第17章 結束と約束

 夏の白影市――白影川沿い――15:30。


 陽光が川面に反射し、きらきらと揺れる。

 その横に、ひなたの SHINOBI が静かに停車した。


 そして、すでに待っていた二人の男の姿があった。

 

 一人は亮。

 もう一人は――180センチ近い長身。

 赤いパーマヘア。

 黄色く光る瞳。

 派手な黄色の大型バイク── MIYAZAKI宮崎技研工業 CB-R750大型バイク が真横に鎮座している。

 彼は羽柴大海はしば たいが。私立あかつき学園。サッカー部副キャプテン。



「おーい!待ってたぜ!」

 亮が手を大きく振る。

「冴姫!ひなたちゃん!"あかつきの守護神"!がな!」

 海は太陽みたいな笑顔で出迎えた。

 亮が思わず大海の肩を叩く。

「お前の防御率と関係ねえだろ!」

「0.95をなめんなって!」

「ま――助かってるのは事実だ」

「だろ?だろ?」


 ひなたは一瞬だけ目を丸くする。

(羽柴先輩……その目……絶対カラコンでしょ……さすが"あかつきのチャラ男")


 冴姫がバイクから降りると、大海が近寄ってくる。

「亮から“協力してくれ”って言われた時はよ……てっきり遊びの誘いかと思ったら──工場見学か?」

 大海の視線が川沿い向く――その先には"松平製作所"の大型看板が見えていた。

「あそこに行くのか?」

 

 ひなたは心の中でぎくりとする。

(そういう扱いなの!?)


 冴姫は落ち着いた声で返した。

「ありがとう、大海。どうしても寺本さんの協力が必要だから」

 大海が慣れた口調で返す――笑っているが、目は少し鋭かった。

「で、何の用件だよ?カナに言わずに……俺だけにコソコソとよ?」


 ひなたの喉がつまる。

(言えるわけ……ないよね……)


 亮がわざと軽い調子で返す。

「大丈夫だ、なんでもねぇよ」


 大海は一歩近づき、声を低くする。

「まさか……また危ねぇ事じゃねぇだろうな。3か月前の“アレ”みてぇな──」


 冴姫の肩が微かに揺れた。

「……」

 ひなたは視線を伏せる。

(言えるはずが……絶対ない)


 すると。亮が不自然なくらい明るい声で割って入る。

「安心しろ大海!明日にはまた見れるだろ?──なぁ?」


 亮の視線が、冴姫の胸元へすっと滑った。

 一同の視線が、冴姫の豊かなバストに集中した。


 ひなたは憤怒の表情に変わる。

「亮!」


 ――ゴッ!!


 ひなたの肘鉄が亮の みぞおち に正確に炸裂した。


 亮が思わずのけぞり、膝を折る。

「ふごおぉぉ……!」


 大海が大笑いしながら、両手を叩いた。

「コントかよ!……まあいいけどよ、何しに行くか知らねーが、変なことすんなよ?」

 亮は涙目で胸を押さえながら返す。

「任せとけ……ちょっと昔の知り合いに会うだけだからよ」

 大海が笑顔で返す。

「お前がそれ言うと説得力ゼロだわ!」


 すると。冴姫が一歩前へ出た。

「大海……必ず帰ってくる。大丈夫よ」


 大海はしばらく冴姫を見つめ──大きく息を吐いた。

「フウ……しょーがねぇな。本当に昔から……相談しねえんだから――大事なことに限ってな」

 冴姫が少しぎこちない笑顔を向ける。

「昔から変わらないわ……私は――知ってるでしょ?大海も、カナも……」

 大海は片目を閉じ、言葉を返した。

「わかった、ちゃんと連絡しろよ?」


 それだけ言って、大海はバイクに跨り、手を上げて去っていった。

「待ってるぜ!」


 ――ブロロロロ……。


 静けさが戻る。

 亮はさっき打たれた みぞおち を撫でながら笑った。

「……ふぅ。やっと行ったか……」


 ひなたが首をかしげる。

「え?どういう意味?」

「わざとだよ。アイツの気をそらすためにな」


 ひなたは半眼で亮を見つめた。

「どうだか……」


 ひなたの目線が 冴姫の胸元――亮 を交互に行き来する。


 冴姫の目に困惑が漂よう。

「……な、なに?その視線」

 亮は少し言葉を濁らせる。

「いやその……ほら……明智さんは……」


 そして、ひなたが身を翻した。 

「言うなッ!」

「ぐふっ!」

 亮のみぞおちに二撃目が入る。


 ――ドガッ!。 


 すると、冴姫は顔を赤くしながらも、息を整えて言った。

「……じゃあ、行く?」


 亮は背筋を伸ばし、真剣な声で返す。

「OK。大丈夫」


 ひなたは前を向き、強く頷いた。

「行こう……!」


 三人の視線が、白影川の向こう──“松平製作所”のある方角へ向けられた。


 影はひとつの場所へ収束しようとしていた。


 はじまるのは──。

 救出か。

 決裂か。

 あるいは、もっと深い闇か。


 物語は、加速する。

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RE:i 2 私立あかつき学園 絆のスパイと夏 The summer Of Shadow サブサン @kyotobond007

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