来世でまた会いましょう

花草青依

来世でまた会いましょう

 来世で一緒になろうとあなたは言った。

 私はそれを信じて受け入れたから、あなたの脇差を、迷うことなく、自らに突き刺した。

 お腹に伝わる鈍い痛み。

 腹にいる我が子はきっと怖い思いをしていたことだろう。


 でも、仕方がないのだ。今世では、産んであげられないのだから。この子が生まれるためには、私達は、生まれ変わらなければならない。

 来世の私達の間には、身分差などないと信じて。来世では、お腹の子と三人で幸せになれるのだと強く願って。一人で逝かせるのではないと、言い聞かせて、私は腹の痛みに耐えた。


 けれど、あなたは、いつまで経っても、私に続いて腹を刺さなかった。

 不思議に思って見上げれば、彼はニヤニヤと笑っていた。

「やっと、面倒事が片付く」

 ぽつりと漏らしたその一言。痛む腹を押さえて問いただしても、彼は笑うばかり。

 痛みにのた打ち回る私を背にして、あなたは去って行った。


 許せない。呪ってやる。


 月並みな恨みの言葉が頭の中にいっぱい、広がっていく。それと同じように、血が畳を赤く染めていった。

 追いかけて文句を言おうにも、痛みのせいで、もはやまともに動けない。


 私は騙されたことへの怒りと悲しみ、我が子を自ら殺してしまったことへの罪悪感を胸に、事切れた。

 絶対に呪い殺してやると息巻いて死んだのに、幽霊となった私は何もできなかった。

 死者は生者に干渉することができなかったのだ。


 だから、私は、生まれ変わった。

 あなたの生きる今――令和の時代に。


 あなたは、また私を騙そうとした。

 婚約者がいるくせに、私に手を出して。彼女との結婚の時期が来ると、「一緒に死のう」と言い始めた。そうやって、私を言いくるめて、また自殺させるつもりだったのだろう。


「いいよ」

 二つ返事で了承して、台所から包丁を取り出す。

「じゃあ、私から、いくね」

 そうすると、あなたは俯いて顔に手を当てた。泣いている風を装っているけれど、本当は、あの嫌な笑みを浮かべている。そのことに私が気付いているとは、あなたは微塵も感じていないだろう。


 私は、猿芝居をするあなたの腹に、迷いなく包丁を突き刺した。

 腹の中に吸い込まれる包丁。溢れる血。突然の痛みに動揺するあなた。

 慌ててジャケットの内ポケットからスマホを取り出そうとするのが、滑稽でたまらない。


 私は言った。


「来世でも、また会いましょうね?」




「来世でまた会いましょう」了

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来世でまた会いましょう 花草青依 @aoi_hanakusa

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