路上占い、あれこれ121【占い師は忠告する】
崔 梨遙(再)
もうしばらく単品で。また、まとめます。1583文字
僕が夜のミナミで路上占いをしていた頃のお話です。
『いいですか?』
『はい、どうぞ』
30代? スウェットの上下、家からそのままミナミに来たのか? という印象でした。ですが、占い師は詮索しません。
『今日は何を占いますか?』
『俺、今、ストーカーやってるんですよ』
『「フリーターやってるんです」みたいにおっしゃいますね』
『ええ、ストーカーだという自覚はあるんですよ』
『ほお、自覚のあるストーカーさんですか?』
『相手の女性からも「ストーカーだ」と言われましたからね』
『すみません、ちょっとよくわからないんですけど』
『出逢いはスーパーですよ。買いものに行ったら彼女がいて、僕は一目惚れしたんです。迷わず後をつけました』
『迷わなかったんですか?』
『好きな女性がどこに住んでるか? 知りたいでしょう?』
『さあ・・・・・・』
『まあ、後をつけたらいいマンションだったんですよ』
『どこまでついて行ったんですか?』
『2階までです。一緒にエレベーターに乗って、彼女が203号室に入ることを確認してから帰りました』
『それから』
『翌日はずっとスーパーで彼女を待ってました』
『それで?』
『彼女が来たんですよ』
『ほお、それで?』
『でも、男と一緒だったんですよ』
『ほお』
『後をつけたら203号室に一緒に入って行ったんで、要するに旦那がいたんですよね、でも、それって別によくないですか?』
『何が? 何がいいんですか?』
『旦那のいる人を好きになっても』
『はあ・・・まあ、好きになる気持ちは抑えられませんが、相手に旦那がいるのがわかったら諦めるのでは?』
『なんで俺が諦めないといけないんですか?』
『はあ?』
『諦めるのは旦那の方でしょう?』
『はあ?』
『彼女の運命の相手は俺ですよ。旦那がいるのは、単に俺より先に出会ったというだけでしょう? なんで俺が諦めないといけないんですか? 意味がわからない』
『彼女が運命の相手だという根拠は?』
『俺の直感ですよ。これはね・・・あんたに話しても伝わらないかも。俺には確信があるけど、確信を伝えるのって難しいじゃないですか』
『あなたは今、どんな仕事をしていますか? よろしければうかがいたいんですけど、うかがってよろしいですか?』
『俺? 今は無職です。っていうか、働いたことが無いです。親が健在だから、家にいても不自由はしませんからね』
『・・・・・・で、僕は何をしたらいいんですか?』
『占ってくださいよ』
『何を?』
『俺と彼女の今後について、ですよ』
『はあ、じゃあ、まあ、占いますね・・・・・・あ、訴訟事になるという卦が出ましたよ。もう、ストーカーはやめた方がいいんじゃないですか?』
『でも、やっと顔をおぼえてもらえたんですよ』
『あなたの顔を見たら、彼女は?』
『え? 走って逃げます。照れてるんですかね? そこがまたカワイイんですけど』
『それで? 彼女は他には?』
『「来ないで、ストーカー」って言われました。それで、自分が今はストーカーなんだなぁと自覚しました』
『ストーカーと自覚して、何故、そんなに行動力があるんですか?』
『でも、彼女は僕の運命の相手ですよ。放っておいても旦那と別れて俺のところに来るに決まってるじゃないですか』
『じゃあ、別れるまで待っていれば良いのでは?』
『どうせ別れて俺のものになるなら、早い方がいいじゃないですか。だから、僕は彼女の離婚を早めたいんですよ』
『ちなみに、今までどんな恋愛をしてきました?』
『今までは2次元の女性しか興味が無かったですね。アニメとかゲームで、推しの子がいましたからね。リアルで女性を好きになったのは今回が初めてなんですよ』
『あの・・・さっきも言いましたが訴訟事になるかもしれませんよ。今回のお相手は諦めた方が良いのでは・・・・・・?』
『なんで? 俺、まだ洗濯物の下着しか盗ってないですよ。ブラ、70のEでした。最高ですよね?』
既に盗ってるんかーい!?
路上占い、あれこれ121【占い師は忠告する】 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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