人は皆、何かを作らずにはいられない。
眠る前にこっそり、自分の部屋で小さなハンカチを縫う人がいる。
あるいは高級服飾店の作業台で、サバサバと何着も何着もドレスを仕立てる人がいる。
広大な畑に畝を築き、真っ黒に日焼けしながら茶葉を育てる人だっているだろう。
なんのために?
たとえば、嫌なことを忘れるために。
さえない自分を慰めるために。
あるいは単に、お金のために。
でもそうやって作られた物の本当の価値は、
かならずしも作った本人だけには決められない。
手に取った誰かが、時にその価値をポンと見抜く。
そこに隠された魔法をそっと掬い上げて、
かけがえのない一品としてたいせつにする。
本作が読者の心をやさしく打つのは、
主人公セラのスキル『刺繍』の価値が
そういう定まり切らない広がりを秘めているから。
だからこそ、この物語にはきっと続きがあるんですね。
読んでよかった、素敵な作品です。
学校も卒業できない。家族関係もぼろぼろに。事務員として雇われて働くもまったく仕事ができないし侮ってしまう。
ないないづくしのセラフィーナことセラ。
私だったらこの環境に折れて爆薬積んだバイクで学校に突っ込んで爆破しているところですが、セラはその環境に「耐えて」しまいます。
それがどれだけ不幸だったことか。
しかし、小さな幸運が彼女のところに降ってきます。
たまたまたちよった「ドレスショップ・アウラ」。そこで彼女は思わぬ才能を発揮していくのです。
その姿は本当に幸せそうです。
才能を活かすということが本当に「幸せ」なのだということがよくわかります。
彼女に投げつけられた元同僚からの一言は、
「才能を活かすとは」「自分のやりたい仕事をやるとは」
についてきついながらも示唆的なものを与えてくれます。
彼女はこれからも「幸せ」になっていくのか。続きが待っていますように。
魔力があるのが当たり前、の世界に生きているセラは、『魔力なし』だったためお荷物扱い。
フェイス女学園でも必死で学んだはずが、卒業試験でも満足な魔法はできず、事務員となった。
真面目に仕事に取り組むセラだが、先輩の当たりは強い。
溜まったストレスを、寝る前の刺繍で解消していたセラは、学園のバザー協力のお願いのため訪れたドレスショップで、運命の出会いを果たす――。
どんなものでも好きなものがあるっていいよね、と深く頷きながら、真面目で一生懸命なセラを応援しつつ読み進めてみると。
固く閉じていた蕾が開いていくような、瑞々しいストーリーに出会えます。
セラが作るのは本当に素敵な仕掛けの刺繍で、身につけた女性を後押しする優しさまで織り込まれている、と感じます。
そしてきっとそんなセラの綺麗さに、ドクター・ボイルも心を奪われたに違いありません!
ぜひ、才能が花開く瞬間を、目撃してください。
オススメです!!
魔法力がないために魔道計算機を使えない事務員のセラ。先輩に嫌味を言われながらも、懸命に頑張ります。そんなセラの目に止まった、街角の水色の素敵なドレス。セラは刺繍を施したらどうかとアイディアを思いつくのですが、そこへ謎の紳士と淑女が現れて…⁉︎
この刺繍スキル持ちの可愛いヒロインの物語を拝読して「適材適所」という言葉を思い出しました。自分に合わない場所で頑張り続けて能力が伸びることもあればそうでない場合もあるし、違う場所で能力が生きることもある。さて、セラの場合はどうでしょうか?最後の最後で意外な仕掛けがあってびっくりしますよ!
お仕事や学校で悩んでいるあなた。この物語を読んで勇気と才能の花、咲かせてみませんか?