う事だな・・・」
ソルがそう言うと、ガイアは落ち着いた様子で答えてきた。
「そうだ・・・たったいま、お前の住んでいた城を調べさせてもらった・・・だが、光翼の涙が隠されている場所の手がかりが見つからなかったぞ・・・」
「当然だ。父上と母上がデスドゥンケルハイト軍に加担する訳がないだろう。」
ソルがそう答えるとティアがここに現れた理由を訊ねた。
「ソル、私達を殺すためにここへ来たの?」
ティアは警戒を怠らずにソルを睨みつけた。
「まさか・・・ガイアを連れ戻しに来たのですか・・・?」
ステラがそう思って言ったが、ソルは首を横に振って答えた。
「いや・・・お前達を殺しに来るのであれば剣を持っているはずだ・・・俺はただ、七つ目の光翼の涙が何処に隠されているのかを教えに来ただけだ・・・」
ソルがそう言ってくると、ティア達は更に警戒を強めた。
「それは、どういう意味なの?貴方はデスドゥンケルハイト軍よ?それなのに、私達に光翼の涙の場所を教えるなんて・・・一体、なにを企んでいるの・・・?」
警戒をしながらもティアが聞き出そうとすると、ソルは密かにガイアを見つめてから言ってきた。
「・・・悪いが、それ以上は話す事はできない・・・だが、俺は光翼の涙が何処にあるのかは知っている・・・初めから、戦うつもりはないので安心していいぞ・・・」
ティア達は警戒をしながらもこの場で戦うつもりはないのだと理解した。
「・・・それじゃあ、七つ目の光翼の涙がある場所を教えてくれるの・・・?」
「あぁ・・・七つ目の光翼の涙がある場所は、この大陸にある星竜の湖に隠されているぞ。」
「星竜の湖・・・もしかして、伝説と言われているあの湖・・・?」
「そうだ。この世界では、伝説となっている湖でユニバースが造り出したと伝えられている湖だ・・・ガイアもその湖が存在している事について知っているはずだ。」
ソルがそう言うと、ガイアが星竜の湖について説明をし始めた。
「確かに・・・星竜の湖はユニバース様が自然豊かな場所でお造りになられていた・・・しかし、その場所を知っているのは星竜族のみで、人間達の伝説として伝えられているのだ・・・」
この世界では伝説として語られているが、星竜族達の場所を把握しているので人間達には竜の泉が存在している事を知らされてはいなかった。
「二十年前・・・ダークタナトス様はそこに七つ目の光翼の涙を隠された・・・ガイアがいれば辿り着く事ができるだろう・・・話は済んだから俺は戻らせてもらうぞ・・・」
そう言って、ソルは転移の穴に入ろうとした時だった。
「待って・・・一つだけ聞かせて・・・そこに、ギルもいるの・・・?」
ティアがギルバートについて訊ねてみると、ソルは振りむかずに答えてきた。
「あぁ・・・ギルバートもそこで待っている・・・お前が来るのではないかと思いながらも待っていたぞ・・・なんでも、お前達の事を気にしている様子だと俺には感じられたが・・・裏切られても信じている事が伝わって来ているぞ・・・」
ソルがそう言い残して、転移の穴の中へと入って行くとその穴は消滅した。
「・・・あの事があっても、ギルは私の事を思ってくれているのね・・・」
ティアがギルバートの事を思っていると、ソルが星竜族の転移魔法を使っていた事が気になったステラはガイアに訊ねた。
「ガイア、ソルは星竜族の転移魔法を使っていましたが・・・どうして、人間なのに魔法を使っていたのでしょうか・・・?」
ステラはなぜ、ソルも星竜族の転移魔法を仕えたのか聞こうとしたが、ガイアはなにも答えようとはしなかった。
「・・・なにも答えないなんて、よほど言えない事情があるのですか・・・?」
ガイアが話そうとしない理由に、ステラはなにかあると悟り出した。
(・・・必ず、貴方のいる場所に向かうから・・・待っていて・・・ギル・・・)
ティアは心の中で呟くと、ステラ達に言ってきた。
「・・・行きましょう。七つ目の光翼の涙を手に入れてギルを取り戻しましょう・・・」
「分かった・・・星竜の湖は知っているので安心してくれ・・・」
ガイアが竜に変化してからティア達を乗せて、星竜の湖へと目指して飛んで行った。
108章 星竜の湖
「・・・それで、ティア達の様子はどうだったんだ?」
ギルバートは戻ってきたソルにティア達の事を訊ねてきた。
「あぁ・・・どうやら、俺の故郷の町に訪れていて、住んでいた城もガイアと共に調べていたようだったぞ。」
ソルがそう言うと、ギルバートは納得をした。
「そうか・・・アンタの城を調べられて嫌だったか?」
「何を言っている・・・お前の故郷だった村も調べられていたはずだが?」
訳の分からない発言を言われたソルはギルバートの様子を窺った。
「いや・・・アンタの親が疑われたと思って・・・」
ギルバートが焦るように言うと、ソルは気にしていない様子で返答をした。
「まぁいい・・・それよりもティア達がここに来るので準備をしておいた方がいいぞ・・・」
ソルがそう言ってくると、ギルバートは気にしている様子で訊ねてきた。
「なぁ・・・本当に良かったのか?ここに、光翼の涙がある事をバラしても・・・態々、お前が出向いて行ったと思ったら・・・星竜の湖の事を教えてしまうなんて・・・」
ギルバートはそう言いながらもここにある光翼の涙を見ながらソルに訊ねた。
「別に構わない事だ・・・ティア達が来れば戦闘になる・・・そろそろ、戦う覚悟を決めてみたらどうだ・・・?」
ソルにそう言われたギルバートは言い辛そうにしながら言ってきた。
「・・・やっぱり、アンタが戦ってくれないか?名門家の出身であるアンタなら本気を出せば、俺が戦わなくても勝てるはずだろ?」
ギルバートはティア達と戦いたくはないのか、代わりにソルだけでも戦ってくれるように頼み込んだ。
「駄目だ・・・お前も戦いに加わるべきだと言われたはずだ・・・そのために、同行を許された事を忘れた訳ではないだろうな?」
ソルが圧をかけるように言ってくると、ギルバートは渋々と戦う事を決めた。
「分かったよ・・・名誉挽回をしなかったら、父さんやダークタナトス様に叱られる事になっちまうよな・・・?」
「そう言う事だ・・・ここへ来てしまった以上、戦闘を避けようとする事は許される事ではないからな・・・」
「・・・そうだな。」
ソルにそう言われたギルバートはティア達が来るのを大人しく待つ事にした。
『ここだ・・・星竜の湖はここに存在している・・・』
同じ頃、ティア達は星竜の湖がある場所の上空へと辿り着いていた。
「星竜の湖・・・誰にも知られないまま、ずっと存在していたのですね・・・」
『あぁ・・・湖の形をよく見れば、星竜の湖と名付けられた理由が分かるぞ・・・少し、離れるので見てもらいたい・・・』
ガイアは湖から少し距離を取ると、ティア達は見下ろしてその理由に納得をした。
「これは・・・確かに星竜の湖といわれるだけの事はあるな・・・」
湖の形が竜の頭の形をしており、ティア達はガイアの言っていた事を理解した。
『偶然かどうか分からぬが・・・この世界が創造された際に湖が竜の頭の形になっていた事によって、ユニバース様は星竜の湖と名付けられたのだ・・・』
この湖を命名したのはユニバースで竜の頭の形をしていたのが由来だった。
「そうでしたか・・・それで、竜の形になったから、ユニバース様は、そのように名付けたのですね・・・」
ステラが竜の泉が名付けられた理由を聞いて目を輝かせていた。
『ユニバース様は自然も愛しておられたお方であり、我々や人類と共に世界を創造する事が好んでいらしていたのでな・・・』
ガイアが過去の事を思い出しながらも話しているとイヴが声をかけてきた。
「ねぇ・・・思い出に浸るのはいいけど・・・七つ目の光翼の涙が星竜の湖の何処に隠されているのか教えてくれない?」
『そうであったな・・・話はこれぐらいにしておくとしよう・・・』
ティア達は星竜の湖の前に降り立つと、元の姿に戻ったガイアが星竜核晶石を取り出した。
「ギルやソルはいないけど・・・何処にいったのかな・・・?」
辺りを見回しても誰もおらず、目の前に星竜の湖があるだけだった。
「・・・少し、下がっていてくれないだろうか・・・」
ガイアがそう言ってから、星竜の湖の前に立って星竜核晶石を掲げると同時に星の光が放たれた。
「ガイアが星竜核晶石を掲げてみせました・・・きっと、星竜族しか知らない事が起きるのかも知れません・・・」
「えぇ・・・ガイアはこの湖になにかが隠されているのを知っているわ・・・」
目を星のように輝かせているステラにティアがそう言うと、星竜核晶石から星の光が光りだすと同時に星竜の湖が輝きだした。
「星竜の湖が光りだした・・・一体、なにが起きようと・・・」
その時、突如として地響きが鳴ると同時に地面が揺れ始めた。
「なんだ・・・?急に揺れ始めて・・・!」
「慌てるな・・・揺れはじきに鳴り止む・・・」
ガイアが落ち着いた様子で言うと、星竜の湖の中から神殿が浮上した。
「これは・・・神殿が湖の中に隠されていたのか・・・!」
「私の星竜核晶石から放たれた光によって、星竜の湖に隠されていた神殿が出現したのだ・・・この神殿を浮上させるのには星竜核晶石なのだ。」
ガイアがそのように説明をすると、ティアは星竜族が建てた塔の事を思い出した。
「そう言えば・・・塔にいた時も星竜核晶石を使っていたわね。」
「星竜核晶石は星竜族が所持する石で我々に関する場所で使用する事で特別な現象を発生させる鍵としての役割もなっているのだ・・・」
ガイアがそう説明をすると、ステラはなにかを思い出して言ってきた。
「そう言えば聞いた事があります・・・星竜核晶石は星竜族が持っている星の魔力が感じられる不思議な石ですが・・・その中には星竜核晶石の力を使って塔のように不思議な現象が発生して、星竜の湖のようになにかが起きる場所が存在すると伝えられていました・・・」
湖の中から現れた神殿を見つめながらもステラはそう説明をしてきた。
「そして、この神殿も星竜核晶石の力を使った事によって、湖の中から神殿が出現したと言う事ですね。」
ステラの発言を聞いたガイアは嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「その通りだ・・・星竜族の事を色々と知っているのだな・・・」
ガイアは星竜族に詳しい事に納得すると、ステラは穂を赤らめて照れ出した。
「はい・・・小さい時から、ずっと星竜族について色々と学んできましたので・・・」
「そうか・・・ユニバース様とお会いになられる事ができれば、ステラとは仲良くなられていたはずだ・・・」
もしも、ユニバースと出会う事があれステラは喜ぶと思ってガイアは感心した。
「ガイア・・・神殿の中に入りましょう・・・七つ目の光翼の涙だけではなく、ギルとソルも神殿の中で待っているわ・・・」
こうして、ティア達は星竜の湖の神殿の中へと入って行った。
「・・・ガイア、いや・・・ティア達がこの神殿へと足を踏み入れたようだぞ・・・」
ソルはティア達が神殿の中に入って来た事に気付いてギルバートにそう言った。
「そうか・・・とうとう、来ちまったか・・・」
「あぁ・・・ここへ来れば戦闘になるだろう・・・」
ギルバートは不安そうに言った事に対して、ソルは平然とした様子で返事をした。
「ギルバート、いい加減に戦う覚悟を決めておいた方がいいぞ・・・」
「・・・別に言われなくても分かっているって・・・」
ギルバートがそう言った直後、一瞬だけだが体になにかが感じられた。
「どうかしたのか?」
「いや・・・なんでもねぇよ・・・」
そう言ったが、ギルバートにはなにかを感じた事が確かであった。
(・・・なんか、妙な感じがしたが・・・気のせいか・・・?)
そう思いながらも、ギルバートは気にしていた。
109章 星竜の湖に隠された神殿
「これが、星竜の湖に隠された神殿か・・・」
神殿の中へと入ったティア達は神殿の中を見回してみた。
「・・・さっきまでは、湖の中に沈んでいたのに・・・水が入ってきていないのね・・・」
先程まで水中に沈んでいたのにも関わらず、内部は水が浸入した痕跡がなかった。
「水が浸入しなかったのは、結界が張られていたからであろうな。」
「結界?」
「あぁ・・・私が星竜核晶石を使ったので、水上に上がった時点で結界が破られているのだ・・・」
星竜核晶石を使って星竜の湖に隠されていた神殿を浮上したと同時に結界が破られたと言う事だった。
「つまり、ガイアが星竜核晶石を使ったので神殿が湖の中から現れてから結界が破れたのですか・・・?」
「その通りだ。だからこそ、今まで神殿の中に水が入って来なかったのはそう言う理由だ・・・神殿内は濡れておらず水が浸入した痕跡が無いのが証拠だ。」
神殿の周りに張られている結界の御蔭で、神殿内に水が入って来る事がなく浸水をせずに済んでいた。
「そう言えば、ガイアは星竜の湖に神殿があった事は知っていたのですか?」
「勿論・・・星竜の湖に神殿が隠されていた事は知っていた・・・どのように造られているのかも構造も知ってはいるぞ。」
ガイアがそう言った直後、目の前にモンスターが立ち塞がってきた。
「そして、この神殿には星竜族の世界で生息していたモンスターも生息しているのだ。」
現れたのは竜のモンスターで星竜族の世界にも生息していたようだった。
「ここは、私に任せてもらおう・・・」
ガイアがそう言うと、竜が尻尾を使って攻撃を仕掛けてきた。
「ふんっ!」
ガイアが剣を振るうと、モンスターの攻撃を弾いた。
「まだ、来るようだ・・・」
モンスターが噛み付こうとガイアに襲い掛かってきた。
「そこだっ!」
ガイアが剣を振るってモンスターを倒した。
「これで、先に進める・・・」
すると、ステラが心配そうに倒したモンスターを見ながら聞いてきた。
「あのう・・・本気で攻撃をしたように見えましたが・・・?」
「心配はするな・・・ちゃんと、手を抜いたからな・・・」
ガイアは初めから手を抜いていて戦っているようだった。
「良かったね・・・てっきり、殺してしまったのかと思った・・・」
「星竜族は命を奪う事は望んではいない種族です。殺生は一切しないようにしていますので疑わないでください。」
ステラがイヴを叱るように言ってきた。
「ゴメンね・・・それよりも先に進まない?」
そのままティア達は神殿の中を進んで行った。
「・・・神殿の中なのに緑が生い茂っているね・・・」
進んで行く内に植物が生い茂っている光景が目に入ってきた。
「本当だね・・・どうして、神殿の中に植物が生い茂っているんだろう・・・?」
アランも不思議に思っていると、ガイアが「時期に分かる・・・」と言ってきた。
「見ろ・・・奥から、緑を感じられないだろうか・・・?」
ガイアがそう言って、奥へと進んでみると緑が生い茂っている部屋に着いた。
「これは・・・花や木が溢れていて自然で溢れかえっています・・・」
ティア達は緑が生い茂っている空間を見回してみた。
「ここからは、自然が溢れ出ている空間になっており我々が造り出しているのだ。」
ここにある緑は星竜族達が作り出していた。
「それにしても・・・これだけの自然があるなんて・・・でも、どうして神殿の中に植物があるのかな・・・?」
「日光と風のない空間で緑が生えているようだが・・・ここにある植物達は皆、環境の良い場所で育っていると見えるな・・・」
アランとヘイゼルがそう言うと、ステラが魔力を感じさせながら言ってきた。
「皆・・・周りの魔力を感じてみてください・・・」
「いいけど・・・?」
ステラにそう言われたティア達は辺りの魔力を探り始めた。
「これは・・・星の魔力・・・?」
「この魔力は全体から感じられてくるわ・・・ガイア、ここは星属性の魔力で覆われているから、神殿の中でも自然が生き続けているのね・・・」
神殿内には星属性の魔力が覆っているようだった。
「よく分かったな・・・この部屋には不思議な星の魔力で覆われている事により、神殿内でも美しい緑や自然が生き続ける事ができているのだ・・・」
神殿の中にある植物達は覆っている星の魔力の影響で日光もなく風の吹かない場所でも緑が生い茂る事ができているのだった。
「そうだったの・・・自然はあるのに動物や虫は一匹も見当たらなかったのはそう言う事だったのね・・・」
ティアがそのように言うと、アランの背筋が凍り付いた。
「そっ・・・それは、そうだね・・・もしも、ここに動物や虫がいたら・・・きっと、環境に良い場所だったのかも・・・」
アランは恐怖を抱きながらも苦笑いをした。
「・・・想像していても、虫は怖いのね・・・」
「まぁね・・・先に行きたいけどいいかな・・・?」
虫を想像してしまったアランは虫による恐怖が沸き上がってきて体が震えていた。
「そうだな・・・それでは、先へ向かうとしよう・・・これ以上、アランの苦手な虫を想像してしまわないように・・・」
ティア達はこれ以上、アランの顔色が悪化しない内にこの場を後にした。
「先程の場所は植物が生い茂っていて自然豊かな環境でしたね・・・」
ステラは植物達が心に残ってそう言ってきた。
「えぇ・・・ステラはさっきの部屋で見た自然がとても気に入ったのね・・・見た事のない植物も生えていたけど・・・星竜族の世界みたいで、とてもいい場所のように感じられたわ・・・」
「はい。中には星竜族の本で見た植物も生えていましたが・・・もしかして、あの植物は星竜族の世界から持ってきたと言う事なのでしょうか?」
ステラが目を輝かせながらもガイアにそう訊ねてみた。
「・・・先程の場所で生えていた木や花が星竜族の世界の物だと言う事に気付いていたようだな?」
「星竜族の世界の・・・やっぱり、あそこで生えていた植物達は星竜族の世界にも生えていたのですか・・・?」
ステラは本物の星竜族の植物だった事を聞いて更に目を輝かせた。
「あぁ・・・見た目は普通の植物に見えるが、星の魔力が強い人間には特別な植物だと言う事が伝えられているぞ・・・」
星竜族の世界に存在していた植物は普通の人間だと人間の世界でも生えている植物に見えるが、星属性の魔力が強い人間が魔力を探ってみれば、星竜族の世界に存在している植物だと見分ける事ができると言われている特別な植物だった。
「そうだったのか・・・私達にはそのように感じなかったが・・・唯一の星属性の魔力を持つステラが星属性の魔力を感じられたと言う訳なのか・・・」
ヘイゼルがそう納得をすると、ティアはある事が気になった。
「・・・でも、どうして私も感じる事ができたのかしら・・・?」
「そう言えば・・・ティアは光属性の魔力しか持っていませんでしたね?」
「えぇ・・・私にも感じられたのはどうしてなのかしら・・・?」
ティアがなぜ、自分にも植物から星属性の魔力を感じる事ができたのか気になった。
(・・・星の魔力を持っていないティアにも感じる事ができた・・・やはり、エレノアの血を引いている人間には分かるのだな・・・)
ガイアが、そう思っているとティア達はとある部屋の中に入っていた。
「この部屋はなにかしら・・・足元に幾つかの星が描かれているけれど・・・よく見てみれば、夜空の中に星があるように描かれているわ・・・」
ティア達が辿り着いた部屋は大部屋の中心に幾つもの星が描かれた巨大な図面があった。
110章 竜の星座
「夜空の中に星達が描かれているようね・・・」
ティア達は幾つもの星が描かれた図面を見下ろしてみた。
「これは、もしかして・・・星図と言う物ではないのでしょうか・・・?」
ステラが足元に描かれていた図面は星図だと言ってきた。
「星図?それは、一体なんなのだろうか?」
ヘイゼルは知らない様子を見て、ガイアが星図について説明をし始めた。
「星図とはあらゆる星々の位置と輝度を平面上に記された図として適切に映し出される事によって図示された物だと伝えられているのだ。」
ガイアがそう説明をすると、アランは星図を見て思い出した。
「そう言えば・・・僕も星竜族に関する本で読んだ時に星図を見た事があったけど・・・本物を見たのは初めてだよ・・・」
アランがそう言うと、ガイアは星図について説明を始めた。
「まずは、目の前に閉まっている扉を見てくれ・・・」
ガイアがそう言うと、奥の方に扉がある事に気が付いた。
「扉が閉まっているのを見て分かると思うのだが・・・この図面を使って星座を作らなければ、扉を開ける事ができない仕組みになっているのだ・・・」
そう言われたティア達は足元にある図面を目にした。
「ここに、描かれている星を全て結んでいけば、扉が開くようになっていると言う事なのだろうか?」
ヘイゼルはそう思って言ったが、ガイアは星図を見ながら言ってきた。
「いや・・・星座は正しい結び方でなければ星座を作る事ができんのでな・・・正しい順で星を繋いでいかないようになっているぞ・・・」
図面には幾つも星はあったが、星座と結び合わせる事のできない星も紛れていた。
「つまり、順番どおりに結ばないといけないと言う事ね・・・でも、これだけあったらどの星を結んで行けばいいのか分からないよ・・・」
「これは、ちゃんと星を結ばなければ星座にはならんぞ・・・」
ガイアは星図を見つめながらそう言ってきた。
「でも、最初の星はどれだろう?全部一緒に見えてどれか分からないよ?」
星図の星は全て同じなので、どれから結んでいけばいいのか分からなかった。
「困ったわね・・・どんな星座になるのかも分からないわ・・・」
ティア達が悩んでいると、ガイアが冷静に言ってきた。
「心配するな・・・これを使えば、どれを結べばいいのか分かる・・・」
ガイアはそう言って、星竜核晶石を取り出すと星の光が放たれた。
「なんだ・・・部屋が急に暗く・・・?」
「・・・これは、星座を結ぶために部屋が暗くなったのだ・・・どの星から結べばいいのかが分かるようになるぞ・・・」
部屋が完全に暗くなると、星図にある星が光を放ち始めた。
「見て・・・星が光りだしたよ・・・」
ティア達は星図を見てみると、星図の中にある一つの星が光り出していた。
「この星が光っていると言う事は・・・ここから他の星と結び合わせていけば星座が作られていくと言う事なのね・・・」
「でも、どうやって星を繋ぎ合わせるのかな・・・?」
どのように星を結んで行けばいいのかと思っているとガイアが剣を抜いた。
「任せておけ・・・私の剣を使えば、星同士を繋ぎ合わせる事ができるのだ・・・」
そう言って、ガイアは光っている星に剣を刺してから引くと、線が引かれていき近くにあった星に結び合わせるとその星が光りだした。
「そして、これと線を引くようにすれば・・・」
ガイアが、別の星まで剣を引きながら移動すると線が引かれた。
「また、違う星が光りだしました・・・そうすれば、星座が作られているのですね
・・・」
ステラが興味津々に見ていると、ガイアが星を結ばせながら言ってきた。
「これを何度も繰り返している内に星座に見えてくるようになっていくのだ・・・」
それから、ガイアが何度も光る星の元まで線を引き続けていくと、星を結び合わせた事で徐々に星座が作られていった。
「・・・徐々に星座になっていっているな・・・」
「うん・・・・しかも、この星座はどう見ても・・・」
星座が完成に近づいていく中でステラが目を輝かせていった。
「はい・・・これが、星竜族にとっては特別な星座だと思います・・・」
ガイアが最後の星を結び合わせた事で星座が完成した。
「できたぞ・・・これが、我々にとっては大事な星座だ・・・」
最後の星を結んだ事によって、出来上がった星座は星竜族の紋章だった。
「やはり、星竜族となれば・・・その紋章になると思ってはいたぞ・・・」
星図の星を結び合わせて出来上がった星座は星竜族の紋章だった。
「でも、星座は完成したけどなにも起こらないよ?」
星座が完成しても、なにも起こらなかった。
「静かに見ていろ・・・もうじき、星座が光りだすであろう・・・」
ガイアがそう言うと同時に星座が光りだした。
「これは・・・星座から、星の魔力が溢れ出ているわ・・・」
ティアの言葉を聞いたステラが目を星のように輝かせて見ていた。
「そうだ。人間達では星空が見る事ができる星だが、星竜族にとっては重要な物として扱われているのだ。」
すると、星座に反応した扉が星竜族の紋章が浮かび上がりゆっくりと開きだした。
「扉が開いたぞ・・・これで、先に進めるな・・・」
ティア達は開いた扉から出ようとすると、ステラがまだ星座を見つめていた。
「ステラ、もう行くよ・・・」
「待ってください・・・まだ、星座が光っています・・・」
ステラは星座を見つめながら言ったが、星座の光が徐々に失われていった。
「光が・・・消えてしまいそうです・・・」
「しばらくすれば、星座は消えてしまう・・・この部屋の明るさは元に戻ると同時に光が消えるようになっている・・・」
星図の星座が消えたと同時に部屋全体が明るくなった。
「・・・消えてしまいました・・・星竜族の世界の星座をもっと見たかったです・・・」
ステラが寂しそうな口調で言うと、ガイアはステラの手を握った。
「行こう・・・もうこの場所には用はないはずだ・・・」
ガイアはステラの手を握った状態で奥の扉から部屋を出た。
(・・・ステラ、貴方も消えていく星座の光は命が消えていくように感じたのね・・・)
ティアはステラの表情を見てそう思っていのだと感じた。
「・・・奥の方から光翼の涙があるわ・・・それに、ギルとソルの魔力も一緒に・・・」
ガイアとステラの後に続いて奥へと進むと、ティア達は七つ目の光翼の涙がある部屋へと辿り着いた。
「あったぞ・・・七つ目の光翼の涙が・・・」
部屋の中に入ると、光翼の涙がある事が確認された。
「光翼の涙があるのは分かったが・・・ソルとギルバートが何処にも見当たらないが・・・?」
「いいえ。魔力を感じたのであれば、待っている事には間違いありません・・・」
ティアがそのように言うと、光翼の涙の前にソルが目の前に現れた。
「当然だ・・・お前達が来るまで逃げる訳がないだろう・・・」
「ソル・・・貴方がここにいると言う事はギルもここにいるのね・・・」
ティアがそう言うと、ギルバートが姿を現した。
「ティア・・・来ちまったか・・・」
「ギル・・・」
ギルバートはティア達を見る中でガイアがソルの方を見て言ってきた。
「ソル・・・私達がここへ来る事はお見通しと言う事か・・・」
「あぁ・・・ダークタナトス様にもそう思われておられたのでな・・・」
そう言うと、アランがここにいる事が気になって訊ねてきた。
「君達がここにいるとなれば・・・どうやって、この神殿の中に入ったの?」
アランの質問に対して、ソルが鎧の中からなにかを取り出すとそれをティア達に見せてきた。
「それは・・・もしかして・・・!」
ソルの手にしているのは、太陽の形をした星竜核晶石だった。
111章 ソルとガイアの関係
「星竜核晶石・・・どうして、貴方も持っているのですか・・・!?」
ステラはソルが星竜核晶石を所持していた事に驚いていると、ガイアはなにやら思い詰めた表情になっていた。
「・・・星竜核晶石は星竜族の持っている石のはずよ・・・人間である貴方が持っているなんて・・・」
星竜族の持つ石を人間であるソルが持っている事にティア達は驚きを隠せなかった。
「お前達は驚いていると思うが・・・俺はこの星竜核晶石を使って、この神殿の中に入っているぞ・・・当然、入った直後に神殿を湖の中に戻しておいたぞ・・・」
ソルの持つ星竜核晶石を使って神殿の中へと入ってから、神殿を星竜の湖の中へと再度沈ませていたと言うのだった。
「まさか、人間のアンタが星竜核晶石を持っているなんて・・・いくらなんでもおかしすぎるよ・・・!」
イヴが信じられずにそう言ってくると、ソルはその理由について言ってきた。
「・・・なぜ、人間である俺が星竜族の所持する星竜核晶石を持っているか・・・お前達といるガイアに聞けば分かる事だ・・・」
ソルがガイアの方を見ながら言ってくると、ティア達は彼を見つめてまさかと思った。
「ガイア・・・もしかして、貴方が星竜核晶石を・・・?」
すると、ガイアは意を決したのか事実を話し始めた。
「あぁ・・・ソルの持つ星竜核晶石は私が託した物だ・・・」
ガイアが言い難しそうにしながらティア達に告げてきた。
「ガイアが星竜核晶石をソルに・・・?」
しかし、ソルが所持しているのを見た以上、ガイアが本当の事を言っているのだと悟った。
「なにを言っている?俺が見せて来たのであれば、事実である事には変わりはないぞ。」
ソルにそう言われて、ティアは彼との関係について訊ねてみた。
「ガイア・・・ソルとの関係について説明をして・・・」
関係を聞かれたガイアはステラとソルを見てから、ティア達に本当の事を話し始めた。
「これまで、話してはこなかったが・・・いや、黙っていたと言えよう・・・ソルとは私の弟子の様な関係を持つ人間なのだ・・・」
ガイアが申し訳なさそうにしつつもソルとの関係を話してきた。
「信じられません・・・」
愕然とするステラにガイアは「嘘ではない・・・」と気まずそうにしながら答えた。
「あの街でソルが現れた時を思い出してくれ・・・私と同じような転移魔法を使っていたはずだ・・・」
そう言われたティア達はソルがガイアと同様の転移の穴から出て来ていた事を思い出した。
「・・・あの街でガイアと同じ転移魔法の穴から出てきたのはそう言う事だったのね・・・」
その街にいた時に、人間であるはずのソルが星竜族の転移魔法で穴から現れていたのはそう言う事だった。
「・・・今まで黙っていてすまなかった・・・話してしまえば、私の事を信用してくれずに敵対をさせてしまいたくはないと思って言わなかったのだ・・・」
ガイアはソルとの関係を言わずにいたのはティア達と敵対をさせてしまいたくはないと思って伝えようとはしなかったのだった。
「それじゃあ、ソルが星竜族の転移魔法が使っていたのも、ガイアが教えていたからなんだね・・・?」
アランに問われたガイアは無言で頷いた。
「転移魔法だけでなく・・・ガイアに鍛えられてきた事によって、俺は今のような力を手にする事ができている・・・」
ガイアは転移魔法だけでなく、剣術もソルに教えているようだった。
「ガイア・・・それじゃあ、ソルに人を殺すような事を教えたとでも言いたいの
・・・?」
イヴが疑いながらも言ってくると、ガイアはなにも言えなくなった。
「それは・・・」
ガイアがなにかを言おうとするとヘイゼルが言ってきた。
「・・・ガイアはダークタナトスに命じられて、ソルのお目付け役として共に行動をしているとソルから聞いた事があった・・・」
ヘイゼルは過去にソルからそのような事を聞かされた事があると言ってきた。
「つまり、ガイアとソルの関係は師匠と弟子だったと言うの・・・?」
「あぁ・・・お目付け役としてガイアに鍛えられてきたソルは自身の天才的な能力が開花したのか、今のような力を得た事でダークタナトスの側近になったと聞く・・・」
ヘリオドラコ家の血を引いていたソルはガイアの教えによって能力が引き出されていた。
「そう言う事だ・・・それにより、俺は側近となった・・・」
ソルがそう言うと、ヘイゼルの方を見つめながら言ってきた。
「ヘイゼル・・・お前はティアがエレノアの末裔だと知って、聖地を脱走していたな・・・」
「・・・私が脱走したのは罪も無い人達を殺す事などしたくはなかったからだ・・・」
「そうだったな・・・お前と出会った時から命を奪うような事はしようとはしない人間だと言う事は分かっていた・・・かつては俺の部下と置いてやっていたが・・・まさか、敵同士になるとは思いもしなかったぞ・・・」
ソルとヘイゼルにも関係があり、上司と部下の関係を持っていた。
「今の話を聞いてみたら・・・ヘイゼルさんはソルの事を知っていたようでしたね・・・」
「・・・私もガイアと同様に話さない方がいいと思っていたからだ・・・」
ヘイゼルが初めて出会った時から言わなかったと答えてきた。
「まぁ・・・俺はアンタと一度も出会った事がないけどな・・・」
ギルバートはこれまで暗殺部隊に所属していたので、一度もヘイゼルと顔を合わせた事は一度もなかった。
「暗殺部隊は他の部隊と関わる事が全くないから当然だな・・・」
ギルバートがそう思っていると、ソルが両手剣を手にしていた。
「・・・そろそろ、お前達と戦うとしようか・・・」
そう言いながら、ソルは両手剣を構えてきた
「皆、戦う覚悟はできているのか・・・?」
ガイアが剣を構えながら言ったが、ティアだけは剣を抜こうとはしなかった。
「ティア、なにをしている・・・早く、剣を抜け・・・」
「えぇ・・・」
ティアはギルバートを見つめながらもゆっくりと剣を抜き構えた。
「ギル・・・」
「ティア・・・」
二人がお互いに見つめているとソルが言ってきた。
「・・・ギルバート、いよいよ戦う時が来たぞ・・・いい加減に覚悟を決めておかなければ先頭に支障をきたすぞ・・・」
「分かっているよ・・・そんな事は・・・」
戦う事に対しての拒否感を抱きながらもギルバートは双剣を抜いた。
「ギルバートはともかく、ソルの方は本気で戦わないとやられてしまう事になるぞ・・・」
そう言ってから、ガイアが動き出してソルと戦い始めた。
「・・・お前と敵対して戦う時が来るとは思いもしてはいなかったぞ・・・」
「同感だ・・・悪く思わないでくれ・・・」
ソルとガイアの剣が何度もぶつかり合った。
「ティア、私達も戦いましょう・・・」
「えぇ・・・」
ティアは迷いながらも戦闘に加わる事となった。
112章 ソルとの戦闘
「強い・・・だが、負ける訳にはいかん・・・!」
ティア達はソルに攻撃を仕掛け続けていた。
「はあっ!」
イヴは思いっきり槍で突いて攻撃をした。
「甘いな!」
ソルがイヴの攻撃を受け止めると、アランが詠唱を終えて魔法を唱えてきた。
『マジカルチャンク!』
それと同時にアランが魔法を唱えて魔力で作りだされた塊を放った。
「ぐっ・・・!」
魔法の塊が飛んでくるのを見たソルはとっさに避けた。
「そこっ!」
その瞬間、ティアは隙を見てソルに攻撃を仕掛けた。
「お前か・・・ちゃんと、迷いが生じずに攻撃ができているようだな・・・」
ソルにそう言われながらもティアは攻撃をしたが両手剣で防いだ。
(防がれた・・・ここは、一度距離を取った方が良さそうね・・・!)
ティアは一度距離を取ってから剣を構えるとソルは装着していた鎧を見つめた。
「流石だな・・・今の攻撃は危なかったぞ・・・」
そう言って、ソルは彼女の攻撃で鎧にティアが付けた傷が付いているのを目にした。
「私はこれまで貴方達や強いモンスターと戦ってきたから、いつまでも命を奪ってしまう事に迷いを生じているとは思わない方がいいと思うわ・・・」
ティアはこれまでの旅で成長しているようで、人間同士の戦闘に苦悩を生じる事もなく戦えるようになっていた。
「その様子だと・・・両親の仇を討つと言う目的は諦めてはいなさそうだな・・・」
ソルがそう言いながらも双剣を手にしたまま戦闘に加わらずにいるギルバートの方を見た。
(やはり、ギルバートは戦いたくないないと思って、戦闘に加わろうとしないな・・・)
ソルがギルバートの様子を見ている時だった。
「隙あり!」
ギルバートの方を見ていたソルの隙を見て、イヴが槍を突いて攻撃を仕掛けてきた。
「なっ・・・!」
その事に気付いたソルはとっさに避けたが、槍の突きが穂を掠めさせた。
「アンタが余所見をしている隙に攻撃をしたけど・・・やっぱり、ヘリオドラコ家は一筋縄ではいかないみたいだね・・・」
「俺とした事が・・・まぁいい、今度は油断などしないぞ・・・」
そう言って、ソルがティアとイヴに向けて鋭い斬撃を繰り出してきた。
「・・・ティア達もアイツとやり合えているな・・・」
ギルバートはその場で動かずにティア達の戦闘を見ているだけだった。
(・・・けれど、俺は戦いもせずに、ここで突っ立って戦闘を見ているだけだ・・・なのにコイツ等と戦いたくない気持ちが勝って戦いに加わる気が起きねぇ・・・)
ギルバートは先程からティア達とは戦いたくない気持ちが勝ってしまい、戦闘に加わろうとする気にはなれずにいた。
(・・・俺はどうすればいいんだ・・・?このまま、戦いもせずに終わるまで見ているだけか・・・父さんに言われた通りにソルと一緒にアイツ等を殺すか・・・いや・・・そんな事をしちまえば、デスドゥンケルハイト軍の奴等と同じになっちまう・・・俺はどうすればいいんだよ・・・!?)
ギルバートはどうすればいいのか迷っていると、ティアとガイア以外は戦闘不能の状態になっている事に気付いた。
「・・・やはり、私達だけになってしまったようだな・・・」
「えぇ・・・ソルの実力に連いて来られるのは、私達だけだったようね・・・」
ティアとガイアが、そう言っているとアランが言ってきた。
「・・・僕はまだ戦えるよ・・・ヘイゼルさんは二人と一緒に離れていて・・・」
アランはそう言ったが、ステラ達は下がろうとはしなかった。
「ですが・・・あの人はとっても強いです・・・」
「私達なら大丈夫だ・・・必ず、七つ目の光翼の涙を手に入れ、ギルバートをこちらへと連れ戻す・・・なので、皆は離れていてくれないだろうか・・・?」
ガイアにそう言われたステラ達は離れて見守る事を決めた。
「分かりました・・・絶対にギルを助け出してください・・・」
ステラはティアとガイアにそう言ってから、ステラ達と共に離れて見守る事となった。
「いいのか?お前の強さを超えているぞ?」
「・・・分かっているよ。それに、僕の体力と魔力も残っているから、まだ戦う事ができるよ。」
アランがそうガイアに言うと、ソルが両手剣を構えながら言ってきた。
「どうやら、まだ戦える人間がいたようだな・・・だが、その人間が加わっても戦況が変わる事などないと思うが・・・まぁ、無理もないだろうな・・・」
そう言って、ソルはギルバートの方を見て言ってきた。
「ギルバート、ここはお前に任せよう。」
「なんでだ?アンタがいれば、コイツ等全員を倒せるはずだぞ?」
ギルバートはティア達とは戦いたくないような言い方で反論をしてきた。
「それもそうだが・・・お前はティア達の事を知っていると言っていたはずだ・・・汚名返上もしようとする事も忘れたのか?」
「・・・」
ソルにそう言われて来た事でギルバートはなにも言えなくなった。
「そうか・・・お前は一度も先頭に加わろうとはせずに、黙って見ているだけだったとダークタナトス様に報告をしても問題はないな?」
ソルが脅すように言われて、ギルバートは仕方なく戦う事を決めた。
「仕方ねぇな・・・俺も殺ったらいいだろ・・・?」
ギルバートは渋々と双剣を抜いてソルの隣に立った。
「それでいい・・・見せてもらうぞ・・・お前がエレノアの末裔を始末し、他の人間達や裏切り者を殺す事ができるかどうかを・・・」
そう言いながら、ソルは後ろへと下がっていった。
「あぁ・・・ちゃんと、戦ってみせるから見ていてくれよな・・・」
ギルバートは気まずそうにしながらもソルにそう言った。
「・・・ギルバート、私達と戦う事になってしまうとは・・・」
「まぁな・・・本気でお前等と殺し合うなんて・・・お前だけじゃなくて、ガイアやアランまでも一緒に戦う事になっちまう事になっちまうな・・・」
ギルバートはそう言っておきながらも不服そうな表情をしていた。
「ギル・・・本当に私達を殺すつもりで戦うつもりなんだね・・・?」
「・・・さっきから、そのつもりだっただろ?」
しかし、ギルバートからは殺気が感じられずに殺したくない様子に思えた。
「いいえ・・・貴方は初めから、このような事になる事は分かっていた・・・けれど、無理をしてまでも戦ってもなにも解決にもならないはずよ?」
「それは、俺だって同じだ・・・本当はお前等とは殺りたくはなかったさ・・・けれど、デスドゥンケルハイト軍の任務である以上は・・・嫌でもティアやアラン達まで殺っておかなくちゃならねぇんだ・・・!」
ギルバートは殺す事に迷いを生じながらも本心を全てティアに打ち明けてきた。
「これ以上、父さんやダークタナトス・・・様に失望されたくねぇ・・・俺と戦って・・・ここで死んでくれよ・・・」
双剣を構えようとすると、ギルバートが涙目になっていた。
「ギル・・・」
「・・・本当は私達と戦いたくはないと思っているはずだ・・・それを我々の手で救い出し、ギルバートを闇から解放するぞ・・・」
「僕達がいないと、ギルは助け出す事ができない・・・絶対に助け出そう・・・」
ティアとガイアとアランはギルバートを救うために戦う事を決意した。
「・・・行くぞ。」
そう言った直後、ギルバートはティア達に襲いかかって来た。
113章 ギルバート苦悩の戦闘
「これは・・・大変な戦いになりそうかも・・・」
ティア達が戦っている様子を見て、とんでもない戦いになると予想した。
「お互いに戦いたくない相手との戦闘をしているのだ・・・手加減をしているだけなのかも知れん・・・特にガイアもデスドゥンケルハイト軍から離反しておきながらも本気で戦おうとはしていないのが分かる・・・」
ヘイゼルはティア達に加勢しているガイアの様子を窺うと、ステラもティア達の動きを見てそう思えてきた。
「それもそのはず・・・私達はこれまで殺さないように戦ってきたから・・・今回もそう言う風にして戦っているように見えてくるよ・・・」
すると、痺れを切らしたのかソルがギルバートにこう言ってきた。
「・・・なぜ、本気で殺そうとしない?いつまで、戦い続けているつもりだ?」
ガイアがティア側にいるためか、ギルバートは苦戦を強いられているにも見えた。
「あぁ・・・だけど、ガイアがいるからどうにも・・・」
「言い訳は不要だ・・・どう見ても、殺さないように戦っているようにしか見えないが・・・まさか、殺したくないから手を抜いている訳ではないだろうな?」
そのように言われたギルバートは、図星を突かれたかのようにしつつも誤魔化した。
「そんな訳ないだろ・・・急に、なにを言うんだよ・・・?」
「だったら、殺そうとすればすぐに終わられるだろう・・・暗殺部隊に所属している人間であれば、すぐに戦闘を終わらせる事ができるはずだ・・・」
ギルバートは、ソルの発言を聞いたのか、ティアに本気の攻撃を仕掛けてきた。
(悪く思わないでくれ・・・お互いに手を抜いて戦っていたが・・・アイツにばれちまう
からな・・・!)
ギルバートが、そう言うとその背後にいたアランが魔法を唱えてきた。
『マジックチャンク!』
アランはギルバートに向けて魔力の塊を放った。
「ちっ・・・!」
ギルバートは、ティアと共に魔法の塊を避けた。
「・・・今、本気で当てようとしてきたよな・・・ティアに当たったらどうするつもりだ?」
「ゴメン・・・本気で、攻撃をしてきたから・・・つい・・・」
そう謝罪をしたが、ギルバートはアランに攻撃を仕掛けてきた。
「・・・!」
ガイアは、ギルバートよりも速く移動してアランの前に立ち攻撃を防いだ。
『神風烈翔!』
それと同時にはギルバートは荒々しい神風の如くアランに斬りかかってきた。
「危なかったな・・・お前はもう少しで斬られる所だったぞ・・・」
アランはとっさの反応で避けていたが、体に少々の傷ができていた。
「うん・・・でも今の攻撃は本気でやってなかったよ・・・?」
「・・・気のせいだろ。」
ギルバートがそう言うと、ティアが攻撃をしながら言ってきた。
「・・・貴方と戦っているのは貴方を倒すためじゃなく・・・貴方をデスドゥンケルハイト軍から救い出すために戦っているの・・・」
「俺を救うために・・・?」
ティアの言葉を聞いたギルバートは戦闘の動きを止めた。
「そうよ・・・火山にいた時に私を殺そうとしていたのに貴方はそうしなかった・・・それに・・・これまでの旅だって、私達を助けてくれていたはずよ・・・?」
ティアが説得をするように言ってくると、ギルバートはこれまでの事を思い返した。
「確かに・・・お前と偶然出会って、エレノアの一族だって知らされた時は驚かされたさ・・・お前と出会ってからというもの・・・お前を暗殺しようとしていたが・・・なんでか、分からないが・・・それができないまま、いつの間にか光翼の涙を集める手伝いを
しぎまっていたんだ・・・」
ギルバートが過去の事を思い出していく内に苦い表情になっていった。
「・・・それに、お前まで一緒に旅をすると言った時は驚かされたぜ・・・」
ギルバートがアランを見てそう言ってきた。
「そうだね・・・君がデスドゥンケルハイト軍の一員だって知った時もびっくりしたけどね・・・」
「そのお陰で俺の事がバレたらと思ってヒヤヒヤしていたぜ・・・」
そう言いながら、ギルバートは苦笑いをしてきた。
「・・・それでも、私達の手で貴方をデスドゥンケルハイト軍から救い出して見せるわ・・・」
「・・・」
ティアの発言を聞いたギルバートはこれ以上戦闘を続ける意味がなくなっていた。
「ギルバート、これ以上の戦いは止めて戻って来い・・・ティアだけでなく、ステラ達も
同様にお前が戻ってくるのを待ってくれている・・・」
ガイアが剣を振るいながらギルバートの双剣を足元に叩き落とした
「そうだよ・・・これ以上、デスドゥンケルハイト軍の一員として生きていく必要はないよ・・・」
「デスドゥンケルハイト軍に連れて行かれてからも、貴方はずっと助けてもらいたかったと思っていたはずに違いはないわ・・・」
「それは・・・」
すると、ティアがギルバートの前に移動すると片手を差し出した。
「私達を信じて・・・ステラ達だって、貴方が戻ってきてくれる事を望んでいるわ・・・」
ギルバートはティアに言われた事でステラ達の方を見てみると、デスドゥンケルハイト軍から抜け出し戻ってきてくれる事を望んでいた。
「・・・そんなに俺の事を思ってくれていたんだな・・・本気でティアを殺そうとしたのにも・・・?」
「えぇ・・・だから、これ以上の戦いは止めましょう・・・そして、デスドゥンケルハイト軍からこの世界を開放して命の光が輝く世界を取り戻しましょう・・・」
ティアは静かに片手を差し出してきた。
「ティア・・・」
ギルバートも同様に片手を差し出してティアの手を取ろうとした時だった。
「うっ・・・!」
突如、ギルバートが苦しそうにし始めた。
「ギル・・・どうかしたの?」
ティアが、ギルバートに声をかけるとガイアが警戒をし始めた。
「待て・・・様子がおかしい・・・!」
「おかしいって・・・ギルに一体なにが・・・?」
すると、ギルバートから漆黒の闇のようなオーラが見え始めた。
「ガイア、ギルの身になにがあったのですか・・・?」
ステラが、ギルバートの様子を見てガイアに聞いてきた。
「これは・・・まさか・・・!」
「ガイア、なにか知っているの・・・?」
ギルの身になにがあったのかと思うと、その様子を見たソルが言ってきた。
「・・・どうやら、ダークタナトス様がかけられた魔法が発動したようだな・・・」
「魔法?でも、このような魔法は見た事は・・・?」
その時、ギルバートを包んでいた闇のオーラが完全に包まれた。
「ギッ・・・ギル・・・?」
急に苦しみだしたギルバートは、持っていた双剣を足元に落とした。
「これは・・・まさか・・・!」
そのまま見ていると、ギルバートは黒いオーラに包まれていた。
「・・・一体、ギルになにがあったのでしょうか・・・?」
目の前にいたのは、漆黒の闇のオーラに包まれたギルバートだった。
114章 闇に操られたギルバート
「ガイア・・・これは、一体・・・?」
恐る恐る訊ねてみると、ガイアは警戒をしながら言ってきた。
「気を付けろ・・・強い闇の力を感じてくるぞ・・・!」
闇属性の魔力とは違うなにかがギルバートのから感じられていた。
「・・・闇属性の魔力とは違う邪悪な闇がギルから感じられて来るわ・・・」
ティアはギルバートから感じられる闇属性とは違った闇が感じられていた。
「ダークタナトス様はもしも裏切るような事があればと思って、闇の力でギルバートを洗脳かけておられていたようだな・・・」
ここに向かう前にダークタナトスは闇の力を使って。ギルバートを洗脳するように呪文をかけられていた。
「洗脳するだけでなく、自分自身の能力を限界まで引き出す事ができる・・・お前達がギルバートと戦えば不利になるのも無理はないだろう・・・エレノアの力を使うのも難しいぞ・・・」
そのようにソルが言ってきたが、ティアはエレノアの力を使用するつもりがないように見えた。
「確かに・・・エレノアの力を使えば戦えるのかも知れない・・・けれど、ギルを殺してしまう可能性もあるからこの力を使う訳にはいかないわ・・・」
命を奪ってしまうと考えたティアはエレノアの力を使用しない訳にはいかないと思っていた。
「ティアの言う通りだ・・・エレノアの力を使用すれば、ギルバートには勝てると思うが・・・相手が仲間と言う事もあるので、殺さずに戦闘を行うティアにとっては不利になってしまう・・・ダークタナトスは初めからこのようになると分かって、ギルバートにかけていたに違いはない・・・」
ガイアはそのように考慮して言うと、ギルバートは足元に落ちた双剣を拾って構えだしてきた。
「お前達の言う通りだ・・・だが、殺される状況にも関わらずにエレノアの力を使わずに戦うつもりか・・・?」
ソルが挑発するように言ってくると、ティアはその言葉に息を呑んだ。
「このまま戦えば、お前達が無残にも殺されるだけだ・・・それならば、エレノアの力を使ってまでもギルバートと戦わなければ勝ち目はないと思うが・・・使わなければ、死ぬ事になると思うがいいのか・・・?」
ソルが指摘するように言われた直後、ギルバートがティアに向けて攻撃を仕掛けてきた。
「ゴメンなさい・・・ギル、少しだけ我慢して・・・」
覚悟を決めたティアはエレノアの力を発揮させた。
「ティア・・・本当にギルバートと戦うつもりか・・・ここからは一人で戦う事になるのだが・・・本当にいいのだな?」
ガイアが念を押すかのように言ってきたが、ティアはギルバートの攻撃を防いでから言ってきた。
「・・・ギルを闇から、解放できるのは私だけ・・・それに、ギルだって助けて欲しいと思っているはずよ・・・」
「そうだとしても、ギルは死んでしまうかも知れないよ?」
アランが心配になって言ってくると、ティアは笑みを浮かべて答えてきた。
「・・・ギルを助け出せるのは、私しかいないわ・・・それに、エレノアの力を
使っているとしても、殺さないように戦うから安心して・・・」
「でも・・・」
「アラン、ティアを信じろ・・・ギルバートを救え出せる人間はティアだけだ。」
ガイアが、そう言うとアランはティアを見つめた。
「・・・ティア、絶対にギルを助けて・・・」
「分かっているわ・・・ここは、私がやるから離れていて・・・」
ガイアとアランは、離れて見守ろうと離れたが、ステラだけはティアはギルバートと戦う事に不安を覚えていた。
「心配ないわ・・・ティアなら、ギルを洗脳から解く事ができるからね・・・」
「ですが・・・ティアとギルが、戦う事になってしまうと心配です・・・」
ステラは、二人が戦う事に不安に思っていた。
「・・・僕達は、見守っていた方がいいみたいだよ・・・一緒に旅をしてきた仲間でずっと、人を殺さずに戦い続けてきた仲間だったから・・・」
アランが、二人が殺し合わない事を信じている様子だった。
「分かりました・・・私もティアを信じて一緒に見守ります・・・お互いに、殺し合わないようにティアが、ギルの洗脳を解いて救い出すのを信じています・・・」
ステラもティアを信じて見守ろうと、ギルバートを見つめていると剣を構えだした。
(・・・ギルは、素早い動きで相手を翻弄して攻撃をするのが得意だったけれど・・・その動きを見ながら、攻撃を仕掛けるしか方法がないわ・・・)
ティアが、そう思っているとギルバートが先制攻撃を仕掛けてきた。
(来る・・・!)
ギルバートが、攻撃を仕掛けてくるのを見て、ティアは身構えると、ギルバートが双剣で攻撃を仕掛けてきた。
(今の攻撃・・・さっきよりも、強くなっている気がするわ・・・!)
ティアは、ギルバートの力が増している事が判明した。
「攻撃に気を付けないと・・・切り刻まれてしまいそうね・・・」
なんとか攻撃を受け止めたティアは、反撃を仕掛けようとしたが、ギルバートは身軽に動き出し距離を取った。
(速い・・・だけど、今なら攻撃ができていたはず・・・!)
ティアは、攻撃ができていたはずだと思うと、ギルバートが先に動き出して攻撃を仕掛けてきた。
「・・・!」
ギルバートは、ジャンプして避けてから彼女の頭上に向けて双剣を振ってきた。
「くっ・・・!」
ティアは、とっさに剣で攻撃を防いだ事で斬られずに済んだ。
(今の動き・・・なんだか、いつもと違った気がしたけれど・・・気のせいかしら?)
ティアは、ギルバートの攻撃と動きを見て不審に思った。
「・・・流石は、ダークタナトス様の力だ・・・ギルバートが、一度も命を奪うような事をしたがらない相手をこうも簡単に戦わせるとは・・・」
ソルはティアとギルバートの戦闘を見ながらそう呟いていた。
(それに・・・ティアが、殺されればガイア達も一緒に殺してしまう事になるが・・・これも、エレノアの血を途絶えるためだ・・・悪くは思わないでくれ・・・)
それからもティアとギルバートの戦闘が長く続いていた。
「長い時間、ずっと戦っているのに・・・どうして、ティアは剣を振るおうとしないの・・・?」
戦闘が長引く中でイヴはティアが剣を振るわない事が気になっていた。
「私もそのように思ってはいた・・・先程から気になっていたのだが、戦闘が長引いているのにティアはなぜ、エレノアの力を使っているにも関わらず一度も攻撃をしようとせずに攻撃を防ぎ続けているのかを・・・」
そう言ってから、ガイアが戦況を見てこのように説明をしてきた。
「私の推測だが・・・ティアは本気でギルバートを救おうとしている・・・しかし、エレノアの力を使用はしてはいるが、傷を付けようとせずに剣を振るわないでいるのだ・・・」
相手がギルバートなのか、ティアは一度も剣を振るう事をせずに攻撃を防ぎ続けていた。
「・・・それって、初めから攻撃をするつもりはなかったと言う事・・・?」
まさかと思って聞いたイヴに対してガイアは「あぁ・・・」と返答した。
「それどころか、エレノアの力を発動させているようだが・・・一度も剣を振る事などしようとしていなかったのには理由があるからであろうな・・・」
ガイアにそう言われると、ステラ達もティアの行動を思い返してみた。
「言われてみるとそうだね・・・ティアは一度もギルを攻撃しようとはしていなかった・・・でも、どうして剣を振るおうとしているの・・・?」
アランはなぜ攻撃をしないのかと聞き出そうとすると、ガイアは戦っているティアの様子を窺いながら言ってきた。
「・・・恐らく、ティアは争うような事はせずに救い出そうとしているのだろう・・・争い事も命を奪ってしまう愚かな行為だ・・・ギルバートと戦って、傷付けてしまう事がないようにしているのだと考えられてこないだろうか・・・?」
ガイアにそう言われたステラ達はティアの行動を見てそんな風に思えてきた。
「・・・分かるよ。ティアなら、相手を殺さないようにしながら戦ってきていた・・・でも、アタシ達の仲間だったギルと戦っている方が大変だと思っているかも・・・」
そう、ティアにとってはギルバートと戦う事が困難で傷を付けたくはなかったのだった。
「そうだとしても、今の状況は良くないと思います・・・」
ステラはティアが苦戦を強いられてきている状況を目にした。
「これって、不味いんじゃないかな・・・?」
イヴがそう言ったが、ガイアは冷静に見守りながら言ってきた。
「あぁ・・・言わなくとも、状況が不利になっている事が嫌でも分かる・・・」
不利な状況になっているはずがガイアは落ち着いた様子をしていた。
「ガイア、どうして落ち着いていられるの・・・?」
落ち着いていられずにいるイヴは落ち着いた様子のガイアの様子を疑った。
「分かっている・・・このままでは、ティアは殺されてしまう事になるであろう・・・」
「だったら、今すぐに助け出さなくちゃ!」
イヴがこれ以上見ていられなくなり、助太刀をしようとしたがガイアが止めに入ってきた。
「邪魔をしないで!」
「・・・ここは、落ち着いてティアを信じて見守るのだ・・・」
ガイアは先頭に加わらずに、見守ってほしい事を望んでいた。
115章 ティアの苦戦
「一方的に攻撃をされているのに・・・黙って見て居られる訳がないじゃない!」
イヴは慌てた様子で言ったが、ガイアは二人の様子を見ながら言ってきた。
「・・・相手がギルバートな上にティアが苦戦を強いられているのは当然の事だ・・・だが、お前達が助太刀をしても敵うはずがないと思わなかったのか?」
仮にステラ達が戦闘に加わっても意味が無いとガイアは言ってきていた。
「・・・それで、エレノアの力を使っても攻撃しようとしなかった訳だね・・・」
全員がそう納得をしたが、ティアが苦戦している様子が見ていられずにいた。
「でも・・・これだけ、傷付いているのに見ているだけなんて・・・!」
ティアがギルバートに傷つけられていく様子を嫌でも目にしなければならなかった。
「ギルバートは暗殺部隊にいたから素早い攻撃は当然の事であろう・・・暗殺部隊のリーダーであるアイザックの息子なのだからな・・・」
「だが・・・父であるアイザックに教わっているはずが、一度も命を奪う事はしなかったのではないのか・・・?」
ヘイゼルがその事について訊ねると、ガイアは二人の戦闘を見ながら話し始めた。
「・・・お前達は知らなかったと思うが・・・ギルバートは暗殺部隊に所属されて以降は人間一人も殺す事などしなかったのだ・・・」
ガイアはギルバートが暗殺部隊の一員になった際に、命を奪うような事など一度もしてこなかったと言うのだった。
「アイザックによって、現在のような戦術を手に入れてもギルバートは命を奪うような事があっても、誰一人も殺そうとはせずに任務を行い続けていたのだ・・・」
「だが・・・ちゃんと、実績がなければ処分をされるのではないのだろうか?」
「そうだ。暗殺部隊でなくても、いつまでも殺す事ができなければ処分される末路が待っている・・・」
デスドゥンケルハイト軍の掟では成果を上げていない者は処分されると言う決まりがあった。
「アイザックの息子とあってか・・・親子と言う事で後ろ盾があったギルバートは今に至るまで、暗殺部隊の一員として所属する事ができていると聞いている・・・」
「・・・それって、ヘイゼルと同じように残れていると言う事じゃないの・・・」
イヴはかつてのヘイゼルと同じように処分されずに済んでいたのだと思えた。
「その通りだ・・・ギルバートは、一度も命を奪う事はしなかったが、アイザックは
処罰を与えずに暗殺部隊の一員として扱われてきたのだからな・・・当然、ソルの部下であったヘイゼルにも言える事だが・・・」
そう言いながらもガイアはティアが押されてきている状況になっている事を確認した。
「・・・どうやら、徐々に押されてきているようだ。」
話している間にもティアは徐々に苦戦を強いられてきている事を悟り出した。
「どうして・・・ちゃんと、エレノアの力を使っているはずなのに・・・?」
「やはり、相手がギルバートなので戦う事が困難であろうな・・・」
皆が思っていた通り、ティアにとってはギルバートとは戦い辛そうにしている表情にも気づいていた。
「・・・エレノアの力を使っているティアにとっては、ギルバート相手では戦い辛い相手として捉えるべきだろう・・・初めから、思っていた事なのだが・・・ギルバートと戦う事など、本気ではなかったかのように思えてくる・・・」
「ガイア・・・ティアはそれ程までにギルとは戦いたくはなかったのですか・・・?」
「そうなるだろう・・・ギルバートは身分を隠しながらもティア達と共に旅をして戦って来た人間だ・・・ずっと、信じていた人間と戦う事など初めから無理があったのだ・・・」
そのように語った直後、ティアが息を切らしている様子を見せられた。
「不味いな・・・完全に押されて来ている・・・」
仲間と戦えない事もあってか、ティアは猛攻に耐える事が限界に近付いていた。
「やはり、ギルバートと戦う事に苦悩を感じていたのかも知れん・・・このままでは、本当にティアの命が奪われてしまう事になってしまう事になるぞ・・・」
ガイアは自分達が戦闘に加わっても、殺してまでもギルバートを止める事になるには変わらなかった。
「ここは、見守るしかないと言う事なのでしょうか・・・?」
「そうだ・・・大人しく見守っているのだ・・・そのようにしていた方がティアやギルバートのためにもなる・・・」
ガイアがそのように言ったが、イヴはこれ以上見ていられなくなっていた。
「もう見ていられない!このまま見ていたら、ティアが死んじゃう!」
イヴは意地でも戦闘に加わろうとしたが、ガイアに止められてきた。
「駄目だ・・・黙って見ていてくれ・・・」
「ガイア!このままじゃ、ティアが・・・!」
すると、ガイアがイヴを宥めるように言ってきた。
「分かっている・・・ティアでなければ、ギルバートを救い出す事など不可能だ・・・」
ガイアにそう言われて、イヴは大人しく見守る事にした。
「・・・どちらかが、死んでしまう事はない・・・なので、ティアを信じてはくれないだろうか・・・?」
そのように言われたイヴは加勢に加わるのを止めた。
「分かった・・・少し心配だけど、ティアを信じてみる・・・」
ガイアの言葉を信用して、ステラ達と共に目の前の戦闘を見守る事にした。
「これだけの傷を負っているのにも、関わらずに攻撃をしようとしないとは・・・ティアにとって、ギルバートは大事な人間だと言う事が伝わってくるな・・・」
ティアの体には幾つもの傷を負っており、服も傷付いている血が流れている箇所もあった。
「・・・!」
戦闘が長引いた事でティアは極限状態にまで達していた。
「そろそろ、終わりだな・・・ギルバート、今すぐにトドメを刺せ・・・」
ソルに命じられたギルバートはティアを仕留めようと、首に目掛けて一本の双剣を振るってきた。
「まだよ・・・」
首を刎ねられる直前に、ティアは剣で攻撃を受け止めた。
「いい加減に諦めろ・・・ダークタナトス様の力は強大でどのような事があっても、洗脳を解く事ができないぞ・・・」
勝機はこちらにあると思ったソルはもう諦めるべきだとティアに言ってきた。
「それに、ギルバートは本気で殺しにかかっているが・・・お前は一度も攻撃をしようともせずに、ただ攻撃に耐え続けているだけだ・・・このまま、なにもせずに一方的に押されている事が分からないのか?」
ソルが先程から攻撃をしようとしないティアの様子を窺っていた。
「・・・剣を振るう事ができないのは、ギルバートはお前にとっては大事な人間だからか?」
ソルは攻撃をしようとしない理由をティアに問うてきた。
「違うわ・・・私は、それが理由で戦わなかった訳ではないの・・・」
「それは、どう言う意味だ?」
ソルに訊ねられたティアはギルバートの攻撃を防ぎながらも答えてきた。
「・・・ギルは、私と同じで命を奪うような事はしたくはないと思っているからよ。」
「それが、お前の答えか?やはりと言ってもいいか・・・お前らしい答え方だな・・・」
ソルが最初から分かっていたかのように言った直後に、ギルバートがもう片方の双剣を振るってティアに攻撃を仕掛けてきた。
「危ない!」
ステラが叫ぶと、ティアは頭を下げた事で首は刎ねられなかったが、持っていた剣がもう一本の双剣にぶつかった。
「・・・ギル、私は貴方を開放して見せる・・・ただ、それだけよ・・・」
ティアは極限状態のままギルバートと距離を取った。
116章 涙の説得
「いい加減に諦めたらどうだ?これだけ、血を流し続ければ死ぬ事になるだけだぞ?」
ティアの傷からは幾つもの傷から出血をしており何滴も血が床に落ちていた。
「いいえ・・・私は諦めないわ・・・」
ティアは傷だらけの体を奮い立たせながらも剣を構えだした。
「これだけの傷を負っていても死ねないとは・・・まだ、ギルバートを助け出そうとする気か?」
「ギルは・・・私が助けてみせるわ・・・」
ティアは力を振り絞って剣を構えようとすると、ギルバートの攻撃によって新たな傷を付けられてしまった。
「ギル・・・!」
それでも、ティアは攻撃をしようともせずにギルバートの攻撃を受け続けた。
「これ以上戦い続けていたら・・・本当にティアが死んじゃう・・・!」
イヴが焦り出したが、ステラはガイアに懇願した。
「ガイア、お願いします・・・ティアに回復魔法をかけさせてください・・・!」
回復魔法をかけさせるように頼んだが、ガイアは首を横に振ってきた。
「駄目だ・・・今から、回復魔法をかけたとしても同じ事が繰り返されてしまう・・・それに、血を大量に流しているので、傷を癒しても貧血で倒れてしまうだけだ・・・」
幾つもの傷口から血が出血しており、いつ貧血で倒れるかどうか分からないほどだった。
「そうだとしても・・・このまま、ティア一人で戦っていたら殺されちゃう!」
「分かっている・・・だが、この戦いは私達が手を出す必要はない・・・」
そのように言われたイヴは冷静な対応をするガイアに激怒した。
「このまま、ティアがギルに殺されてもいいの!」
「助けたいと言う気持ちは分かる・・・だが、目の前で行われている戦闘はティアにとっては、重大な戦いで仲間であるギルバートを助けるために戦っているのだ・・・私達が助太刀をする事を望んではいない事を忘れたのか・・・」
ガイアにそう言われたイヴはその場で歯を食いしばった。
「・・・ティアが死んだら許さないからね・・・」
「・・・あの人間は絶対に死ぬ事はない・・・だからこそ、救い出せるように見守るだけだ・・・」
ステラ達はどちらも無事に戦闘を終わらせてくれる事を祈りだした。
(ティア・・・どうか、ギルを助けてください・・・・)
しかし、祈りも空しくもティアは瀕死状態になっていた。
「ギ・・・ル・・・」
ティアはただひたすらにギルバートの攻撃に耐え続けた事で視界が霞んで見えており、攻撃をする力など一切残ってなどはいなかった。
「・・・その様子だと、そろそろ限界のようだな・・・」
服も血が付着して滲んでおり、ティアは立っている事がやっとの状態だった。
「その様子だと、もう虫の息だな・・・降参をしなければ、死んでしまうだけだぞ?」
ソルにそう言われてもティアは降参しようとはしなかった。
「いいえ・・・」
「これだけの血を流しているのに、まだギルバートを救い出そうとする気か?」
「・・・勿論よ。」
瀕死寸前になっても、ティアはギルバートの攻撃を受け続けた。
(エレノアの力を使っても攻撃をしようとしないとは・・・やはり、ギルバート相手ではまともに戦う事ができなかったようだな・・・)
そう思ったソルはギルバートに命じた。
「そろそろ・・・止めを刺してもいい頃合いだな・・・ギルバート、ティアに止めを刺せ・・・」
ソルに命じられたギルバートはティアに止めを刺そうと攻撃を仕掛けてきた。
(ティア・・・!)
ステラは思いっきり目を瞑った。
「・・・?」
すると、剣が落ちる音が聞こえてステラは恐る恐る目を開けると、その光景を見て驚いた。
「・・・」
それは、今まで剣を振ろうとはしてこなかったティアがギルバートの双剣の一つを叩き落としたからであった。
「やっと、反撃をしてきたか・・・だが、その体では戦う事は不可能だろう・・・」
今になって、剣を振るえてもティアは戦う事には不利な事には変わらなかった。
「・・・言われなくても、私がギルバートに剣を向けないと言う事は貴方にも分かっていたはずよ・・・」
「当然だ・・・初めから、このような状況になる事は分かっていたぞ・・・」
「そう・・・ギル、貴方も分かっているはずよ・・・本当はこのような事はしたくはないと思っていると言う事を・・・」
瀕死寸前の状態でも、ティアは息を切らしながらギルバートに問いかけてみた。
「まだ、救い出そうとしているのか・・・ダークタナトス様の洗脳する力は一度でもかけられてしまえば、二度と洗脳を解く事ができないぞ・・・」
ソルが言うように、ダークタナトスの闇による洗脳は一度でもかかってしまえば洗脳を解く方法など存在はしていなかった。
「・・・貴方の言う通り、その闇は強大で光すら取り込むのかも知れない・・・けれど、ギルには残っていると思うわ・・・救ってほしいと言う光が見えているはずよ・・・」
それでも、ティアは剣を構えようとしたが、ギルバートは素早く双剣を拾ってから攻撃をしてきた事でティアを転倒させた。
「きゃあ!」
転倒したと同時に、ティアは持っていた剣を手放してしまった。
「剣が・・・!」
その直後、ギルバートの双剣がティアの袖に突き刺した。
「そろそろ、終わりそうだな・・・」
ソルがそう呟くと、ギルバートがそのままティアを馬乗りにした。
「ギ・・・ル・・・!」
ギルバートが彼女を馬乗りになって首を絞められ、両方の袖には双剣が一本ずつ刺さっていたので逃げる事が不可能だった。
「お願い・・・目を覚まして・・・!」
抗おうとしても力が残ってはいなかったので、ティアにはどうする事もできなかった。
(やはり・・・ティアにはどうする事もできなかったか・・・)
極地から脱するのは不可能だとガイアは思っていた。
「そんな・・・ティア!」
ステラ達は殺されようとするティアを見て絶望のどん底に叩き付けられた。
「そろそろ、終わらせるぞ・・・ギルバート、ティアを始末しろ・・・」
ギルバートは止めを刺すために、両手でティアの首を絞めてきた。
「うっ・・・あっ・・・!」
首を絞められたティアは徐々に苦しむ表情を露わにしていった。
「待って・・・ギル・・・」
ティアはそれでも諦めずにギルバートに呼びかけた。
「貴方は・・・人を殺して命を奪うような人ではないわ・・・こんな事をしても意味がないわ・・・?」
首を絞められてもなお、ティアは説得を試みてみたが、ギルバートはなにも答えるはずもなくただ彼女の首を絞め続けていた。
「・・・貴方はデスドゥンケルハイト軍の一員になっても、誰の命を奪いたくはなかった・・・正気を失っていても、そう思ってくれているはずよ・・・」
「いい加減に諦めろ・・・ギルバートは二度と目を覚ます事はない・・・何度説得をしようとしても闇を振り払う事などできないぞ・・・」
ソルにそう言われてきてもティアはギルバートに問いかけ続けた。
「・・・本当は私を殺したくはないと思っているのなら・・・このような事はもう止めて・・・」
しかし、ティアの声はギルバートに届いてはいなかった。
「くっ・・・!」
首を絞める力が強まって、ティアは窒息死寸前まで追い詰められた。
「ギ・・・ル・・・!」
窒息死寸前となったティアは意識が薄れていた。
(お父さん・・・お母さん・・・!)
ティアが己の死を覚悟した時だった。
「なんだ・・・?」
突如として、ティアから不思議な光が放たれた。
117章 闇からの解放
「一体、なにが起きた・・・なぜ、ティアから光翼の涙と同じ光が・・・!」
ソルはティアから放たれた光を見て驚いていると、ギルバートが突如として苦しみ始めた。
「ガイア、この光は一体・・・?」
「これは・・・ティアの中にある光翼の涙が闇を浄化しようとしているようだ・・・」
ガイアはティアから放たれている光を見てそう言ってきた。
「それじゃあ、ティアの中にある光翼の涙が光を放っていると言う事だね?」
「あぁ・・・どうやら、光翼の涙はティアの危機を悟った事によって、あのような光が放たれた事によって、ギルバートに憑く闇を浄化しているのだ・・・」
ティアから放たれた光に触れたギルバートが苦しみだした理由だった。
「それって、光翼の涙がティアの危険を感じたから光りだしたと言う事・・・?」
「そうだ・・・ティアが、ギルバートを助けたいと強く思った事によって、その光が放たれたのだ・・・」
ガイアが説明していると、光翼の涙の光がギルバートを包み込んだ。
「見てください・・・ギルの周りに集まった光が闇を包み込んでいます・・・」
その光が彼を包み込むと、ギルバートは呻き声を挙げ始めた。
「あの光がギルを包み込んだら苦しみ始めたよ・・・?」
「・・・ギルは大丈夫だと思うかな?」
アランは光に包まれて苦しむギルバートが心配に思っていた。
「心配はするな・・・光翼の涙の光が、ギルバートを支配する闇を浄化しているので苦痛を感じているだけなのだ・・・」
光翼の涙の光がギルバートに包まれた闇を払おうとしていたと言うのだった。
「それじゃあ、ギルの洗脳が解けると言う事だね?」
「あぁ・・・ギルバートを支配する闇は深く染まっているので、完全に消し去る事は難しい・・・だが、光翼の涙が六つもあるのであれば、洗脳を解く事が不可能ではないはずだ・・・」
「それじゃあ・・・ギルの目を覚まさせる事ができるかも知れないと言う事だね・・・」
そう思ったアランはギルバートに向けて言ってきた。
「ギル!君は人を殺すような人間じゃないはずだよ・・・小さい時に、僕達と一緒に遊んでいた時の事を思い出して・・・!」
アランが呼びかけると、ギルバートはこちらの方を見てきた。
「ギルが僕達の方を見ている・・・もしかしたら・・・」
アランはそう思って、ステラ達に頼み込んだ。
「皆、ギルに呼びかけて!自分自身を取り戻させるためには僕達の声も必要だよ!」
アランがそう言うと、ステラ達はギルバートの正気を取り戻させるべく、それぞれの声を彼に向けて言い始めた。
「ギルバート、私と同じようにデスドゥンケルハイト軍から抜け出したいと思うのであれば、闇の支配に負けずに戻ってきてほしい・・・」
「これまで、ティアやアタシ達の事を助けてくれていたのに・・・なにもかも全部忘れちゃうなんて・・・そうだしても、アタシは許さないからね・・・?」
「今までの事を思い出してください。これまで、私達を助けてくれました・・・ギル、お願いです・・・目を覚ましてください・・・」
「僕達はいつまでも友達じゃないか・・・君がよく遊びに連れて行かれた事も忘れていないよ・・・皆だって、君の事を心配してくれている・・・だから、こちらへと戻って来て・・・」
ステラ達はギルバートの洗脳を解くべく、必死になって呼びかけ続けてみた。
「いいぞ・・・そのまま呼び続けていれば、ギルバートに皆の声が届いてくれるはずだ・・・」
その様子を見ていたソルは正気なのかと疑いだした。
(あれほど、ギルバートを気にしている人間だったとは・・・これなら、ダークタナトス様の洗脳が解けてしまうのも無理はないな・・・)
ソルはこのままでは洗脳が解けてしまうと思い込んでいた。
「無駄だ・・・お前達が、どんなに話そうがギルバートは正気に戻っては来ないぞ?」
彼に声をかけ続けるステラ達を見たソルは呼びかけても無駄だと言ってきた。
(皆がギルを呼びかけている・・・私の声も聞かせられるのなら・・・)
ティアもステラと同様にギルバートを呼びかけ始めた。
「私達と一緒に旅をしてきた事を忘れないで・・・これまでの思い出は全て忘れてしまった訳ではないはずよ・・・」
ティアはこれまでの旅の出来事を忘れてしまったのかギルバートに言った。
「今まで、色々な事があったから私達は思い出も作る事ができた・・・貴方なら、私と出会ってからの出来事を忘れずにいてくれている事は分かっているわ・・・もう、デスドゥンケルハイト軍を辞めて戻って来て・・・」
ティアも呼びかけ続けていると、ギルバートを支配する闇が徐々に浄化されていった。
「これは、まさか・・・そんな事は、ありえないはずだ・・・」
ギルバートを支配する闇が浄化されていくのを見て、これ以上は不味いと思ったソルはティアを始末するように命じてきた。
「・・・ギルバート、早く止めを刺せ!」
ギルバートは苦しみながらも双剣を抜くと、ティアに向けて振り下ろそうとしてきた。
「いけない・・・ギルが、ティアを・・・!」
「やはり、無駄だったのか・・・!」
ステラ達は呼びかけても無意味だったのかと思った時だった。
「ギル・・・本当にそれでいいの・・・?」
ティアは死を覚悟しながらも、ギルバートを呼びかけた。
「このまま、私を殺してしまえば、デスドゥンケルハイト軍と同じように命を奪ってしまうわ・・・貴方も命を奪ってしまった人間になってしまうわ・・・だから、もう殺してしまうような事はしないで・・・」
ティアはゆっくりと起き上がりながら言うと、ギルバートに優しく抱きしめてきた。
「これ以上、闇に捕らわれないで光を見て・・・私が貴方を開放させてあげるから・・・」
ティアは説得をしている内に、瞳から涙が零れ始めた。
「・・・これ以上、闇に捕らわれないで・・・命のある光を見て・・・!」
光輝く命のように感じられる涙がティアの穂を浸って、ギルバートの手にティアの涙の雫が零れ落ちた。
「・・・!」
涙に触れた直後、ギルバートはその手から全身へと涙の冷たさが伝わっていった。
「ギル・・・命と光の輝きがある限り、闇に覆われる事はないわ・・・」
ティアはが静かに言うと、ギルバートの全身に光が覆い始めた。
「・・・これは、エレノアの涙による力だ・・・」
ガイアは光に覆われているギルバートを見ながらそう言ってきた。
「エレノアの涙?」
「そうだ。今、ティアの瞳から零れ落ちた涙こそがエレノアの涙と言う特別な涙なのだ。」
ティアの出している涙はエレノアの涙と言われていて、一説によればその涙は闇を振り払う力があると伝えられているのだった。
「・・・その涙がギルにかかったから?」
「その通りだ・・・エレノアの涙によって、ギルバートを支配していた闇を聖なる光で覆い浄化している・・・」
「それで、ギルバートに光が覆われたと言うのだな?」
すると、光が放たれると闇が浄化されたギルバートが立っていた。
「俺は一体・・・?」
ギルバートが正気に戻ると、ティアが傷だらけで抱き着いている事に気付いた。
「ティア!?その傷どうしたんだよ!」
ギルバートが慌てながらもティアを呼びかけた。
「・・・良かった・・・ギルが正気に戻ってくれて・・・」
ギルバートが正気に戻ったのが、安心をしたのかティアは意識を失った。
「ティア!」
ギルバートはとっさにティアを抱きかかえた。
「悪かった・・・もう俺は二度と裏切らないからな・・・!」
そう言って、ギルバートは優しくティアを抱き締めた。
118章 七つ目の光翼の涙
「まさか、ダークタナトス様の力が光と涙で洗脳が解けるとは思いもしなかったぞ・・・!」
ソルはティアの流した聖なる涙によって、ギルバートの洗脳が解かれた事に驚きを隠せなかった。
「なるほど・・・ダークタナトスがなにかを呟いていたのはそう言う事だったのかよ・・・アレがなんだったのかが・・・よく分かったぜ・・・」
そう言いながらギルバートがソルを睨みつけてきた。
「ギルバート、お前もデスドゥンケルハイト軍を裏切るつもりか?」
ソルは念を押すかのように、離反するのかとギルバートに訊ねてきた。
「あぁ・・・もう、お前等の元には戻る気はねぇ・・・ティア達の元で戦ってやりたいんだよ・・・」
ギルバートがそう宣言をしてくると、ソルは本当に裏切るつもりだと思った。
「・・・それが、お前の答えと言う事だな・・・」
すると、ガイアが同様な事をソルに向けて宣言をしてきた。
「ソル、私もギルバートと同意見だ・・・私達はラヴィレイヘヴンに乗り込んで、死の闇に支配されているこの世界を開放する・・・もう二度と、戻る事はないと伝えてくれ・・・」
「お前も同じ考えか・・・この事はダークタナトス様に報告させてもらうぞ・・・」
ソルはそう言って、転移魔法を唱えて転移の穴を出現させた。
「・・・もう行ってしまうのか?」
「あぁ・・・この場で戦うよりも聖地で戦った方がいいと思ったからだ・・・そこで、正々堂々とした戦闘を行った方がいいと思ったからな・・・」
「しかし・・・ここにある光翼の涙を守らなくても良いのか?」
ガイアが神殿にある七つ目の光翼の涙を渡してもいいのか訊ねてきた。
「・・・なぜ、そのような事を聞いた?」
「お前はギルバートと共に光翼の涙を奪われないように、ここへ訪れているはずだが・・・このまま撤退をするとなると、七つ目の光翼の涙を手に入れられた後で私達がラヴィレイヘヴンに乗り込む事になってしまう事になるのだぞ?」
ガイアは心配に思っているかのような様子でソルに言ってきた。
「言われなくても分かっている事だ・・・八つ目の光翼の涙はダークタナトスが肌身離さずに所持していると聞いた事がある・・・ラヴィレイヘヴンに乗り込んでも勝てる見込みはないぞ・・・」
ソルがそう言いながらも気を失っているティアを見つめた。
「・・・ティアにもそう伝えておいてくれ・・・そうしなければ、ラヴィレイヘヴンに乗り込んで
来ても死ぬ事になるぞ・・・」
「無論だ・・・七つの光翼の涙を手に入れた以上・・・ラヴィレイヘヴンに乗り込ませてもらうのみだ・・・」
ガイアがそう告げると、ソルは気を失っているティアを見つめた。
「・・・この世界を支配している闇は強大で、光翼の涙が七つだけでは闇を振り払う事はできないだろう・・・ティアが目を覚ましたら、肝に銘じて伝えておいた方がいいぞ・・・」
ソルはそう言い残してから、転移の穴へと入り聖地へと転移していった。
「行ってしまいました・・・ガイア、本当に良かったのでしょうか・・・?」
「構わん・・・二十年も前から、裏切りを警戒されていたので、離反するには丁度いいと思っていたのだ・・・」
デスドゥンケルハイト軍はガイアの裏切りを二十年も前から警戒されていた。
「それよりも、早くティアの傷を治して?」
イヴがティアの心配をして言うと、ガイアは「そうだな。」と彼女の傷を確認した。
「これは、かなり酷い重症のようだ・・・生きているのが奇跡と言えるだろう・・・」
「そうなの・・・ギルのせいで死ななくてよかったよ・・・」
「おい・・・それって、どういう意味だよ?」
安心をするイヴにギルバートがツッコミを入れてきたが、ティアが酷い重傷を負っているのは事実だった。
「・・・これは、急いで治療をした方がいい・・・ステラ、ティアに回復魔法をかけてやるのだ・・・」
ガイアに、回復魔法をかけるように言われたステラは、回復魔法の詠唱を始めた。
「ティア・・・今すぐ、回復魔法を掛けます・・・」
詠唱を終えたステラはすぐに回復魔法を唱えた。
『ヒーリラ!』
ステラが回復魔法を唱えたが、ティアの傷が癒える気配は無かった。
「おかしいです・・・回復魔法をかけているのに治る気配がありません・・・」
「ううん・・・これは、傷が深すぎるから回復に時間が掛かっているだけだと思うよ・・・」
アランはティアの傷が深いのを見て回復が遅れているだけだと判断した。
「それじゃあ、傷が癒えるのに時間が掛かると言いたいの?」
傷が癒える事がなく、回復しているかどうかは怪しかった。
「かなりの傷のようですが・・・いくら、回復魔法をかけても時間がかかるなんて・・・ティアの傷が回復する前に私の魔力が尽きてしまいそうです・・・」
ステラはティアの傷が治る前に自分の魔力が尽きるのを心配に思った。
「恐らく、ギルバートの攻撃を受け続けた事で、意識が戻らないような傷を負っていたの
であろう・・・意識を取り戻せるかはわからないぞ・・・」
先程の戦闘で傷付いたティアの傷を見て、ガイアは深刻なダメージを受けていると言ってきた。
「・・・これって、俺のせいじゃないのか?」
見守っている途中で、ギルバートが自分のせいだと言ってきた。
「ギルバート・・・あまり、自分を責めるものではないぞ・・・」
「いいや・・・ティアがこうなったのも、全部俺が操られて傷つけちまったせいなんだよ・・・!」
ギルバートが自暴自棄になる中で、ステラの魔力が弱まっていた。
「もう、魔力が尽きそうです・・・!」
ステラは回復魔法を唱え続けた事で、ステラの魔力が枯渇しようとしていた。
「駄目です・・・これ以上は回復魔法を使う唱える事ができません・・・!」
そう言うと同時にステラの魔力が完全に枯渇してしまった。
「どうしましょう・・・魔力が尽きてしまいました・・・」
「困ったな・・・僕は回復系の魔法が使えないしどうすればいいんだろう・・・」
アランも同様に、困り果てているとステラの魔力が尽きてしまった。
「・・・なにか、回復させる道具でも助ける事ができないのか?」
「例え、使ったとしても完全に回復させる事は難しい・・・どれだけ、使用したとしても目覚めるかどうかは分からん・・・」
「そんな・・・ティアは意識不明になるくらいのダメージを受けていたって言うの・・・!」
ギルバート達が絶望を感じていると、七つ目の光翼の涙を見てなにかを思い付いた。
「ちょっと待って・・・まだ七つ目の光翼の涙はなにも反応をしていない・・・もしも、死んでいなかったのなら、この子に吸収されるはずじゃないの・・・?」
イヴは目の前にある光翼の涙がティアに吸収されていない事がおかしいと思った。
「いや・・・光翼の涙はティアが近寄る事で吸収されていたはずだ・・・例え、意識不明の状態であっても、死んだと判断されてしまうので光翼の涙がティアに吸収されるような事はない・・・」
ガイアがそう言ってくると、ギルバートがティアからなにかが感じ取られた。
「なぁ、ティアから、強い光の魔力を感じないか・・・?」
そう言われたステラ達はそのような魔力がティアから感じ取る事ができた。
「この光の魔力・・・もしかして、光翼の涙によるものなのか?」
「本当だ・・・あそこにある光翼の涙より強い光が感じられるよ・・・」
その時、七つ目の光翼の涙がティアの頭上へと浮かび上がってきた。
「ティアは意識不明の状態なのに・・・光翼の涙はなにをする気だ・・・?」
ギルバート達は、ティアの頭上で浮かび上がる光翼の涙を見つめている時だった。
「うわっ!」
突如として、光翼の涙が神秘的な光を放って光りだした。
「光翼の涙から光りだしたと言う事は、なにかが起きようとしているのか・・・?」
そう思いながら見ていると、ギルバートがティアを見て言ってきた。
「見ろ・・・ティアの傷が消えていくぞ・・・」
光翼の涙から放たれる光によって、ティアの傷がみるみるうちに回復させていた。
「もしかして、この光がティアの傷を癒しているのかな?」
「どうやらそのようだ・・・光翼の涙は瀕死状態になっているティアを癒すために自らが傷を癒す事のできる光をティアに与えているように見える・・・」
ガイアがそう言うと、ティアの傷が完全に回復した。
「見てくれ・・・丁度、傷を癒し終える事ができたようだ。」
光翼の涙の力によってティアは意識を戻して目を覚ますと、七つ目の光翼の涙はティアの中へと吸収されていった。
119章 エレノアの遺産
「ティア・・・!」
ティアが完全に目を覚ましたのを見たギルバートの瞳から涙が零れだした。
「良かった・・・お前が生きていてくれて・・・!」
ギルバートは感激のあまりティアを思いっきり抱き締めた。
「・・・ギル・・・苦しい・・・」
「悪ぃ・・・つい・・・」
ギルバートはティアが苦しがっている様子を見て放した。
「そんなにボロボロになったのは俺のせいだよな?」
「えぇ・・・ギルは洗脳されていた事を覚えていないの?」
「いや・・・急に苦しくなってから記憶がなくて・・・なにをしたのかも記憶が残っていねぇんだ・・・」
「洗脳された時の貴方は、容赦なく攻撃を仕掛けてきたのですもの・・・なにも覚えていないのも仕方のない事だわ・・・」
ティアがそう言うと。ギルバートは心配になって訊ねてきた。
「俺って・・・そんな事をしちまったのか・・・?」
洗脳されてからの事について、訊ねられたティアは頷くとギルバートは「本当に、悪かったよ・・・」と申し訳なさそうに謝罪してきた。
「気にしないで・・・貴方が戻ってきてくれただけでも嬉しいから・・・」
「ティア・・・俺の事を思ってくれていたのかよ・・・」
そう言って、ギルバートは密かに穂を赤らめながらそっぽを向いた。
「どうかしたの?」
「いいや・・・なんでもねぇよ・・・それよりも、こっちに来てくれ・・・ティアは動けるか?」
「えぇ・・・なんとか・・・」
しかし、ティアは立ち上がろうとしても足がおぼつかないためかふらついていた。
「無理に歩かさない方がいいな・・・俺が運んでやるから捕まってくれ・・・」
そう言って、ギルバートはティアを背に負ぶってあげた。
「ギッ・・・ギル・・・」
「ちゃんと、俺が負ぶってやるから安心してくれよ。」
ティアはギルバートに背負われながらも、光翼の涙があった場所に移動した。
「ここで、見て欲しいのがあるんだ。」
ティア達は七つ目の光翼の涙があった場所の後ろに着いた。
「ギル、ここになにがあるの?」
イヴが訊ねてくると、ギルバートは目の前の壁に立った。
「どう見ても、模様の付いた壁に見えるけど・・・?」
「この壁をじっくり見てくれ・・・なにかの扉に見えてこないか?」
ギルバートにそう言われたティア達はじっくりと壁を見つめてみた。
「・・・よく見てみると、隠し扉のように見えてくるな・・・」
「だろ?ソルにも聞いたけど、分からないって言っていたぜ。」
ギルバートはここに転移してきた際にこの壁の存在に気付いていた。
「星竜族のアンタなら、星竜族の造り出した神殿について色々と知っているだろ?」
「あぁ・・・その壁をよく見せてくれ・・・」
そう言ってからガイアは、目の前の壁を確認し始めた。
「ここには、星竜族が書いた言葉が書かれている・・・」
ガイアが壁の誇りを落とすと、なにかの文字が書かれていた。
「よく見せてください・・・この文字は星竜族の本で見た事があります・・・」
壁に書かれていた文字は星竜族の言葉でステラは知っているようだった。
「我々には星竜族の言葉が存在しているが・・・ステラは星竜族の言葉について色々と学習をしてきたと言えるな・・・」
ガイアが嬉しそうな表情をしながらもステラにそう言ってきた。
「はい。毎日、星竜族の本を読んでいました。」
星竜族に関する本を何度も読んだ事でステラは星竜族の文字が読めるようになっていた。
「それで、なんて書いてあったのか分かるの?」
イヴに文章が読める事を訊ねられたステラは文字を読む事を決めた。
「はい・・・ガイア、この文字を読んでもいいでしょうか?」
「好きにするがいい・・・その後で、私が必要になるからな・・・」
解読を任せられたステラは、星竜族の文字を読み始めた。
『・・・ここに、エレノアの遺品が眠っている・・・ここを開きたいのであれば、星竜族と共に来るがいい・・・そうしなければ、この先に進む事は不可能であろう・・・ユニバース。』
ステラが文章を読み終えると同時に、ガイアが解読した内容について話した。
「ステラが読んだ通りに・・・ここを開けば、エレノアの遺品があると言う意味だ・・・しかし、そこを開くためには星竜族の力が必要なのだ・・・」
ガイアが言うには星竜族がいなければ、開く事ができないと言う事だった。
「遺品・・・この神殿に隠されていたなんて、お父さんとお母さんからは一度も聞かされた事がなかったわ・・・」
ティアはエレノアの遺品について両親からなにも聞かされていなかった。
「そう言う事になる・・・皆は、少し離れてくれないだろうか・・・?」
ガイアに言われた通りにして、ティア達は少し離れてみるとガイアはその壁に手を触れた。
「・・・」
すると、ガイアは呪文のような言葉を呟きながらも壁に片手を向けて魔力を注ぐように放ち出した。
「見て・・・扉が光りだしたよ・・・」
ガイアの言葉と魔力に反応したかのように扉が光りながらも開きだした。
「これで、遺品のある部屋に入れる・・・エレノアの遺産を目に死体のであれば連いて来るがいい・・・」
そう言われて、ティア達はガイアの後に続いて隠し部屋の中へと入って行った。
「結構、広いな・・・こんな所に遺産があるのか?」
隠し部屋は、ティア達は大きな空間を見回した。
「これだけ広いと言う事は、とても大事な物を隠したのかも知れないね・・・」
遺産のある部屋は広く、辺りにはなにもない空間だった。
「それで、エレノアの遺品は何処にあるの?」
イヴが訊ねてくると、ガイアは奥の方を目にした。
「・・・あそこエレノアの遺したと言われる遺品がある・・・」
ガイアが見ている方を目にすると、台座には一本の剣が刺さっており一つの鎧が祀られていた。
「剣と鎧・・・その二つがエレノアの遺品?」
「そうだ。これこそが、かつてエレノアが使っていた剣と鎧が隠されているのだ。」
そこには、台座に剣が刺さっており、その前には鎧が祀られていた。
「こんな所にエレノアの使っていた剣と鎧があったなんて思わなかったね。」
「えぇ・・・どうして、ここに遺品を隠したのかしら・・・?」
なぜ、星竜族の造り出した神殿にエレノアの遺品があるのかと思うとガイアが語り始めた。
「・・・エレノアはユニバース様と友好的な関係を築いていたので、エレノア亡き後で使用していた剣と鎧はこの場へと祀られたのだ・・・」
「でも、大昔に存在していた剣と鎧なのに・・・錆び一つないなんて・・・」
アランは大昔の剣と鎧とは思えないと確認し始めた。
「そもそも、ここに遺品を隠す必要があったのか?」
ギルバートがそう思って言うと、ガイアがその理由について言ってきた。
「・・・光翼の涙を奪われたり悪用されたりするような事が起きるのかも知れないと思ったエレノアは自分の使用していた剣と鎧をここに隠したとユニバース様からお聞きになっている・・・世界が脅威や危機にさらされているような事があるようにお考えになられたと言えるだろう・・・」
エレノアは光翼の涙が敵の手に落ちるような事があればと考慮し、ここに遺品を隠し祖先に託そうとしていたのかも知れないと考えられた。
「・・・つまり、エレノアは世界中の命を守ってほしくて、ここに遺品を託したかったと言う事で隠したと言う事なのね。」
「そう言う事だ・・・ティア、この剣と鎧を譲り受けてくれるな?」
ガイアがそう訊ねてくると、ティアは静かに頷いた。
「えぇ・・・この剣と鎧は譲らせてもらうわ。デスドゥンケルハイト軍を倒して世界中の人達の命を救い出して支配された世界に光を取り戻してみせる・・・ただ、それだけよ。」
ティアはエレノアの遺品を受け継ぐ決意をした。
「・・・遺品を受け継いでくれて感謝する・・・」
ガイアが礼を言うと、ティアはエレノアの遺した剣と鎧を手に入れた。
「さて、剣と鎧を装備するのはここを出てからだ・・・まずは、神殿を出るとしよう。」
こうして、七つ目の光翼の涙だけでなくエレノアの遺産をも手に入れたティア達は一度神殿から出る事となった。
120章 故郷の村へ
「もう夜になっているか・・・」
ティア達は七つ目の光翼の涙とエレノアの遺産を手に入れた後で神殿の外へと出ていた。
「さて・・・遺産を確認する前に、休めそうな場所で確認した方がいいのではないのか?」
「そうですね・・・ここで、キャンプをするよりかはいいかもしれないですからね。」
そう言うと、ティアはどの場所にするのか決めているように言ってきた。
「決めたわ・・・ガイア、私の育った村に転移させてくれないかしら?」
ティアがそう伝えると、イヴが様子を窺いながらも訊ねてきた。
「・・・ティア、本当にそこでいいの?」
「えぇ・・・故郷の村に帰りたくなったの・・・お願いガイア、私達が生まれ育った村に連れて行って・・・」
ティアは故郷の村に帰還したいとガイアに頼み込んだ。
「別に構わないが・・・なにやら、事情があるかのように見えるな・・・いいだろう。」
そう言ってから、ガイアは転移魔法を唱えた。
『ワームテレポータル!』
ガイアは疲労が溜まっているのを関わらずに、転移魔法を唱えると転移する穴が出現した。
「この穴を潜れば、すぐにその村へと着けるぞ。」
ティア達は転移の穴に入って、目的の村へと転移していった。
「・・・やはり、ギルバートも裏切ったか・・・」
聖地ラヴィレイヘヴンに戻ったソルは七つ目の光翼の涙を取り戻されてしまった事とギルバートだけでなくガイアも離反した事をダークタナトスに報告していた。
「はっ・・・ティアの涙によって、洗脳が解けるとは思いもしませんでした・・・」
ソルの報告を聞いたダークタナトスは忌々しく思っていた。
「まさか、エレノアの光で我の洗脳が解けるとは・・・やはり、エレノアの一族は侮れぬものだな・・・」
ダークタナトスはエレノアの一族が危険だと改めて感じられた。
「まぁいい・・・ここへ乗り込んできとしても、一緒に始末すればいいだけの事だ・・・なにせ、最後の光翼の涙は我の手にあるのだからな・・・」
そう言って、ダークタナトスは八つ目の光翼の涙を手にして見せてきた。
「しかし・・・ガイアも同様に裏切って、ティア達の元にいますがどうなされるおつもりでしょうか?」
「決まっている・・・奴も裏切り者だ・・・殺すに決まっているではないか・・・」
「・・・そうですか。」
なにやら不服そうにしながらもソルは呟いた。
「ソル・・・まさか、ガイアを殺したくはないと思っているのか?」
「ダークタナトス様・・・そう言う訳ではありません・・・」
ソルが誤魔化すかのように返答をしてきた。
「まぁいい・・・奴等がここに乗り込んで来るまで待つとしよう・・・それこそが、奴等の最期になるのも時間の問題だ・・・」
そう言ったダークタナトスは玉座から立ち上がってソルに命じた。
「・・・全軍、警戒態勢に入るように命じておけ・・・いつ乗り込んで来るのか分かぬからな・・・」
「はっ・・・全兵士にそう伝言致します・・・」
ソルは玉座の間を出て、ダークタナトスの命令通りに警戒態勢に入るようにと兵士達に伝えに行った。
(・・・ティア達が聖地に来る・・・ガイアもあちら側にいる・・・ダークタナトスはガイアも殺すと言っていたが・・・やはり、俺には納得する事ができない・・・)
ダークタナトスは先程、ガイアも殺すと言われた事にソルは納得ができずにいた。
(・・・ガイアは俺と出会ってから鍛えられては剣術や魔法も星竜族の知識を教えられてきた・・・ティア達がラヴィレイヘヴンに乗り込んできてしまえば、絶対に戦わなければならなくなる・・・そうなってしまえば、ダークタナトスは俺に殺させようとするに違いない・・・)
ソルはそう思いながらも兵士達に警戒態勢に入るようにと命じる事に専念をした。
「ここが、私の住んでいた村よ。」
ティア達はガイアの転移魔法で自分の村の前に転移していた。
「・・・ティア、アタシ達は帰って来たんだね・・・」
「えぇ・・・旅立ってから、随分経つけれど・・・時間が経つのは早いわね・・・」
ティアが旅を初めてから色々な事があった事が実感された。
「・・・それでは、見せてもらうとしよう・・・かつて、平和だった村の様子を・・・」
ガイアがそのように言ってくると、ティアはギルバート達を連れて村の中へと入って行った。
「そんな・・・村がこんな風になっていたなんて・・・」
村の中へと入って行くと、デスドゥンケルハイト軍に滅ぼされた光景が目に入った。
「酷ぇな・・・ここも俺達の育った村と同じような有様だな・・・」
「君達の住んでいた村もデスドゥンケルハイト軍に襲撃されて滅ぼされているみたいだね・・・」
ギルバートとアランは自分達の村と同じように滅ぼされている事が目に入った。
「村にはお墓が建てられていますが・・・この村で殺されてしまった人達なのでしょうか・・・?」
ステラは村中に墓が立てられている事に気になっていた。
「あの時に殺されてしまった人達のお墓よ。ティアに埋葬された人達が静かに眠っているの・・・」
ティアは旅立つ前に襲撃によって殺害されてしまった両親だけでなく村人達の墓も作っていた。
「そうだったのか・・・その墓には襲撃で亡くなってしまった村人達が眠っているのか・・・」
ヘイゼルも同行していたが、村人を殺害する事はしていなかった。
「ここを進めば、私の暮らしていた家があるわ・・・」
ティアは、ギルバート達を連れて自分の家へと向かった。
「・・・これが、お前の住んでいた家・・・いや、家だった場所か・・・」
着いた場所には全焼している一軒家があった。
「完全に焼け落ちている・・・それに、このお墓で眠っているのは叔父さんと叔母さんのお墓だよね・・・?」
焼け落ちた家の近くにはティアの両親の墓が立っていた。
「えぇ・・・お父さんとお母さんは安らかに眠っているわ・・・」
ティアは悲しげな表情をしながらもイヴにそう言った。
「この村を襲撃した際にソルは家の中に隠れていると察して、炙り出そうとするためにその家を焼いたと聞かされた事がある。」
かつて、この村を襲撃したソルから、家を焼いた理由をヘイゼルに話していた。
「ヘイゼル、その話はあまりしない方がよいぞ・・・」
ガイアがヘイゼルにそう言うと、ティアが家を見つめている事を目にした。
「・・・イヴ、お父さんとお母さんのお墓にお参りしましょう。」
「そうだね・・・一年間も心配をさせちゃっているからね。」
ティアとイヴは共に両親の墓の前で祈り始めた。
(叔父さん・・・叔母さん・・・心配をかけてゴメンね・・・アタシ、ちゃんと帰って来たよ・・・)
イヴはティアの父と母の墓に一年も心配をかけさせてしまった事を謝罪する形で伝えた。
(お父さん、お母さん・・・七つの光翼の涙を取り戻す事ができたの・・・エレノアの力も使えるようになって、あと一つで全ての光翼の涙を取り戻す事ができるわ・・・光と命を守るために戦うから静かに見守っていて・・・)
ティアとイヴは祈りを終えた。
「・・・叔父さんと叔母さんが見てくれているといいね・・・」
そう言いながらもイヴはティアと同様に両親の墓を見つめた。
「えぇ・・・きっと、私達の事を見てくれていると思うわ・・・」
ティアはエレノアの力を使って背に羽を生やした。
「・・・これが、エレノアの使っていた力よ・・・お父さん、お母さん・・・」
「凄いでしょ?ティアはここまで強くなったんだよ。」
二人はここまで成長した事を両親の墓の前で告げてから墓参りを終えた。
「待たせたわね・・・焼け落ちてしまっているけれど、地下室は無事だからそこに入りましょう・・・」
家は焼け落ちてしまっているが、地下室だけは無傷のまま残っていた。
「そうだな・・・明日は決戦になるのだからな・・・」
ティア達は明日の事を話し合うために地下室の階段を降りていった。
121章 エレノアの鎧姿
「ここが、私達の家にある地下室よ。」
階段を降りて行くと、ティア達は地下室へと足を踏み入れた。
「へぇ・・・ここに、地下室があったんだ・・・」
イヴは地下室があった事は知らないようだった。
「私もお父さんから聞かされるまで知らなかったわ・・・」
ティアがそう言うと、服と剣が置いてあった場所を見て、旅立つ前の出来事を思い出した。
「旅に出るために、この服に着替えて剣を手に入れていた時の事が懐かしいわね。」
ティアは先程の戦闘でボロボロになった旅服と剣を見つめた。
「・・・私のために作ってくれた服はかなり傷付いてしまっているわね・・・」
形見でもある服はボロボロで持っている剣も傷だらけだった。
「悪いな・・・こんな風になるぐらいにしちまって・・・」
「気にしないで・・・この鎧を着るから、治すのは今度にしましょう。」
ティアは持ってきた鎧を手にするとギルバート達に言ってきた。
「・・・今から、鎧を着たいから外に出ていてくれないかしら・・・?」
そう言われたギルバート達はティアを着替えるために地下室から出て行った。
「ティアが鎧を装着している間に聞いておこう・・・皆はラヴィレイヘヴンに乗り込みデスドゥンケルハイト軍と戦う覚悟はできているかどうかを聞くとしようではないか。」
ガイアが真剣な表情をしながら言うとギルバート達は一斉に頷いた。
「結構・・・聞かなくとも既に覚悟ができているようだな・・・」
「ティアだって、とっくに覚悟しているのに当たり前だろ?」
「それもそのようだな・・・エレノアの末裔であるティアがデスドゥンケルハイト軍と戦わずに逃げる事など有り得ぬ事なのだ・・・初めから、覚悟は決めているので聞かなくとも分かっているようだ・・・そろそろ、エレノアの鎧を装着しているに違いない・・・」
既に鎧を装着していると頃だと思って、ギルバート達は地下室へと降りていった。
「ティア、もういいか?」
地下室へと降りて行くと、着替え終えたティアを目にした。
「どう・・・似合っているかしら?」
そこにいたのは、旅服からエレノアの鎧を装着したティアだった。
「流石はエレノアの血を引いた人間である末裔だ・・・まるで、エレノアが天から舞い戻って来たかのように思えてくるぞ・・・」
「ありがとう。」
ガイアにお礼を言ってから、ティアは改めて自分の格好を見て、エレノアのようになったように感じられた。
「・・・よく見て見たら、この鎧は私の体に合っているみたいね・・・」
「かつて、エレノアが装着していた鎧なのだ・・・同じ血を引く者であれば、体と波長が合うのは当然の事だろう・・・」
装着した鎧が体に合ったのはエレノアの血を引いているからであった。
「私もそう思っていたわ・・・この鎧は、光と命を守り続けて欲しいと言っている
みたいで、エレノアの思いが込められて造られたのかも知れないわ・・・」
そう思いながらも、ティアは鎧に手を触れてエレノアの思いが感じ取られる気がした。
「そうだね。その恰好をしていたらティアが、エレノアになったように見えるよ。」
イヴがそう言うと、ガイアはティアを見つめてから言ってきた。
「ティアはエレノアの血を引いた人間だ・・・似ているのは、当然でもあるのだからな・・・」
「はい。鎧を着たティアはエレノアにソックリです。」
鎧姿のティアを見ていると、ギルバートが持っている剣を抜くように言ってきた。
「ティア、その剣を抜いてみろよ。」
ギルバートに言われた通りにティアはエレノアの使っていた剣を抜いてみた。
「この剣こそが・・・エレノアの使っていた剣なのね・・・」
ティアの持つ剣から生命の光が輝いているように見えた。
「はい・・・とても綺麗な輝きを放っています・・・」
「この剣を生命の光を宿して造られたと伝えられている剣であるので、生命の光を守りたいと願うエレノアに力を与えていると言う言い伝えがあるのだ。」
エレノアの剣はまるで生命の光を宿しているかのように輝いていた。
「さて・・・エレノアの鎧を装着したところで、そろそろ本題に入るとしよう・・・」
ガイアが、そう言うとティアは剣を鞘に戻してから言ってきた。
「・・・明日はデスドゥンケルハイト軍との決戦になる事なのね・・・」
「そうだ・・・なので、私の話を聞いてもらいたい・・・」
明日は最後の戦いになる事を理解していたティア達はガイアの話を聞き始めた。
「これまでの旅で光翼の涙を七つは取り戻す事ができた・・・しかし、最後の一つである八つ目の光翼の涙だけはデスドゥンケルハイト軍・・・いや、ダークタナトスの手中に落ちてしまっている・・・」
「・・・最後の一つは聖地にあるのね・・・」
ティアは、最後の光翼の涙はラヴィレイヘヴンにあると確信した。
「最後の一つはダークタナトスが所持しており・・・取り戻すためにはダークタナトスを倒さなくてはならんのだ・・・」
「あぁ・・・俺も父さんからいつも持っているのは知っているけど、なんで最後の一つだけ持っていたんだよ?」
ギルバートが気になっていると、ガイアはその理由について話してきた。
「・・・なぜ、ダークタナトスは最後の一つだけを肌身離さずに持っているのか・・・その理由は実に簡単な事だ・・・八つある光翼の涙を全て隠してしまったのであれば、取り戻されてしまうような事があるのを恐れて、ならば一つだけを所持してしまえば返り討ちにされるだけであろう・・・」
二十年前、光翼の涙を全て隠そうとせずに、七つの光翼の涙を一つずつ世界中に隠していたが、八つ目の光翼の涙だけは手放さずにダークタナトスが所持していたのだった。
「まぁ・・・どっちにしても、エレノアの一族じゃなかったら光翼の涙を手に入れられないし・・・どう考えても不可能だと思うよ?」
「光翼の涙の元へと辿り着いたとしても、エレノアの血を引いてはいない人間でなければ手に入れる事などできぬからな・・・」
光翼の涙を手に入れられるのはエレノアの血を引いている人間だけで、その血を引いてはいない人間では光翼の涙を手に入れる事は不可能だった。
「危険な場所に光翼の涙を隠していたのも、そう言う理由があったからなのですか?」
「あぁ・・・アヌビスだけは不服に思いながらも光翼の涙を守る番人として、守り続けていたが・・・初めから、デスドゥンケルハイト軍に忠誠など誓うはずがない・・・」
「あの様子だと、初めからアタシ達に協力をするつもりみたいな様子だったね。」
ティア達はピラミッドの主であるアヌビスが彼女達に協力的だったと実感した。
「さて・・・七つの光翼の涙を取り戻した。最後の光翼の涙はラヴィレイヘヴンにありダークタナトスが所持している・・・しかし、ソルを含む幹部達との戦いは避けられず、体力と魔力を消耗する事になってしまう・・・皆だって、そのような状況になる事は既に把握しているはずだ・・・」
「僕とステラは魔力を多く使うけど・・・ティア達の方は体力をかなり使ってしまいそうだね・・・」
アランは体力と魔力の温存をするのは難しいと判断した。
「・・・ここは、あまり戦わないようにしながら進むしかなさそうだね・・・ティアもソルの戦いもあるから温存した方がいいみたいだね・・・」
すると、ティアがある事をガイアに聞いてきた。
「ガイア・・・もしも、ソルと戦う事になったら貴方はどうするの・・・?」
「・・・なぜ、そのような事を聞くのだ?」
ソルの事を聞くのか訊ねると、ティアはその理由を答えた。
「貴方はソルと一緒だったから・・・少し、気になって聞いてみたの・・・」
「・・・確かに、ソルとは師弟のような関係で、剣術や星竜族の知識や転移魔法を教えた人間だった・・ヘリオドラコ家の人間では潜在能力が高かったのか、私が思っていた程の実力者へと成長を遂げたのだ・・・」
十数年前、ソルと出会ってからガイアは彼との師弟関係を築き上げていった。
「ソルが側近になったと同時に、私はお目付け役となったのだが・・・離反をしているので、今は関係のない事だ・・・」
「・・・私もヘリオドラコ家であるソルがダークタナトスの側近になったのを知った時は驚かされたが・・・ギルバートも知らされていたら驚いていたに違いない・・・」
デスドゥンケルハイト軍にいた時に、ソルが側近になった時の事の出来事を同時に思い出した。
「私の転移魔法を使えばラヴィレイヘヴンに着けるが・・・本拠地のある場所から離れた場所へ飛んで行った方がいいと思うのだが・・・」
「そうね・・・ガイアが裏切った事をソルが伝えているのかも知れないから、ここは竜に変化して飛んで行った方が良さそうね・・・」
転移魔法を使って、聖地に転移するよりも、竜に変化して聖地から離れた場所に飛んだ方がいいとティアは考えた。
「待ち伏せされているかも知れないと考えたのか・・・そうするとしよう。」
聖地に乗り込む方法を決めると、ガイアは夜空を見上げて見た。
「・・・明日は最後の戦いになる・・・早めに寝ておいた方がいいぞ・・・」
明日の決戦に備えて、ティア達は体を休めるために眠る事にした。
122章 決戦前夜
その夜、ティアは地下室の入り口付近で夜空を見上げていた。
(・・・今日は星空が見えるのね・・・)
明日は決戦でありながらも、夜空には星空が見えていた。
「ティア、来てやったぞ。」
背後から声が聞こえて振り向くと、ギルバートがティアの後ろに立っていた。
「こんな夜中に呼び出して、話したい事ってなんだよ?こんな夜中に呼び出すぐらいだから重要な話か?」
「えぇ・・・貴方と話したい事があったから聞いてほしかったの・・・」
なにを話すつもりなのか思っていると、ティアは伝えたい事を話し始めた。
「・・・明日はデスドゥンケルハイト軍との最後の戦いになるでしょ?その事で相談したい事があったから、貴方に聞いてほしいと思ったからよ・・・」
ティアがそう言ってくると、ギルバートは彼女の瞳を見てもしやと思った。
「なぁ・・・お前が話したがっていたのは、仇討ちの事なんじゃないのか?」
ギルバートがそう思って言うと、ティアはなにも答えようとはしなかった。
「図星みたいだな・・・明日は決戦なのに、まだ仇を討つ気にはなれていなかったのかよ?」
「・・・仇を討つという事は相手の命を奪ってまでも死んでしまった人の無念を晴らす事らしいけれど・・・どうしても、命を奪ってしまうような事はしたくはない気持ちが勝ってしまうみたいなの・・・」
何度もソルと戦ってきたのにも関わらずに、ティアは相手を殺してしまいたくはないという気持ちが勝って覚悟が決める事ができずにいるようだった。
「・・・これまで、何度もソルと戦って来たのに・・・仇を討ちは人の命を奪ってしまう事になると知っていても、ずっと仇を討つ気にはなれないと思っているの・・・」
仇を討とうとしても、命を奪いたくはない気持ちが強くなり、仇の相手であるソルを殺す事ができないと思っていた。
「ここまで来たのに、仇の相手を殺せないとなると・・・お前の本心がそう訴えてきているからじゃないのか?」
「・・・私の中にある本心が止めていたと言う事ね。」
「だって、お前は命の大切さを両親に教わっていただろ?仇の相手と同じ人殺しになってしまうから止めてくれってお前の中にある本心がその手を汚さないでくれと言っていたのかもしれないな。」
ティアがこれまで仇を討てずにいたのは、彼女の中にある本心が命を奪ってしまう事になってしまう事を止めていたのだと思えた。
「そうね・・・私が人を殺して命を奪いたくはないと思っていたから・・・本当はそんな事はしてほしくはないと本心が訴えてきていたからなのね・・・」
両親の仇を討とうと決めているはずであるティアが、本心の訴えによって命を奪う事を止めるように感じられたのだと実感した。
「それもそうだろ・・・普通は、大切な人が殺されたら仇を討つためには、相手を殺して
命を奪しかないからな・・・ティアの場合は、仇を討とうしたら相手を殺したくない
気持ちが溢れ出て来るせいで、仇を討ちたくてもできなかったんだ・・・」
そう言われてティアは、これまでソルと戦っていた時の事を思いだした。
「・・・貴方の言う通りね。貴方の言っている事が色々と当て嵌まるってくるわ。」
これまでの話を聞いたティアは自分に思い当たる節があった事を再認識した。
「これまでソルと戦っても、命を奪いたくはないと言う気持ちが強くて、いつまでも仇を討つ事にはなれなかったのね・・・」
ティアはこれまで仇を討つ決意が緩んでいた理由に納得をした。
「そうだよ・・・あの時、情があったかのようにも見えていたぞ・・・」
「・・・善人や悪人でも生きているから・・・例え、仇の相手でも簡単に命を奪ってしまう事になれば、その人が命を奪ってしまう事になってしまうわ・・・」
ティアがそのように言うと、ギルバートは関心をしたように笑みを浮かべた。
「まぁ・・・エレノアの一族らしい考え方だな・・・その血を引いているお前なら当たり前だろうな・・・」
ギルバートがティアの様子を見て、その事を打ち明けたかったのだと察した。
「ここまで来たのに、仇を討てないでいたら死んでしまった両親に申し訳ないからな・・・」
そう言って、ギルバートは後ろの方を振り向いて声をかけた。
「なぁ・・・もう出て来てくれもいいだろ?」
ギルバートが声をかけると、ステラが姿を現してきた。
「ステラ?もしかして、ずっとそこで見ていたの?」
「はい・・・緊張して眠れなかったので・・・」
眠れなさそうにしているステラを見て、ギルバートがもしやと思って訊ねてきた。
「・・・もしかして、さっきの話を聞いていたのか?」
ギルバートがそう問うてくると、ステラは頷きながらも静かに答えた。
「はい・・・ティアは最後の戦いでも両親の仇を討つ事に迷っていて、ギルに相談をしていた様子を見ていました・・・」
どうやら、ギルバートの後を付けていて話を立ち聞きしていたのだった。
「ティア・・・一つだけ聞かせてください。本当に両親の仇を討ちたいと思っているのですか?」
両親の仇討ちをするのか訊ねられたティアはなにも答えようとはしなかった。
「・・・ずっと、思い悩んでいたみたいで不安そうにしていたのですか?」
ステラが心配そうにすると、ティアは重い口を開きながらも答えてきた。
「えぇ・・・けれど、明日は絶対に仇を討たなければいけないと思うと・・・どうしても、命を奪ってはいけないと言う気持ちが勝ってしまうの・・・」
ティアがそう言うと、ステラは不安そうにしながらも言ってきた。
「・・・仇討ちをしても、ティアの両親は帰ってきませんよ・・・?」
「分かっているわ・・・仇を討ったとしても、殺されてしまった人達は帰っては来ない・・・その事を理解していながらも旅をしてきたの・・・」
既に理解していると答えたが、ステラは彼女に向けてこう言ってきた。
「・・・ティアは嘘つきです。」
ステラはティアの言っている事が嘘だと断言してきた。
「本当は人を殺してしまいたくないから、仇を討つ事を怖がっているように見えます・・・」
ステラはティアの様子を見て、そのように感じ取っていた。
「ティアはこれまでモンスターやデスドゥンケルハイト軍の命を奪う事もなく戦い続けて来ました・・・それなのに、ソルと戦いになった時だけは殺してしまいたくないのに無理に戦っているようにしか見えませんでした・・・」
ステラにそう指摘された二人はこれまでの戦いを振り返ってみた。
「言われてみればそうだな・・・ティア、ソルと初めて戦った時の事を思い出して見ろよ
・・・その時にアイツを殺してしまえばどうなったと思う?」
初めてソルと戦っていた時にティアが仇を討っていた場合の事を考えてみた。
「もしも・・・仇を討っていれば、私も人の命を奪ってしまった事になってしまっていたはず・・・」
あの場で仇を討っていれば、自らの手で命を奪ってしまった事になり、ティアは永遠に後悔に苛まれていたはずだと考えられた。
「・・・あの時は人の命を奪いたくない気持ちが強まって討てなかった・・・もしも、気持ちを抑えながらも仇を討っていたのなら、自らの手を汚してしまっては旅を続けていられるはずがなかったはず・・・それが、ピラミッドの試練を乗り越えてエレノアの力が使えるようになっても、命を奪いたくはないと言う気持ちは変わらなかったわ・・・」
砂漠でソルと戦っていた時も、そのような気持ちは変化していなかった。
「そして、神殿でエレノアの力を使って貴方と戦っていたけれど、傷付ける事もなく貴方を連れ戻す事ができたわ。」
「ティアとギルは通じ合う事があったから、連れ戻す事ができたのかもしれません。」
ステラがそう言うと、ティアとギルバートはそうかも知れないと思えた。
「それが、あったからギルを救い出す事ができたのかも知れなかったのかも・・・ギルだって、そう思ってはいるはずよ。」
「そうだな・・・」
二人が見つめ合うと、ステラが声をかけてきた。
「最後に一つだけ、聞かせてください・・・ラヴィレイヘヴンでソルと戦う事になっても、両親の仇を討つつもりで戦うつもりなのですか?」
ステラにそう問いてくると、ティアは静かに答えてきた。
「もちろん、そのつもりよ。明日は最後の戦いになるから、いつまでも仇を討てずにいてしまえば、この村で亡くなってしまった人達に申し訳が立たないわ・・・」
そう言いながらも、ティアは周りにある墓を気にしていた。
「・・・明日は決戦だし、もう寝た方がいいぜ・・・」
「仇討ちの事を相談するつもりだったけれど・・・色々と話をしていたわね・・・ステラ、もう寝ましょう。」
「はい・・・」
話を終えたティア達は地下室へと戻って眠り始めた。
(・・・明日、最後の仇討ちになるのかもしれない・・・けれど、私が仇を討つ覚悟を決めなければ・・・そうしないと、死んでしまった人達が浮かばれない・・・)
明日の決戦について考えている内にティアは眠りについた。
123章 聖地ラヴィレイヘヴンへ
決戦の日になり、ティア達は聖地ラヴィレイヘヴンに向かう覚悟ができていた。
「いよいよ、聖地に向かう時が来た・・・準備はできているな?」
「全員、覚悟はできているわ。」
ティアがそう答えると、ギルバート達が覚悟できている様子を見た。
「・・・それでは、聖地ラヴィレイヘヴンへ向かうとしよう・・・」
そう言って、ガイアがドラゴン化してティア達を背に乗せた。
「これで、最後の旅になっちゃうんだね・・・」
『そのようだな・・・デスドゥンケルハイト軍を倒す事ができれば、世界に平和が戻るだろう・・・そうなれば、私達の旅も終わるであろう・・・全員、しっかり捕まっているのだ。』
ガイアはそう言ってから、上空へと飛び上がり聖地ラヴィレイヘヴンへと飛び始めた。
「聖地ラヴィレイヘヴン・・・この世界が誕生した時にエレノアが収めていた場所だった・・・けれど、二十年前にデスドゥンケルハイト軍に侵攻で七つの光翼の涙が隠されてしまった・・・私達は向かっているのね・・・」
ティアはかつてのラヴィレイヘヴンがどのような地だったのかを想像した。
「昔、父さんから聞いた事はあったが・・・生命の光が溢れ出る聖なる地って言われていたらしいぜ・・・アイツ等が乗っ取られてしまう前のだけどな・・・」
聖地が占領される前はそのように伝えられていたが、デスドゥンケルハイト軍が占領した事で光が感じられない場所へと変わり果ててしまっていた。
『その通りだ・・・我々の手で光を取り戻さなければ、この世界は永遠に闇と言う名の死の恐怖に覆われるであろう・・・』
ガイアがそう言ってくると、ティアは胸に手を当てながら言ってきた。
「・・・そのために、私達はラヴィレイヘヴンに向かっている・・・エレノアが望んだ場所を解放する戦いになる事は分かっているわ・・・」
自分達が使命を持って最後の戦いに向かっていると、ティア達は改めて実感された。
「はい・・・これが、最後の戦いになると思います・・・」
『・・・この世界に転移してから長い年月が経ったものだ・・・まさか、エレノアの血を
引いた人間と聖地に向かう事など・・・今まで、思いもしていなかったぞ・・・』
ガイアが二十年間もこの世界に滞在していた事に浸り出した。
「あのう・・・一つ聞いてもいいでしょうか?」
ステラはガイアがなにか質問をしようとしていた。
「ガイアはどうして、デスドゥンケルハイト軍にいたのですか?」
ステラがそう訊ねてくると、ティア達もその事について気になりだした。
「そう言えば・・・前から思っていたけど・・・ユニバースに仕えていた星竜族がデスドゥンケルハイト軍に二十年間もいたなんて・・・なにか理由でもあったの?」
『当然だ・・・故郷の世界が滅び、ユニバース様もお亡くなりになられた後に、私はあらゆる世界に転移しては人類や世界を護り続けて来た・・・』
故郷の世界が滅亡し、ユニバースを含む星竜族が絶滅してしまった以降、ガイアは様々な世界に転移をしては人類を護ろうと一人で戦い続けていた。
「・・・ガイアは一人だけになってしまっても、世界を護ろうと頑張っていたのですね・・・」
『あぁ・・・しかし、一人だけでは世界を護れるはずもなく・・・私が護れた世界はごく僅かな世界しか救う事ができなかった・・・』
ガイアが護れた世界はほんのごく僅かで、それ以外の世界は救えずに滅亡してしまっていた。
「それでも・・・ガイアは、世界を救おうとしながらも一人で生き続けていたのね・・・」
話を聞いていたティアはガイアが孤独になっても、人類や世界を護りたかったと言う無念が強く伝わってきた。
『そして、二十年前にこの世界に転移して訪れた・・・しかし、デスドゥンケルハイト軍と言う軍勢にラヴィレイヘヴンが占領され、支配されている光景を見てきた・・・事情を知った私はデスドゥンケルハイト軍を倒すべく、一人でラヴィレイヘヴンに乗り込んだのだ・・・』
「ガイアはダークタナトスと戦っていたんだよな?」
『そうだ・・・私は戦ったが、ダークタナトスに強大な闇の力に敗れてしまった・・・そして、敗れてしまった私に、ダークタナトスはある選択を迫られたのだ・・・一つはデスドゥンケルハイト軍に加わるか、もう一つはこのままダークタナトスに殺されるのかを選ばされたのだ・・・』
「・・・それで、デスドゥンケルハイト軍に加わる選択を選んだと言う事か・・・」
ギルバートがそう言うと、ガイアは『そうだ・・・』と苦い口調で言ってきた。
『それからと言うもの・・・二十年もの間、デスドゥンケルハイト軍の中にいた・・・そして、ソルと出会い師弟の関係を築く事となった・・・』
ガイアはソルと初めて出会った時の事を思い浮かべた。
『だが、勘違いはしないで欲しい・・・私のしていた事は兵士達の稽古をしていたのみで・・・皆が考えているような事はしていないぞ・・・』
これまで、ガイアが行っていたのは兵士達の教育だけだった。
「良かったです・・・ガイアがそんな事をするはずがないと思っていました・・・」
ステラが安心をしたが、ギルバートが呆れたように言ってきた。
「おいおい・・・コイツが人殺しをするような奴に見えるか?」
「ギル、ステラにそんな事言ったら駄目だよ・・・」
アランに注意されたギルバートは「悪ぃ・・・」とステラに謝罪をした。
『気にするな・・・もう終わった事だ・・・もう少しで、聖地に着くので心の準備をした方がいい・・・』
そう言われると、ティア達はラヴィレイヘヴンが見えてきた事を確認した。
「分かったよ・・・俺達はそろそろ準備でもしていようぜ・・・」
聖地ラヴィレイヘヴンに着くまで、ティア達は戦闘の準備を始めた。
「ガイア・・・?」
準備をしている最中で、ステラがガイアに声を掛けた。
『どうした?緊張をしているのか・・・』
「いいえ・・・聞きたい事があったので・・・」
ステラが、そう言うとガイアは『なんだ?言ってみろ。』と言ってきた。
「・・・この戦いが終わったら、ガイアはどうするつもりですか?」
『なるほど・・・戦いに終止符を討った後の私が気にしていると・・・』
ガイアがそう言うと、ステラは心配をしている様子だった。
「・・・もしも、デスドゥンケルハイト軍を倒してから、貴方は別の世界に旅立ってしまうのかと気になってしまって・・・」
ステラは戦いが終わった後で、ガイアが別の世界に行ってしまう事が心配だった。
「貴方と出会ってから、色々と星竜族について話しては教えられてきました・・・ですが、戦いが終わってしまったら、また別の世界に旅立ってしまうのでしょうか・・・?」
心配に思っているステラにガイアはこれからどうするのか決めた。
『・・・この世界に残ろうと思う。』
「えっ・・・?」
その言葉を聞いたステラが顔を上げると、ガイアは言葉の続きを言ってきた。
『・・・いつまでも、ステラと一緒にいられると言う訳だ・・・』
ガイアの放ったこの世界に残ると言う言葉に、ステラは目を星のように輝かせた状態で嬉しそうに言ってきた。
「ガイア・・・!これからも一緒にいられるのですね・・・!」
『こちらこそ、よろしくたのむぞ・・・ステラ。』
「はい・・・私達はいつまでも一緒です・・・!」
ガイアとステラはこれから一緒にいられる事が嬉しく感じられた。
「良かったわね。ガイアが、この世界に残ってくれて・・・」
ティア達も笑みを浮かべる中で、ガイアは最後まで生きて戦いを終わらせる決意をした。
(ステラ・・・この戦いが無事に終わるまでは、死ぬ訳にはいかんな・・・)
ガイアはステラと一緒になるために、最後まで戦い抜こうと考えた。
124章 門で待っていた者
『・・・もうすぐで、ラヴィレイヘヴンに着くぞ・・・』
そのまま飛んでいくと、ラヴィレイヘヴンのある大陸が見えてきた。
「やっと、見えてきたな・・・あそこにあるのが聖地ラヴィレイヘヴンだ・・・」
そう言うと、ティア達は聖地ラヴィレイヘヴンの上空へと差しかかった。
『着いたぞ・・・その地にはかつて、エレノアの末裔達が治めていた国があったのだ・・・』
ガイアがそう言うと、ティア達は聖地を見下ろしてみた。
「ねぇ・・・なんだか、思っていたのと違わない・・・?」
ラヴィレイヘヴンはティア達が想像していたよりも、死の世界ともいえる光景を目にした。
「だって、生命の光の溢れる聖なる地だって言われているのに、いくらなんでも危険な場所にしか見えてこないよ・・・」
地上は住居不可能なぐらいに荒れており、まるで死の雰囲気が漂う場所になっていた。
「ラヴィレイヘヴンは自然が豊かな緑に囲まれた土地だって、お母さんから聞いた事があったけれど・・・こうなってしまったのもデスドゥンケルハイト軍が進行してきたせいなのね・・・」
かつて、この地は光のように自然が溢れ出る豊かな土地のようだった。
『それもそのはずだ・・・デスドゥンケルハイト軍が乗っ取った事で、聖地から光が消えてしまった事で、この地にあった美しき緑達は死に絶えてしまったのだ・・・』
デスドゥンケルハイト軍が聖地を占領してしまった事によって、自然は焼き払われそこに住んでいた生物も全て殺されてしまっていた。
「酷い・・・動物と植物も生きているのに・・・」
『・・・デスドゥンケルハイト軍にとっては、それ以外の人間や生物の命など軽い物だと考えている・・・それで、この地にある自然を殺しているのだ・・・」
そう聞いたティアは罪も無い動物や自然が殺された事に怒り拳を震わせた。
『・・・そして、あそこに見えるのがエレノアの建国した国だ。』
ティア達目の前を見て、聖地に城下町のある城がある事が分かった。
「本で書いてあったと思うけど、エレノアはラヴィレイヘヴンに国を創ったらしいよ。」
ラヴィレイヘヴンにはエレノアが建国して統治していたと伝えられている国があった。
『かつてはエレノアの血を引く人間達が治めていた国だ・・・しかし、今ではデスドゥンケルハイト軍の本拠地となってしまっている・・・』
ガイアがそう言うと、ティアはラヴィレイヘヴンにある国を見てみた。
「・・・その国は、お父さんとお母さんの故郷だった場所・・・けれど、私の聞いた話と全く違っているわ・・・」
その国からは邪悪な雰囲気が漂っていた。
『・・・この国にはデスドゥンケルハイト軍がいる・・・そのように感じるのも、無理もないであろう・・・ここから、離れた場所へ降り立つとしよう・・・』
そう言って、ラヴィレイヘヴンから離れた場所に移動した時だった。
「ティア、どうかしたの?」
「なんでもないわ・・・気にしないで・・・」
ティアがなにかを思いながらも、ガイアは国から離れた場所へと移動した。
(なんだか・・・ラヴィレイヘヴンに、近付いたら懐かしい感じがしたのは、気のせいだったのかしら・・・?)
ラヴィレイヘヴンに徐々に近付く度にティアはなにやら懐かしい気持ちが感じ取られていった。
『ここなら、誰もいなさそうだ・・・』
ガイアは安全そうな場所を見つけて降り立ちティア達はラヴィレイヘヴンへと歩き出して行った。
「この階段を上がって、門を潜ればラヴィレイヘヴンに入れるぞ。」
ティア達はラヴィレイヘヴンのある門の前まで着いた。
「階段は多いけど・・・上がるしかないみたいだね・・・」
「もう少しで、ラヴィレイヘヴンに着けるので我慢をした方がいい。」
階段を上がって行くと、ティア達はラヴィレイヘヴンの門の前まで着いた。
「門は閉まっていようだが・・・開門した直後に、兵士達が襲いかかって来る可能性がある・・・開門する事になるが、覚悟はできているだろうか・・・?」
ティア達はラヴィレイヘヴンに入るべく、門を開けようとした直後だった。
「見てください・・・扉が開いていきます・・・」
突如、扉がゆっくりと開かれていった。
「警戒を緩めるな・・・もしかしたら、罠かも知れんぞ・・・」
ティア達が警戒をしながら武器を構えた。
「よく来ましたね・・・エレノアの末裔御一行・・・」
「その声は・・・!」
アランは開かれた扉から現れた人物を目にして警戒をしだした。
「やっぱり、来てしまいましたね・・・アラン君・・・」
扉から現れたのはデスドゥンケルハイト軍幹部でノヴェフロル学院の学長でもあるダチュリエルだった。
「ダチュリエル先生・・・!」
「ここへやって来る事は分かっていたましたが・・・まさか、直々に門から入ろうとするとは・・・」
ダチュリエルがそう言っていると、ギルバートが周りには誰もいない事を訊ねてきた。
「それで・・・お前、一人だけか?」
「私だけで十分と言っておきましたので・・・それでは、戦いと言う名の授業を始めましょうか・・・」
そう言ってから、ダチュリエルは魔法を唱えてきた。
『スパボルオン!』
ダチュリエルは雷の魔法を放ってきた。
「避けろ!」
ヘイゼルがそう叫び、全員避けた事で雷に当たらずに済んだ。
「それにしても・・・どうして、ガイアに乗って城へ乗り込まなかったのかが謎ですね・・・」
ダチュリエルが疑問に思っていると、ガイアがその理由について説明をした。
「なぜ、竜の姿で乗り込もうとしなかったのは・・・上空から、撃ち落とされてしまう事も考えられたからだ・・・なので、近くに降りて門から入らせてもらう事にしたのだ。」
ガイアは、聖地に近付いて撃ち落とされる事を推測していた。
「そうですか・・・てっきり、アラン君の考えかと思いましたが・・・少し、期待を
してしまいましたよ・・・」
ダチュリエルはそう言ってから、次の魔法を唱えてきた。
『シャワーグラスオブレイン!』
今度はガラスの破片のような魔力のシャワーがティア達に向けて放たれた。
「ギル、行くよ・・・!」
「あぁ・・・!」
ギルバートとイヴは魔力のシャワーを避けながらもダチュリエルに攻撃をしようと近づいた。
「これで、どうだ!」
ダチュリエルの前まで近づいたギルバートとイヴは同時に攻撃を繰り出した。
「はあっ!」
「せいっ!」
ギルバートとイヴは力を振り絞ってダチュリエルに攻撃を仕掛けた。
「それはいけませんね・・・」
そう言った直後、ダチュリエルは魔法で結界を張った。
「くそっ・・・魔法で結界を張られたか・・・!」
魔法の結界によって、二人の攻撃は防がれてしまった。
「残念でしたね・・・攻撃をしようとしてくる事は分かっていました。」
ダチュリエルは二人が攻撃をしてくる事を把握していた。
「コイツ・・・余裕そうな態度をとりやがって・・・」
「まぁ・・・君達の事は既に色々と聞かされていますので・・・」
どうやら、ティア達の実力は既に把握されているようだった。
「・・・ダチュリエル先生は頭が良くて魔法も扱うのが上手いから、油断をせずに戦った方がいいよ・・・僕も先生の強さを見てきたから・・・」
「あぁ・・・ノヴェフロル学院の教師もやっていた奴だからな・・・」
すると、ダチュリエルがアランを見て色々と思い出しながら言ってきた。
「・・・君には授業や実習で私の魔法を見せた事がありましたね・・・私の教えた事は役立てているようですね?」
戦闘中に聞かれていた事に気付いたアランはダチュリエルが教師をやっていた時の事を思い出した。
「はい・・・貴方に教えてくれた事はちゃんと覚えています・・・」
「そうですか・・・私の教えが役に立ててくれた事を光栄に思いますよ・・・君も私の事を皆に優しい教師だと思ってくれていましたからね。」
そう言いながらも、ダチュリエルは嬉しそうな表情をしていた。
「はい・・・学長達にもそう言われていました・・・アラン君・・・君はとても優秀な生徒だと思っていましたからね・・・」
ダチュリエルはノヴェフロル学院に在学していた頃のアランを高く評価していた。
「そう言ってもらえて光栄です・・・ダチュリエル先生・・・」
アランが魔導書を手にしながらもダチュリエルに質問をしてきた。
「・・・貴方はどうして、教師になりたいと思いましたか?」
「私が教師になった理由・・・なぜ、そのような事を聞くのですか・・・今は戦闘中ですが・・・?」
ダチュリエルが平然とした表情でアランに言ってきた。
「・・・答えないのであれば、貴方に勝って聞かせてもらいます・・・!」
そう言ってから、アランは詠唱を唱える前にティア達に言ってきた。
「・・・皆、ダチュリエル先生に勝つには魔法をなんとかしてからじゃないと、攻撃を与える事ができないと思うよ・・・」
「あぁ・・・その前に攻撃のチャンスができればいいけどな・・・」
ギルバートが苦い笑みを浮かべながらも、攻撃を仕掛け続けてみる事にした。
「やるしかないだろう・・・ダチュリエルを倒すには隙を見て、強力な一撃を与えなければいけなさそうだぞ・・・」
「・・・隙ができたら、魔法を撃つからそれまでは堪えていて・・・」
アランがそう言うと、ティア達はダチュリエルに攻撃を仕掛け続けた。
125章 生徒と教師
「ダークタナトス様、ティア達が聖地の前に現れました。」
同じ頃、ソルが報告をしているとダークタナトスが水晶玉に移っているティア達の様子を確認しだした。
「分かっている・・・奴等は、ダチュリエルと戦っているところだ・・・」
水晶玉にはダチュリエルと戦っているティア達が映し出されていた。
「しかし、本当にダチュリエル一人に任せて宜しかったのでしょうか?」
「あぁ・・・表ではノヴェフロル学院の学長を任されていた魔導士だ・・・魔法となれば、敵う者などはいないだろう・・・」
ダークタナトスは水晶玉の映像を見ながら不敵に笑みを浮かべた。
(・・・ダークタナトスは余裕な笑みを浮かべている・・・光翼の涙が自分の手にあるからか・・・もしくは・・・)
ソルはそう考えながらも不敵な笑みを浮かべているダークタナトスを見つめた。
「これなら、どうでしょうか?」
そして、ティア達の方はダチュリエルとの戦闘が続いていた。
『グレイシャル・ウラノス!』
アランはとっさに魔法を唱えて、天空から氷の結晶を降り注ぐと炎の魔法に直撃した。
「君の魔法も上達しているようですね・・・」
「卒業してから、一人で旅をしていたので・・・魔法の腕も上達するのは当然の事なので・・・」
アランがそう答えると、ダチュリエルは笑みを浮かべてから言ってきた。
「そうでしたね・・・エレノアの末裔と一緒に、旅を始めてからも更に、魔法の腕を
上達されていましたね・・・」
そう言いながらもダチュリエルは自身の魔力を高めだした。
「ダチュリエルの魔力が一気に強まったぞ・・・いよいよ本気を出そうとしているつもりか・・・」
「本気って・・・今まで、本気ではなかったのですか?」
「そうだ。ダチュリエルは天才的な魔力を持っていていたので、その魔力を買われてデスドゥンケルハイト軍の一員になったと聞いた事はある・・・」
ガイアの言葉が聞こえていたのかアランはダチュリエルに訊ねた。
「・・・その魔力があったからデスドゥンケルハイト軍の誘いに乗ったと言う事ですか・・・?」
「えぇ・・・私に敵う者は誰一人いませんでしたので・・・」
そう言った直後、アランは魔法を唱えてきた。
「人が話し終える前に魔法を撃ってくるとは・・・そんな風に教育をした覚えはありませんよ?」
ダチュリエルは結界を張って魔法を防いでいた。
「ノヴェフロル学院には多くの生徒や教員がいますが・・・デスドゥンケルハイト軍に逆らう人間を輩出させないようにと監視役として私が送られてきました・・・」
ダチュリエルが話して最中にアランが睨みつけながら言ってきた。
「貴方は覚えているはずです・・・これまで、教師としての思い出や生徒達と過ごしてきた学院生活を忘れてはいない事を・・・」
「確かに・・・今でも覚えてはいます・・・ですが、思い出など不要な物です・・・死んでしまえば、意味が無くなる物ですからね・・・」
そう言いながら、ダチュリエルは魔力を限界まで高めた状態で魔法の詠唱を始めた。
「・・・ダチュリエル先生は強力な魔法を唱えようとしてきている・・・」
「だったら、今すぐにでも攻撃を仕掛けて見ようぜ・・・」
しかし、アランは首を横に振ってきた。
「ううん・・・ここは、僕に任せて・・・僕の魔法で先生に勝って見せるよ・・・」
「いいのか?」
「・・・僕に任せて、皆は離れていて・・・」
「分かったよ・・・ここは、アランを信じて見ようぜ・・・」
ティア達が離れると、アランも魔法の詠唱を始めた。
「アラン、一人で任せて、大丈夫なの・・・?」
「心配するなよ・・・アイツはダチュリエルが認めるくらい優秀な生徒だった奴だ・・・友達の俺も心配だけどアイツを信じているぞ・・・」
ギルバートがイヴにそう言うと、二人の魔法の詠唱が唱え終えていた。
「・・・優秀な生徒だった君とはこれで、お別れになるのは残念な事です・・・君のような逸材にいつ出会えるのかは分かりませんね・・・」
「ダチュリエル先生・・・卒業して以来、魔法の実力を上げた僕の力を見てくれるのなら・・・貴方に殺されても構いません・・・なので、見てください・・・」
二人がそう言い終えてから、同時に魔法を唱えてきた。
『『魔導記録(グリモワール・レコード!!)』』
同時に魔法を唱えた直後、二人の頭上に強大な本が現れて開かれたページから凄まじい魔力の光線が放たれた。
「これは・・・どちらの魔法も互角のようだ・・・」
アランとダチュリエルが唱えた魔法はどちらも互角でぶつかり合ったまま動かなかった。
「中々やりますね・・・ですが、魔力が上の私には勝つ事はできませんよ・・・」
ダチュリエルがそう言った直後、アランの魔法が徐々に押されていった。
「確かに・・・学院内でダチュリエル先生に敵う人は一人もいなかった・・・ですが、僕はダチュリエル先生を超えてみせます・・・!」
そう言ってから、アランは魔力を振り絞りダチュリエルの魔法を押した。
「私の魔法が・・・押されていく・・・!?」
ダチュリエルは驚きを隠せずにいると、魔法を押し返されようとした。
「・・・これが僕の力です・・・貴方の教えがあったからこそで・・・今の自分になれたのも貴方の御蔭でもあります・・・ダチュリエル先生、ありがとうございました。」
そう言って、アランは魔法を押し返しダチュリエルは自身の魔法と共に押し返された。
「見事です・・・アラン・・・君・・・」
魔法が押し返されて直撃しても、辛うじて生存していた。
「・・・僕の勝ちですね。」
「えぇ・・・君の勝ちのようです・・・」
ダチュリエルがそう言うと、その場で倒れていた。
「ダチュリエル先生・・・」
アランは静かにダチュリエルの側に寄った。
「・・・なにをしているのです・・・まだ、戦闘は終わってはいませんよ・・・?」
虫の息にも関わらず、ダチュリエルは止めを刺さない事を聞いた。
「いいえ・・・僕にはできません・・・」
「・・・君を含む、全ての生徒達を監視してきただけでなく・・・仕留めようとしないのですか・・・?」
「・・・貴方はノヴェフロル学院の教師です・・・監視をしてきたと言っておきながらも生徒達に優しく色々と教えてきました・・・ですので、生徒が教師に止めを刺すような事はしてはいけない事です・・・」
アランはダチュリエルに止めを差すつもりなどなかった。
「例え、デスドゥンケルハイト軍でも貴方は立派な教師だと思っています・・・これまでだって、貴方の教育があったからこそ、生徒達は立派に成長して卒業していったはずです。」
それでも教師だと言われたダチュリエルは学院にいた頃の出来事を思い出が過り出た。
「・・・確かに卒業していった生徒達は皆、私に感謝をしていました・・・だからこそ、君が私を超える事ができたのも・・・私自身の御蔭と言う事ですね・・・」
ダチュリエルは、目の前にいる生徒が自分自身を超えた事に笑みを浮かべた。
「ダチュリエル先生・・・それでは、先に行かせてもらいます・・・そして、ダチュリエル先生の意思を継ぐ事によって・・・貴方のような教師になれると僕は思います・・・」
アランはそう言いながらもダチュリエルの手を取って握り出した。
「君のような・・・優秀な生徒に、継いでくれるとは・・・私は誇りに・・・思っています・・・」
そう言い終えたと同時にダチュリエルは静かに息を引き取ってこの世を去った。
「・・・ダチュリエルは息を引き取ったようだ。」
ガイアがそう告げてもアランは悲しまずに立ち上がった。
「ダチュリエル先生・・・ありがとうございました。」
アランが涙を流さないようにしながらダチュリエルにお礼を言った。
「アラン・・・」
「ギル・・・僕は大丈夫だから安心して・・・早く、ラヴィレイヘヴンに行かないと・・・」
そう言いながらもアランは密かに涙を零れているのが見えた。
「・・・私達はここで止まっている訳にはいかない・・・前へ進まなければ、新しい道を切り開く事はできないわ・・・」
「そうだね・・・色々と教わって貰った人の遺志を継いで、新しく前に進んでみるよ・・・ダチュリエル先生、これまで貴方に教わってきた事を生徒達に教えてみせます・・・どうか、安らかに眠ってください・・・」
アランはダチュリエルに背を向けて静かな口調で言った。
「・・・先程の戦闘で、兵士達が気付いているのかも知れんのでな・・・」
「分かっているよ。ちゃんと、覚悟だってできているから・・・」
こうして、ダチュリエルを倒したティア達は門を潜って、ラヴィレイヘヴンの中へと入って行った。
126章 聖地ラヴィレイヘヴン
ダチュリエルを倒したティア達はラヴィレイヘヴンの中に入っていた。
「これが、ラヴィレイヘヴンなの・・・?」
「そうだ。ここには、城と城下町があるぞ。」
ラヴィレイヘヴンの中心に城があり、その周りには数多くの建物が建っていた。
「エレノアの治めていた国だったが、今ではデスドゥンケルハイト軍の物となってしまっているのだ・・・」
そう言って、ガイアが魔力を探ってみると、至る所に兵士達の魔力が感じられた。
「・・・やはり、兵士達が徘徊をしているようだな・・・ここは、見つからないようにして、城へと乗り込むしか方法がないようだ・・・」
「お城に乗り込むためには、見つからないようにしなくちゃね。」
すると、ティアがなにかを思っている事に気付いた。
「ティア、どうかしたの?」
「えぇ・・・光が溢れる場所なのに、なにも感じられなくて・・・」
光溢れる地であるはずなのにも関わらず、光すらなにも感じ取られなかったと言うのだった。
「・・・ここは、デスドゥンケルハイト軍が支配しちまっているんだ・・・闇に飲み込まれちまっているから、なにも感じられなくなっちまったんだよ・・・」
「聖地に足を踏み入れても、感じ取る事ができなかったのはそう言う意味だ。」
ギルバートとヘイゼルにそう言ってくると、ガイアは聖地の現状を言ってきた。
「この地はエレノアの力によって、光が溢れ出る聖なる地としてラヴィレイヘヴンと名付けられた・・・二十年前に、デスドゥンケルハイト軍が襲撃して乗っ取ってしまった事によって、闇に覆われた事で光が消えてしまっているのだ・・・」
二十年前、デスドゥンケルハイト軍がラヴィレイヘヴンを乗っ取られてから、ラヴィレイヘヴンから溢れ出る光が闇に包まれて消えてしまった。
「それで、命が消えたかのように、暗い感じがしていたのね・・・」
「まぁ、そのように考えてもらった方がいい・・・デスドゥンケルハイト軍・・・いや、ダークタナトスを倒さなければ、光を取り戻す事はできぬ・・・ダークタナトスはあの城にいるはずだ・・・」
ガイアは中心地にある城を見ながらそう言ってきた。
「あのお城にダークタナトスが・・・そして、デスドゥンケルハイト軍からラヴィレイヘヴンを取り戻して世界に光を取り戻しましょう・・・」
そう言って、ティアが先へ進もうとした時だった。
「待て・・・幾つもの足音が聞こえてくる・・・」
ヘイゼルが耳を澄ましてみると、大人数の足音が聞こえてきた。
「どうやら・・・俺達を、出迎えに来てくれたようだぜ・・・」
ティア達が既に侵入して来る事を把握していたのか、大勢の兵士達がここへ集まってきた。
「ここから、先には通さんぞ!」
兵士達は一斉に武器を構え出した。
「これだけの人数を相手にしていれば、体力と魔力を消耗しかねないぞ・・・!」
集まって来た兵士達の数が多く戦いになれば、どちらも消耗をしてしまう事は避けられなかった。
「そう言う事だ・・・そして、お前達はここで死ぬのだからな・・・」
兵士の一人が、そう言うと全兵士が一斉に襲い掛かってきた。
『天弓落雨!』
何処からか、天から矢が雨のように兵士達へと降り注いできた。
「なんだ!?矢が飛んで・・・!」
兵士達は何処からか矢が飛んできたのか動揺しだした。
「お久しぶりですね・・・皆さん。」
「貴方達は・・・」
後ろを振り向くと、そこにはエルフ族のシルヴァーナだけでなく、ケリー率いる反乱軍がいつの間にか現れていた。
「どうやら、間に合ったようですね。」
そこには、反乱軍だけでなくアリアやブリトニーの息子だったキットにヘイゼルの父親である町長もいた。
「・・・お前達・・・まさか、ここに来ていたのか・・・?」
「私達も戦おうと思って、反乱軍と共に来たのだ。」
「お前達のお陰で、ラヴィレイヘヴンに乗り込んでデスドゥンケルハイト軍と戦う決心が付いたんだ。」
「ケリー、僕達の事を助けに来てくれたんだね。」
ティア達はこれまで出会った人々がここへ来た理由に納得をした。
「お姉ちゃん・・・久しぶりだね・・・」
「キット?まさか、この人達と一緒に来たの?」
「あぁ・・・一緒に連れて行ってほしいって聞かないから、仕方なく連れて来たんだ・・・」
「うん・・・僕もお姉ちゃん達と戦いたかったから・・・」
キットはティア達の事が心配で一緒に行く事を懇願していた。
「そう言う言だ・・・この子と同じように、アリアも一緒に戦う事を頼んでいたぞ。」
どうやら、アリアもキットと同様に同行する事を求めているようだった。
「アリアちゃん、君も来ていたんだね・・・」
「うん・・・ケリー君に無理を言って、連れて来てもらったから・・・」
「出発しようとしていたら、お前達の事を知っている奴の声が聞こえてきて、光翼の涙を七つも手に入れてラヴィレイヘヴンに乗り込んだって言っていたから、俺達をここへ転移させてくれたんだ・・・突然、俺達がここに現れたのも誰かが転移してくれた御蔭だ。」
ケリーがそう言うと、ティア達はアヌビスの事を言っているのだと理解した。
(・・・どうやら、私達が光翼の涙を七つも集めた事を知って、アヌビスが私達の事を伝えてくれていたようね・・・)
ティアがそう思っていると、シルヴァーナ達が前線に立って武器を構えだした。
「ここは、私達が戦いますので・・・貴方達は先へと進んでください・・・」
この場は自分達に任せて、ティア達を進ませようとしていた。
「感謝する・・・私達は城の中に乗り込むぞ・・・」
ガイアがそう言うと、ティア達は城を目指して走り出した。
「いかすか!」
兵士達はティア達を阻止しようとしたが、反乱軍のメンバー達によって立ち塞がれた。
「お前達は城に向かえ!」
「我々に任せろ!」
シルヴァーナ達は大勢の兵士達の相手をして、ティア達は兵士達から離れて行った。
「やっと、城の前に着く事ができたな・・・」
ティア達は途中で兵士達と遭遇して戦いながらも、なんとか城の前まで辿り着く事ができた。
「最後だが、確認はしておこう・・・この城の中に、ダークタナトスだけでなくアイザックやソルが待っているだろう・・・これは、過酷な戦いになると思うが構わないな・・・?」
念を押すかのようにガイアが問うと、ティア達は静かに頷いて覚悟を見せた。
「それでは、行くぞ・・・これが、最後の戦いだ・・・」
そう言って、ガイアは静かに扉を開けると城の中へと入って行った。
『・・・どうやら、無事に城の中へと入る事ができたようだな・・・』
その映像を見ている者がおり、ティア達が城に入る様子を見ていた。
『・・・余が関係のある者達を呼びかけておいて良かったぞ・・・』
ティア達と関係のある者達がラヴィレイヘヴンに来る事ができたのもアヌビスの呼びかけと転移魔法があったからであった。
『頼むぞ・・・エレノアの血を引く人間よ・・・この世界に生命の光が輝く世界を取り戻してくれ・・・』
アヌビスはティア達がデスドゥンケルハイト軍を倒してくれる事を祈った。
127章 暗殺部隊の待ち伏せ
「ここにも多くの兵士がいる・・・気を引き締めなければ、やられてしまうので、気を引き締めて行くぞ・・・」
城の中に入ったティア達は数多くの兵士達が待ち構えていた。
「・・・奴等がこの城に侵入したようだ・・・」
ダークタナトスは水晶玉でティア達が城の中に侵入した様子を見ていた。
「はっ・・・ダチュリエルが倒されてしまい、外にいた兵士達も反乱軍との戦闘で精一杯のようです・・・」
ソルがそのように報告をすると、水晶玉にギルバートが映し出された。
「・・・奴等がここに侵入してきたのも、裏切り者の息子を持つアイザックの責任でもあるのだ・・・奴に始末を任せてあるので期待するとしよう・・・」
「アイザックは既に位置に着いております・・・ティア達が、そこに上がって来るのもそう長くはないかと思います・・・」
数多くの兵士達を潜り抜けたティア達はアイザックの元に辿り着くはずだと考えられた。
「そうか・・・アイザックは息子を大事にしていたが・・・裏切り者であれば、なんの躊躇もなく殺すに決まっている・・・精々、期待しているぞ・・・」
そこに着くのも時間の問題だと思ったダークタナトスは不敵に笑いだした。
「この部屋は広くて誰もいないようだな・・・」
最上階目指して上がって行くと、ティア達は広い部屋の中に着いていた。
「いや・・・この部屋には誰もいない事がおかしくはないと思わないのだろうか・・・?」
部屋には誰もいない事が妙だとヘイゼルは思い始めていた。
「確かに・・・さっきまで、兵士達が沢山いたのに・・・この部屋だけ、誰もいないのもおかしすぎるよ・・・」
イヴもその事に気付いて辺りを見ても、奥に扉があるだけで気配すらも感じられなかった。
「誰もいなさそうだし・・・先に進んじゃっても問題はないかな?」
「そうね。先へ進みましょう。」
そう言って、ティアが奥の扉に向かおうとした時だった。
「ティア!」
突如、ギルバートが双剣を抜いて素早くティアの前に移動して何者かの攻撃を防いだ。
「大丈夫か・・・?」
「えぇ・・・やっぱり、暗殺部隊が待ち伏せをしていたようね・・・」
その直後、ティア達の周りに暗殺部隊の人間達が姿を現していた。
「やはりと思っていたが・・・暗殺部隊が潜んでいたようだな・・・」
「そうだ。お前達が、ここに来ると思って、気配を消して待っていたんだ・・・」
声が聞こえてくると、ティア達の前に何処からかアイザックが姿を現していた。
「誰もいないフリをして、扉に近付いたら始末しようと思ったが・・・まさか、既に感づかれていたなんて、全く思わなかったぞ・・・」
そう言って、アイザックはティア達との距離を取った。
「えぇ・・・誰もいない部屋に、兵士達が一人もいない事がおかしいと思っていたけれど・・・やっぱり、暗殺部隊が部屋中に潜んでいたようね・・・」
ティアはこの部屋に入ってから誰もいない事を怪しいと睨んでいた。
「流石はエレノアの末裔なだけの事があるな・・・」
アイアックがそう言うと、部屋中に潜んでいた暗殺部隊が姿を現した。
「さてと、戦う前にソイツに言っておかなきゃならない事があるが・・・それからでもいいな?」
アイザックがそう言われると同時に暗殺者達は終わるまで待機し始めた。
「・・・ギルバート、お前は汚名返上をしようとソルと任務を受けたはずだ・・・それなのに、俺だけでなくダークタナトス様までも裏切って、失望させるような真似をしたのはどう言い訳をする気だ・・・?」
そう言いながらも、息子に失望させられたアイザックはため息をついてきた。
「・・・父さんはこんな事をしてもなんとも思っていないのかよ?」
「なんだと?」
「父さんは運動神経が良いから身軽で素早く動けるだろ?それなのに、父さんは暗殺者をやって、人を殺して命を奪う事がなんとも思ってねぇのか・・・?」
ギルバートにそう問われたアイザックは静かに答えてきた。
「・・・俺は暗殺者として生きてきたからな・・・人の命がどうなろうが俺には知った事じゃない・・・戦場で幾つも命を失う事と同じ事だ・・・」
アイザックが、冷たい口調で言ってくると、ギルバートは聞いてきた。
「それでも・・・家族でも殺せるのかよ・・・?」
「・・・」
「暗殺者は冷酷で平然と人を殺す連中だ。父さんは子供だけじゃなく母親までも殺ってしまうのかよ・・・?」
ギルバートは家族も殺すのかと言ってくると、アイザックは思い詰めたように言ってきた。
「・・・確かに、俺はデスドゥンケルハイト軍に所属する暗殺部隊の暗殺者だ・・・これまでだって、家族のいる奴等を何人も殺してきた・・・他の暗殺者達もそんな風に殺っていたのをお前はその目で見ていたはずだぞ・・・」
ギルバートはこれまでの暗殺部隊の任務で、色々な人間達を殺害する光景を見せていた。
「・・・俺だって、本当は殺しなんかしたくはなかったんだ・・・悲鳴や悲しむ声を聞く
だけで、どれだけ怖かったか・・・父さんもこんな事はしたくないって思っているんだろ・・・?」
ギルバートは父親と戦う事を拒むように言ったが、アイザックの口から出て来たのは非情な答えだった。
「いや・・・俺は手を汚すような事はなにも思ってはいないぞ・・・寧ろ、そうでもしなければ、生き抜く事なんてできなかっただろうな・・・」
父親の口から出たのは殺害をする事など一切なにも思ってはいない口振りだった。
「・・・やっぱり、戦わなくちゃ駄目なのかよ?」
「あぁ・・・お前が裏切っただけでなく、光翼の涙を手に入れさせてしまったのだ・・・責任を取って、お前を殺さなくちゃならなくなったからな・・・」
アイザックがそう言って、攻撃の構えを取ると暗殺者達も一斉に武器を手に取った。
「父親を殺して見ろ・・・でなければ、お前を殺さなくちゃならなくなる・・・」
そう言ってから、アイザック達は一斉に殺気を放ち出した。
「・・・お前達はコイツ等と戦ってくれ・・・」
「ギルはどうするつもりなの?」
ティアの問いにギルバートは静かに双剣を抜いてから返答した。
「俺は・・・父さんと戦わせてくれ・・・」
「いいのか?アイザックは、お前を殺すつもりで戦おうとしているぞ?」
ガイアがアイザックの殺気を放っている様子を見て言うと、ギルバートは双剣を抜いて背を向けたまま言ってきた。
「・・・家族はいずれ別れなくちゃいけない時が来るんだ・・・永遠の別れは誰も逃れる事ができない運命だ・・・家族と殺し合う事があっても、別れを受け入れなくちゃならねぇんだ・・・」
ギルバートにとっては家族と命を奪い合う事になってまでも別れると言う事を乗り越えなくてはならなかった。
「分かっている・・・家族と死別する運命からは、誰も逃れられる事はできない・・・お望みどおりにお前と殺りあうとするか・・・」
アイザックがそう言うと同時にギルバートと同様に構えを取った。
「ギル・・・」
「アイザックはギルバートに任せて、私達は暗殺者達と戦うぞ。」
ティア達は殺気を放っている暗殺者達と戦い始めた。
「暗殺部隊はギルバートよりも戦闘能力が高い・・・一人でも欠けてしまえば、集中攻撃をされてしまう・・・ここは、固まりながらも戦った方がいいぞ・・・」
「離れ離れで戦う者は一斉に攻撃を仕掛けろ・・・暗殺部隊の戦闘術の一つだったな・・・」
ギルバートがティア達を囲んでいる暗殺者達を見てそう言ってきた。
「あぁ・・・お前とは一対一の戦いだから、気にする事はしなくていいぞ・・・」
「それもそうだな・・・」
ギルバートとアイザックは同様に動き出すと双剣がぶつかり合った。
「来るぞ!全員、固まって戦うんだ!」
それと同様にティア達を囲んでいた暗殺者達が一斉に襲い掛かってきた。
(ギル・・・)
その中でティアはギルバートの事が気にしながらも戦い始めた。
128章 父と息子
戦闘が始まってから、ギルバートとアイザックの剣がぶつかり合う光景が続いていた。
(・・・やっぱり、父さんは速いな・・・)
ギルバートは戦っている中でも、父親のスピードに連いて来ようとしていた。
(だけど・・・ちゃんと連いて来られている・・・俺だって、確実に父さんに近付いているんだ・・・!)
ギルバートは父親の動きに連いて行こうとすると、攻撃を受け止めると同時にアイザックが言ってきた。
「・・・ちゃんと、俺のスピードに連いて来るとは・・・ちゃんと、成長はしているようだな・・・」
戦闘中にも関わらずにアイザックは自分の動きに連いて来られている事にギルバートを褒めてきた。
「任務であっても、色々なモンスターや相手と戦って来たんだ・・・殺しの任務をしなくたって、俺は強くなれる事ができたんだよ・・・」
そう言ってから、ギルバートは素早く動きアイザックに攻撃を仕掛けた。
「そこだ!」
双剣を振るって攻撃をしたが、アイザックはギルバートの攻撃を身軽に避けた。
「甘いな・・・こんな攻撃じゃ、当てる事ができないぞ・・・」
そう言って、アイザックがギルバートに反撃を仕掛けてきた。
「・・・動きはいいが、攻撃をする速さも少しは劣っているな・・・」
「くっ・・・!」
アイザックの攻撃は目に見えないくらい素早く、ギルバートはなんとか避けたが微かな切り傷ができていた。
「これぐらいの攻撃を受けてしまうとは・・・お前が、まだまだ未熟すぎる証拠だ・・・」
アイザックはギルバートの動きと攻撃を見て未熟だと確信していた。
「分かっているよ・・・そんな事は・・・だけどよ、アンタもいい動きをしていたぜ・・・」
ギルバートも褒めるように言うと、アイザックは剣先に付着した血が付いているのに気付いた。
「暗殺部隊のリーダーとして当然だ・・・話している間に、攻撃でもしてみたらどうだ?」
アイザックに言われるがまま、ギルバートは攻撃をしようと動き出した。
「それじゃあ・・・遠慮なく・・・!」
そう言って、ギルバートは双剣を振るってアイザックに攻撃を仕掛けた。
「・・・それが、お前の攻撃か?」
避けようとしないまま、アイザックは片方の双剣でギルバートの攻撃を防いだ。
「・・・今の攻撃、本気で俺を殺そうとしていたのか・・・?」
「ぐっ・・・!」
そう言われたギルバートはアイザックとの距離を取った。
「今の攻撃を受け止めて分かったが・・・お前は、本気で俺を殺そうとはしていないな・・・?」
殺すつもりで攻撃をしていないとアイザックにそう言われた、ギルバートは口を濁らすように言ってきた。
「そりゃあ・・・親子同士で殺り合う事なんて、誰も望まない事だろ・・・血の繋がっている身内を殺すなんて誰だってしたくもねぇに決まっているだろ・・・」
やはりと言うべきか、ギルバートは親子で殺し合う事に拒絶感を抱いているようだった。
「まだ、そんな事を言っているのか・・・例え、家族でも殺さなければならない時もあると言ったはずだ・・・」
「確かに・・・アンタの父親だって聞かされた時は驚いたさ・・・まさか、俺の父親がデスドゥンケルハイト軍で暗殺部隊のリーダーだったなんて思いもしなかったよ・・・」
ギルバートはアイザックから父親だと聞かされた時の事を思い出した。
「あぁ・・・ちゃんと、暗殺者として育てたつもりだったが・・・やはり、最後まで非常にはなれなかったみたいだな・・・」
アイザックも過去の事を思い出すと、ギルバートがその時の事が気になって訊ねてきた。
「教えてくれ・・・赤ん坊だった俺をあの村に捨てたのか・・・父さんは、知っているんだろ・・・?」
なぜ、赤ん坊の自分を村に捨てて行ったのか聞くとアイザックはこう言ってきた。
「・・・それは、俺を倒してからにするんだな・・・まぁ、お前が殺されずに倒せればだが・・・」
アイザックはそう言い終えると、先に動き出しギルバートに攻撃を仕掛けてきた。
「父さん・・・!」
ギルバートも動き出して双剣を振るい、アイザックの攻撃が再度ぶつかり合った。
「・・・本気を出したか・・・やっと、殺し合う覚悟はできたようだな・・・」
二人は双剣で攻撃をしながら素早く動き回った。
「ギルバートは本気を出したようだな・・・」
暗殺者達と戦いながらもヘイゼルはギルバートの様子を見ていた。
「しかし、あの表情は父親と戦う事に苦悩を感じているみたいだ・・・」
そう言って、ガイアがギルバートの表情を見てそのように思えていた。
「アイザックとは生き別れていた親子であり・・・本心では父親と戦いたくはないと思っているであろうな・・・」
「それじゃあ、ギルはお父さんであるアイザックとは戦いたくないと思っているのですね・・・」
全員がそう思っている中で、ティアはギルバートの事を心配そうに見ていた。
(ギル・・・本当は家族と殺し合いたくはないと思いながらも戦っているのね・・・)
彼の事を心配しているティアにガイアがその様子を見て言ってきた。
「・・・もしも、ギルバートが極致に立たされる事になれば、我々も加戦しよう・・・その前に暗殺者達を一掃してからになるが・・・」
そう言って、ガイアは暗殺者の攻撃を防いでから反撃をした。
「・・・流石は俺の息子だ・・・これ程のスピードを身に着けただけじゃなく、俺に近い能力を手に入れてられているようにみえるぞ・・・」
先ほどからギルバートの攻撃やスピードを見て、アイザックの能力に近付いている事に感づいていた。
「これだけ、本気を出せばお前も殺ればできるじゃないか・・・お前が、強くなって父さんは嬉しいぞ・・・」
アイザックはギルバートが強くなっているのを嬉しそうな笑みを浮かべ出した。
「それぐらい強ければ、暗殺部隊のリーダーの座を継ぐ事ができそうだが・・・裏切り者となったお前には関係ない事だな・・・」
そう言われたギルバートは後を継ぐ事を拒んできた。
「冗談じゃねぇ・・・そんなのを継いでられるか・・・!」
その発言を聞いたギルバートは怒りながらもアイザックに双剣を振るってきた。
「・・・ちゃんと、本気で相手を殺そうと言う気持ちがあれば、今のようにはなっていなかったはずだぞ・・・」
アイザックはそう言いながら、ギルバートの攻撃を避けた。
「相手を殺そうとする気持ちだと・・・?そんなもん、俺には必要ねぇ!」
ギルバートはアイザックに怒鳴り込んでから双剣を振るったが、アイザックは双剣で攻撃を受け止めてしまった。
「・・・これが、お前の本気を出した技か・・・これぐらいなければ、本気と言えないぞ・・・!」
そう言いながら、アイザックは反撃として目にも止まらぬ速さで攻撃を仕掛けてきた。
「があっ・・・!」
ギルバートは避ける暇もなく斬られて致命傷を負った。
「ギル!」
その光景を見ていたティアが、ギルバートの元に駆け寄ろうとした。
「来るんじゃねぇ・・・!」
ギルバートは傷を抑えながらもティアに怒鳴ってきた。
「これは、俺と父さんの戦いだ・・・お前達は手を出さないでくれ・・・!」
「ギル・・・その傷ではもう戦う事は・・・」
ティアがギルバートの深い傷を負っているのが心配に言った。
「ここは、ギルバートを信じろ・・・なんとか、アイザックを倒してくれるだろう・・・」
「でも・・・!」
ティアはそれでもギルバートに加戦しようとすると、イヴが静かに言ってきた。
「ティア、思い出して・・・貴方がギルを取り戻すためにティアがした事を・・・」
イヴの言葉でティアは星竜の湖に隠されていた神殿でギルバートを取り戻すために戦っていた時の事を思い浮かべた。
「・・・私はギルを救い出すために戦っていたわ・・・」
「途中で洗脳されちゃったけど・・・貴方のお陰でギルの目を覚まさせたから、ティアの元に戻ってきてくれたじゃないの・・・今、ギルが一人で戦っているのは貴方が一人でギルを取り戻すために、戦っているのと同じなの・・・ティアだって、覚悟をしていたはずでしょ?」
イヴがギルバートを見つめながらあの時と同じ事を思い出しながらも言ってきた。
「言われてみれば・・・神殿でギルと戦った時の私に見えてくるわ・・・」
「それに・・・さっき、僕が戦っていた時も同じだよ・・・自分で覚悟をして戦っているのも君だって感じていたはずだよ・・・」
イヴとアランが言ってきた事でティアはギルバートを信じることを決めた。
「・・・分かったわ。」
「心配するなって、俺は絶対に死なないから、黙ってみていてくれよな・・・」
そう言って、ギルバートは技を繰り出すのか今までにない構えを取った。
「・・・その構えは俺が教えた技を繰り出す気だな・・・」
アイザックはギルバートの動きを見て笑みを浮かべた。
「だが・・・その技は俺でさえ取得する事が難しかった技だ・・・お前でさえも扱うのには難しいだろうな・・・」
アイザックの言う技は過去にアイザックが取得している技でギルバートにもその技が
扱えるかどうかは分からない技だった。
「・・・分かっているさ。アンタでさえも、この技を取得するのに苦労して手に入れた技だって言っていたよな・・・」
「あぁ・・・その技は、苦難もあって手に入れる事ができた技だ・・・お前にも教えようとしたが、上手く扱えることすらできなかったな・・・」
その技は過去にアイザックに教わっていたがギルバートにはその技を上手く扱う事すらできなかった。
「・・・俺はこれまで旅をしてモンスターやデスドゥンケルハイト軍と戦って来て強くなる事ができたんだ・・・だから、この技を使わせてくれ・・・父さんの技を使える息子だって事を教えてやりてぇんだよ・・・!」
「いいだろう・・・その技を使うのであれば、こちらも使わせてもらうぞ・・・」
そう言って、アイザックはギルバートと同様の構えを取った。
「見せてもらうぞ・・・私の技が使えるようになったお前を・・・!」
親子同士がお互いに双剣を向けてから、同時に互角のスピードで動き出した。
「速い・・・これは、どちらが先に攻撃を仕掛けるのか分からないぞ・・・!」
ギルバートとアイザックは迫りながらも攻撃の構えを取っていた。
「これで、終わりだ・・・」
「父さん・・・俺はアンタに勝ってみせる・・・!」
二人がそう言った直後、お互いの双剣が振るわれた。
『黒影双舞(こくえいそうぶ)!』
ギルバートは黒い影が舞うかのように無数の刃で刺してくるかのような斬撃の舞をアイザックに浴びせた。
「見事だ・・・我が息子、ギル・・・バート・・・!」
アイザックは自分の教えた技をギルバートが使っている事を嬉しく思う表情をしていた。
129章 アイザックの最期
「お前の勝ちだ・・・」
アイザックは倒れるとギルバートはとっさに駆け寄った。
「父さん!」
ギルバートは必死な表情でアイザックの元で片膝を着いた。
「ようやく・・・今の技を使えるようになったな・・・」
「・・・俺だって、父さんの技を扱えるように、内緒で特訓をしていたんだ・・・父さんの技を使えるようになっておきたいと思ったから使えたんだよ・・・!」
ギルバートはこれまで内緒にしながらも、アイザックの教えていた技を扱えるようになろうと密かに特訓をしているようだった。
「そうか・・・俺が知らない内に特訓をしていたとは・・・それだけ、俺の事を思ってくれていたんだな・・・」
そう笑みを浮かべると、アイザックは口から血を吐き出した。
「なに言っているんだよ・・・この技を使えるようにならなくちゃ、父さんだって困るって言っていただろ?」
ギルバートがそう言うと、ガイアがアイザックにこう言ってきた。
「・・・アイザック、ワザとギルバートの技を受けたな・・・」
ガイアにそう言われて、アイザックは見破られたかの表情になった。
「・・・お前には見抜かれていたか・・・流石は、星竜王に仕えていた星竜族なだけはあるな・・・」
アイザックの発言を聞いたギルバートは恐る恐る訊ねてきた。
まさか・・・技を使えるのかを見ようとして、ワザとやられたのか・・・?」
「・・・ちゃんと、技が使えるか見たくなったから・・・自分が攻撃を受けてやるしか方法がなかった・・・」
アイザックがギルバートの攻撃を受けて敗れたのは、ギルバートが自分の技を扱えるようになったのかを確認しようと攻撃をせずに自らが技を受けていたのだった。
「なんでなんだよ・・・!?そんな事で俺に勝ちを譲ったのか・・・!?」
「あぁ・・・どうしても、殺し合わなければ・・・使えるかどうかを確かめる術は・・・なかったからな・・・」
アイザックが技を繰り出さなかったのはギルバートが教えた技を使えるかどうかを試したかっただけだった。
「・・・俺の力を試そうとして、父さんは教えてくれた技を受けたのかよ・・・!」
ギルバートは体を震わせながら言うと、アイザックは「そうだ・・・」と力のない声で答えた。
「ギルバート・・・死ぬ前にお前と一緒に入れて良かったぞ・・・」
「死ぬって・・・どうしてそんな事を言うんだよ・・・!」
もうじき死ぬと聞いたギルバートは、アイザックに泣き縋り出した。
「・・・これほどまでに泣き付いてくれるとは・・・家族と言うのは死にそうになると泣いてくれるのか・・・きっと、母親もいれば一緒に泣いていたのかも知れないな・・・」
アイザックは自分のために泣いてくれるギルバートを見て安堵を感じた。
「・・・そう言えば、ギルのお母さんの事は一度も聞いていませんでした・・・」
ステラが母親の存在が気になると、アイザックはその事について語り出した。
「それもそうだ・・・初めから、母親などはいなかったからな・・・」
「母親がいないと言う事は・・・もしかして、もう亡くなっているの?」
イヴはそう思って言ったが、アイザックは首を横に振った。
「いや・・・死んではいないが・・・母親は世界の何処かで生きているはずだ・・・」
「その話は一度も聞いてはいないが、ギルバートに母親が存在していたとは初耳だぞ・・・」
ガイアはギルバートに母親がいた事は初耳のようだった。
「あぁ・・・言ってしまえば、探し回ると思ったからだ・・・」
「・・・それじゃあ、母さんは何処かで生きていると言う事か・・・?」
ギルバートが息を呑むと、アイザックは母親の所在について話した。
「何処にいるのか分からないが・・・もしかすれば、何処かで会える時が来るだろう・・・」
そう言いながら、アイザックは密かにガイアの方を見ているようにした。
「そうだったのか・・・母さんは今も何処かにいて俺の事を・・・」
ギルバートは母親と会える時が来ると考えていると、アイザックが最後の質問としてこのように聞いてきた。
「もうすぐ死ぬが・・・それでも、お前は俺を父親だと思い続けるのか・・・?」
すると、ギルバートはアイザックの片手を両手で握り締めながら言ってきた。
「当然だろ・・・?アンタは、俺を大事に育ててくれていた大切な父親だから・・・そう思っているに違いねぇだろ・・・!」
ギルバートはそう言いながらも手を震わせ涙を零し始めた。
「そう・・・か・・・俺の事を・・・そんな・・・に・・・」
命が消えようとする中、アイザックは最後の力を振り絞りながらも笑みを浮かべた。
「ギル・・・バート、今まで・・・父と思ってくれて・・・さらばだ・・・俺の大事な息子よ・・・」
そう言って、アイザックは笑顔のまま息を引き取った。
「父さん・・・父さん!」
ギルバートは涙を流しながらも、アイザックの手を思いっきり握り締めた。
「ギル・・・」
永遠の眠りについたアイザックを見て、ギルバートは立ち上がりティアに言ってきた。
「・・・父さんも俺達が闇を払ってくれる事を託したんだ・・・父さんの死を無駄にする訳にはいかねぇからな・・・」
ギルバートが真剣な表情でダークタナトスを倒す決心をしていた。
「ティア・・・親と死別する事がこんなに悲しいなんて思いもしなかったぞ・・・」
「ギル・・・私も同じ気持ちよ・・・お父さんとお母さんが死んでしまって時も悲しみが溢れ出た事は覚えているのですもの・・・」
ティアはギルバートから家族と永遠の別れによる悲しみが伝わっていた。
「そうか・・・家族が死んでしまっても、先へと進まなきゃ、永遠に悲しみに包まれていたら先に進めないからな・・・絶対にデスドゥンケルハイト軍を倒してこの世界の光を取り戻そうぜ・・・」
こうして、アイザック率いる暗殺部隊を倒したティア達は、奥の扉を開けた。
(父さん・・・俺は、息子として・・・ティアと一緒に、前へと進んでみせるからな・・・俺達の手で新しい未来への光を掴んでみせるから・・・あの世で見ていてくれ・・・)
ギルバートは扉を閉める前に、アイザックの遺体を見てそう呟いた。
「ギル、どうしたの?」
「いや・・・別になんでもねぇよ・・・」
そう言った後で、ギルバートはそのまま静かに扉を閉めた。
130章 最後の仇討ち
「残念だが・・・アイザックもやられたようだぞ・・・」
ダークタナトスは水晶玉でアイザックが死亡した映像を見て残念そうに言ってきた。
「奴なら、息子と一緒に殺してくれると思っていたのだったが・・・やはり、裏切りの息子と同じように、失望させられただけであったか・・・」
水晶玉にアイザックが映し出されているのを見たダークタナトスは失望していた。
「・・・ソル、奴等はもうじきここへ来ようとしている・・・これから、どうするべきかだが・・・分かっているな・・・?」
「はっ・・・十分に分かってはおります。」
ソルはティア達を迎え撃つために玉座の間を出ようとした時だった。
「待て・・・」
ソルが出ようとした直前に、ダークタナトスが呼び止めてきた。
「いかがなさいましたか?」
「・・・なんでもない・・・忘れてくれ・・・」
「それでは、あの人間達を迎え撃ちに行ってまいります・・・」
そう言ってから、ソルは玉座の間を出てティア達を迎え撃ちに行った。
「この先の階段を上がって行けば、ダークタナトスのいる部屋へと辿り着けるぞ・・・」
ティア達はダークタナトスのいる部屋へと繋がる階段を上がっていた。
「この階段を上がって行けば、ダークタナトスのいる部屋・・・いいえ、エレノアの一族が先祖代々座っていた玉座のある部屋に辿り着けるのね・・・」
「そうだ・・・ダークタナトスを倒さぬ限りはこの世界は闇に支配されるであろう・・・」
ティア達は階段を上がって玉座の間がある階層へと目指して上がって行った。
「あとちょっとで着けるから安心してくれ・・・」
しばらく、階段を上がって行く度に暗い闇が感じられてきた。
「・・・なんだか、嫌な感じがしてくるけど・・・?」
「ダークタナトスのいる玉座の間へと近付いているので、あの者から感じられる闇が感じられて来るのであろう・・・」
ガイアがそう言うと、ダークタナトスのいる場所について話し始めた。
「エレノアの血を引く人間達が座っていた玉座の間があるのだが・・・今ではダークタナトスがその玉座に座ってしまっているのだ・・・」
「・・・それを俺達が取り戻そうとしていると言う事だな。」
「その通りだ。大広間にある扉を開けば、玉座の間へと入る事ができるのだ。」
「行きましょう・・・それに、あの人も待っているはずよ・・・」
ティアがそう言うと、階段を上がって行った。
「やっと、階段が終わったね・・・」
階段を上がって行くと、ティア達は巨大な扉のある大広間に着いた。
「いよいよ、最後の戦いになりそうだね・・・」
「えぇ・・・でも、あの人と戦わなければ、ダークタナトスと戦う事ができないと思うわ・・・」
ティアが目の前を見て言うと、とある人物がいた事に気付いた。
「・・・ついに、ここまで来てしまったか。」
そう、扉の前にいたのはソル・ヘリオドラコだった。
「ソル・・・貴方が、ここにいると言う事は・・・この扉の奥に、ダークタナトスが
いるのね・・・」
「そう言う事だ・・・この奥にダークタナトス様がいらしている・・・そして、俺が
ここにいる理由も分かっているはずだ・・・」
ソルはティア達を迎え撃とうと、扉の間で待機していたのだった。
「ソル、これから私達と戦うつもりか・・・?」
「あぁ・・・ダークタナトス様のご命令だからな・・・悪くは思わないでくれ・・・俺だって、お前とは戦いたくはなかったからな・・・」
そう言って、ソルが両手剣を構えようとするとティアが言ってきた。
「待って・・・ガイアは貴方とは戦いたくないと思っているはずなのに・・・本当に、私達と戦うつもりなの・・・?」
「聖地に乗り込んできてまでも、俺と戦いたくはないとでも言いたいのか?」
ソルがそう訊ねてくると、ティアは戦う事を拒むように話しかけてきた。
「貴方はガイアと出会った事で師弟の関係になって、色々と教わってきた・・・それなのに私達だけでなくガイアも一緒に殺そうと思ってないと思っているはずよ・・・?」
ティアがそう言ってくるとソルは少しの沈黙が入ってから答えてきた。
「・・・確かに、ガイアと出会った俺は、色々と教えられてきた関係だ・・・本当はガイアを殺したくはないと思っているぞ・・・」
その発言は、ソルもガイアを殺してしまう事には嫌がっているようだった。
「ガイアの事を思っているのであれば、私達と戦う事は止めてくれませんか・・・?」
「いや・・・それは無理な話だ・・・」
ステラは、そう言ったがソルは戦う事を拒否してきた。
「どうして?貴方も、デスドゥンケルハイト軍のやり方には快く思ってはいないはずよ?」
「ティア・・・いくらら説得をしようとしても、戦う事を止める事はしないよ・・・」
イヴはそう言って止めに入っても、ティアは説得を止めようとはしなかった。
「旅を始めた頃はお父さんとお母さんの仇を討とうと思っていたわ・・・でも、徐々に貴方に対する憎しみと怒りが薄れていったの・・・それに、貴方は傷付いた私をイヴのいる牢に入れてくれたじゃない・・・」
監獄で投獄される際に、ソルは拷問で死にかけていたティアをイヴのいる牢に入れていたのだった。
「・・・確かに、ブリトニーの拷問によって動けなくなったお前を知る人間のいる牢に入れてやったが・・・その時はティアの両親を殺してしまった相手と知らなかったはずだ・・・」
ソルがイヴを見て指摘するように言ってきた。
「えぇ・・・最初は叔父さんと叔母さんを殺した相手と知らなかった・・・それでも、ティアをアタシのいた牢に運んできてくれなかったら、アタシが何処にいるのか知らないまま死んでいたのかも知れなかったと思うよ・・・」
そのように言われたソルは監獄で傷付いたティアをイヴのいた牢に収監した時の事を思い出した。
「お前の言う通りだ・・・俺があの場に訪れていなければ、ティアはそのまま死んでいたはずだ・・・だが、ここにいる以上は敵として認識をしている事は分かっているはずだ・・・」
ソルがそのように言うと、ティアが落ち着いた表情で言ってきた。
「・・・ソル、私達と一緒にダークタナトスを倒しましょう・・・そうすれば、お互いに殺しあう事もなくても済むはずよ・・・」
ティアの発言を聞いたソルは様子を疑うような態度で言ってきた。
「本気で言っているのか?両親の仇である俺もダークタナトスと戦う事を誘っているとでも言うのか・・・仮に手を組んだとしても、勝てる勝算はないに等しいが・・・」
「ティア、コイツの言う通りだ・・・ソルが加わっても、奴に勝てないのかも知れないぞ・・・」
ギルバートは反対して言ってきたが、それでもティアは協力を求めるようにソルの説得を続けてみた。
「それでも、貴方と一緒にラヴィレイヘヴンを取り戻して、世界に光と平和を取り戻したいの・・・だから、もうお互いに戦いあう事は止めましょう・・・」
ティアは仇の相手であるにも関わらずに、協力をしてもらうようにソルの説得をした。
「悪いが・・・それは、できない事だ・・・ここまで、来てしまった以上はここで決着を着けなければいけないのだからな・・・」
ソルは誘いを断ると、両手剣を構え出してきた。
「ティア、両親の仇を討つと言う目的もあって、ここまでやって来たはずだ・・・協力を求めるよりも、俺を打倒してからダークタナトスと戦うべきではないのか?」
仇を討ってから、ダークタナトスと戦うべきだと言ってくると、ティアはソルとの交渉が決裂したと悟って仕方なさそうにしながらも剣を抜き構えた。
「分かったわ・・・そう言うのなら、貴方はお父さんとお母さんの仇・・・ここで、仇を討たせてもらうわ・・・」
そう言って、説得を諦めたティアは戦う覚悟を決めてソルと戦う事を選択した。
「待ってください・・・本当に、仇討ちをするのですか・・・?」
それを止めるようにステラは戦うのかと訪ねてきた。
「えぇ・・・いつまでも、命を奪い合う事を拒んでいたら、仇を討つ事はできないわ・・・それに、もう覚悟は決めているつもりよ・・・」
ティアは仇を討とうとする決意を固めている表情をしていた。
「・・・ティア。」
仇を討とうとしているティアの様子を見たステラは心配になった。
「ティア、アタシも叔父さんと叔母さんの仇を討つよ・・・」
イヴが戦いに加わろうとしたが、ティアが剣を構えたまま振り向かずに言った。
「いいえ・・・ここは、私に戦わせて・・・」
「でも・・・」
「・・・これは、私の償いをするための戦いで私でなければいけないの・・・」
ティアの言う償いとは故郷の村で処刑されそうになった家族を救い出そうとして、兵士に歯向かってしまった事により、村人や両親が殺されてしまい故郷も滅ぼしてしまった責任を取るためだった。
「分かった・・・だったら、ティアに任せるよ。」
一人で戦う事を承知したイヴはギルバート達と共に見守る事にした。
「ソル・・・ここで、決着を着けましょう・・・」
「俺もそう思っていたぞ・・・これが、お前の両親の仇を討つ最後のチャンスになるだろう・・・俺を殺す勢いでくるんだな・・・」
ティアとソルは同時に動き出すと戦闘を開始した。
(・・・先程から、ソルがダークタナトスの事を呼び捨てにしていたが・・・もしかすれば・・・)
ガイアが先程のソルの発言を聞いてダークタナトスの事を呼び捨てにしていた事に違和感を覚えていた。
131章 ティアVSソル
「いよいよ、始まったんだね・・・ティアとソルの最後の戦いが・・・」
「ティアにとっては仇を討つ最後のチャンスだからな・・・ここで、殺り合わなくちゃいけないと思ったからなのかもしれないな・・・」
そう言っている最中にも、ティアとソルの戦闘が繰り広げられていた。
「ついに、始まってしまったか・・・ティアとソルの奴・・・・どっちも、命を奪うつもりで戦っているようだ・・・」
ガイアはティアの様子を窺いながら言ってきた。
「・・・やっぱり、昨日の夜に言っていたように、ティアは本当にソルを殺して仇を討とうとしているのでしょうか・・・?」
ステラはティアの様子を窺いながらも心配に思っていた。
「多分、そうだろうな・・・昨日、言っていたように相手を殺してまでも親の仇を討つつもりでやっているのかも知れないな・・・?」
前日の夜に、ティアは仇を討とうとしているかのように感じられた。
「・・・昨日のティアは、仇を討つ決心をしているようでした・・・ですが、ティアはどうしてエレノアの力を使おうとしないのでしょうか・・・?」
戦闘が始まっているが、ティアはエレノアの力を使ってはいない事が気になっていた。
「そう言えば・・・仇を討とうとしているのに、ティアはエレノアの力を使わないなんて・・・その力を使えば、勝てるはずなのに・・・どうして、使わないで戦っているの・・・?」
なぜ、エレノアの力を使わないのか不思議に思っていると、武器を構えながらもティアとソルは距離を取っていた。
「エレノアの力を使わなくても、俺と互角にやり合えるとは・・・流石は、エレノアの血を引く人間なだけはあるな・・・」
ソルはティアが通常状態でも関わらずに、互角に渡り合えている事を褒めた。
「俺はヘリオドラコ家であり、お前はエレノアの一族の血を引いている人間だ・・・どちらもこの世界では名が知れている人間同士だからか・・・一歩も譲ろうとしない事が伝わって来るぞ・・・」
そう言いながら、ソルはティアそれぞれの魔力を込めて作りだした玉を同時に放つと当たった事によって爆発した。
「だが・・・エレノアの一族は、命を大事な物だと考えているから、殺す事は絶対にしようとはしない・・・」
その爆風によって、ソルはティアに向けて攻撃を仕掛けてきた。
「くっ・・・!」
ティアは神聖な光を纏った一閃で、紅蓮の炎の連撃に怯む事もなくソルとお互いにぶつかり合い、二人は一度距離を取ってから武器を構えた。
「中々やるな・・・今の攻撃は本気だったかのように見えたぞ・・・」
ソルがそう言ってくると、ティアは首を横に振って答えてきた。
「そんなはずはないわ・・・エレノアは命を大事な物と考えていたから、奪う事なんて望んではいない事は貴方も知っているはずよ・・・?」
ティアがそのように言うと、ソルはある事を思い付いて問いてきた。
「ならば、聞いておこう・・・今の戦いは命を奪い合おうとしているが・・・お前はそれでも、両親の仇を討つために戦い続けるつもりか・・・?」
仇討ちをするために戦うのかと訊ねられたティアは沈黙が入ってから答えた。
「・・・勿論よ。」
「だったら、本気で仇が討てるように殺すつもりで来い・・・」
話を終えた二人は戦闘を再開した。
「すごい・・・どちらも一歩も譲ってはいないみたいだよ・・・」
「まさか、ソルの実力に連いて来られる程に強くなっているとは、思いもしなかったぞ・・・」
アランとヘイゼルがそう言うと、ガイアは戦闘状況を見て言ってきた。
「・・・エレノアの力とは光翼の涙から光が解放される事によって、その身に秘められた聖なる光の力を覚醒させる事のできる力だ・・・以前もそのような光景を見ていた事を忘れていた訳ではないはずだ・・・」
ガイアの言葉を聞いたギルバート達はアヌビスのいたピラミッドで四つ目の光翼の涙を手に入れた時の事を思い出した。
「言われてみれば・・・八つある光翼の涙を四つも手に入れたので、ティアはエレノアの力を扱えるようになったのはその時であったな・・・」
「そうだ・・・光翼の涙が半分も集まった事によって、その力を発動する事ができるようになった・・・残りの一つを手に入れる事さえできれば・・・」
ガイアが最後の部分を呟くと、二人がお互いに距離を取ってから武器を構えた。
「・・・これが、お前の本気か?」
「えぇ・・・そのつもりで戦っているわ・・・」
「当然だ・・・だが、お前はどう見ても本気を出しているようには見えないぞ・・・」
ソルがそう言ってくると、ギルバートとステラはティアを見て理解した。
「ティアの奴・・・やっぱり・・・」
ギルバートがなにかを察すると、イヴがどう言う事なのか訊ねてきた。
「ギル、それってどう言う事なの?」
どう言う意味なのかと訊ねようとすると、ステラがギルバートに代わりに説明をしてきた。
「・・・ティアはエレノアの力を使わないようにしながら戦っていると思います・・・」
「エレノアの力を使わないって・・・それじゃあ、ティアは初めから力を使わないで戦っていたと言う事・・・?」
イヴは驚いていると、ガイアがティアを見ながら語ってきた。
「・・・エレノアは生命を大事に思い殺生を好まぬ性格をしているので、どのような相手と戦っていても、命を奪わぬようにしながら戦っていた・・・例え、悪人であろうと仇を討たなければならない相手でもあろうと殺すような事は一切しようとはしないのだ・・・」
そう言いながらガイアは、ソルに攻撃を続けるティアを見てギルバート達にそう言った。
(ティア・・・両親の仇を討つために、人の命を奪ってしまう事になってしまいます・・・本当にそれでいいのでしょうか・・・?)
ステラは仇を討とうとするティアを見つめながらも心の中でそう思っていた。
「はあっ!」
ティアは剣を振るって攻撃をするとソルは両手剣で攻撃を防いだ。
「・・・お前がこれほどまでに強くなっているとは驚いたぞ・・・」
そう言って、ソルは攻撃を受け止めてからティアに向けて反撃をした。
「だが・・・本気を出していると言いながら、お前はエレノアの力を使おうとしない・・・これが、お前の本気なら俺は死んでいるはずだ・・・」
ソルはそう言いながら反撃をして、ティアの鎧に傷を入れた。
「貴方の言う通りね・・・エレノアの力を使っていれば、貴方を討ち取っていたのかも知れない・・・その後でダークタナトスとの戦いも残っているから、体力と魔力を使いすぎる訳にはいかなかったからよ・・・」
ティアは別の返答をするかのように答えた。
「違うな・・・お前は命を奪いたくないと言う気持ちが強まってしまう事で、エレノアの力を使おうとはしない・・・いや、使いたくはないと言っておくべきだな・・・」
ソルはティアの本心を読み取ったかのように言ってきた。
「・・・私がエレノアの力を使おうとしない事に気が付いていたのね・・・」
「お前の事だ・・・仇を討つ決心をしておきながらも、決意が徐々に弱まってし・・・それが、お前の長所でもあり短所でもあるようだな・・・」
ソルに指摘されるように言うと、ティアは胸に手を当てながら言ってきた。
「・・・私は小さい頃から命は大事な物で、誰もが奪ってはいけない物だと教えられて来たわ・・・エレノアの一族として生まれて来たのであれば、絶対にしてはならない事だって教えらえていたのかもしれないわ・・・」
自分の短所をつかれたのかティアは涙を零し始めていた。
「・・・その涙、エレノアから受け継がれてきた涙のようだな・・・聞いた事はあったが・・・やはり、涙を流している姿はエレノアに似ているな・・・」
「エレノアは命を大事にしている人間であって、世界中の命が光り輝いてほしいと思っていたのかもしれないわ・・・それは、エレノアの教えだと言う事が私には分かるの・・・」
ティアにとって、命を奪う事を拒むのはエレノアの教えがあったからだと思っていた。
「つまり・・・血筋は争えないと言う事だな・・・お前の言う事はよく分かった・・・だったら、俺も本気を出してお前と戦うとしよう・・・」
そう言って、ソルは両手剣を構えると、力が強まっているのが伝わってきた。
132章 仇を討つ決意
「・・・ソルはああ言っているが、今までは本気ではなかったのか・・・?」
ギルバートが気になって、ガイアに訊ねてみた。
「そうだ・・・これまで、ソルは本気で戦ってはいなかったのだ・・・」
ガイアの発言を耳にしたヘイゼルはその事について話し始めた。
「ヘリオドラコ家の人間は普通に戦っていても強いが、本気を出せば更に強くなると言われており、仇の人間などいるはずがないと言われていたぐらいなのだ。」
「ソルの奴・・・最初から、本気を出していなかったと言う事か・・・!」
「どうやらそのようだ・・・ソルが本気を出してきたのであれば、エレノアの力を使ってはいないティアは負けてしまう事になる・・・」
ガイアがそう言うと同時にソルから強い炎属性の魔力が感じられた。
「ソルの魔力が強くなった・・・これが、本気を出してきたからなの・・・?」
本気を出してきたソルからは炎のように赤く燃えオーラが出ており、それはまるで燃え盛る太陽のようにも見えた。
「ティア・・・ここからは、本気の殺し合いで行くぞ・・・」
そう言ってから、ソルが攻撃を仕掛けてくるとティアはとっさに攻撃を防いだ。
「くっ・・・!」
しかし、攻撃の勢いによってティアは飛ばされて壁にぶつかりそうになったが、その直前にティアは壁を蹴ってなんとか着地をする事ができた。
(なんて威力なの・・・攻撃を防いでも、飛ばされてしまうなんて・・・)
ティアは立ち上がろうとすると、ソルが炎の魔力で作られた玉を連続で放ってきた。
(・・・やっぱり、ソルは本気を出してきているようね・・・!)
そう思いながらもティアは連続で飛んでくる炎の玉を避け続けた。
「ソルの能力も上昇しているのか・・・ティアが押されているぞ・・・!」
「このままじゃ、ティアが殺されちゃう・・・!」
仲間達はティアが押されている状況を見て不安になったが、ガイアは冷静になりながらも見守っているだけだった。
(・・・あの姿はソルを取り戻そうとしていた父親と同じだ・・・)
ガイアは本気を出したソルの姿が父親であるアポロンに似ているように見えていた。
「どうしましょう・・・このままではティアが・・・!」
ステラはティアが押されている状況を見て、不安になってガイアに声をかけた。
「・・・信じろ。」
その一言だけを言っただけで、ガイアはなにも言わなくなった。
「どうした?いつまで避けるつもりだ?」
ソルは炎の魔法を放ちながらもティアに言ってきた。
「ティア・・・いい加減に、エレノアの力を使って見たらどうだ?」
「・・・!」
エレノアの力を使用する事を言われたティアは動きを止めると同時にソルは攻撃の手を止めた。
「お前はエレノアの力を使おうとはしないと言う事は分かっている・・・その力を使わなければ、俺に殺されて命を取られてしまう・・・仇を討つ覚悟を決めていても、その事が頭に過ってしまっているはずだ・・・」
ソルにそう指摘されたティアは弱みを握られたかのように言ってきた。
「そうよ・・・昨日の夜に仇を討とうと決めていたのに・・・今でも、貴方の命を奪ってしまう事が怖くなって仕方がないの・・・!」
全員が思っていた通りか、仇を討つ決意をしてもティアは命を奪ってしまう事を恐れて本気で戦う事もまだしもエレノアの力を使えずにいたと言うのだった。
「やはりか・・・ラヴィレイヘヴンに乗り込んでも、未だに俺を殺したくはないと思っているようだな・・・」
ソルがそう言うと、ティアは不安な声で喋り出した。
「えぇ・・・覚悟を決めていたのに・・・今でも、その事が頭から離れないでいるようなの・・・」
ティアは自分の不甲斐なさを感じながら俯くと涙が零れていた。
「それなのに・・・私が不甲斐無いせいで・・・!」
ティアは両親の仇を討つ事ができない事に泣き出してしまっていた。
「ティアが悲しんでいる・・・やっぱり、僕達も加勢をするべきじゃないのかな・・・?」
アランはそう思って言ったが、ガイアは首を横に振ってきた。
「いや・・・助太刀はしない方がいい・・・」
「・・・でも、このままだったら・・・」
すると、ガイアが悲しむティアを見つめながらアランに言ってきた。
「・・・ティアが一人で仇を討とうとしているのは、両親の報いを晴らすのではなく死んでしまった村人達への償いをしようとするために戦っている事が分からないのか?」
「村人達への・・・償い?」
「ティアから聞かされていたはずだ。処刑されそうになった家族を救おうとして、兵士に
逆らってしまった事を・・・」
「あぁ・・・その後に、ソルと大勢の兵士が村に攻めて来た時に村人や両親を殺されたって聞いた事があるぜ・・・」
「ティアは両親の仇を討つだけでなく、死んでしまった村の人達への償いをしようとしていたのですね・・・」
「・・・両親の仇を討つだけでなく、自分の行いのせいで死なせてしまった村人達への償いをする事はティアにとっては荷が重い使命を背負い続けながらも戦い続けていた事は分かっているはずだ・・・」
村での惨劇が引き起こしてしまった事で、ティアは荷の重すぎる使命を背負い続けていた。
「・・・それで、ティアはずっとエレノアの力を使わなかったのですね・・・」
ガイアの話を聞いたステラは悲しんでいるティアを見て同じ気持ちが感じられた。
「そろそろ、終わりにするぞ。」
ソルは戦いを終わらせようと両手剣を手にしてティアの前に立った。
「・・・まさか、お前の両親と同じように殺す事になってしまうとは・・・運命と言うものは残酷だな・・・」
そう言ってから、ソルがトドメを刺そうと両手剣を振り上げた。
「ティア!お願い戦って!」
イヴは叫んだが、ティアは悲しみのあまり、戦えるような状態ではなかった。
「ティア!」
その瞬間、止めを刺そうとソルが両手剣を振り下ろすと、ステラは殺されると確信して目を瞑った時だった。
「なっ・・・!」
ソルは目の前の出来事を見て驚いた。
「ソル・・・!」
それは、ティアが涙を流しながら剣で攻撃を防いだからであった。
「私は貴方に勝ってみせる・・・そして、お父さんとお母さんの仇討ちを討って私の住んでいた村人達への償いをするためにも・・・!」
両親の仇討ちと巻き込んでしまった村人達への償いをする決意を固めたティアはエレノアの力を発動して背に天使の羽を生やした。
「やっと、エレノアの力を使ったようだな・・・」
ガイアがそう言うと同時に、ティアとソルの本気の戦いが始まった。
「はあっ!」
「ふんっ!」
ティアとソルはお互いに攻撃を仕掛け続けた。
「これなら、ティアが勝つ事は間違いなさそうだね・・・」
「・・・この調子なら、アイツに勝てるかも知れないぞ・・・」
「しかし・・・ソルの方も、一歩も譲らずに戦っているようであるな・・・」
「・・・ティアが押してきている・・・これなら、いけるのかも・・・」
ギルバート達が見ている中で、ステラだけが俯いたままなにかを思っていた。
「私は仇を討って償う・・・だから、私は負けないわ!」
「くそっ・・・まさか、俺が押されようとしているとは・・・!」
ソルは反撃をしようとしても、ティアは隙を作らずに剣を振るう事でソルに攻撃をする余裕も与えなかった。
(これが・・・ティアに秘められた本当の力だとでも言うのか・・・!)
ソルはティアの攻撃を避けてから反撃を仕掛けてきた。
「見えているわ・・・」
ティアは羽ばたいて上空へと避けると、ソルに目掛けて上空から攻撃を仕掛けようとした。
「私は・・・貴方を倒してお父さんとお母さんの仇を討って見せる・・・!」
仇を討つと言う使命を背負いながらもティアはソルに目掛けて勢いをつけて迫った。
(お父さん・・・お母さん・・・私に力を貸して・・・!)
ティアは仇を討ちたいと願いながら力を振り絞った事でソルに重い一撃を与えた。
「・・・勝負あったようだな。」
ガイアはティアの攻撃を受けて倒れたソルを見た。
「この勝負は・・・お前の勝ちだ・・・」
そう言ってから、ソルは片膝を着いて立ち上がろうとしていた。
「今の攻撃よく効いたぞ・・・俺を超えられるぐらいの強さを手に入れたとでも言うべきだな・・・」
「・・・私はこれまで貴方達やモンスター達と戦って来たわ・・・私が、ここまで来る事ができたのもギル達の御蔭でもあるのよ・・・」
そう言われて、ソルはギルバート達の方を見た。
「俺達は誰も殺しなんか望まずに生きてきたんだ・・・それに、デスドゥンケルハイト軍に怯えている連中やデスドゥンケルハイト軍の兵士にされた奴等だって、同じ考えを持っていたのもアンタだって知っていたはずだ・・・」
ギルバートがそう言うと、ガイアがソルに向けてこのように言ってきた。
「・・・ソル、そろそろ話しても構わないのではないのか?」
「そうだな・・・死ぬ前に、ちゃんと伝えておくべきだな・・・」
すると、ソルは最期に言い残すかのように話し始めた。
「お前が聞いても信じられないとは思うが・・・俺は本気で、お前の両親の命を奪おうとは思ってはいなかった・・・」
「それって、初めから殺すつもりは無かったと言う事なの?」
「そうだ・・・俺も人間の命を奪ってしまう事など望んでもいなかった・・・しかし、あの日に誤ってお前の両親を殺してしまった・・・その時の出来事は今でも忘れられずにいるぞ・・・」
あの日、襲撃をしてきた際にソルはティアの父親と戦っていた時に母親が庇おうとしてきた事によって、両親を殺害してしまった時の事が忘れられずに悔やんでいたのだった。
「・・・攻撃が反れてしまいお前の父親と共に母親の命までも奪ってしまった・・・今でも、その事が頭から離れられずにいる・・・お前と出会う度に、お前の両親を殺してしまった事の後悔が感じられていたぞ・・・」
ソルはティアと出会う度に、両親を殺してしまった事の後悔を感じていた。
「・・・今まで、デスドゥンケルハイト軍を倒してラヴィレイヘヴンを取り戻して仇を討つためにここまで来た・・・仇を討つ決意をしなければ、お父さんとお母さんの無念・・・それに、村の人達にも償いをするために貴方を討ってみせるわ・・・」
仇を討ちと償いをすると告げると、ティアはソルに止めをしようと剣を構えた。
「覚悟は既に決めている・・・殺せ・・・」
ソルが最後の言葉を言い終えると同時にティアは剣を振るおうとした。
「待ってください!」
その途端、ステラがソルを庇う様に割り込んできた。
「ステラ・・・?」
ティアはステラが割り込んできたのを見て剣を降ろした。
133章 仇を討つと意味
「ステラ・・・なにしているんだよ・・・!?」
ギルバート達もステラの突然がソルを庇った事に驚きを隠せなかった。
「・・・ティア、これから両親の仇を討とうとしているのですか・・・?」
「えぇ・・・これまで、人の命を奪いたくない気持ちが強かったから命を奪ってまでも仇を討ちたくないと思っていたわ・・・私にもそれを果たさなければいけないの・・・」
ティアはそう言いながらも、剣の塚を持つ手が震えていた。
「貴方はモンスターでも命を奪わないようにしながら戦ってきました・・・ですが、本当にそれでいいのでしょうか・・・?」
ステラは仇の相手の命を奪ってまでも、両親の仇を討ってもいいのかとティアに問いかけた。
「それは・・・ギルを取り戻した事で私は仇を討とうと決めた事なの・・・」
仇を討つ決意ができたのは、ギルバートを取り戻した時から仇を討つ決意ができていた。
「今まで、両親の仇を討つ事に迷いを生じては人間の命を奪いたくはないと思いながらも仇を討ち巻き込んでしまった人間達の無念を晴らそうとしながらも旅を続けてきたのであれば、言われなくとも分かっているはずだ・・・」
ガイアがティアの事について語ると、ステラがソルにある事を問うてきた。
「聞かせてください・・・貴方は何度もティア戦って殺そうと思いましたか・・・?」
本当に殺す気だったのかステラが訪ねると、ソルはティアを見つめながらも答えてきた。
「いや・・・俺は、一度も相手を殺そうとしようとは思ってはいなかった・・・しかしダークタナトスに命じられた俺はあの夜に兵士達を引き連れてあの村の襲撃を命じられた・・・」
その時の襲撃はダークタナトスの命令もあってか、ソルは逆らえずに仕方なく襲撃をしてきたと言うのだった。
「それって・・・本当は襲撃をする事を嫌だったという事・・・?」
イヴがまさかと思って訪ねてみるとソルは「そうだ・・・」と言い辛そうに答えた。
「村人達を皆殺しにしたのは兵士達だが・・・兵士の一人がティアの家を見つけてしまった事で、俺は兵士を数人引き連れた・・・初めから、兵士達に任せようとしていたが・・・お前の父親が俺達に牙を向けて来た事は覚えているか・・・?」
「えぇ・・・お父さんは私とお母さんを守ろうとして戦っていたわ・・・」
「お前の父親と戦っていた時に、お前の家を燃やしてしまった・・・俺はただ、家の中に潜んでいる人間達を炙り出そうとしてやっていた・・・その直後に、お前の母親が出て来た事で誤って父親と共に斬り殺してしまった・・・今でも、斬り殺した時の感覚を忘れる事もなかったぞ・・・」
その時から、ソルはティアの両親を殺してしまった事を悔やみ続けているようだった。
「・・・」
「もういいだろう・・・ティア、いい加減に俺を討たなければ、仇を討つ意思が弱まってしまうぞ・・・」
「・・・勿論、そのつもりよ。」
そう言ってから、ティアは静かに剣を構え直した。
「ステラ・・・仇を討つから、貴方は離れていて・・・」
しかし、ステラはティアにそう言われてもソルの前から退こうとはしなかった。
「嫌です・・・」
「・・・貴方の気持ちは分かるわ・・・今、ここで仇を討たなければ、お父さんとお母さんや村の人達にも償いをする事ができないの・・・」
ティアは戸惑いの表情を見せながらもステラにそう言ってきた。
「・・・そんな事をしてしまえば、ティアも人を殺してしまう事になってしまいます・・・それでも、ソルを殺すつもりなのですか・・・?」
ステラは仇を討つ事を止めるようにティアに説得をした。
「分かっているわ・・・ここで、仇を討たなければいけないの・・・」
「ティア・・・仇を討つと言う事は相手の命を奪ってしまう事と一緒です・・・この人を殺してしまえば、ティアもデスドゥンケルハイト軍のように人の命を奪ってしまう事になってしまいます・・・本当は命を奪ってまでも仇を討ちたくはないと思っていないのでしょうか・・・?」
ステラはこれ以上、無理をして仇討ちをさせたくはないと思って止めに入った。
「お願いです・・・この人を殺してしまうのは止めてください・・・」
すると、ステラは涙目になりながらもティアの説得を続けた。
「・・・人の命を奪っても、殺した事を後悔しながら生きいくだけです・・・嫌いな人や
憎んでいる人であってもいけない事です・・・ティア、命を奪いたくはないと思っているのなら自分の手を血で汚さないでください・・・!」
涙を流しながらもステラはティアの仇討ちを止めさせようと説得をした。
「・・・それでも、仇を討とうとするのであれば私はもう止めません・・・」
すると、ステラの言葉に心が動いたのかティアは剣を降ろした。
「・・・なぜ、俺を庇った?俺は既に仇を討たれる覚悟は決めていたが・・・?」
ソルは仇討ちを止めようとしたのか訊ねると、ステラはソルの方を向いてから理由を話してきた。
「貴方は生きて償うべきだからです・・・」
「生きて・・・償うだと・・・?」
「はい。貴方は仇を討たれるのではなく、自分のしてしまった事を償いながら生きて行くと言う事です・・・そうすれば、ティアが仇を討つ事がなくなると思います。」
ステラはソルに犯してしまった事を生きて償ってほしいと思っていた。
「・・・ティアの両親や村人達を殺して故郷である村を滅ぼしてしまった俺が・・・その償いをしながら生きていくべきだと言いたいのか?」
「過去に貴方の両親が死んでしまった時は悲しんでいましたか?」
そう言われたソルは自分の両親が死んだ事を聞かされた時の事を思い出した。
「・・・俺も父上と母上が死んでしまった時は悲しみを感じていた・・・どう言う訳か、悲しみを感じていたのにも関わらず、俺は涙を流す事ができなかったんだ・・・」
ソルの両親が死亡した事を悲しんでいたが、瞳から涙が流れる事などないと言うのだった。
「だが・・・俺に償いをしながらも生き続けるなど・・・そんな事をすれば、仇を討っていれば良かったと後悔をする事になるぞ?」
ソルはそう言ってきたが、ティアは剣を鞘に戻してから言ってきた。
「構わないわ・・・この子の御蔭で、無理に命を奪う必要はないと思えたの・・・だから、貴方がしてしまった事を生きて償ってほしい・・・ガイアもそう願ってくれているわ・・・」
そのように言われたソルはガイアからもステラと同様に思っているのだと察した。
「償いか・・・お前もそう言うのであればいいだろう。」
ソルもステラの言う事に承知をする事となった。
「・・・この奥にダークタナトスが光翼の涙を持っているぞ・・・しかし、お前達で勝てるかどうかは分からないぞ・・・」
すると、ティアがソルに手を差し伸べてきた。
「ソル・・・貴方も一緒に戦いましょう・・・」
「この俺にも戦えと言うのか?」
「そうだ・・・お前もデスドゥンケルハイト軍から解放されたいと思っている・・・だからこそ、私達と共にダークタナトスを倒し世界に光を取り戻そうではないか・・・」
ガイアもそう言ってきたが、ソルはティアの手を払い除けた。
「・・・それは、できない事だ・・・ダークタナトスが倒されてしまえば、デスドゥンケルハイト軍の人間達はどうなるのか分かっているのか?」
ソルの言う通り、デスドゥンケルハイト軍が壊滅した後で兵士達がどうなるのかティア達には分かっていた。
「・・・兵士達はこれまで人々に恐怖を与えては罪も無い人間達を殺してきた・・・ダークタナトスがいなくなれば、この世界で生きていけるかどうか分からないぞ・・・?」
仮にダークタナトスを倒したとしても、兵士にさせられた人間達も殺しに加担をしている者もいるので、周りに後ろ指を差されながらも生きていく事になる未来が待っていた。
「そんな・・・それじゃあ、ギルやヘイゼルも一緒って事・・・?」
イヴがそう言うと、ティアがソルを含む全員にこう言ってきた。
「・・・心配ないわ。兵士達もこの世界にいる人類でもあるのよ・・・例え、命を奪ってしまっても、償いをしながら生きて行けば、怖がられる事はなく周りの人達と和解できる時が訪れるはずよ・・・」
「そうだ・・・人間は悔い改める事ができれば・・・やり直す事ができる・・・そうすれば、普通の人間として生きていけるであろう・・・」
罪を悔い改めて改心をすれば、また一から人生をやり直す事ができるとガイアはそう思っていた。
「・・・人類には平和に暮らす善良な人間や悪事を働く人間がいる・・・だからこそ、それらの人間達が両立している事によって、人類は成り立っているからこそ世界が存在する事ができているのだ・・・」
ガイアの話を聞いていたソルが黙り込んだままなにも言わなくなった。
「行きましょう・・・私達にはまだ闘いが残っているから・・・」
そう言って、ティア達はソルを残して奥の扉を開けて進んで行った。
134章 最終決戦
ティア達は扉を開けて中に入ると、奥にある玉座にはダークタナトスが座り込んでいた。
「待っていたぞ・・・エレノアの末裔よ・・・」
そう言って、ダークタナトスは玉座から立ち上がった。
「お前達が我の前に現れたと言う事は・・・ソルまでもが敗れ去ってしまったと言う事か・・・」
ダークタナトスは目の前にいるティア達を見てソルが敗れたと悟った。
「ダークタナトス・・・貴方を倒してこの世界に光を取り戻して見せるわ・・・」
ティアがそう言うと、ダークタナトスは彼女を見て笑みを浮かべた。
「・・・貴様がティアか・・・エレノアの血筋が感じられるぞ・・・」
そう言いながらも、ダークタナトスはティアから流れているエレノアの血を感じ取った。
「いいだろう・・・我、自らが相手をしてやろう・・・来るがよい・・・」
ダークタナトスが片手を突き出すと、闇で造り出された鎌が出現した。
「エレノアの末裔共々、裏切り者共も一緒に闇へと葬ってやろう・・・」
そう言った直後に、ダークタナトスは闇の力と魔力が強大に膨れ上がった。
「奴から強大な暗黒の力が感じられる・・・僅かでも、隙ができちまったら闇に飲み込まれちまいそうだ・・・」
ギルバートが警戒をしながらもティア達に言った。
「・・・強い闇・・・いいえ、それ以上の闇の力と魔力が感じられるわ・・・」
「ダークタナトスは、強大な闇を持っている・・・少しでも、喰らってしまえば一溜りもないぞ・・・」
ガイアはダークタナトスを見て、強大で邪悪な闇を感じ取っていた。
「それでは、始めるとしよう・・・光と闇が、ぶつかり合う戦いを!」
ダークタナトスは、闇の力と魔力を更に上昇させた。
「・・・一瞬で、戦いを終わらせるようとしている・・・油断をしてはならぬぞ・・・!」
「皆・・・これが、最後の戦いよ・・・この世界に光を取り戻しましょう・・・!」
ガイアとティアがそう言った直後に、ダークタナトスとの最終決戦が開始された。
「気を引き締めろ・・・闇に引き込まれないようにしながら戦うのだ・・・!」
ガイアがそう言った直後に、ダークタナトスがティア達に攻撃を仕掛けてきた。
「はあっ!」
ガイアは、低空飛行で飛びダークタナトスに攻撃を仕掛けた。
「ふんっ!」
攻撃を見切ったダークタナトスはガイアに反撃をした。
「くっ・・・!」
なんとか攻撃を避けたガイアだったが、掠っただけで鎧の一部が破壊されていた。
「ガイア、大丈夫?」
「大丈夫だ・・・それよりも、攻撃をまともに受けてしまえば、致命傷では済まされないと思った方がいい・・・」
ダークタナトスの攻撃は僅かに掠ってしまうと大きなダメージを与えるほどだった。
「この星竜族の鎧を着ていなければ、私は大きな傷を負っていただろう・・・」
「星竜族の鎧・・・星竜族達が特別な素材を使って造り出した鎧ですね・・・」
ガイアの着ている鎧は星竜族達が愛用している鎧で特別な素材で造られていた。
「・・・未だにその鎧を着こなしているとは・・・それほどまでに、星竜族の誇りがあるようだ・・・流石は星竜族の王に仕えていただけの事はあるな・・・」
ダークタナトスはそう言った直後に、魔法の詠唱を唱え始めた。
「今度は一体・・・?」
ダークタナトスが詠唱を唱えると、ティア達の頭上に無数の魔法陣が展開された。
「・・・お前達にはこの魔法を避けられるか・・・?」
そう言うと同時に、ダークタナトスは魔法を唱えてきた。
『闇刃降陣!』
その瞬間、ダークタナトスは魔法を放ってくると、魔法陣から無数の黒い刃が降り注いできた。
「避けろ!」
ティア達はとっさに避けた事で、なんとか無数の黒い刃を避ける事ができた。
「ダークタナトス!」
ギルバートは素早く立ち上がると、ダークタナトスに向けて攻撃を仕掛けた。
『神風烈翔!』
ギルバートは荒々しい神風の如く、目にも止まらない速さでダークタナトスに斬りかかった。
「甘いな・・・ギルバート・・・」
しかし、アイザックは既に読んでいたのか、ギルバートの攻撃を受け止めていた。
「裏切り者が・・・この我に攻撃を仕掛けてくるとは・・・」
「うるせぇ・・・これ以上、お前達に無残に殺される奴等を増やして堪るかよ・・・!」
そう言って、ギルバートはなにやら笑みを浮かべた。
「こっちだよ!」
その直後、イヴとヘイゼルが攻撃を仕掛けようとしていた。
『セインブレット!』
『閃光貫刺!』
ヘイゼルは神聖な聖気を纏った弾を放ち、イヴは閃光の突きを繰り出した。
「我を甘く見るな!」
ダークタナトスは魔力を放ちギルバート達を吹き飛ばしてから、攻撃を仕掛けてきたイヴとヘイゼルに闇の力で吹き飛ばした。
「やはり、このような作戦では無理があったようだな・・・」
「当たり前だ・・・どんな、作戦で来ようとしても、我を倒す事は不可能なのだからな・・・」
すると、ギルバートは立ち上がるとダークタナトスに言ってきた。
「・・・俺達は誰の命を奪いたくないと思っている人間だ・・・そう言う人間に牙を向けられるのも当然に決まっているだろ・・・」
ギルバートはそう言いながら睨み付けると、ヘイゼルが同様の事を言ってきた。
「私もギルバートと同じ意見だ・・・お前達がこの世界を支配してからと言うもの・・・世界を闇と言う名の恐怖で支配しては罪も無い人間達を殺してきた・・・だが、僅かに光が残っているのであれば、闇に抵抗できるのは希望を持っているからだと言える・・・」
ギルバートとヘイゼルに言われたダークタナトスは世界を闇で覆わせて支配してからの出来事を振り返ってみた。
「確かに・・・二十年間、デスドゥンケルハイト軍はこれまで数多くの人間達を殺し続けてきた・・・しかし、それが一体どうしたと言うのだ?」
「ふざけるなよ・・・!俺やソルみたいに無理やり連れて行かれては、ヘイゼルのように
お前等に売られて兵士にされているんだ・・・!」
ダークタナトスの命が無価値な態度を見てギルバートは激怒した。
「なにを言っている?我は、手駒を増やすためにやっただけの事だ・・・兵士として教育をすれば、デスドゥンケルハイト軍に逆らう人間がいなくなり、デスドゥンケルハイト軍の繁栄にもなる・・・それのなにが悪いと言うのだ?」
ダークタナトスは悪気がないように言った途端、ティアが攻撃を仕掛けてきたが避けられた。
「・・・貴方達はこれまで、二十年間もの間・・・罪も無い人達が殺されてきた・・・それを、なんとも思わないとでも言えるの・・・?」
先程の発言を聞いて、ティアは怒りの表情になっていた。
「いいや・・・誰が死のうが我には関係のない事だ・・・人を殺めては命を奪う事に疑問を抱いた裏切り者など、我がデスドゥンケルハイト軍にとってはなんの価値もない不要な人間達なのだ・・・」
ダークタナトスは、ティアを押し退けてからギルバートとヘイゼルを見てこう言ってきた。
「・・・それ故に、お前達はデスドゥンケルハイト軍を離反しておきながら、態々ここへ戻って来ているとは・・・それ程までにして、死に急ぎに来たようにしか思えんな・・・」
ダークタナトスが、そう言った直後にギルバートとヘイゼルに攻撃をしながら言ってきた。
「お前の言う通りだ・・・だけど、ティアと出会っていなければ、俺はお前の言う闇にい続けていたのかもしれなかったな・・・」
ギルバートがそう言うと、ヘイゼルも続くように言ってきた。
「エレノアの末裔ティアとの出会いによって、私は逃げるのを止めて戦う事ができている・・・それが、私達が光に満ちた事で戦っているのだ!」
二人はティアとの出会いがなければ、今の自分達がここにはいないと思っていた。
「・・・ティアと一緒にいる内に、本当は殺したくない気持ちが膨れ上がったんだ・・・そんな俺を裏切っても、アイツは俺の事を連れ戻そうとしてくれた・・・自分の命を懸けてまでも救ってくれたんだよ・・・!」
ティアは自分の身に変えてまでもギルバートの事を連れ戻そうとしてくれていた。
「俺達はアイツの光の手で救い出してくれた・・・だからこそ、俺達を救い出してくれたティアのためにも、世界に光を取り戻そうと戦っているんだ・・・!」
そう言うと、イヴが動き出してその槍をダークタナトスの胸を貫かせた。
「がっ・・・!」
避ける暇もなく、ダークタナトスはイヴ突きが腹部に刺さっているのを目にした。
「だが・・・こんな攻撃で倒せると思うか・・・?」
ダークタナトスは力尽くで槍を引っこ抜くと同時に、槍を掴んでイヴごと床に叩き付けた。
「くっ・・・!」
イヴは背中からくる痛みに堪えながらも立ち上がった。
「来るがいい・・・いくら、攻撃をしても無駄な事だ・・・」
ティア達はダークタナトスの強大な強さにも関わらずに戦闘を繰り広げた。
135章 暗黒の闇のダークタナトス
「どうした・・・もう終わりか?」
戦闘が長引いていても、ダークタナトスには余裕そうにしながら戦っていた。
「ダークタナトスは余裕をかましているが、油断してはならんぞ・・・」
「うるせぇ!」
ギルバートはとっさに攻撃を仕掛けてきた。
「くそっ・・・!」
ギルバートはなんとか身軽な動きで攻撃を避けてから反撃を仕掛けた。
「甘い!」
そう言って、ダークタナトスは片手で闇の盾を出現させてギルバートの攻撃を防いだ。
「こんな攻撃では我は倒せん・・・そして、魔法と言うのはこのように唱えるものだ!」
ダークタナトスは標的をアランに変えて、魔法を唱えると闇の魔力が放たれた。
「アラン!」
ギルバートがアランを庇った事によって、ダークタナトスの放った魔法に当たらずに済んだ。
「大丈夫か?」
「うん・・・なんとか・・・」
その時、二人の背後にダークタナトスが立っており鎌を振ってきた。
「くっ・・・いつの間に・・・!」
ギルバートはなんとか双剣で攻撃を防ぐ事ができた。
「そらよ!」
それと同時に、ギルバートは反撃を仕掛けてダークタナトスに傷一つ負わせた。
「・・・この我に、傷を付けるとは・・・だが・・・」
ダークタナトスの傷が見る見る内に消えていった。
「傷が・・・消えた・・・!?」
「そう言えば、イヴが付けた傷も消えているみたいだよ・・・!」
先程イヴの突きが刺さった傷がいつの間にか治っていた事に気付いた。
「我にある闇の力によって、傷を癒す事ができるのだ・・・」
ダークタナトスがそう言うと、背後からイヴが攻撃を仕掛けてきた。
「余所見は禁物だよ・・・」
そう言いながらイヴは槍を抜いたが、ダークタナトスの背中の傷が回復していった。
「・・・やっぱり、この技でも傷が消えてしまうのね・・・」
「くそっ・・・どれだけ攻撃をしても闇の力で回復してしまうぞ・・・」
それからもティア達は何度も技や魔法で攻撃をしてみたが、闇の力によってダークタナトスの傷は回復してしまうだけだった。
「どうなっているんだよ・・・どんなに、攻撃をしても闇の力と言う奴で回復されちまうぞ・・・」
「一体、どうすればいいのでしょうか・・・このままでは・・・」
どうすればいいのか思っていると、ガイアがティアに声をかけてきた。
「・・・ティア、どうすれば傷を回復させずに、攻撃をするのはどうすればいいのか分かっているな・・・」
「えぇ・・・勿論よ。」
ティアがそう言うと、エレノアの力を発動して背に天使の羽を生やした。
「やるぞ・・・ティア・・・!」
「分かっているわ・・・ガイア・・・」
ティアはエレノアの力を発動させてから、ガイアと共に上空へと飛び上がっていった。
「・・・ようやく、エレノアの力を使って来たか・・・だったら、我も上空で戦ってやるとしよう・・・」
そう言って、ダークタナトスは闇の力を使うと、背に悪魔の翼を生やしてから上空へと舞い上がってきた。
「まさか、闇の力で背に羽を生やして飛ぶ事ができたのか・・・!」
「私も噂では聞いた事はあったが・・・奴は闇の力を使って武器を造り出す事ができるだけでなく、羽を生やして空を飛ぶ事ができると聞いた事はあったが・・・真のようであったな・・・!」
ギルバート達が地上にいる中で、ダークタナトスがティアとガイアの前で羽ばたいていた。
「・・・上空で戦おうとするとは・・・余程、仲間達の手助けがいらなかったように
見えるぞ・・・」
「・・・ここなら、ギルバート達をも巻き添えを喰らってしまう事もなく
済むのだからな・・・」
「そうか・・・仲間達の事を考えて、上空で戦う事に決めたと言う事だな・・・いいだろう・・・お前達の死体を見る事がないように闇の力で消してやろう!」
そう言って、ダークタナトスは勢いをつけてティアとガイアに向けて攻撃を仕掛けてきた。
「速い・・・!」
ティアとガイアはダークタナトスの動きを見てなんとか攻撃を避ける事ができた。
「ガイア、今の攻撃は・・・?」
「あぁ・・・本気を出した・・・とでも言っておくべきか・・・」
ダークタナトスは悪魔の羽を背に生やしただけでなく本気を出している様子だった。
「我を本気にさせたのは貴様等が初めてだ・・・じっくりと、闇に染めさせてからこの世から葬ってやるとしよう・・・」
ダークタナトスが余裕そうな表情をして言ってくると、ティアとガイアに向けて攻撃を仕掛けてきた。
「ティア・・・我々も本気を出さねば、闇に葬られてしまうぞ・・・」
ガイアが警戒をしながらもティアに言ってきた。
「来るわ・・・」
ティアとガイアは、本気を出したダークタナトスと戦闘を繰り広げていた。
「はあっ!」
ガイアが攻撃を仕掛けてみたが、ダークタナトスは攻撃を防いだ。
「こっちよ!」
それと同時に、ティアはダークタナトスの後ろから攻撃を仕掛けようとした。
「背後に回ったか・・・その手に引っかかると思ったか・・・?」
ダークタナトスは反時計回りに鎌を振るってティアの攻撃を阻止してきた。
「・・・隙を見て、攻撃をしようとしたが・・・実に残念だったな・・・」
そう言って、ダークタナトスは闇の魔力が込められた玉を放ってきた。
「はあっ!」
ティアは剣を振るって闇の玉を斬ってから、ダークタナトスに攻撃を仕掛けた。
「・・・ここからでも、凄い戦いになっている事が伝わってくるよ。」
「あぁ・・・ティア達が強くなったのか、ダークタナトスが本気を出してきたのか・・・今、私達が見ているのは永遠に記憶に残る戦いを繰り広げられているのだ・・・」
ギルバート達はここから見ているだけで、永遠に記憶に残る戦いだと思っていた。
「・・・この戦いは生涯語り継がれるだろう・・・しかし、私達はただティアとガイアを見守っているだけだ・・・なによりも、空を飛ぶ事ができなければ、戦いに加わる事など不可能だ・・・」
空を飛ぶ事のできないギルバート達はただその場で見ているしかなかった。
「・・・それでも、私達が想像のできない戦いをしている事が伝わってきます・・・」
「仮に俺達が空を飛べたとしても、加勢に入っても無理だろうな・・・あの二人が勝ってくれる事を祈っているしかないか・・・」
ギルバートに、そう言われてステラ達は二人の勝利を祈り始めた。
(ティア・・・絶対にダークタナトスを倒して・・・そして、一緒にあの村に帰ろうね
・・・!)
(ガイア・・・貴方なら、ティアと一緒にダークタナトスを倒してくれると信じています・・・頑張ってください・・・!)
イヴはティアをステラはガイアが無事で戦いを終えてくれる事を祈り続けた。
(ティア、ガイア・・・君達なら、平和を取り戻せる事を信じているよ・・・)
(・・・どうか、この闇に包まれた世界を開放してくれ・・・)
アランとヘイゼルも同様に勝利してくれる事を信じて祈り出した。
(頼む・・・お前達の手で、世界を救い出してくれ・・・!)
ギルバートも世界に光の溢れる世界を復活させてくれる事を祈っていた。
「驚いたぞ・・・まさか、本気を出した我と互角に戦えるとは・・・」
ダークタナトスは先程から自分と互角に戦えている事に気が付いていた。
「流石はエレノアの血を引く人間とユニバースに仕えていた星竜族だけの事はあるな・・・この我をここまで戦う事ができるとは・・・見事であったぞ・・・」
そう言いながら、ダークタナトスは二人の実力を見て笑みを浮かべた。
「・・・ティア、まだ戦えるか?」
「えぇ・・・これだけの力があるにも関わらずに、本気を出していないように思えてくるわ・・・」
ティアがそう言うと、ダークタナトスが笑いながら言ってきた。
「やはり、気が付いていたのか・・・先程から我が本気を出してはいない事を・・・慢心をしながらも戦っているように見えると思っていたのか・・・?」
「・・・それが、なにを意味しているのか教えてくれると言うのか?」
「そんなはずがなかろう・・・我が本当の事を言うわけがないだろう・・・」
すると、ティアがダークタナトスの様子を窺いながらガイアにこう言ってきた。
「・・・それは、貴方が光翼の涙を持っているから、私達が本気で戦う事ができないと思っているからなのね・・・」
「そうだ・・・余の手に光翼の涙がこちら側にあるので、本気で倒そうとして来ないと考えたが・・・八つ目である最後の光翼の涙を持っている限りは本気で戦おうとはしないと思ってのだが・・・まぁ、そのままでは面白くないと思って手を抜いていたぞ・・・」
ダークタナトスは初めから、本気を出しておらずに手を抜いていたというのだった。
「やはりそうか・・・それで、余裕そうにしていた理由がよく分かったぞ・・・」
ティアとガイアの話を聞いていたのか、ダークタナトスが慢心な態度で言ってきていた。
「・・・我を倒さなければ、光翼の涙を取り戻す事はできん・・・今、お前達に教えてしまったとしても・・・それを手にする事などかなわぬ事だな・・・」
そう言ってきたダークタナトスは片手を自分の胸に当ててから言ってきた。
「先に言っておこう・・・お前達が我を倒す事は絶対にできん・・・なぜなら、我の中に光翼の涙があるのだからな・・・」
余裕そうにしつつも宣言をしてきたダークタナトスの言葉を聞いたティアとガイアは本当の事だと真実を告げられたように感じられた。
136章 天使と竜と悪魔
「体にある・・・まさか、光翼の涙を体の中に取り込んだとでも言うのか・・・!」
ガイアがそう思って言うと、ダークタナトスは「そうだ・・・」と言ってきた。
「しかし、取り戻そうとするなど無意味な事だ・・・光翼の涙は我の体に取り込んでいるので取り除く事など不可能だろう・・・そうなれば、簡単に攻撃をする事もできないだろう・・・」
八つ目の光翼の涙はダークタナトスの体に取り込まれており、取り除こうとしたとしても破壊してしまう恐れがあったので無暗に攻撃をする事ができなかった。
「それに、闇の力に染まった光翼の涙は光が失われている・・・取り戻す事ができたとしても光の消えた光翼の涙を手に入れても意味がないのだからな・・・」
「そんな・・・光が失われてしまっているなんて・・・」
「例え、お前達が手に入れたとしても、我を倒す事は不可能と言う事なのだ・・・」
絶望感を感じたダークタナトスが勝ち誇ったかのように笑いだした。
「ティア・・・私が戦っている間に、ダークタナトスの体の中から光翼の涙を見つけ出してくれないだろうか・・・?」
「でも・・・光翼の涙は闇に染まっていて光が失われているから・・・何処の部分にあるのか分からないわ・・・」
ティアはダークタナトスを見て、何処に光翼の涙が取り込まれているのか分からなかった。
「分かっている・・・そうだとしても、光翼の涙を取り戻さなければならん・・・エレノアの末裔であれば、光翼の涙に光を蘇らせられる事ができるはずだ・・・そして、光翼の涙を全て揃えられるのであれば・・・」
ガイアが、そう言いかけた途端にダークタナトスが闇の斬破を放ってきた。
「・・・後で話すとしよう・・・とにかく、私が奴を引き付けている間に、お前は光翼の涙を探り出し、光を蘇らせるのだ・・・!」
そう言って、ガイアはダークタナトスと引き付けるために戦い始めた。
(・・・さっき、ダークタナトスが光翼の涙は闇に染まっていると言っていたけれど・・・一体、何処にあるのかが分からないわ・・・)
ティアは、光を感知してみたが、光翼の涙を感じ取る事ができなかった。
(駄目・・・ダークタナトスから光が感じられてこない・・・光翼の涙が闇に浸食されている事は本当だったようね・・・)
ティアはダークタナトスが先程言っていた事は嘘ではないと思えた。
「どうした?そんな様子では、私を倒す事はできんぞ?」
ダークタナトスは、そう言いながら斬撃を振るってガイアに傷を負わせ続けた。
「ティア・・・どうして、攻撃をしないのでしょうか・・・?このままでは、ティアとガイアが・・・!」
ステラが上空の戦況を見て不安に思えてきた。
「・・・二人になにか考えがあったのかも知れねぇな・・・ガイア一人で戦って、その間にティアがなにかをするタイミングを狙っているのも考えられるぞ・・・」
ギルバートはそのように言ったが、ステラはティアとガイアの事が心配になっていた。
(ティア・・・どうか、ガイアを助けてください・・・!)
ステラは祈り続けている間にも、ガイアは苦戦を強いられていた。
「まだか・・・!」
ガイアはダークタナトスと戦いながらティアの方を振り向いた。
「いいえ・・・何処に隠されているのかまだ見つからないの・・・」
それでも、光翼の涙の光を探ってみたが、光を感じ取る事ができなかった。
「無駄だ!我の闇に浸食されたのだ・・・絶対に見つけられる事ができぬ!」
ダークタナトスはそう言いながらも、ガイアに向けて猛攻を仕掛けてきた。
(何処なの・・・急いで、光翼の涙を見つけなければ・・・!)
ティアは急いで、探ってみたが光が感じられなかった。
(・・・今、一瞬だけ光を感じられた気が・・・でも、ダークタナトスの何処から感じ取る事ができたの・・・!)
光を感じ取られたのは一瞬だけで、何処に取り込まれているのかが分からなかった。
「があっ・・・!」
その間にダークタナトスの猛攻に耐え切れずガイアは傷付いていった。
「・・・残念だが、光翼の涙は完全に光を失ってしまったようだ・・・一瞬だけでも、光を感じ取られただけでも奇跡でも言っておこうか・・・」
そう言いながら、ダークタナトスは勝ち誇った様子で言ってきた。
「だが・・・一瞬だけ感じ取れたのであれば、光を完全に失った訳ではないはずだ・・・」
「それでも、我から奪い取ってみるか?まぁ、取り戻せたとしても、二度と光が戻る事はないのだが・・・」
そう言って、ダークタナトスは容赦なくガイアに斬撃を振るい続けた。
(・・・急がないと・・・ガイアが・・・!)
闇に浸食されている事を分かっていても、ティアは光翼の涙が何処か光を探り続けた。
「無駄だ・・・光翼の涙は闇に浸食されて光を失っているのだ・・・そう、まるで命が消えてしまったかのように・・・」
その時、ダークタナトスの発言を聞いて、ティアは頭の中になにかが閃いた。
(・・・命が消えて失った?もしかしたら、光翼の涙は・・・)
ティアはそう思いながらもダークタナトスを見てみた。
(やっぱり、光翼の涙が取り込まれている場所は・・・!)
光翼の涙が何処にあるのか理解したティアは剣を構えた。
(ティアが・・・やはり、ダークタナトスの何処に光翼の涙を取り組んでいたのかを理解したか・・・!)
ガイアはティアが剣を構えている様子に理解したと確信した。
「余所見をしているとはいい度胸だな!」
その隙を突いたダークタナトスは思いっきり攻撃を仕掛けてきた。
「違う・・・!」
ガイアは攻撃を避けると、ダークタナトスの胸に剣を突き刺した。
「残念だな・・・そんな攻撃で我を倒す事が・・・」
しかし、ガイアは無駄だと分かっていても笑みを浮かべていた。
「あぁ・・・だが、貴様を倒すために攻撃をしたと思うか・・・!」
その時、ティアが動き出してダークタナトスに攻撃を仕掛けてきた。
「これは・・・!」
「・・・光翼の涙がある場所を把握し、ティアに伝えるために攻撃をしたのだ・・・!」
ガイアが胸に剣を突き刺したのは光翼の涙のある部分が心臓のある胸の部分だと教えていたからであった。
「そして・・・ティアの攻撃によって、光翼の涙を取り戻す事ができるのだ・・・!」
そう言って、ガイアは剣を抜いてダークタナトスから離れると、ティアが剣に淡い光が宿している事に気が付いた。
『聖光斬り!』
ティアは神聖なる眩い閃光が走る一撃でダークタナトスの胸を貫かせた。
「があっ・・・!」
ティアの攻撃が効いているのか、ダークタナトスは苦しみを感じて声を挙げた。
「光翼の涙は・・・ここにある・・・!」
ティアは剣を抜いてから、心臓のある部分から取り込まれていた光翼の涙を発見した。
「取り戻させてもらうわ・・・最後の光翼の涙を・・・!」
そう言って、ティアは心臓の部分に手を突っ込んで八つ目の光翼の涙を抜き取った。
「これで・・・光翼の涙を全部取り戻す事ができた・・・一度、降りて戦うとしよう。」
ティアとガイアは一旦ギルバート達の元に降り立つと、ダークタナトスは苦しみながらも不時着した。
「ティア、大丈夫か!」
「ガイア・・・!」
ギルバート達はティアとガイアの元に駆け寄った。
「良かった・・・その様子だと、光翼の涙を取り戻せたようね・・・」
「えぇ・・・光翼の涙は、ここに・・・」
ティアは八つ目の光翼の涙を見せたが、光が放っておらず闇の色に染まっていた。
「光っていません・・・これまで、光翼の涙を手に入れていれば、ティアの中に
吸収されないのは、どうしてなのでしょうか・・・?」
その時、ダークタナトスが胸を押さえながら不敵に笑いながらも立ち上がった。
「・・・その光翼の涙は闇に染まった事によって、光が完全に失われており・・・二度と光を取り戻す事はできん・・・残念だったな・・・」
ダークタナトスは勝ち誇ったように笑みを浮かべながらも高笑いをした。
「そんな・・・それじゃあ、八つ全てを集められたとしても無駄だと言うの・・・?」
「・・・そう言う事だな。さて、遊びはこれぐらいにするとしよう・・・」
そう言ってから、ダークタナトスは自身の闇の力と魔力を高め始めた。
「なんだ・・・奴から強い闇が感じられるぞ・・・!」
「・・・そろそろ、我も真の力を出してやろう・・・永遠に絶望を与えさせる無間と言う名の闇を・・・!」
闇が膨大に膨れ上がり、ダークタナトスの姿と大きさが変わっていった。
「奴の姿が変わろうとしているぞ・・・!」
ティア達はダークタナトスから強大な闇を感じられていた。
『始めるとしようか・・・絶望の闇に誘う戦いを・・・!』
闇の力によって、ダークタナトスの姿は漆黒の闇を纏った邪悪な怪物へと変化をした。
137章 絶望の闇
「強大な闇が感じる・・・皆、気を付けろ・・・!」
ティア達が、警戒をしているとダークタナトスが黒いオーラと共に威圧感を放ってきた。
「くっ・・・なんて、威圧感だ・・・少しでも動けば、闇に飲み込まれそうだ・・・!」
「やるぞ・・・とにかく、攻撃を与えてみねぇと・・・!」
ギルバートは威圧感を感じながらもダークタナトスに攻撃を仕掛ようとした。
『ふんっ!』
ダークタナトスは拳を突き出して攻撃をしてきた。
「当たるかよ!」
動きを見てギルバートは、攻撃を避けると素早く攻撃を仕掛けた。
『愚かな・・・』
ダークタナトスに向けられた斬撃で、傷を付けたが一瞬で回復してしまった。
「・・・こんな姿になっても、回復をされるのかよ・・・」
傷が回復するのを見て、ギルバートは絶望を感じた。
『我にどんなに傷を付けても無意味な事だ・・・すぐに、再生をしてしまうのだからな・・・それに、お前の持っている武器をよく見てみろ・・・』
そう言われたギルバートは双剣を目にすると、塵となって消滅している事に気が付いた。
「なっ・・・俺の双剣が・・・消えていく・・・!?」
『我は触れるだけで闇に飲み込んで化し消し去る事ができるのだ・・・ここにある柱と同様に・・・』
そう言いながら、ダークタナトスの近くにあった柱を触れてみせると、闇に浸食されながらも消えていった。
「・・・触っただけで、柱を消しちゃうなんて・・・!」
「だから、俺の双剣がお前の体に触れたから塵になったのか・・・!」
ティア達は、触れるだけで消滅すると言う光景を見て、絶望しか感じられなかった。
『そう言う事だ・・・傷を付けても再生すし・・・触れるだけで、塵にして消し去って
しまうだけだ・・・』
ダークタナトスは近くにいたギルバートを消そうとすると、アランは満月から狂気の裁きを下すような光線をダークタナトスに放って命中させたが闇によってそれすらも飲み込んでしまった。
「強力な魔法を放ったのに、それでも闇に飲み込まれてしまうのなんて・・・!」
『今の我に魔法ですらも闇に飲み込まれるだけだ・・・当然、どんな技を繰り出しても同じように闇に飲み込まれてしまうだけだぞ・・・』
そう言ってから、ダークタナトスは巨大な口から闇の光線を放ってきた。
「来るぞ!」
ティア達はとっさに光線を避けると、ダークタナトスの体から無数の手が出てきた。
「無数の手が出てきた・・・!?」
「まさか、アレで俺達を捕まえるつもりか・・・!」
ダークタナトスの無数の手が一斉に襲い掛かってきた。
「気を付けろ・・・この手に捕まってしまえば、どうなるのか分からんぞ・・・!」
ガイアは無数の手に剣を振るって応戦をした。
「分かっているわ・・・ステラは私の近くにいて・・・!」
「はい・・・!」
ステラは彼女の側に寄ると、ティアは守りながらも剣を振るい始めた。
「くそっ・・・どれだけ、攻撃をしてもすぐ復活をしてしまう・・・!」
どれだけ無数の手を斬っても、すぐに再生をしてはティア達に襲いかかってきていた。
「来ないで・・・!」
すると、イヴも無数の手に囲まれて捕まりそうになっていた。
『ホーネット・マシンガン!』
それを見たヘイゼルが蜂の群れに似せた魔力弾を撃ち込んでイヴを守った。
「イヴ、油断はするな!」
「ありがとうヘイゼル。」
お礼を言った後で、イヴは槍を構えて手を攻撃した。
「一人でいると、いずれは捕まってしまうぞ・・・私の側にいた方がいい・・・」
「分かったよ・・・アタシは貴方と一緒にいるからね・・・」
イヴはヘイゼルと一致団結をして無数の手と戦い始めた。
「くそっ・・・どんだけ、避けても来るぞ・・・!」
武器を失ったギルバートは襲いかかってくる無数の手を避け続けるしかなかった。
「なにをしても、倒す手段がないのに・・・戦いようがないぜ・・・!」
ギルバートは捕まらないようにしながら避けていると、無数の手が囲むように襲い掛かってきた。
「しまった・・・!」
その直後、アランは魔法を放ってギルバートに襲いかかる無数の手に命中した。
「ギル、もう大丈夫だよ。」
「スマねぇ・・・助かったぜ・・・」
「君の武器は無くなっているのに・・・それでも、戦おうとしていたらあの手に捕まってしまう事になるよ?」
「言われなくても分かっているよ・・・だけど、俺もティア達と一緒に戦いてぇんだよ・・・」
ギルバートは双剣を失ってしまってまでも、共に戦いたいと思っていた。
「でも・・・」
「大丈夫だ・・・俺はお前の魔法が当てられるように囮になっているから・・・それを狙って、魔法を撃ってくれよな?」
「君がそう言うなら・・・それじゃあ、ギルは捕まらないようにしながら、囮になっていて・・・僕が魔法を当ててみるからね・・・」
「あぁ・・・お前もあの手に捕まらないようにしてくれよ・・・」
ギルバートはアランが魔法を当てられるように、囮となって無数の手を翻弄させ始めた。
『・・・そろそろ、一人目が捕まるはずだ・・・』
ダークタナトスがそう言った時だった。
「きゃあ!」
無数にある手の一つがティアに気付かれないように背後に回ってステラを掴み上げた。
「しまった・・・ステラ!」
ティアは助け出そうとしたが、他の手によって阻まれてしまった。
『この人間は・・・ガイアと仲のいい人間だったな・・・』
ダークタナトスはステラを見て、なにかが思い付いた様子になった。
『よく、見ているがいい・・・これが、歯向かった人間の末路だ・・・』
ダークタナトスは口を開けると、ステラを掴んでいる手が目の前にまで持っていった。
「止めろ!ダークタナトス!」
ガイアは無数の手を避けながら、ダークタナトスの元へと飛んで行った。
『もう遅い・・・我がこの人間を喰らってしまう光景を黙って見ているがいい・・・』
そう言って、ダークタナトスはステラを口の中に放り投げて喰らってしまった。
「ステラ・・・!」
『まずは、一人目・・・次は誰を喰らおうか・・・』
無数の手を動かしながらダークタナトスはゆっくりとこちらに近付いてきた。
「ガイア、ステラが・・・!」
「分かっている・・・ステラを助けに行くぞ・・・」
ステラを救い出すと言うと、ティアがガイアの隣に移動した。
「・・・私も行くわ。」
「分かった・・・奴の体内はどうなっているか分からん・・・くれぐれも、抜かりがないように、ステラを救い出すぞ・・・」
ティアとガイアはダークタナトスに向かって飛び出した。
「ティア、なにをする気だ!」
「まさか・・・アイツ等・・・!」
ティアとガイアはステラを救い出そうとして、自らダークタナトスの体内へと飛び込んで行った。
「そんな・・・ティアとガイアが・・・!」
ギルバート達はティアとガイアも喰われたのだと思って絶望に満ちた。
『まさか、自ら喰われに来ようとは・・・残りは、ゆっくりと始末してやるとしよう・・・』
ダークタナトスは無数の手と共にギルバート達に攻撃を始めた。
138章 黒い空間からの脱出
「ここは・・・?」
ステラを助け出そうとした二人はダークタナトスの体内を見回してみた。
「周りが真っ暗で、なにもない空間のようね・・・」
「あぁ・・・ここが、ダークタナトスの体内で間違いはないだろう・・・」
辺りを見回してみても、真っ暗でなにもなくブラックホールのような空間だった。
「どうやら、奴の体内はこの空間に繋がっていたようだな・・・急いで、ステラを探し出さなければ・・・私達は、消滅をしてしまうのかも知れないぞ・・・」
「えぇ・・・そうなる前に、ステラを助け出しましょう・・・」
ティアとガイアはステラを探すべく、闇のように広がる黒い空間を進み始めた。
「・・・本当に、この空間は真っ暗なのね・・・」
なにもない空間の中を歩き続けたが、ただ暗い空間を歩き続けているだけだった。
「ずっと、暗い空間しか見えなくて・・・前に進んでいるのか分からないわ・・・」
「この空間は、高密度で強い重力が感じられる・・・私達でなければ、歩ける事がやっとのようだ・・・」
ティア達のいる空間は、高密度で強い重力が感じられていた。
「ステラ、無事だといいけれど・・・」
そう言うと、ティアはどうやって脱出するのか気になりガイアに訊ねてみた。
「・・・そう言えば、ここから抜け出すにはどうすればいいのかしら?」
空間から脱出する方法を聞こうとしたが、ガイアから出て来たのはこの言葉だった。
「・・・ステラを見つけ出してから、考えればいいだろう・・・」
「そうね・・・考えるのは、その後になると言う事ね・・・」
「急いだ方がいい・・・この空間に滞在をし続けていれば、いずれは我々は消滅してしまう事になるぞ・・・」
その言い方は、ガイアがなにかを隠しているかのように聞こえていた。
「いたぞ・・・ステラは、あそこに倒れているぞ・・・」
しばらく進んでいると、二人は倒れているステラを発見する事ができた。
「ステラ、」
二人は急いでステラの元に寄って安否の確認をした。
「大丈夫だ・・・気を失っているようで、問題はないようだ・・・」
ステラは、意識を失っているだけで命に別状はなかった。
「良かった・・・後はここから脱出をするだけね・・・」
「この空間の重力が重くなってきている・・・急がなければ、我々は死ぬ事になるだろう・・・」
ガイアがそう言ってくると、先程よりも重力が重くなってきている事が感じられた。
「本当ね・・・さっきよりも、重力が重くなっている気がするわ・・・」
「あぁ・・・急いで脱出をしなければ、我々は消滅してしまう事になってしまう・・・」
ガイア曰く、これ以上の長居をすると、消滅するのかもしれないのだった。
「これ以上は長くいてはいけないと言う事ね・・・でも、どうすれば脱出すればいいのかしら・・・?」
出口が何処にあるのか、聞こうとしたがガイアは言い辛そうにしつつも答えた。
「ここは、光のない暗闇の空間だ・・・初めから出口など、存在などしていなかったのだ・・・」
この空間はブラックホールのような空間で、どうやっても出られる術がないと言うのだった。
「それじゃあ、一度入れってしまえば、ここから出られないと言う事なの?」
「そう言う事だ・・・私達はここで消滅の時が来るのを待つしかないのだ・・・」
ブラックホールのようになにもない空間で、ティア達は消滅の時が訪れるまでただ待っているしかなかった。
「・・・せっかく、ステラを見つけだせたのに・・・私達が消滅をしてしまうまで、黙って待っているとでも言うの・・・?」
「そうだ・・・本当にスマなかった・・・」
ガイアが申し訳ない様子で謝罪したが、ティアはそれでも諦めようとはしなかった。
「諦めないで・・・なんとか、ここから脱出する方法を考えてみましょう・・・」
「それは、分かっている・・・だが、こうなってしまうとなれば・・・星竜族である私ですらもどうする事もできる術がないのだ・・・」
ガイアが諦めた様子で言ってくると、ティアは落ち着いた様子で言ってきた。
「ガイア・・・貴方は星竜族の世界が滅亡する時に、最後までユニバースを守ろうとしていたの?」
ティアがユニバースを守れていたのか問うと、ガイアは当時の事を思い出しながらも答えてきた。
「本当はあのお方をお守りになりたかった・・・他の星竜族達と世界に残りユニバース様をお守りしようとしたが・・・星竜族を絶滅してはいけないので脱出してほしいと命じられた私は滅びゆく世界から脱出する事を選んだが・・・故郷の世界は滅びユニバース様もお亡くなりになられた・・・無論、仲間の星竜族達も同様に巻き込まれている・・・」
ガイアは主君を見捨てる訳にはいかないと世界に残ろうとしたが、ユニバースは星竜族の血統を途絶えさせたくまいと、この世界から逃げるように命じられていた。
「あのお方は、世界と運命を共にする事を決めていたようで、私も運命を共にしようとしたが、ユニバース様は希望を託し生き延びて欲しいと告げられた私は、星竜王に与えられた命として受け入れ、世界から脱出をして生き延びる事ができたのだ・・・」
ユニバースは世界と運命を共にするよりも、生き続けてほしいとガイアに命じられた滅亡による絶滅は免れたと言うのだった。
「そうだったの・・・貴方だけが世界の滅亡による絶滅から免れる事ができたのはユニバースとそう言う事情があったからなのね・・・」
「・・・今、私がここで生きていられているのはユニバース様によって、救い出されてもらったようなものと同じ事なのだ・・・」
当時の事を思い出したガイアは同胞である星竜族達の事を思い始めた。
「それなのに、貴方はここで消滅するのを待ち続けるの・・・?」
話を聞いたティアは、諦めてしまうのかとガイアは無言になった。
「ユニバースが、貴方が希望と言っていたのなら、その希望を背負った星竜族よ・・・他の星竜族も貴方と同様に世界を護りたいという思いがあったのに・・・なにもしないまま、滅ぶ瞬間を待っていたとでも言うの・・・?」
そのように、ティアに言われたガイアは彼女の顔を見た。
「だって、そうじゃない・・・自然を愛し人類を護り続けていた種族なのに、そんな事を
言うなんて・・・星竜族なら、諦めるなんて事はするはずがないわ・・・」
ティアにそう言われて、ガイアは彼女の瞳を見つめた。
「分かっている・・・星竜族が人類を見殺しにするなどと・・・世界を見捨てる事と同じ事だ・・・しかし、星竜族でも救えない世界も存在しているのだ・・・」
これまで数多くの世界を護ってきた星竜族だったが、世界を救う事ができずに滅亡してしまった世界がいくつも存在していた。
「しかし・・・挫けていれば、ユニバース様に合わせる顔がないのは事実でもある・・・」
諦めるのを止めたガイアは抱えているステラを見つめだした。
「ガイア、ここから脱出してダークタナトスを倒しましょう・・・」
そのように言われたガイアは希望を与えられたかのように決意をした表情になった。
「分かった・・・まずは、ここから脱出せねばならん・・・」
「・・・ガイア。」
「ティガイアテラを頼む・・・」
そう言って、ガイアは気を失っているステラをティアに預けると星竜核晶石を取り出した。
「・・・星竜核晶石の力を使えば、この空間から脱出する事ができるはずだ・・・」
そう言いながら、ガイアは星竜核晶石を掲げると自身の魔力を込め始めた。
『星竜核晶石よ・・・星の光を放て・・・』
ガイアが詠唱を唱えると、星竜核晶石から地球の色をした光が放たれた。
「綺麗・・・ガイアと同じ色の光が星のように放たれているのね・・・」
その光景を見ていると、放たれている星の光からガイアの魔力が感じられた。
「ガイアの魔力が感じられる・・・これも、星竜核晶石に秘められた光が放っているからなのね・・・」
星竜核晶石とは、星の魔力の秘められた石で星竜族の魔力を星竜核晶石に込める事によって、地球のように神秘的な輝きに変化した魔力が光となって放たれていた。
「簡単に言えば、星竜核晶石とガイアの魔力が共鳴をした事によって、光となり輝きが放たれているのだ。」
ガイアがそう説明をすると、ティア達の前に光の穴が出現していた。
「この穴を潜れば、元の場所に戻れるはずだ・・・」
「行きましょう・・・皆の元へ・・・」
ティアは先へ進もうとしたが、ガイアは首を横に振ってから言ってきた。
「・・・悪いが、私を置いて行っては貰えないだろうか・・・」
「どうして?」
理由を問おうとすると、ガイアが苦しそうにしていた。
139章 託された竜の星
「これまでって・・・一体、どういう事なの・・・?」
どう言う意味なのかと訊ねると、ガイアがその理由について話しだした。
「・・・その穴は私の全魔力を使用して作られているが・・・ここは、なにもない漆黒が広がる空間だ・・・今ある魔力では、光の穴を作る事など不可能だったのだ・・・」
この空間は重力が重く感じる闇の様に染まっており、ガイアにある魔力だけでは光の穴が作れなかった。
「・・・だが、星竜核晶石の魔力でも穴を作るのに魔力が足りないと思った私は・・・己の命を魔力に変換する必要があったのだ・・・」
「それじゃあ・・・あの穴を作れたのは貴方の命を魔力に換えたからなの・・・?」
光の穴を作り出す事ができたのは星竜核晶石にガイアの命を魔力に換えて注ぎ込んだ事によって作り出された物だった。
「どうして!なにも、自分の命に換えてまでも穴を作り出さなくても・・・!」
なぜ、己の命を魔力に変換して穴を作り出したのかティアには悲しく感じられた。
「・・・決戦前夜に、自分の死を悟ったからだ・・・」
決戦の前日、ガイアは明日が命日になるのだと悟っていた。
「どうやら・・・私が、死ぬ運命は免れなかったようだな・・・」
ガイアがその場で両膝を着くと、ティアが回復魔法を唱えてきた。
「無駄だ・・・どんなに回復をしようとしても、私の命は消えかけているので戻らぬぞ・・・」
そうは言ったが、ティアは命が消えてしまうのを待とうとはせずに回復魔法を唱え続けた。
「・・・それでも、死にかけている人の命が失われようとしていても、亡くなってしまうのを黙って見ている訳にはいかないわ・・・!」
ティアはガイアを死なせたくないとばかりに、必死になって自分のありったけの魔力で回復魔法をかけ続けた。
「なにをしている・・・私の事よりも、直ちにここから脱出をしてくれ・・・」
脱出してくれと言っても、ティアは諦めようとはしなかった。
(お願い・・・回復して・・・!)
ティアは必死になりながらもガイアを回復させようとしても顔色が良くなる気配は無かった。
「止めろ・・・いつまでもここにいれば、この空間から出られなくなるぞ・・・」
ガイアにそう言われて、諦めたのかティアは回復魔法を唱えるのを止めた。
「・・・ガイア。」
必死になって魔法を唱え続けていたティアはガイアの死を悲しんで涙が零れ出ていた。
「私の命が消えようとしているのだ・・・どれだけ、回復魔法をかけようとも失おうとしている命は甦らせる事はできぬぞ・・・」
「・・・貴方が死んでしまったらステラが悲しむわ・・・」
ティアは抱き抱えられながらも気を失っているステラを見た。
「それに、ステラに言っていたはずよ・・・この世界に残ろうと思っていると・・・」
そう言われて、ガイアはラヴィレイヘヴンに向かっている最中にこの世界に残る事をステラに言っていた出来事を思い出した。
『・・・この世界に残ろうと思う。』
『えっ・・・?』
『・・・いつまでも、ステラと一緒にいられると言う訳だ・・・』
「ガイア・・・!これからも一緒に、仲良くしましょう・・・!」
『こちらこそ、よろしくたのむぞ・・・ステラ。』
『はい・・・私達はいつでも一緒です・・・!』
ガイアは一緒にいられる事になった事を嬉しそうにしていたステラの顔が浮かんできた。
「そうだ・・・全てが終われば、この世界に残ると言ったが・・・このような状況ではその願いは叶う事はなくなってしまったようだ・・・」
そう言いながら、ガイアはステラを見て不甲斐無さを感じた。
「それなら、私達と一緒に脱出をして・・・この事を知ったステラがどれだけ悲しむ事になってしまうか・・・貴方も知っているはずよ・・・?」
ガイアを置いて脱出した事を知れば、ステラは置き去りにしたと思ってしまうのかもしれなかった。
「ティア・・・この事はギルバート達にも伝えてほしい・・・ガイアは己の命に換えて二人を救おうとして死んだと・・・」
ガイアは分かっていながらも話を進めたが、ティアはステラの事が心配だった。
「皆に貴方の事を伝えたら、悲しんでしまうわ・・・それに、ダークタナトスと戦っているのに話している余裕がないわ・・・」
ここに残ったとステラに伝えれば、悲しませた事で不利になってしまう事も考えられた。
「そうなるであろうな・・・ステラが目を覚まして、私がいない事に気付けば訊ねられる事となる・・・だが、元の場所に戻らねばこの状態ではダークタナトスに殺されてしまうだけだろう・・・」
ガイアは元の場所に戻ったとしても、息を引き取ってしまう事になると悟っていた。
「もうじき、私は死ぬ運命だ・・・ティア、私をここに置いて行ってくれ・・・」
ガイアがそう言っている間にも、作りだした光の穴が徐々に小さくなっていた。
「・・・話している間にも、穴が小さくなってきている・・・急げ、私の作った穴は長くは持たぬ・・・ティアはステラと共にこの空間から脱出してくれ・・・」
空間の影響もあってか、光の穴は消滅し始めようとしていた。
「・・・私はこれまで絶滅から免れた星竜族として生き続けてきた・・・だからこそ、星竜族の死に立ち会ってくれた事を感謝する・・・それだけでも、私にとっては嬉しい限りだ・・・」
そう言って、ガイアは持っていた星竜核晶石をステラに握らせた。
「最後に・・・星竜族を愛する人間に私の星竜核晶石を託そう・・・」
「でも・・・星竜族が持つ石なのに、ステラに渡してしまっても良かったの?」
ティアはそう思ったが、ガイアは笑みを浮かべて落ち着いた口調で言ってきた。
「・・・私にとっては、星竜族を愛してくれていた人間だ・・・星竜族を愛し、私の事を思ってくれているのであれば、心の通じ合う人間として受け継がれるのもいいと考えたまでだ・・・」
ガイアは自分と心の通じ合う人間として、星竜核晶石をステラに託したのであった。
「・・・私はここまでのようだが、そなた達がこの世界に命と言う名の光を取り戻してくれる事を願っているぞ・・・」
世界に光を取り戻してくれる願いを叶えてくれるとガイアは信じていた。
「ガイア・・・星竜核晶石を貴方に託したのだと言っておくわ。」
ティアはこの戦いが終わった後で、ステラに全てを伝える事を決めた。
「・・・貴方のような素晴らしい星竜族がいた事は永遠に忘れないわ・・・」
「私も同じ意見だ・・・そなた等のような人間達に出会えた事を感謝する・・・」
ティアとガイアはお互いに出会えた事に感謝し合った。
「最後にこれだけは言っておこう・・・光翼の涙の光が八つ揃っていれば、真のエレノアの力が発動できるようになるだろう・・・」
「分かったわ・・・今まで、私達を助けてくれてありがとう・・・ガイア。」
最後の挨拶を終えると、光の穴が消滅しようとしている事に気が付いた。
「そろそろ、光の穴が消えてしまう・・・エレノアの愛した生命の光が溢れる世界で、平和に暮らしてくれる事を願っているぞ・・・」
話を終えたティアは消滅しかけている穴に入ろうとした。
「・・・ありがとう。」
最後のお礼を言ったティアはステラを抱えて穴の中へと入って行った。
(ステラであれば、星竜核晶石を大事に持っていてくれるだろう・・・きっと、私が側にいてくれているかのように思ってくれるに違いない・・・)
ステラなら星竜核晶石を大事にしてくれると思うと、ガイアの消滅が始まろうとしていた。
(・・・いよいよ、消滅が始まってしまったか・・・)
消滅しようとしている状況にも関わらずに、ガイアは微動ともせずに落ち着いていた。
(だが・・・消滅をしようとしても、私はなにも怖くはない・・・この世界の人間達のお陰で、色々と与えてくれたのだからな・・・)
ガイアはこの世界に転移してからの二十年間を振り返った。
「さらばだ・・・私を愛してくれた人間・・・ステラ・・・」
ガイアはそう呟いてから、目を瞑ると塵となって消滅した。
140章 締め付けられる苦しみ
「くそっ・・・やっぱ、ティアとガイアがいないと駄目か・・・!」
その頃、ギルバート達はダークタナトスの強大な強さを前に倒されていた。
『もう、その体では戦えないだろう・・・エレノアの末裔も星竜族もいないのだからな・・・』
二人がいなくなった間に、ダークタナトスは先にギルバート達を始末しようとしていた。
「いや・・・アイツ等がいなくても・・・俺達で戦い続けてやる・・・!」
ギルバートは武器も無く傷だらけの状態でも立ち向かおうとしていた。
『まぁいい・・・お前達もすぐ奴等の後を追わせてやろう・・・』
そう言って、ダークタナトスは全員始末しようと動き出した。
「来た・・・もう体力と魔力が無いのに・・・!」
ギルバート達は自分の体力と魔力が無くなっていた。
『貴様等は動けるが、魔力も尽きているのだろう?それならば、我が無残に殺してから闇の世界へと葬ってやるぞ。』
ダークタナトスがそう言ってから、ギルバート達を攻撃しようとした時だった。
『むっ・・・?』
すると、ダークタナトスになにかが感じられて立ち止まった。
『今・・・我の体に感じたが・・・?』
体に異変が感じられると、ダークタナトスに異変が起きた。
『これは、一体・・・うっ・・・!』
ダークタナトスは突如として苦しみ始めた。
「なんだ?ダークタナトスの奴、急に苦しみだしたぞ・・・?」
「どうなっているか分からないけど・・・皆、油断は怠らないで・・・」
ギルバート達は警戒しながらもダークタナトスの様子を疑っている時だった。
『があっ・・・!』
ダークタナトスの体内から、なにかが飛び出してギルバート達の前に羽ばたいていた。
「まさか・・・!」
「あぁ・・・どうやら、無事だったみたいだな・・・!」
ダークタナトスの体から飛び出してきたのは気を失ったステラを抱き抱えたティアだった。
「皆・・・戻ってきたわ・・・」
ティアはステラを抱えながらもギルバート達の前に降り立った。
「ステラを助けられたか・・・」
「良かった・・・生きていてくれて・・・!」
ギルバート達はティアとステラが無事だった事を喜んだが、ガイアだけが何処にもいない事が気付いた。
「そう言えば、ガイアはいないけど・・・?」
イヴが訊ねてくると、ティアは言い辛そうな表情になった。
「ティアと一緒に、ステラを助けに行ったよね・・・なんで、貴方達だけが出て来て・・・」
すると、イヴはステラが星竜核晶石を持っているのに気が付いた。
「それって、ガイアの・・・なんでステラが星竜核晶石を・・・?」
そう思っていると、ギルバートはそれを見てこう言ってきた。
「アイツ・・・お前達のために、犠牲になったみたいだな・・・」
「えぇ・・・ガイアは死を悟っていたみたいで私達を助けてくれたわ・・・」
ティアはその空間での出来事をギルバート達に伝えた。
「・・・死を受け入れて、あの空間に残ったと言うのか・・・」
「えぇ・・・それで、星竜核晶石をステラに託してくれたの・・・」
ティアは気を失っているステラをギルバート達に預けると、ダークタナトスの方向に向いて剣を抜き構えた。
「ステラをお願い・・・私でなければ、ダークタナトスを倒せる事ができないわ・・・」
正気を取り戻したダークタナトスは、ティアとステラが無事な様子を目にした。
『まさか、生きていたとは・・・しかし、ガイアだけは死んだようだな・・・』
ダークタナトスが、ガイアだけが死亡したと思ってそう言うと、ティアが静かに振り返って剣を構えだした。
「ダークタナトス・・・貴方だけは絶対に許さない・・・」
『許さないだと・・・絶滅で死に損ないの星竜族を死なせてなにが悪いのだ・・・?』
ダークタナトスは星竜族の絶滅になんとも思っていない様子で言ってきた。
「ガイアは私達を救ってくれたわ・・・生き延びていた星竜族を死なせ、ユニバースに仕えていた星竜族を貴方が絶滅させてしまった事には変わりはないわ・・・」
ティアはガイアを死に追いやった事に怒りを露わしながらもダークタナトスを睨み付けた。
「私がガイアの仇を討つ・・・そして、星竜族に代わって世界を護って見せるわ・・・」
自分達を救い出そうとしてくれたガイアを死なせたダークタナトスにティアは仇を討つと宣言をした。
『まさか、ガイアの仇を討とうとしているのか・・・両親の仇であるソルを最後まで殺す事のできなかったお前が我を討とうとなど・・・笑わせてくれる・・・』
ダークタナトスはティアの言っている事を聞いて高笑いをした。
『いいだろう・・・コイツ等はもう戦えんが・・・簡単に始末できるだろう・・・先に貴様を殺してやるとしよう・・・!』
そう言いながら、ダークタナトスはティアに向けて攻撃を仕掛けてきた。
「はあっ!」
攻撃を仕掛けようとすると、ティアは避けてから剣を振るった。
「ティア、いくらら攻撃をしても・・・」
「いや・・・アイツが攻撃をした所を見てみろよ・・・」
ティアの攻撃をした部分を見てみると、傷が回復せずに残っていた。
「ダークタナトスの傷が、回復していない・・・?」
『・・・どうやら、我に攻撃が通じるのはエレノアの血を引くお前だけのようだ・・・』
ダークタナトスは傷つけられた部分を見て、忌々しそうにしながらティアを睨み付けてきた。
『この我に再生ができぬほどの傷を入れるとは・・・それならば、やってみるがいい・・・』
ティアとダークタナトスはお互いに動き出して攻撃を繰り返した。
「ティアはダークタナトスと互角に戦っている・・・この調子なら、ダークタナトスを倒せるのかも知れないよ・・・」
唯一、ダークタナトスに傷を入れる事のできるティアなら勝てるとアランは思った。
「ううん・・・」
すると、戦闘を見ている最中にステラが意識を取り戻した。
「ステラが目を覚ましたよ。」
イヴはステラが無事に目を覚ました事を安心した。
「・・・一体、なにが起きたのでしょうか・・・?」
済テレはなにが起きたのか訊ねてくると、ヘイゼルが気まずそうにしながら話し始めた。
「なんと言えばいいのか・・・ステラ、ダークタナトスに捕まってしまったのは覚えているのだろうか・・・?」
ヘイゼルにそう問われたステラはダークタナトスに捕まって喰われた事を思い出した。
「・・・それで、ティアとガイアはお前を助けようとしてダークタナトスの体の中に入って行って・・・」
ギルバートはそう言いかけたが、二人を救おうとして死亡した事が言えなかった。
「ダークタナトスに食べられていた・・・そう言えば、私は捕まって・・・」
ステラは捕まって喰われるまでの出来事を思い出していると、自分がガイアの持っていた星竜核晶石が手にある事に気付いた。
「これは、ガイアの持っていた・・・どうして、私の手の中にあるのでしょうか・・・?」
自分がなぜ、星竜核晶石を持っているのか気になってガイアの事を訊ねてきた。
「・・・ガイアは何処にいるのですか?」
ガイアの事を聞かれたが、ギルバート達はなにも話そうとはしなかった。
「どうして・・・皆、黙っているのですか・・・?」
ステラが不安そうな表情を見て、誰も言わない中でイヴが本当の事を伝え始めた。
「・・・ステラ、よく聞いて・・・ガイアはもうこの世にいないの・・・」
イヴの一言を聞いて、ステラは信じられなさそうな表情になった。
「どうして・・・そんな事を言うのですか・・・?」
ステラはガイアが死亡した事を聞いて驚いているようだった。
「本当・・・だって、ティアもそう言っていたよ・・・」
そう言ったが、ステラはその言葉を信じようとはしなかった。
「嘘です・・・ガイアが死んでしまったなんて信じられません・・・!」
ステラはガイアの死を信じようとせず、星竜核晶石を握り締めた。
「嘘じゃないよ・・・だって、君の手に持っている星竜核晶石が証拠だよ・・・」
アランがステラの持つ星竜核晶石を見てそう言った。
「そうだとしても・・・私を助けようとしてガイアは・・・!」
スララは自分のせいで死んでしまったのだと思い悲しみだして泣き始めた。
「・・・悲しいのは俺達でも一緒だ・・・ユニバースに仕えていた星竜族がお前を助け出すために、命を懸けてくれたのが分からないのかよ・・・?」
悲しみを実感しながらもギルバートが言ってくると、星竜核晶石にステラの零した涙が滴っている事に気付いた。
「君の言う通りだよ・・・僕達だけじゃなくティアも悲しみを感じながらも戦ってくれていると思うよ・・・」
アランにそう言われて、ステラは顔を上げてティアを見た。
「ティア・・・!」
ステラはその場で回復魔法を唱えティアの傷を癒した。
「ありがとう・・・ステラ。」
「頑張ってください・・・ガイアのためにも負けないでください・・・」
そう言うと、ティアは笑みを浮かべてから攻撃を仕掛け続けた。
(ガイア・・・)
ステラは星竜核晶石に願うようにティアの無事を祈り出した。
141章 光の失われた光翼の涙
その後もティアは一人でダークタナトスとの戦いを繰り広げていた。
「はあっ・・・はあっ・・・!」
しかし、ティアは徐々に押されてしまっているようだった。
「きゃあ!」
その直後、ダークタナトスの攻撃でティアは床に叩き付けられてしまった。
「・・・どう見ても、ティアの方が押されて来ているようだ・・・」
「そんな・・・互角に、戦っていたはずなのにどうして・・・!?」
ティアが押されている状況を見てギルバート達は動揺した。
「・・・多分、光翼の涙の力が足りてないからだ・・・」
ギルバートがティアの状況を見てそう言ってきた。
「足りてないって・・・もう、八つ全てはこっちにあるのに・・・?」
「違うぞ・・・俺が言いたのは光翼の涙の光が一つだけ足りてないと意味だよ・・・」
「そなたのそう思っていたのか・・・やはり、全ての光が揃っていなければ、ダークタナトスを倒す事ができるかどうかは分からぬぞ・・・」
ギルバートとヘイゼルが全ての光が揃っていなければ勝てる見込みが無いと言ってきた。
「二人共、どういう事なの?ティアは、八つ目の光翼の涙を手に入れたはずでしょ?」
「勿論だ・・・光翼の涙は全部集まっているけれどな・・・その光が揃ってなくちゃなんの意味もねぇんだよ・・・」
そう言うと、ステラ達は光翼の涙を手に入れたのに、ティアの中へと吸収されていなかった事を思い出した。
「そう言えば・・・さっきは、光っていなかったような・・・」
「・・・どうやら、最後に手に入れた光翼の涙は、ダークタナトスの力によって光が失われているのかも知れん・・・」
八つ目の光翼の涙はダークタナトスの闇の影響によって光が失われていたのだった。
「せっかく、揃えられたのに・・・なんの意味がなかったと言うのかよ・・・!」
「・・・闇を振り払おうとしても、どうすればいいのか分からぬ・・・光を揃える事ができなければ、ダークタナトスを倒せないのかも知れん・・・」
どうすればいいのかと思っても、ギルバート達はただ見ているしかなかった。
『無様だな・・・光翼の涙を全て持っているはずのお前が、押されて来ているとは・・・期待外れもいい所だぞ・・・』
戦闘が長引いて行く度に、ティアは完全に押されていっていた。
「どうして・・・全ての光翼の涙は揃えているのに・・・!」
『・・・どうやら、一つだけが光が失われているので、本来の力が出んのだ・・・八つある光翼の涙が揃っていても光が一つでも失われていれば意味がないのだ・・・』
ダークタナトスに言われたティアはこれまでの力と同じだと感じられた。
「・・・それで、エレノアの力を使っていても変化が見られなかったのね・・・!」
ティアがそう思っていると、ダークタナトスの両手が掴みかかって来た。
「しまった・・・!」
『さて・・・貴様をジックリと痛ぶってから止めを刺すとしよう・・・』
そう言いながら、ダークタナトスは両手に力を込めてティアを握り潰そうとしてきた。
「このままだと、ティアが握り潰されてしまう・・・!」
「くそっ・・・俺達じゃ、どうする事もできないぞ・・・!」
「これじゃあ、ティアが握り潰されてしまうよ・・・!」
「でも、アタシ達が行っても・・・!」
ギルバート達はどうすればいいのか思っている中で、ステラは星竜核晶石を手にして祈りだした。
(ガイア・・・ティアを助けてください・・・!)
星竜核晶石に向けて、ステラは必死に祈り続けた。
『さて・・・随分と歯向かってくれたようだな・・・このまま、じっくりと握り潰してやろう・・・』
そう言って、ダークタナトスはゆっくりと手に力を込めてティアを握り出した。
「がっ・・・あっ・・・!」
『聞こえてくるだろう・・・お前の骨が砕け肉を締め付けられる音が・・・?』
ダークタナトスの握力が強くなっていく事で、ティアは徐々に締め付けられていった。
『このまま握り潰せば死ぬだろう・・・光翼の涙も全て我の手に戻ってくると言う事だ・・・まぁ、貴様の中にある光翼の涙も潰れてくれればそれでいいが・・・』
その口振りは初めから光翼の涙と処分しようとしていたかのようだった。
『・・・このまま、握り潰せば光翼の涙と共にこの世から消し去る事ができるのだからな・・・』
そう言って、ダークタナトスは握る力を思いっきり込めた。
「うぁ・・・!」
『そろそろ、お前を握り潰すとしようか・・・光栄に思うがいい・・・我の手で始末される事を・・・エレノアの末裔の最後を・・・!』
そう言って、ダークタナトスは握る力を更に込めた。
(・・・私が死んでしまえば、この世界に闇に包まれてしまうわ・・・!)
握り潰されようとしている中で、ティアは諦めようとはしていなかった。
(いいえ・・・世界を闇から開放をしなければ・・・!)
ティアは抜け出そうと藻掻いてみたが、その手から抜け出す事ができなかった。
(駄目・・・ダークタナトスの握る力が強すぎて抜け出せないわ・・・!)
「もうじき、虫の息だな・・・エレノアの血を引く末裔よ・・・!」
ティアを仕留めようとして、ダークタナトスは握る力を限界まで込めた。
(本当に・・・私は死んでしまうの・・・?)
ティアは自分の死が近いと悟り始めていた。
(このまま、私が殺されてしまったら・・・ギル達だけじゃなく、この世界の人達も全員殺されてしまうわ・・・)
薄れゆく意識の中、ティアは掠れた目でギルバート達を見た。
『これで、終わりだ・・・エレノアの末裔よ!』
ダークタナトスは一気にティアを握り潰そうとした時だった。
『があっ・・・!』
突如、何者かの攻撃によってダークタナトスはティアを放した。
「一体、なにが起きたの・・・?」
解放されたティアはなんとか地に降り立つ事ができた。
「大丈夫か?」
「えぇ・・・もしかして、貴方が攻撃をしたの・・・?」
ティアは目の前に現れた人物に言うと、その人物は彼女の方へと振り返った。
「あぁ・・・先程の攻撃も俺がやったからだ・・・」
その人物の正体はティアにとって、両親の仇の相手であったソルだった。
142章 反逆した宿敵
「あの男・・・ダークタナトスに攻撃をした・・・?」
その光景を見ていたギルバート達も突如現れたソルの行動を見て驚いていた。
「どうやら、見間違いじゃないぞ・・・」
「それに、ティアも助けてくれたみたいだし・・・一体、なんのつもりで現れたの・・・?」
ギルバート達は見間違いではなく本当の事だと確信した。
「ソル、もしかして助けに来てくれたの?」
仲間達が見ている中で、ティアがなぜ自分を助けたのかと問うてきた。
「・・・なぜ、そのような事を聞く?」
ソルがそう言うと、彼女を助けた理由を言ってきた。
「お前達が死んでしまえば、この世界は永遠の闇に支配されてしまうと考えたからだ・・・」
「それが、貴方がここへ来た理由なの?」
「あぁ・・・その様子だと、まだ動けるようだな・・・」
「なんとか動けるわ・・・それよりも、どうして貴方がダークタナトスに攻撃を・・・?」
側近であるはずのソルが主君であるダークタナトスに攻撃をしたのかが疑問に思った。
「・・・俺はデスドゥンケルハイト軍にはいたくはなかった・・・だが、どうしても抜け出す訳にはいかない事情があったからだ・・・」
ソルが両手剣を構えながら背を向けずにそう言ってきた。
「・・・貴方にどのような事情があって・・・?」
「話している暇はない・・・来るぞ・・・」
そう言うと、ダークタナトスは怒りを露わにしていた。
『ソル・・・貴様まで、我を裏切るのか・・・!』
ダークタナトスは先程の攻撃は彼の仕業だと知って、怒りの矛先をソルに向けていた。
「誰が、お前に忠誠を誓ったと言った?」
ソルは反逆者のような眼差しでダークタナトスを睨み付けた。
『なんだと・・・貴様、誰に言っているのか分かっているのか・・・!』
「あぁ・・・俺を疑わなかったお前が怒りだすのも当然だな・・・」
ソルが今までの忠誠がなかったかのように答えてきた。
『そうか・・・初めから、我に忠誠など誓っていなかったのだな・・・!』
「そう言う事だ・・・俺はデスドゥンケルハイト軍としての誇りやお前への忠誠など、一度も誓った覚えがあるはずもないだろう・・・」
当初から、微塵もそのような事がなかったとソルは宣言をした。
「・・・どうやら、反旗を翻したみたいだね・・・」
「やはり、ソルもデスドゥンケルハイト軍を裏切ろうとしていたのか・・・」
ギルバート達もソルとダークタナトスの会話が聞こえていた。
「ダークタナトス、もうお前の命令に従うつもりはない・・・これ以上、この世界が闇に覆われてしまうのを見たくはないからな・・・」
ソルが両手剣を向けながら言ってくると、ダークタナトスは怒りの籠った声で言ってきた。
『・・・まさか、お前までもが裏切るとは・・・これも、ガイアが死んでしまった事で裏切ろうとしたからか・・・?』
そう言われたソルは僅かに反応した表情になった。
『どうやら、図星のようだな・・・ガイアはそこにいる少女を助けようとして、自ら我の体内に入って死んだのだ・・・』
ダークタナトスがそう言うと、ティアは誤解を解くようにソルに言った。
「ソル・・・ガイアを殺した訳ではないわ・・・私とステラを助けようとしてくれたからなの・・・」
「分かっている・・・ガイアが人間達を見殺しにするような星竜族ではない事は知っているぞ・・・」
そう言いながら、ソルはステラの持つ星竜核晶石を見た。
(・・・ガイアは星竜核晶石を少女に託しているようだ・・・話に聞いていたが、それ程までに、星竜族を愛していた人間だったと言えるな・・・)
ソルはガイアからステラとの関係について聞かされているようだった。
(・・・あの少女であれば、ガイアも安心して星竜核晶石を託せる事ができたと
思っていたようだ・・・)
そう思ってから、ソルは両手剣を構えてからティアに声を掛けた。
「ティア・・・今の内に、傷の回復をした方がいい・・・」
今すぐに回復をした方がいいと思ったソルにティアはその様子を見てこう思っていた。
(・・・ソル、貴方もガイアの仇討ちをしようとしているのね・・・)
ティアはガイアの仇を討とうとしていると思いながらも回復をしようと仲間達の元へと向かった。
「ステラ、回復魔法をお願い。」
「はい・・・」
ステラは言われた通りに回復魔法をティアにかけ始めた。
(あれだけの傷では時間がかかる・・・その間に俺が時間を稼がねば・・・)
ソルはティアが回復するまで時間を稼ごうとダークタナトスに戦いを挑んだ。
『貴様まで歯向かって来るとは・・・まぁいい、どのみちエレノアの末裔共々、皆殺しにすればいいだけの事だからな・・・!』
ダークタナトスは裏切り者のソルまでも始末しようと襲いかかってきた。
「・・・今すぐ、回復しますので待ってください・・・」
それと同時に、ステラは全魔力を込め回復魔法の治癒力を上昇させながらティアの治療を行った。
「・・・急がないと、ソルが殺されてしまうのかもしれないわ・・・」
ティアの発言を耳にしたイヴがまさかと思って訊ねてみた。
「聞いてもいいかな・・・?まさか、ティアはソルと一緒に戦う気なの・・・?」
「えぇ・・・代わりに戦ってくれていたとしても、殺されてしまう事に変わりはないわ・・・」
そう答えてくると、イヴは疑うように言ってきた。
「本気なの・・・仇の相手と協力して、ダークタナトスを倒すなんて・・・」
イヴが心配そうに言ったが、ティアはソルの事を信じていた。
「・・・本気よ。」
ティアがそう言うと、ダークタナトスと戦っているソルを見て言ってきた。
「ソルを見て・・・大事な人の仇を討つために戦っていて・・・今なら、あの人の事を信じられるの・・・」
ティアにそう言われて、ギルバート達はソルを見てガイアだけでなく、この世界のために戦ってくれているのだと感じられてきた。
「そう・・・ソルは今この世界を護ろうと戦っているの・・・私も加戦をして一緒に戦おうと思ったの・・・」
ダークタナトスと戦っているソルは憎む相手を殺すためではなく、死んでしまったガイアの無念を晴らすために戦っているように見えた。
「回復が終わりました・・・ティア、本当に大丈夫でしょうか?」
ステラが心配そうにすると、安心した様子で言ってきた。
「安心して・・・私は、大丈夫よ・・・」
そう言ってから、ティアはソルの加勢へと向かった。
「はあっ!」
ソルは両手剣と魔法だけでダークタナトスに対抗をし続けていた。
『流石はヘリオドラコ家出身の逸材・・・いや、ガイアの教育もあったからか・・・未だに殺されずにいるようだ・・・』
本気で攻撃をしていたダークタナトスはその様子を見てそう言ってきた。
「あぁ・・・俺もガイアと共に鍛えられていたからだ・・・」
そう言ってから、ソルは再度攻撃を仕掛けた。
「ガイアには色々と教えられてきたが・・・あのような星竜族が死んでしまったとなると・・・これ以上、デスドゥンケルハイト軍にいる訳にはいかないのでな・・・」
ソルがそう答えてから、ダークタナトスはこのように言ってきた。
『・・・つまり、ガイアの事が放ってはおけずにデスドゥンケルハイト軍に残ったのだな・・・』
「あぁ・・・過去に逃がしてやると言われても俺はその誘いを断り、デスドゥンケルハイト軍に残り続けていたからな・・・」
どう言う訳か、ガイアの事が放ってはおけなかったソルはデスドゥンケルハイト軍から脱走する事を拒んでいた。
『ほぅ・・・星竜族ではないお前がガイアのためだったとは・・・お笑いだな・・・』
ダークタナトスがそう言うと、ソルが炎属性の魔力で作られた玉を放ってきた。
「笑うな・・・俺にとって、ガイアは師弟のような関係であり、星竜族の誇りを教えられて来た・・・それを踏みにじるように笑う事は星竜族の王を愚弄している事と同じだぞ・・・」
ソルからはダークタナトスに対する怒りが感じられていた。
『いいだろう・・・そこまで言うなら、貴様から殺してやろう!』
ダークタナトスは容赦なく、ソルに攻撃を仕掛けようとしてきた。
「はあっ!」
そこへ、ティアが駆けつけて来た事でソルは攻撃を受けずに済んだ。
「ティア・・・ようやく、傷が回復したのか・・・」
「えぇ・・・ソルも無事のようね・・・」
「ダークタナトスは手強い・・・二人掛かりでも勝てるかどうかだが・・・」
二人がいてもダークタナトスに勝てるかどうか分からなかった。
「ソル、力を合わせて戦いましょう・・・」
「あぁ・・・俺もエレノアの末裔と共闘する事になるとは思ってもいなかったぞ・・・」
ティアとソルはお互いに武器を構えるとダークタナトスとの共闘を開始した。
143章 闇に包まれた光翼の涙
「はあっ・・・はあっ・・・!」
しかし、ソルと共闘していてもダークタナトスに苦戦を強いられていた。
「なんて、強さだ・・・やはり、俺達がいても敵わないのか・・・!」
ソルが息を切らしながらティアにそう言った。
『裏切り者と手を組んでも我は倒せんぞ・・・人間とは所詮このような生物なのだ・・・』
ダークタナトスはそのまま攻撃をすると、ティアとソルは攻撃を受けてしまった。
「マズイな・・・このまま戦い続けていれば、アイツ等がやられちまうぞ・・・」
ティアとソルは長引く戦闘で疲弊しきっており、いつ隙を狙われてやられてしまうか時間の問題だった。
「くそっ・・・俺達が行っても、なんの役にも立たない・・・一体、どうしたら・・・?」
ギルバート達はなにもできないまま見ているだけしかなかった。
「不味いな・・・このままでは、俺達は殺されてしまうぞ・・・」
「・・・光翼の涙はこちらにあるのに・・・一体どうすればいいの・・・?」
極限状態に陥っているとティアにソルは光翼の涙について訊ねてきた。
「ティア・・・最後の光翼の涙は手に入れているのか・・・?」
「えぇ・・・ちゃんと、持っているわ・・・けれど・・・」
そう言いながら、ティアは八つ目の光翼の涙をソルに見せた。
「・・・これは、強大な闇に浸食されて、光が失われてしまっているのか・・・これでは、エレノアの真の力の発動をさせなかった訳だな・・・」
ソルは闇に染められた光翼の涙から光が微塵も感じられない事を知った。
「どうすればいいの?八つある光翼の涙の光を揃えていなければ、エレノアの真の力が発動できないと思うのだけれど・・・」
「・・・光翼の涙の闇を振り払うしか方法がない・・・光が戻るか、分からないが・・・これを使ってみるしかないようだ・・・」
そう言って、ソルは鎧の中から星竜核晶石を取り出した。
「・・・俺の星竜核晶石を使えば、光を蘇らせられるのかも知れないぞ・・・」
星竜核晶石の光で光翼の涙を触れさせてみたが、闇は浄化されずに光が戻らなかった。
『無駄だ・・・こんな事もあろうかと・・・我の闇で染めているので、光翼の涙は二度と光が蘇る事はない・・・』
そう言いながら、ダークタナトスは攻撃を仕掛けてきた。
「やはり、光翼の涙が完全でなければ勝つ事ができないのか・・・」
「諦めないで・・・光を蘇らせる方法が、きっとあるわ・・・」
ティアとソルはダークタナトスの攻撃を避けながら反撃を仕掛けては何度も星竜核晶石を使い続けてみたが闇が浄化される事はなかった。
『何度も言ったはずだ・・・光は二度と蘇らせる事はできんと・・・!』
「いいえ・・・絶対に諦めないわ・・・」
諦めたくはないティアとソルは攻撃を仕掛けては魔法を唱え続けた。
「光翼の涙はエレノアが作り出したのであれば・・・必ず、光を蘇らせる方法があるはずだ・・・!」
ティアとソルの攻撃を受けながら、ダークタナトスは光線を放ってくると二人は避けた。
『貴様らを抹消してやろう・・・我の闇で・・・!』
ダークタナトスは息の根を止めようと、闇の力と魔力を更に強めていった。
「・・・俺達を確実に闇に葬ろうとしている・・・一体、どうすれば・・・」
すると、ソルがティアの前に出て自身の炎の魔力を強めた。
「・・・俺が犠牲になってでも奴を倒す・・・お前はその間に光翼の涙の浄化を頼む・・・」
ソルは犠牲になろうとしても時間を稼ぐと言ってきた。
「そんな・・・それじゃあ、貴方が殺されてしまうわ・・・」
「分かっている・・・俺はお前の両親を殺してしまった人間だ・・・それぐらいの罪滅ぼしをしても問題はないだろう・・・」
そう言って、ソルは犠牲になる覚悟で時間を稼ごうとして囮になろうとしていた。
「・・・これ以上、命を捨てるような事は止めて・・・」
ティアはガイアのように犠牲になってほしくはないようだった。
「お前がそこまで言うとは・・・俺が戦っている間に、ガイアの星竜核晶石と一緒に使用してみるのはどうだ?」
「分かったわ・・・だけど、これだけは約束をして・・・命を懸けてまでも、戦う事はしないで・・・」
「いいだろう。ガイアの星竜核晶石も使えば、闇を浄化できるか試してくれ・・・」
ソルは星竜核晶石をティアに預けると、それまでは一人でダークタナトスと戦い始めた。
「ステラ、ガイアの星竜核晶石を貸して・・・」
早速、ステラからガイアの星竜核晶石を借りて、ソルの星竜核晶石も使って光翼の涙を侵食する闇を浄化しようとした。
「・・・二つの星竜核晶石を使っても、闇を浄化させる事ができないなんて・・・」
しかし、ソルとガイアの星竜核晶石を使ったとしても、結果は同じで光翼の涙に光が蘇らせる事ができなかった。
「があっ・・・!」
その時、ソルがダークタナトスの攻撃が直撃した。
「ぐっ・・・!」
攻撃が当たったソルは地面に叩き落された。
「終わりだな・・・ソル・ヘリオドラコ。」
ダークタナトスは止めを刺されそうになったがソルは痛みを堪えながらも攻撃を避けた。
「・・・ガイアの星竜核晶石があっても、闇を振り払う事ができないのか・・・!」
なんとか避ける事ができたソルは、ティアを見て結果が同じだったと悟った。
『・・・こうなったら、奴等から始末してやるとしよう・・・』
ダークタナトスはそう言って、ギルバート達に襲い掛かろうとしてきた。
「皆・・・!」
『覚悟するがいい!』
その直後、ティアが急上昇をしてダークタナトスの攻撃を防いだ。
「ティ・・・ティア・・・!」
攻撃を受け止めた直後、ティアはエレノアの力が解除され仲間達の前で倒れた。
「逃げて・・・!」
それでも、ティアは立ち上がろうとしながらもギルバート達に言ってきた。
「こんなに、ボロボロになっているのに・・・そんな事ができるかよ・・・!」
しかし、ギルバート達は逃げようとせずにティアの身を案じていた。
「俺達がこんな所で逃げる訳にはいかねぇよ・・・!」
ギルバートがそう言うと、アランとヘイゼルも言ってきた。
「そうだよ・・・僕達はずっと旅をしてきた仲間なのに放ってはおけないよ・・・」
「ここまで来たのであれば、逃げる訳にもいく訳にはいかない・・・」
そして、イヴとステラもティアに言ってきた。
「アタシ達は一緒でしょ?だったら、アタシも一緒にいてあげるから・・・!」
「・・・ティア、この世界に光を取り戻して、エレノアやガイアが望んでいた世界を私達で創りましょう・・・!」
仲間達の励ましにより、ティアの目から涙が零れ始めた。
「皆・・・ありがとう・・・」
涙がそのまま雫となり、光翼の涙に零れ落ちた。
「見てください・・・光翼の涙から僅かな光を感じます・・・」
ステラにそう言われて、僅かに光翼の涙から光が感じられた。
『・・・この光は!?』
光翼の涙に涙が落ちた事によって、光翼の涙を包んでいた闇が薄まっていた。
『馬鹿な・・・我の闇に包まれているはずだぞ・・・!』
ダークタナトスは光翼の涙の光を感じ取った事で驚いていた。
「・・・もしかしたら、ティアの涙が光翼の涙に触れたからじゃないの?」
「私の涙が・・・闇の力を弱めた・・・これなら、闇を振り払えるのかも知れないわ・・・」
そう思ったティアは自陣の瞳から出ている涙も使って、ソルとガイアの星竜核晶石を光翼の涙に当ててみた。
「お願い・・・光翼の涙を包み込んでいる闇を振り払って・・・!」
ティアは闇を払うように願いながらも星竜核晶石の力を使いながらも自身の涙を光翼の涙に落とそうとした。
『真の力を発動させて堪るものか!』
完全に振り払われる事を恐れたダークタナトスが勢いよく迫ろうとすると、ソルがティアの元へ行かせまいと阻止しようとして、両手剣で攻撃をして足止めをしてきた。
「これで、お前の闇に染まっていた光翼の涙は復活したようだな・・・」
ソルがそう言うと、最後の光翼の涙にティアの落とした涙に触れると闇が浄化されて光翼の涙の光が蘇った。
『しまった・・・!』
ダークタナトスは恐れていたかのような表情になると、最後の光翼の涙がティアに吸収をされると神秘的な光が彼女を包み込んだ。
「これは・・・今まで、見た事のない光がティアを包んでいるのか・・・!」
これまでとは違った神秘的な光がティアを優しく包み込んでいた。
「・・・光翼の涙を全て揃えたから、エレノアの真の力が得ようとしているみたいだね・・・」
そのまま、ティアを見ていると神秘的な光が放たれた。
「・・・これが、エレノアの力の真の姿・・・」
ティアの鎧が変わっただけでなく、天使の羽が神々しくなり金色に光っていた。
「力と魔力もさっきまでとは違っているように感じるわ・・・」
ティアは自分の姿を見て真の力が解放されたのだと思えた。
「まるでエレノアが天使になったみたいに見えます・・・」
ステラはティアがエレノアのような天使を彷彿させるような姿になっている事を実感した。
「確かに・・・この鎧と天使の羽は絵本で見たエレノアに似ているわ・・・」
「そうだ。光翼の涙を全部そろえた事でお前はエレノアのようになっているぞ。」
その姿は絵本で見たエレノアの姿でティアはその人物になっている事が感じられた。
『そんな馬鹿な・・・我の闇が浄化されるとは・・・!』
まさかの事態に、ダークタナトスはティアの姿を見て驚いる様子だった。
「・・・あの姿こそがエレノアの真の力か・・・エレノアがこの世に舞い戻ってきたかのように見えるぞ・・・」
ソルもティアの姿を見て、エレノアが蘇ったかのように思っていた。
『だが・・・我を倒せると思っていたら大間違いだぞ・・・!』
ダークタナトスがそう言うと、ティアがこちらを向いてきた。
「決着を着けましょう・・・ダークタナトス・・・」
ティアはゆっくりとダークタナトスの方へと歩きだした。
最終章 この世界に命の光を
「・・・どうやら、形勢が逆転したようだな・・・」
ソルはエレノアの真の力が発動されたのを見てダークタナトスにそう言ってきた。
『ふざけるな・・・この我が負けるはずがないのだ・・・!』
ダークタナトスは焦りながらもティアに攻撃を仕掛けた。
「・・・無駄よ。」
その攻撃を避けようとせずに、ティアはその場で剣を振るった。
『なっ・・・なんだと・・・』
ティアの振るった斬撃によって、ダークタナトスの片腕が切断された。
「すごい・・・剣を振るっただけで、ダークタナトスの片腕を斬るなんて・・・」
(ガイアの言っていた通りだ・・・あれこそが、エレノアの真の力なのか・・・)
ダークタナトスは切断された腕の痛みに悶えながらもティアを睨み付けてきた。
『くそっ・・・これ程までに強力な力だったとは・・・!』
それでもダークタナトスは、もう片方の腕を使って攻撃を仕掛けてきた。
「・・・まだ、戦おうとするつもり・・・?」
悲し気な表情になったティアは先程の斬撃を振るってもう片方の腕を斬り落とした。
『がぁ・・・!』
両腕を斬られたダークタナトスはティアを見て警戒をしだした。
「分かったでしょ?これが、エレノアの全てが開放された力よ・・・」
ティアはそう言いながらも静かに剣を構えた。
『ふっ・・・ふざけるな・・・!』
ダークタナトスは焦りながらも口から巨大な闇の光線を放ってきた。
「ヤバいぞ・・・喰らったら一溜りもなさそうな光線を吐いて来やがった・・・!」
ダークタナトスの光線が放ってきても、ティアは微動だとはしていなかった。
『避けようともせずに態々喰らおうとするとは・・・!』
微動ともしないティアを見て、ダークタナトスが焦りながらも笑いだした。
「いや・・・どうやら、お前の望んでいた事にはなる訳がないだろうな・・・」
『なにを言っている・・・?』
ソルの一言が気になると、ティアが剣を振ろうとしている事を目にした。
「・・・」
そのまま、ティアが剣を振るうと、ダークタナトスの放った光線を一刀両断した。
「・・・たった一振りで、光線を切るなんて・・・これが、エレノアの本当の力だったと言う事だね・・・ガイアもその力を知っていたのかな・・・?」
アランがそう思うと、ステラはその事について言ってきた。
「はい・・・ガイアもエレノアと出会っていたので、その力について知っていたはずです・・・」
ステラはガイアもその力について知っていたのだと悟っていた。
『なぜだ・・・このような力があったなどと聞いてはいないぞ・・・!』
エレノアの力がどれ程の力なのかとダークタナトスは身をもって知らされていた。
「・・・もう、戦うのは止めましょう・・・貴方だって、エレノアの力について分かっているはずよ・・・」
ティアは上空で羽ばたきながらもこれ以上の戦闘をしても意味はないと言ってきた。
『それはできぬ・・・貴様を殺さなければ止める事ができんのだ・・・!』
「・・・これ以上、戦ってしまうと貴方は死んでしまう事になってしまうわ・・・」
『うるさい!我ではなく、貴様が死ねば終わる事だ・・・!』
ティアはこれ以上の戦闘を止めさせようと言っても、ダークタナトスはティアを殺さない限りは止めようとはしてこなかった。
『・・・こうなれば、貴様を喰らってやる・・・!』
自棄を起こしたのかダークタナトスはティアを喰らおうとして無数の手が襲いかかってきた。
「また、ティアが食べられちゃう・・・!」
「いや・・・ティアは喰われる気はないみたいだぞ・・・」
無数の手が襲いかかろうとすると、ティアがその様子を見て言ってきた。
「・・・どうして、それほどまでにして戦おうとするの・・・?」
ティアは悲しげな表情をしながらも、襲いかかる無数の手を斬り落とした。
『我はエレノアの血を根絶やしにするために生み出された存在だ・・・貴様さえ、いなくなればこの世界にある光など消し去る事ができるのだからな・・・!』
悲しげにしているティアの問いに、ダークタナトスは命を踏みにじるような返答をしてきた。
「そうなの・・・それが、貴方の答えなのね・・・」
そう言って、ティアは上空で剣を掲げ出した。
『我は闇の存在だ・・・生命の光など、この我が喰らってやるわ・・・!』
再度、新たな無数の手を生やしてから襲いかかってきたが、ダークタナトスはその手を見て背筋が凍り付いた。
『馬鹿な・・・我の手が消えていく・・・!?』
ティアから神々しい光が放たれていて、その光に触れた手が消滅していった。
「ダークタナトス・・・世界中にいる人間だけでなく、モンスターや動物達に植物にある命の光が集まろうとしている事を・・・」
エレノアの剣からは世界中に存在する生命の光が集まってきており、その輝きが生命を作り出しているかのように増していた。
「この輝きは生きている証でもある生命の光からできていて、生命を持つ色々な人間やモンスター・・・草木や動物達から感じられてくるの・・・」
ティアは世界中の人間達やモンスターなどの生物や自然だけでなく植物達の命の輝く生命の光を感じられていた。
『くっ・・・そんなくだらん物など、貴様を始末してから闇に飲み込ませればいいだけの事だ・・・!』
そう言って、喰らおうとするのを止めティアに襲いかかろうとした時だった。
『・・・命の光達・・・私の元に集まって・・・』
ティアがエレノアの剣を掲げると、世界中に存在する生命の光が集まってきた。
『なんなのだ?この光は・・・なぜ、貴様は泣いているのだ・・・!?』
命の光が吸収されていくのと同時に、ティアの目から大量の涙を流していた。
「ダークタナトス、貴方にだって感じられているはずよ・・・生命の光が集まって輝きを増している事に・・・」
世界中の命の光がティアの持つエレノアの剣に吸収されていく事で光の力が強まっていた。
「・・・産まれてきた赤ちゃんが最初に産声を挙げながら涙を流すのか・・・お腹の中から出て来た赤ちゃんは産声を出すと同時に目から涙を流し始めるの・・・それが、自分自身にも生命の光を浴びて新しい命が芽生えた事を伝えているかのように・・・」
生命の光の輝きが増していくと、新たな生命が宿る気持ちがティアには感じられていた。
「そう・・・この世界にある光は生きているという証で、生命と言う名前の光を宿したから、この世界で産まれてきた人達が生きていられている事に感謝をしているわ・・・」
ティアは光の輝く生命の光を感じていると、エレノアの剣が神々しい光が宿り出した。
『あっ・・・あっ・・・!』
ダークタナトスは怖気付いたのか、ティアという存在が恐ろしくなっていった。
「・・・生命の輝きを持つ光がどれほど大事で尊い物なのかを・・・貴方にも教えてあげるわ・・・」
ティアは命が大切な物である事をダークタナトスに教えようとした。
『うっ・・・あぁぁぁぁ・・・!』
ダークタナトスは怖気付きながらもティアに襲いかかってきた。
「・・・人間は悲しみや辛さで涙を流せる・・・泣く事ができるのも、自分が生きているからなの・・・そして、これまでの失われた命も集まってきたからこそ・・・実感ができる事でもあるの・・・」
そう言ってから、ティアは背の羽を広げると神々しい光を放つエレノアの剣が涙のように輝き始めた。
「これが・・・世界中の生命の光が集まった力よ・・・」
ティアが生命の光が宿した剣を振るう度に、神々しい光を宿した斬撃からは光の粒子が涙のように放出されていった。
『馬鹿・・・な・・・!』
ティアは攻撃の手を止めると、エレノアの剣を天空へと掲げた。
『命光涙翔(ティアーズ・オブ・ヴィータセレスティアル)!』
エレノアの剣から神々しい光が放たれ、天空から闇を浄化する光の柱がダークタナトスに目掛けて降り注いだ。
『・・・エレノアの・・・生命と光による・・・力か・・・!』
光の柱からも涙のように輝く光の粒子が放出されていた。
「生命と涙を具現化した力は貴方のような死を招く闇には負けないわ。」
ティアがそう言うと同時に、ダークタナトスは光に飲み込まれて消滅をした。
「ようやく・・・終わらせる事ができたのね・・・」
ティアはその場で降り立つと、羽が消えると同時に鎧も元の姿へと戻った。
「これで・・・この世界は・・・」
戦いが終わって安心をしたのか、ティアはその場で両膝を着いた。
「ティア!」
仲間達は急いでティアの元に駆け寄ると、ギルバートはティアを抱き起した。
「・・・これで、世界中の人達の命を救えたのね・・・」
「あぁ・・・お前は死の闇で支配されていた世界を開放できたぞ・・・」
ギルバートがそう言うと、世界に光を取り戻せた事に安心表情になった。
「ティア・・・お疲れ様・・・」
「先程のティアはエレノアみたいで凄かったです・・・」
「後は・・・外でまだ戦っている皆にも伝えなくちゃ・・・」
「そうであったな・・・皆にダークタナトスが死んだと伝えれば、戦闘を止めてくれるはずだ。」
すると、ソルがティア達の前に立った。
「ソル・・・」
「ティア、お前のお陰でこの世界は闇から解放され光を取り戻した・・・それに、ガイアの仇も討ってくれた事は・・・本当に感謝しているぞ・・・」
ソルがティアにガイアの仇討ちをしてくれた事にお礼を言ってきた。
「それで・・・お前はこれからどうする気だ?」
ギルバートに今後の事を問われたソルはティアを見つめながら答えた。
「・・・俺はこの世界から旅立とうと思っている・・・」
「それって、この世界から別の世界に転移すると言う事ですか?」
「あぁ・・・俺はデスドゥンケルハイト軍の騎士だ・・・そんな人間が、この世界にいても不安にさせてしまうだけだ・・・」
「でも・・・ティアはもう仇を討とうとしていないのに、どうしても何処かの世界に転移をするとでも言うの?」
「・・・ガイアが死んでしまった以上、もうこの世界に留まっている必要も無くなったからな・・・」
「本当にいいのか?私達がなんとか話しを付けて蟠りを解いてやってもいいと思うのだが?」
「・・・俺はもうこの世界にはいてはならない人間だ・・・どんなに罪を償おうとしたとしても、世界中で俺達を知る人間達から恐れられ続けるだけだからな・・・」
そう言いながら、ソルは転移魔法を唱えた。
『ワームテレポータル!』
ソルが転移魔法を唱えると、ガイアと同じ転移する穴が出現した。
「・・・もうこの世界に戻って来る事はない・・・当然、お前達の顔を見る事もないだろう・・・」
ソルはそう言ってから、転移の穴を潜ろうとした時だった。
「待ってください・・・これをお返しします。」
ステラが呼び止めると、持っていたソルの星竜核晶石を返してきた。
「ソル・・・ガイアが貴方に託してくれた物なので忘れてはいけません。」
そう言って、ソルはステラから自分の星竜核晶石を受け取った。
「ガイアも貴方が、持っていてくれるなら安心と言っていました。」
「・・・そうか。」
ソルは星竜核晶石を鎧の中にしまうと、ティアが静かな口調で言ってきた。
「きっと・・・貴方はこの世界に戻って来てくれる事を信じているわ・・・」
無言でティアを見詰めてから、ソルは転移の穴を潜ると同時に消滅した。
「さてと、後はまだ戦っている皆にもダークタナトスが倒されたって、伝えておかなくちゃね・・・」
イヴがそう言ったが、ティアの返事がなく目を瞑っていた。
「ティア・・・?まさか・・・!」
「落ち着けよ・・・ただ、気を失っただけだ・・・」
ティアは疲れて果てて眠っているだけのようだった。
「・・・ティア、後の事は任せてゆっくりと休んでいてくれ・・・」
こうして、最後の戦いを終えたティア達はラヴィレイヘヴンを開放し世界に光を取り戻した事によって戦いは終結した。
エピローグ
「・・・ここは?」
目を覚ましたティアはベッドの上で意識を取り戻した。
「ティア、気が付いたのか?」
ティアの横にはギルバート達がいた。
「良かった・・・ずっと、目を覚まさないから心配していたよ・・・」
イヴはティアが目を覚ました様子を見て安心した。
「あの戦いから、ずっと眠っていたのだ・・・皆が心配をするのも無理もないだろう・・・」
ヘイゼルがそう言うと、ティアはどれほどの時が経っているのかを訊ねてきた。
「長い時間、眠っていた気がするけれど・・・あの時から、どれぐらい眠っていたの?」
「えっと・・・あれから、一ヵ月も経っているよ。」
なんと、ティアはラヴィレイヘヴンでの戦いから一ヵ月間も眠り込んでいるようだった。
「ダークタナトスを倒した後で、意識がないように眠っちまったからな・・・俺達は一ヶ月間もお前を診ていたぜ。」
「はい・・・ギルは一ヶ月間も休まずに貴方が目覚めるのを待っていました・・・」
ステラがそう言うと、ティアはギルバートに訊ねた。
「本当?一ヵ月も休まずに待ってくれていたの?」
そう問われたギルバートは穂を赤らめながらそっぽを向いた。
「まぁな・・・お前の事を思って、一生懸命に手当てをしながら待っていただけだ・・・」
「アタシ達もやるって言ったけど・・・俺一人で十分だって言われて聞かなかったけどね・・・」
イヴがギルバートをからかうように言ってきた。
「おっ・・・お前の事が心配でたまらなかったからだよ・・・」
ギルバートが照れくさそうにしながら言うと、ティアはその様子を見て笑みがこぼれた。
「・・・そう言えば、ラヴィレイヘヴンはどうなったの?」
「聖地は復興中だ・・・それに、ダークタナトスが倒された事を知って、全員が戦うのを止めていたぜ。」
ダークタナトスが倒されたと知った兵士達は全員武器を降ろして投降したのだった。
「無理やり兵士にされていた人達は解放されたと言って喜んでいたよ。」
聖地に連れて来られて強制的に兵士にされていた者達は解放されて故郷へと帰還していた。
「そうなの・・・兵士にされていた人達は故郷に帰って行ったのね・・・」
ティアはそう思うと、ギルバートが優しく言ってきた。
「これもお前のお陰だ。闇に支配されていた世界に光を取り戻す事ができたんだ・・・ゆっくり、体を休めてくれよな・・・」
「分かったわ・・・しばらく、安静にしているから・・・」
そう言って、横になったティアはゆっくりと体を休める事にした。
(・・・この世界の光は生命の輝きを取り戻そうとしている・・・これからも、この世界を護らなければ、エレノアや星竜族に顔向けができないわ・・・)
ティアは心の中でこの世界を護りたいと思いで溢れていた。
「治るまでは俺達が診ているから安心してくれよな。」
その言葉を聞いたティアはギルバート達にこう言ってきた。
「・・・ありがとう。」
お礼を言って、ティアは目を瞑って眠り始めた。
「ティア・・・一緒にいてやるからな・・・」
しばらくして、戦いを終えたティア達は別々の生活を送っていた。
「・・・今日も生徒達は元気だね。」
アランはダチュリエルの意思を継ごうとノヴェフロル学院の学長として務めていた。
「キットや他の子供達も今日も元気みたいね。」
ティアの故郷である村へと帰還したイヴは村を復興してから身寄りのいない子供達の世話をしながら暮らしていた。
「さて・・・今日の仕事量はこれぐらいか・・・」
ヘイゼルは戦いが終わった後で町は元に戻り、町長と共に役場で働いていた。
「・・・今日は星空が綺麗ね・・・」
そして、ティアはラヴィレイヘヴンで暮らしていた。
「ティア、今日も星空を見ているのか・・・」
星空を眺めていると、ギルバートがステラと共にやってきた。
「ギル、ステラ・・・貴方も星空を見に来たのね・・・」
「あぁ・・・ステラが星空を見たがっていたからな・・・」
実は、ギルバートとステラもティアと同様にラヴィレイヘヴンに移住してきていた。
「見てください・・・星空が、綺麗です・・・」
ステラがそう言うと、星空を見上げてみた。
「今日の星空は一段と綺麗だな・・・」
「はい・・・なんだか、星竜核晶石のように輝いて見えてきます・・・」
ステラは星空を眺めながらも目を輝かせて見ていた。
「そうね・・・星竜核晶石が星空の中にあるみたいに思えてくるわ・・・」
そう思っていると、ステラが星竜核晶石を手にしながらこう言ってきた。
「・・・ガイアにもこの星空を見せたかったです・・・」
ステラはそう言いながらも、ガイアがもうこの世にはいない事を実感した。
「ステラ・・・もしかしたら、この星空の中でガイアが見てくれているのかもしれないわ・・・だから、そんなに悲しい顔をしないで・・・」
ティアは、星空を見てステラに言うと、流れ星が流れているのを発見した。
「ほらっ・・・流れ星が流れてきているぞ・・・なにか、願い事でも言ってみろよ?もしかしたら、願いが叶うのかもしれないぜ?」
「本当ですか?」
「えぇ・・・流れ星に願い事を三回言えば、その願いが叶うと言われているわ。」
二人がそのように言ったが、流れ星はそのまま消えてしまっていた。
「消えてしまいました・・・」
ステラが残念そうにすると、またひとつ別の流れ星が流れてきた。
「見て・・・もう一つの流れ星が流れてきたわ・・・」
その直後、また別の流れ星が流れてきた。
(・・・)
ステラは流れ星が消えてしまう前に三回願い事を言った。
「ちゃんと、言えたのか?」
「はい・・・消える前に願い事を三回言いました・・・」
「それで、どのような願い事をしたの?」
ティアがなにを願ったのか訊ねると、ステラは星竜核晶石を見つめながら答えた。
「・・・全ての世界が星竜族の望む世界になりますようにとお願いをしました。」
ステラは星竜族の望んでいるような世界になってほしいと願ったようだった。
「そうか・・・星竜族の願う世界になるといいな・・・」
「きっと、貴方の願い事は叶う時が訪れるのかもしれないわね。」
ティアとギルバートがそうあってほしいと言うと、ステラは星竜核晶石を星空に掲げながらも眺めだした。
「ユニバース様やガイア達の望んでいた世界・・・それは、人類同士が争う事もしないで仲良く暮らしていて、自然や動物達と共存をしながら平和に暮らす世界になってくれるお願いが叶うといいですね・・・」
流れ星に願った事は星竜族だけでなく人類にも意味のある内容だった。
「そうね・・・星竜族だけでなく、私達人類もそのような世界になる事を願っているわ・・・エレノアやユニバースも人類が傷つけ合う事なく、自然や動物と共存をする世界になってくれると言う事を叶えたかったのかもしれないわね・・・」
そのように言ったティアはギルバートとステラと共に星空を眺め続けた。
(・・・ガイア、いずれは貴方達の望んだ世界にしてみせるわ・・・だから、私達を見護っていて・・・)
ティア達は静かに星空を眺めていると、星々から星竜族達が見ているかのように感じられた。
END
スタードラゴニアン・プラネット “Angel’s Tears of Radiant Life” @hannaritobaba
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