凡ミスの船長

日奉 奏

第1話

 何十年か前、海外のある軍用船の中で、ちょっとしたトラブルが起きた。燃料のガソリンが足りなくなったのだ。

 このままでは目的地に向かえなくなってしまう。船長は、燃料になりそうなものが船の中にないか考えた。

 ビニールなんかは石油で出来てるはずだ、もしかしたら燃料に使えるかもしれない。と船長は思いつき、部下に命令した。

 部下は命令通り、ビニール製のものを船の中からかき集めた。船長はそれを、適当に炉に詰め込んだ。

 それでも燃料は足りず、ついに沈没寸前とまでなった。船長は自ら含め、船員を逃がそうとした。


 しかし、そこで驚くべきことが起こった。船の中にあるはずの脱出ボートが、どこにもないのだ。このままでは溺死だ。

 パニックになった船長は、部下にボートのありかを尋ねた。部下は答えた。

「船長が、ビニール製のものを集めて来いって命令したんじゃないですか!」

 脱出ボートはビニール製のボートだったことを、船長は今更思い出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

凡ミスの船長 日奉 奏 @sniperarihito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画