#3 転入生

「え?」

「ん?優夢どうしたの?」

明が私の反応を見て少し不安そうにした。例の一本道のイケメンも目を見開き、ぽかんとして私を見る。

「…まぁ千輝ちあき、自己紹介よろしく」

するとちあきと呼ばれたイケメンは慌てて穏やかな表情に戻して挨拶をした。

鶴瀬千輝つるせちあきです。よろしくお願いします」

彼はぺこりとお辞儀をしてニコッとする。やばい、すっごいカッコいいんだけど。

「俺の近所に引っ越してきたから仲良くしてやってくれよな!」

そう明は言って私達に自己紹介するよう促した。

鹿島未莱かしまみらい。よろしくな、千輝!」

「片羽優夢。よろしくね」

「鹿島さんに片羽さん。よろしくお願いします」

私は敬語に違和感を感じつつも「よろしくね」と、声をかけた。すると未莱が千輝くんを指差して言った。

「千輝、うちら友達なんだし同学年だし敬語抜きにしなよ」

すると千輝くんと明は目を合わせてニコッとした。千輝くんは気まずそうに未莱に説明した。

「あの僕、女子には必ず敬語を使わないと気が済まなくて…」

すると未莱はすんなりと納得した。

「ふーん、わかった。でも私のことは未莱さん!優夢のことは優夢さんって呼んでよね!」

すると千輝くんは慌てて私達の名前を言い直した。

「未莱さんに…優夢さん。よろしくお願いします」

すると未莱はニカっと笑って「よろしい!」と言ってサムズアップした。その空気の中、一人でもじもじしていた私は思い切って声を出した。

「あの!千輝くんって春休み…桜の木がずらっと咲く一本道にいたよね?」

「は!?」

未莱はびっくりして台パンをするが、千輝くんは未莱の行動に気にせず「あぁ」と、言って微笑む。

「あの時の人ですよね。しばらく見つめてしまいごめんなさい。びっくりしましたよね?」

「いや、こちらこそ!一番見てたのは私だから…」

また顔が熱くなっていく感じがして赤面になっていないか心配になる。

「キリがないのでこの辺にしておきましょうか」

「だね…」

しばらく沈黙が続いた後、先生が教室に入ってきて挨拶をした。どうやら担任の先生らしい。

「座れー!今日からお前らの担任を務める、白川祐美しらかわゆみだ。よろしくな!」

中々強気な先生が入ってきたと思い、そっぽを向くと、隣に座っているのは千輝くんだった。私はびっくりして出そうになった声を間一髪抑えて口を手で塞ぐ。危ない…。もっと気をつけるべきだと自分に注意して前を向く。

「今日から転入生が来た。お前ら見たかもしれねぇけど自己紹介してもらう。鶴瀬つるせ、出てこい」

すると千輝くんは「はい」と言って立ち上がった。

「鶴瀬千輝です。わからないこともたくさんありますがよろしくお願いします」

拍手が飛び交う中、「カッコよくね?」「イケメンじゃん」という声聞こえてくる。

「鶴瀬は病気持ちだから体育は見学だ。お前らの理解と鶴瀬への扱いちゃんとしろよ」

「はーい」

全員が一斉に返事する。まさか、千輝くん病気持ちだなんて…。だからあんなに腕とか細いんだ。一人悲しんでいると未莱が後ろを向いて私に話しかけてきた。

「ねぇ優夢、桜の一本道で出会ったイケメンって…千輝のこと?」

「うん」

「マジか、つーかアンタこれからの恋の道厳しそうだよ」

「なんでよ」

「イヤ、周りを見なさいよ」

言われてキョロキョロすると、クラスの女子のほとんどは千輝くんに釘付けされていた。たまに顔を赤くしながら見ている子もいる。その瞬間私はこれからの恋の道のりの難しさを悟った。

「…クラスほぼ全員相手しないとなの…?」

「どうやらそうね」

その瞬間私は絶句する。こんなにも敵がいるなんて…私…どうしたらいいの?!

新学期は将来、波乱予感からスタートしたのであった。



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初恋の人は1年後いなくなる うにかめ @UNI_TAKOKO

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