第二話 ちょっとついて行ってみよう
真中視点。
やっと6限目が終わり、下校だ。ここでイツメンに目配せをする。
目的はただ1つ。あの天堂花園カップルを観察してくっつけるためのヒントを入手する。
この二人の親友である目黒、菊池ペアによると、ふたりとも相思相愛であるらしい。ならなおさら早くくっつけよ。
一人ずつメンバーを見ていこう。
一人目、目黒。
俺の視線に気づいた瞬間にラインが来た。
目黒『二人を尾行する。』
目黒『他の二人にも伝えておいた。』
目黒『玄関で待ってて。』
仕事はっや。
早すぎだろ。
二人目、菊池。
…眠ってる。
終会くらいおきておけよ!?
毎時間寝てるじゃねーか!?
まあ、目黒にどうかしてもらおう。
三人目、君塚。
目があった瞬間、ウィンクされた。
さすが王子様だ。女子だったら惚れてた。
にしても相変わらずお調子者すぎる。
…このメンツで、果たしてあのヘタレどもをくっつけることはできるのだろうか?
不安になりながら俺は、教室を出た。
ーーーーー
「あ、みんな、二人の手が触れた。ふたりともアワアワしてる。」
双眼鏡を持った目黒が報告する。
「目黒っちぃー、ちょっと私にも見せてよー。」
菊池が喚く。
「バカ、双眼鏡の前で猫じゃらしを振るな。見えない。」
「じゃあ片方のレンズ貸してよ。」
そう言って、菊池は強硬手段に出る。
「物理的に無理。頭を押し付けてくんな。」
目黒にはノーダメである。
「えー、ケチぃー。これぐらいいいじゃーん」
「だめ。ちょっとは我慢する。後でクレープ奢ってあげるから。」
「やった〜!目黒っちやさし〜」
後ろから菊池が目黒に抱きかかる。
目黒も、少し、困ったような顔をしながら微笑んでいた。
俺はここで思ったことが一つある。
「あの幼馴染二人組より、普通に仲が良くね!?」と。
「待って?お前らそれで付き合ってないってマジ?」
いくらなんでも仲良すぎだろ!?
「なんか今は君らの関係のほうが気になるよ。私。」
どうやら、君塚も同じ事を考えていたらしい。良かった。俺以外にも正常な人がいたようだ。
「いや?ただの友だちだけど?」
「ちょっと!?目黒っち!?『親友』でしょ?」
「あ、そうだな。」
君塚が、目をがん開いてフリーズしている。
…コイツら、いくらなんでも甘すぎる。しかも無自覚っぽいし。
糖分過多で死ぬわ。
なんでお互いに気づいてないんだ?
曲がり角に消える二人を追っかけながらそんな事を考えてた。
ーーーーー
動きがあったのは、それから約10分後。
なお、二人はそれまで無言である。
いや、話そうとはしてたんだけど、お互いの話出すタイミングが奇跡的に一致しまくってしまい、目があってお互いに顔を逸らす。
これを永遠と繰り返していた。
しかし、10分もねばっていたら、奇跡の一つや二つ、起きるものらしい。
花園が赤い顔をしながら、ついに天堂に話しかけた。
「あ!!!…あ、あの、天堂…くん…」
最初の「あ」がデカすぎたみたいだ。どんどんセリフがフェードアウトしていく。
「……………え!?…あ、え?…なんでっしょうかぁ↑!?」
どうやら緊張しすぎていたらしい。最初はフリーズしていて、最後が裏返っていた。
これはひどい。
「え、っそっその…」
途端に、色のない世界に絵の具をこぼしたように、世界が鮮明になる。
二人だけの世界に入ったように、見てる側からしたら感じた。
(おっ告白か!?)
(やれ、思いをぶつけろ!)
(ひめっち!だいじょーぶ!絶対行ける!私が保証する)
(天堂も思いをちゃんと受け取るんだよ〜!)
告白に期待が高まる中、
「その、え、あ、」
「えっっと、うん!?」
春の希望に満ちた空気に後押しされ、花園は言った。
「その、え…明日は曇りらしいですね‥!!?」
…!?
急にフィルターが外れる。
「うん!?うん。…え!?」
「やっや‥ぱり、何でもないです…!」
会 話 終 了。
重たい沈黙を破ったのは菊池だった。
「…ねぇ、これくっつけるの真面目にむずかしくない!?」
「…少なくとも、今年中には無理かもな…。俺達が手を貸さないと、卵焼きと天気予報だけでこいつらの青春は終わるな。」
「わあぁ…!?また今年もろくに青春できない!不安すぎるこのカップル!」
「もう。私も一応、恋愛したいのに…。気になりすぎて集中できないじゃんか…。」
てかなんで天気予報してるんだ!?
せめて遊びに誘うくらいしろよ!?
「もういいや。このままクレープ食べに行こ!目黒っちはちゃんと奢ってね。」
「わかった。クレープ屋で話し合おう。」
「私今ダイエット中なんだけど…」
「くそ、なんと時効まで逃げ切ろうとしたのにぃ…」
「目黒っち。もう諦めるんだ!そして君塚ちゃんはむしろ痩せ過ぎだって。」
結局、いつもと変わらない雰囲気のまま、俺達はカフェに向かうのであった。
ーーーーー
クレープ屋にて
小洒落た雰囲気の店内。
だが、その雰囲気にそぐわない破天荒な声が、店内に響いたた。
「この店で一番高いやつを!」
「俺の財布がぁ!?」
目黒が崩れ落ちる
ここまで声を出してる目黒、何気に始めてみた気がする。
「あ、私らはおすすめのやつで。真中、それでいいよね。」
「うん。
クレープを注文し終わって、店内に座る。
このままどーでもいいことを永遠とだべってく。
俺達の恒例行事だ。
だが、この日は違った。
「なんであそこでアタックしないんだろうねぇ…。私だったらまず遊びに誘うのに。」
君塚が不思議そうに言う。
「姫っちは悪くないよ!多分。あれで気づかない天堂が悪い。」
いくらなんでも暴論だ。
町中の男性1000人の内、一体何人が「明日は曇りらしいですね」をプロポーズだと捉えるんだろうか。
「俺の4000円…」
お前はまだ嘆いてるのかよ!?いい加減平常運転に戻ってくれ!
まあそんなことより。
「やっぱり、あの二人。介護がないとやっていけないよなぁ」
どんな手段を使っても、あの二人の関係を曇りではなく快晴にしなくてはならないと、このカオスな現場で考えた。
…といってもまあ、あの二人の関係性、現状じゃ大雨なんだけど。
あとがき?
君塚の活躍シーン近いうちに作りたい。
あ、メインキャラ達のフルネーム載せておくよ〜。
ヘタレ✕2
天堂 信也 (てんどう しんや) (男)
花園 姫花 (はなぞの ひめか) (女)
モブズ
真中 和樹 (まなか かずき) (男)
目黒 創助 (めぐろ そうすけ) (男)
菊池 春菜 (きくち はるな) (女)
君塚 涼 (きみづか りょう) (女)
残りのやつ?は後で出す予定。
ハイスペカップルがポンコツすぎて、脇役たちの青春が始まらない話。 らむね! @Mulata_lamune
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