届いたのは服ではなく、母子手帳だった

赤子のために購入した一枚の子ども服。
それが、恐ろしい現実の扉を開いた。

匿名取引で届いたのは、なぜか「姪の名前」が書かれた見知らぬ母子手帳。
記録は空白。
だが名前だけは、たしかに「高杉湊」だった。

優しい家族の中で始まる、ごく普通の大学生・永和の不可解な日常。
失われた一枚の帳面、奇妙な老婆、人形を流す川辺の儀式。
静かに忍び寄る「何か」の気配が、現実を少しずつ軋ませていく。

これは、善意が呑まれ、日常が侵されていく物語。