霙と秘密のパン
@Kyosuke_06
霙/秘密のパン🍞
今朝の天気予報は外れた。
予報では雪のはずが、窓の外を舞っているのは、ふっくらとした雪と、光を帯びた雨が仲良く混ざり合ったみぞれだ。
台所では、焼きたてのパンがオーブンの中で最後の仕上げをしている。今日は、この曖昧な空模様を見て思いついた、秘密のパンを作る日だ。
「ママ、外は雪?雨?」
リビングから、娘のサラが不思議そうな声で尋ねてきた。
「んー、どっちだろうね?でもね、サラ。今日は『どっちも』のパンを焼いているんだよ」
オーブンからパンを取り出すと、甘く香ばしい匂いが部屋中に広がる。パンの上には、白いアイシングで雪の模様を描き、その上に水滴のような透明な砂糖粒を散りばめた。まるで、パンの上に小さなみぞれが降っているみたいだ。
「わあ、きらきら!」
サラが目を輝かせながら走ってきた。
「食べてごらん。雪みたいに甘くて、雨みたいにしっとりしているんだよ」
サラは小さな手を伸ばし、パンをちぎって口に入れた。咀嚼するたびに、砂糖粒がシャリシャリと音を立てる。
「おいしい!これ、ユキアメパンだ!」
サラが新しい名前を発明して、満面の笑みを浮かべた!
そう、みぞれは、完璧な雪でも、冷たい雨でもない。だからこそ、その中途半端さの中に、新しい発見や、こんな風に楽しい想像をする余地が生まれる。
窓の外の景色は相変わらず曖昧だが、私たちの食卓は、焼きたてのパンと、娘の笑顔で、最高の陽だまりに変わった。
今日の天気は、『ユキアメ』のパンを焼くための、一番良い日だったのだ。
了
霙と秘密のパン @Kyosuke_06
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