『俺達のグレートなキャンプ200 川原で激熱テントサウナ(350度)やるか』
海山純平
第200話 川原で激熱テントサウナ(350度)やるか
『俺達のグレートなキャンプ200 川原で激熱テントサウナ(350度)やるか』
「寒ううううううッ!マジで寒い!なんで冬にキャンプなんだよおおお!」
千葉が全身をブルブルと震わせながら、車から荷物を降ろす。白い息が勢いよく吐き出され、瞬時に霧散していく。手袋越しでも指先の感覚が消えそうなほどの冷気。彼の鼻は既に真っ赤に染まり、まるでトナカイのようだ。
「だからこそだろ!冬だからこそ、サウナが映えるんだよ!」
石川が両手を広げて叫ぶ。彼の吐く息も白いが、その表情は一切寒さを感じさせない。むしろ興奮で顔が紅潮している。目はギラギラと輝き、まるで獲物を見つけた肉食獣のようだ。
「映えるって...インスタじゃないんだから...」
富山が厚手のダウンジャケットに身を包み、肩をすくめる。彼女の表情には、諦めと疲労が混ざり合っている。眉間のシワは、もはや彼女のトレードマークと化していた。
12月の川原は、容赦なく冷たい。川の流れは相変わらず穏やかだが、その水面からは冷気が立ち上り、足元から体温を奪っていく。草は霜で白く凍りつき、踏むとサクサクと音を立てる。空は抜けるような青空だが、その美しさとは裏腹に、太陽の暖かさはほとんど感じられない。気温は推定5度。風が吹くたびに、体感温度はさらに下がる。
周囲を見渡すと、さすがにこの寒さで冬キャンプをしている猛者は少ない。しかし、数組の冬キャンパーが陣取っていた。焚き火を囲んで暖を取る中年グループ、大型ストーブを持ち込んだベテランソロキャンパー、そして防寒装備に身を固めた若いカップル。全員が厚着をして、寒さに耐えている。
「さあて!記念すべき200回目のキャンプアイテムはこれだあああ!」
石川が車のトランクから、大きなバッグを引きずり出す。「簡易式テントサウナセット」と書かれたラベルが貼られているが、その文字は手書きで、しかも微妙に歪んでいる。バッグ自体も年季が入っており、所々にガムテープで補修された跡がある。
「これ...どこで手に入れたの?」
富山が恐る恐る尋ねる。その目は、既に何かを察している。
「オークションだ!『激レア!業務用簡易テントサウナ!訳あり!』ってやつ!定価30万のところ、5万で落札できたんだぜ!」
「訳ありって...その訳が気になるんだけど...」
「細かいことは気にすんな!動けば問題ねえ!」
石川がバッグのファスナーを開ける。中から出てきたのは、銀色のテント生地、組み立て式のフレーム、そして異様に大きな薪ストーブだった。ストーブには「EXTREME HEAT 3000」という英語表記と、その下に「最高出力注意」という日本語のシールが貼られている。
「EXTREME HEAT...?3000...?」
富山の声が震える。
「うおおお!なんかヤバそうでカッコいいっすね!」
千葉が目を輝かせる。彼の価値基準は常に「カッコいいかどうか」だ。
三人は手早くテントサウナを設営し始める。フレームを組み立て、その上から銀色のテント生地を被せる。サイズは3メートル四方ほど。大人が10人は入れそうな広さだ。生地は二重構造になっており、内側には断熱材が入っている。ただし、所々に小さな破れがあり、そこからは白い綿のようなものが飛び出している。
「あの、これ破れてるんだけど...」
富山が指摘する。
「大丈夫大丈夫!ガムテープで補修すれば問題ない!」
石川が鞄から大量のガムテープを取り出す。その量は、まるでホームセンターの在庫を一掃したかのようだ。
ペタペタペタペタ!
三人がかりで破れた箇所にガムテープを貼っていく。銀色のテント生地に、茶色のガムテープが縦横無尽に走る。その姿は、もはや簡易テントサウナというより、「宇宙から飛来した謎の物体を応急修理した跡」のようだった。
「完璧!これで熱も逃げないぜ!」
石川が満足げに頷く。
「これが完璧に見えるなら、眼科行った方がいいわよ...」
富山がため息をつく。
次にストーブの設置だ。テント内の中央にストーブを配置し、煙突をテント天井の穴から外に出す。ストーブの周りには、大量のサウナストーン(に見える、ただの河原の石)を並べる。石川が朝一番で川原から拾ってきたらしい。
「よし!準備完了!あとは薪に火をつけるだけだ!」
石川が大量の薪をストーブに詰め込む。その薪の量は明らかに規定量を超えている。ストーブの扉がギリギリ閉まるレベルだ。
「ちょっと、入れすぎじゃない?」
「記念回だからな!ガツンと行くぜ!それに今回の目標は350度だ!」
「さ、さんびゃくごじゅう!?」
富山の顔が真っ青になる。
「350度って...オーブンじゃないんだから!」
「いや、記念すべき200回目だぞ!?普通じゃつまんねえだろ!」
石川が着火剤に火をつける。
ボワッ!
予想以上の勢いで炎が広がる。ストーブの中で薪が激しく燃え始め、メラメラと音を立てる。煙突からモクモクと煙が上がり、冬の青空に溶けていく。
「おおお!すげえ!一気に燃えてる!」
千葉が興奮して見つめる。
「温度計!温度計つけないと!」
富山が慌てて温度計をテント内に設置する。デジタル式の温度計が、みるみるうちに数値を上げていく。
20度...30度...40度...
「おお!上がってる上がってる!」
50度...60度...70度...
「すっげえ!あっという間に70度!」
80度...90度...100度...
「ひゃ、100度超えた!」
「よっしゃああああ!いい感じだああああ!」
石川が拳を握りしめる。
その様子を、周囲のキャンパー達が遠巻きに見ている。焚き火を囲んでいた中年グループが、明らかに警戒した表情でこちらを見ている。一人が何かスマホを操作している。おそらく「冬 キャンプ 事故」とかで検索しているのだろう。
「さあて!周りの人にも声かけないとな!」
石川が張り切って、近くのベテランソロキャンパーに歩み寄る。50代くらいの、日焼けした男性だ。大型のストーブで暖を取りながら、静かにコーヒーを飲んでいる。
「すいません!今からサウナやるんすけど、良かったら一緒にどうすか!?」
「サウナ?ああ、テントサウナか。最近流行ってるよな」
男性が穏やかに微笑む。
「そうなんすよ!で、熱くなったら川に飛び込む予定で!」
「ほう、本格的だな。それはいい...」
「目標は350度っす!」
「...は?」
男性の笑顔が固まる。手に持っていたコーヒーカップが、微かに震える。
「350度!記念回なんで、とことん熱くいこうかなって!」
「あの...普通のサウナって80度から100度くらいだぞ...?350度って...それ、もうピザ窯だろ...」
「知ってます!だから3.5倍っす!」
「いや、3.5倍だからって...人間が入れる温度には限界が...っていうか、そもそも350度の空間に人間がいたら焼け死ぬぞ!?」
「大丈夫っす!短時間なら全然イケるらしいんで!」
男性の目が泳ぐ。完全に「こいつら正気じゃない」という表情だ。
「そ、そうか...気をつけてな...いや、やめた方がいいと思うぞ...本気で...」
「一緒にどうすか!?」
「い、いや、俺は遠慮する。っていうか、警察呼んだ方がいいか...?」
「そうっすか!残念!」
石川は他のキャンパーにも次々と声をかける。不思議なことに、「350度」という数字を聞いた全員が、なぜか「持病がある」「体調が悪い」「予定がある」と断る。中には「急用を思い出した」と言って、即座にテントを畳み始める家族連れもいた。一組は「キャンプ場の管理者に報告してくる」と言い残して立ち去った。
「みんな体調悪いみたいだな!冬は風邪引きやすいからな!」
石川が無邪気に言う。
「それ、あんたらが原因で『体調悪くなりそう』って意味だと思うわよ...」
富山が頭を抱える。
しかし、一人だけ反応が違う人物がいた。
「350度だって!?最高じゃねえか!俺も混ぜてくれよ!」
声をかけてきたのは、30代前半くらいの、がっしりした体格の男性だった。坊主頭に無精髭。筋肉質な体に、やけに薄着のTシャツ。その目には、石川と同じ「危険な輝き」がある。
「おお!いいっすねえ!大歓迎っす!」
「俺、田中って言います!サウナ大好きなんすよ!普段から週5でサウナ行ってて!」
「マジっすか!サウナー(サウナ愛好家)じゃないすか!」
「そうなんすよ!でも普通のサウナじゃ物足りなくなってきてて!もっと熱いの入りてえなーって思ってたんすよ!350度とか、夢みてえ!」
田中の目が爛々と輝く。完全に同類だ。
「じゃあ一緒にやりましょう!」
「よっしゃああああ!」
二人がハイタッチする。その光景を見て、富山の不安が倍増する。
「ヤバい奴が増えた...」
テント内の温度は、既に120度に達していた。
「よっしゃ!そろそろ入るか!」
石川が上半身裸になり始める。冬の寒風が吹く中、筋肉質な上半身を露わにする。鳥肌が立ち、肌が赤くなるが、本人は全く気にしていない。
「うおおお!石川さん、マジっすか!」
千葉も負けじと上半身を脱ぐ。細身の体が震えるが、その顔は興奮で紅潮している。
「俺も行くぜ!」
田中も脱ぐ。さすがサウナー、鍛え上げられた体だ。
「あんたら、正気!?この寒さで裸になって...」
富山が呆れる。しかし、彼女も観念したように上着を脱ぎ始める。下にはちゃんと水着を着込んでいる。彼女は賢い。
「さあ!いざ、テントサウナへ!」
四人がテント内に入る。
「うおおおおおお熱っつううううう!」
入った瞬間、熱気が全身を包む。120度の空間は、もはや灼熱地獄だ。息をするだけで喉が焼けそうになる。肌がピリピリと痛い。汗が瞬時に吹き出し、全身を伝う。
「こここ、これが350度目指すサウナかああああ!」
千葉が目を見開く。既に全身から汗が滝のように流れている。
「まだ120度だぜ!これからもっと上がるぞ!」
石川が追加の薪をストーブに投入する。
「ちょっと待って!もう十分熱いでしょ!?」
富山が叫ぶ。彼女の顔は真っ赤に染まり、髪の毛から汗が滴り落ちている。
「いやいや!記念回だからな!350度達成するまで薪を投入し続けるぞ!」
ゴオオオオオッ!
ストーブがさらに唸りを上げる。炎が激しく燃え、熱波が室内に広がる。
130度...140度...
「ひいいいい!もう無理!」
富山が最初に脱落する。テントから飛び出し、そのまま川へとダッシュする。
ザッバアアアアン!
冷たい川に飛び込む音が響く。
「ひゃああああああ冷たああああああい!けど...けど気持ちいいいいいい!」
富山の歓喜の声が聞こえる。
「どうだ田中さん!」
「最高だああああ!この熱さ、たまんねえええ!」
田中が恍惚の表情で叫ぶ。
「もうちょい粘るか!」
「ああ!もうちょい!」
石川と田中が我慢比べを始める。汗が目に入り、視界がぼやける。呼吸が荒くなり、心臓がバクバクと高鳴る。しかし、二人とも動かない。
「石川さん...俺も...もうちょい...」
千葉も意地になっている。顔が茹でダコのように真っ赤だ。
150度...160度...170度...
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー!」
三人が同時にテントを飛び出す。そのままダッシュで川へ。
ザッバアアアアン!ザッバアアアン!ザッバアアアン!
「ひゃあああああああああ冷っつううううう!」
「気持ちええええええええ!」
「この温度差がキマるうううううううう!」
三人が川の中で叫ぶ。冷たい水が全身を包み、火照った体を急速に冷やしていく。その感覚は、言葉では表現できないほどの快感だ。脳内に何かが放出される感覚。視界が明るくなり、世界が輝いて見える。
「これだああああ!これがサウナの醍醐味だああああ!」
石川が雄叫びを上げる。
周囲のキャンパー達が、完全に引いている。中年グループは焚き火を放置して、明らかに距離を取っている。ソロキャンパーは、テントの中に引きこもってしまった。
「もう一回行くぞおおおお!次は200度越えだああああ!」
「おおおおお!」
四人が再びテントサウナへ突撃する。
濡れた体でテント内に入ると、さらに蒸気が上がる。ジュワアアアアッ!という音と共に、熱波が襲い掛かる。
「うおおおお!2回目の方が熱く感じるううう!」
「それがサウナの真髄だああああ!」
田中が叫ぶ。
温度計は既に180度を示していた。石川がさらに薪を投入する。もはやストーブは真っ赤に輝き、周囲の空気が歪んで見える。
190度...200度...210度...
「にににひゃくううう!大台突破だああああ!」
「やっべええええ!息が!息ができねええええ!」
「でも!やめらんねえええええ!」
三人が完全にトランス状態に入る。瞳孔が開き、表情はトロンとしている。大量の汗が床に滴り、ジュウジュウと音を立てている。
「もっと...もっと熱くできるんじゃねえか...?」
石川が危険な笑みを浮かべる。
「おい石川、まさか...」
富山が川から上がり、警戒する。
「サウナストーンに水をかけるんだ!ロウリュってやつ!」
「ちょっと待って!この温度でロウリュなんかしたら...!」
富山の制止を無視して、石川がひしゃくで水をサウナストーンにぶちまける。
ジュワアアアアアアアアアアッ!
爆発的な蒸気が発生する。一気に湿度が上昇し、息ができなくなるほどの熱波が襲い掛かる。体感温度は軽く250度を超える。
「ぐああああああああ!」
「熱い熱い熱いいいいい!」
「やっべえええええ!」
全員が転がるようにテントから飛び出す。そして川へダイブ。
ザッババババババン!
「はあああああああ...はあああああああ...」
「すげえ...すげえよこれ...」
「完全に...トんでる...」
四人が川の中で、放心状態になる。瞳孔が開き、表情はトロンとしている。明らかに正常な精神状態ではない。
「でも...まだだ...まだ350度に達してねえ...」
石川が、フラフラと立ち上がる。その目には狂気が宿っている。
「おい...石川...マジか...」
「記念回だぞ...350度達成しねえと...意味ねえだろ...」
「石川さん...俺も...やります...」
千葉も立ち上がる。足元がおぼつかない。
「350度...見てえよな...」
田中も立ち上がる。
「あんたら、マジで大丈夫?もう十分でしょ?」
富山が心配そうに言う。しかし、三人の耳には届いていない。
「最後の薪を全部ぶち込むぞおおおお!」
石川が残りの薪を全てストーブに詰め込む。もはやストーブは限界を超えている。金属が軋み、不吉な音を立てる。
ゴオオオオオオオオオッ!
炎が天井まで達しそうな勢いで燃え上がる。煙突が真っ赤に輝き、周囲に熱波が放射される。
220度...240度...260度...
「に、にひゃくろくじゅう...!」
280度...300度...
「さんびゃくううううう!大台ええええ!」
320度...330度...340度...
「来る...来るぞ...350度が...!」
三人がテントの外から、固唾を飲んで温度計を見守る。全身びしょ濡れで、震えているが、その目は輝いている。
345度...348度...349度...
「あと...あと1度...!」
そして。
350度。
「キタアアアアアアアアア!350度達成だああああああああ!」
石川が雄叫びを上げる。千葉と田中も抱き合って喜ぶ。
「やった...やったぞおおおお!」
「記念回に相応しいいいいい!」
「これぞグレートなキャンプだあああああ!」
三人の興奮は最高潮に達している。
「あんたら...もしかして、この350度のサウナに入る気!?」
富山が叫ぶ。
「当たり前だろ!せっかく350度にしたのに、入らないわけないじゃん!」
「正気じゃないわよ!死ぬわよ!絶対死ぬ!」
「大丈夫!すぐ出るから!10秒だけ!10秒だけ入って、すぐ川に飛び込む!」
「10秒でも無理よ!」
しかし、三人は聞く耳を持たない。意を決して、テント内に突入する。
入った瞬間。
「ぎゃあああああああああああああッ!」
地獄だった。350度の空間は、もはや人間が存在していい場所ではない。息を吸った瞬間、肺が焼ける。肌がジリジリと焼ける音がする。視界が真っ白になる。
「あ゛ーーーーーッ!」
「う゛お゛お゛お゛お゛お゛ーーーーッ!」
「ぎゃああああああああッ!」
三人が絶叫しながら、3秒でテントを飛び出す。10秒どころではなかった。3秒が限界だった。
そのまま川に飛び込む。
ザッバアアアアアアアアン!
「ああああああああああああああッ!」
「うおおおおおおおおおおおおッ!」
「ひゃあああああああああああッ!」
三人が川の中で絶叫する。冷たい水が、焼けた肌を冷やす。その温度差は、350度から5度。345度の温度差。
「この...この温度差がああああああ!キマるううううううう!」
石川が完全におかしなテンションになる。目は虚ろで、口は半開き。涎が垂れている。
「やっべええええ!頭が!頭がおかしくなるううううう!」
田中も同様だ。両手を広げて、空を仰いでいる。
「気持ち...気持ちよすぎてええええ!世界が!世界が輝いて見えるううううう!」
千葉は完全にトリップしている。川の中で踊り出す。
「あんたら!?あんたら!?」
富山が慌てて三人に駆け寄る。
「もう一回...もう一回350度に...」
石川が呟く。
「ダメ!絶対ダメ!もう十分でしょ!?」
「でも...350度...あの感覚...忘れられない...」
「限界...そうじゃん...石川さん...」
千葉が言う。その顔は土気色だ。
「そっちこそ...」
「俺は...まだ...いける...」
完全に我慢大会と化していた。もはやサウナを楽しんでいるのではない。意地の張り合いだ。男のプライドをかけた、不毛な戦いだ。
三人が再び350度のテントに向かおうとする。
「あんたら!もう出なさい!死ぬわよ!」
富山が必死で止める。
「死なねえ...死なねえよ...」
「余裕...余裕だ...」
「まだ...あと...1回...」
三人の声は、もはや虫の息だ。足元がフラフラしている。
そして、三人が再び350度のテント内に入ろうとした瞬間。
「あ...」
石川の意識が飛んだ。目が白目を剥き、体がグラリと傾く。
「石川さん!?」
千葉が慌てて支えようとするが、千葉自身もフラフラだ。二人まとめて倒れる。
「うおい!?」
田中も慌てて駆け寄るが、そこで田中の意識も途切れた。
「ちょっと!?あんたら!?」
富山が慌てて駆け寄る。そこには、三人が倒れていた。
「あんたら馬鹿なの!?馬鹿なのね!?」
富山が必死で三人に水をかける。周囲のキャンパー達も、さすがに事態の深刻さに気づき、駆け寄ってくる。
「おい!大丈夫か!?」
ベテランソロキャンパーが、手伝ってくれる。
「救急車!救急車呼んで!」
中年グループの一人が、慌ててスマホを取り出す。
夕方。病院。
「...で、何度のサウナに入ってたんですか?」
白衣を着た医師が、呆れ果てた表情で尋ねる。40代くらいの、眼鏡をかけた真面目そうな男性だ。
「...350度です」
富山が小さな声で答える。
「350度!?」
医師の声が裏返る。眼鏡がずり落ちそうになる。
「はい...」
「350度って...それ、オーブンの温度ですよ!?ピザ焼く温度ですよ!?何考えてるんですか!?」
「すいません...」
ベッドに横たわる石川、千葉、田中の三人が、申し訳なさそうに俯く。三人とも点滴を打たれ、脱水症状と軽度の火傷の治療を受けている。顔色は土気色で、唇はカサカサに乾いている。皮膚は赤く爛れている。
「普通のサウナは80度から100度ですよ!?350度なんて、人間が入る温度じゃない!よく生きてましたね!奇跡ですよ!」
医師が厳しい口調で叱る。
「本当に...すいません...」
「記念回だからって...調子に乗りました...」
「反省してます...」
と反省する素振りを見せるが、次はどんなキャンプをするか既に画策している石川であった。
懲りるわけがない。
完
『俺達のグレートなキャンプ200 川原で激熱テントサウナ(350度)やるか』 海山純平 @umiyama117
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