死にたがりたちの逆デスゲーム~安楽死をかけた三日間の生かし合い~

加加阿 葵

逆デスゲーム


 目を開けたら、知らない天井だった。


 ――1回言ってみたかっただけだ。

 

 実際は、天井どころか壁も床も、全部コンクリート。病室より味気ない。

 そんで、めっちゃでかいモニターがついてる。


「……あれ、私、生きてる……」


 口から出たのはそっちだった。


 最後の記憶は、夜の橋と欄干と、冷たい風。

 欄干を乗り越えるときも、そこまで劇的なこと考えてたわけじゃない。

 ただ、「もういいや」が積もり積もって、ふと足がそっち側に出ただけだ。

 

 そのあと、誰かに腕をつかまれて――そこで途切れている。


 視線を動かすと、同じような簡易ベッドが並んでいて、そこに人が転がっていた。


 スーツ、ジャージ、黒フリル、パーカー、金髪ギャル。そして、Tシャツジーンズの私。


「あれ、俺って確か……屋上に……」


 スーツが先に起き上がって、額を押さえる。

 その後、他の人たちも続々と起き始めた。

 そのとき、頭上のスピーカーから、やたら明るい声が流れた。


『おはようございます! ようこそ、逆デスゲームへ!』

「なんじゃそりゃ」


 思わずツッコんでしまった。


 壁のモニターがぱっと点く。

 映っているのは、黒のパーカー姿の青年。髪ぼさぼさ、目の下クマ。どう見ても徹夜明けのフリーター。


『えー、みなさま初めまして。ゲームマスターのカイです。やべ、仮面つけてないや。まあ、もういいや。気軽にカイって呼んでくださいね』

「軽いなゲームマスター」


 金髪ギャルが眉をひそめる。


『まずは現状説明からしていきますね』


 カイが、わざとらしく咳払いをした。


「ちょ、ちょっと待って」


 黒フリルの女の子が、小さな声で手をあげた。


「こんなとこ連れて来られたら……家族とかに心配かけちゃう……」


 それを聞いて、カイが一瞬だけ間を置く。


『死のうとしてた人がいっちょ前にそういう心配するんですね……っていかにも悪そうなセリフを僕が言うのはよくないので、やめときます』


「全部言ったぞ」


 私は思わずツッコむ。

 

『続けますね? “死のうとしてた人”と言った通り、あなた方は全員、ついさっきまで“自分で自分を終わらせようとしていた方々”です』


 部屋の空気が、すっと冷えた。


『橋の欄干だったり、線路だったり、ビルの屋上の人もいましたね。自殺未遂者保護ルートに則り、こちらの国公認の支援施設にお越しいただきました』

「国公認……?」


 パーカーが眉を上げる。


『国公認です。信じられないくらい怪しいけど公式です』


 説明の仕方に問題がある。


『なので安心してください。ご家族がいる方には、すでに医療機関経由で説明済みです。「専門施設でケアを受けます」って形で。警察にも保護済みで話通ってますので、今だけは、行方不明の心配はしなくていい時間だと思ってください』


 その言い方が、妙に優しかった。


『で、本題です』


 カイが表情を切り替える。


『人生はゲームです。この国もまだ捨てたもんではありません――そこで今日は皆さんに、ちょっと生かし合いをしてもらいます』

 

「聞いたことある言い回しだな」


 ギャルが即ツッコミを入れる。


「普通そこ、“殺し合い”なんだけど?」

『逆デスゲームなので、“生かし合い”です』


 胸を張るな。


『ルールは簡単。三日間、みなさんにはこの施設で一緒に生活してもらいます』


 カイの声が、少しだけ真面目になる。


『そして、このゲームには二種類のゴールがあります。それがこちら。じゃじゃん!』


 モニターに簡単な図が出る。


 【脱落=とりあえず生きてみてもいい理由が見つかった人】

 【最後まで残った人(何人でもいいよ♡)=安楽死の最終審査権】


『ひとつめ、脱落。これは、自分の中でとりあえず生きてみてもいい理由がひとつ見つかった人が“選べます”』


「脱落って言い方どうなの」


 黒フリルが小声で突っ込む。


『ゲーム的には勝ち抜けって感じですね。脱落した人には、その理由をベースにした支援プランが組まれます。住まい、仕事、学校、医療、いろいろセットで』

 

「豪華だな」


 スーツが軽くうなずく。


『ふたつめ、最後まで残った人。三日間経っても、いや、やっぱどう考えても死にたいんだが? という人は、そのまま残ってもらって構いません。一人とは限らず、皆さん全員が残っていただいて構いません』


 カイは、あえてさらっと言った。


『最後まで残った人には――公的に認められた安楽死の最終審査に進む権利が与えられます』

 

「わお! 本命!」


 ギャルが笑う。


「ご褒美が安楽死って、すごいね?」

『運営もそう思ってます』


 カイは苦笑いした。


『ただし、どちらのゴールを選んだとしても、“最終的な決定”はこの施設を出たあとです。安楽死権を取っても、使わない選択はいつでもできます』

「めっちゃ楽に死ねるじゃん」


 パーカーがぼそっと言う。


『この三日間は、安楽死をエサにしてでも、とりあえずちょっと生きてもらうってコンセプトです』

「すごいコンセプト」


 私はたまらず呟いた。


『ちょっと面白そうと思ってもらえたら、寝ないで考えた甲斐があります』


 そう言って、カイは肩をすくめた。


『じゃあ、皆さんのスマホを回収させていただきますね~』

「……」


 スーツがものすごく複雑な顔をしていた。


 ◆


 自己紹介タイムになった。


 ギャルはミナミ。二十代前半。夜の店と借金。酒を飲み、線路沿いをふらふら。

 ジャージはレン。二十二歳。怪我で陸上競技やめて、山で首吊ろうとして止められた。

 黒フリルはユキ。不登校。薬をまとめ飲みして救急搬送された。

 パーカーはハル。生きるのがめんどくさくなって大学をバックレて、屋上から飛ぼうとして見つかった。

 スーツはヒロアキ。ブラック企業で心身がぼろぼろ、飛び降り未遂の人。


 そして、私。


「えっと……サチ。二十歳。大学行けなくなって、部屋で沈んでたら、いつの間にか橋の上にいました。趣味は漫画読んだり映画見たりで、デスゲームものが好きです」


 空気が一瞬止まる。


「あの、フィクションとして、ですよ?」


 慌てて言い足すと、モニター越しのカイが「おお」と変に嬉しそうな顔をした。


『参考資料が豊富な参加者はありがたいですね』

「逆デスゲームの参考にしないでください」

『サチさんには、「普通のデスゲームだとこうなるのに、逆だなあ」ってツッコミを担当してもらえたら』

「役割を振るな」


 こうして、逆デスゲームは始まった。


 ◆


 腕輪を渡された。

 腕輪には、タッチパネルの液晶とゲームみたいなゲージ、それとボタンが2つ。


 ひとつは、「とりあえず生きてみる」。

 もうひとつは、「死にたい」。


『腕輪のゲージは生かし合いポイント。腕輪には感情を読み取る装置がついてて、なんかよくわかんないけど、面白いとか楽しいとかのポジティブな感情を読み取り、ポイントが溜まるっぽいです。一定値まで貯まると――』


 モニターにイメージが表示される。


『「とりあえず生きてみる」ボタンが押せるようになります。押した人は脱落です。つまり、ほかの参加者をポジティブな気持ちにさせるのが主な趣旨になります』


「逆デスゲームだなあ」


『灰色のほう、「死にたい」ボタンは、最終日までは押せません。最終日まで残った人だけが、押すかどうか選べます』


 シンプルなルールだった。


『じゃあ、お部屋の方へ案内しますね~』

 

 ◆


 ただ生活するのも退屈だからとちょっとしたお題が出される。

 これをクリアすると相手のポイントが増えるかもねってやつだ。

 お題は、基本的にゆるい。


 【誰かに「喉乾いてない?」と声をかけてください】

 【誰かの服を「似合ってるね」と褒めてください】

 【誰かの話を3分間、遮らずに聞いてください】


 クリアしないと、部屋が真っ暗になったり、どこの国かもわからんハイテンションな曲が爆音で流れたりする。

 命は取らないが、生活の質は普通に削ってくるタイプだ。


「何もしなくても死ねるから何もしないを、何もしないと生活がじわじわキツいから、ちょっとは自分で行動するかって気分にさせてるんだな」


 ヒロアキさんが、やけに冷静に分析していた。


【誰かの服を「似合ってるね」と褒めてください】

 

「サチちゃん、そのTシャツ似合ってるね。デスゲーム参加者感あって」

「褒めてる?」

「褒めてる褒めてる。はいポイントー」


 ハルが嬉しそうに親指を立てる。


「ハルのゲージも増えてるよ?」

「は!?」


 くだらないやり取りでゲージが伸びていくの、悔しいけどちょっと楽しかった。

 


【誰かの話を3分間、遮らずに聞いてください】


「えー、俺? 別にいいですけど」


 ヒロアキさんが、少しだけ気まずそうに笑った。内容は、会社の愚痴だった。上司のこと、残業のこと、給料のこと。


「聞かされてる側からしたら、ただの愚痴だよねって自分でも思うんだけどさ」


 ヒロアキさんが苦笑すると、腕輪のゲージが少しだけ伸びる音がした。


 ◆


 二日目の夜、最初の“脱落者”が出た。


 【みんなでカレーを作ろう!!!!!】


 さすがにビックリマークが多すぎるお題をクリアして、カレーを食べながらどうでもいい雑談をしたあと、ミナミの腕輪が、ピコンと音を立てた。


「お」


 画面に、「ポイント MAX!」「脱落ボタン解放!」と表示され、緑の「とりあえず生きてみる」ボタンが点滅する。


「押すとどうなるんだっけ」


『生きるほうのゴールに到達した扱いになります。ここから出て、いろいろな支援プランの説明を担当の者が行います』


 ミナミは少し黙って、腕輪を眺めた。


「……正直、ここ来るまでずっと、私の人生なんてどうでもいいから終わりたいって思ってたんよね」


 誰も口を挟まない。


「でもさ、ここでみんなとカレー作ったり、くだらない話して、こういうくだらない時間もう二度とないのはさすがにちょい損かもって思えたからさ」


 ミナミは、親指でボタンを押した。


 ピッ。

 「脱落おめでとうございます!」というアナウンスとともに花吹雪が舞う。


「逆デスゲームだなあ」


 私は笑ってしまう。


『ミナミさん、脱落者第一号です。おめでとうございます』


 カイが少し目を潤ませながら言った。


「まあ、デスゲームお決まりの見せしめで最初に死ぬやつ枠じゃなくて、“最初に生きることを選んだやつ枠”取れたなら、それでいいかも。逆デスゲームだしね」


 そう言ってミナミは笑う。


「……とはいえ、みんながカレーを食べ終わるまでいるから。急にしんみりすんな」


 最後まで空気を読むのは、やっぱりミナミだった。

 カレーに花吹雪入っちゃってる。今はこんなことでもちょっと面白い。


『なるほど、最初に見せしめを用意するのもありか……』


 ゲームマスター……マイクつけっぱだぞ。


 ◆


 そして三日目の朝。


 耳をつんざくサイレンが鳴り響いた。

 赤い警告ランプが点滅し、天井から煙がもくもく出てくる。


『――最終ゲーム、爆破から逃げろ!』


 モニターのカイが、いつになく真面目な顔で言う。


「デスゲームに爆破オチはないだろ!」


 レンが突っ込む。


『ほら、ほら』

「逆デスゲームだなあ」

 

 私がそういうと、カイが親指を立てる。だるいなコイツ。


『現在、このフロアは爆破シミュレーションモードに入っています』


「聞いたことないモード出た」


『十五分後、このフロアは爆発します』


「は?」


『安心してください。実際には爆発しません』


「じゃあ言うなよ!」


 一斉にツッコミが入った。


『ただし、このフロアに十五分後も残っていると――防犯装置が作動して、基本的に自由のない特別支援棟に強制送還です。そこでは最低限の生活は保障されますが、死ぬまで出ることはできません。まあ、刑務所みたいなもんですね。当然ですよね。あなた達を死なせないようにする施設なんですから』

 

 全員の動きが止まる。


『ルールはひとつ。十五分以内に、一階まで避難してください。出口は二つ。正面玄関か、裏口か。どちらも地上に出ます』


「逃げられなかったら?」


『さっきも言った通り、特別支援棟に強制送還になります』


「正直に言っていいですか」


 ヒロアキさんが手を挙げた。


『どうぞ』

「特別支援棟送りコース、ちょっと楽そうだなって思ってたりします」

「確かに何も決めなくていいし、“自分で選ばなくていい”って、ある意味天国だよね」


 私は素直に頷いた。


『そうですね』


 カイはあっさりうなずく。


『だからこそ、それでも自分で出口を選んでほしいっていう、めんどくさいゲームなんです』


 その言い方が、またずるい。


「ここを出た後でも、特別支援棟には入れるの?」


 ユキはちょこんと手をあげながらモニターに向かって話す。

 

『もちろんです。皆さんのつけてる腕輪がこのゲームに参加したという証明になってますので』


「……じゃあさ」


 ユキは息を吸った。


「……出てから考えようよ」

「どっちの出口に行く?」


 ハルが聞くと「正面玄関」と全員が即答した。


『いいですね。では――死ぬっぽい爆破ゲームから、全員で地上へ逃げるゲームスタートです!』


「タイトル変わってるって」


 サイレンがまた鳴り響く。

 タイムリミットは十五分。


「最後だ! 走るぞ!」


 レンの掛け声で、私たちは階段へ向かって走り出した。


 ◆


 階段を駆け下りる。

 息が切れる。足が重い。


「ユキ、大丈夫?」

「だいじょ……ぶ。ちょっと苦しいけど」


 私はユキの腕を支えながら、後ろのハルとヒロアキさんを振り返る。


「ヒロアキさん、いける?」

「会社よりは全然マシ」

「どんな会社だったんすか……」


 ハルが苦笑いする。

 レンが前を走りながら声を張った。


「あとちょいっすよー! ラストー!」

「さすがは陸上部!」

「元だけどね」


 誰も足を止めなかった。

 一階に着き、正面玄関の自動ドアが開く。

 

 外は、普通の都会の路地裏だった。


 ビルの谷間。コンクリートの壁。自販機。ゴミ集積所。

 車の音と、遠くの電車の音。人の話し声。


 全部、見慣れたようで、やたらくっきり見えた。


「……マジで、街中なんだ」


 ハルがぽつりと言う。

 私は顔を上げた。


 ビルの隙間から、空が見えた。

 地面から見上げる、いつもの目線の空。


「普通だ」


 思わずそう言う。

 そのとき、腕輪が一斉に震えた。


 画面に、灰色の「死にたい」ボタンが表示される。同時に「とりあえず生きてみる」ボタンも光る。


『ここから先は、皆さんの選択です』


 腕輪の液晶にカイの顔が映る。


『押したからといって、今すぐ何かが決まるわけじゃありません。安楽死の審査に進みますが、その途中で撤回するのも自由。先ほど言った通り、特別支援棟に行くのも自由。もちろんとりあえず生きてみるのも自由です』


 風が吹く。

 誰もすぐには動かない。


「じゃあ……俺はこっち」


 最初に動いたのはレンだった。そして迷わず、「とりあえず生きてみる」ボタンを押した。


「廊下ダッシュとか階段ダッシュとかで、“走るの自体はまだ好きだな”って思っちゃったんで、競技じゃなくても陸上と向き合えたらいいかなって」

『全力でサポートします』


「あたしもこっち」


 ユキが、小さく言う。


「また部屋こもるかもしれないけど……ちょっと楽しかったから」

『十分です』

 

 ヒロアキは、しばらく腕輪を見つめてから、ふっと笑った。


「会社辞めるのは決めました。でも、“二度と死にたくならない”ってとこまでは、まだ言えないけど、とりあえず生きてみようかなって、俺に合う仕事あるでしょきっと」

『もちろんです』


「自分も」


 ハルも「とりあえず生きてみる」ボタンを押した。


「自分、ちょっとゲームマスターやってみたい」

『……! 大歓迎です!!』


「この反応、ゲームマスターって激務なんじゃないの?」


 最後に、視線が私に集まる。


 腕輪の「死にたい」ボタンに指を乗せる。

 ぐっと押せば、たぶんこの先の人生のルートが変わる。


 ――三日前と比べて、世界が劇的に変わったわけじゃない。

 大学に戻れる気はしないし、人間関係もすぐには何も変わらないだろう。

 正直、「特別支援棟に流されて、全部お任せでもいいかな」って気持ちも、まだちゃんと残っている。


 それでも。


「……とりあえずさ」


 私は、ゆっくり指を離して、隣のボタンに指を置く。


「何もかも今すぐ決めなくていいよね! まだ死んでないんだし」


 ヒロアキが笑う。


「それはそうだ」

「安楽死権もらえるなら、それ全力で取りに行くべきって思ってたんだけど」


 自分で苦笑する。


「お題クリアして、カレー作ったりくだらない話して、爆破から逃げて、この続きのほうがちょっと面白そうかも思えたから」


 モニターの向こうで、カイが目を細めた。


『それがあなたの生きてみてもいい理由の種ですね』

「そうだね」

『芽が出るかどうかは分かんないですけど、土の中に種があるっぽいって分かってるのはいいですね』

「うまいこと言ったつもり?」

『つもりです』


 私はぐっと指に力を込め「とりあえず生きてみる」ボタンを押した。


「……とりあえずさ」


 私は空を見上げてから、みんなのほうを向く。


「今からコンビニでお菓子でも買わない? この施設お菓子とか無かったし」

「賛成。俺も酒が飲みたい」

「まだ昼間だよ? ヒロアキさん」

「あたしもおかし食べたい」

「財布にお金入ってたかな?」


 そこでまた、腕輪が震えた。

 今度は、全員同時に。

 画面に、通知が表示される。


 【生活サポートの説明を行います。お菓子など買い終わりましたら、みなさん“さっきのフロア”に戻ってきてください。2日目に脱落したミナミさんも合流予定です!】


「戻るのかよ!」


 全員のツッコミが揃った。


『爆破シミュレーションは終了してますので、ご安心くださーい』


 モニターのカイが、どや顔で親指を立てる。


「とりあえず、ミナミさんも外に来るように言ってもらえます? みんなで行きたいので」


 レンが笑う。


 逆デスゲームは終わった。

 これからは私たちの人生だ。


 三日前、私は地面ばかり見ていた。

 今も、空ばかり見上げられるほど前向きにはなれていない。


 ちょっと目線が上がった。その程度の心境の変化だ。

 地面と空の、ちょうど中間くらい。


 人生はゲームだ。

 コンティニューもできなければ、攻略本もない。

 

「でも……ちょっとだけ」


 小さく呟く。


「生きてみても、いいか」

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