英語の授業中に突然クラスメートが「ポッキー!!」と叫びました。

こよい はるか @PLEC所属

「ポッキー!!」と叫んだ彼の話

「ポッキー!!」


 と、彼は天を指さして叫んだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「えー、名詞を修飾するのは前置修飾と後置修飾があって……」


 英語の先生が説明している中、私は全く他のことを考えていた。


 今日は十一月十一日。

 俗に言う『ポッキーの日』である。


 どこにでもいる中学二年生の私、こよいはるかは、ポッキーの日記念の小説について考えていた。


 プリントの端に『主人公…』と書いたきり、一文字も進まない。

 今年は諦めようかなぁ、とプリントから顔を上げる。


 英語は楽しい。新しい文法を習って新たな表現ができるようになるだなんて、これほどの楽しみは音楽と小説と食事と睡眠以外に無いだろう。


 先生の説明が終わり、問題を解く時間が始まる。予習で分かった気でいたが後半の問題が難しく、近くにいるクラスメートに聞いて解いていた。


 そんなこんなで問題を解く時間が終わり、先生が問題を解説していく。

 時折生徒の質問が入り、今日も平和に授業が終わりそうだな、と思ったその時であった。




「じゃあこれ、前置詞は……」

「ポッキー!!」




 ——は?


 一瞬の静寂に包まれ、沈黙を破ったのはクラス中の笑い声だった。

 私は前日にした腕立て伏せと腹筋のせいで筋肉痛になったようで、笑うだけでお腹が痛く、必死に笑いを堪えていたのだが。


 大体の人の笑い声が収まり、代わりに数人のくすくすという笑い声が聞こえる中、笑いまくって赤い顔になった先生が言った。


「え、あの、どうしたんですか?」


 先生の視線の先には、叫んだ時の天を指さした態勢の彼、Iくん。

 振り返ってみると、笑顔だ。とても笑顔だ。ご満悦である。


「言えって言われたんですよ!」


 彼自身もよく分かっていないような顔。

 いや、意味わかんねぇよ。


「いやなんか……」


 そこからIくんの口から聞かされた話とは。


 元々仲が良かった違うクラスのKくんに、「今日の十一時十一分十一秒になったらポッキーって言えよ」と言われたらしく。

 言われたとおりに実行したらしい。それも叫び声で。


 律儀すぎるだろ!!




 ……このネタは絶対にカクコンのエッセイで出そうと、その日のうちに決めていたこよはるなのであった。


 あれ、結局KくんはIくんに叫ばせただけで何もやってないの?

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