本作は主人公ユーリが一人きりの3畳間から始まります。ユーリの主観を通じて、徐々に彼女の住む世界が明らかになってゆく。
ユーリの日常から観測されるのは、彼女の呑気さとは裏腹な、凄惨なまでのディストピア。食事は3Dプリンターが吐き出すグミだけ。「味」という概念すら曖昧。「野菜」や「穀物」は忘れ去られて久しい。栄養失調で死に頻したクラスメイトは、タンパク源として再利用が義務付けられる。
その読書体験は、まるで彼女の住むディストピアを追体験するかのようです。
そして、物語はユーリの脳内に響く声の由来に収束してゆく。
四年前の、現実には考えられないほどに大規模な墜落事故。
彼女が「うるさい」と思う声の正体が明らかになり、本作は未来への余韻を残して幕を閉じます。
作者様が本作を通じて表現したかったものは何だったのか? 読後に考えさせられました。もしかしたら、ユーリという主人公を通じて、この救いの無いディストピアな世界自体を、表現されたかったのではないか?と。そして、それはこの物語の序章に思えて仕方がない。
読後感は、ささやかな希望。救いようのないディストピアでは終わらない、未来への明るい奥行きを残して、幕を閉じるのです。
この物語は、おそらく完結していません。続きがあるはず。いや、どうか続きがあって欲しい。
是非とも、「ミツバチが運ぶ銀色の夢」の結末を、見届けたいと思いました。
素晴らしいディストピアSFを読ませて頂き、ありがとうございました。
この物語の世界線では……
すでに食糧問題は末期状況であり餓死、野垂れ死に、行き倒れするものがありふれ、
空気汚染も深刻で政府はすでに地球を見捨て、月の開拓に着手している。
そんな世界にございます。
月に向かう開拓船に紛れて、パライソであるはずの月に逃げる逃亡船たち。
それを、陸軍局の兵器が撃ち落とし……
その時の事故が原因で主人公の脳内では、謎のノイズと共に幻聴が聞こえるようになりました。
それだけではなく、政府が支給したプリンターから、味はともかく食料が出力されるようになり、それで主人公は食い繋いでおりました。
しかし、そんな生活にも翳りが。
プリンターが不調をきたし、ついには土、そして、小さくて丸い「あるもの」しか出力しなくなってしまったのでございます。
当然、ミミズではないので主人公は土など食べられません。
終わっていく世界。手詰まりな社会情勢。ゴールが見えている文明。
袋小路。
果たして、そんな中で希望を見ることができるのか?
そして、幻聴の正体とは!?
圧倒的な世界観。
ハードなSFにございます。
平沢進の曲とか好きな方、
あとはー
映画のソイレントグリーンとか、
ブルーハーブの「未来世紀」という曲が好きな方は、ハマるかと。
ぜひ、ご一読を。