ハンバーガー屋の兄ちゃん
理乃碧王
ハンバーガー屋の兄ちゃん
近所に大手ハンバーガーチェーン店があります。
皆さんもよくご存じ、あの「マ」がつくお店です。
自宅から徒歩10分以内ということもあり、小腹がすいたときによく行くわけですが――。
「いらっしゃいませ!」
ここには、元気よく挨拶する店員がいました。
年齢は高校生くらいでしょうか、年齢から察するにバイトの店員なのは間違いないと思います。
「店内で召し上がりますか、それともお持ち帰りですか?」
マニュアルに沿った接客サービス。
文章にしたらわかりづらいですが、少し演技っぽく感じます。
ハンバーガー屋の兄ちゃんには申し訳ないのですが、人によっては非常にクセがあるように聞こえるでしょう。
そのためでしょうか。
女子高生のグループが接客サービスを受けた後、ゲラゲラと笑っていたのを覚えています。
他にも、学校の知り合いかはわかりませんが、わざわざ呼びつけて言動と動作を笑う人達もいました。
書くと思い出し、非常にそういう人達をぶん殴りたい気分になります。
まあ、そんな感じで彼はいじりの対象だったのです。
でも、ハンバーガー屋の兄ちゃんはハンバーガー屋の兄ちゃんなりに頑張っていました。
出来る限りのことを懸命にしていたのは、見てて思いました。
しかし、こういう真面目にやってる人を笑う人がいますね。
特定の人を記号化して笑う。
いわゆるひとつの「なんでもエンタメ」にしている。
現代社会、日本の病とも言えるでしょう。
もう、私が小さい頃からです。
大物芸人が「ターゲットを見つけ笑うだけ」の番組が非常に多い。
制作費のかからないギャラの安いお笑い芸人だけを集め、その中で「いじるだけ」の内容。
エンタメとしては、そういう番組があってもいいんですよ。
また、それを「おいしい」と思ってる人もいるかもしれませんので。(個人的には「卑屈だな」と思いますが)
私自身、そういう番組を視聴してゲラゲラと笑っていたのは確かですから。
さて、話が大きく脱線しないうちにハンバーガー屋の兄ちゃんの話に戻ります。
笑われた後、ハンバーガー屋の兄ちゃんはトレーをアルコール消毒していました。
私は気になったので、失礼ながら遠くから彼の顔を見ます。
すると、その顔は「怒り」「悔しさ」の表情が浮かび上がっていました。
当たり前ですが、ヘラヘラとしたものはなく、感情を押し殺していました。
なるほど。
「怒り」「悔しさ」というものは卑屈な精神から生まれません。
それは懸命にやっている人間だけに許される、特権的な感情というものでしょう。
このハンバーガー屋の兄ちゃんは一生懸命やってるだけに、ヘラヘラと笑われたことに憤っていたのです。
さて、一方の笑った側。
店を出る際、私はハンバーガー屋の兄ちゃんを呼びつけて笑った男にたまたま遭遇。(まだいたんかい! と思いましたが)
私はチラリとその顔を見ます。
口はへの字で眠そうな顔。
生きてるんだか、死んでるのか、わからない相貌。
また、別の表現をするなら「不満」の塊のような表情でした。
人を見て笑っていたのに、その人間は「つまらない顔」だったのです。
頑張るハンバーガー屋の兄ちゃん。
それを笑う「つまらない顔」をしていた人達。
ここ最近、そのハンバーガー屋の兄ちゃんの姿を見なくなりました。
辞めてしまったのでしょうか。
それと同時に、彼を笑っていた人達も消えていなくなりました。
笑いの対象がいなくなったからでしょうか。
皆さんは、どちらがどういう未来を送ると思いますでしょうか。
兎にも角にも「つまらない顔」にはなりたくないものですね。
ハンバーガー屋の兄ちゃん 理乃碧王 @soria_0223
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