「好き」を守るために戦った青春の記録

2002年春。あの「ピー……ガガガ」という接続音から、すべては始まった。

一枚の壁紙を数分かけてダウンロードする日々。
泣きゲーに涙し、アニメの話で友ができた。
技術、倫理、そして物欲――すべてがごちゃ混ぜのまま、
「好き」という感情だけを頼りに、少年はネットの深層を彷徨っていく。

WinMXとADSL、自作PCと同人誌、
P2Pのリスクとアーカイブの使命、
禁断のコピーと保存への執念。

だが時代は変わる。
ニコニコ動画が熱狂を解放し、初音ミクが創造の扉を開いた。
スマホが登場し、サブスクがすべてを合法にしたとき、
彼が守ってきた聖域は「過去」になった。

それでも、すべてが消えたわけじゃない。
あの熱は、いまも指先のガラス越しに息づいている。
これは、誰かに評価されるためじゃない。
「好きだった」ことを、ただ正直に、ひとつずつ拾い集めた物語。

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